説明

基礎貫通配管部構造

【課題】主に、さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の扁平強度を向上させ得るようにする。
【解決手段】建物21の基礎34を貫通するさや管37が設けられ、さや管37の内部に配管38を挿通させるようにした基礎貫通配管部構造であって、さや管37に、基礎34を構成するコンクリート34bの養生時の荷重45によってさや管37の少なくとも屋外36側の端部37dが扁平化するのを防止可能な扁平強度向上部46が設けられるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎貫通配管部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「特定住宅瑕疵担保責任の履行等に関する法律」や「長期優良住宅の普及に関する法律」等の施行に伴い、住宅等の建物の基礎に対し、配管設備として、維持管理性能が高く、配管の更新が容易な、基礎貫通配管部構造を用いることが広く普及し始めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この基礎貫通配管部構造は、建物の基礎に対して屋内から屋外へ貫通するように設けられるさや管と、このさや管の内部に挿通される配管とで主に構成される。上記配管は、例えば、可撓管等とされる。また、さや管の内部には、さや管と配管との間に形成される隙間を埋めるように、止水処理が施される。
【0004】
このような基礎貫通配管部構造は、例えば、以下のようにして施工される。即ち、図7に示すように、敷地の基礎1を設置する部分に鉄筋2を配筋し、この鉄筋2の所定の位置にホルダ部材3を用いてさや管4を固定した後に、基礎1のコンクリート5を打設し、コンクリート5を養生して硬化させることによって、基礎1と、この基礎1を貫通するさや管4とを設置する。そして、基礎1に設置されたさや管4に対し、配管6を挿通し、さや管4と配管6との間に形成される隙間7に止水処理を施す。これによって、上記した基礎貫通配管部構造が施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した基礎貫通配管部構造には、以下のような問題があった。
【0007】
即ち、上記したさや管4は、基礎1の内部に配管6を挿通(貫通配置)するための空間(貫通孔)を確保、形成するためのものなので、施工後(基礎1のコンクリート5の硬化後)には、さや管4の強度は必要とされない。
【0008】
しかし、施工中または施工時(基礎1のコンクリート5の硬化前)には、さや管4に対して、基礎1のコンクリート5の荷重8が作用するため、さや管4に所要の強度がないと、その荷重8でさや管4が上下に潰れて扁平化するおそれがある。このさや管4の扁平化は、上記した荷重8の影響を最も受け易いさや管4の屋外側の端部またはその近傍の部分が著しい。
【0009】
そして、例えば、さや管4が大きく扁平化すると、さや管4の内部に配管を挿通できなくなるおそれが生じる。また、さや管4がほんの僅かでも扁平化すると、図8に示すように、さや管4とその内部に通される配管6との間の隙間7が不均一になるので、配管6を挿通する際の支障になったり、さや管4の内部に止水処理を行う際に、作業性が低下する。
【0010】
そこで、このようなことを防止するために、従来は、さや管4に厚肉で扁平強度の高いものを使用して、基礎1のコンクリート5の荷重8によるさや管4の扁平化を防止させるようにしている。
【0011】
しかし、厚肉のさや管4を用いた場合には、さや管4の重量が大きくなり、これに伴って、さや管4の運搬性が低下するという問題や、さや管4の材料使用量が多くなってコストが増加する等の問題を生じる。
【0012】
また、近年、住宅等の建物の基礎1の多様化により、基礎1の深さも様々となっているが、基礎1が深くなると、その分、コンクリート5の養生時の荷重8が増大するので、従来の構成のままだと、さや管4をより厚肉にしなければならないことになる。しかし、さや管4を厚肉化するのには限界があるため、さや管4の厚肉化に代えて、より効率的にさや管4の扁平強度を向上し得る構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、建物の基礎を貫通するさや管が設けられ、該さや管の内部に配管を挿通させるようにした基礎貫通配管部構造において、前記さや管に、前記基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重によってさや管の少なくとも屋外側の端部が扁平化するのを防止可能な扁平強度向上部が設けられたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記扁平強度向上部が、前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に設けられたフランジ部であり、該フランジ部が、基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重に耐え得る張出量を有することを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記扁平強度向上部を構成するフランジ部が、前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に、複数箇所設けられたことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に対し、摺動可能に嵌合部材が外嵌され、該嵌合部材の外周に、前記扁平強度向上部を構成するフランジ部が設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、扁平強度向上部が、さや管の扁平強度を向上させることによって、基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重で、さや管の少なくとも屋外側の端部が扁平化するのを防止することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、扁平強度向上部をフランジ部とすることにより、フランジ部の持つ補強効果を利用して効率的にさや管の扁平強度を向上することができる。また、フランジ部をさや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に設けることにより、コンクリートの養生時の荷重の影響を最も受け易い当該部分の扁平強度を集中的に向上することができると共に、さや管のフランジ部を設けていない部分の形状に影響を与えないようにすることができる。そして、フランジ部を、基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重に耐え得る張出量を有するものとすることにより、さや管のフランジ部を設けた部分の扁平強度が不足することを確実に防止することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、扁平強度向上部を構成するフランジ部を複数箇所設けることにより、複数箇所のフランジ部の相乗効果によって、さや管の扁平強度をより大きく向上させることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に外嵌された嵌合部材によって、さや管の当該部分の扁平強度を向上し、さや管の当該部分が扁平化するのを防止することができる。また、上記嵌合部材の外周に扁平強度向上部を構成するフランジ部を設けることにより、さや管の当該部分の扁平強度を一層向上することができる。しかも、さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に嵌合部材を摺動可能に外嵌することにより、さや管の嵌合位置によって、基礎の屋外側の側面に合わせて、フランジ部の設置位置を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】建物の配管設備を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1にかかる基礎貫通配管部構造(を有する基礎)の側方から見た断面図(a)及び端面図(b)である。
【図3】図2の基礎貫通配管部構造の分解斜視図である。
【図4】縦方向延長部が長いさや管の例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例2にかかる基礎貫通配管部(を有する基礎)の側方から見た断面図(a)及び端面図(b)である。
【図6】本発明の実施例3にかかる基礎貫通配管部構造(を有する基礎)の側方から見た断面図(a)及び端面図(b)である。
【図7】従来例にかかる基礎貫通配管部構造(を有する基礎)の側方から見た断面図(a)及び端面図(b)である。
【図8】図7の端面を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、主に、さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の扁平強度を向上させ得るようにすることを目的としている。
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図4は、この発明の実施例1を示すものである。
【0025】
<構成>まず、構成について説明する。
【0026】
図1は、住宅等の建物21における配管設備22を示している。なお、この場合、配管設備22は、排水設備となっている。
【0027】
即ち、建物21の内部には、台所、風呂、洗濯、洗面、トイレなどのための複数の排水部24が設けられる。また、建物21が設けられる敷地25の屋外部分には、複数の宅地マス26が適宜設けられる。更に、敷地25の外の公共地27には、公共マス28が設けられる。そして、上記した排水部24と宅地マス26との間、および、宅地マス26どうしの間や宅地マス26と公共マス28との間には、排水経路を構成するようにそれぞれ排水管31,32が設けられる。
【0028】
そして、この発明にかかる基礎貫通配管部構造33(基礎貫通配管キット)は、建物21の基礎34を貫通する部分に対して設けられる。
【0029】
図2に示すように、この基礎貫通配管部構造33は、建物21の基礎34に対して屋内35から屋外36へ貫通するように設けられるさや管37(スリーブベント)と、このさや管37の内部に挿通される配管38とで主に構成される。
【0030】
上記基礎34は、鉄筋34aと、コンクリート34bとによって構成される。上記基礎34は、少なくとも、屋外36側に位置する側面34cと、屋内35側に位置する上面34dとを有している。
【0031】
図3(図2も併せて参照のこと)に示すように、上記さや管37は、例えば、塩化ビニルなどの合成樹脂製で構成された管部材とされている。このさや管37は、全長に亘って径寸法(内径および外径)が略一定の円形断面を有しており、肉厚も一定とされている。このさや管37は、内周面および外周面に目立つ凹凸などのない滑らかな表面を有するものとされている。
【0032】
そして、上記さや管37は、基礎34の屋外36側に位置する側面34cから横方向へ向けて延びる横方向延長部37aと、この横方向延長部37aから基礎34の屋内35側に位置する上面34dへ向けて縦方向へ延びる縦方向延長部37bとを有している。そして、横方向延長部37aと縦方向延長部37bとの間には所要の角度の屈曲部37cが設けられ、これにより、さや管37は、側方から見て屈曲した形状となっている。上記した横方向延長部37aは、水平方向、または、水平方向に対して若干傾斜した方向(例えば、屋外36側へ向かって緩い下り勾配となる方向)に延設される。また、上記した縦方向延長部37bは、鉛直方向(図4参照)、または、鉛直方向に対して所要の角度だけ傾斜した方向(図3参照)に延設される。
【0033】
そして、図2に示すように、設置状態で下端部となるさや管37の屋外36側の端部37dは、基礎34の屋外36側に位置する側面34cと略平行で且つ略面一となるように設置される。また、設置状態で上端部となるさや管37の屋内35側の端部37eは、基礎34の屋内35側に位置する上面34dから若干上方へ突出した状態で上記上面34dと略平行となるように設置される。
【0034】
この場合、上記したように、さや管37は、最も好適なものとして、横方向延長部37aと屈曲部37cと縦方向延長部37bとが一体化されたものとしているが、さや管37には、上記したもの以外にも、少なくとも横方向延長部37aと縦方向延長部37bとが分割された分割タイプのもの等、各種のものが存在しており(例えば、特許文献1のものなど)、この発明の後述するような特徴部分は、上記した各種のものに対しても適用することが可能である。
【0035】
上記さや管37は、鉄筋34aの所定の位置にホルダ部材39を用いて保持される。このホルダ部材39は、鉄筋34aに外嵌保持可能な鉄筋嵌合部39aと、さや管37の外周に外嵌保持可能なさや管嵌合部39bとを有している(図3参照)。
【0036】
また、上記配管38には、長さや太さなどを上記さや管37に合わせて作られた専用のものが使用される。配管38は、例えば、さや管37とほぼ同じ長さでさや管37よりも小径の内面平滑可撓管等とされている。この内面平滑可撓管は、ポリエチレンなどの柔軟な合成樹脂製の本体部分38aで主に構成されている。この可撓管等の両端部には、上記した排水管31を構成する管部材の途中に接続するための、塩化ビニルなどの合成樹脂製の接着受口部38bが設けられている。
【0037】
また、上記さや管37の縦方向延長部37b側の外周部分には、外周用防蟻構造部材として、防蟻剤を配合された薄板状の防蟻テープ41が貼設けられる。
また、さや管37の屋外36側の端部37dと配管38との間には、内周用防蟻構造部材として、さや管37の内周と配管38の外周との間に形成される隙間を埋めるための、止水性および防蟻性を有する合成ゴム製の円環状(略正円状)をした防蟻パッキン42が嵌合設置される。この防蟻パッキン42は、防蟻剤を配合されると共に、さや管37の内周よりも若干外径が大きく、配管38の外周よりも若干内径が小さい、略矩形断面のものとすることにより、上記した部分に対して無理嵌めし得るように構成されている。なお、防蟻パッキン42の嵌合方向の先端外周部分には、取付けの際のガイドとなるガイドテーパ部42aが設けられている。
【0038】
このような構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにする。
【0039】
即ち、上記さや管37に、基礎34を構成するコンクリート34bの養生時の荷重45によってさや管37の少なくとも屋外36側の端部37dが上下に潰れて扁平化するのを防止可能な扁平強度向上部46が(直接または間接的に)設けられるようにする。
【0040】
より具体的には、扁平強度向上部46を、さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に設けたフランジ部47とする。但し、このフランジ部47は、基礎34を構成するコンクリート34bの養生時の荷重45に耐え得る張出量48に形成されたものとする。
【0041】
ここで、フランジ部47は、中実で、さや管37の内周面に凹凸等を生じさせないものとする。フランジ部47は、さや管37の外周に沿い全周に連続して延びる等幅で環状のもの等とする。フランジ部47は、さや管37と同一肉厚に構成するのが好ましいが、さや管37よりも厚肉や薄肉にすることができる。フランジ部47は、基礎34の屋外36側の側面34cと平行に設けられる。或いは、フランジ部47は、さや管37の軸線に対して鉛直に設けられる。
【0042】
そして、フランジ部47の張出量48は、基礎34の深さに応じてそれぞれ設定されるようにする。即ち、フランジ部47は、基礎34の深さが大きくなる程、張出量48が大きくなるように設定される。例えば、基礎34が深くなると、図4に示すもののように、その分、さや管37の、縦方向延長部37bの鉛直方向の寸法49も大きくなることから、フランジ部47の張出量48は、さや管37の、縦方向延長部37bの鉛直方向の寸法49に基づいて強度計算を行うことによって設定する。
【0043】
なお、フランジ部47による扁平強度は、フランジ部47の肉厚によって設定することも可能である。即ち、フランジ部47を、(基礎34の深さに応じて異なる)コンクリート34bの養生時の荷重45に耐え得る肉厚に形成することもできる。この場合には、フランジ部47は、基礎34の深さが大きくなる程、肉厚が大きくなるように設定する。
【0044】
また、フランジ部47による扁平強度は、フランジ部47の張出量48と肉厚との両方によっても設定することができる。
【0045】
以上は、以下の各実施例についても共通である。
【0046】
そして、この実施例の場合、フランジ部47は、さや管37の屋外36側の端部37dに対して、1箇所のみ設けられている。また、このフランジ部47は、さや管37の屋外36側の端部37dに対して、一体に設けられている。
【0047】
このフランジ部47は、さや管37の射出成形またはブロー成形時に、さや管37と一体に成形することによって得ることができる。または、フランジ部47は、さや管37の射出成形またはブロー成形後にさや管37の屋外36側の端部37dを加熱して、拡管加工することによって得ることができる。
【0048】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0049】
上記した基礎貫通配管部構造33は、例えば、以下のようにして施工される。即ち、図2に示すように、敷地25の基礎34を設置する部分に鉄筋34aを配筋し、外周部分に防蟻テープ41を巻付けるように貼付けたさや管37を、ホルダ部材39を用いて鉄筋34aの所定の位置に固定した後に、基礎34のコンクリート34bを打設し、コンクリート34bを養生して硬化させることによって、基礎34と、この基礎34を貫通するさや管37とを設置する。そして、基礎34に設置されたさや管37に対し、上記した配管38を挿通し、さや管37と配管38との間に形成される隙間に屋外36側から防蟻パッキン42を嵌合することにより、止水処理や防蟻処理を施す。これによって、基礎貫通配管部構造33が施工される。
【0050】
そして、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0051】
扁平強度向上部46が、さや管37の扁平強度を効率的に向上させることによって、基礎34を構成するコンクリート34bの養生時の荷重45で、さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dが扁平化するのを防止することができる。以て、さや管37の全体の肉厚を減少させて、さや管37の重量低減や運搬性の向上を図ったり、さや管37の材料使用量を削減してコスト低下を図ったりすること等が可能となる。
【0052】
そして、さや管37が大きく扁平化すると、その内部に配管38を挿通できなくなり、また、さや管37が僅かでも扁平化すると、その内部に通される配管38との間の隙間が不均一になるため、さや管37内部の止水処理や防蟻処理のための防蟻パッキン42を嵌合する作業の作業性が低下するなどの問題が生じるが、この実施例によれば、扁平強度向上部46を設けてさや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍(コンクリート34bの養生時の荷重45の影響を最も受け易い部分)の扁平化を防止することによって、さや管37内部に配管38を挿通できなくなることや、さや管37内部の止水処理や防蟻処理の作業性が低下することを防止することが可能となる。
【0053】
また、扁平強度向上部46をフランジ部47とすることにより、フランジ部47の持つ補強効果を利用して効率的にさや管37の扁平強度を向上することができる。また、フランジ部47は、最も構成が簡単でしかも安価且つ効果的にさや管37の扁平強度を向上することができるので、扁平強度向上部46としては最適である。また、フランジ部47をさや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に設けることにより、コンクリート34bの養生時の荷重45の影響を最も受け易い当該部分の扁平強度を集中的に向上することができると共に、さや管37のフランジ部47を設けていない部分の形状に影響を与えないようにすることができる。
【0054】
そして、コンクリート34bの養生時の荷重45は、基礎34の深さによって異なるものであるため、扁平強度向上部46としてのフランジ部47を張出量48が一定のものとした場合には、例えば、基礎34が深い場合に、さや管37のフランジ部47を設けた部分に扁平強度の不足が生じるおそれがあるが、フランジ部47を、基礎34の深さに応じたコンクリート34bの養生時の荷重45に耐え得る(必要な扁平強度を発生可能な)張出量48を有するものとすることにより、さや管37のフランジ部47を設けた部分の扁平強度が不足することを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0055】
図5は、この発明の実施例2を示すものである。
【0056】
なお、上記実施例1と同様の構成については、同じ符号を付すことにより、説明を省略する。以下、上記実施例1と異なる部分について重点的に説明する。
【0057】
<構成>まず、構成について説明する。
【0058】
この実施例では、扁平強度向上部46を構成するフランジ部47が、さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に複数箇所設けられるようにしている。
【0059】
複数箇所のフランジ部47は、さや管37の横方向延長部37aに対し、管長方向へ所定の間隔を有して設けるようにする。
【0060】
そして、さや管37の(横方向延長部37aの)隣接するフランジ部47間の部分を、基礎34の屋外36側の側面34cの位置に合わせて長さ調整可能な長さ調整用切断可能部52とする。
【0061】
この実施例2の場合には、フランジ部47は、3箇所〜4箇所程度設けるようにしているが、2箇所以上であれば良い。隣接するフランジ部47間の間隔は、例えば、1〜2cm程度とすれば十分である。
【0062】
なお、扁平強度向上部46を構成するフランジ部47は、さや管37の管長方向の全域に亘り、上記と同様にして多数箇所設けるようにしても良い。
【0063】
そして、この実施例の場合、複数箇所のフランジ部47は、さや管37と一体に設けられている。これらの複数箇所のフランジ部47は、さや管37の射出成形時等に、さや管37と一体に成形することによって得ることができる。
【0064】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0065】
この実施例では、扁平強度向上部46を構成するフランジ部47を複数箇所設けることにより、複数箇所のフランジ部47の相乗効果によって、さや管37の扁平強度をより大きく向上させることができる。
【0066】
また、フランジ部47を複数箇所設けることにより、さや管37の(横方向延長部37aの)隣接するフランジ部47間の部分(長さ調整用切断可能部52)を切断することで、基礎34の屋外36側の側面34cの位置に合わせてさや管37の長さ調整を行うことが可能となる。これにより、少なくとも1つのフランジ部47が必ず残るようにしつつ、さや管37の長さ調整を行うことができ、長さ調整のために、フランジ部47が除去されてしまうことが防止される。
【実施例3】
【0067】
図6は、この発明の実施例3を示すものである。
【0068】
なお、上記実施例1および実施例2と同様の構成については、同じ符号を付すことにより、説明を省略する。以下、上記実施例1および実施例2と異なる部分について重点的に説明する。
【0069】
この実施例では、(フランジ部47が設けられていない図7と同様の)さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に対し、摺動可能に嵌合部材55が外嵌される。そして、この嵌合部材55の外周に、扁平強度向上部46を構成するフランジ部47が設けられるようにする。
【0070】
ここで、嵌合部材55は、さや管37とは、別体に形成された短い筒状部材(円筒状部材)とする。この嵌合部材55は、若干の抵抗を有してさや管37の上記部分の外周を摺動し得るようなものとする。そのために、少なくとも、嵌合部材55の内径を、さや管37の上記部分の外径と略同一にする。なお、このように嵌合部材55とさや管37との間に隙間が生じないようにすれば、嵌合部材55は、特にさや管37に対して接着する必要がなくなるので、施工上便宜が良い。なお、上記嵌合部材55は、フランジ部47とは別の扁平強度向上部46としても機能させることができる。
【0071】
そして、嵌合部材55の外周に対し、扁平強度向上部46を構成するフランジ部47は、1箇所または複数箇所設けることができる。この場合には、2箇所設けるようにしている。この1箇所または複数箇所のフランジ部47は、さや管37と一体に設けられている。このフランジ部47は、嵌合部材55の射出成形時等に、嵌合部材55と一体に成形することによって得ることができる。
【0072】
なお、この場合には、さや管37の屋外36側の端部37dにおける、嵌合部材55の屋外36側の端部から突出する部分が、上記した長さ調整用切断可能部52(図示せず)として切断されることになる。
【0073】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0074】
この実施例では、さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に外嵌された嵌合部材55によって、さや管37自体の構造を変更することなく、さや管37の当該部分の扁平強度を向上し、さや管37の当該部分が扁平化するのを防止することができる。また、上記嵌合部材55の外周に扁平強度向上部46としてフランジ部47を設けることにより、さや管37の当該部分の扁平強度を一層向上することができる。更に、規格の異なる嵌合部材55およびフランジ部47を複数種類用意しておくことによって、基礎34の深さの違いに対応させることができる。しかも、さや管37の少なくとも屋外36側の端部37dまたはその近傍の外周に嵌合部材55を摺動可能に外嵌することにより、さや管37の嵌合位置によって、基礎34の屋外36側の側面34cに合わせて、フランジ部47の設置位置を調整することが可能となる。なお、さや管37の屋外36側の端部37dにおける、嵌合部材55の屋外36側の端部から突出した部分については、長さ調整用切断可能部52として切断除去されることにとなる。
【0075】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
21 建物
33 基礎貫通配管部構造
34 基礎
34b コンクリート
36 屋外
37 さや管
37d 端部
37e 端部
38 配管
45 荷重
46 扁平強度向上部
47 フランジ部
48 張出量
55 嵌合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎を貫通するさや管が設けられ、該さや管の内部に配管を挿通させるようにした基礎貫通配管部構造において、
前記さや管に、前記基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重によってさや管の少なくとも屋外側の端部が扁平化するのを防止可能な扁平強度向上部が設けられたことを特徴とする基礎貫通配管部構造。
【請求項2】
前記扁平強度向上部が、前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に設けたフランジ部であり、該フランジ部が、基礎を構成するコンクリートの養生時の荷重に耐え得る張出量を有することを特徴とする請求項1記載の基礎貫通配管部構造。
【請求項3】
前記扁平強度向上部を構成するフランジ部が、前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に、複数箇所設けられたことを特徴とする請求項2記載の基礎貫通配管部構造。
【請求項4】
前記さや管の少なくとも屋外側の端部またはその近傍の外周に対し、摺動可能に嵌合部材が外嵌され、該嵌合部材の外周に、前記扁平強度向上部を構成するフランジ部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基礎貫通配管部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94672(P2011−94672A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247723(P2009−247723)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】