説明

塩素バイパス排ガスの処理装置及び処理方法

【課題】塩素バイパス排ガスを、セメント焼成系の熱損失を増加させることなく、セメント焼成系の安定運転を確保しながら、低コストで処理する。
【解決手段】セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部Gを冷却しながら抽気し、抽気ガスG1から塩素バイパスダストD6を回収する塩素バイパス設備1に付設され、回収された塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加しながらスラリー化する第1の溶解槽12と、第1の溶解槽で生成されたスラリーS1を固液分離する固液分離装置13と、固液分離装置で生成されたケークC1を再溶解させる第2の溶解槽14と、第2の溶解槽で生成された再溶解後のスラリーS2を塩素バイパス設備の排ガスG4に接触させ、排ガスの脱硫を行う脱硫塔11とを備える塩素バイパス排ガスの処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去する塩素バイパス設備から排出されるガスを処理する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造設備におけるプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となる塩素、硫黄、アルカリ等の中で、塩素が特に問題となることに着目し、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去する塩素バイパス設備が用いられている。
【0003】
塩素バイパス設備は、図3に示すように、セメントキルン52の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気するプローブ53と、プローブ53内に冷風を供給して抽気ガスG1を急冷する冷却ファン54と、抽気ガスG1に含まれるダストの粗粉D1を分離する分級機としてのサイクロン55と、サイクロン55から排出された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却する冷却器56と、冷却器56に冷風を供給する冷却ファン57と、冷却器56で冷却された抽気ガスG2中のダストの微粉D2を集塵するバグフィルタ58と、冷却器56及びバグフィルタ58から排出された微粉D2を回収するダストタンク59と、ダストタンク59からの微粉D2を水に溶解させる溶解槽60と、溶解槽60からのスラリーS1を固液分離して水洗ケークCと排水Lとに固液分離する固液分離装置61とを備え、固液分離された水洗ケークC及び排水処理後の残渣Rをキルン系へ戻し、排水Lを排水処理後に放流する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記塩素バイパス設備51では、バグフィルタ58の排ガスG3に多量のSO2が含まれるため、この排ガスG3をそのまま系外へ放出することができず、排気ファン(不図示)を介してキルン系に戻していた。この際、排ガスG3をセメントキルン52の排ガスを誘引するファン(IDF)の出口側に戻すと、煙突から大気に放出される排ガス中のSO2が増加するという問題がある。また、上記排ガスG3をセメントキルン52に付設されるプレヒータに戻すと、セメント焼成系の熱損失の増加、及びクリンカ生産量の低下を招くと共に、硫黄分の濃縮によるコーチングトラブルなどを引き起こすという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、塩素バイパス設備から排出されるガス(塩素バイパス排ガス)を、セメント焼成系の熱損失を増加させることなく、セメント焼成系の安定運転を確保しながら、低コストで処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、塩素バイパス排ガスの処理装置であって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を冷却しながら抽気し、該抽気ガスから塩素バイパスダストを回収する塩素バイパス設備に付設され、前記回収された塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加しながらスラリー化する第1の溶解槽と、該第1の溶解槽で生成されたスラリーを固液分離する固液分離装置と、該固液分離装置で生成されたケークを再溶解させる第2の溶解槽と、前記第2の溶解槽で生成された再溶解後のスラリーを該塩素バイパス設備の排ガスに接触させ、該排ガスの脱硫を行う脱硫塔とを備えることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加することで、塩素バイパスダストに含まれるCaCl2及びCaCO3をCa(OH)2に変化させ、このCa(OH)2を塩素バイパス設備の排ガスの脱硫に利用するため、塩素バイパスダストに含まれるカルシウム分を脱硫に有効に利用することができ、セメント焼成系の熱損失の増加を招くことなく、セメント焼成系の安定運転を確保しながら、低コストで塩素バイパス排ガスを処理することができる。
【0008】
また、固液分離装置においてスラリー中のカリウム分や塩素分を除去するため、再溶解したスラリーの塩素含有率が低く、スケールトラブルの原因となる石膏の溶解を最小限に抑えることができると共に、回収物の有効利用を阻害するシンゲナイト(K2Ca(SO42)等の生成を抑制することができる。
【0009】
さらに、また、CaCl2は水に溶解するため、Ca(OH)2に変化させなければ、後段で回収した工業塩に含まれることとなり、工業塩の純度を低下させる要因になるが、アルカリ剤との反応で水に溶解し難いCa(OH)2に変化させているため、工業塩の純度の低下を防止することもできる。
【0010】
また、アルカリ剤の添加により、塩素バイパスダストに含まれる重金属のうち鉛(Pb)とセレン(Se)が、ろ液側に多く含まれることなるため、後段で硫化剤等を用いて鉛を回収することができ、セレンは回収した工業塩に含まれることとなっても問題はないため、塩素バイパスダストから効率よく鉛及びセレンを除去することができる。
【0011】
上記塩素バイパス排ガスの処理装置において、前記脱硫塔から排出されたスラリーを固液分離する第2の固液分離装置と、該第2の固液分離装置で固液分離されたろ液を前記第2の溶解槽に供給する供給手段とを備えることができる。これによって、固液分離されたろ液を循環使用して有効利用することができると共に、ケーク側に石膏を回収することができる。
【0012】
上記塩素バイパス排ガスの処理装置において、前記第1の固液分離装置で固液分離されたろ液に硫化剤及びpH調整剤を添加し、該ろ液に含まれる重金属を不溶化させる調整槽を備えることができる。これによって、鉛等を不溶化させて後段で効率よく回収することができる。
【0013】
上記塩素バイパス排ガスの処理装置において、前記調整槽から排出されたろ液を固液分離する第3の固液分離装置を備えることができる。これによって、鉛等の重金属をケーク側に回収することができる。
【0014】
上記塩素バイパス排ガスの処理装置において、前記第3の固液分離装置から排出されたろ液から塩を回収する塩回収装置を備えることができ、さらに、前記抽気ガスから回収した熱を前記塩回収装置における塩回収に利用するガスガスヒータを備えることができる。これにより、塩素バイパス排ガスの保有する熱を有効利用しながら塩を回収することができる。
【0015】
前記ガスガスヒータは、前記抽気ガスを集塵する高温集塵機の排ガスから熱回収することができ、除塵した高温ガスから熱回収することで熱効率が向上する。
【0016】
また、本発明は、塩素バイパス排ガスの処理方法であって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を冷却しながら抽気し、該抽気ガスから塩素バイパスダストを回収する塩素バイパス設備において、前記回収された塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加しながらスラリー化した後、該スラリーを脱水し、得られたケークを再溶解させ、該ケークが再溶解したスラリーを該塩素バイパス設備の排ガスに接触させ、該排ガスの脱硫を行うことを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、塩素バイパスダストに含まれるカルシウム分を脱硫に有効に利用して塩素バイパス排ガスを処理することができ、スケールトラブルの原因となる石膏の溶解を最小限に抑えることができると共に、回収物の有効利用を阻害するシンゲナイト(K2Ca(SO42)等の生成を抑制することができ、回収する工業塩の純度の低下を防止することもでき、塩素バイパスダストから効率よく鉛及びセレンを除去することもできる。
【0017】
上記塩素バイパス排ガスの処理方法において、前記スラリーのpHを13以上14以下に調整することができ、このpH領域で効率よく塩素バイパスダストに含まれるCaCl2及びCaCO3をCa(OH)2に変化させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、塩素バイパス排ガスを、セメント焼成系の熱損失を増加させることなく、セメント焼成系の安定運転を確保しながら、低コストで処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる塩素バイパス排ガスの処理装置の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明にかかる塩素バイパス排ガスの処理装置の第2の実施形態を示す全体構成図である。
【図3】従来の塩素バイパス設備を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる塩素バイパス排ガスの処理装置の第1の実施形態を設けた塩素バイパス設備を示し、この塩素バイパス設備1は、セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部Gを冷却ファン4、5からの冷風で冷却しながら抽気するプローブ3と、プローブ3で抽気した抽気ガスG1に含まれるダストの粗粉D1を分離するサイクロン6と、サイクロン6から排出された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却する冷却器7と、冷却器7からの抽気ガスG3を集塵するバグフィルタ8と、バグフィルタ8からファン10を介して供給された排ガスG4の脱硫処理を行う脱硫塔11と、冷却器7及びバグフィルタ8から排出されたダストD5(D3+D4)を貯留するダストタンク9と、ダストタンク9から排出されたダスト(塩素バイパスダスト)D6にアルカリ剤を添加しながらスラリー化する第1の溶解槽12と、第1の溶解槽12から排出されたスラリーS1を固液分離する第1の固液分離装置13と、脱硫塔11で発生したスラリーS3を固液分離する第2の固液分離装置15と、第1の固液分離装置13から排出されたケークC1を第2の固液分離装置15からのろ液L2(循環水CW)に溶解させる第2の溶解槽14と、第1の固液分離装置13から排出されたろ液L1に硫化剤やpH調整剤を添加する調整槽16と、調整槽16から排出されたろ液L3を固液分離する第3の固液分離装置17等で構成される。プローブ3〜ダストタンク9の構成については、2基の冷却ファン4、5で燃焼ガスGを冷却する点を除き、従来の塩素バイパス設備と同様の構成であるため、詳細説明を省略する。
【0022】
第1の溶解槽12は、ダストタンク9からのダストD6を水(又は温水)を用いてスラリー化すると共に、NaOH等のアルカリ剤を添加してダストD6に含まれるCaCl2及びCaCO3をCa(OH)2に変化させるために設けられる。
【0023】
第1の固液分離装置13は、第1の溶解槽12から排出されたスラリーS1を固液分離するために備えられる。固液分離されたケークC1は第2の溶解槽14へ、ろ液L1は調整槽16へ供給される。
【0024】
第2の溶解槽14は、第1の固液分離装置13から排出されたケークC1を再溶解させるために備えられ、ケークC1を循環水CWに溶解させたスラリーS2は、脱硫塔11においてバグフィルタ8の排ガスG4の脱硫に利用される。
【0025】
脱硫塔11は、バグフィルタ8からファン10を介して供給された排ガスG4を第2の溶解槽14から供給されたスラリーS2を利用して脱硫するために備えられる。脱硫によって生じた二水石膏を含むスラリーS3は第2の固液分離装置15へ、脱硫された排ガスG5は、セメントキルン2の排ガス系へ戻される。
【0026】
第2の固液分離装置15は、脱硫塔11から供給されたスラリーS3を固液分離するために備えられ、固液分離されたろ液L2は、循環水CWとして第2の溶解槽14で再利用される。一方、固液分離されたケークC2側に二水石膏Gyが回収される。
【0027】
調整槽16は、第1の固液分離装置13から排出されたろ液L1にNaSH等の硫化剤やpH調整剤を添加し、鉛等の重金属を不溶化させるために備えられる。pH調整剤として、NaOH、Ca(OH)2、CaO、Mg(OH)2、さらに硫酸等を用いることができる。
【0028】
第3の固液分離装置17は、調整槽16から排出されたろ液L3を固液分離するために備えられ、固液分離されたろ液L4から塩回収装置によって工業塩を回収してもよく、排水処理することもできる。また、固液分離されたケークC3側に鉛等の重金属が回収される。
【0029】
次に、上記構成を有する塩素バイパス設備1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0030】
セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からの燃焼ガスの一部Gをプローブ3によって抽気しながら、冷却ファン4、5からの冷風によって冷却する。これによって、塩素化合物の微結晶が生成される。この塩素化合物の微結晶は、抽気ガスG1に含まれるダストの微粉側に偏在しているため、サイクロン6で分級した粗粉D1をセメントキルン2に付設されたプレヒータ等にセメント原料として戻す。
【0031】
サイクロン6によって分離された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却器7に導入し、抽気ガスG2と媒体との熱交換を行う。熱交換によって冷却された抽気ガスG3をバグフィルタ8に導入し、バグフィルタ8において抽気ガスG3に含まれるダストD4を回収する。バグフィルタ8で回収したダストD4は、冷却器7から排出されたダストD3と共にダストD5としてダストタンク9に一旦貯留し、第1の溶解槽12にダストD6として導入する。
【0032】
第1の溶解槽12に導入されたダストD6は、第1の溶解槽12内において水(又は温水)及びNaOH等のアルカリ剤と混合されてスラリーS1が生成される。ここで、第1の溶解槽12内のpHを13.5±0.5に調整する。これにより、ダストD6に含まれるCaCl2及びCaCO3がアルカリ剤と反応してCa(OH)2が生成され、これらのカルシウム分を後段の脱硫塔11における脱硫に有効に利用することができる。尚、アルカリ剤には、NaOHの他、KOHなどを用いることもできる。
【0033】
また、CaCl2は水に溶解するため、上記アルカリ剤と反応させてCa(OH)2に変化させなければ、後段の第3の固液分離装置17のろ液L4に含まれ、回収した工業塩に含まれることとなる。その結果、工業塩の純度を低下させることとなるため、上記アルカリ剤との反応は、工業塩の純度の低下を防止するという効果も奏する。
【0034】
さらに、上記アルカリ剤の添加により、ダストD6に含まれる重金属のうち鉛(Pb)とセレン(Se)が、ろ液L1とろ液L2に各々図1に示す割合で分離され、調整槽16側に多く供給されるため、後段の調整槽16及び第3の固液分離装置17を介して鉛を効率よく回収することができる。尚、セレンは調整槽16及び第3の固液分離装置17によって回収されることは少ないが、回収した工業塩に含まれることとなっても問題はないため、ダストD6から効率よく除去することができる。一方、ケークC1に含まれるカドミウム、銅、亜鉛、鉛、セレン等の不溶金属及びフッ素化合物は、最終的に第2の固液分離装置15において石膏Gyと共に系外に排出される。
【0035】
次に、第1の溶解槽12から排出されたスラリーS1を第1の固液分離装置13によって固液分離し、スラリーS1を固液分離しながら固液分離して得られるケークを水洗して塩素分を除去する。塩素分が除去されたケークC1を第2の溶解槽14へ供給して再溶解させたスラリーS2を脱硫塔11に供給して脱硫に利用する。尚、脱硫後の排ガスG5は、セメントキルン2の排ガス系へ導入する。
【0036】
ここで、上記再溶解したスラリーS2中に存在するCa(OH)2が、脱硫塔11でバグフィルタ8の排ガスG4に含まれるSO2と反応して二水石膏(CaSO4・2H2O)へと転換される。この際、第1の固液分離装置13においてカリウム分や塩素分を除去したため、ケークC1を再溶解したスラリーS2の塩素含有率が低く、スケールトラブルの原因となる石膏の溶解を最小限に抑えることができると共に、シンゲナイト(K2Ca(SO42)の生成を抑制することができる。尚、シンゲナイトがセメントに添加されると、セメント品質、特に強度に影響を及ぼすため生成を抑制しなければならない。
【0037】
次に、第2の固液分離装置15によって、脱硫塔11から排出されたスラリーS3を固液分離してケークC2側に得られる二水石膏Gyをセメントミルでセメントクリンカと共に粉砕してセメント製造に供することができる。一方、分離されたろ液L2を循環水CWとして第2の溶解槽14でのスラリーS2の生成に再利用することができる。
【0038】
一方、第1の固液分離装置13によって固液分離されたろ液L1を調整槽16に供給し、ろ液L1にNaSH等の硫化剤やpH調整剤を添加し、鉛等の重金属を沈殿化させ、第3の固液分離装置17で固液分離してケークC3側に重金属を回収する。尚、必要であれば、ろ液L3を第3の固液分離装置17に供給する前にろ過助剤を添加する。また、第3の固液分離装置17で固液分離されたろ液L4から工業塩を回収してもよく、ろ液L4を排水処理後に放流してもよい。工業塩を回収した場合には、上述のようにCaCl2をCa(OH)2に変化させたため、低カルシウム濃度でKCl含有率の高い工業塩を得ることができる。
【0039】
次に、本発明にかかる塩素バイパス排ガスの処理装置の第2の実施形態について、図2を参照しながら説明する。
【0040】
この塩素バイパス設備31は、塩素バイパス設備1の冷却器7及びバグフィルタ8に代えて高温集塵機32を備え、高温集塵機32の後段にガスガスヒータ33を配置し、ガスガスヒータ33で昇温された大気を塩回収に利用することを特徴とする。塩素バイパス設備31の他の構成要素については、図1に示した塩素バイパス設備1と同様であるため、同一の参照番号を付してそれらについての説明を省略する。
【0041】
高温集塵機32は、例えば、セラミックフィルタを備え、900℃程度までの耐熱性を有する耐熱型のバグフィルタや耐熱性を有する高温処理タイプの電気集塵機であって、サイクロン6から排出された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却せずに集塵し、集塵したダスト(塩素バイパスダスト)D3をダストタンク9に供給する。
【0042】
ガスガスヒータ33は、高温集塵機32から排出された抽気ガスG3によって周囲から取り入れた空気A1を加熱し、ガスガスヒータ33で加熱された高温空気A2を後段の塩回収に利用するために備えられる。また、空気A2との熱交換により、脱硫塔11で脱硫する排ガスG4の温度の調整が可能となり、固結の発生を抑制することができる。さらに、ガスガスヒータ33で回収した熱を脱硫塔11の排ガスG5の昇温に利用してもよい。
【0043】
上記構成により、サイクロン6によって分離された微粉D2を含む抽気ガスG2を高温集塵機32に導入し、高温集塵機32において抽気ガスG2に含まれるダストD2を回収し、高温集塵機32から排出されたダストD3は、ダストタンク9に一旦貯留し、第1の溶解槽12にダストD4として導入する。また、周囲から取り入れた空気A1及び高温集塵機32の排ガスG3は、ガスガスヒータ33に導入され、両者間で熱交換がなされた後、高温空気A2は、塩回収に利用され、ガスガスヒータ33から排出された排ガスG4は、脱硫塔11に導入後脱硫される。その他のフローは塩素バイパス設備1の場合と同様である。
【0044】
以上のように、本実施の形態における塩素バイパス排ガスの処理装置は、第1の実施形態と同様の効果を奏すると共に、塩素バイパス排ガスの顕熱を塩回収に利用することで、塩回収のコストを低減することなどが可能となる。
【0045】
また、上記実施の形態においては、溶解槽12にダストD6を溶解させる場合について説明したが、カルシウム分が不足する場合には、サイクロン6で分離した粗粉D1を分取し、溶解槽12や溶解槽14に溶解させてカルシウム分を補うこともできる。
【符号の説明】
【0046】
1 塩素バイパス設備
2 セメントキルン
3 プローブ
4、5 冷却ファン
6 サイクロン
7 冷却器
8 バグフィルタ
9 ダストタンク
10 ファン
11 脱硫塔
12 第1の溶解槽
13 第1の固液分離装置
14 第2の溶解槽
15 第2の固液分離装置
16 調整槽
17 第3の固液分離装置
31 塩素バイパス設備
32 高温集塵機
33 ガスガスヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を冷却しながら抽気し、該抽気ガスから塩素バイパスダストを回収する塩素バイパス設備に付設され、
前記回収された塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加しながらスラリー化する第1の溶解槽と、
該第1の溶解槽で生成されたスラリーを固液分離する固液分離装置と、
該固液分離装置で生成されたケークを再溶解させる第2の溶解槽と、
前記第2の溶解槽で生成された再溶解後のスラリーを該塩素バイパス設備の排ガスに接触させ、該排ガスの脱硫を行う脱硫塔とを備えることを特徴とする塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項2】
前記脱硫塔から排出されたスラリーを固液分離する第2の固液分離装置と、該第2の固液分離装置で固液分離されたろ液を前記第2の溶解槽に供給する供給手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項3】
前記第1の固液分離装置で固液分離されたろ液に硫化剤及びpH調整剤を添加し、該ろ液に含まれる重金属を不溶化させる調整槽を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項4】
前記調整槽から排出されたろ液を固液分離する第3の固液分離装置を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項5】
前記第3の固液分離装置から排出されたろ液から塩を回収する塩回収装置を備えることを特徴とする請求項4に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項6】
前記抽気ガスから回収した熱を前記塩回収装置における塩回収に利用するガスガスヒータを備えることを特徴とする請求項5に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項7】
前記ガスガスヒータは、前記抽気ガスを集塵する高温集塵機の排ガスから熱回収することを特徴とする請求項6に記載の塩素バイパス排ガスの処理装置。
【請求項8】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を冷却しながら抽気し、該抽気ガスから塩素バイパスダストを回収する塩素バイパス設備において、
前記回収された塩素バイパスダストにアルカリ剤を添加しながらスラリー化した後、該スラリーを脱水し、
得られたケークを再溶解させ、
該ケークが再溶解したスラリーを該塩素バイパス設備の排ガスに接触させ、該排ガスの脱硫を行うことを特徴とする塩素バイパス排ガスの処理方法。
【請求項9】
前記スラリーのpHを13以上14以下に調整することを特徴とする請求項8に記載の塩素バイパス排ガスの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−187458(P2012−187458A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51103(P2011−51103)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】