説明

壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁

【課題】十分な防振性能を確保できる壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁を提供すること。
【解決手段】本発明の壁パネル接合構造は、地中連続壁1を構成する壁パネルを接合するものである。各壁パネルは、鉄筋籠50の地盤G側に取り付けられる枠体60と、枠体60の一端60Aおよび他端60Bがはみ出すように枠体60に取り付けられた防振ゴム層20と、防振ゴム層20の一端60A側へはみ出した部分の裏面に接合され、枠体60の一端60A側の小口部分に取り付けられる第1防振ゴム64と、防振ゴム層20の他端60B側へはみ出した部分の裏面に接合され、枠体60の他端60B側の小口部分に取り付けられる第2防振ゴム66とを備える。先行の壁パネルXの第1防振ゴム64と、先行の壁パネルに隣接する後行の壁パネルの第2防振ゴム66とが互いに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁に関し、特に、十分な防振性能を確保できる壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路や鉄道等の交通路に近接して構築される地下構造物には、交通路を通行する車両からの振動や騒音等の伝達を防止するために、当該地下構造物と一体的に構成される地中連続壁に防振構造が設けられている。このような防振構造としては、例えば特許文献1に示すように、地中連続壁の外壁側表面に防振材が取り付けられたものがある。
【特許文献1】特開平3−257226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、地中連続壁は、複数の壁パネルを隣接して設置することにより構成されるが、特許文献1に示す防振構造では、壁パネル同士の接合部において、各壁パネルに取り付けられた防振材同士が正しく接合しない場合がある。この場合には、防振材間の隙間部分から、車両の振動等が地下構造物側へ伝達され、地下構造物の防振性能が不十分になるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、十分な防振性能を確保できる壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、地中連続壁を構成する壁パネルを接合する壁パネル接合構造であって、各壁パネルは、パネル本体と、このパネル本体の外壁側表面を覆うように取り付けられる防振材とを備え、前記防振材の壁幅方向端部が、隣接する壁パネルとの間の接合部内に入り込んでいることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、防振材の壁幅方向端部が隣接する壁パネルとの間の接合部内に入り込んでいるため、この接合部内に入り込んだ防振材同士が当接し、壁パネル間の接合部に隙間が生じるのを防止できる。このため、壁パネルの接続部から、外部の振動等が伝達するのを確実に防止して、十分な防振性能を確保できる。
【0007】
ここで、前記防振材は、前記パネル本体の外壁側表面に取り付けられた表面側防振材と、この表面側防振材に接合されるとともに、前記パネル本体の壁幅方向一端側の小口部分に取り付けられる第1防振材と、前記表面側防振材に接合されるとともに、前記パネル本体の壁幅方向他端側の小口部分に取り付けられる第2防振材とを備え、一の壁パネルの前記第1防振材と、この壁パネルに隣接する壁パネルの前記第2防振材とが互いに当接する構成としてもよい。
【0008】
このような構成によれば、一の壁パネルの第1防振材と、この壁パネルに隣接する壁パネルの第2防振材とが互いに当接するため、各壁パネルに取り付けられた表面側防振材同士が、第1防振材および第2防振材を介して確実に連結される。このため、一方の壁パネルと他方の壁パネルとの接続部から、外部の振動等が伝達するのを確実に防止でき、十分な防振性能を確保できる。
【0009】
ここで、前記第2防振材は、隣接する壁パネルの前記第1防振材により押圧されて弾性変形し、前記第1防振材に付勢状態で当接することとしてもよい。このような構成によれば、第1防振材および第2防振材をより一層確実に当接させることができ、防振性能が高まる。
【0010】
本発明は、パネル本体と、このパネル本体の外壁側表面を覆うように取り付けられるともに、壁幅方向端部が壁幅方向両端の小口部分へと回り込むように構成された防振材とを備える壁パネル同士を接合してなる地中連続壁の構築方法であって、地盤を掘削して掘削孔を形成し、この掘削孔に止水板を保持する止水板保持型枠を取り付け、前記止水板保持型枠によって仕切られた前記掘削孔の中に、前記防振材が取り付けられた鉄筋籠を建て込み、この鉄筋籠が建て込まれた掘削孔の中にコンクリートを打設し、前記コンクリートが硬化した後、硬化したコンクリートから前記止水板保持型枠を引き剥がして、硬化したコンクリートから前記止水板が突出した先行の壁パネルを形成し、この先行の壁パネルの小口部分へ回り込んだ前記防振材と、前記先行の壁パネルに隣接する後行の壁パネルの小口部分へ回り込んだ前記防振材とを互いに当接させるように、前記防振材が取り付けられた鉄筋籠を前記掘削孔の中に建て込み、この状態で、前記掘削孔の中にコンクリートを打設して、前記先行の壁パネルに接合された後行の壁パネルを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の地中連続壁の壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、および地中連続壁によれば、十分な防振性能を確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る地中連続壁を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る地中連続壁1が一体的に構築された地下構造物2を部分的に示す縦断面図である。図1に示すように、地下構造物2は、地盤G内に構築され、この地下構造物2の地盤G側には、地下構造物2に一体的に形成された地中連続壁1が設けられている。地中連続壁1は、地中壁体10と、地中壁体10の地盤G側に取り付けられた防振ゴム層20とを備えている。この地中連続壁1では、地盤G側に設けられた防振ゴム20が外部の振動や騒音を吸収するため、これらの振動等が地下構造物2側へ伝達するのを抑えている。
【0013】
次に、地中連続壁1を構築する手順について説明する。
図2〜図5は、地中連続壁1を構築する手順を説明するための平面図である。また、図6は、図5のA部を拡大して示す平面図である。なお、図2〜図5では、図中下側が地下構造物2側であり、図中上側が地盤G側である。図2に示すように、まず、地盤Gを掘削して掘削孔30を形成し、この掘削孔30に例えば2枚の止水板40を保持する止水板保持型枠42を設置する。なお、止水板40は、例えば、波形状で金属製の板材や樹脂製の板材等である。次に、図3に示すように、止水板保持型枠42によって仕切られた掘削孔30の中に鉄筋籠50を建て込む。
【0014】
ここで、鉄筋籠50の構成について説明する。
図5に示すように、鉄筋籠50は、内側にH型鋼54が取り付けられた鉄筋籠本体52と、鉄筋籠本体52における地盤G側(図5中の上側)に取り付けられる防振ゴムパネル56とを備えている。防振ゴムパネル56は、鉄筋籠本体52に取り付けられる枠体60と、枠体60からその一端60A(枠体の右端)および他端60B(枠体の左端)がはみ出すように枠体60の表面に取り付けられる表面側防振材としての防振ゴム層20とを備えている。防振ゴム層20は、地盤Gに当接している。なお、防振ゴム層20を、複数の防振ゴムシートを貼り合わせて層状に構成する場合には、例えば、2枚ゴムシート20A,20Bの位置がずれるように貼り合わせて、隣接するゴムシート20A,20B間の隙間が生じないようにするのが好ましい。
【0015】
また、図6により詳細に示すように、防振ゴムパネル56は、第1防振ゴム64と、第2防振ゴム66とを備えている。第1防振ゴム64は、防振ゴム層20の枠体60よりも一端60A側へはみ出した部分の裏面に接合されるとともに、枠体60の小口部分に取り付けられている。また、第2防振ゴム66は、枠体60の他端60B側の小口部分に取り付けられている。より詳細には、第2防振ゴム66は、その基端側66Aが、防振ゴム層20における、枠体60から他端60B側へはみ出した部分の裏面に接合され、その途中で略90°曲折している。また、第2防振ゴム66は、防振ゴム層20や第1防振ゴム64よりも柔らかな材料で構成されている。このため、図6に示すように、防振ゴムパネル56を隣接して配置すると、第2防振ゴム66の先端側66Bは、隣接する防振ゴムパネル56の第1防振ゴム64により押圧されて弾性変形し、第1防振ゴム64に付勢状態で当接する。
【0016】
図3に戻って、前述したように鉄筋籠50を建て込んだ後、図4に示すように、止水板保持型枠42によって仕切られた掘削孔30の中にコンクリートを打設する。そして、このコンクリートが硬化したら、図4中の矢印Bの方向に、硬化したコンクリートから止水板保持型枠42を引き剥がす。このようにして、小口部分から止水板40が突出した先行の壁パネルXを形成する。このように、図4中の矢印Bの方向に止水板保持型枠42を引き剥がしているため、防振ゴム層20や第1防振ゴム64は破損することがない。なお、このようにして形成された、鉄筋籠本体52および枠体60が埋設されたコンクリート製の壁体が、請求項のパネル本体に相当する。
【0017】
次に、図5に示すように、先行の壁パネルXを形成した場合と同様にして、先行の壁パネルXに接合される後行の壁パネルYを形成する。まず、止水板保持型枠(図示略)を取り付けた後、掘削孔30に鉄筋籠50を建て込み、この建て込んだ鉄筋籠50を先行の壁パネルXに当接させる。この際、図6に示すように、第2防振ゴム66の先端側66Bを先行の壁パネルXの第1防振ゴム64に当接させる。これにより、第1防振ゴム64および第2防振ゴム66を介して、先行の壁パネルXの防振ゴム層20と、後行の壁パネルYの防振ゴム層20とを確実に接合する。この状態で、前記止水板保持型枠によって仕切られた掘削孔30の中にコンクリートを打設し硬化させる。これにより、継ぎ目部分に止水板40が埋設されるとともに、先行の壁パネルXに接合された後行の壁パネルYを形成する。このようにして、先行の壁パネルXと後行の壁パネルYとを接合する壁パネル接合構造を構築する。そして、後行の壁パネルYを連続的に施工することにより、地中連続壁1を構築する。
【0018】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)先行の壁パネルXの防振ゴム層20と後行の壁パネルYの防振ゴム層20とを、第1防振ゴム64および第2防振ゴム66を介して確実に接合したので、先行の壁パネルXと後行の壁パネルYとの接続部分から、外部の振動や騒音等が地下構造物2側へ伝達するのを確実に防止でき、十分な防振、防音性能を確保できる。
【0019】
(2)従来の地中連続壁は、地盤に形成した掘削孔にパイプを設けた後、パイプによって仕切られた掘削孔の中に地盤側に防振材が取り付けられた鉄筋籠等のパネル本体を建て込み、次に、コンクリートを打設して先行の壁パネルを形成した後、パイプを上方へと引き抜いてから、先行の壁パネルと同様の手順で先行の壁パネルに接合する後行の壁パネルを形成することにより構築されていた。しかしながら、この工法をそのまま本発明に適用すると、パイプを上方へと引き抜く際に防振材が破損してしまい、先行の壁パネルと後行の壁パネルの接続部の隙間により防振性能が低下するという問題がある。これに対して、本実施形態では、止水板保持型枠42を図4中の矢印Bの方向に引き剥がすようにしているため、従来のように、防振ゴム層20や第1防振ゴム64の破損が生じることがなく、十分な防振性能を有する壁パネル接合構造を構築できる。
【0020】
(3)先行の壁パネルXと後行の壁パネルYとの接続部分に止水板40を埋設したので、この接続部分から地盤Gの水等が浸入するのを防止できる。さらに、止水板40として、波形形状等の凹凸のある部材を採用すること等により、先行の壁パネルXと後行の壁パネルYとの接続をより一層強固にして、先行の壁パネルXと後行の壁パネルYとの間で応力を確実に伝達できる。
【0021】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態では、防振材としてゴムを用いたが、例えば、他の合成樹脂等を用いてもよく、要するに、防振する機能があれば、その材料は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る地中連続壁を備える地下構造物を部分的に示す横断面図である。
【図2】前記地中連続壁を構築する手順を説明するための平面図(その1)である。
【図3】前記地中連続壁を構築する手順を説明するための平面図(その2)である。
【図4】前記地中連続壁を構築する手順を説明するための平面図(その3)である。
【図5】前記地中連続壁を構築する手順を説明するための平面図(その4)である。
【図6】図5のA部を拡大して示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 地中連続壁
2 地下構造物
20 防振ゴム層(表面側防振材)
30 掘削孔
40 止水板
42 止水板保持型枠
50 鉄筋籠
52 鉄筋籠本体
56 防振ゴムパネル
64 第1防振ゴム(第1防振材)
66 第2防振ゴム(第2防振材)
G 地盤
X 先行の壁パネル
Y 後行の壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中連続壁を構成する壁パネルを接合する壁パネル接合構造であって、
各壁パネルは、パネル本体と、このパネル本体の外壁側表面を覆うように取り付けられる防振材とを備え、前記防振材の壁幅方向端部が、隣接する壁パネルとの間の接合部内に入り込んでいることを特徴とする壁パネル接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の壁パネル接合構造において、
前記防振材は、
前記パネル本体の外壁側表面に取り付けられた表面側防振材と、
この表面側防振材に接合されるとともに、前記パネル本体の壁幅方向一端側の小口部分に取り付けられる第1防振材と、
前記表面側防振材に接合されるとともに、前記パネル本体の壁幅方向他端側の小口部分に取り付けられる第2防振材とを備え、
一の壁パネルの前記第1防振材と、この壁パネルの前記一端側に隣接する壁パネルの前記第2防振材とが互いに当接することを特徴とする壁パネル接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の壁パネル接合構造において、
前記第2防振材は、隣接する壁パネルの前記第1防振材により押圧されて弾性変形し、前記第1防振材に付勢状態で当接することを特徴とする壁パネル接合構造。
【請求項4】
パネル本体と、このパネル本体の外壁側表面を覆うように取り付けられるともに、壁幅方向端部が壁幅方向両端の小口部分へと回り込むように構成された防振材とを備える壁パネル同士を接合してなる地中連続壁の構築方法であって、
地盤を掘削して掘削孔を形成し、
この掘削孔に止水板を保持する止水板保持型枠を取り付け、
前記止水板保持型枠によって仕切られた前記掘削孔の中に、前記防振材が取り付けられた鉄筋籠を建て込み、
この鉄筋籠が建て込まれた掘削孔の中にコンクリートを打設し、
前記コンクリートが硬化した後、硬化したコンクリートから前記止水板保持型枠を引き剥がして、硬化したコンクリートから前記止水板が突出した先行の壁パネルを形成し、
この先行の壁パネルの小口部分へ回り込んだ前記防振材と、前記先行の壁パネルに隣接する後行の壁パネルの小口部分へ回り込んだ前記防振材とを互いに当接させるように、前記防振材が取り付けられた鉄筋籠を前記掘削孔の中に建て込み、
この状態で、前記掘削孔の中にコンクリートを打設して、前記先行の壁パネルに接合された後行の壁パネルを形成することを特徴とする地中連続壁の構築方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の壁パネル接合構造を備える地中連続壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−22493(P2006−22493A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199296(P2004−199296)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】