説明

変色を防止したクルミ粥の製造方法

【課題】苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色を防止する方法、および変色が防止されたクルミを用いたクルミ粥の製造方法を提供する。
【解決手段】苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色の原因になるクルミの内殻に存在するタンニン酸を中和させる。これにより、クルミ本来の味は維持しながらも、調理時におけるクルミの変色を最小化することができる。このクルミを用いて官能的に改善された品質のクルミ粥を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色を防止する方法、変色が防止されたクルミ粥の製造方法、および前記方法により製造されたクルミ粥に関し、より詳しくは、苛性ソーダを添加してクルミの内殻のタンニン酸成分を中和させることで、調理時におけるクルミの変色を防止する方法、前記方法により本来の味は維持しながら色相での官能特性が向上したクルミ粥の製造方法、及び前記方法により製造されたクルミ粥に関する。
【背景技術】
【0002】
クルミは、外殻及び内殻からなり、多くのシワを有するため、内殻の完全な除去に困難さがある。クルミの内殻には少量のタンニン酸があるが、クルミ殻を製造する際、完全に除去されない内殻のタンニン酸がクルミに含まれているCa2+と反応して塩を作り、このような塩がクルミ粥の色相を暗くする原因になると知られている。よって、加熱と共にクルミ粥の色相が灰色を帯びて暗くなり、クルミ粥の官能的品質が低下するという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明は、調理時におけるクルミの変色を発生させるタンニン酸の作用を抑制するための方法を鋭意研究した結果、粥を製造するためにクルミを投入する前にクルミを苛性ソーダで処理し、処理されたクルミで粥を製造すれば、クルミ粥の本来の味は維持しながら灰色への変色が防止されることで、官能的品質が確保されたクルミ粥を製造できることを、官能評価及び色度分析により確認して、本発明の完成に至ることになった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色を防止する方法、変色が防止されたクルミ粥の製造方法、及び前記方法により製造されたクルミ粥を提供する。本発明の特長は、クルミを加熱して調理する前に苛性ソーダを添加することで、残っている内殻に存在するタンニン酸を中和させてタンニン酸の塩化を防止し、調理時におけるクルミの変色を防止する。このような効果は、本発明により製造されたクルミ粥に対する専門の官能検査員による繰返された官能評価の結果及び色相分析により確認された。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色を防止する方法、変色が防止されたクルミ粥の製造方法、及び前記方法により製造されたクルミ粥に関するもので、苛性ソーダを添加して、調理時におけるクルミの変色の原因になるクルミの内殻に存在するタンニン酸を中和させる。これにより、クルミ本来の味は維持しながらも、調理時におけるクルミの変色を最小化することで、官能的に改善された品質のクルミ粥を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0007】
本発明の調理時におけるクルミの変色を防止する方法は、外殻が除去されたクルミに苛性ソーダを添加することによりなされる。確実な効果を果たすには、苛性ソーダと共に水を添加してクルミを粉砕するのが好ましい。このとき、苛性ソーダの添加量によって調理時のクルミの変色も大きく減少されてクルミ固有の乳白色を帯びるようになるが、添加量が一定水準以上になれば、クルミの味を変質させるため、外殻のみを除去したクルミ10gを基準として0.2〜0.6g程度であるのが好ましい。このような値は内殻を全く除去しないクルミを基準としたものなので、内殻の残存程度によって苛性ソーダの添加量を流動的に変化させるべきである。
【0008】
本発明の変色が防止されたクルミ粥の製造方法は、次の段階を含む。
第一の段階:外殻が除去されたクルミを苛性ソーダ及び水と混合して粉砕する工程;及び、
第二の段階:粉砕されたクルミ液を米やもち米及び水と共に混合して、攪拌しながら加熱してクルミ粥を製造する工程。
【0009】
第一の段階において、クルミ:苛性ソーダ:水の混合比率は、10重量部:0.2〜0.6重量部:50〜200重量部であるのが好ましい。
【0010】
また、第二の段階において、粉砕されたクルミ液:米やもち米:水の混合比率は、10〜30重量部:30〜100重量部:50〜200重量部であり、好ましくは10〜30重量部:50〜70重量部:70〜120重量部であり、より好ましくは20重量部:65重量部:95重量部である。混合比率の調節なしも変色されないクルミ粥の製造は可能であるが、このような混合比率の調節によれば、官能面において好ましい。
【0011】
クルミ粥に入れる米やもち米は、水に一定時間浸漬させた後に使用するのが好ましい。
【0012】
また、第二の段階において、粉砕されたクルミ液、米やもち米及び水の混合液は、80〜100℃で5〜30分間、好ましくは90〜100℃で5〜15分間、より好ましくは95℃で10分間、攪拌しながら加熱する。
【0013】
前述した方法により製造されたクルミ粥は、調理時における変色を最小化することで、クルミ本来の乳白色を有し、且つ、クルミ固有の味を維持することができる。本発明のクルミ粥は、熱湯や電子レンジに加熱してすぐに食べられる即席レトルト食品で加工できるが、(1)製造されたクルミ粥を耐熱性容器に充填して密封包装する工程及び、(2)密封された容器を高温でレトルト殺菌によりレトルトクルミ粥を製造する工程により製造される。レトルト殺菌は、110〜125℃の温度で25〜35分間行われるのが好ましく、製造されたレトルトミルク粥は、微生物への安全性に優れるため、常温で12ヶ月以上の長期保存が可能である。
【0014】
前述した本発明のクルミ粥の製造方法及びレトルト食品への加工過程を、図1に示す。
【0015】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を説明するが、下記の実施例は、本発明を例示するものだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
外殻は除去し、内殻は除去しないクルミ10gを、水100gと共に入れて粉砕してクルミ粉砕液を得た。
【実施例2】
【0017】
外殻は除去し、内殻は除去しないクルミ10gを、苛性ソーダ0.2g及び水100gと共に入れて粉砕してクルミ粉砕液を得た。
【実施例3】
【0018】
外殻は除去し、内殻は除去しないクルミ10gを、苛性ソーダ0.4g及び水100gと共に入れて粉砕してクルミ粉砕液を得た。
【実施例4】
【0019】
外殻は除去し、内殻は除去しないクルミ10gを、苛性ソーダ0.8g及び水100gと共に入れて粉砕してクルミ粉砕液を得た。
【実施例5】
【0020】
外殻は除去し、内殻は除去しないクルミ10gを、苛性ソーダ1.2g及び水100gと共に入れて粉砕してクルミ粉砕液を得た。
【0021】
実施例1〜実施例5により得られた各クルミ粉砕液20gを、米65g、水95gと共に入れ、95℃で10分間攪拌しながら加熱し、耐熱性容器に180gずつ入れて密封させた。密封された容器を110〜125℃の熱水に投入し、25〜35分間レトルト内で殺菌工程を行ってから冷却して、レトルトクルミ粥を製造した。
実験例1:官能検査の結果
【0022】
【表1】

【0023】
官能検査の点数は5つに分けられるが、5:非常に良好、4:良好、3:普通、2:不良、1:非常に不良として評価し、CI95%で有意義がある。上記結果は図2に示す。
【0024】
上記表1に示すように、苛性ソーダを添加しなくてクルミ粥を製造した実施例1では、暗くてくすんだ灰色系列を示し、官能的に否定的な評価を受けたが、苛性ソーダを添加した実施例2〜実施例5では、色相が暗くなる原因になる官能的な問題点が解決され、添加した苛性ソーダの量が増加するにつれて満足度が大きくなった。しかしながら、苛性ソーダの添加量が一定水準以上になれば、すっきりしない味及び後味において類似に低水準の味品質を示した。つまり、クルミ粥の変色は、苛性ソーダの添加により解決されるが、これは、苛性ソーダとクルミの内殻に含まれているタンニン酸が、苛性ソーダと反応して塩を形成することにより、その変色が抑制されるためである。
実験例2:苛性ソーダの添加によるクルミ粥の色相
【0025】
【表2】

【0026】
図4に示すように、明度を示すL値を縦軸、色相を示すa及びb値を横軸に示し、色相を示すハンター(Hunter)色彩系を用いて、各実施例により製造されたクルミ粥の色相を評価した。上記表2において、ΔLは色相の明度、aは緑色及び赤色の色相表示、bは青色及び黄色の色相表示を示す。上記表2に示すように、苛性ソーダを添加しなくてクルミ粥を製造した実施例1では、色相の明度を示すΔL値が他の実施例の値と比較して著しく低い。同様に、b値も実施例1が最も低い。但し、a値だけが他の条件の製品よりも高い。
【0027】
苛性ソーダを添加しなくて製造したクルミ粥の場合には、粥が暗くてくすんだ灰色系列の色相を示す。上記表2の結果は、表1に示される官能検査の結果と一致する。一方、一定量の苛性ソーダをクルミ粥に添加した場合には、クルミ粥固有の乳白色を示すが、実験値も苛性ソーダを添加しない実施例1に比べてΔ値及びb値が増加した。より容易に見られるように、表2の結果は図3に示す。
【0028】
したがって、上記表1及び表2の結果に示すように、クルミ粥の製造時に苛性ソーダを添加した場合には、クルミ粥の色相が暗い灰色から乳白色に改善されながらも、味はそのまま維持された。これにより、官能評価において全体的に良好な結果を得た。但し、実施例4及び実施例5の結果から、苛性ソーダの量が一定水準を超えると、クルミ粥がさっぱりしなくて後味が悪くなるため、苛性ソーダの添加量を0.8g未満に制限するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のクルミ粥の製造方法及びレトルト食品への加工過程を示すフローチャートである。
【図2】本発明により製造された各ミルク粥の官能評価の結果を示すグラフである。
【図3】本発明により製造された各ミルク粥の色相分析の結果を示すグラフである。
【図4】ハンター色彩系の各座標を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻が除去されたクルミに苛性ソーダを添加することで、調理時におけるクルミの変色を防止する方法。
【請求項2】
外殻が除去されたクルミを苛性ソーダ及び水と混合して粉砕する段階と、前記段階により粉砕されたクルミ液を、米やもち米及び水と共に混合して、攪拌しながら加熱する段階とを含む、変色が防止されたクルミ粥の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法により製造される変色が防止されたクルミ粥。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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