説明

外断熱用パネル

【課題】コンクリートの外壁面に取り付けて湿式の外装材を施工しても透湿性や結露などの問題がなく通気性を確保することができる外断熱用パネルを提供する。
【解決手段】発泡プラスチックの断熱パネル11の屋外側表面に外装下地層13を設けて外装材2,3を施工する外断熱用パネル10で、断熱パネル11の屋外側表面に開口させて通気用溝12を形成し、この通気用溝12を覆って断熱パネル11にスチレンペーパ13を熱融着して外装下地層とする。この通気用溝13で通気層を確保でき、これを覆うスチレンペーパ13で塗料やモルタルなどが溝12に入り込むことを防止して湿式外装材2,3の施工を可能とし、しかもスチレンペーパ13を熱融着することで発泡プラスチックの断熱パネル11への取り付けも簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外断熱用パネルに関し、鉄筋コンクリートなどの建築物に取り付けて通気層を備える外断熱施工ができるようにしたもので、特に塗料やモルタルなどの湿式の外装材を施工しても透湿性や結露の問題が生じないようにできるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の集合住宅やオフィスビルなどの建築物では、省エネルギーや快適居住のため外気と接する外壁部や屋根部などを断熱材で覆って断熱性を高める断熱施工が普及しつつある。
【0003】
このようなコンクリート建築物の断熱施工には、壁面の内側に断熱材を設ける内断熱工法と、壁面の外側に断熱材を設ける外断熱工法とがあり、これまでは、内断熱工法が主流となっている。
【0004】
最近、建築物に対する断熱性能の向上が求められ、これまでの内断熱工法に代え、壁面の外側を断熱材で覆う外断熱工法が採用される傾向にある。
【0005】
従来のコンクリート建築物の外断熱工法では、コンクリート壁面に断熱材を取り付け、断熱材の屋外側にモルタルや塗料などの湿式外装材を施工する、いわゆる湿式工法が主として採用され、安価で施工が容易であることから数十年の施工実績がある。
このような湿式工法の断熱材に通気溝を形成すると、施工塗布するモルタルなどが通気溝を塞いでしまうことから、通気層を備えた湿式外断熱工法は普及していない。
【0006】
しかし、通気層のない湿式外断熱工法を寒冷地で採用しようとすると、使用する外装塗料やモルタル、あるいは断熱材の種類によっては、流入した湿流が断熱構造内に閉じ込められ、蓄積した湿流が結露を発生し、最終的には凍結して膨張する凍害などの重大な問題を引き起こす原因となる。
【0007】
このため、これまでの湿式外断熱工法では、室内からの湿流対策として、断熱材、モルタル、塗料の透湿抵抗を考慮し、透湿抵抗が順次小さくなる材料を選定することで、流入する湿流を外気に排出できるようにする必要があった。
【0008】
また、防水性や透湿性に優れたタイル張り外断熱工法(特許文献1)や外装材施工方法(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−119997号公報
【特許文献2】特開2004−92312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような透湿抵抗値の小さい外装塗料、モルタル、断熱材の種類はそう多くあるわけでなく、また、これらを組み合せても寒冷地によって使用条件などが異なることや塗料やモルタルの施工厚さによっても透湿抵抗値が変化するという問題がある。
また、防水性や透湿性に優れたタイル張り外断熱工法(特許文献1)や外装材施工方法(特許文献2)では、断熱パネルの施工やパネル自体の製作工程が多いなど必ずしも十分でなく、改良が望まれている。
【0010】
この発明は、上記従来技術の問題点と要望に鑑みてなされたもので、コンクリートの外壁面に取り付けて湿式の外装材を施工しても透湿性や結露などの問題がなく通気性を確保することができる外断熱用パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の課題を解決するため、この発明の請求項1記載の外断熱用パネルは、発泡プラスチックの断熱パネルの屋外側表面に外装下地層を設けて外装材を施工する外断熱用パネルであって、前記断熱パネルの屋外側表面に開口させて通気用溝を形成し、この通気用溝を覆って前記断熱パネルにスチレンペーパを熱融着して外装下地層としたことを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項2記載の外断熱用パネルは、請求項1記載の構成に加え、前記断熱パネルを発泡スチレンビーズで構成するとともに、前記スチレンペーパに0.5〜2.0mmの孔を形成して構成したことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明の請求項3記載の外断熱用パネルは、請求項1または2記載の構成に加え、前記断熱パネルの前記通気用溝を覆う前記スチレンペーパを、前記各通気用溝を覆うテープ状または断熱パネルの全面を覆うシート状に形成して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項4記載の外断熱用パネルは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記通気用溝の断面形状が、略円形、略楕円形、略矩形、略台形のいずれかであることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、この発明の請求項5記載の外断熱用パネルは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記通気用溝が、外壁施工時に少なくとも縦方向に配置されるとともに、横方向および/または斜め方向に配置されるよう形成して構成したことを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項6記載の外断熱用パネルは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記スチレンペーパに替えて発泡スチレンとして前記断熱パネルと一体に構成し、前記通気用溝を発泡スチレンの内部に形成し、当該断熱パネルの屋外側表面を前記外装下地層と兼用したことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、この発明の請求項7記載の外断熱用パネルは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記スチレンペーパに替え、ガラスメッシュを接着して前記外装下地層としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の請求項1記載の外断熱用パネルによれば、発泡プラスチックの断熱パネルの屋外側表面に外装下地層を設けて外装材を施工する外断熱用パネルで、前記断熱パネルの屋外側表面に開口させて通気用溝を形成し、この通気用溝を覆って前記断熱パネルにスチレンペーパを熱融着して外装下地層としたので、通気用溝で通気層を確保でき、これを覆うスチレンペーパで塗料やモルタルなどが溝に入り込むことを防止して湿式外装材の施工を可能とし、しかもスチレンペーパを熱融着することで発泡プラスチックの断熱パネルへの取り付けも簡単にできる。
この外断熱用パネルを用いることで、従来の通気層のない湿式外断熱工法と同一の施工方法で施工でき、新しい施工技術を必要とせず、しかも通気層を設けることができるので、モルタルや塗料などの湿式外装材の透湿抵抗による選択の必要がなく、寒冷地での施工でも結露や凍害の問題を解消することができる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の外断熱用パネルによれば、前記断熱パネルを発泡スチレンビーズで構成するとともに、前記スチレンペーパに0.5〜2.0mmの孔を形成して構成したので、通気用溝を形成する型内にスチレンペーパをセットし、予備発泡したスチレンビーズを充填し、加熱して一体化する場合などにスチレンペーパに形成した孔によって蒸気の通過を確保でき、スチレンペーパで溝開口を塞いだ通気用溝を備える外断熱用パネルを一工程で簡単に成形することができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項3記載の外断熱用パネルによれば、前記断熱パネルの前記通気用溝を覆う前記スチレンペーパを、前記各通気用溝を覆うテープ状または断熱パネルの全面を覆うシート状に形成して構成したので、通気用溝を覆うスチレンペーパが各溝開口ごとに覆うテープ状やパネル全面を覆うシート状のいずれであっても通気用溝が塗料やモルタルなどで塞がれることを防止することができ、通気層を確保することができる。
【0021】
また、この発明の請求項4記載の外断熱用パネルによれば、前記通気用溝の断面形状を、略円形、略楕円形、略矩形、略台形のいずれかとしたので、いずれによっても通気性を確保することができるとともに、特に開口幅を小さくできる略円形、略楕円形、略台形とすることで、スチレンペーパが溝部分で撓むことを一層確実に防止することができる。
【0022】
さらに、この発明の請求項5記載の外断熱用パネルによれば、前記通気用溝が、外壁施工時に少なくとも縦方向に配置されるとともに、横方向および/または斜め方向に配置されるよう形成して構成したので、縦方向と横方向の組合わせによる通気用溝、縦方向と斜め方向の組み合わせによる通気用溝、縦方向と横方向と斜め方向の組み合わせによる通気用溝のいずれによっても、窓などの開口部がコンクリート外壁面にあっても通気用溝を連通させて断熱パネルを配置することができるとともに、断熱パネルを切断して繋ぎ合わせても通気性を確保することができる。
【0023】
また、この発明の請求項6記載の外断熱用パネルによれば、前記スチレンペーパに替えて発泡スチレンとして前記断熱パネルと一体に構成し、前記通気用溝を発泡スチレンの内部に形成し、当該断熱パネルの屋外側表面を前記外装下地層と兼用したので、断熱パネルの内部に通気用溝を形成し、パネルの屋外側表面を外装下地層とすることで、通気用溝を備えた一体の断熱パネルとすることができ、これによっても湿式外装材による外断熱工法を施工することができ、一体構造とすることで、寸法管理なども容易となり、施工精度を向上することができる。
【0024】
さらに、この発明の請求項7記載の外断熱用パネルによれば、前記スチレンペーパに替え、ガラスメッシュを接着して前記外装下地層としたので、ガラスメッシュの接着によっても通気用溝に湿式外装材が入り込むことを防止して通気用溝を備えた外断熱施工をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の外断熱用パネルの一実施の形態にかかり、コンクリート建築物の躯体に施工した状態で示す平断面図および外断熱用パネルのみの平断面図である。
この外断熱用パネルは、コンクリート建築物のコンクリート躯体表面に取り付けることで通気層を備えた外断熱施工と、外装下地材の取り付けとを同時に行うことができる外断熱用パネルとして用いられたり、コンクリート建築物のコンクリート躯体を構築する場合の型枠として用いられ、内型枠と組み立てコンクリートを打設した後そのまま残すことで、コンクリート躯体表面に外装下地材および通気層を備えた断熱用パネルを取り付けた状態とすることができる型枠兼用の外断熱用パネルとして用いることもできるものである。
例えば図1(a)に示すように、既設のコンクリート躯体1の表面に上下・左右に並べて外断熱用パネル10を取り付け、断熱パネル11に形成した通気用溝12を覆う外装下地層13の屋外側にモルタルを直接塗布したり、メッシュなどを介してモルタルを塗布したモルタル部2を施工し、このモルタル部2に必要に応じて塗装部3を設ける湿式外断熱工法用のパネルとして使用される。
【0026】
この外断熱用パネル10は、例えば図1(b)に示すように、硬質発泡プラスチック、例えば発泡ポリスチレン(EPS,XPS)の断熱パネル11と、この硬質発泡プラスチックの断熱パネル11の屋外側表面に開口して形成した通気用溝12を覆って熱融着すること(熱融着層14)で取り付けられるスチレンペーパ13とを備えて構成され、スチレンペーパ13が外装下地層となるようにしてある。この断熱パネル11の屋外側表面に開口して形成される通気用溝12は、例えば上下方向に沿う縦通気用溝12aとして複数本形成される。
【0027】
この外断熱用複合パネル10を構成する硬質発泡プラスチックの断熱パネル11は、断熱効果の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂素材で形成された発泡プラスチックのパネルで、上記の発泡ポリスチレンのほか、例えばポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォームなどを用いることができるが、外断熱工法としてコンクリートの躯体外表面に取り付けられることから、コンクリートに含まれる湿度分を透過させることができる、透湿性に優れたものが好ましく、金型成形により通気用溝12の溝加工が容易な硬質ポリスチレンフォームのビーズ法によるものが好ましい。
このビーズ法の硬質ポリスチレンフォームによれば、水は通さないが、湿流(水蒸気や湿度分)は通し、その透湿係数は、60〜200ng/m2sPa程度であり、コンクリートの透湿係数が15〜30ng/m2sPaであるのに比べ、透湿性に優れる。
【0028】
また、断熱パネル11の屋外側の表面に開口して形成する通気用溝12は、上下方向の縦通気用溝12aを複数本形成して構成する場合に限らず、たとえば図2に示すように,縦通気用溝12aに加えて横通気用溝12bを形成して通気用溝12を構成したり、図3に示すように、縦通気用溝12aに加えて横通気用溝12bおよび斜め通気用溝12cを形成して通気用溝12を構成しても良い。
このような縦方向の通気用溝と横方向の通気用溝の組合わせ、縦方向の通気用溝と斜め方向の通気用溝の組合わせ、縦方向の通気用溝と横方向の通気用溝と斜め方向の通気用溝の組み合わせのいずれかで通気用溝12を構成することで、断熱パネル11を施工上の都合から切断して使用しても通気用溝12を連通することができ、特に窓などの開口部で上端が塞がれた状態で施工する場合でも通気性を確保することが可能となる。
【0029】
この硬質発泡プラスチックの断熱パネル11の通気用溝12は、開口部を塞ぐようにスチレンペーパ13で覆われ、断熱パネル11の表面に熱融着されて熱融着層14で固定される。こうすることで、通気用溝12が形成された屋外側表面に塗料やモルタルなどの湿式の外装材を施工しても通気用溝12が閉塞されたり、狭められることがなく、通気性を確保することができるとともに、直接塗布されるモルタルやメッシュを介して塗布されるモルタルによるモルタル部2の接着性を高めることができる。
また、断熱パネル11を発泡ポリスチレンとし、通気用溝12を塞ぐ外装下地層をスチレンペーパ13とすることで、同一素材による熱融着強度を確保することができるとともに、加熱することで簡単に取り付けることができ、金型にスチレンペーパをセットして予備発泡した発泡ポリスチレンビーズを充填して加熱することで、通気用溝12を備えた断熱パネル11の成形と、通気用溝12を塞ぐスチレンペーパ13の取り付けとを一工程の成形で行うことができる。
なお、このスチレンペーパ13は、図1(a),(b)に示すように、断熱パネル11の全面を覆うように設ける場合に限らず、図4に示すように、各通気用溝12をそれぞれ覆うようにテープ状のスチレンペーパ13Aを設けて熱融着するようにしても良い。
【0030】
また、通気用溝12の横断面形状は、図1〜図4に示す矩形状とする場合に限らず、図5に示すように、開口部側が逆テーパ状に狭くなった略台形状の通気用溝12Aとしたり、図6(c)に示す略楕円形状の通気用溝12Bとすることもできるほか、図示しない略円形状とするなど他の断面形状であっても良い。
【0031】
この外断熱用パネル10の断熱パネル11の通気用溝12の開口部を塞ぐため熱融着するスチレンペーパ13としては、ポリスチレン樹脂に発泡剤を混練させ加熱押出成形することにより気泡を生成させてつくられたシートがよく、厚さが0.5〜3mm、密度が80〜120kg/m3のものを挙げることができ、表面をパンチングによる凹凸あるいはバフ掛けなどの表面処理を施して表面を荒らした方が接着力が向上する。また、モルタルに水性エポキシを使用することで一層モルタルの接着力を向上できる。
なお、スチレンペーパの仕様の評価は、通気用溝の溝幅が20〜30mm、溝深さが10mmの矩形断面のものに対して行ったものであり、スチレンペーパの外側面にモルタル部としてモルタル、水性エポキシモルタル、樹脂エマルジョンモルタルなどを厚さ10mm塗布した。
【0032】
このような外断熱用パネル10によれば、断熱パネル11の屋外側表面に開口させて通気用溝12を形成し、この通気用溝12を覆って断熱パネル11にスチレンペーパ13を熱融着して外装下地層としたので、通気用溝12で通気層を確保でき、これを覆うスチレンペーパ13で塗料やモルタルなどが溝12に入り込むことを防止して湿式外装材を施工することが可能となり、しかもスチレンペーパ13を熱融着することで発泡プラスチックの断熱パネル11への取り付けも簡単にできる。
この外断熱用パネル10をコンクリート躯体1に取り付けて用いることで、従来の通気層のない湿式外断熱工法と同一の施工方法で施工でき、新しい施工技術を必要とせず、しかも通気用溝12で通気層を設けることができるので、モルタルや塗料などの湿式外装材の透湿抵抗による選択の必要がなく、寒冷地での施工でも結露や凍害の問題が生じることがない。
【0033】
また、この外断熱用パネル10によれば、断熱パネル11を発泡スチレンビーズで構成するとともに、スチレンペーパ13に0.5〜2.0mmの孔を形成して構成したので、通気用溝12を形成する型内にスチレンペーパ13をセットし、予備発泡したスチレンビーズを充填し、加熱して一体化する場合などにスチレンペーパ13に形成した孔によって蒸気を通過させることができ、スチレンペーパ13で溝12の開口を塞いだ通気用溝12を備える外断熱用パネル10を一工程で簡単に成形することができる。
【0034】
さらに、この外断熱用パネル10によれば、断熱パネル11の通気用溝12を覆うスチレンペーパ13を、各通気用溝12を覆うテープ状のスチレンペーパ13Aまたは断熱パネル11の全面を覆うシート状のスチレンペーパ13で構成したので、通気用溝12を覆うスチレンペーパ13,13Aがテープ状やシート状のいずれであっても通気用溝12が塗料やモルタルなどで塞がれることを防止することができ、外断熱用パネル10に通気層を確保することができる。
【0035】
また、この外断熱用パネル10によれば、通気用溝12の断面形状を、略矩形12、略台形12A、略楕円形12B、略円形のいずれかとしたので、いずれによっても外断熱用パネル10に通気性を確保することができるとともに、特にスチレンペーパ13で塞ぐ開口幅を小さくできる略台形12A、略楕円形12Bや略円形とすることで、スチレンペーパ13が溝部分で撓むことを一層確実に防止することができる。
【0036】
さらに、この外断熱用パネル10によれば、通気用溝12が、外壁施工時に少なくとも縦方向に配置される縦通気用溝12aとともに、横方向に配置される横通気用溝12bおよび/または斜め方向に配置される斜め通気用溝12cを形成して構成したので、縦方向と横方向の組合わせによる通気用溝12a,12b、縦方向と斜め方向の組み合わせによる通気用溝12a,12c、縦方向と横方向と斜め方向の組み合わせによる通気用溝12,12a,12b,12cのいずれ通気用溝12によっても、窓などの開口部がコンクリート躯体1の外壁面にあっても通気用溝12を連通させて外断熱用パネル10を配置することができるとともに、外断熱用パネル10を切断して繋ぎ合わせて施工する場合でも通気用溝12を連通させて通気性を確保することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、外断熱用パネル10の断熱パネル11の通気用溝12の開口部を塞ぐためスチレンペーパ13を用い、熱融着することで取り付けるようにしたが、スチレンペーパ13に替え、ガラスメッシュを断熱パネルに接着して外装下地層とすることもできる。 この場合、ガラスメッシュの目の粗さによってモルタルが通気用溝内に漏れ出すことになるため、モルタルの漏れ出しが生じないものを使用すれば良く、例えば厚さが0.2〜0.35mm、格子の大きさが0.5×0.5〜2mmのものを挙げることができる。
また、ガラスメッシュにエポキシまたはウレタン接着剤を塗布して使用する場合には、厚さが0.35mm、格子の大きさが1.5×1.5〜10×10mmのものに30〜300g/m2 のエポキシまたはウレタン接着剤を塗布したものを挙げることができる。
さらに、エポキシまたはウレタン接着剤を塗布するのに替え、ガラスメッシュにポリプロピレン不織布を熱融着することで、モルタルの漏れ出しが生じないようにしたものも使用することができ、例えば厚さが0.3mm、格子の大きさが5×5mmのものに目付16g/m2 以上のポリプロピレン不織布を熱融着したものを挙げることができる。
なお、ガラスメッシュの仕様の評価は、通気用溝の溝幅が10〜30mm、溝深さが10mmの矩形断面のものに対して行ったものである。
このような外断熱用パネルによっても、ガラスメッシュの接着によって通気用溝に湿式外装材が入り込むことを防止することができ、通気用溝を備えた外断熱施工をすることができる。
【0038】
次に、この発明の外断熱用パネルの他の一実施の形態について、図6により説明する。
この外断熱用パネル10Aは、図6に示すように、外装下地層のスチレンペーパに替えて、外装下地層15を発泡スチレンとして、発泡スチレンの断熱パネル11と同一材による一体に構成し、通気用溝12を発泡スチレン11,15の内部に形成し、断熱パネル11の屋外側表面を構成する外装下地層15を断熱パネル11の一部として兼用してある。
この外断熱用パネル10Aによっても、断熱パネル11,15の内部に通気用溝12を形成し、断熱パネル11の屋外側表面を構成する外装下地層15とすることで、通気用溝12を備えた一体の外断熱用パネルとすることができ、これによっても湿式外装材による外断熱工法を施工することができ、一体構造とすることで、金型成形により寸法管理なども容易となり、施工精度を向上することができる。
なお、この外断熱用パネル10Aの場合も、通気用溝12は矩形断面とする場合に限らず、図6(b)に示すように、略台形状12Aや図6(c)に示すように、略円形乃至略楕円形12Bであっても良く、縦通気用溝に限らず、横通気用溝、および/または斜め通気用溝を組み合わせたものであっても良い。
【0039】
この外断熱用パネル10Aの場合の断熱パネル11と一体の通気用溝12の外側部分の外装下地層15の厚さは、少なくとも通気用溝12がつぶれることなくモルタル部3の施工ができれば良く、例えば通気用溝12の溝幅が20mmの矩形断面の場合には、少なくとも厚さが2mm以上必要であり、通気用溝12が溝幅16mmの台形断面や直径乃至長径が10mmの円形乃至楕円形断面の場合には、厚さが1mm以上あれば良い。
外装下地層15の厚さが1mmより薄くなると、スチレンビーズが金型内に隙間なく充填されなくなり、厚すぎると、無駄になる。
【0040】
このような外断熱用パネル10Aは、金型内に通気用溝に相当する中子をセットし、スチレンビーズを充填加熱発泡させた後、中子を取り外すことで成形できるほか、断熱パネル11と外装下地層15とを一体とした硬質発泡プラスチックパネルを用意し、ドリルなどで通気用溝に相当する貫通孔を形成することで製造することもでき、或いは、図1に示すような外断熱パネル10の外装下地材13として断熱パネル11と同一材の硬質発泡プラスチックを貼り付けて形成することもでき、硬質発泡プラスチックとしては、例えば押出発泡スチレン(XPS)、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、発泡ポリエチレンなどを挙げることができる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、外断熱用パネルを既設のコンクリート壁面に取り付ける場合を例に説明したが、コンクリード打設用の型枠と兼用して用いる型枠兼用パネルとして使用することもでき、この場合には、1回の打設高さ分の上下方向に長い外断熱用パネルとして用いることで、横目地部を減少させて施工を容易とすることができる。さらに、外断熱用パネルの連結される目地部に段差部を形成して噛み合わせるようにして連結するようにすれば、打設されるコンクリートののろなどの漏洩を防止して簡単に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の外断熱用パネルの一実施の形態にかかり、コンクリート建築物の躯体に施工した状態で示す平断面図および外断熱用パネルのみの平断面図である。
【図2】この発明の外断熱用パネルの他の一実施の形態にかかる横断面図およびB−B矢視図である。
【図3】この発明の外断熱用パネルのさらに他の一実施の形態にかかる横断面図およびB−B矢視図である。
【図4】この発明の外断熱用パネルの他の一実施の形態にかかる横断面図である。
【図5】この発明の外断熱用パネルのそれぞれさらに他の一実施の形態にかかる横断面図である。
【図6】この発明の外断熱用パネルのそれぞれ他の一実施の形態にかかり、コンクリート建築物の躯体に施工した状態で示す平断面図および外断熱用パネルのみの平断面図である。
【0043】
10,10A 外断熱用パネル
11 硬質発泡プラスチックの断熱パネル
12 通気用溝
12A 略台形状の通気用溝
12B 略楕円形状の通気用溝
12a 縦通気用溝
12b 横通気用溝
12c 斜め通気用溝
13 スチレンペーパ(外装下地層)
13A テープ状のスチレンペーパ
14 熱融着層
15 外装下地層(断熱パネル一体)
1 コンクリート躯体
2 モルタル部(湿式外装材)
3 塗装部(湿式外装材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡プラスチックの断熱パネルの屋外側表面に外装下地層を設けて外装材を施工する外断熱用パネルであって、
前記断熱パネルの屋外側表面に開口させて通気用溝を形成し、この通気用溝を覆って前記断熱パネルにスチレンペーパを熱融着して外装下地層としたことを特徴とする外断熱用パネル。
【請求項2】
前記断熱パネルを発泡スチレンビーズで構成するとともに、前記スチレンペーパに0.5〜2.0mmの孔を形成して構成したことを特徴とする請求項1記載の外断熱用パネル。
【請求項3】
前記断熱パネルの前記通気用溝を覆う前記スチレンペーパを、前記各通気用溝を覆うテープ状または断熱パネルの全面を覆うシート状に形成して構成したことを特徴とする請求項1または2記載の外断熱用パネル。
【請求項4】
前記通気用溝の断面形状が、略円形、略楕円形、略矩形、略台形のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外断熱用パネル。
【請求項5】
前記通気用溝が、外壁施工時に少なくとも縦方向に配置されるとともに、横方向および/または斜め方向に配置されるよう形成して構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外断熱用パネル。
【請求項6】
前記スチレンペーパに替えて発泡スチレンとして前記断熱パネルと一体に構成し、前記通気用溝を発泡スチレンの内部に形成し、当該断熱パネルの屋外側表面を前記外装下地層と兼用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の外断熱用パネル。
【請求項7】
前記スチレンペーパに替え、ガラスメッシュを接着して前記外装下地層としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の外断熱用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−249979(P2009−249979A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102050(P2008−102050)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】