説明

多孔質炭素シートおよびその製造方法

【課題】フラッディングおよびドライアップの両方に対する耐性が高く、加湿条件に依らず発電性能が非常に高い燃料電池とし得る炭素シートを提供する。
【解決手段】分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着した多孔質炭素シートであって、密度が0.25〜0.40g/cm、熱線法による厚さ方向の熱伝導率が1.4〜4.0W/m/K、および、3点曲げ試験における曲げ強度が25〜40MPaであることを特徴とする多孔質炭素シートおよびそれを得るための製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好適に用いることができる多孔質炭素シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、水素と酸素を供給することにより発電する。燃料電池において発電反応が起こる膜−電極接合体を構成する固体高分子電解質膜は、乾燥するとプロトン伝導性が低下し、燃料電池の発電性能が低下するため、供給するガスを加湿するのが一般的である。
【0003】
燃料電池が広く普及するためには、燃料電池システムの大幅なコストダウンが必要であり、そのためには供給ガスの加湿ユニットを省略し、システムを簡素化することが有効である。加湿ユニットの省略を実現するためには、供給ガスの低湿度条件下において固体高分子電解質膜の乾燥を抑制し、燃料電池の発電性能を向上させることが重要となる。
【0004】
燃料電池の発電性能を向上させるために、特許文献1では、実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散した炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着され、さらに前記炭素短繊維同士が網状の樹脂炭化物により架橋された多孔質電極基材が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている多孔質電極基材は、網状の樹脂炭化物の架橋により補強されているため、低密度であっても比較的曲げ強度が高く、水や供給ガス等の物質移動性と機械的強度の両立が可能である。したがってかかる多孔質電極基材を用いた燃料電池は、燃料電池を高加湿条件(WET条件)で運転すると発電反応による生成水で水詰まりする現象、いわゆるフラッディングが生じ難く、供給ガスの高加湿条件下では高い発電性能を示す。しかしながら、かかる多孔質炭素基材は、結着炭化物比率が低く、さらにその一部が網状の疎な形状のため熱伝導率が低く、そのような多孔質電極基材を用いた燃料電池では、発電反応により発生した熱が蓄積し易く、固体高分子電解質膜近傍の温度が上昇して相対湿度が下がり易い。したがって、燃料電池を供給ガスの低加湿条件(DRY条件)下で運転すると固体高分子電解質膜の乾燥によるプロトン伝導性が低下する現象、いわゆるドライアップにより発電性能が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−40886号公報(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術における上述した問題点に鑑みてなされたものであり、フラッディングおよびドライアップの両方に対する耐性が高く、加湿条件に依らず発電性能が非常に高い燃料電池とし得る多孔質炭素シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の多孔質炭素シートは、次の構成を有する。すなわち、分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着した多孔質炭素シートであって、密度が0.25〜0.40g/cm、厚さ方向の熱伝導率が1.4〜4.0W/m/K、および、曲げ強度が25〜40MPaであることを特徴とする多孔質炭素シートである。
【0009】
また、前記課題を解決するため、本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、次の構成を有する。すなわち、炭素短繊維、樹脂およびパルプを含み、炭素短繊維の目付が20〜35g/mで、樹脂の目付が20〜35g/mである前駆体繊維シートを加圧処理する圧縮工程と、加圧処理された前駆体繊維シートを加熱し、パルプおよび樹脂を結着炭化物に転換する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前記炭化工程における加熱処理の最高温度を2200〜2700℃の範囲内とすることを特徴とする多孔質炭素シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多孔質炭素シートは、低密度、高強度および高熱伝導率の全てを同時に満足しているので、それをガス拡散体の材料として用いた燃料電池は、いわゆるフラッディングおよびドライアップの両方に対する耐性が高く、加湿条件に依らず発電性能が非常に高いという利点を有する。
【0011】
また、本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、低密度、高強度および高熱伝導率の全てを同時に満足するような本発明の多孔質炭素シートを再現性良く安定して製造できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多孔質炭素シートを製造するための製造工程の一例を示す工程フロー図である。
【図2】本発明の一形態に係る多孔質炭素シートの表面を撮像した電子顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【図3】本発明の多孔質炭素シートの製造工程における圧縮工程の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多孔質炭素シートは、分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着してなる。ここで、分散した状態とは、炭素短繊維がシート面内において顕著な配向を持たず概ねランダムに、例えば、無作為な方向に存在している状態であることが多い。具体的には、後述する抄造法により短繊維が分散した状態である。結着炭化物とは、多孔質炭素シートにおいて炭素短繊維同士を結着している炭化物であり、後述する樹脂炭化物やパルプ炭化物を含む。
【0014】
そして、本発明の多孔質炭素シートは、密度が0.25〜0.40g/cmと低密度とし、熱線法による厚さ方向の熱伝導率が1.4〜4.0W/m/Kと高熱伝導率とし、3点曲げ試験における曲げ強度が25〜40MPaと高強度とすることにより、かかる多孔質炭素シートを用いた燃料電池は、フラッディングおよびドライアップの両方に対する耐性が高く、加湿条件に依らず発電性能が非常に高くなる。
【0015】
本発明の多孔質炭素シートを構成する炭素短繊維の平均繊維径は、5〜20μmであることが好ましく、4〜16μmであることがより好ましく、5〜13μmであることが更に好ましい。
【0016】
炭素短繊維は、通常、平均繊維長が3〜20mmである炭素繊維である。平均繊維長が3mm未満の場合、多孔質炭素シートの曲げ強度が低下することがある。また、平均繊維長が20mmを超える場合、後述する抄造時における繊維の分散性が悪くなり、多孔質炭素シートにおける炭素短繊維2の目付のばらつきが大きくなったり、結束が発生したりすることがある。より好ましい平均繊維長の範囲は、4〜15mmであり、更に好ましい範囲は、5〜10mmである。
【0017】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維を用いることができる。なかでも、機械的強度に優れ、しかも、適度な柔軟性を有するハンドリング性に優れた多孔質炭素シートが得られることから、PAN系やピッチ系、特にPAN系の炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明の多孔質炭素シートは、炭素質粉末を含むことが好ましい。炭素質粉末を含むことにより、多孔質炭素シート自体の導電性が向上する。炭素質粉末の平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましく、1〜8μmがより好ましく、3〜6μmがさらに好ましい。また、炭素質粉末は、黒鉛またはカーボンブラックの粉末であることが好ましく、黒鉛粉末であることがさらに好ましい。炭素質粉末の平均粒子径は、動的光散乱測定を行い、求めた粒径分布の数平均から求めることができる。
【0019】
本発明の多孔質炭素シートは、密度が0.25〜0.40g/cmであり、0.26〜0.35g/cmであることが好ましく、0.27〜0.33g/cmであることがより好ましい。密度が0.25g/cm未満の場合、燃料電池スタックとして組み付けた際にセパレータから受ける力により多孔質炭素シートが破壊されることがある。密度が0.40g/cmを超える場合、多孔質炭素シートの空隙率の低下により、発電反応に必要な水素や酸素の移動性が低下したり、発電反応で生成した水の排出性が低下したりするため、燃料電池の発電性能が低下する。
【0020】
ここで、本発明における密度とは、見かけ密度のことを指し、多孔質炭素シートの厚さと目付(単位面積当たりの重さ)とから算出する。多孔質炭素シートの厚さは、測定子の断面が直径5mmの円形であるマイクロメーターを用いて、シートの厚さ方向に0.15MPaの面圧を付与して測定する。測定点は1.5cm間隔の格子状で測定点数は25点以上とし、その平均値を厚さとする。多孔質炭素シートの目付は、多孔質炭素シートから、10cm×10cm角の試験片10枚を切り出し、各々の試験片の重さを測定して、その平均値から算出する。
【0021】
本発明の多孔質炭素シートは、熱線法による厚さ方向の熱伝導率が1.4〜4.0W/m/Kであり、1.7W/m/K以上であることが好ましく、2.0W/m/Kであることがより好ましい。かかる熱伝導率が1.4W/m/K未満の場合、燃料電池における発電反応により発生した熱が蓄積し易く、固体高分子電解質膜近傍の温度が上昇して相対湿度が下がり易い。したがって、供給ガスの低加湿条件下では、いわゆるドライアップにより発電性能が低下することがある。熱伝導率は、大きいほどより好ましいが、本発明の多孔質炭素シートのように、密度が0.25〜0.40g/cmと小さい場合には、通常、4.0W/m/K程度が限界である。
【0022】
多孔質炭素シートの厚さ方向の熱伝導率は、熱伝導率が既知の複数のリファレンスプレートを用い、リファレンスプレート上に多孔質炭素シートを置いた場合と、リファレンスプレートのみの場合とで熱線法により熱伝導率を測定し、それらの偏差を縦軸に取り、リファレンスプレートの熱伝導率を横軸に取ったグラフにおいて、偏差が0となる点から求めることができる。具体的には、次のようにして測定することができる。センサー・プローブ(たとえば、PD−13(京都電子工業(株)製))を装着した熱伝導率計(たとえば、迅速熱伝導率計 QTM−500(京都電子工業(株)製))を用い、レファレンスプレートとして、シリコンゴム、石英ガラス、ジルコニア、ムライト等を用いて、測定回数を各レファレンスプレートで2回ずつとする。なお、うす膜測定用ソフト(たとえば、SOFT−QTM5W(京都電子工業株式会社製))のようなソフトウエアを用いることで、上記偏差が0となる点を求め、厚さ方向の熱伝導率を算出する。
【0023】
本発明の多孔質炭素シートは、曲げ強度が25〜40MPaであり、27MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。曲げ強度が25MPa未満の場合、燃料電池スタックとして組み付けた際にセパレータから受ける曲げの力により多孔質炭素シートが破壊されたり、また、多孔質炭素シートの製造や高次加工の際のハンドリング性が低下したりする。曲げ強度は、大きいほどより好ましいが、本発明の多孔質炭素シートのように、密度が0.25〜0.40g/cmと小さい場合には、通常、40MPa程度が限界である。
【0024】
多孔質炭素シートの曲げ強度は3点曲げ試験により得られるものであり、JIS K 6911に規定される方法に準拠して行う。このとき、試験片の幅は12.7mm、長さは70mm、支点間距離は30mmとする。また、支点と圧子の曲率半径は3mm、荷重印加速度は1mm/分とする。なお、最大荷重や曲げ弾性率について電極基材が異方性を有している場合には、縦方向と横方向について各2回の試験を行い、それらの平均を多孔質炭素シートの曲げ強度とする。
【0025】
本発明の多孔質炭素シートは、シートの厚さ方向に14cm/cm/secの空気を透過させたときのシートの単位厚さあたりの差圧(以下、差圧と略記)が10〜100mmAq/mmであることが好ましく、15〜50mmAq/mmであることがより好ましく、20〜40mmAq/mmであることがさらに好ましい。かかる差圧が、10mmAq/mm未満の場合、ドライアップが発生し、発電性能が低下することがあり、100mmAq/mmを超える場合、フラッディングが発生し、発電性能が低下することがある。
【0026】
このような差圧は、多孔質炭素シートの厚さ方向に14cm/cm/secの空気を透過させたときの差圧を測定し、シートの厚さで割ることにより算出する。
【0027】
本発明の多孔質炭素シートは、結着炭化物比率が40〜60%であることが好ましく、42〜58%であることがより好ましく、45〜55%であることがさらに好ましい。結着炭化物比率が40%未満の場合、多孔質炭素シートの曲げ強度や熱伝導率が低下することがある。結着炭化物比率が60%を超える場合、炭素短繊維2を結着する樹脂炭化物4が炭素短繊維の間に水かき状に広がり過ぎて発電反応に必要な水素と酸素、発電反応で生成する水の物質移動を阻害し、特に高加湿条件での発電性能が低下することがある。
【0028】
多孔質炭素シートの結着炭化物比率とは、多孔質炭素シートにおいて炭素短繊維以外の炭素材料が占める重量比率であり、次の(I)式によって算出できる。
多孔質炭素シートの結着炭化物比率(%)=(A−B)÷A×100 (I)
ただし、A:多孔質炭素シートの目付(g/m
B:炭素短繊維の目付(g/m
【0029】
ここで、炭素短繊維の目付は、多孔質炭素シートの場合と同様にして測定できるが、後述の樹脂を含浸する前の炭素繊維紙を用いて測定する場合には、それを大気中にて400℃で8時間加熱し、炭素短繊維を残してそれ以外のバインダ等を熱分解させたものを用いる。
【0030】
本発明の多孔質炭素シートは、厚さが100〜250μmであることが好ましく、120〜230μmであることがより好ましく、140〜210μmであることがさらに好ましい。厚さが100μm未満の場合、燃料電池スタックとして組み付けた際にセパレータから受ける力により多孔質炭素シートが破壊されたり、また、多孔質炭素シートの製造や高次加工の際のハンドリング性が低下したりすることがある。厚さが250μmを超える場合、多孔質炭素シートの柔軟性が大きく低下し、多孔質炭素シートをロール状に巻き取ることが難しくなることがある。
【0031】
本発明の多孔質炭素シートは、炭素短繊維、樹脂およびパルプを含む前駆体繊維シートの、炭素短繊維および樹脂の目付を適切な範囲とし、高温で焼成することで、製造することができる。次に、本発明の多孔質炭素シートを製造するに好適な方法を、具体的に説明する。
【0032】
本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、炭素短繊維、樹脂およびパルプを含む前駆体繊維シートを、加圧処理する圧縮工程と、加圧処理された前駆体繊維シートを加熱し、パルプおよび樹脂を結着炭化物に転換する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前駆体繊維シートにおける炭素短繊維の目付を20〜35g/m、樹脂の目付を20〜35g/mとし、炭化工程における加熱処理の最高温度を、2200〜2700℃の範囲内とする。
【0033】
前駆体繊維シートは、炭素短繊維およびパルプを用いて抄紙して炭素繊維紙とする抄紙工程および炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸する樹脂含浸工程を経て製造することができる。本発明における多孔質炭素シートを製造するための工程フローの一例を図1に示す。
【0034】
抄紙工程では、たとえば前述した平均繊維長を有する炭素短繊維およびパルプを水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維およびパルプを網上に抄造し、抄造したシートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。ポリビニルアルコールは、炭素短繊維およびパルプを結着するバインダの役目を果たし、炭素短繊維およびパルプが分散した状態において、それらがバインダにより結着された状態の炭素短繊維のシート、いわゆる炭素繊維紙が製造される。
【0035】
前駆体繊維シートにおいて、炭素短繊維の目付は20〜35g/mであり、22〜34g/mであることが好ましく、25〜33g/mであることがより好ましい。炭素短繊維の目付が20g/m未満の場合、多孔質炭素シートの骨格となる炭素短繊維の量が少ないため多孔質炭素シートの曲げ強度が低下することがある。炭素短繊維の目付が35g/mを超える場合、炭素短繊維に対する、パルプ炭化物や樹脂炭化物などの結着炭化物の比率が低下するため結着が不十分となり、熱伝導率が低下することがある。
【0036】
前駆体繊維シートに含まれるパルプの含有量は、炭素短繊維100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、20〜80重量部がより好ましく、30〜60重量部がさらに好ましい。パルプの含有量が5重量部未満の場合、得られる多孔質炭素シートにおいて炭素短繊維を結着するパルプ炭化物が減少し、曲げ強度や熱伝導率が低下することがある。パルプの含有量が100重量部を超える場合、得られる多孔質炭素シートにおいてパルプ炭化物が網目状に発達しすぎて発電反応に必要な水素と酸素、発電反応で生成する水の物質移動を阻害し、特に高加湿条件での発電性能が低下することがある。
【0037】
パルプとしては、木材パルプ、バガスパルプ、ワラパルプなどの天然パルプ、フィブリル化されたポリエチレン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維などの合成パルプを用いることができる。燃料電池内部での物質移動を阻害しないためには、フィブリル化が進んでいない木材パルプ、中でもLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)がより好ましい。
【0038】
樹脂含浸工程では、樹脂の溶液中に、炭素繊維紙を浸漬し、浸漬された炭素繊維紙を引き上げて、乾燥させることにより前駆体繊維シートが製造される。
【0039】
前駆体繊維シートに含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。通常は、熱硬化性樹脂が用いられ、炭化工程での樹脂の炭化収率が高い熱硬化性樹脂を用いるのがより好ましく、中でもフェノール樹脂を用いるのが更に好ましい。
【0040】
前駆体繊維シートにおいて、樹脂の目付は20〜35g/mであり、22〜34g/mであることが好ましく、25〜33g/mであることがより好ましい。樹脂の目付が20g/m未満の場合、炭素短繊維に対する樹脂炭化物の比率が低下するため結着が不十分となり、熱伝導率が低下することがあり、樹脂の目付が35g/mを超える場合、炭素短繊維を結着する樹脂炭化物が炭素短繊維間に水かき状に広がり過ぎて発電反応に必要な水素と酸素、発電反応で生成する水の物質移動を阻害し、特に高加湿条件での発電性能が低下することがある。
【0041】
樹脂含浸工程では、熱硬化性樹脂の溶液中に炭素質粉末を添加するのが好ましい。炭素質粉末は、樹脂100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、10〜80重量部がより好ましく、20〜50重量部がさらに好ましい。炭素質粉末が5重量部より少ない場合、後述する連続式の炭化工程において樹脂の急激な炭化収縮による樹脂炭化物のひび割れが発生しやすく、炭素質粉末が100重量部を越えると、炭素質粉末を結着するために必要な樹脂が増加し、炭素短繊維を結着するために必要な樹脂の量が不足する。
【0042】
圧縮工程では、前駆体繊維シートを、通常は加熱しつつ、加圧処理する。圧縮工程には、互いに平行に位置する一対の熱板を備えた間欠プレス装置、一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置、あるいは、連続式ロールプレス装置を用いることができる。
【0043】
図3は、かかる圧縮工程の一例を示す概略図である。ホットプレス6に上熱板7と下熱板8が互いに平行となるようセットし、下熱板8上にクリアランスを調節するためにスペーサー9を配置して、所望の熱板温度、面圧で、プレス機の開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ前駆体繊維シートを間欠的に搬送しつつ、同じ箇所が所望の時間加熱加圧されるよう圧縮処理する。
【0044】
次に、圧縮工程を経た前駆体繊維シートを炭化工程に供し、窒素などの不活性ガス雰囲気で炭化して、前駆体繊維シートに含まれる、パルプをパルプ炭化物に、樹脂を樹脂炭化物に転換することにより多孔質炭素シートを得る。炭化工程においては、バッチ式の加熱炉を用いることもできるが、生産性の観点から、前駆体繊維シートを不活性雰囲気に保った加熱炉内を連続的に走行せしめながら焼成してパルプや樹脂を炭素化した後、ロール状に巻き取る連続式であることが好ましい。炭化工程で、パルプや樹脂が炭化され、パルプ炭化物および樹脂炭化物となって、それら結着炭化物により炭素短繊維は結着された状態となる。
【0045】
パルプ炭化物の形状は、元のパルプの形状に依存し、例えば、フィブリル化が進んでいない木材パルプを用いた場合にはカールした線状となり、フィブリル化が進んだ合成パルプを用いた場合には元のフィブリル由来の網目状となることが多い。
【0046】
本発明の多孔質炭素シートの製造方法において、炭化工程における加熱温度の最高温度を、2200〜2700℃の範囲内とすることが重要であり、かかる最高温度は2300〜2600℃が好ましく、2400〜2500℃がより好ましい。最高温度が2200℃未満の場合、得られる多孔質炭素シートの熱伝導率が低下することがあり、最高温度が2700℃を超える場合、炭化工程で用いる加熱炉の消耗が促進され耐久性が低下したり、消費エネルギーが大きくなったりすることがある。
【0047】
このような製造方法で得られた本発明の一実施形態に係る多孔質炭素シートの表面を撮像した電子顕微鏡写真を図2として示す。
【0048】
図2において、多孔質炭素シート1は、直線状に見える炭素短繊維2が分散しており、炭素短繊維2が、カールした線状に見えるパルプ炭化物3および水かき状に広がる樹脂炭化物4という2種の結着炭化物で結着されている。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて、本発明について、さらに具体的に説明する。なお、本実施例において、多孔質炭素シートの特性である、多孔質炭素シートの厚さ方向の熱伝導率、および多孔質炭素シートを用いた燃料電池の発電性能は次のようにして測定した。
【0050】
[多孔質炭素シートの厚さ方向の熱伝導率]
測定すべき多孔質炭素シートについて、センサー・プローブとしてPD−13を装着した迅速熱伝導率計 QTM−500(京都電子工業(株)製)を用い、レファレンスプレートとして、シリコンゴム、石英ガラス、ジルコニア、ムライトを用いて、測定回数を各レファレンスプレートで2回ずつとして測定する。なお、うす膜測定用ソフト(SOFT−QTM5W(京都電子工業(株)製))を用いて、うす膜材料の厚さ方向の熱伝導率を求めた。
【0051】
[多孔質炭素シートを用いた燃料電池の発電性能]
測定すべき多孔質炭素シートを、PTFE含浸後の多孔質炭素シートに占めるPTFEの含有量が5重量%となるように、精製水で希釈したPTFEディスパージョン(ダイキン工業社製 ポリフロン(商標)PTFEディスパージョンD−1E)に浸漬し、100℃のオーブンで5分間乾燥させ、PTFEを含浸した多孔質炭素シートを得る。
【0052】
PTFEを含浸した多孔質炭素シートの片側表面に、ウェット厚さ125μmのカーボン塗液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させた後、380℃のオーブンで10分間熱処理して、表面にカーボン層を設けた多孔質炭素シートを得る。
【0053】
塗布したカーボン塗液は、アセチレンブラック(電気化学工業社製 デンカブラック(登録商標))、PTFEディスパージョン(ダイキン工業社製 ポリフロン(商標)PTFEディスパージョンD−1E)、界面活性剤(ナカライテスク社製 TRITON(登録商標) X−100)を混合し、更に精製水を加えて、固形分である、アセチレンブラック、PTFEディスパージョン中のPTFE、界面活性剤の重量比が3:1:0.7、固形分が全体の12.1wt%となるように調整したものである。
【0054】
一方、固体高分子電解質膜(DuPont社製 Nafion(登録商標) NR−211)の両表面に、転写法で、白金量が0.3mg/cmである触媒層を設けることにより、触媒付き固体高分子電解質膜を得る。転写法では、触媒液として、白金担持炭素(田中貴金属製 白金担持量50重量%)、精製水、Nafion溶液(Aldrich社製 Nafion(登録商標) 5.0重量%)、イソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)を、重量比が1:1:8:18となるように調整したものを用い、ベースフィルムとして、PTFEシート(ニチアス社製 ナフロン(登録商標)テープ TOMBO9001)を用いて、ベースフィルムに触媒液をスプレーし、ホットプレスで固体高分子電解質膜に触媒層を転写する。転写の条件は130℃、5MPa、5分間のバッチプレスとする。
【0055】
表面にカーボン層を設けた多孔質炭素シート2枚を切り出し、その2枚の多孔質炭素シートで上記触媒付き固体高分子電解質膜を挟み、130℃、3MPaで5分間バッチプレスすることにより、膜−電極接合体を得る。なお、多孔質炭素シートは、カーボン層を設けた面を触媒層側と接するように配置する。
【0056】
得られた膜−電極接合体を燃料電池評価用単セルに組み込み、発電性能の評価を行なう。膜−電極接合体の電極面積は50cmの正方形で、単セルのセパレータは、アノード、カソードとも、溝幅1.5mm、溝深さ1.0mm、リブ幅1.1mmの一本流路のサーペンタイン型のものを使用する。アノードには、水素、カソードには空気を供給し、水素および空気中の酸素の利用率はそれぞれ80%および67%とする。アノード、カソードへの供給ガスは、60℃に設定した加湿ポットにより加湿を行なう。セル温度を60℃(供給ガスの相対湿度100%、WET条件)および90℃(供給ガスの相対湿度28%、DRY条件)に設定し、電流密度を2.0A/cmとした際の電圧値を測定する。WET条件での電圧値が耐フラッディング性の指標となり、DRY条件での電圧値が耐ドライアップ性の指標となる。
【0057】
(実施例1)
東レ(株)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ (登録商標) ”T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を6mmの長さにカットし、アラバマリバー社製広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)クラフトマーケットパルプ(ハードウッド)と共に、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥する抄紙工程を経て、ロール状に巻き取って、炭素短繊維の目付が30g/mの長尺の炭素繊維紙を得た。炭素繊維紙100重量部に対して、添加したパルプの量は40重量部、ポリビニルアルコールの付着量は20重量部に相当する。
【0058】
(株)中越黒鉛工業所製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒径5μm)、フェノール樹脂およびメタノールを2:3:25の重量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が96重量部である樹脂含浸量になるように、上記分散液を連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥する樹脂含浸工程を経た後、ロール状に巻き取って樹脂含浸炭素繊維紙を得た。フェノール樹脂には、荒川化学工業(株)製レゾール型フェノール樹脂KP−743Kと、荒川化学工業(株)製ノボラック型フェノール樹脂タマノル759とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
【0059】
(株)カワジリ製100tプレスに熱板7、8が互いに平行となるようセットし、
下熱板8上にスペーサー9、9を配置して、熱板温度170℃、面圧0.8MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ樹脂含浸炭素繊維紙を間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LP=0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。
【0060】
圧縮処理をした炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成する炭化工程を経た後、ロール状に巻き取って多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0061】
(実施例2)
炭化工程における最高温度を2600℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0062】
(実施例3)
樹脂含浸工程における樹脂含浸量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が113重量部であるように変更し、炭化工程における最高温度を2700℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0063】
(実施例4)
樹脂含浸工程における樹脂含浸量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が78重量部であるように変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シート1の特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0064】
(実施例5)
抄紙工程において、使用するパルプを東洋紡績(株)製アクリルパルプBiPUL100TWFに変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シート1の特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0065】
(比較例1)
炭化工程における最高温度を2000℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0066】
(比較例2)
抄紙工程において、得られる炭素繊維紙が、炭素短繊維の目付が42g/m、炭素繊維紙100重量部に対してパルプの量が40重量部となるように条件変更し、樹脂含浸工程における樹脂含浸量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が40重量部になるように変更し、炭化工程における最高温度を2700℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0067】
(比較例3)
抄紙工程において、得られる炭素繊維紙が、炭素短繊維の目付が18g/m、炭素繊維紙100重量部に対してパルプの量が40重量部となるように条件変更し、樹脂含浸工程における樹脂含浸量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が200重量部になるように変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0068】
(比較例4)
抄紙工程において、得られる炭素繊維紙が、炭素短繊維の目付が42g/m、炭素繊維紙100重量部に対してパルプの量が40重量部となるように条件変更し、樹脂含浸工程における樹脂含浸量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が78重量部になるように変更し、炭化工程における最高温度を2000℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0069】
(比較例5)
抄紙工程において、使用するパルプを三井化学(株)製ポリエチレン(PE)パルプSWP EST−8に変更し、得られる炭素繊維紙が、炭素短繊維の目付が約44g/m、炭素繊維紙100重量部に対してパルプの量が40重量部となるように条件変更し、樹脂含浸工程における樹脂含有量を、炭素短繊維100重量部に対してフェノール樹脂が41重量部になるように変更し、炭化工程における最高温度を2000℃に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0070】
(比較例6)
抄紙工程において、パルプを混抄しなかった以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの特性を、用いた前駆体シートの特性および炭化処理条件とともに表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1〜5の多孔質炭素シートは、前駆体繊維シートの炭素短繊維の目付が20〜35g/m、熱硬化性樹脂の目付が20〜35g/mであり、炭化工程における加熱温度の最高温度が2200〜2700℃で製造されているので、低密度、高強度および高熱伝導率の全てを同時に満足している。よって、DRY条件、WET条件の両方で高い電圧値を示している。
【0073】
一方、比較例1、比較例4および比較例5は、炭化工程の最高温度が低いため、得られる多孔質炭素シートは熱伝導率が低い。よって、DRY条件での電圧値が低い。
【0074】
比較例2は、前駆体繊維シートの炭素短繊維の目付が大きく、熱硬化性樹脂の目付が小さいため、炭素短繊維が樹脂炭化物でしっかり結着されず、炭化工程の最高温度を2700℃としても、得られる多孔質炭素シートは熱伝導率が低い。よって、DRY条件での電圧値が低い。
【0075】
比較例3は、前駆体繊維シートの炭素短繊維の目付が小さいため、得られる多孔質炭素シートは曲げ強度が低い。発電性能の評価においても、DRY条件、WET条件の両方で電圧値が低い。発電性能評価後の膜−電極接合体を観察したところ、セパレータの溝の跡が多孔質炭素シートにはっきりと残っており、セパレータから受けた力により多孔質炭素シートが破壊されたため、発電性能が低かったものと考えられる。
【0076】
比較例6は、抄紙工程においてパルプを混抄しておらず、炭素短繊維を結着するパルプ炭化物が存在していないため、得られる多孔質炭素シートは熱伝導率も曲げ強度も低く、比較例3と同様に発電性能評価後の多孔質炭素シートの破壊を確認した。よって、DRY条件、WET条件の両方で電圧値が低い。
【0077】
なお、前駆体繊維シートに含まれるパルプとして、フィブリル化されたアクリル繊維を用いた実施例5およびポリエチレン繊維を用いた比較例5は、LBKP等のフィブリル化が進んでいない木材パルプを用いた場合に比べ、厚さ方向に空気を透過させたときの差圧が大きくなる傾向にあり、燃料電池内部での物質移動を阻害しないためには、木材パルプがより有効であることが分かる。
【0078】
以上のように、本発明の多孔質炭素シートの製造方法によれば、従来困難であった低密度、高強度および高熱伝導率の全てを同時に満足する多孔質炭素シートを提供することができ、本発明の多孔質炭素シートをガス拡散体の材料として用いた燃料電池は、いわゆるフラッディングおよびドライアップの両方に対する耐性が高く、加湿条件に依らず発電性能が非常に高い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る多孔質炭素シートは、固体高分子型燃料電池のガス拡散体に限らず、ダイレクトメタノール型燃料電池など各種電池の電極基材や脱水機用電極基材など、種々の電極基材に応用することができ、その応用範囲は広い。
【符号の説明】
【0080】
1 多孔質炭素シート
2 炭素短繊維
3 パルプ炭化物
4 樹脂炭化物
5 前駆体繊維シート
6 ホットプレス
7 上熱板
8 下熱板
9 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着した多孔質炭素シートであって、密度が0.25〜0.40g/cm、厚さ方向の熱伝導率が1.4〜4.0W/m/K、および、曲げ強度が25〜40MPaであることを特徴とする多孔質炭素シート。
【請求項2】
シートの厚さ方向に14cm/cm/secの空気を透過させたときのシートの単位厚さあたりの差圧が10〜100mmAq/mmである請求項1に記載の多孔質炭素シート。
【請求項3】
本文で定義される結着炭化物比率が40〜60%である請求項1または2に記載の多孔質炭素シート。
【請求項4】
シートの厚さが100〜250μmである請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素シート。
【請求項5】
炭素短繊維、樹脂およびパルプを含み、炭素短繊維の目付が20〜35g/mで、樹脂の目付が20〜35g/mである前駆体繊維シートを加圧処理する圧縮工程と、加圧処理された前駆体繊維シートを加熱し、パルプおよび樹脂を結着炭化物に転換する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前記炭化工程における加熱処理の最高温度を2200〜2700℃の範囲内とすることを特徴とする多孔質炭素シートの製造方法。
【請求項6】
前駆体繊維シートに含まれるパルプの含有量が、炭素短繊維100重量部に対して5〜100重量部の範囲内である請求項5に記載の多孔質炭素シートの製造方法。
【請求項7】
パルプが木材パルプである請求項5または6に記載の多孔質炭素シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195374(P2011−195374A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63419(P2010−63419)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】