多段変換器の運転制御装置
【課題】設備容量を増大させることなく交流系統への高調波の流出を抑制でき健全な変換器群で運転を継続できる多段変換器の運転制御装置を提供することである。
【解決手段】多段変換器11の各変換器群12のいずれかの変換器13の故障を変換器故障検出装置19が検出したときは、変換器制御装置20は、その変換器が属する変換器群12の変換器13を停止させるとともに、残りの健全な変換器群12を運転継続させる。その際には、残りの健全な変換器群12から発生する高調波がハイパスフィルタ15により交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で運転継続する。また、冷却器制御装置21は、運転継続される残りの健全な変換器群12の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群12に供給するように冷却器17を駆動制御する。
【解決手段】多段変換器11の各変換器群12のいずれかの変換器13の故障を変換器故障検出装置19が検出したときは、変換器制御装置20は、その変換器が属する変換器群12の変換器13を停止させるとともに、残りの健全な変換器群12を運転継続させる。その際には、残りの健全な変換器群12から発生する高調波がハイパスフィルタ15により交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で運転継続する。また、冷却器制御装置21は、運転継続される残りの健全な変換器群12の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群12に供給するように冷却器17を駆動制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続される多段変換器の運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧大容量の交直変換器の構成には、複数の単位変換器を多段に接続した多段変換器を採用するケースが多い。これは、単位変換器当たりの電圧や容量がそれほど大きくなくても、多段構成にすることで高電圧大容量を実現できるからである。多段変換器は、単位変換器を1段と数えて単位変換器が数段で1群を構成し、さらに、これらの各変換器群が変換器用変圧器により多重に結合されて構成される。
【0003】
図14は、冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の構成図である。多段変換器11は2つの変換器群12a、12bから構成され、各々の変換器群12a、12bはそれぞれ2台の変換器13を有している。すなわち、変換器群12aは2台の変換器13a1、13a2を有し、変換器群12bは2台の変換器13b1、13b2を有している。そして、変換器群12a、12bごとに変換器用変圧器14a、14bを介して交流系統に連系している。そして、交流系統には、変換器13a1〜13b2から発生する高調波が交流系統へ流出するのを防ぐためのハイパスフィルタ(以下HPF)が設けられている。
【0004】
例えば、変換器13は1段あたり容量25MVA、スイッチング周波数450Hzとすると、これが2段で1群を構成しているので、1つの変換器群の容量は50MVAとなり変換器用変圧器14を介して交流系統に連系している。変換器用変圧器14は、昇圧する交流側は2段の巻線を直列接続し、直流側の巻線は各段の変換器13に接続されている。従って、2台の変換器用変圧器14a、14bは交流系統側で並列接続されていて全変換器容量は100MVAになる。
【0005】
一方、変換器13a1〜13b2を運転すると、変換素子の導通損失、スイッチング損失、回路の浮遊インダクタンスによる損失等により熱を発生する。多段変換器11は群ごとに熱交換器16と冷却器17とがそれぞれ設置されている。図14では、変換器群12aに対して熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対して熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2が設けられている。
【0006】
例えば、変換器群12aの変換器13a1、13a2の変換素子を冷却するための1次系冷却水は、図示省略のポンプにより熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16aにより2次系冷却水側へ熱放出される。2次系冷却水も図示省略のポンプにより循環されており、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1、17a2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。変換器群12bの冷却系統についても同様である。
【0007】
ここで、変換器13a1〜13b2を運転すると変換器13a1〜13b2から高調波が発生する。変換器13a1〜13b2から発生する高調波が交流系統へ流出するのを防ぐためにHPF15が変換器用変圧器14の交流系統側に設置されているが、HPF15には設計周波数があり、この設計周波数のときに最も多くの高調波の流出を防ぐように設計されている。
【0008】
1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswの和を等価スッチング周波数といい、HPF15の設計周波数はこの等価スイッチング周波数の値に設計されている。図14では、1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswが450Hzであることから、等価スイッチング周波数は450Hz×2段×2群=1800Hzとなり、HPF15の設計周波数も1800Hzとしている。
【0009】
このような多段変換器11のいずれかの変換器が故障したときは、多段変換器11の全体を停止するようにしている。これは、残りの健全な変換器群12で運転を継続したとすると、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数以下になり、高調波の流出が大きくなってしまうためである。そこで、図15に示すように変換器群12a、12bごとにHPF15a、15bを設置することが考えられるが、各々のHPF15a、15bの設計周波数を小さくすることになるので、設備容量の増大を招いて設備寸法が大きくなり、HPF15の設置数も多くなるため現実的ではない。
【0010】
ここで、複数台の電力変換器の直流側を接続して電力の融通を行うシステムにおいて、1台の電力変換器が系統事故や変換器の故障等で停止しても、残りの健全な電力変換器で運転を継続できるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−74769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1のものでは予備の電力変換器を設ける必要があるので、設備容量の増大を招くことになる。また、多段変換器11のいずれかの変換器13が故障したときは、多段変換器11の全体を停止するようにしているので、残りの健全な変換器群の利用率が低下する。特に電力の需要ピーク時に健全な変換器群で運転を継続し電力を供給できるようにすることが望まれている。
【0012】
本発明の目的は、設備容量を増大させることなく交流系統への高調波の流出を抑制でき健全な変換器群で運転を継続できる多段変換器の運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、各変換器群のいずれかの変換器の故障を検出する変換器故障検出装置と、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させるとともに、残りの健全な変換器群を運転継続させたときに残りの健全な変換器群から発生する高調波が前記ハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続する変換器制御装置と、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するように前記冷却器を駆動制御する冷却器制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1の発明において、前記変換器制御装置は、残りの健全な変換器群の等価スイッチング周波数が故障前の変換器群の等価スイッチング周波数と等しくなるように、残りの健全な変換器群の各々の変換器の周波数を高くして運転継続させることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1または2の発明において、前記冷却器制御装置は、故障前の複数の変換器群を冷却していた冷却器を運転継続し、残りの健全な変換器群に冷却水を供給することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1または2の発明において、前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群が故障直前の出力を維持するときの発熱量に見合った冷却水を供給するのに必要な台数の冷却器を運転し、健全な変換器群に供給することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項4の発明において、前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1の発明において、変換器制御装置は、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続することを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、 複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置と、故障が検出された冷却器を停止させるとともに残りの健全な冷却器を運転継続させる冷却器制御装置と、健全な冷却器の冷却能力の範囲内及び多段変換器から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして変換器群を運転継続する変換器制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各変換器群のいずれかの変換器が故障したときは、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させ、残りの健全な変換器群を運転継続させるので、多段変換器の利用率が向上する。また、その際に、残りの健全な変換器群から発生する高調波がハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続するので、交流系統に高調波を流出することを抑制できる。
【0021】
また、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続するので、交流系統への高調波の流出を抑制しつつ、電力の供給を極力継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。図14に示した従来例は、2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器であるが、図1に示す多段変換器11は、2つの変換器群12a、12bから構成され、各々の変換器群12a、12bは2台の変換器13をそれぞれ有し、冷却系統にはプールを備えている。図14と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0023】
多段変換器11は図示省略の直流電源に接続され、変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2により直流を交流に変換して変換器用変圧器14a、14bを介して交流系統に電力を供給している。以下の説明では、変換器13は1段あたり容量25MVA、スイッチング周波数450Hzとして説明する。変換器13は1段あたり容量25MVAであるので、1つの変換器群の容量は50MVAとなり、多段変換器11の全変換器容量は100MVAになる。また、等価スイッチング周波数は1800Hzである。
【0024】
変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2を冷却する冷却系統は、1次系冷却水が熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間、熱交換器16bと変換器13b1、13b2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16a、16bにより熱交換される。そして、熱交換器16a、16bにより熱交換された二次系冷却水は、プール18を介して熱交換器16a、16bと冷却器17a1〜17b2との間を循環し、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1〜17b2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。
【0025】
次に、変換器故障検出装置19は、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2の故障を検出するものであり、変換器故障検出装置19は、いずれかの変換器13a1〜13b2の故障を検出したときは、変換器制御装置20及び冷却器制御装置21に故障検出信号を出力する。
【0026】
変換器制御装置20は、通常時は、多段変換器11への所定の電力指令に基づいてゲート制御回路22を介して多段変換器11の変換器13a1〜13b2を制御し、直流電力を交流電力に変換して交流系統に交流電力を供給する。
【0027】
そして、変換器故障検出装置19から故障検出信号を入力すると、まず、故障が検出された変換器13及びその変換器13が属する変換器群12の変換器13を停止させる。いま、変換器群12aの変換器13a1が故障したとすると、変換器制御装置20は、故障が検出された変換器13a1及びその変換器13a1が属する変換器群12aの変換器13a2を停止させる。変換器13a1、13a2の停止は、ゲート制御回路22からのゲート信号をブロックすることにより行う。
【0028】
それとともに、残りの健全な変換器群12bを運転継続させる。その際には、その健全な変換器群12bから発生する高調波がHPF15により交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で運転する。例えば、1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswが450Hzである場合には、その2倍の900Hzとする。これは、故障した変換器13a1を含む変換器群12aが停止しているので、健全な変換器群12bだけの運転とした場合には、スイッチング周波数fswをそのままにしておくと、等価スイッチング周波数は450Hz×2段×1群=900Hzとなり、HPF15の設計周波数の1800Hzに一致しなくなるからである。そこで、スイッチング周波数fswを900Hzとし、等価スイッチング周波数を900Hz×2段×1群=1800Hzとし、HPF15の設計周波数と同じ1800Hzとする。
【0029】
また、冷却器制御装置21は、変換器故障検出装置19から故障検出信号を入力すると、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群12bに供給するように、冷却器17a1〜17b2を駆動制御する。
【0030】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させる(S2)。
【0031】
次に、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。健全な変換器群12のスイッチング周波数fswは、前述したように、運転継続される1台の変換器13当たりのスイッチング周波数(以下fsw)の和である等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように求められる。そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S4)。これにより、高調波が交流系統に流出することを防止できる。
【0032】
なお、冷却器制御装置21による冷却器17a1〜17b2の駆動制御は、変換器13の故障後においても故障前と同じ状態で変換器群12a、12bを冷却する。例えば、変換器群12aを停止して残りの健全な変換器群12bで運転継続する場合、健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2を2倍の900Hzのスイッチング周波数fswで運転することになるので、変換器13b1、13b2の損失が450Hzのスイッチング周波数fswで運転したときよりも大きくなるが、変換器13の故障前後において同じ状態で変換器群12a、12bを冷却するので、損失が大きくなった分だけ発熱量が増加しても変換器群12bを十分冷却できる。
【0033】
図3は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の他の一例を示すフローチャートである。残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswが2倍になっても、変換器損失は例えば1.3倍程度で2倍までは増えない。よって、図2に示した一例のようにすべての冷却器17a1〜17b2の冷却ファンを全台運転すると補機損も大きくなるので、不要な冷却ファンを停止させて補機損を少なくする。
【0034】
通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させ(S2)、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。
【0035】
そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2が故障直前の出力を維持するように運転したときの変換器損失を求め(S4)、その変換器損失による発熱量を冷却できる冷却器17の台数を算出する(S5)。算出した冷却器17の台数が冷却器17a1〜17b2の全台数より少ないときは、余剰の冷却器を停止し(S6)、ステップS3で求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S7)。
【0036】
いま、冷却器17a1〜17b2はそれぞれ160kWの最大熱交換量(冷却能力)を有し、冷却器17a1〜17b2の冷却ファンの補機損はそれぞれ13kWであり、残りの健全な変換器群12bを900Hzのスイッチング周波数fswで1puの出力で運転継続させた場合の変換器損失が430kWであるとする。この場合、3台の冷却器17での最大熱交換量は、480kW(160kW×3)であるので、1台の冷却器17を停止しても、健全な変換器群12bを運転継続できる。1台の冷却器17を停止した場合には補機損は13kWだけ少なくなる。
【0037】
このように、高調波が交流系統に流出することを防止でき、また、余剰の冷却器を停止できるので補機損を低減できる。また、冷却器の予備器を確保できるので、仮に事故復旧中に冷却器の冷却ファンが故障しても予備器を運転することで対応できる。
【0038】
以上の説明では、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一としたが、表1に示すように、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にして最大熱交換量に差を設けることも可能である。
【表1】
【0039】
いま、冷却器17a1の最大熱交換量Q1を200kW(補機損を14kW)、冷却器17a2の最大熱交換量Q2を120kW(補機損を12kW)、冷却器17b1の最大熱交換量Q3を260kW(補機損を15kW)、冷却器17b2の最大熱交換量Q4を60kW(補機損を11kW)とする。そうすると、冷却器17a1〜17b2の組合せにより、図4(a)に示すように12通りの熱交換量(冷却能力)が得られる。これに対し、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一とした場合には、図4(b)に示すように4通りである。
【0040】
変換器群12の変換器13の出力が1puのままで運転している場合には、運転する冷却器17a1〜17b2は同じ台数であるので補機損に差はないが、常に変換器13の出力が1puのままとは限らないので、冷却器17の最大熱交換量を非対称とした場合には冷却器17の運転台数を少なくできる。
【0041】
例えば、常時運転時にスイッチング周波数fswが450Hzのままで、出力が1puから0.9puにして運転する場合には、変換器13の損失は1つの変換器群12あたり例えば286kWとなり、2つの変換器群12の場合には572kWになる。この場合、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一とすると、図4(b)に示すように4台を起動して640kWとしなければならないが、冷却器17の最大熱交換量を非対称とした場合には、図4(a)に示すように、冷却器17a1〜17b1の3台を起動した場合に580kwとなるので冷却器17b2を停止できる。従って、補機損は41kWとなり、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)が全て160kWで均一とする場合の補機損52kWと比較して、補機損は11kWだけ少なくなる。
【0042】
そこで、変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障した場合に残りの健全な変換器群12を運転継続させる場合にも、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にして最大熱交換量に差を設ける。
【0043】
図5は冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にした場合の本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させ(S2)、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。
【0045】
そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2が故障直前の出力を維持するように運転したときの変換器損失を求める(S4)。さらに、求めた変換器損失による発熱量を冷却できる冷却器の組合せを求め、その冷却器の組合せのうち冷却器損失が最小となる組合せを選択する(S5)。その選択した組合せの冷却器以外の冷却器を停止し(S6)、ステップS3で求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S7)。
【0046】
このように、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転するので、補機損を最小とすることができる。
【0047】
第1の実施の形態によれば、変換器群のいずれかの変換器が故障により停止したときは、残された健全な変換器群のスイッチング周波数fswを、常時運転時のスイッチング周波数fswよりも大きくして、HPFの設計周波数に近づけて残された健全な変換器群の運転を継続させるので、交流系統への高調波の流出を防止でき、高調波ひずみの低減ができる。
【0048】
また、健全な変換器群のスイッチング周波数fswを大きくすることに伴い変換器損失が増えるが、この変換器損失の増加分も考慮して残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するので、健全な変換器群を安定的に運転継続できる。
【0049】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に代えて、2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用したものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0050】
図6に示すように、変換器群12a、12bはそれぞれ独立して冷却系統が設けられている。変換器群12aに対して熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対して熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2がそれぞれ設けられている。従って、変換器群12aの冷却系統の冷却器17a1、17a2で変換器群12bを冷却すること、及び変換器群12bの冷却系統の冷却器17b1、17b2で変換器群12aを冷却することができない。
【0051】
いま、冷却器17a1〜17b2は同一の熱交換量160kWであるとすると、変換器群12aの変換器13a1に故障が発生し、変換器群12aが停止した場合には、残りの健全な変換器群12bを冷却できるのは冷却器17b1、17b2であり、最大熱交換量は320kWである。従って、健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2のスイッチング周波数を900Hzまで大きくした運転をすると発熱量が増加するので、冷却器17a1、17a2を用いて残りの健全な変換器群12bを冷却することができない。つまり、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b1、17b2からだけでは健全な変換器群12bに供給できないことになる。
【0052】
そこで、変換器制御装置20は、冷却器17b1、17b2の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswまたは出力電力puを小さくして残りの健全な変換器群12bを運転継続する。
【0053】
図7は、第2の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0054】
図7の特性曲線S4から分かるように、変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA=50MVA×0.7)以下であれば、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzまで上げても変換器損失が冷却器17b1、17b2の最大熱交換量の和320kWを越えないことが分かる。よって、残りの健全な変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA)以下で運転継続させてもよいときは、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzのままで運転継続できる。
【0055】
一方、残りの健全な変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA)以上で運転継続させたいときは、変換器損失が320kW以下になるように、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzよりも下げれば運転継続できることになる。例えば、残りの健全な変換器群12bの出力を0.8pu(40MVA)で運転継続させたいときは、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを750Hzまで下げることで運転継続できる。
【0056】
この場合、多段変換器11の等価スイッチング周波数は、750Hz×2=1500Hzとなり、HPF15の設計周波数である1800Hzからずれることになり、交流系統に高調波が流出することになる。この高調波の流出が許容範囲内となる範囲で、残りの健全な変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを変更することになる。
【0057】
図8はHPF15の設計周波数を定める際のHPF15の%インピーダンスの説明図であり、図8(a)は多段変換器11の交流系統の接続点における回路図、図8(b)はその等価回路である。
【0058】
図8(a)において、Vnは多段変換器11を高調波電源と見た場合の高調波電圧(pu)、VbはHPF15の接続点における母線電圧(pu)、%ZsはHPF15の接続点から見た交流系統側の%インピーダンス、%Ztは変換器変圧器14の%インピーダンス、%ZfはHPF15の%インピーダンスである。高調波電圧Vnは多段変換器11が通常運転を行う際に発生する高調波1800Hzの電圧として取り扱う。また、第2の実施の形態では健全な変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hz以外に変更して運用することもあるので、例えば、750Hzで運転する場合も考慮して、高調波電圧Vnの周波数は1800Hz〜1500Hzであるとする。
【0059】
図8(b)は図8(a)の等価回路であり、この等価回路からHPF15の接続点における母線電圧Vbを求めると下記の(1)式で示される。
【0060】
Vb=%Zs・%Zf/(%Zt・%Zs+%Zf・%Zt+%Zs・%Zf)・Vn …(1)
HPF15の接続点における母線電圧Vbを高調波電圧Vnの3%以下に保つようにするためのHPF15の%Zfは(2)式で示される。
【0061】
Vb/Vn=%Zs・%Zf/(%Zt・%Zs+%Zf・%Zt+%Zs・%Zf)<0.03
%Zf<0.03%Zt・%Zs/{%Zs−0.03(%Zt+%Zs)} …(2)
HPF15の接続点から見た交流系統側の%Zf、変換器変圧器14の%Ztは既知であるから、(2)式を満たすHPF15の%Zfを求めることができる。
【0062】
図9は、HPF15の%ZfとHPFの設計周波数fとの関係を示す特性図である。T0は高調波電圧Vnが1500Hzを基準としたときのHPF15の%Zf0の特性曲線、T1は高調波電圧Vnが1800Hzを基準としたときのHPF15の%Zf1の特性曲線である。また、f0は1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数、f1は1800Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数である。図9から分かるように、1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f0を満たすように、HPF15の%Zfを定めておけば、1800Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f1も満たすことが分かる。
【0063】
従って、、HPF15の%Zfを1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f0を満たすように定めておけば、等価スイッチング周波数を1500Hz〜1800Hzの範囲で変更しても、交流系統に高調波を流出することを防止できる。
【0064】
第2の実施の形態によれば、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b1、17b2から健全な変換器群12bに供給できないときは、冷却器17の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続するので、いずれかの変換器13が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0065】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第3の実施の形態は、図6に示した第2の実施の形態に対し、変換器故障検出装置19に代えて、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置23を設け、変換器制御装置20は、健全な冷却器17の冷却能力の範囲内及び多段変換器11から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群12のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続するようにしたものである。図6と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0066】
図10に示すように、変換器群12a、12bはそれぞれ独立して冷却系統が設けられ、変換器群12aに対しては熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対しては熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2がそれぞれ設けられている。従って、変換器群12aの冷却系統の冷却器17a1、17a2で変換器群12bを冷却すること、及び変換器群12bの冷却系統の冷却器17b1、17b2で変換器群12aを冷却することができない。
【0067】
いま、冷却器17a1〜17b2は同一の熱交換量160kWであるとし、変換器群12bの冷却器17b1に故障が発生したとすると、変換器群12bを冷却できるのは冷却器17b2だけとなり、最大熱交換量は160kWとなる。つまり、運転継続される変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b2から変換器群12bに供給できないことになる。
【0068】
そこで、変換器制御装置20は、健全な冷却器17b2の冷却能力の範囲内及び変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、多段変換器11のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続する。
【0069】
図11は、第3の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0070】
図11の特性曲線S7から分かるように、変換器群12bの出力が0.4pu(20MVA=50kW×0.4)以下であれば、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswが450Hzのままでも、変換器損失が冷却器17b2の最大熱交換量160kWを越えないことが分かる。
【0071】
そこで、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.5pu〜0.7pu(50MVA〜70MVA)で運転継続させたいときは、健全な変換器群12aの出力を1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bの出力を0.0pu〜0.4pu(0MVA〜20MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転する。従って、冷却器17b1が故障した変換器群12bをスイッチング周波数fswを450Hzとしたままで運転継続できる。
【0072】
また、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.5pu(50MVA)以下で運転継続させたいときは、冷却器17b1が故障した変換器群12bを完全停止し、健全な変換器群12aだけで運転継続する。例えば、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.4pu(40MVA)で運転する際には、健全な変換器群12aの出力を0.8pu(40MVA)、スイッチング周波数fswを750Hzとして運転する。
【0073】
一方、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.7pu(70MVA)以上で運転継続させたいときは、健全な変換器群12aの出力を1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bは変換器損失が160kW以下になるように、スイッチング周波数fswを450Hzよりも下げて運転継続する。例えば、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.75pu(75MVA)で運転継続するときは、健全な変換器群12aを1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bの出力を0.5pu(25MVA)、スイッチング周波数fswを350Hzにして運転する。
【0074】
第3の実施の形態によれば、変換器群12a、12bごとに冷却系統を備えた多段変換器11において、いずれかの冷却器17が故障したときは、故障した冷却器17の変換器群12の出力またはスイッチング周波数fswを変更して、残りの健全な冷却器17の最大熱交換量160kWを越えないように運転するので、いずれかの冷却器17が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0075】
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、変換器故障検出装置19に代えて、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置23を設け、変換器制御装置20は、健全な冷却器17の冷却能力の範囲内及び多段変換器11から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群12のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続するようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0076】
図12に示すように、変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2を冷却する冷却系統は、1次系冷却水が熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間、熱交換器16bと変換器13b1、13b2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16a、16bにより熱交換される。そして、熱交換器16a、16bにより熱交換された二次系冷却水は、プール18を介して熱交換器16a、16bと冷却器17a1〜17b2との間を循環し、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1〜17b2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。
【0077】
いま、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量が非対称であり、冷却器17a1の最大熱交換量Q1は200kW、冷却器17a2の最大熱交換量Q2は120kW、冷却器17b1の最大熱交換量Q3は260kW、冷却器17b2の最大熱交換量Q4は60kWであるとする。そして、一番大きい熱交換量260kWを持つ冷却器17b1が故障したとする。
【0078】
この場合、残りの健全な冷却器17a1、17a2、17b2の合計の最大熱交換量は380kWになってしまう。そこで、第4の実施の形態では、各々の変換器群12a、12b側で変換器13のスイッチング周波数fsw、出力(pu)を変えて変換器損失が380kWを越えないように運転する。
【0079】
図13は、第4の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0080】
図13に示すように、スイッチング周波数fswが450Hzのとき、多段変換器11の出力が0.55pu以下であれば、変換器損失が380kWを越えないことが分かる。多段変換器11の出力を0.55pu以下で運転継続させたいときは、変換器群12a、12bの双方の変換器13はともにスイッチング周波数fswを450Hzのままで運転継続する。一方、多段変換器11の出力を0.55pu以上で運転継続させたいときは、スイッチング周波数fswを450Hzよりも下げて運転継続する。例えば、多段変換器11の出力を0.65puで運転継続する場合には、変換器群12a、12bの変換器13ともに出力を0.65puとし、スイッチング周波数fswを350Hzにする。
【0081】
第4の実施の形態によれば、2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器11において、いずれかの冷却器17が故障したときは、多段変換器11の出力またはスイッチング周波数fswを変更して、残りの健全な冷却器17の最大熱交換量を越えないように運転するので、いずれかの冷却器17が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0082】
以上の各実施の形態では、2段2群構成の多段変換器について説明したが、2段3群構成とすることも可能であり、さらにm段n群構成とすることも可能である。群数が増えると、1つの変換器群12が故障停止した場合、残りの健全な変換器群の比率が高くなるので、運転継続した場合の出力の低下を抑制できる。例えば、2群構成の場合には、1つの変換器群12が故障して運転継続させた場合には1/2の出力となるが、3群構成であると2/3の出力となり、出力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の他の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施の形態における冷却器の最大熱交換量を非対称にした場合の冷却系統が取り得る熱交換量の組合せの説明図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の別の他の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図7】本発明の第2の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるHPFの設計周波数を定める際のHPFの%インピーダンスの説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるHPFの%ZfとHPFの設計周波数fとの関係を示す特性図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図11】本発明の第3の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図13】本発明の第4の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図14】冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の一例の構成図。
【図15】冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の他の一例の構成図。
【符号の説明】
【0084】
11…多段変換器、12…変換器群、13…変換器、14…変換器用変圧器、15…ハイパスフィルタ、16…熱交換器、17…冷却器、18…プール、19…変換器故障検出装置、20…変換器制御装置、21…冷却器制御装置、22…ゲート制御回路、23…冷却器故障検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続される多段変換器の運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧大容量の交直変換器の構成には、複数の単位変換器を多段に接続した多段変換器を採用するケースが多い。これは、単位変換器当たりの電圧や容量がそれほど大きくなくても、多段構成にすることで高電圧大容量を実現できるからである。多段変換器は、単位変換器を1段と数えて単位変換器が数段で1群を構成し、さらに、これらの各変換器群が変換器用変圧器により多重に結合されて構成される。
【0003】
図14は、冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の構成図である。多段変換器11は2つの変換器群12a、12bから構成され、各々の変換器群12a、12bはそれぞれ2台の変換器13を有している。すなわち、変換器群12aは2台の変換器13a1、13a2を有し、変換器群12bは2台の変換器13b1、13b2を有している。そして、変換器群12a、12bごとに変換器用変圧器14a、14bを介して交流系統に連系している。そして、交流系統には、変換器13a1〜13b2から発生する高調波が交流系統へ流出するのを防ぐためのハイパスフィルタ(以下HPF)が設けられている。
【0004】
例えば、変換器13は1段あたり容量25MVA、スイッチング周波数450Hzとすると、これが2段で1群を構成しているので、1つの変換器群の容量は50MVAとなり変換器用変圧器14を介して交流系統に連系している。変換器用変圧器14は、昇圧する交流側は2段の巻線を直列接続し、直流側の巻線は各段の変換器13に接続されている。従って、2台の変換器用変圧器14a、14bは交流系統側で並列接続されていて全変換器容量は100MVAになる。
【0005】
一方、変換器13a1〜13b2を運転すると、変換素子の導通損失、スイッチング損失、回路の浮遊インダクタンスによる損失等により熱を発生する。多段変換器11は群ごとに熱交換器16と冷却器17とがそれぞれ設置されている。図14では、変換器群12aに対して熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対して熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2が設けられている。
【0006】
例えば、変換器群12aの変換器13a1、13a2の変換素子を冷却するための1次系冷却水は、図示省略のポンプにより熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16aにより2次系冷却水側へ熱放出される。2次系冷却水も図示省略のポンプにより循環されており、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1、17a2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。変換器群12bの冷却系統についても同様である。
【0007】
ここで、変換器13a1〜13b2を運転すると変換器13a1〜13b2から高調波が発生する。変換器13a1〜13b2から発生する高調波が交流系統へ流出するのを防ぐためにHPF15が変換器用変圧器14の交流系統側に設置されているが、HPF15には設計周波数があり、この設計周波数のときに最も多くの高調波の流出を防ぐように設計されている。
【0008】
1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswの和を等価スッチング周波数といい、HPF15の設計周波数はこの等価スイッチング周波数の値に設計されている。図14では、1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswが450Hzであることから、等価スイッチング周波数は450Hz×2段×2群=1800Hzとなり、HPF15の設計周波数も1800Hzとしている。
【0009】
このような多段変換器11のいずれかの変換器が故障したときは、多段変換器11の全体を停止するようにしている。これは、残りの健全な変換器群12で運転を継続したとすると、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数以下になり、高調波の流出が大きくなってしまうためである。そこで、図15に示すように変換器群12a、12bごとにHPF15a、15bを設置することが考えられるが、各々のHPF15a、15bの設計周波数を小さくすることになるので、設備容量の増大を招いて設備寸法が大きくなり、HPF15の設置数も多くなるため現実的ではない。
【0010】
ここで、複数台の電力変換器の直流側を接続して電力の融通を行うシステムにおいて、1台の電力変換器が系統事故や変換器の故障等で停止しても、残りの健全な電力変換器で運転を継続できるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−74769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1のものでは予備の電力変換器を設ける必要があるので、設備容量の増大を招くことになる。また、多段変換器11のいずれかの変換器13が故障したときは、多段変換器11の全体を停止するようにしているので、残りの健全な変換器群の利用率が低下する。特に電力の需要ピーク時に健全な変換器群で運転を継続し電力を供給できるようにすることが望まれている。
【0012】
本発明の目的は、設備容量を増大させることなく交流系統への高調波の流出を抑制でき健全な変換器群で運転を継続できる多段変換器の運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、各変換器群のいずれかの変換器の故障を検出する変換器故障検出装置と、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させるとともに、残りの健全な変換器群を運転継続させたときに残りの健全な変換器群から発生する高調波が前記ハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続する変換器制御装置と、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するように前記冷却器を駆動制御する冷却器制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1の発明において、前記変換器制御装置は、残りの健全な変換器群の等価スイッチング周波数が故障前の変換器群の等価スイッチング周波数と等しくなるように、残りの健全な変換器群の各々の変換器の周波数を高くして運転継続させることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1または2の発明において、前記冷却器制御装置は、故障前の複数の変換器群を冷却していた冷却器を運転継続し、残りの健全な変換器群に冷却水を供給することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1または2の発明において、前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群が故障直前の出力を維持するときの発熱量に見合った冷却水を供給するのに必要な台数の冷却器を運転し、健全な変換器群に供給することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項4の発明において、前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、請求項1の発明において、変換器制御装置は、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続することを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明に係わる多段変換器の運転制御装置は、 複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置と、故障が検出された冷却器を停止させるとともに残りの健全な冷却器を運転継続させる冷却器制御装置と、健全な冷却器の冷却能力の範囲内及び多段変換器から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして変換器群を運転継続する変換器制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各変換器群のいずれかの変換器が故障したときは、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させ、残りの健全な変換器群を運転継続させるので、多段変換器の利用率が向上する。また、その際に、残りの健全な変換器群から発生する高調波がハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続するので、交流系統に高調波を流出することを抑制できる。
【0021】
また、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続するので、交流系統への高調波の流出を抑制しつつ、電力の供給を極力継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。図14に示した従来例は、2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器であるが、図1に示す多段変換器11は、2つの変換器群12a、12bから構成され、各々の変換器群12a、12bは2台の変換器13をそれぞれ有し、冷却系統にはプールを備えている。図14と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0023】
多段変換器11は図示省略の直流電源に接続され、変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2により直流を交流に変換して変換器用変圧器14a、14bを介して交流系統に電力を供給している。以下の説明では、変換器13は1段あたり容量25MVA、スイッチング周波数450Hzとして説明する。変換器13は1段あたり容量25MVAであるので、1つの変換器群の容量は50MVAとなり、多段変換器11の全変換器容量は100MVAになる。また、等価スイッチング周波数は1800Hzである。
【0024】
変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2を冷却する冷却系統は、1次系冷却水が熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間、熱交換器16bと変換器13b1、13b2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16a、16bにより熱交換される。そして、熱交換器16a、16bにより熱交換された二次系冷却水は、プール18を介して熱交換器16a、16bと冷却器17a1〜17b2との間を循環し、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1〜17b2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。
【0025】
次に、変換器故障検出装置19は、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2の故障を検出するものであり、変換器故障検出装置19は、いずれかの変換器13a1〜13b2の故障を検出したときは、変換器制御装置20及び冷却器制御装置21に故障検出信号を出力する。
【0026】
変換器制御装置20は、通常時は、多段変換器11への所定の電力指令に基づいてゲート制御回路22を介して多段変換器11の変換器13a1〜13b2を制御し、直流電力を交流電力に変換して交流系統に交流電力を供給する。
【0027】
そして、変換器故障検出装置19から故障検出信号を入力すると、まず、故障が検出された変換器13及びその変換器13が属する変換器群12の変換器13を停止させる。いま、変換器群12aの変換器13a1が故障したとすると、変換器制御装置20は、故障が検出された変換器13a1及びその変換器13a1が属する変換器群12aの変換器13a2を停止させる。変換器13a1、13a2の停止は、ゲート制御回路22からのゲート信号をブロックすることにより行う。
【0028】
それとともに、残りの健全な変換器群12bを運転継続させる。その際には、その健全な変換器群12bから発生する高調波がHPF15により交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で運転する。例えば、1台の変換器13当たりのスイッチング周波数fswが450Hzである場合には、その2倍の900Hzとする。これは、故障した変換器13a1を含む変換器群12aが停止しているので、健全な変換器群12bだけの運転とした場合には、スイッチング周波数fswをそのままにしておくと、等価スイッチング周波数は450Hz×2段×1群=900Hzとなり、HPF15の設計周波数の1800Hzに一致しなくなるからである。そこで、スイッチング周波数fswを900Hzとし、等価スイッチング周波数を900Hz×2段×1群=1800Hzとし、HPF15の設計周波数と同じ1800Hzとする。
【0029】
また、冷却器制御装置21は、変換器故障検出装置19から故障検出信号を入力すると、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群12bに供給するように、冷却器17a1〜17b2を駆動制御する。
【0030】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させる(S2)。
【0031】
次に、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。健全な変換器群12のスイッチング周波数fswは、前述したように、運転継続される1台の変換器13当たりのスイッチング周波数(以下fsw)の和である等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように求められる。そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S4)。これにより、高調波が交流系統に流出することを防止できる。
【0032】
なお、冷却器制御装置21による冷却器17a1〜17b2の駆動制御は、変換器13の故障後においても故障前と同じ状態で変換器群12a、12bを冷却する。例えば、変換器群12aを停止して残りの健全な変換器群12bで運転継続する場合、健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2を2倍の900Hzのスイッチング周波数fswで運転することになるので、変換器13b1、13b2の損失が450Hzのスイッチング周波数fswで運転したときよりも大きくなるが、変換器13の故障前後において同じ状態で変換器群12a、12bを冷却するので、損失が大きくなった分だけ発熱量が増加しても変換器群12bを十分冷却できる。
【0033】
図3は本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の他の一例を示すフローチャートである。残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswが2倍になっても、変換器損失は例えば1.3倍程度で2倍までは増えない。よって、図2に示した一例のようにすべての冷却器17a1〜17b2の冷却ファンを全台運転すると補機損も大きくなるので、不要な冷却ファンを停止させて補機損を少なくする。
【0034】
通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させ(S2)、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。
【0035】
そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2が故障直前の出力を維持するように運転したときの変換器損失を求め(S4)、その変換器損失による発熱量を冷却できる冷却器17の台数を算出する(S5)。算出した冷却器17の台数が冷却器17a1〜17b2の全台数より少ないときは、余剰の冷却器を停止し(S6)、ステップS3で求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S7)。
【0036】
いま、冷却器17a1〜17b2はそれぞれ160kWの最大熱交換量(冷却能力)を有し、冷却器17a1〜17b2の冷却ファンの補機損はそれぞれ13kWであり、残りの健全な変換器群12bを900Hzのスイッチング周波数fswで1puの出力で運転継続させた場合の変換器損失が430kWであるとする。この場合、3台の冷却器17での最大熱交換量は、480kW(160kW×3)であるので、1台の冷却器17を停止しても、健全な変換器群12bを運転継続できる。1台の冷却器17を停止した場合には補機損は13kWだけ少なくなる。
【0037】
このように、高調波が交流系統に流出することを防止でき、また、余剰の冷却器を停止できるので補機損を低減できる。また、冷却器の予備器を確保できるので、仮に事故復旧中に冷却器の冷却ファンが故障しても予備器を運転することで対応できる。
【0038】
以上の説明では、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一としたが、表1に示すように、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にして最大熱交換量に差を設けることも可能である。
【表1】
【0039】
いま、冷却器17a1の最大熱交換量Q1を200kW(補機損を14kW)、冷却器17a2の最大熱交換量Q2を120kW(補機損を12kW)、冷却器17b1の最大熱交換量Q3を260kW(補機損を15kW)、冷却器17b2の最大熱交換量Q4を60kW(補機損を11kW)とする。そうすると、冷却器17a1〜17b2の組合せにより、図4(a)に示すように12通りの熱交換量(冷却能力)が得られる。これに対し、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一とした場合には、図4(b)に示すように4通りである。
【0040】
変換器群12の変換器13の出力が1puのままで運転している場合には、運転する冷却器17a1〜17b2は同じ台数であるので補機損に差はないが、常に変換器13の出力が1puのままとは限らないので、冷却器17の最大熱交換量を非対称とした場合には冷却器17の運転台数を少なくできる。
【0041】
例えば、常時運転時にスイッチング周波数fswが450Hzのままで、出力が1puから0.9puにして運転する場合には、変換器13の損失は1つの変換器群12あたり例えば286kWとなり、2つの変換器群12の場合には572kWになる。この場合、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)は全て160kWで均一とすると、図4(b)に示すように4台を起動して640kWとしなければならないが、冷却器17の最大熱交換量を非対称とした場合には、図4(a)に示すように、冷却器17a1〜17b1の3台を起動した場合に580kwとなるので冷却器17b2を停止できる。従って、補機損は41kWとなり、各冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量(冷却能力)が全て160kWで均一とする場合の補機損52kWと比較して、補機損は11kWだけ少なくなる。
【0042】
そこで、変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障した場合に残りの健全な変換器群12を運転継続させる場合にも、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にして最大熱交換量に差を設ける。
【0043】
図5は冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量を非対称にした場合の本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
通常運転中において、各変換器群12a、12bのいずれかの変換器13a1〜13b2が故障したか否かを判定し(S1)、いずれかの変換器13a1〜13b2も故障していないときは、処理を終了し通常運転を継続する。一方、いずれかの変換器13a1〜13b2が故障したときは、例えば変換器13a1が故障したときは、故障した変換器13a1の属する変換器群12aを停止させ(S2)、等価スイッチング周波数がHPF15の設計周波数と同じ周波数になるように、健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswを求める(S3)。
【0045】
そして、求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2が故障直前の出力を維持するように運転したときの変換器損失を求める(S4)。さらに、求めた変換器損失による発熱量を冷却できる冷却器の組合せを求め、その冷却器の組合せのうち冷却器損失が最小となる組合せを選択する(S5)。その選択した組合せの冷却器以外の冷却器を停止し(S6)、ステップS3で求めたスイッチング周波数fswで健全な変換器12bを運転継続する(S7)。
【0046】
このように、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転するので、補機損を最小とすることができる。
【0047】
第1の実施の形態によれば、変換器群のいずれかの変換器が故障により停止したときは、残された健全な変換器群のスイッチング周波数fswを、常時運転時のスイッチング周波数fswよりも大きくして、HPFの設計周波数に近づけて残された健全な変換器群の運転を継続させるので、交流系統への高調波の流出を防止でき、高調波ひずみの低減ができる。
【0048】
また、健全な変換器群のスイッチング周波数fswを大きくすることに伴い変換器損失が増えるが、この変換器損失の増加分も考慮して残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するので、健全な変換器群を安定的に運転継続できる。
【0049】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に代えて、2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用したものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0050】
図6に示すように、変換器群12a、12bはそれぞれ独立して冷却系統が設けられている。変換器群12aに対して熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対して熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2がそれぞれ設けられている。従って、変換器群12aの冷却系統の冷却器17a1、17a2で変換器群12bを冷却すること、及び変換器群12bの冷却系統の冷却器17b1、17b2で変換器群12aを冷却することができない。
【0051】
いま、冷却器17a1〜17b2は同一の熱交換量160kWであるとすると、変換器群12aの変換器13a1に故障が発生し、変換器群12aが停止した場合には、残りの健全な変換器群12bを冷却できるのは冷却器17b1、17b2であり、最大熱交換量は320kWである。従って、健全な変換器群12bの変換器13b1、13b2のスイッチング周波数を900Hzまで大きくした運転をすると発熱量が増加するので、冷却器17a1、17a2を用いて残りの健全な変換器群12bを冷却することができない。つまり、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b1、17b2からだけでは健全な変換器群12bに供給できないことになる。
【0052】
そこで、変換器制御装置20は、冷却器17b1、17b2の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数fswまたは出力電力puを小さくして残りの健全な変換器群12bを運転継続する。
【0053】
図7は、第2の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0054】
図7の特性曲線S4から分かるように、変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA=50MVA×0.7)以下であれば、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzまで上げても変換器損失が冷却器17b1、17b2の最大熱交換量の和320kWを越えないことが分かる。よって、残りの健全な変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA)以下で運転継続させてもよいときは、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzのままで運転継続できる。
【0055】
一方、残りの健全な変換器群12bの出力が0.7pu(35MVA)以上で運転継続させたいときは、変換器損失が320kW以下になるように、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hzよりも下げれば運転継続できることになる。例えば、残りの健全な変換器群12bの出力を0.8pu(40MVA)で運転継続させたいときは、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを750Hzまで下げることで運転継続できる。
【0056】
この場合、多段変換器11の等価スイッチング周波数は、750Hz×2=1500Hzとなり、HPF15の設計周波数である1800Hzからずれることになり、交流系統に高調波が流出することになる。この高調波の流出が許容範囲内となる範囲で、残りの健全な変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを変更することになる。
【0057】
図8はHPF15の設計周波数を定める際のHPF15の%インピーダンスの説明図であり、図8(a)は多段変換器11の交流系統の接続点における回路図、図8(b)はその等価回路である。
【0058】
図8(a)において、Vnは多段変換器11を高調波電源と見た場合の高調波電圧(pu)、VbはHPF15の接続点における母線電圧(pu)、%ZsはHPF15の接続点から見た交流系統側の%インピーダンス、%Ztは変換器変圧器14の%インピーダンス、%ZfはHPF15の%インピーダンスである。高調波電圧Vnは多段変換器11が通常運転を行う際に発生する高調波1800Hzの電圧として取り扱う。また、第2の実施の形態では健全な変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswを900Hz以外に変更して運用することもあるので、例えば、750Hzで運転する場合も考慮して、高調波電圧Vnの周波数は1800Hz〜1500Hzであるとする。
【0059】
図8(b)は図8(a)の等価回路であり、この等価回路からHPF15の接続点における母線電圧Vbを求めると下記の(1)式で示される。
【0060】
Vb=%Zs・%Zf/(%Zt・%Zs+%Zf・%Zt+%Zs・%Zf)・Vn …(1)
HPF15の接続点における母線電圧Vbを高調波電圧Vnの3%以下に保つようにするためのHPF15の%Zfは(2)式で示される。
【0061】
Vb/Vn=%Zs・%Zf/(%Zt・%Zs+%Zf・%Zt+%Zs・%Zf)<0.03
%Zf<0.03%Zt・%Zs/{%Zs−0.03(%Zt+%Zs)} …(2)
HPF15の接続点から見た交流系統側の%Zf、変換器変圧器14の%Ztは既知であるから、(2)式を満たすHPF15の%Zfを求めることができる。
【0062】
図9は、HPF15の%ZfとHPFの設計周波数fとの関係を示す特性図である。T0は高調波電圧Vnが1500Hzを基準としたときのHPF15の%Zf0の特性曲線、T1は高調波電圧Vnが1800Hzを基準としたときのHPF15の%Zf1の特性曲線である。また、f0は1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数、f1は1800Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数である。図9から分かるように、1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f0を満たすように、HPF15の%Zfを定めておけば、1800Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f1も満たすことが分かる。
【0063】
従って、、HPF15の%Zfを1500Hzを基準としたときの(2)式を満たす設計周波数f0を満たすように定めておけば、等価スイッチング周波数を1500Hz〜1800Hzの範囲で変更しても、交流系統に高調波を流出することを防止できる。
【0064】
第2の実施の形態によれば、運転継続される残りの健全な変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b1、17b2から健全な変換器群12bに供給できないときは、冷却器17の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群12bのスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続するので、いずれかの変換器13が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0065】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第3の実施の形態は、図6に示した第2の実施の形態に対し、変換器故障検出装置19に代えて、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置23を設け、変換器制御装置20は、健全な冷却器17の冷却能力の範囲内及び多段変換器11から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群12のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続するようにしたものである。図6と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0066】
図10に示すように、変換器群12a、12bはそれぞれ独立して冷却系統が設けられ、変換器群12aに対しては熱交換器16a及び2台の冷却器17a1、17a2が設けられ、変換器群12bに対しては熱交換器16b及び2台の冷却器17b1、17b2がそれぞれ設けられている。従って、変換器群12aの冷却系統の冷却器17a1、17a2で変換器群12bを冷却すること、及び変換器群12bの冷却系統の冷却器17b1、17b2で変換器群12aを冷却することができない。
【0067】
いま、冷却器17a1〜17b2は同一の熱交換量160kWであるとし、変換器群12bの冷却器17b1に故障が発生したとすると、変換器群12bを冷却できるのは冷却器17b2だけとなり、最大熱交換量は160kWとなる。つまり、運転継続される変換器群12bの発熱量に見合った冷却水を冷却器17b2から変換器群12bに供給できないことになる。
【0068】
そこで、変換器制御装置20は、健全な冷却器17b2の冷却能力の範囲内及び変換器群12bから発生する高調波の許容範囲内で、多段変換器11のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続する。
【0069】
図11は、第3の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0070】
図11の特性曲線S7から分かるように、変換器群12bの出力が0.4pu(20MVA=50kW×0.4)以下であれば、変換器群12bの各々の変換器13b1、13b2のスイッチング周波数fswが450Hzのままでも、変換器損失が冷却器17b2の最大熱交換量160kWを越えないことが分かる。
【0071】
そこで、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.5pu〜0.7pu(50MVA〜70MVA)で運転継続させたいときは、健全な変換器群12aの出力を1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bの出力を0.0pu〜0.4pu(0MVA〜20MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転する。従って、冷却器17b1が故障した変換器群12bをスイッチング周波数fswを450Hzとしたままで運転継続できる。
【0072】
また、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.5pu(50MVA)以下で運転継続させたいときは、冷却器17b1が故障した変換器群12bを完全停止し、健全な変換器群12aだけで運転継続する。例えば、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.4pu(40MVA)で運転する際には、健全な変換器群12aの出力を0.8pu(40MVA)、スイッチング周波数fswを750Hzとして運転する。
【0073】
一方、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.7pu(70MVA)以上で運転継続させたいときは、健全な変換器群12aの出力を1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bは変換器損失が160kW以下になるように、スイッチング周波数fswを450Hzよりも下げて運転継続する。例えば、変換器群12a、12bの双方を合わせて出力を0.75pu(75MVA)で運転継続するときは、健全な変換器群12aを1pu(50MVA)、スイッチング周波数fswを450Hzとして運転し、冷却器17b1が故障した変換器群12bの出力を0.5pu(25MVA)、スイッチング周波数fswを350Hzにして運転する。
【0074】
第3の実施の形態によれば、変換器群12a、12bごとに冷却系統を備えた多段変換器11において、いずれかの冷却器17が故障したときは、故障した冷却器17の変換器群12の出力またはスイッチング周波数fswを変更して、残りの健全な冷却器17の最大熱交換量160kWを越えないように運転するので、いずれかの冷却器17が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0075】
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、変換器故障検出装置19に代えて、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置23を設け、変換器制御装置20は、健全な冷却器17の冷却能力の範囲内及び多段変換器11から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群12のスイッチング周波数fswまたは出力電力を小さくして変換器群12を運転継続するようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0076】
図12に示すように、変換器群12aの変換器13a1、13a2及び変換器群12bの変換器13b1、13b2を冷却する冷却系統は、1次系冷却水が熱交換器16aと変換器13a1、13a2の変換素子との間、熱交換器16bと変換器13b1、13b2の変換素子との間を循環しており、1次系冷却水がもつ熱は熱交換器16a、16bにより熱交換される。そして、熱交換器16a、16bにより熱交換された二次系冷却水は、プール18を介して熱交換器16a、16bと冷却器17a1〜17b2との間を循環し、2次系冷却水がもつ熱は冷却器17a1〜17b2の冷却ファンにより大気中に熱放出される。
【0077】
いま、冷却器17a1〜17b2の最大熱交換量が非対称であり、冷却器17a1の最大熱交換量Q1は200kW、冷却器17a2の最大熱交換量Q2は120kW、冷却器17b1の最大熱交換量Q3は260kW、冷却器17b2の最大熱交換量Q4は60kWであるとする。そして、一番大きい熱交換量260kWを持つ冷却器17b1が故障したとする。
【0078】
この場合、残りの健全な冷却器17a1、17a2、17b2の合計の最大熱交換量は380kWになってしまう。そこで、第4の実施の形態では、各々の変換器群12a、12b側で変換器13のスイッチング周波数fsw、出力(pu)を変えて変換器損失が380kWを越えないように運転する。
【0079】
図13は、第4の実施の形態における変換器群12の出力puをパラメータとした場合のスイッチング周波数fswと変換器損失との関係を示す特性図である。S1は変換器群12aの出力が1puのときの特性曲線、S2は変換器群12aの出力が0.9puのときの特性曲線、S3は変換器群12aの出力が0.8puのときの特性曲線、S4は変換器群12aの出力が0.7puのときの特性曲線、S5は変換器群12aの出力が0.6puのときの特性曲線、S6は変換器群12aの出力が0.5puのときの特性曲線、S7は変換器群12aの出力が0.4puのときの特性曲線である。
【0080】
図13に示すように、スイッチング周波数fswが450Hzのとき、多段変換器11の出力が0.55pu以下であれば、変換器損失が380kWを越えないことが分かる。多段変換器11の出力を0.55pu以下で運転継続させたいときは、変換器群12a、12bの双方の変換器13はともにスイッチング周波数fswを450Hzのままで運転継続する。一方、多段変換器11の出力を0.55pu以上で運転継続させたいときは、スイッチング周波数fswを450Hzよりも下げて運転継続する。例えば、多段変換器11の出力を0.65puで運転継続する場合には、変換器群12a、12bの変換器13ともに出力を0.65puとし、スイッチング周波数fswを350Hzにする。
【0081】
第4の実施の形態によれば、2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器11において、いずれかの冷却器17が故障したときは、多段変換器11の出力またはスイッチング周波数fswを変更して、残りの健全な冷却器17の最大熱交換量を越えないように運転するので、いずれかの冷却器17が故障した場合であっても可能な範囲で多段変換器11の運転を継続できる。
【0082】
以上の各実施の形態では、2段2群構成の多段変換器について説明したが、2段3群構成とすることも可能であり、さらにm段n群構成とすることも可能である。群数が増えると、1つの変換器群12が故障停止した場合、残りの健全な変換器群の比率が高くなるので、運転継続した場合の出力の低下を抑制できる。例えば、2群構成の場合には、1つの変換器群12が故障して運転継続させた場合には1/2の出力となるが、3群構成であると2/3の出力となり、出力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の他の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施の形態における冷却器の最大熱交換量を非対称にした場合の冷却系統が取り得る熱交換量の組合せの説明図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置の処理動作の別の他の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図7】本発明の第2の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるHPFの設計周波数を定める際のHPFの%インピーダンスの説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるHPFの%ZfとHPFの設計周波数fとの関係を示す特性図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で変換器群ごとに冷却系統を備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図11】本発明の第3の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係わる多段変換器の運転制御装置を2段2群構成で冷却系統にプールを備えた多段変換器に適用した場合の構成図。
【図13】本発明の第4の実施の形態における変換器群の出力をパラメータとした場合のスイッチング周波数と変換器損失との関係を示す特性図。
【図14】冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の一例の構成図。
【図15】冷却系統にプールを備えた2段2群構成の多段変換器の他の一例の構成図。
【符号の説明】
【0084】
11…多段変換器、12…変換器群、13…変換器、14…変換器用変圧器、15…ハイパスフィルタ、16…熱交換器、17…冷却器、18…プール、19…変換器故障検出装置、20…変換器制御装置、21…冷却器制御装置、22…ゲート制御回路、23…冷却器故障検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、各変換器群のいずれかの変換器の故障を検出する変換器故障検出装置と、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させるとともに、残りの健全な変換器群を運転継続させたときに残りの健全な変換器群から発生する高調波が前記ハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続する変換器制御装置と、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するように前記冷却器を駆動制御する冷却器制御装置とを備えたことを特徴とする多段変換器の運転制御装置。
【請求項2】
前記変換器制御装置は、残りの健全な変換器群の等価スイッチング周波数が故障前の変換器群の等価スイッチング周波数と等しくなるように、残りの健全な変換器群の各々の変換器の周波数を高くして運転継続させることを特徴とする請求項1記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項3】
前記冷却器制御装置は、故障前の複数の変換器群を冷却していた冷却器を運転継続し、残りの健全な変換器群に冷却水を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項4】
前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群が故障直前の出力を維持するときの発熱量に見合った冷却水を供給するのに必要な台数の冷却器を運転し、健全な変換器群に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項5】
前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転することを特徴とする請求項4記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項6】
変換器制御装置は、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続することを特徴とする請求項1記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項7】
複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置と、故障が検出された冷却器を停止させるとともに残りの健全な冷却器を運転継続させる冷却器制御装置と、健全な冷却器の冷却能力の範囲内及び多段変換器から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして変換器群を運転継続する変換器制御装置とを備えたことを特徴とする多段変換器の運転制御装置。
【請求項1】
複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、各変換器群のいずれかの変換器の故障を検出する変換器故障検出装置と、故障が検出された変換器及びその変換器が属する変換器群の変換器を停止させるとともに、残りの健全な変換器群を運転継続させたときに残りの健全な変換器群から発生する高調波が前記ハイパスフィルタにより交流系統側に流出するのを防止できるスイッチング周波数で残りの健全な変換器群を運転継続する変換器制御装置と、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を健全な変換器群に供給するように前記冷却器を駆動制御する冷却器制御装置とを備えたことを特徴とする多段変換器の運転制御装置。
【請求項2】
前記変換器制御装置は、残りの健全な変換器群の等価スイッチング周波数が故障前の変換器群の等価スイッチング周波数と等しくなるように、残りの健全な変換器群の各々の変換器の周波数を高くして運転継続させることを特徴とする請求項1記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項3】
前記冷却器制御装置は、故障前の複数の変換器群を冷却していた冷却器を運転継続し、残りの健全な変換器群に冷却水を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項4】
前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群が故障直前の出力を維持するときの発熱量に見合った冷却水を供給するのに必要な台数の冷却器を運転し、健全な変換器群に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項5】
前記冷却器制御装置は、残りの健全な変換器群に冷却水を供給するにあたり、複数の冷却器のうち冷却器の損失が最小となる冷却器の組合せを選択して、選択された冷却器を運転することを特徴とする請求項4記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項6】
変換器制御装置は、運転継続される残りの健全な変換器群の発熱量に見合った冷却水を冷却器から健全な変換器群に供給できないときは、冷却器の冷却能力の範囲内及び残りの健全な変換器群から発生する高調波の許容範囲内で、残りの健全な変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして残りの健全な変換器群を運転継続することを特徴とする請求項1記載の多段変換器の運転制御装置。
【請求項7】
複数の単位変換器を多段に接続して変換器群を形成し、複数の前記変換器群をそれぞれ変換器用変圧器を介して交流系統側に並列接続して多段変換器を構成し、前記多段変換器の変換器群に冷却水を供給して冷却する複数の冷却器を有し、前記多段変換器から発生する高調波が交流系統側に流出するのを防止するためのハイパスフィルタを変換器用変圧器の交流系統側に接続した系統における前記多段変換器の運転制御を行う多段変換器の運転制御装置において、複数の冷却器のいずれかの冷却器の故障を検出する冷却器故障検出装置と、故障が検出された冷却器を停止させるとともに残りの健全な冷却器を運転継続させる冷却器制御装置と、健全な冷却器の冷却能力の範囲内及び多段変換器から発生する高調波の許容範囲内で、変換器群のスイッチング周波数または出力電力を小さくして変換器群を運転継続する変換器制御装置とを備えたことを特徴とする多段変換器の運転制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−67482(P2008−67482A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242178(P2006−242178)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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