説明

太陽光利用機器の支持装置

【課題】瓦屋根への太陽光利用機器の設置に利用され、止水性を高く維持したまま、設置作業の安全性と施工性とを更に向上させ得る支持装置、を提供する。
【解決手段】瓦材(4c)を一枚除去して露出した屋根下地材(51)の領域に固定金具が固定され、それより棟側に位置する瓦材(4b、4f)の軒側の端部(43)の下に金属成型瓦(1)の棟側の端部が挿入される。その棟側の端部は上方に折り返されているので、その上に重なる瓦材(4b、4f)の下面に係合する。金属成型瓦(1)の凸部(16)が固定金具に被さり、ボルト(21)が凸部(16)の貫通孔(14)を通して上方に突出する。金属成型瓦(1)は、露出した屋根下地材(51)の領域と共に、その左側に隣接する瓦材(4d)の右半分とその右側に隣接する瓦材(4e)の左半分とを覆う。金属成型瓦(1)の凸部(16)の上には太陽光利用機器の架台が載せられ、ナットをボルト(21)に締結することで、固定金具に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルや太陽熱温水器等の太陽光利用機器に関し、特に、その太陽光利用機器を瓦屋根の上に固定するための支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば地球の温暖化等、環境問題への関心が高まるのに伴い、特に家庭での太陽光エネルギーの利用が進んでいる。その利用には例えば、太陽電池パネルでの発電や太陽熱温水器による集熱が含まれる。
太陽電池パネルや太陽熱温水器等の、いわゆる太陽光利用機器は一般に、建造物の屋根の上に設置される。日本の住宅では特に瓦屋根が多いので、太陽光エネルギーの家庭内での利用を更に広く普及させるには、太陽光利用機器を瓦屋根の上に簡単に設置するための工夫が求められている。
【0003】
太陽光利用機器を瓦屋根の上に設置する従来の手段としては例えば、ワイヤを利用して太陽光利用機器の周囲を支持する手段と、特殊な金具で太陽光利用機器を下から支持する手段とが知られている。
前者では、屋根の周囲等に釘やねじが打ち付けられ、それらと太陽光利用機器との間にステンレス線等のワイヤが張られる。太陽光利用機器は瓦材の上に載せられた状態で、ワイヤの張力により支持される。
後者では、瓦材の下にある屋根下地材等の構造体に固定金具が打ち付けられ、その固定金具に架台が接続され、その架台で太陽光利用機器が支持される(図10、11、12参照)。
【0004】
図10では、瓦材4bの下に位置する屋根下地材51に固定金具29が固定される。そのとき、固定金具29の一端は、二枚の瓦材4a、4bが重ねられた部分の間を通し、瓦材4aの上方に突出する。その突出した固定金具29の一端に架台61がボルト21で固定される。更に、その架台61により太陽光利用機器Sが支持される。その他に、屋根下地材に固定された固定金具の上部が、その固定金具の上を覆う瓦材に開けられた貫通孔を通し、その瓦材の上方に突出しても良い。その場合、突出した固定金具の上部に架台が固定される。
【0005】
図11では、瓦材4の一枚が支持瓦70に置き換えられる。支持瓦70はその形/サイズが瓦材4の形/サイズに合わされている。それにより、支持瓦70は他の瓦材4に混ざって重ねられることで、屋根の上に固定される。支持瓦70の中央部には支持部71が設けられ、その上に架台61がボルトで接続され、その架台61により太陽光利用機器Sが支持される。そのとき、支持瓦70は単体で他の瓦材4と太陽光利用機器Sとの両方の荷重に耐えねばならない。従って、支持瓦70は例えばアルミ合金等の鋳造品から、特に十分な厚みに形成される。それにより、支持瓦70は十分に高い強度を確保している。
【0006】
図12では、瓦材の一枚が除去され、それにより露出した屋根下地材51の領域に固定金具29が固定され、更にその上を金属成型瓦10が覆う(例えば、特許文献1参照)。金属成型瓦10はその形/サイズが他の瓦材4a、4bの形/サイズに合わされている。金属成型瓦10は他の瓦材4a、4bに混ざって重ねられると共に、固定金具29に接続される。金属成型瓦10の中央部には貫通孔が開けられ、その貫通孔を通して固定金具29に架台61がボルトで接続される。その架台61により太陽光利用機器Sが支持される。そのとき、太陽光利用機器Sの荷重は主に固定金具29に加えられるので、金属成型瓦10は他の瓦材4の荷重に耐えるだけで良い。特に金属成型瓦10は薄くても良いので、棟側の瓦材の下に端部を挿入しやすい。更に、例えば図10に示される場合とは異なり、固定金具29を通す空間(貫通孔)が狭く、密封しやすいので、止水性が高く、すなわち雨水の浸入が防止される。
【特許文献1】特開2004−03132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光利用機器の周囲がワイヤで支持される場合、太陽光利用機器が例えば強風に煽られて上下に振動するとき、太陽光利用機器が瓦材に衝突し、その瓦材を割ったり、ずれ落としたりする危険性が高い。従って、例えば、太陽光利用装置と瓦材との間に緩衝材を敷く等、更なる工夫が必要である。
【0008】
図10に示されるように、固定金具29の一端が二枚の瓦材4a、4bの間を通して瓦材4aの上方に突出する場合、固定金具29が薄手であっても、瓦材4a、4bが重なった部分に隙間が生じる。従って、雨天ではその隙間に風が吹き込み、雨水が瓦材4a、4bの下側に浸入するおそれがある。固定金具を通すための貫通孔が瓦材に開けられる場合も同様に、貫通孔から雨水が浸入するおそれがある。それ故、それらの設置手段では、止水加工が更に必要である。その他に、瓦材が割れ易いので、現場での孔開け加工には慎重な作業が要求される。
【0009】
図11に示されるように、高強度の支持瓦70が使用される場合、支持瓦70は瓦材4とは異なり破砕できないので、一旦、瓦材4の間に挿入された支持瓦70は、取り外しが困難である。従って、支持瓦70の設置には慎重な作業が要求される。更に、例えば修理等で太陽光利用機器Sを取り外す場合、その取り外し工程が複雑である。その他に、支持瓦70は一般に厚いので、瓦材4の間への挿入が難しく、その挿入作業には熟練が必要である。
【0010】
図12に示されるように、金属成型瓦10で固定金具29を覆う場合、金属成型瓦10は図11に示される支持瓦70よりは薄いものの、金属成型瓦10を瓦材4の間へ挿入するには、支持瓦70を挿入する場合と同様に、棟側の瓦材4を一旦、持ち上げる必要がある。従って、その挿入作業には熟練が必要である。更に、金属成型瓦10は薄いので、その上に重ねられた瓦材4bの上に作業者が誤って足を載せた場合、金属成型瓦10が変形するおそれがある。その変形は、瓦材4a、4bの下側に雨水が浸入する原因になり得る。その上、その変形により作業者がバランスを崩し、屋根から落下するおそれがある。
【0011】
図10、12に示されるように、固定金具29が屋根下地材51に固定される場合、その固定箇所に設置されている瓦材がまず、除去されねばならない。瓦材は通常、ハンマー等で破砕されて除去されるので、破砕時の過度の衝撃で、周囲の瓦材の配列が乱されるおそれがある。更に、瓦材は一般に、釘やネジで屋根下地材51にしっかりと固定されているので、その固定部分、特に棟側の瓦材4bの下に入り込んでいる棟側の端部が除去されにくい。従って、その固定部分を無理に除去することでも周囲の瓦材の配列が乱されるおそれがある。その上、瓦材の除去作業ではその難しさから、作業者が瓦材4bの軒側の端部を誤って割ってしまうおそれがある。もし瓦材4bの軒側の端部が割れた場合、割れた部分から雨水が瓦材4bの下側に浸入するので好ましくない。従って、瓦材の除去には慎重な作業が要求される。
【0012】
従来の設置手段は上記の通り、いずれも作業の更なる簡単化が困難である。従って、本発明は、瓦屋根への太陽光利用機器の設置に利用され、止水性を高く維持したまま、設置作業の安全性と施工性とを更に向上させ得る支持装置、の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による太陽光利用機器の支持装置は、瓦屋根の上に太陽光利用機器を設置するときに使用される支持装置であって、
瓦材一枚の部分又は全部が除去されることで露出する屋根下地材の領域に固定される固定金具、及び、
その固定金具より棟側に位置する瓦材の下に挿入される棟側の端部と、その固定金具に固定されて太陽光利用機器又はその架台に接続される接続部と、を含み、上記の露出する屋根下地材の領域とその左右に隣接する瓦材の少なくとも一部とを覆う金属成型瓦、
を有する。
【0014】
本発明による上記の支持装置では、金属成型瓦が好ましくは、他の瓦材に混ざって重ねられると共に、固定金具に接続される。固定金具と金属成型瓦との間の接続部では固定金具を通す空間が狭く、密封しやすいので、止水性が高い。更に、太陽光利用機器の荷重は主に固定金具に加えられるので、金属成型瓦は主に他の瓦材の荷重に耐えるだけで良い。従って、金属成型瓦は薄くても良い。そのとき、固定金具より棟側に位置する瓦材の下に金属成型瓦の棟側の端部を挿入しやすい。特に、その棟側に位置する瓦材の下には、除去された瓦材の一部(特に、軒側の端部やアンダーラップ)が残されていても良い。こうして、瓦材の除去作業や金属成型瓦の挿入作業が簡単化される。その上、その残された瓦材の部分で金属成型瓦の棟側の端部が支えられるので、金属成型瓦の荷重強度が更に向上する。その他に、瓦材の撤去量が減少するので、廃棄物の量が削減される。
【0015】
本発明による上記の支持装置では、特に従来の装置とは異なり、金属成型瓦が一枚の瓦材と単に置き換えられるのではなく、瓦材を一枚除去することで露出する屋根下地材の領域に加え、その左右に隣接する瓦材の一部を覆う。そのとき、この金属成型瓦では特に従来のものとは異なり、棟側の端部が左右に隣接する瓦材と棟側に隣接する瓦材との間に挟まれ、更に棟側の瓦材の重みで固定される。すなわち、金属成型瓦の棟側の端部は、両端が固定された両端支持梁の構造を成す。その結果、瓦屋根に設置された状態では金属成型瓦の曲げ剛性が更に高いので、露出した屋根下地材の領域を覆う金属成型瓦の部分に作業者が誤って足を載せても、金属成型瓦が変形しにくい。こうして、設置作業の安全性と支持装置の施工性とが共に向上する。
【0016】
本発明による上記の支持装置では好ましくは、金属成型瓦の棟側の端部が上方に折り返され、固定金具より棟側に位置する瓦材の下面に係合する(引っ掛かる)。露出した屋根下地材の領域を覆う金属成型瓦の部分に作業者が誤って足を載せた場合、金属成型瓦の棟側の端部では、左右の固定された部分に加え、折り返しが棟側に位置する瓦材の下面から力を受ける。それにより、金属成型瓦の変形が更に阻止される。その他に、金属成型瓦の棟側の端部では上方への折り返しにより、止水性が更に向上する。
【0017】
本発明による上記の支持装置では好ましくは、金属成型瓦が実質的に平板形状である。その金属成型瓦は、実質的に平板形状の瓦材、いわゆる平板瓦を、その表面の小さな凹凸や緩やかな曲がりに関わらず、覆うことができる。すなわち、本発明による上記の支持装置は平板瓦に対する汎用性が高い。
【0018】
本発明による上記の支持装置では好ましくは、金属成型瓦が、上記の露出する屋根下地材の領域を覆う部分に凸部又は凹部を含む。更に好ましくは、金属成型瓦はプレス加工により成型される。金属成型瓦はそのような凸部又は凹部の存在により、曲げ剛性が更に高い。従って、本発明による上記の支持装置は設置作業の安全性と施工性とが更に高い。特に金属成型瓦が固定金具との間の接続部に凸部を含んでも良い。それにより、その接続部からは雨水が浸入しにくい。その他に、凸部又は凹部が波形や畝形の曲面、又は溝として形成されても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明による太陽光利用機器の支持装置では上記の通り、固定金具を金属成型瓦で覆う構造により止水性が高い。更に、金属成型瓦は従来のものとは異なり、棟側の端部が左右に隣接する瓦材と棟側に隣接する瓦材との間に挟まれ、棟側の瓦材の重みで固定される。その結果、金属成型瓦は曲げ剛性が高く、設置作業中に誤って作業者に踏まれても変形しにくい。従って、本発明による支持装置は従来の支持装置に比べ、設置作業の安全性と支持装置の施工性とが更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の実施形態による支持装置は金属成型瓦と固定金具とを有する。金属成型瓦の外観を図1に示し、固定金具の外観を図2に示す。
【0021】
金属成型瓦1は好ましくは、表面処理や塗装を施した鋼鈑、ステンレス鋼鈑、アルミニウム合金板等の金属板から折り曲げ加工又はプレス加工により成型される(図1参照)。ここで、金属成型瓦1の厚みは、好ましくは、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、又は、1.2mmのいずれかに設定される。金属成型瓦1は加工性と耐久性とに優れ、薄くても十分な強度を維持できる。従って、使用される材料が比較的少なく、かつ重量が小さい。金属成型瓦1は実質的に平板形状であり、特に平板瓦の形状に似せている。但し、その幅は平板瓦の幅より大きく、好ましくは2倍である。好ましくは、金属成型瓦1の中央部が、固定金具に対する接続部を含む。更に好ましくは、接続部が凸部16を含み、その凸部16の中心に貫通孔14が開けられている(図1(a)参照)。その他に、接続部が金属成型瓦の平板部分に含まれても良い。その場合、貫通孔はその平板部分に開けられる。金属成型瓦1の棟側の端部17は上方に折り返されている。一方、軒側の端部19は、平板瓦と同様に、下方に折り曲げられている。そのような形状により、金属成型瓦1は特に、幅方向での曲げ剛性が高い。金属成型瓦1の裏面には、左右の両端付近にパッキン18が貼られている。パッキン18は好ましくは、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ウレタン、又はシリコーンゴムやその発泡体から成る(図1(b)参照)。
【0022】
固定金具2は好ましくは、表面処理や塗装を施した鋼鈑、ステンレス鋼鈑、アルミニウム合金板等の金属板から、折り曲げ加工又はプレス加工により成型される(図2参照)。固定金具2は特に太陽光利用機器の重量を支えられる程度の荷重強度を持つ。固定金具2は好ましくは実質的に「コ」の字形であり、上面部5、支柱部6、及び脚部8に大別される。上面部5にはボルト21が固定されている。そのボルト21が太陽光利用機器の架台(図示せず)に挿入され、更にナット22が締結されることにより、固定金具2がその架台に接続される。好ましくは、ナット22と上面部5との間に二枚のリング状パッキン23A、23Bが挿入される。その場合、二枚のパッキン23A、23Bで架台を上下に挟み、更にその上からナット22が締結される。脚部8にはネジ穴8aが開けられている。それらのネジ穴8aを通して木ネジ24が屋根下地材(好ましくは野地板、図示せず)にねじ込まれることにより、固定金具2が屋根下地材に固定される。
【0023】
本発明の実施形態による支持装置は、図3に示されているような平板瓦で葺かれた瓦屋根への太陽光利用機器の設置に利用される。瓦屋根では一般に、屋根下地材(好ましくは野地板)51の上に、水平な瓦桟52が軒から棟にかけて、一定間隔で配置されている(図3では瓦材の一部が除去され、屋根下地材51と瓦桟52とが示されている)。平板瓦4は一般に、左側(又は右側)の端部にアンダーラップ42を含む(図3では瓦材の一部の図示が省略され、通常は他の瓦材の下に隠れている棟側の端部41とアンダーラップ42とが示されている)。棟側の端部41は瓦ビス3(好ましくは木ネジ)で瓦桟52に固定され、その上に棟側に隣接する瓦材の軒側の端部43が重ねられる(図7参照)。アンダーラップ42の上には左側に隣接する瓦材の右側の端部44が重ねられる(図3参照。図7〜9では図示の明確化のため、断面で示されている瓦材の左右に隣接する他の瓦材が示されていない)。例えば、瓦材4bのアンダーラップの上にその左側に隣接する瓦材4fの右側の端部が重なる。水平方向に並ぶ三枚の瓦材4e、4c、4dについても同様である。更に、水平方向に並ぶ瓦材の各列が交互に、瓦材一枚の半幅分だけ左右にずらされているので、各瓦材には棟側の二枚の瓦材が両方とも重なる。例えば、瓦材4cの棟側の端部の上に二枚の瓦材4b、4fが重なる。同様に、瓦材4aには棟側の二枚の瓦材4c、4dが重なる。このように各瓦材が隣接する瓦材と重なり合うことにより、棟側の瓦材の重みで軒側の瓦材が安定化されると共に、瓦材間から瓦材の下側に雨水が浸入しにくい。
【0024】
図3に示されているような瓦屋根の部分に、上記の金属成型瓦1と固定金具2とが以下のように設置される。
まず、一枚の瓦材4cが割られて除去される(図4、8参照。尚、図8では図示の明確化のため、除去された瓦材4cの左側に位置する瓦材4eが示されていない)。ここで、除去されるべき瓦材4cのうち、棟側に隣接する瓦材4b、4fの軒側の端部43の下に位置する棟側の端部41が残されても良い。その場合、除去されるべき瓦材4c以外の瓦材が誤って割られる危険性が低減する。更に、棟側の瓦材4b、4fを持ち上げながら瓦ビス3を引き抜く等、複雑な作業が不要である。こうして、瓦材4cの除去作業が簡単化される。その他に、瓦材の撤去量が減少するので、廃棄物の量が削減される。
【0025】
次に、瓦材4cの除去により露出した屋根下地材51の領域51Aのほぼ中央に、固定金具2が木ネジ24で固定される(図2、5参照)。続いて、固定金具2より棟側に位置する瓦材4b、4fの軒側の端部43の下に金属成型瓦1の棟側の端部17が挿入される(図5、6、9参照)。そのとき、棟側の端部17の左側部分1Aは瓦材4e、4f間に挟まれて固定され、右側部分1Bは瓦材4b、4d間に挟まれて固定される。除去された瓦材4cの棟側の端部41が残っている場合、金属成型瓦1の棟側の端部17の中央部分1Cが、残った瓦材4cの棟側の端部41とその上に重なる二枚の瓦材4b、4fとの間に挟まれて固定される。特に、金属成型瓦1の棟側の端部17は上方に折り返されているので、その上に重なる瓦材4b、4fの各下面に引っ掛かる。それにより、それらの瓦材4b、4fの軒側の端部と金属成型瓦1との間から浸入する雨水が金属成型瓦1の棟側の端部17で止められる。その他に、金属成型瓦1の棟側の端部17は、いわゆる抜け止めとして機能し、すなわち瓦材4b、4fの下面から大きい抵抗力を受けるので、金属成型瓦1の安定性が更に向上する。
【0026】
更に、金属成型瓦1の凸部16が固定金具2の上に被さり、固定金具2のボルト21が凸部16の貫通孔14を通して上方に突出する(図6参照)。こうして、金属成型瓦1が固定金具2に接続され、露出した屋根下地材51の領域51Aと共に、その左側に隣接する瓦材4dの右半分とその右側に隣接する瓦材4eの左半分とを覆う。ここで、金属成型瓦1と固定金具2との間の接続部では、貫通孔14が凸部16の上面に開けられているので、棟側に隣接する瓦材4b、4fの表面を流れ落ちる雨水が貫通孔14まで到達しにくい。すなわち、凸部16は貫通孔14から金属成型瓦1の下側への雨水の浸入を防ぐ。一方、金属成型瓦1の裏面に貼られているパッキン18(図1(b)参照)が金属成型瓦1の左右に隣接する瓦材4d、4eの表面に密着するので、金属成型瓦1の左右の両端からその下側への雨水の浸入が阻止される。それに加え、万一、瓦材4cの除去作業中に誤ってその右側に隣接する瓦材4dのアンダーラップ42(図5参照)が割られたとしても、パッキン18が雨水の浸入を阻止するので、止水性は高く維持される。その他に、金属成型瓦1は軒側の端部19が下方に折り返されているので、軒側から屋根の表面を吹き上がる風では浮き上がりにくい(図1、6、9参照)。
【0027】
最後に、縦ラック61と横ラック62とが金属成型瓦1の凸部16の上に載せられ、金属成型瓦1と固定金具2とに接続される。更に、ナット22がボルト21に締結されることで、縦ラック61が固定金具2に固定される。縦ラック61と横ラック62とは太陽光利用機器Sの架台である。図9では、縦ラック61が横ラック62を支持し、太陽光利用機器Sが横ラック62に支持される。その他に、横ラック62又は太陽光利用機器S自体が固定金具2に接続されても良い。こうして、金属成型瓦1と固定金具2との間の接続部(特に金属成型瓦1の凸部16)が、太陽光利用機器S、又はその架台61、62と固定金具2との間の接続部として兼用される。
好ましくは、ナット22と縦ラック61の上面との間にはパッキン23Aが挟まれ、縦ラック61の下面と金属成型瓦1の凸部16の上面との間にはパッキン23Bが挟まれている。それにより、ボルト21の周囲から金属成型瓦1の下側への雨水の浸入が阻止される。
【0028】
太陽光利用機器Sの荷重は主に固定金具2に加えられるので、金属成型瓦1は主に棟側の瓦材4b、4fから加えられる荷重に耐えるだけで良い。本発明の実施形態による支持装置では特に、金属成型瓦1が、瓦材4cの除去により露出した屋根下地材51の領域51Aに加え、その左右に隣接する瓦材4d、4eの一部を覆う(図5、6参照)。それにより、金属成型瓦1は左右に隣接する瓦材4d、4eにより支えられた両端支持梁とみなせる。特に、棟側の端部17が左右に隣接する瓦材4d、4eと棟側に隣接する瓦材4b、4fとの間に挟まれ、更に棟側の瓦材4b、4fの重みで固定される。従って、金属成型瓦1は曲げ剛性が高い。除去されるべき瓦材4cの棟側の端部41が残される場合は更に、その残された部分41で金属成型瓦1の棟側の端部17が支えられ、かつ棟側の瓦材4b、4fの重みで固定されるので、金属成型瓦1の荷重強度が更に向上する。その結果、金属成型瓦1の上に作業者が誤って足を載せても、金属成型瓦1が変形しにくい。
【0029】
金属成型瓦1の棟側の端部17は上方に折り返されているので(図1参照)、固定金具2より棟側に位置する瓦材4b、4fの下面に引っ掛かる(図5、6、9参照)。金属成型瓦1の上に作業者が誤って足を載せた場合、金属成型瓦1の棟側の端部17では、左右の固定された部分1A、1Bに加え、折り返しが棟側に位置する瓦材4b、4fの下面から力を受ける。それにより、金属成型瓦1の変形が更に阻止される。
こうして、本発明の実施形態による支持装置は、設置作業の安全性と施工性とが共に高い。
【0030】
金属成型瓦1は、幅方向に長い形状を持つことだけでなく、棟側の端部17が上方に折り返されていること、及び中央部に凸部16が形成されていることにより、幅方向の曲げ剛性が高い。金属成型瓦1は凸部16に代え、又は凸部16に加え、他の凸部や凹部を含むことで幅方向の曲げ剛性を更に高めても良い。例えば、金属成型瓦の一部に畝や溝が設けられて良い。その他に、金属成型瓦の全体形状が、波形の曲面、又は複数の畝や溝を連ねた曲面であっても良い。更に、金属成型瓦の全面に、好ましくはエンボス加工で、複数の凹凸が形成されても良い。
【0031】
本発明の実施形態による支持装置では図1に示されているように、金属成型瓦1が実質的に平板形状である。従って、金属成型瓦1は多種多様な平板瓦を、その表面の形状の詳細に関わらず、覆うことができる。すなわち、本発明の実施形態による支持装置は平板瓦に対する汎用性が高い。
本発明による支持装置は上記の実施形態とは別に、例えば和瓦で葺かれた屋根への太陽光利用機器の設置に利用されても良い。その場合、金属成型瓦の形状が、例えば和瓦の波形曲面等、設置対象の屋根に置かれている瓦材特有の形状に合わせて加工される。それにより、金属成型瓦がその左右に位置する瓦材の上に密着するので、止水性が高く維持される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は太陽光利用機器の支持装置に関し、上記の通り、金属成型瓦の形状を工夫する。このように、本発明は明らかに、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態による支持装置に含まれる、金属成型瓦の外観を示す斜視図。(a)は表面を示し、(b)は裏面を示す。
【図2】本発明の実施形態による支持装置に含まれる、固定金具の分解組立図
【図3】本発明の実施形態による支持装置が利用される瓦屋根を示す斜視図
【図4】本発明の実施形態による支持装置の設置時、固定金具を固定すべき箇所から瓦材を除去した状態を示す斜視図
【図5】本発明の実施形態による支持装置の設置時、露出した屋根下地材に固定された固定金具の上に金属成型瓦を被せる工程を示す斜視図
【図6】本発明の実施形態による支持装置の設置時、固定金具の上に金属成型瓦を被せた状態を示す斜視図
【図7】図3に示されている直線VII−VIIに沿った断面図
【図8】図4に示されている直線IIX−IIXに沿った断面図
【図9】図6に示されている直線IX−IXに沿った断面図
【図10】固定金具を利用した、太陽光利用機器の従来の支持装置を示す断面図
【図11】支持瓦を利用した、太陽光利用機器の従来の支持装置を示す断面図
【図12】金属成型瓦と固定金具との組み合わせを利用した、太陽光利用機器の従来の支持装置を示す断面図
【符号の説明】
【0034】
1 金属成型瓦
14 貫通孔
16 凸部
17 金属成型瓦1の棟側の端部
18 パッキン
19 金属成型瓦1の軒側の端部
2 固定金具
21 ボルト
22 ナット
23A、23B リング状パッキン
24 木ネジ
5 固定金具2の上面部
6 固定金具2の支柱部
8 固定金具2の脚部
8a 脚部8のネジ穴
4、4a〜4f 瓦材
41 瓦材の棟側の端部
42 瓦材のアンダーラップ
43 瓦材の軒側の端部
44 瓦材の右側の端部
51 屋根下地材
51A 露出した屋根下地材51の領域
52 瓦桟
3 瓦ビス
S 太陽光利用機器
61 縦ラック
62 横ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦屋根の上に太陽光利用機器を設置するときに使用される支持装置であって、
瓦材一枚の部分又は全部が除去されることで露出する屋根下地材の領域に固定される固定金具、及び、
前記固定金具より棟側に位置する瓦材の下に挿入される棟側の端部と、前記固定金具に固定されて前記太陽光利用機器又はその架台に接続される接続部と、を含み、前記露出する屋根下地材の領域とその左右に隣接する瓦材の少なくとも一部とを覆う金属成型瓦、
を有する、太陽光利用機器の支持装置。
【請求項2】
前記金属成型瓦の前記棟側の端部が上方に折り返され、前記固定金具より棟側に位置する瓦材の下面に係合する、請求項1に記載の、太陽光利用機器の支持装置。
【請求項3】
前記金属成型瓦が実質的に平板形状である、請求項1に記載の、太陽光利用機器の支持装置。
【請求項4】
前記金属成型瓦が、前記露出する屋根下地材の領域を覆う部分に凸部又は凹部を含む、請求項1に記載の、太陽光利用機器の支持装置。
【請求項5】
前記金属成型瓦がプレス加工により成型される、請求項1に記載の、太陽光利用機器の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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