説明

太陽光励起レーザー装置

【課題】本発明によれば、外壁が反射膜でコーティングされた積分球型ガラス容器の入射窓に入射したバンドパスフィルターを通過した太陽光あるいは分光プリズムによって太陽光の必要波長だけを水あるいはシリコーンオイルを介してレーザー媒質に投入することにより高効率レーザー装置を提供することができる。
【解決手段】バンドパスフィルターあるいは分光プリズムによって必要波長だけを選択された高密度太陽光を外壁が反射膜でコーティングされた積分球型ガラス容器の入射窓から冷却水で満たされたガラス容器の内部のレーザー媒質に入射する。このレーザーの両端および側面にはシリコーンオイルの光酸化により形成した反射膜と反射防止膜が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光励起レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体レーザーや液体レーザーなどの光励起源はXeやKrフラッシュランプや半導体レーザーがある。XeやKrフラッシュランプによる励起には楕円鏡の2つの焦点の一方にランプを、他方にレーザーロッドを配置する方法が取られている。また半導体励起では固体レーザーヘッドやロッドの極近傍に光学系を介さず半導体レーザーを置く。とくに高出力レーザーでは光源とレーザー媒質の間に冷却水を流す事が多い。
【0003】
太陽光励起固体レーザーは、非特許文献1に示すように、1965年米国のC.G.Youngが太陽光を放物面鏡で集光してレーザーロッドに照射し、1.3 Wの連続発振に世界で最初に成功した。1998年イスラエルのワイツマン研究所では、非特許文献2に示すように太陽光をNd、Hoドープのアレキサンドライトレーザーに照射して、変換効率30%でkW級のレーザー発振に成功している。2001年(財)レーザー技術総合研究所では、非特許文献3に示すように太陽光をフレネルレンズで集光し、その光をファイバーレーザーのクラッド部分に入れ、コアー部のレーザー媒質をクラッドでの反射光によりレーザー励起する方法を提案している。2002年米国航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所では、非特許文献4に示すように光ファイバーレーザーを束ねる方式を提案している。この様に放物面鏡やフレネルレンズを用い太陽光を千倍から一万倍に集光して、3準位または4準位レーザー媒質に効率良く吸収させると、発振に至る十分な反転分布を得ることができる。しかし太陽光を直接入射した時の熱的効果によるビーム品質や媒質のダメージが考えられるが、2005年9月 矢部孝は非特許文献5において、冷却水中にレーザーヘッドを入れ、レーザー媒質の冷却と排水の熱水利用を提案している。本願発明者は特許文献1に示すようにトロイダル鏡やトロイダルレンズで集光した太陽光をトロイダル型ガラス容器の中を冷却水で循環させ、その中のレーザー媒質に水を介して高密度平行光励起を行うことを開示している。そこで次に残された課題は太陽光を効率良くレーザー媒質に吸収させる方法の開発である。太陽光から得られたレーザーの利用として、特許文献2には太陽光励起レーザーを用いたエネルギー供給ネットワークと題して、宇宙空間で発振させたレーザー光を人工衛星で反射させて、成層圏に浮かぶ飛行船に照射し、ここでマイクロウエーブ変換して地上の電力網に送ることが開示されている。
【0004】
太陽光のように広いスペクトルを持つ場合は発熱量が大きくなるため、大規模な冷却装置が必要である。一方半導体レーザーの発振波長はファイバーレーザー媒質の吸収帯に近接しているため、高効率レーザー発振が期待できる。非特許文献6によるとYbをドープしたダブルクラッドファイバーレーザーは975nmに吸収があるため、100μφで20メーターのファイバーに2.2Wの高出力半導体レーザーダイオードで光励起して1.3Wの出力、すなわち63%の高効率を出している。しかし、地上で350〜1500nmと広帯域のスペクトルを有する太陽光を用い効率よく発振するには、励起に使われない太陽光の大部分を冷却除去あるいはバンドパスフィルターや回折格子あるいはプリズムなどで必要な励起波長のみで選択励起する事は勿論の事、それ以上にこれらの波長域に吸収を持つドーピング剤を探す事が急務である。
【特許文献1】特願2005−338425
【特許文献2】特願2001−330673 (特開2003−134700)
【特許文献3】特願2006−41870
【特許文献4】特願2003−298158 (特開2005−070245)
【非特許文献1】C.C.Young; Applied Optics, 5, p993 (1966)
【非特許文献2】Israel' ;IEEE Spectrum, May, p30 (1998)
【非特許文献3】今崎一男;レーザー・クロス、No. 158, p2 (2001)
【非特許文献4】D. Maynard; "Power Beaming Technology Vision & Goal" ,Proceeding of Space Solar Power Concept And Technology Maturation Program Technical Interchenge Meeting (2002)
【非特許文献5】矢部孝;東工大クロニクルNo. 402, p4 (2005. Sep.)
【非特許文献6】伊藤秀明他;三菱電線工業時報 第101号 p21-24 (2004)
【非特許文献7】レーザーハンドブック、編者レーザー学会、発行者株式会社オーム社、昭和57年12月15日発行
【非特許文献8】村原正隆、「エキシマランプを用いた石英ガラスの室温接着とコーティング」、セラミックス、41[6]、440−443(2006)
【非特許文献9】M.Murahara, N.Sato,and A.Ikadai, Optics Letters, 30[24]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光を千倍から一万倍に集光して、3準位または4準位レーザー媒質に効率良く吸収させると、発振に至る十分な反転分布を得ることができる。とくにファイバーレーザーは励起光の閉じ込めや吸収が可能であり、コアー部の体積容量が大きく、断面の直径に対する長さが比大きいため表面積が大きくなり、冷却能率も高い。このためファイバーレーザーでは半導体レーザー光を集光してファイバーの光軸に沿って光を入れる方式が取られている。本願発明者は特許文献3に球面あるいは円筒あるいはトロイダル面を有する石英ガラス容器内部を冷却水で満たし、その外壁にファイバーレーザー媒質を配列する方法を開示している。しかしコアー径が太い円筒型レーザー媒質では熱放散が困難で、大量の冷却水を高速流で冷却しない限り、レーザー媒質の熱破壊を免れない。とくに太陽光は広いスペクトルを有するため発熱量も大きく、固体レーザー媒質に高密度太陽光を直接入射する事は難しい。この熱作用のため連続発振は無理である。
【0006】
従って、本願発明では、外壁に反射膜をコーティングした積分球型ガラス容器の入射窓から分光後の太陽光や半導体レーザー光あるいはキセノンランプや水銀ランプ光などの高密度光を冷却剤として水やシリコーンオイルを介してレーザー媒質に投入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、容器内部に冷却水またはシリコーンオイルが満たされあるいは循環する積分球や円筒あるいは円錐台型ガラス容器外壁に金、アルミニューム、銀などの金属蒸着膜や誘電体多層膜をコーティングするため、ガラス容器内部に固定したレーザー媒質を直接冷却水を介してガラス容器の入射窓から入射した高密度太陽光で励起することができる。このようにガラス容器にはレーザー媒質の励起波長のみを入射するためレーザー媒質の熱変性や熱破壊を回避でき、連続発振も可能である。他方、シリコーンオイルの熱伝導率は水の約1/4、比熱は水の約1/3と僅かに低いが、しかし、水が0℃で凍るのに対しシリコーンオイルは−65℃でも流動性を示す。さらに水は100℃で沸騰するが、シリコーンオイルは200℃まで変化しない。また水は650ナノメーターより長波長になると透過率が極端に下がる。ところがシリコーンオイルは2000ナノメーターでも透明である。紫外線透過については短波長になるに連れて両者とも透過率は下がるが、共に190ナノメーターまで透過する。以上の性質をレーザー媒質の側から考察すると、水では考えられない特質がシリコーンオイルには在ることがわかる。すなわちレーザー媒質が高密度太陽光を受けてあるいはレーザー発振して高温になれば冷却水は蒸発してレーザー媒質の周囲は気泡だらけに成る。しかしシリコーンオイルは粘度が低くは成るものの200℃以上まで流動性があり気体の発生は無く、しかもシリコーンオイルには消泡作用があるため泡は出ない。冷媒としての水は冷やしても高々0℃である。ところがシリコーンオイルは−65℃まで冷却する事ができ、レーザー媒質の冷却効率は高い。またネオジウムドープヤグレーザーやファイバーレーザーなどの光励起は800ナノメーター以上の波長を用いるが、冷却水中で励起を行うには効率が悪い。しかしシリコーンオイル中では効率の良い励起ができる。潮解性のあるKDPやCLBOあるいはBBOなどの非線形光学結晶は紫外線域で倍波を出すが、水で冷却することはできない。しかしシリコーンオイル中では励起レーザー光も倍波もだすことができる。
【0008】
対物レンズやミラーで集光した高密度太陽光は内部に冷却水あるいはシリコーンオイルが満たされた積分球や円筒あるいは円錐台など軸対称円形ガラス容器両端面の一方の入射窓から入射される。この高密度光の入射にあたっては太陽光の焦点の手前あるいは後方に位置するガラス容器の入射窓から入射する。そして光はガラス容器内部に進み、ガラス容器の外壁にコーティングされた反射膜で何回も反射されてレーザー媒質全体を励起する。このように本願発明の特徴は積分球や円筒あるいは円錐台などの回転軸対称2次曲面ガラス容器に入射した光を内部で閉じ込めその光をレーザー媒質の励起に使うことである。この観点から励起形状として積分球型ガラス容器が最も相応しい。
【0009】
非特許文献7に開示してあるように固体レーザー媒質として最もポピュラーな3価のネオジウム(Nd3+)は4準位レーザーで720から830ナノメーターで効率の良いレーザー遷移を行い、ネオジウムドープヤグレーザーでは808ナノメーター励起で1060ナノメーターのパルス・連続発振が行われている。一方3準位レーザーに代表される3価のクロム(Cr3+)はルビーレーザーは吸収帯のピーク波長が406と550ナノメーターであるため、Xeフラッシュランプ励起で694ナノメーターのパルス発振が得られる。また514.5ナノメーターのAr+レーザーでは連続発振ができる。しかし、これら固体レーザー媒質を高密度光で励起すると励起光やレーザー出力でレーザー素子自身が高温に成り、冷却不足時のレーザー発振はレーザー媒質内部に熱レンズ効果などを起こし媒質破壊に至る。これを防止するには強制冷却が不可欠である。さらにレーザー媒質を光励起するには冷媒が励起光を透過する必要がある。この両者を満たす最も優れた冷媒は水である。ところが励起光が半導体レーザーに比べ太陽光はスペクトル幅が広すぎる。
【0010】
地上での太陽光は300から1900ナノメーターの波長の光を含んでおり、ファイバーレーザーを含む固体レーザー媒質の励起波長は400から1000ナノメーターの間の極狭い波長帯の光である。この様に太陽光励起レーザーでは太陽光の1%以下のエネルギーしか使われず、残りはレーザー媒質を加熱・熱破壊するために使われるのが落ちである。この落ちを軽減するために冷却が行われる。勿論将来はレーザー媒質を選択してさらに短波長側にする事が可能に成ると考えるが、それでもエネルギーの有効利用ではない。そこで集光された太陽光をバンドパスフィルターや短波長カットフィルターと長波長カットフィルターを組み合わせたバンドパスフィルター、コールドミラーやコールドフィルターなどを通過させるか、あるいは平行光に変換した後分光プリズムで分波して各レーザー媒質の励起波長帯のスペクトルを1つまたは複数個のスリットまたは反射鏡で分離した後各励起レーザー媒質毎に集光照射して各固体レーザー発振の励起に使う。これによりレーザー媒質励起以外の光は排除でき、効率の良いレーザー発振ができる。勿論連続発振もできる。そして残りのスペクトルは1から複数の球面鏡で夫々集光して冶金や融解あるいは金属酸化物の還元に使われる。さらに熱水や水蒸気発電の熱源としても使う。さらに300から400ナノメートルの光は太陽電池励起光源としてあるいは光化学反応光源として使われる。太陽光を分光するには対物鏡や対物レンズに入射する前の平行光の時点で分光プリズムやバンドパスフィルターあるいは回折格子で分波した後必要波長のみ集光したり、対物鏡や対物レンズあるいはレーザー媒質を励起するためのハウジングの入射窓にバンドパスフィルターを蒸着して特定波長のみ透過させたり反射させたり、あるいは対物レンズにレンズ効果と分光効果を持たせたフレネルレンズを作り特定波長の光のみを選択集光することもできる。
【0011】
太陽光と冷却水との関係も複雑である。地表に降注ぐ太陽光のスペクトル分布は300から2000ナノメーターであるが、その強度は450から500ナノメーターが最も高く、700ナノメーター以下は極端に小さくなる。他方、水の吸収は200から800ナノメーターであり、それ以上の近赤外線での吸収は非常に大きい。すなわち800ナノメーターより長波長の光は全て水に吸収され熱湯に変換される。熱湯に変換されるのなら高速流冷却を行えば良いが、最も注意したいことは、高出力が得られる太陽励起レーザー媒質として注目されているネオジウムドープヤグレーザーの励起波長が808ナノメーターであり、この波長の光を水中を通過させてレーザー媒質の励起を行うぎりぎりの線である。すなわち本願発明のガラス容器の外壁にコーティングした反射膜によって数回の反射を繰り返しながら容器中心の回転軸上に置かれたレーザー媒質を励起することはできるが効率は悪い。太陽光水中励起レーザーで最も推奨するのが、地表での太陽光スペクトルで最も強いエネルギーを得られる波長域と水の吸収が最も弱い波長域が共通している450から530ナノメーターであり、ルビーレーザーやクロムドープヤグレーザーが望ましい。しかし最も高出力が得られるネオジウムドープヤグレーザーに執着する場合は水の代わりに、紫外線300から2000ナノメーターの近赤外線まで透明で水程度の粘性と比較的大きい熱伝導率を有するシリコーンオイルを1次冷却液として用いる。ただしシリコーンオイルにレーザー媒質を浸漬した場合にはレーザー媒質表面の反射膜や反射防止膜あるいは保護膜などの形成は必要ない。
【0012】
ガラス容器の外壁に太陽光を反射する反射膜がコーティングされているため冷却水による膜剥離や高出力レーザーの熱破壊は考え難い。しかしレーザー媒質やその端面に蒸着された反射膜も高速冷却水に曝される。そこでこれらレーザー媒質の側面に反射防止膜やレーザー共振器たる反射膜に保護膜を付ける必要がある。しかし水中でレーザー耐性を示す硬質膜は少ない。本願発明者の一人村原は特許文献4および5や非特許文献8および9に示すように光学試料表面に酸素ガス雰囲気でシリコーンオイルを塗布し、これにXe2エキシマランプ光を照射して耐水性に優れ、紫外線透過にも優れ、耐熱性にも優れ、水中で完全反射防止し、かつモース硬度5の高硬度保護膜が出来ることを開示している。
【0013】
分光プリズムから出たスペクトルを励起媒質や物体の照射部で高密度エネルギーにするために出射面が円柱面でありその円柱軸がプリズムの主断面と平行に成るような構造を有する石英ガラス製プリズムを作ると効果的に目的とする波長帯のエネルギーを得る事ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外壁が反射膜でコーティングされた積分球型ガラス容器の入射窓に入射した分光後の太陽光を冷却水あるいはシリコーンオイルを介してレーザー媒質に投入することにより高効率レーザー装置を提供することができる。
【0015】
集光された太陽光を平行光にした後分光プリズムで分波し、選択されたスペクトルによりレーザー媒質の励起光源として使い、残りのスペクトルは複数の球面鏡で夫々集光して冶金や融解あるいは熱水や水蒸気発電の熱源、あるいは太陽電池励起光源や光化学反応光源として提供することができる。
【0016】
シリコーンオイルの光酸化によるガラス化を利用して、レーザー媒質の表面コーティングやレーザー媒質の端面の耐水保護膜形成や平面石英ガラスの光接着により、レーザー出力の減衰を抑え、かつ、レーザー耐性を有する高出力高効率光励起レーザー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0018】
図1で本発明の太陽光励起レーザー装置の動作原理を説明する。積分球や円筒あるいは円錐台などの回転軸対称2次曲面ガラス容器1の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。 ここで入射する光5がレーザー媒質の励起光に分光されている場合には波長選択膜3は蒸着せず入射窓2のままとする。ガラス容器1の他端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を液体入出バルブ14から循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光15あるいは分光された高密度太陽光15を集光後あるいは集光前にガラス容器1の入射窓2から入射させる。ここで円筒型レーザー媒質7を冷却水中12で使用する場合には高密度光入射窓側の反射膜部分16およびレーザー媒質側面17にはシリコーンオイルを塗布した後真空紫外光で光酸化して耐水性膜18をコーティングする。他方、シリコーンオイル13を冷却剤として用いる場合は酸化膜コーティングの必要は無い。
【0019】
図2は高密度光を積分球型光励起レーザー装置に入射する概略図である。積分球型ガラス容器24(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。ガラス容器1の他端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光15を集光後(焦点21)あるいは集光前にガラス容器1の入射窓2から入射させる。積分球型ガラス容器24の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0020】
図3は高密度光を円筒型光励起レーザー装置に入射する概略図である。円筒ガラス容器25(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの分光フィルター26で波長選択された光27のみが入射し、それ以外の光は分光フィルター26で反射除去する。ガラス容器1の他端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光15を集光後(焦点21)あるいは集光前にガラス容器1の入射窓2から入射させる。円筒型ガラス容器25の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0021】
図4は高密度光を円錐台型光励起レーザー装置に入射する概略図である。円錐台型ガラス容器27(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。ガラス容器1の他端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光15をガラス容器1の入射窓2から入射窓2の後方に焦点21がなるようにして入射する。円錐台型ガラス容器27の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0022】
図5はレーザー媒質の共振器部を積分球型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図である。積分球型ガラス容器24(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。ガラス容器1の両端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、レーザー媒質の共振器部を積分球型ガラス容器の外に出してある。ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズ23で集光された高密度太陽光15を集光後(焦点21)ガラス容器1の入射窓2から入射する。積分球型ガラス容器27の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0023】
図6はレーザー媒質の共振器部を円筒型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図である。円筒型ガラス容器25(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。ガラス容器1の両端には対称軸6を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、レーザー媒質の共振器部を積分球型ガラス容器の外に出してある。ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズ23で集光された高密度太陽光15を集光後(焦点21)ガラス容器1の入射窓2から入射する。円筒型ガラス容器25の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0024】
図7はレーザー媒質の共振器部を円錐台型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図である。円錐台ガラス容器27(回転軸対称2次曲面ガラス容器1)の両端面の入射窓2にコールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜3を蒸着し、励起光4のみが入射し、それ以外の光は反射除去する。ガラス容器1の両端には対称軸6を光軸として置かれた円錐台型レーザー媒質7を取り付け冶具8で固定し、レーザー媒質の共振器部を円錐台型ガラス容器の外に出してある。ガラス容器1の外壁9にはレーザー媒質7を励起するために入射高密度光を反射させるために、金、アルミ、銀などの金属膜10や誘電体多層膜10を蒸着する。そしてガラス容器内部11には冷却剤として水12あるいはシリコーンオイル13を循環させ、ガラス容器1の入射窓2から対物鏡やレンズ23で集光された高密度太陽光15を集光後(焦点21)ガラス容器1の入射窓2から入射する。円錐台型ガラス容器27の外壁9に蒸着された反射膜10により何回も反射された入射光4はレーザー媒質7を励起しレーザー光20が出力される。
【0025】
図8は高密度光を分光後積分球型光励起レーザー装置に入射する概略図である。凹面鏡や放物面鏡28で集光された太陽光22、15は凹レンズ29で平行光線30に変換後分光プリズム31により分波して各レーザー媒質の励起波長帯のスペクトルを反射鏡32で分離した後、その1つの波長の光33を集光して積分球型ガラス容器24に入射する。残りのスペクトルは球面鏡32で夫々集光して熱源や光化学反応光源あるいは太陽電池励起光源などの反応装置35に集める。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、外壁が反射膜でコーティングされた積分球や円筒あるいは円錐台などの回転軸対称2次曲面ガラス容器の入射窓に入射した分光後の太陽光を冷却水あるいはシリコーンオイルを介してレーザー媒質に投入することにより、集光された高密度太陽光でレーザー媒質が熱破壊を起こす事も無く、かつ連続発振が可能な高出力高効率太陽励起レーザー装置を提供することができる。
【0027】
集光された太陽光を分光プリズムで分波し、選択されたスペクトルによりレーザー媒質の励起光源として使い、残りのスペクトルは複数の球面鏡で夫々集光して冶金や融解あるいは熱水や水蒸気発電の熱源、あるいは太陽電池励起光源や光化学反応光源として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】太陽光励起レーザー装置の動作原理図
【図2】高密度光を積分球型光励起レーザー装置に入射する概略図
【図3】高密度光を円筒型光励起レーザー装置に入射する概略図
【図4】高密度光を円錐台型光励起レーザー装置に入射する概略図
【図5】レーザー媒質の共振器部を積分球型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図
【図6】レーザー媒質の共振器部を円筒型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図
【図7】レーザー媒質の共振器部を円錐台型ガラス容器の外に出した場合の光励起レーザー装置概略図
【図8】高密度光を分光後積分球型光励起レーザー装置に入射する概略図
【符号の説明】
【0029】
1 積分球や円筒あるいは円錐台などの回転軸対称2次曲面ガラス容器
2 入射窓
3 コールドフィルターやコールドミラーなどの波長選択膜(蒸着膜)
4 励起光
5 入射光
6 対称軸(光軸)
7 円筒型レーザー媒質(レーザーロッド)
8 取り付け冶具
9 ガラス容器外壁
10 金、アルミ、銀などの金属膜あるいは誘電体多層膜
11 ガラス容器内部
12 水(冷却)反射膜あるいは膜が無い部分
13 シリコーンオイル(冷却)
14 冷却溶液出入り口
15 対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光あるいは分光された高密度太陽光
16 誘電体反射膜(レーザー共振器)
17 円筒型レーザー媒質側面
18 レーザー光取り出し窓
19 アモルファスSiO2保護膜(反射防止膜)
20 レーザー光出力
21 焦点
22 太陽光
23 対物レンズ(放物面鏡、凹面鏡、レンズ、フレネルレンズ)
24 積分球型ガラス容器
25 円筒型ガラス容器
26 波長選択フィルター(コールドフィルター、コールドミラー、バンドパスフィルター)
27 円錐台型ガラス容器
28 球面鏡(放物面鏡、凹面鏡)
29 凹レンズ
30 分光後の平行光線
31 分光プリズム
32 凹面鏡
33 波長選択された励起光
34 レーザー励起以外の波長の光(紫外線、赤外線)
35 反応容器(熱源、光化学反応光源、太陽電池励起光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積分球や円筒あるいは円錐台などの回転軸対称2次曲面ガラス容器両端面の一方に波長選択膜蒸着あるいは無蒸着の入射窓、他端は対称軸を光軸として置かれた円筒型レーザー媒質の出口とし、ガラス容器の外壁には反射膜蒸着し、ガラス容器内部は冷媒として水あるいはオイルを満たしあるいは循環させ、ガラス容器の入射窓から対物鏡やレンズで集光された高密度太陽光あるいは分光された高密度太陽光を集光後あるいは集光前にガラス容器の入射窓から入射させることを特徴とする太陽光励起レーザー装置。
【請求項2】
請求項1記載の冷媒としてのオイルがシリコーンオイルであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光励起レーザー装置。
【請求項3】
請求項1記載の高密度太陽光とは集光された太陽光やキセノンランプ光あるいは水銀ランプ光や半導体レーザー光であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光励起レーザー装置。
【請求項4】
前記円筒型レーザー媒質を冷却水中で使用する場合には高密度光入射窓側の反射膜部分およびレーザー媒質側面にはシリコーンオイルを塗布した後真空紫外光で光酸化して耐水性膜をコーティングすることを特徴とする請求項1、2に記載の太陽光励起レーザー装置。
【請求項5】
前記分光とは凹面鏡や凸レンズにより集光された太陽光やランプ光を焦点の手前あるいはガラス容器の入射窓に蒸着したバンドパスフィルターや波長カットフィルターなどにより分波して各レーザー媒質の励起波長帯のスペクトルのみを入射窓から入射することを特徴とする請求項1に記載の太陽光励起レーザー装置。
【請求項6】
前記分光とは凹面鏡や凸レンズにより集光された太陽光あるいはランプ光を焦点の手前で平行光線に変換後分光プリズムにより分波して各レーザー媒質の励起波長帯のスペクトルを1つまたは複数個のスリットまたは反射鏡で分離した後レーザー媒質に集光照射し、残りのスペクトルは1から複数の球面鏡で夫々集光して熱源や光化学反応光源あるいは太陽電池励起光源として利用することを特徴とする請求項1に記載の太陽光励起レーザー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−66368(P2008−66368A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239990(P2006−239990)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(591108455)有限会社岡本光学加工所 (8)
【出願人】(303045188)
【出願人】(505435279)
【Fターム(参考)】