太陽光発電システムおよびその制御方法、ならびに昇圧ユニット
【課題】 施工が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換を可能にする、太陽光発電システム等を提供する。
【解決手段】 本実施形態の太陽光発電システムは、最大出力電力が異なる第1及び第2太陽電池ストリングをMPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムである。第2太陽電池ストリングの出力電圧を第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットがパワーコンディショナの前段に設けられる。昇圧ユニットは、第2太陽電池ストリングの出力電圧を、パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動が検知されれば第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める。
【解決手段】 本実施形態の太陽光発電システムは、最大出力電力が異なる第1及び第2太陽電池ストリングをMPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムである。第2太陽電池ストリングの出力電圧を第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットがパワーコンディショナの前段に設けられる。昇圧ユニットは、第2太陽電池ストリングの出力電圧を、パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動が検知されれば第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電システムおよびその制御方法、ならびに昇圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電システムは、主に、屋根などの構造物上に設置される複数の太陽電池ストリングと、該複数の太陽電池ストリングから出力される直流電力を商用電力系統に対して電圧・電流位相を同期させた交流電力に変換するパワーコンディショナと、で構成されている。複数の太陽電池ストリングは、互いに並列に接続されているとともに、各々、複数の直列接続された太陽電池素子を有している。
【0003】
近年、景観や個性を重視した住宅等に設置される太陽光発電システムにおいては、複数の太陽電池ストリングが有する太陽電池素子の数が、互いに異なる場合がある。このような場合、複数の太陽電池ストリング間の出力電圧を合わせることで、1つのパワーコンディショナでの発電効率を高めるといった技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、太陽電池素子の枚数が異なる複数の太陽電池ストリングを有する太陽光発電システムにおいて、太陽電池素子の枚数が少ない太陽電池ストリング(非標準太陽電池ストリング)の出力電圧を太陽電池素子の枚数が多い太陽電池ストリング(標準太陽電池ストリング)の出力電圧まで高める昇圧ユニットを設ける技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽光発電システムでは、太陽光発電システムの設置時に、標準太陽電池ストリングと非標準太陽電池ストリングの太陽電池素子の枚数比に基づき、切換スイッチを手動で切り換えることによって昇圧ユニットにおける昇圧電圧比率を設定している。このような昇圧電圧比率の設定では、施工時の工数の増加にともない施工コストが増加したり、切換スイッチの選択ミス等により標準太陽電池ストリングでの発電がなされる前に非標準太陽電池ストリングの出力電圧が標準太陽電池ストリングの出力電圧よりも高くなった場合に非標準太陽電池ストリングのみによる電力変換(非標準太陽電池ストリングによる単独運転)がなされて標準太陽電池ストリングでの発電が正常になされなかったりといったおそれがあった。
【0006】
そのため、施工が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換を可能にする太陽光発電システムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−312319号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムは、互いに並列に接続され且つ最大出力電力が互いに異なる第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとをMPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムであり、前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットが前記パワーコンディショナの前段に設けられている。この昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンデ
ィショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高める。
【0009】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムの制御方法は、第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとが並列にパワーコンディショナに接続される太陽光発電システムにおける制御方法である。そして、前記第1太陽電池ストリングの最大出力電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定するステップと、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めるステップと、を有する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る昇圧ユニットは、第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧してからパワーコンディショナに出力可能な昇圧ユニットである。そして、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記パワーコンディショナがMPPT制御された結果に基づく脈動が検知されると前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態に係る太陽光発電システムおよびその制御方法、ならびに昇圧ユニットによれば、第1太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナでの電力変換で生じるMPPT制御における脈動の検知に基づき第2太陽電池ストリングの出力電圧を第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することから、施工時の工数を増加させることなく、第1太陽電池ストリングの電力変換開始前の第2太陽電池ストリングによる単独運転を抑制することができるため、施工が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける脈動を検出する過程を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムに用いられる脈動検出部を含む太陽光発電システムの脈動検知部分を示す模式的なブロック図であり、(b)は、第1の実施形態に係る太陽光発電システムに用いられる脈動検知部の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図13】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図14】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムの第1の変形例を示す模式的なブロック図である。
【図15】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムの第2の変形例を示す模式的なブロック図である。
【図16】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムにおける脈動を検出する過程を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システム11を示す模式的なブロック図である。この太陽光発電システム11は、複数の太陽電池ストリング2を、パワーコンディショナ6を介して商用電力系統3に系統連系させるためのものである。
【0015】
具体的には、本実施形態に係る太陽光発電システム11は、第1の太陽電池ストリング2A(2)と、該第1の太陽電池ストリング2Aと並列に接続された第2の太陽電池ストリング2B(2)と、この第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bで発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ6と、第2の太陽電池ストリング2B(2)の出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7と、を有している。この昇圧ユニット7は、パワーコンディショナ6の前段、換言すれば、パワーコンディショナ6の入力側に設けられている。また、本実施形態においては、昇圧ユニット7の後段側、換言すれば、昇圧ユニット7の出力側に脈動検知回路8が設けられている。すなわち、図1に示すように、脈動検知回路8は、パワーコンディショナ6と昇圧ユニット7との間に設けられている。このような太陽光発電システム11において、パワーコンディショナ6の交流出力は、商用電力系統に接続されるとともに、交流負荷にも接続され、得られた交流電力は交流負荷等で消費される。
【0016】
以下、太陽光発電システム11における各構成について説明する。
【0017】
まず、複数の太陽電池ストリング2について説明する。第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bは、互いに直列に接続された複数の太陽電池素子や太陽電池モジュールを有している。本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bにおける太陽電池素子または太陽電池モジュールの数は、第1の太陽電池素子2Aにおける太陽電池素子または太陽電池モジュールの数よりも少ない。換言すれば、第2の太陽電池ストリング2Bにおける最大発電容量(最大出力電力)は、第1の太陽電池ストリング2Aにおける最大発電容量(最大出力電力)よりも小さい。このような第1の太陽電池
ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bは、互いに並列に接続されている。なお、第1および第2の太陽電池ストリング2A、2Bにおける太陽電池素子としては、種々の太陽電池素子を用いることができる。
【0018】
次に、昇圧ユニット7について説明する。昇圧ユニット7は、上述したように、パワーコンディショナ6の入力側に設けられている。本実施形態においては、パワーコンディショナ6の入力端子は、脈動検知回路8と接続されているため、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bと脈動検知回路8との間に設けられている。
【0019】
本実施形態において、この昇圧ユニット7は、第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧よりも第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧が低い場合に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧まで高める機能を有する。すなわち、1つのパワーコンディショナ6に互いに並列に接続された複数の太陽電池ストリング2のうち、最大発電容量(最大出力電力)がより少ない第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧まで高める機能を有する。
【0020】
より具体的には、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、パワーコンディショナ6での電力変換開始前にはパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0021】
一般に昇圧ユニット7を用いて第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に昇圧する場合、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を何倍に昇圧するかが問題となる。昇圧ユニット7の構造によって問題点も異なるが、例えば、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を一定電圧に昇圧して出力すると、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧は昇圧ユニット7によって昇圧された第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧よりも高い電圧になるまでパワーコンディショナ6に発電電力を送り込むことが出来ない。反対に、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧が昇圧ユニット7により昇圧された第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧よりも高くなると、今度は昇圧ユニット7を介して出力している第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力がパワーコンディショナ6に送り込むことが出来なくなる。
【0022】
しかしながら、本実施形態においては、上述したように、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、パワーコンディショナ6での電力変換開始前にはパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0023】
このような昇圧動作の制御により、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換がなされるまで、第2の太陽電池ストリング2Bは電力変換しないよう制御するとともに、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換が開始された後は、第2の太陽電池ストリング2Bは昇圧ユニット7を介して昇圧された第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ値である出力電圧で電力変換できるよう制御される。これにより、第1の太陽電池ストリング2Aの正常運転を妨害する昇圧系統の独立運転を防ぐことができる。その結果、異なる最大発電容量を有する複数の太陽電池ストリング2によって、電力損失の少ない効率的な電力変換が可能となる。
【0024】
また、このような構成を有する本実施形態は、回路構成が複雑であり且つ送電路に逆流
防止ダイオードを用いた構成の場合に用途に制限が生じるといった、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を監視して、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7の昇圧比を変化させて、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に追従する方法と比べて、容易な構成で且つ送電路に逆流防止ダイオードを用いた場合の適用範囲が広い。
【0025】
さらに、本実施形態は、現場で作業者が太陽電池素子や太陽電池モジュールの枚数や電圧規格を基に最適電圧を計算し、ロータリースイッチ等を手動で設定するといった手間が生じ、計算ミスや作業ミスによるトラブルが生じ易い、各太陽電池ストリング2における太陽電池の直列数(太陽電池素子やモジュールの枚数)の差から昇圧比を手動で設定する方法と異なり、施工が容易である。
【0026】
なお、この昇圧ユニット7は、独自にMPPT制御されていてもよい。すなわち、昇圧ユニット7に用いるMPPT制御回路を、後述するパワーコンディショナ6のMPPT制御回路5とは別に設けていてもよい。
【0027】
次に、パワーコンディショナ6について説明する。パワーコンディショナ6は、上述したように、複数の太陽電池ストリング2の発電電力を交流電力に変換する電力変換装置である。たとえば、パワーコンディショナ6としては、出力側に家電製品などの交流負荷を接続して商用電力系統と連系して負荷に電力を供給する系統連系型のものを用いることができる。
【0028】
パワーコンディショナ6は、DC/DC変換部とインバータ部とを含む(不図示)。
【0029】
DC/DC変換部は、特に限定されないが、例えば、スイッチング素子と、コンデンサーと、リアクトルと、ダイオードとを備えている。DC/DC変換部は、太陽電池ストリング2で発電した直流電力から200〜300Vの直流電圧を作りインバータ部へ送る。このDC/DC変換部としては、入力電圧の変化に対応して出力電圧を調節できるように、スイッチング素子を変換電圧に応じてパルスのデューティをコントロールするPWM方式により制御するものが望ましい。また、インバータ部は直流電力を交流電力に変換するものである。
【0030】
インバータ部は、例えば、トランジスタやFETやトライアックを用いたブリッジ回路で直流をスイッチングして交流に変換するスイッチング部と、スイッチング部のスイッチング周波数やデューティをコントロールする周波数制御部と、スイッチングにより交流化された電力波形を商用電力系統の交流波形に近い曲線に鈍らせるフィルター回路とで構成される。フィルター回路は、リアクトルと呼ばれるコイルとコンデンサーが組み合わされたもので、高周波成分除去フィルターとして機能する。
【0031】
本実施形態においては、パワーコンディショナ6は、MPPT制御されている。すなわち、パワーコンディショナ6は、第1の太陽電池ストリング2Aを最大出力電力で動作させるMPPT(最大電力点追従(Maximum Power-Point Tracking))制御回路5が設けられている。例えば、このMPPT制御回路5は、上述のDC/DC変換部に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態においては、前述したように第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を制御する昇圧ユニット7を有しているため、第1の太陽電池ストリング2Aに基づく電力変換がなされるまでは、このMPPT制御回路5により、パワーコンディショナ6は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を変動させて、第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧点の移動を監視していることとなる。この時、パワーコンディショナ6
での電力変換が第1の太陽電池ストリング2Aに基づくもののみであるため、この電圧点の監視により、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に脈動が生じているかどうかが確認できることとなる。
【0033】
そして、本実施形態においては、この第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧における検知可能な脈動を利用して昇圧動作を制御する。具体的には、脈動検知回路8でこの脈動を検知する。そして、この脈動を検知した脈動検知回路8は、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換に基づきパワーコンディショナ6でMPPT制御が行われていると判断し、これを知らせる信号を昇圧ユニット7へ送る。これにより、「パワーコンディショナ6が起動している=第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づく電力変換がなされている」と判定し、第2の太陽電池ストリング2Bに対する昇圧ユニット7による昇圧動作を制御するものである。
【0034】
このような昇圧動作の制御をおこなうことで、本実施形態においては、パワーコンディショナ6は第1の太陽電池ストリング2Aで電力変換を開始しているため、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力される。すなわち、このような昇圧動作の制御がおこなわれる本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を検出する機構や、施工時に昇圧ユニット7における出力電圧(昇圧比)を設定するロータリースイッチを別途設けることなく、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力することができる。その結果、簡単な構成でしかもスイッチなどを用いた設定作業を要することのない、施工性が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換が可能な太陽光発電システムを提供できる。
【0035】
なお、この時、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7の出力電圧値(昇圧比)は、例えば、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲であって、且つその入力運転電圧範囲の最大定格値以下とすることができる。
【0036】
なお、本実施形態における脈動検知のフローについての詳細は、図2を用いて、後述する。また、本実施形態における昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧動作およびその際の第2の太陽電池ストリング2Bの電圧プロファイルについての詳細は、図8を用いて、後述する。
【0037】
ここで、本明細書における「第1の太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」とは、第1の太陽電池ストリングの出力電圧など第1の太陽電池ストリングの出力電力に関する種々の要素における、最大出力電力における値の近傍でのMPPT制御と略同一な周期を有する周期的な変動をいう。より具体的に、出力電力の1つの要素として出力電力の電圧を例に説明すると、「第1の太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動が検知される」とは、昇圧ユニットの出力端子とパワーコンディショナの入力端子間の電路に設けられた電圧検出手段によって検出された出力電力の電圧が、あらかじめ設定されている任意の第1の太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧値の近傍で周期的に変動していることが確認されることをいう。なお、ここで、「周期的に変動している」とは、例えば、電圧値の変動が、周期と振幅が得られる程度に規則的なものであることをいう。
【0038】
また、ここで、本明細書における「パワーコンディショナの入力運転電圧範囲」とは、JIS C8960に規定されているように、「出力電圧、周波数などの定格緒量を満足し、安定に運転できる直流入力電圧の範囲」であり、換言すれば、「パワーコンディショナが安定に運転できる直流入力電圧範囲」のことである。
【0039】
なお、本実施形態においては、MPPT制御回路5を含むパワーコンディショナ6を例示したが、パワーコンディショナ6の構成は特にこれに限定されない。例えば、MPPT制御回路5は、パワーコンディショナ6とは別に配置してもよい。
【0040】
次に、図2を用いて、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における脈動検知フローについて、詳細に説明する。
【0041】
本実施形態においては、脈動検知回路8は、「第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」として、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における電圧成分の脈動を検知する。そして、該検知を基に、上述のように昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を制御する。すなわち、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における電圧成分の脈動の検知をトリガーにして昇圧する。
【0042】
このように電圧成分の脈動を検知して昇圧することで、変化量がより小さい電流成分等に比べて簡易な検出手段によって高い精度で脈動を検知することができる。その結果、昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧制御の精度が高まり、より効率的な電力変換が可能となる。
【0043】
なお、脈動検知回路8が検知する脈動である「第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」としては、電圧成分に限らず、上述したように、電流成分などパワーコンディショナの入力端子に入力される電力に関する種々の他の要素であってもよい。このとき、脈動検知回路8が電圧成分の脈動を検知する場合は、脈動検知回路8は電圧検出手段を有していればよく、同様に、脈動検知回路8が電流成分の脈動を検知する場合は、脈動検知回路8は電流検出手段を有していればよい。
【0044】
以下、図2に沿って、本実施形態に係る電圧成分の脈動検知のフローにおける各STEPについて詳細に説明する。
【0045】
脈動検知回路8は、STEP1でパワーコンディショナ6の入力側電圧(第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に相当)を測定する。このとき、昇圧ユニット7の昇圧動作は停止している。なお、昇圧ユニット7の回路構成によっては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力が昇圧ユニット7の出力側に無変換で出力されるので、第1の太陽電池ストリング2Aが電力変換発電を行っていない場合でも脈動検知回路8が電圧(電流)を検出してしまう場合もあるが、後述するように、この場合に検出される電圧波形は、脈動を含むものではない。
【0046】
次に、STEP2で、STEP1で検出した電圧の波形に脈動の波形が含まれているかどうかを判定できるように、検出した電圧の波形を解析する。ここでいう「電圧の波形に脈動の波形が含まれている」とは、電圧の波形に周期性を有する電圧変動が認められる波形が含まれていることをいう。また、ここでいう「電圧の波形を解析する」とは、例えば、一定の時間間隔で測定した電圧値を変動のある部分と無い部分に分け、変動のある範囲のデーターだけを抽出し、その範囲にどのような周期(周波数)、電圧(電流)の波形が存在するかを解析することをいう。そして、この段階で、波形が脈動であるとはいえない形状や連続性の無い形状であると判定すれば、以降の解析を中断しSTEP1へ戻る(STEP3に相当)。このようにSTEP2において最後まで解析しない、すなわち、脈動の周期性に関する具体的な数値を解析しないでおくことで、脈動検知フローに用いられるCPU等の演算の負担を減らすことができる。
【0047】
そしてSTEP3で、STEP2で得られた解析結果を基に、電圧の波形に脈動が検知されたか否かを判定する。すなわち、電圧の波形に脈動が検出されたと判定されればSTEP4へ進み、脈動が検出されたと判定されなければSTEP1へ戻る。上述したように本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aに基づく電力変換で生じる脈動が検知されるまで、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、パワーコンディショナ6の入力運転範囲の下限未満に設定されているため、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力ではパワーコンディショナ6は起動しない。そのため、STEP1において説明したように、脈動検出回路8が第2の太陽電池ストリング2Bの電圧を検出したとしても、第2の太陽電池ストリング2BはMPPT制御も行われていないため、MPPT制御における脈動も検出されないようになっている。
【0048】
次に、STEP4では、得られた脈動波形における周期性を解析する。具体的には、周期性を有する脈動を含む波形が確認される場合に、各周期の連続する波形形状および電圧(電流)の大きさを解析する。このとき、STEP2で抽出した波形データーとパワーコンディショナ6のMPPT制御によって生じる脈動の波形情報とを照らし合わせて、MPPT制御の波形パターンと類似する(多少の差異は誤差範囲として容認するようにすると良い)かどうかを照合する。そして、第1太陽電池ストリング2Aの発電状態に依存するいくつかの脈動波形のいずれかと適合すれば、第1太陽電池ストリング2Aに基づく脈動が検知されたと判定し、不適合であればSTEP1へ戻す。このようにして、得られた電圧の波形を解析することができる。
【0049】
なお、このとき、この解析工程において、脈動波形をより確度高く検知するために、パワーコンディショナ6のMPPT制御による波形情報を、後の工程で用いることができるように脈動検知回路8に記憶しておいてもよい。なお、該記憶は必須ではない。例えば、予め定められた電圧(電流)値と周期を越える大きさを有する波形であれば、その波形に第1太陽電池素子2Aに基づく脈動が検知されたと判定することも可能である。
【0050】
例えば、得られた脈動波形における周期性の解析として、得られた脈動波形における周波数を解析しても良い。住宅用太陽光発電装置に用いられるパワーコンディショナでは6秒〜12秒周期のものが一般的であった。また、電圧変動幅は2〜6Vが検出できた。
【0051】
そして、STEP5では、STEP4で解析した結果、得られた脈動波形における周期性が、パワーコンディショナ6のMPPT制御と略同一の周期性を示すか否かを判定する。すなわち、得られた脈動波形における周期性がパワーコンディショナ6のMPPT制御の周期性と略同一である場合にはSTEP6に進み、略同一の周期性が見出せない場合にはSTEP1に戻る。このような、得られた脈動波形における周期性が、パワーコンディショナ6のMPPT制御と略同一の周期性を示すか否かを判定するSTEP5は、換言すれば、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されたか否かを判定するSTEPである。
【0052】
なお、本実施形態においては、STEP2〜STEP5において解析と判定を異なるSTEPとしてプログラムされた形態を例示したが、脈動検出回路8における演算素子(CPU等)の演算性能が十分に高ければ、プログラム上、STEP2〜STEP5における解析と判定を一度に行うようにしても良い。
【0053】
次に、STEP6では、STEP5の判定に基づき、パワーコンディショナ6のMPPT制御による電圧成分の脈動が検知されれば、該検知を知らせる信号を昇圧ユニット7に伝達する。そして、この信号を受信した昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を開始する。すなわち、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0054】
このように、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づきパワーコンディショナ6が起動するまで、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力が電力変換されないように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧が制御される。そのため、パワーコンディショナ6の起動電力は第1の太陽電池ストリング2Aから供給され、この第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づきパワーコンディショナ6が起動した後にMPPT制御が開始される。そのため、上記STEP1〜STEP6の脈動検知フローにおいてMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aが正常に発電している状態にあると判断できる。これにより、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力を昇圧ユニット7を介して昇圧してパワーコンディショナ6に送り込んでも第2の太陽電池ストリング2Bによる単独運転になることはない。したがって、上述したように、複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能となる。
【0055】
そして、最後にSTEP7で、脈動検知回路8による脈動検知動作を停止(終了)する。なお、この一連の脈動検知フロー(STEP1〜STEP7)のリセットや再開の方法としては、例えば、夜間等の太陽電池ストリング2の発電停止状態をリセット条件としたり、朝の発電再開を再開条件としたりするなどの自動制御の方法が考えられる。なお、他のリセットや再開方法としては、強制的にリセットをかけられる様に手動のリセットスイッチを設けたり、異常時に手動で再開が可能したりする方法を採用しても良い。
【0056】
次に、図3を用いて、上述のSTEP2〜STEP5における脈動の検出方法について説明する。図3(a)は、脈動の検出に用いられる脈動検出部13を含む、本実施形態に係る太陽光発電システム11における要部のブロック図であり、図3(b)は、太陽光発電システム11における脈動検出部13の変形例を示す要部のブロック図である。
【0057】
上述したように、太陽光発電システム11において、脈動検知回路8は電圧成分の脈動を検出し、その脈動がパワーコンディショナ6のMPPT制御によるものかどうかを解析して、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動の発生を検知するものである。このような本実施形態においては、電圧成分の脈動を検知するため、脈動検知部13(センサー部)で脈動検知回路8とパワーコンディショナ6との間の電圧成分を検出する。そして、検出された電圧成分に関する情報に脈動波形が含まれているかを脈動検知回路8で解析する。
【0058】
脈動検知回路8としては、例えば、電圧解析に必要な演算素子とデーター記憶領域とA/D入力機能を有しているマイコンやCPUとを有しているものが好適である。脈動検出部13から取り込まれた電圧成分に関する情報はマイコンのA/D入力でデジタルデーターに変換されデーター記憶領域に格納される。そして、演算素子が、格納された数値から変化量を算出して波形情報を形成し、波形情報が予め定められた規定値(例えば、パワーコンディショナ6におけるMPPT制御の周期や周波数)に該当するかが判定される。そして、得られた脈動がその規定値と略同一でありMPPT制御における脈動であると判断されれば、昇圧ユニット7に脈動検知の情報を送信する。
【0059】
なお、脈動検知の情報としては、単なるON−OFF信号(信号の有り、無し)でも良いし、電圧成分の脈動情報に時間情報等を加味した情報であってもよい。後者の場合、昇圧ユニット7で受信したこれらの情報についてさらに詳細な解析を行って、昇圧動作の精度を高める(誤動作回避)ことが出来る。
【0060】
また、脈動検知回路8から昇圧ユニット7への上記情報の送信は、専用の通信線を用いておこなってもよい。また、他の送信方法として、太陽電池ストリング2の発電電力を出力する電力線に信号を重畳させて送信しても良い。さらに他の送信方法としては、脈動検
知回路8を昇圧ユニット7から離して配置する必要性がある場合には、赤外線通信ユニットや特定の小電力通信デバイスを用いて送信しても良い。
【0061】
また、脈動検知回路8の動作電源としては、第1の太陽電池ストリング2Aや第2の太陽電池ストリング2Bのいずれか供給可能な方(回路動作電圧および回路消費電流を供給できる発電電力の有る方)から電力を得てもよい。他の形態として、脈動検知回路8は、内部に蓄電池等を内蔵して自立動作できるようにしてもよく、この場合、太陽電池ストリング2の発電電力が不安定なときでも、脈動検知回路8による安定した波形解析動作が行える。なおこのとき、内蔵された蓄電池への充電は太陽電池ストリング2の発電力が十分に存在するときに行えば良い。
【0062】
またさらに、電圧の検出場所としては端子台などが好適であるので、脈動検出部13や脈動検知回路8は接続箱10や昇圧ユニット7の筐体内に配置するのが好ましい。
【0063】
なお、上述したように、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動の検知としては、電圧成分の脈動に限らず、電流成分の脈動を検知してもよい。図3(b)は、太陽光発電システム11における脈動検出方法における変形例11’として、電流成分の脈動を検知する例を示している。
【0064】
具体的には、該変形例11’は、電流成分の脈動を検知する脈動検出部13’を有する点で、太陽光発電システム11と相違する。脈動検出部13’としては、電流センサー等の素子を用いて非接触で電流成分の脈動を検出する構成を採用することが可能である。この変形例では、脈動検知回路8の配置の制限が緩和される。
【0065】
なお、図3(a)および図3(b)のいずれにおいても、脈動検知回路8は昇圧ユニット7の出力側に設置しているが、脈動検知回路8の位置はこの限りではなく、昇圧ユニット7の後段で且つパワーコンディショナ6の前段であれば、いずれの位置に配置しても良い。
【0066】
また、本実施形態に係る太陽光発電システム11においては、図1のブロック図に示すように、昇圧ユニット7は、パワーコンディショナ6から離して配置されている。すなわち、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とは別体で構成されている。このような構成により、特に、電圧成分の脈動を検知する検知方法を用いる際には、脈動検出回路8が昇圧ユニット7の近くに配置された場合であっても、第2の太陽電池ストリング2Bに電流が流れていないことにより電圧降下がほとんどない状態で、脈動を精度良く検知することができる。
【0067】
なお、図1に示すように、各太陽電池ストリング2の出力電力はパワーコンディショナ6で各々接合され並列接続されているのである。このとき、第2の太陽電池ストリング2Bと昇圧ユニット7との距離が長いと、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力は線間抵抗で減衰した後で昇圧されることになり、効率が悪い。そこで第2の太陽電池ストリング2Bの近くに昇圧ユニット7を配置し、昇圧してから送電するようにすれば、電圧値を昇圧させた分だけ電流値が減るので線間抵抗によって減衰する損失量(線間抵抗×電流)が相対的に減り、効率の良い送電が行える。この場合、脈動検知回路8は昇圧ユニット7へ脈動検知情報を送信する信号線の引き廻しによる外観への影響を考慮し、昇圧ユニット7の近くに配置することが好ましい。
【0068】
このように、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とが別体で構成された場合であって両方間の距離が大きい場合に、特に脈動検知回路8を昇圧ユニット7の近くに配置することで、より一層、複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能となる。また、両方間の距離が小さい場合であっても、脈動検知回路8を昇圧ユニット7のすぐ前段に配置することは、太陽電池ストリング2の発電電力の送電による電力損失を少なくし、電力変換可能な電力量を増やすことが可能となる観点から好ましい。
【0069】
以上のように、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6との距離に関わらず、脈動検知回路8は昇圧ユニット7のすぐ前段に配置することで、施工が容易な構成で且つ複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能な太陽光発電システムを提供することができる。
【0070】
次に、本実施形態に係る太陽光発電システム11における、上述した昇圧ユニット7の昇圧動作について、各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を用いて説明する。
【0071】
図8は、本実施形態に係る太陽光発電システム11における各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を示すグラフであり、縦軸が太陽電池ストリング2の出力電圧、横軸が時刻である。
【0072】
図8において、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を実線、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を破線で示している。
【0073】
また、パワーコンディショナ6は任意の入力運転電圧範囲を有しているため、起動する、すなわち電力変換を開始するためには、ある一定範囲の直流入力電圧が必要である。図8においては、この入力運転電圧範囲の下限値(最低電圧)を一点破線で示している。なお、住宅用パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の一例としては、例えば、150V〜300Vが挙げられ、製造メーカーによって種々異なる値である。また、産業用パワーコンディショナ等では、入力運転電圧範囲の上限値が600Vを越えるものもあり、本実施形態においては、種々のパワーコンディショナを用いることができる。
【0074】
以下、本実施形態に係る太陽光発電システム11における電圧成分の脈動を検知する方法について説明すべく、図8を用いて、第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧変動について、詳細に説明する。
【0075】
図8に示すように、例えば、日の出と共に第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が上昇し出力電圧もそれに伴い上昇する。しかしながら、朝方は日射強度が十分強くはないので雲等で日差しが遮られると発電電力が急激に低下する(図中A点のような日射変動による電圧低下)場合もある。本実施形態においては、図中A点付近で日射変動が生じた形態を例にしている。なお、太陽電池ストリング2の出力電圧は無負荷であれば日射変動が生じても然程大きな変動は生じないが、本実施形態では便宜上パワーコンディショナ6が負荷として作用しているものとして説明する。
【0076】
図中A点ではパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値Vmin(以下、最低起動電圧とする)に達しているが、それ以前にあった日射変動のように最低起動電圧に達した後に再び低下することも有り得る。そのため、パワーコンディショナ6の起動は図中B点付近まで行われない。この図中A点から図中B点までの間の時間は「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(16資電部第114号)」の定めに従って設計されており、一般に太陽光発電等のパワーコンディショナ6は10分間以上の安定電力が供給された後に起動するようになっている。よって、図中B点まではパワーコンディショナ6は起動しておらず、内蔵されたMPPT制御回路5も動作していない。そのため、図8に示すように、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧の波形には脈動は生じていない。この時、日射に応じて第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は第1の太陽電池ストリング2Aと共に上昇するが、第1の太陽電池ストリング2Aと比べて直列数が少ないので第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧程度までは上昇しない。
【0077】
なお、本実施形態においては、昇圧ユニット7は昇圧動作停止時にも第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力を無変換で出力させるものとして説明する。すなわち、本実施形態においては、図8に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、昇圧動作が開始される図中点C(脈動が検知された時間tc)まで、ある程度の傾斜角度で上昇している。しかしながら、昇圧ユニット7の回路構成によっては昇圧動作停止時には出力側の電圧が0Vとなるものもある。そのような形態の昇圧ユニット7を用いてもよく、その場合においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点まで0Vで推移することとなる。
【0078】
上述したように第1の太陽電池ストリング2Aは日射に伴い規定時間が経過した後(図中B点)、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力に基づいてパワーコンディショナ6が起動しMPPT制御が開始されると第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に図中のような脈動波形が観測される。この脈動波形は、主にMPPT制御回路5が第1の太陽電池ストリング2Aの最大電力点となる最適動作電圧を確認するために動作電圧値を増減させていることによって生じたものである。すなわち、その振幅や周期(周波数)は、パワーコンディショナ6の設計思想によって異なり、同じ製造メーカーでも種々異なる値を有する。
【0079】
なお、このMPPT制御回路5によるMPPT制御における振幅や周期(周波数)は、例えば、電圧変動幅は2〜6V、変化周期は6秒〜12秒周期などである。例えば、本実施形態においては、電圧変動幅が4V、変化周期が10秒のMPPT制御をおこなってもよい。この場合、例えば、第1の太陽電池ストリング2Aの最適出力電圧が200Vであるとすると、脈動検知回路8の演算素子が8ビットのCPUであれば、0.78Vの分解能があるので、4Vの電圧変動を十分に検出することが可能である。
【0080】
図8に示すようなこの電圧成分の脈動は、図2を用いて先に述べたように、パワーコンディショナ6のMPPT制御が行われている間は常に検出される。脈動検知回路8では図中B点で脈動が検出されると、脈動波形を解析してMPPT制御によって生じた脈動波形であるかどうかを判定する。ここで、判定の方法としては、例えば、脈動波形の電圧変動幅が、MPPT制御におけるそれと略同一の値で、且つ略同一の周期であるかで他のノイズと識別する等が挙げられる。より具体的には、上述したように、MPPT制御回路5によって電圧変動幅が4V、変化周期が10秒のMPPT制御をおこなっている場合、検出した脈動波形における各周期(第1周期、第2周期…)の波形が略同一であり、且つ、電圧変動幅が約4V、変化周期が約10秒であればよい。
【0081】
なお、図8は、図2に示す脈動検知フローにおけるSTEP1で測定する電圧値のデーターを用いて作成したグラフであるが、ここで判定に用いる周期(周波数)は前記電圧値のデーター(波形の数)が多いほど信頼性が向上する。該判定のために測定する波形の数は、適宜選択すればよい。
【0082】
そして、脈動検知回路8が、図8に示すような第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動を検知したと判定すると、第2の太陽電池ストリング2Bと接続されている昇圧ユニット7に起動を促す信号を送信する(図中C点)。これにより昇圧ユニット7による昇圧動作が開始され、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点から上昇し、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と等しくなる(図中F点)。この時、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力のパワーコンディショナ6による電力変換が開始される。そのため、図中F点から、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力電圧も第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同
じ値で脈動するようになる。なお、このとき、上述したように、昇圧ユニット7の昇圧比は、既にパワーコンディショナ6は第1の太陽電池ストリング2Aで電力変換を開始しているため、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲であって、且つその入力運転電圧範囲の最大定格値以下に設定しておくだけでよい。これにより、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力される。
【0083】
以上述べたように、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aによってパワーコンディショナ6のMPPT制御が動作し脈動を発生させたことを検知した(図中C点)後に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を開始するようにしている。このことによって、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力の電力変換が開始される前に昇圧ユニット7で昇圧された電力にパワーコンディショナ6がMPPT制御をかけることを低減でき、昇圧系統の単独運転を抑制できる太陽光発電システムを提供できる。また、このように昇圧系統の単独運転が起こらない構成とすることにより、昇圧ユニット7に単独運転防止のための昇圧電圧の設定機構や設定工程を別途設ける必要が無くなり、回路構成を簡素化するとともに設置作業性も向上する。
【0084】
また、本実施形態においては、昇圧ユニット7は、図中C点でMPPT制御における脈動を検知した信号を受信すると、一気に第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)まで高めている。すなわち、図8に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点までは無変換で出力されることによりある一定の傾斜角度で上昇し、昇圧ユニット7によって昇圧動作がなされたら、縦軸に平行な軌跡を有するように、時間tcにおいて第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで昇圧される。このような昇圧動作の形態は、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力をいち早く昇圧してパワーコンディショナ6に入力することができるため、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力を好適に活用することができる。また、このような形態においては、昇圧ユニット7の昇圧動作を規定するプログラムが容易であるため、コストの低減も図れる。
【0085】
なお、図3(b)に示した電流成分の脈動を検知する場合においても、上述した電圧成分の脈動を検知する場合と同様であり、図8に示す出力電圧の波形を出力電流の波形と置き換えて見れば良い。そして、電流成分の脈動を検知する場合においても、同様の効果が得られる。ただし、電流成分の脈動の波形は電圧成分の脈動の波形と位相が逆なのでその点は注意して、MPPT制御が動作したことによる脈動の可否を判定すべきことは言うまでもない。
【0086】
また、脈動の検知においては、上述したように電圧成分および電流成分に限らず、太陽電池ストリングの出力電力に関する種々の要素を用いて脈動の可否判定を行ってもよいが、可否判定の容易性から、脈動の振幅の大きさが大きい電圧成分や電流成分の脈動を検知するのがより好ましい。
【0087】
以上、本実施形態においては、図8に示すように、図中B点以降で得られた脈動波形においては、第1周期の波形は、後続の第2周期の波形および第3周期の波形と略同一であり、該波形を用いた脈動検知の判定について、説明したが、検出される波形はこれに限らない。
【0088】
そこで、以下に、第1、第2および第3周期の波形が略同一ではない事例について、図17を用いて、説明する。
【0089】
図17は、本実施形態において、STEP1で得られた電圧成分を示す波形の他の例を
示す。具体的には、図17には、図8における図中B点以降の波形部分に対応する部分を取り出して示している。
【0090】
ここで、図17における電圧V1は、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6への入力電圧に相当する。なお、以下、図17に示すように、電圧V1に基づきパワーコンディショナ6が起動(図中B点)してから時間t1までのV3―V4間の電圧変動について、上述したSTEP1において、脈動かどうか判定する手順を説明する。
【0091】
まず、サンプリングした電圧成分の波形データーを基に周期性を有する波形があるか否かを判定する。すなわち、周期Tを有する波形が存在するか否かを判定する。具体的には、例えば、簡単な方法としては、周期Tの開始点V1から電圧が上昇した後、再度、電圧V1に下がり、再び電圧V1に上昇するまでを1周期として、この1周期に含まれる波形を1波形と認識する。そして、その1波形において、その波形が電圧値V1を基点に左右対称の形状であるかどうかや、その波形における電圧の最大値と最小値の電圧値V1からの変動幅が同じであるかどうか、電圧値V1−V1間の山のカーブに谷などが含まれていないかどうか、という点を基に、検出された電圧波形の波形形状を解析する。なお、このとき、電圧の振れ幅や1周期の時間も解析項目として用いてもよい。
【0092】
次に、MPPT制御による脈動の場合は、その波形に連続性があることから、検出された電圧波形のデーターにおいて、同じ波形が連続する、もしくは周期や波形の電圧変動がある程度(例えば10%の誤差範囲なら)似ていれば同じ波形と判定し、MPPT制御における脈動があると判定することができる。なお、このとき、連続する2つの波形、具体的には、1つ目の波形(周期T1における波形)と2つ目の波形(周期T2における波形)とを比較して判定すればよい。すなわち、3つ目の波形(周期T3における波形)を用いて判定する場合は、比較対象の波形としては、2つ目の波形(周期T2における波形)を用いればよい。
【0093】
この比較判定において、もし、周期T1と周期T2における波形が略同一で、且つ周期T2と周期T3の波形も略同一であると判定されれば、波形には連続性があるといえるので、MPPT制御による電圧脈動が検知されたと判定することができる。この判定に基づき、昇圧ユニット7に脈動検知の情報送信をおこない、昇圧動作の開始を促す。もし、波形に連続性がないと判定されれば、再度、新たな電圧成分の波形データーの入手作業に戻る。なお、情報送信後は脈動検知動作を停止する。
【0094】
以上のように、MPPT制御による波形が、略同一の1周期の波形が連続したものではなくても、比較的安定している(波形の形状・大きさの差異が少ない)場合には、波形を相対的に比較して連続性を判定することで、周期性を有する脈動か否かを判定してもよい。このような判定にすれば、波形の規格値(電圧等の振幅や周期)が不明であっても波形の連続性から周期性を有する脈動を検知することができる。この周期性を有する脈動波形の種々の値(振幅や周期)を用いて、MPPT制御回路5によるMPPT制御における脈動か否かの判定が可能となる。これにより、多様なメーカーのパワーコンディショナ6のMPPT制御回路5に対応した脈動検知が可能となり、汎用性に優れる。
【0095】
なお、このような判定方法においては、上述の2つの波形(周期T1における波形および周期T2における波形)を比較した際の、波形の電圧等の振幅や周期における許容差の値を予め設けておき、2つの波形の各値の差がその対応する許容差の範囲に該当する場合は、検出された波形は周期性を有すると、判定してもよい。このような判定方法にすれば、より確実に波形判定ができる。なお、このときの許容差の範囲の設定の方法としては、脈動検知回路5の内部メモリーに各メーカーのパワーコンディショナ6で用いられているMPPT制御回路8の電圧の振幅や周期の情報から上限と下限を選んで設定したり、検出された波形の周期に併せて対応する電圧の振幅の電圧値を読み出して用いたりする方法がある。
【0096】
<第2の実施形態>
図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係る太陽光発電システム21について、説明する。図4(a)は、第2の実施形態に係る太陽光発電システム21のブロック図であり、図4(b)は、図4(a)の要部拡大図である。本実施形態は、脈動検知回路8の配置について、第1の実施形態と異なる。なお、ここでは第1の実施形態と異なる構成のみについて言及する。後述の実施形態においても同様である。
【0097】
第2の実施形態に係る太陽光発電システム21は、具体的には、図4(a)に示すように、脈動検知回路8が昇圧ユニット7の内部に配置されている。このような構成により、上述したような脈動検知回路8から昇圧ユニット7への情報送信に用いられる情報送信線距離や、昇圧ユニット7と脈動検知回路8との間の配線距離を短くすることができる。その結果、昇圧ユニット7までにおける第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力の送電による電力損失を少なくし電力変換可能な電力量を増やすことが可能となるとともに、配線部材や筐体を削減してシステムコストの低減が図れる。
【0098】
このような形態においては、脈動検知回路8としては、図4(b)に示すように昇圧ユニット7の内部の昇圧動作を行う昇圧制御回路71を用いればよい。すなわち、昇圧ユニット7のCPUに脈動検知のプログラムを持たせ、脈動検知回路8としての機能を兼任させるようにしている。このような形態においては、脈動の波形解析が昇圧ユニット7で行えるので、脈動検知回路8と昇圧ユニット7の昇圧制御回路との通信手段が不要となり回路構成がより簡素化できる。また、このように昇圧制御回路71が脈動検知回路8として機能する本実施形態においては、脈動制御回路8が昇圧制御もおこなうため、脈動検知フローにおいて、誤動作防止のための複数回に渡る昇圧動作の確認などといった昇圧ユニット7の動作プログラムに最適化した昇圧開始の判断プロセスが採用できる。そのため、より精度の高い昇圧動作制御が可能となる。
【0099】
<第3の実施形態>
図5を用いて、本発明の第3の実施形態に係る太陽光発電システム31について説明する。図5は、第3の実施形態に係る太陽光発電システム31のブロック図である。本実施形態においては、昇圧ユニット7の配置において、第1の実施形態と異なる。
【0100】
本実施形態においては、図5に示すように、昇圧ユニット7がパワーコンディショナ6の筐体内に配置されている。すなわち、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とが一体化されている。
【0101】
このような形態によれば、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5がMPPT制御している送電線に、脈動検出回路8を容易に取り付けることができる。そのため、脈動検知回路8の配置位置も特に制限を受けないことから、太陽光発電システムのシステム設計の自由度が高まる。
【0102】
また、このような形態においては、図4(b)で述べたように、脈動検知回路8を昇圧ユニット7の制御用CPU(昇圧制御回路)で兼任させることもできるとともに、脈動検知回路8をパワーコンディショナ6のMPPT制御用CPUに図2の脈動検知フローで述べた脈動検知・昇圧制御プログラムを加味して兼任させることも可能である。
【0103】
<第4の実施形態>
図6を用いて、本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システム41について説明する。本実施形態においては、パワーコンディショナ6に並列に接続される太陽電池ストリング2の数において、第1の実施形態と異なる。
【0104】
具体的には、図6に示すように、太陽光発電システム41は、第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bに加えて、第3の太陽電池ストリング2Cの系統が存在する。この第3の太陽電池ストリング2Cは、第2の太陽電池ストリング2Bと同様の構成とすることができる。すなわち、第3の太陽電池ストリング2Cも昇圧系統であり、第3の太陽電池ストリング2Cにおける太陽電池素子の数は、第1の太陽電池ストリング2Aにおける太陽電池素子の数よりも小さく、第3の太陽電池ストリング2Cの出力は昇圧ユニット7によって昇圧されてパワーコンディショナ6で電力変換される。つまり、本実施形態においては、昇圧ユニット7が複数個存在するシステムである。なお、本実施形態においては、図12における昇圧動作(図中C点)までの各太陽電池ストリング2の電圧変動から分かるように、第3の太陽電池ストリング2Cにおける太陽電池素子の数は、第2の太陽電池ストリング2Bにおける太陽電池素子の数と同じ場合を例示している。
【0105】
具体的には、本実施形態によれば、第2の太陽電池ストリング2Bには第2の昇圧ユニット7Bと第2脈動検知回路8B、第3の太陽電池ストリング2Cには第3の昇圧ユニット7Cと第3の脈動検知回路8Cとが各々配置されており、昇圧ユニット7Bと脈動検知回路8B、昇圧ユニット7Cと脈動検知回路8Cは互いに独立して動作する。第2の昇圧ユニット7Bは、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧し、第3の昇圧ユニット7Cは、第3の太陽電池ストリング2Cの出力電圧を昇圧する。第2の脈動検知回路8Bおよび第3の脈動検知回路8Cは、いずれも第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動を検知する。
【0106】
そして、本実施形態においては、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における昇圧ユニット7と同様に、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5が動作するまでは第2の昇圧ユニット7Bと第3の昇圧ユニット7Cとは停止状態である。そして、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が上昇するとともにパワーコンディショナ6が起動しMPPT制御回路5が動作すると、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が発生する。この脈動を、第2の脈動検知回路8Bと第3の脈動検知回路8Cがそれぞれ検知すると、各々、対応する系統(第2の太陽電池ストリング2Bおよび第3の太陽電池ストリング2Cの系統)に接続された昇圧ユニット7(第2の昇圧ユニット7Bおよび第3の昇圧ユニット7C)に脈動検知情報を送信し、昇圧動作の開始を促す。
【0107】
なお、このとき、いずれかの昇圧ユニット7(第2昇圧ユニット7Bまたは第3昇圧ユニット7C)が先に昇圧動作を開始したとしても、既に第1の太陽電池ストリング2Aに基づきパワーコンディショナ6が起動しているため、各脈動検知回路8(第2および第3の脈動検知回路8B、8C)は第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動は正常に検出し続けられる。そのため、他方の昇圧ユニット7も遅れて昇圧動作を開始することが可能である。これにより、複数の昇圧系統で得られる発電電力も正常にパワーコンディショナ6による電力変換に利用することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態においては、複数の昇圧系統を有する形態であっても、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力がパワーコンディショナ6で電力変換される前に昇圧ユニット7が動作しないため、昇圧系統の独立運転を防ぐことができる。そのため、複数の太陽電池ストリング2の効率的な電力変換が可能となる。
【0109】
次に、図12を用いて、本実施形態における、第1の太陽電池ストリング2A、第2の太陽電池ストリング2Bおよび第3の太陽電池ストリング2Cの出力電圧変動について、より詳細に説明する。
【0110】
本実施形態においては、図12に示すように、昇圧ユニット7を用いた太陽電池ストリング2の系統が複数ある場合の、各昇圧ユニット7の昇圧動作の開始タイミングをずらす制御をおこなっている。
【0111】
本実施形態においては、図6で示したように、昇圧ユニット7を有さない第1の太陽電池ストリング2Aと、第2の昇圧ユニット7Bを有する第2の太陽電池ストリング2Bと、第3の昇圧ユニット7Cを有する第3の太陽電池ストリング2Cとがパワーコンディショナ6に並列接続されている。
【0112】
第1の実施形態と同様に、まず、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力のパワーコンディショナ6による電力変換が開始されて、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されると、第2の太陽電池ストリング2Bの第2の昇圧ユニット7Bが図中C点で昇圧動作を開始する。そして、さらに、本実施形態においては、第2の昇圧ユニット7Bの昇圧動作から遅れて、第3の太陽電池ストリング2Cの第3の昇圧ユニット7Cが図中E点で昇圧動作を開始する。
【0113】
本実施形態においては、このように複数の昇圧ユニット7(7B、7C)の昇圧動作をずらすことによって、入力電流が加算されることによって生じる、パワーコンディショナ6で電力変換された交流出力の電流・電圧の変動を時間的に分散させることができる。これにより、交流出力の電流・電圧の相対的な変化量を小さく抑えることができる、その結果、パワーコンディショナ6から交流負荷などへの供給電圧の安定化が図れる。
【0114】
なお、図12に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に加えても電圧波形(電圧脈動)には変化が生じない。そのため、本実施形態のようにシステム中に昇圧ユニット7が複数存在する場合、他の昇圧ユニット7がいつ起動したかを見極めることは難しいため、予め各昇圧ユニット7の起動のタイムラグを設定しておくと良い。すなわち、例えば、第2の昇圧ユニット7Bは、脈動検知の信号を受信してすぐ起動するとし、第3の昇圧ユニット7Cは、脈動検知の信号を受信してからt時間後に起動するよう設定してもよい。
【0115】
なお、上述したように、本実施形態においては電圧成分の脈動を検知する形態を例示して説明したが、第1の実施形態と同様、電流成分の脈動を検知してもよい。このような電流波形(電流脈動)における脈動検知回路8を用いる場合は、他の昇圧ユニット7の昇圧動作に基づく他の太陽電池ストリング2の電力変換の開始を電流センサーによって電流の増減に基づき解析することが可能である。そのため、このような場合においては、他の昇圧ユニット7の昇圧開始を電流増加で検知してから一定時間後、例えば10秒後、に昇圧動作を開始するように設定すれば良い。なお、この場合、最初の昇圧ユニット7が昇圧開始するタイミングはランダムに選択されるようにしておけば、複数の昇圧ユニット7が同時に起動し難くて良い。
【0116】
なお、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cの構成が略同一の構成を有する形態を例示したが、複数の昇圧系統は、互いに異なる構成を有していてもよい。
【0117】
また、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cの図中
C点までの出力電圧の変動が同一である形態を例示したが、特にこれに限らない。例えば、各太陽電池ストリング2B、2Cの出力電圧を、図中C点に至るまで、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限(Vmin)未満となるよう、個々に任意に制御してもよい。
【0118】
さらに、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cのいずも、対応する昇圧ユニット7(7B、7C)によって、第1の実施形態と同様、時間tcに、図中C点から一気に第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)まで昇圧しているが、昇圧方法はこれに限らない。
【0119】
またさらに、本実施形態においては、昇圧ユニット7を有する昇圧系統の数が2であるシステムを例示したが、昇圧系統の数はこれに限らず、昇圧系統の数が3系統以上であっても構わない。
【0120】
<第5の実施形態>
図7を用いて、本発明の第5の実施形態に係る太陽光発電システム51について説明する。本実施形態においては、第4の実施形態に係る太陽光発電システム41が、互いに同様の構成を有した複数の昇圧ユニット7の系統を有する一方、互いに異なる構成を有した複数の昇圧ユニット7の系統を有している点において、第4の実施形態と異なる。なお、ここでは第4の実施形態と異なる構成のみについて言及する。
【0121】
具体的には、図7に示すように、昇圧ユニット7が複数ある場合において、1つの脈動検知回路8で複数の昇圧ユニット7の制御を行う。すなわち、複数の系統の昇圧ユニット7(7B、7C)の個々に対応する脈動検知回路8(8B、8C)を有する第4の実施形態に対して、複数の系統の昇圧ユニット7(7B、7C)に対し、脈動検知回路8は1個である。
【0122】
本実施形態においては、脈動検知回路8でMPPT制御における脈動を検知すれば脈動検知情報を各昇圧ユニット7にそれぞれ送信することで、各昇圧ユニット7の昇圧動作の開始を促している。
【0123】
このような形態においては、各昇圧ユニット7への情報送信を行う信号線は複数本必要であるが、脈動検知回路8本体は1個で済む。これにより、特に電流センサーを用いる電流成分の脈動を検知する方式では、部材の削減効果が高いため、システムコストの低減が図れる。
【0124】
以下、脈動検知に基づく昇圧方法について、第1の実施形態と異なる3つの実施形態について、各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を示すグラフを基に詳細に説明する。なお、後述する種々の異なる昇圧方法は、該昇圧方法に対応したプログラムを、MPPT制御回路5および脈動検知回路8などに設定することで実現される。
【0125】
<第6の実施形態>
図9を用いて、本発明の第6の実施形態に係る太陽光発電システム61について説明する。図9は、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。
【0126】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0127】
第1の実施形態においては、図中C点から第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を
昇圧する昇圧比を、図中C点における第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧と第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧とを基に算出して、図中C点から一気に図中F点まで昇圧しているのに対して、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から段階的に高めている。すなわち、本実施形態においては、図9に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から、第1段階の昇圧で第1の太陽電池ストリング2Aと同じにならないように、出力電圧値が一足飛びに他段階で高めている。
【0128】
より具体的には、例えば、脈動検知回路8がMPPT制御における電圧成分の脈動(または電流脈動)を検知して昇圧ユニット7に昇圧開始を促す信号を送信すると、信号を受信した昇圧ユニット7は図中C点で昇圧を開始する。このとき、例えば、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧が200V、パワーコンディショナ6の最低起動電圧が150Vであるとすると、次のように段階的な昇圧動作を行う。
【0129】
まず、昇圧ユニット7は第1段階の昇圧として、図中C点から第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を130V(図中C1点)まで昇圧する。
【0130】
そして、電圧脈動が継続して検知される場合には、第2段階の昇圧として、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を160V(図中C3点)まで昇圧させる。すなわち、脈動検知回路8はMPPT制御における電圧成分の脈動が継続して検知されていることを確認して昇圧ユニット7に第2段階の昇圧開始を促す信号を送信する。この信号を受信した昇圧ユニット7は図中C2点で第2段階の昇圧を開始する。この第2段階での昇圧のトリガーとなる信号としては、図2の脈動検知フローチャートにおけるSTEP6の情報信号を用いれば良く、昇圧ユニット7が信号を受けた回数に応じて昇圧電圧を切り替えるように設定することで実現可能である。なお、このとき、第1段階の昇圧から第2段階の昇圧までの時間間隔は図2のフローチャートの経過時間としてよいが、第1の太陽電池ストリング2Aの変化を掴むにはある程度の時間を取って情報信号の送受信をおこなうことで、脈動検知の精度が向上する。そのため、当該観点から、特に図示しないが、図2におけるSTEP1〜STEP5に回数や時間のループを加味するのも好適である。
【0131】
次に、電圧成分の脈動が継続して検知できる場合には、第2段階の昇圧と同様に、第3段階の昇圧として、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ200V(図中F点)まで昇圧し、STEP7を終了する。すなわち、脈動検知回路8はMPPT制御における電圧成分の脈動が継続して検知されていることを確認して、昇圧ユニット7に第3段階の昇圧開始を促す信号を送信すると、信号を受信した昇圧ユニット7は図中C4点で第3段階の昇圧を開始する。この第3段階の昇圧によって、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)にまで昇圧する。
【0132】
以上のように、本実施形態においては、昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bにおける昇圧動作において、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を段階的に高めていく。このことにより、第1の太陽電池ストリング2Aの出力状態がまだ不安定な時に、日射急変によって第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧とパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値(Vmin)との大小関係の逆転が生じないかを複数回確認することができる。そのため、パワーコンディショナ6のMPPT制御が、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力側に移って単独昇圧運転になり難くすることができる。
【0133】
また、このように第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を段階的に上げていくことで、パワーコンディショナ6を停止させないように動作電力を供給して待機させることも
可能である。そのため、パワーコンディショナ6の起動・停止に伴う騒音の発生を低減することもできる。
【0134】
なお、上述の例で用いた電圧値等は例として述べたものでありこれに限定されるものでななく、例えば、本実施形態では、パワーコンディショナ6のMPPT制御が行われる最低電圧(パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値:Vmin)を170Vとしたが、この値は特にこれに限定されるものではない。
【0135】
また、本実施形態においては、昇圧段階を3段階としたが2段階以上であれば、特に昇圧段階の数に制限はなく、段階数を多くしてもよい。
【0136】
また、特に図示しないが、この3段階の昇圧制御においては他の制御方法を用いておこなってもよい。例えば、図2に示す脈動検知フローにおいて、STEP6に基づいて動作した昇圧動作を停止させずにSTEP1に戻し、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が復帰してMPPT制御が再開されて電圧脈動が検知できるまで、昇圧ユニットによって第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧として160Vの昇圧電圧を維持するようにしても良い。この場合、パワーコンディショナ6の起動・停止の際であって解列リレー等の大型接点が接続・分離する際に発する騒音の回数を低減させることができるという利点がある。
【0137】
<第7の実施形態>
図10を用いて、本発明の第7の実施形態に係る太陽光発電システム71について説明する。図10は、第1の実施形態に係る太陽光システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。
【0138】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0139】
上述したように、第1の実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図8に示すように図中C点から一気に高めており、また、第6の実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図9に示すように3段階で段階的に高めている。
【0140】
それに対して、本実施形態においては、図10に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から、無段階に徐々に高めるように制御している。すなわち、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、MPPT制御における脈動が検知されれば、図中C点から第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)、まである一定の傾斜角度で連続的に高めている。
【0141】
このように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を、無段階で連続的におこなうことで、段階的におこなう形態において各段階に移る際に生じる昇圧電圧の急激な変化に伴うスイッチングノイズの発生を緩和し、周辺回路や外部機器への悪影響を防ぐことができる。
【0142】
<第8の実施形態>
図11を用いて、本発明の第8の実施形態に係る太陽光発電システム81について説明する。図11は、第1の実施形態に係る太陽光システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧方法において、第1の実施形態と異なる。
【0143】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0144】
第1の実施形態においては、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知し、脈動検知回路8から発信された電圧成分の脈動が検知されたことを知らせる信号を昇圧ユニット7が受信したとき(図中C点)に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧している。
【0145】
それに対して、本実施形態においては、図11に示すように、電圧成分の脈動を検知し、その旨の信号を受信した後に、昇圧動作を開始するまでの間に一定のタイムラグを設けている。すなわち、本実施形態においては、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知し、その信号を受信した図中C点から一定時間後(図中D点)に昇圧動作を開始するものである。より具体的には、電圧成分の脈動が検知された図中C点では昇圧動作を開始せず、例えば、図中C点から30分後の図中D点で昇圧動作を開始するものである。
【0146】
ビルの陰等の影響で第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が朝遅くまで安定しないような環境では、MPPT制御における脈動検知後も第1の太陽電池ストリング2A出力の急変(低下)が有り得るが、本実施形態のように、検知タイミングから任意の時間遅れて昇圧動作を開始させることで、より効率的な複数の太陽電池ストリングでの電力変換が可能となる。
【0147】
なお、本実施形態においては、受信から昇圧動作までのタイムラグ(一定時間)を決定する際には、固定値を内部メモリー等に記憶させた固定値を用いて決定しても良いが、過去の発電データーから第1の太陽電池の発電電力が安定するまでの時間を判定して最適な時間を自動設定するようにすると良い。
【0148】
<第9の実施形態>
図13を用いて、本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システム91について説明する。本実施形態においては、太陽電池ストリング2とパワーコンディショナ6との間に逆流防止ダイオード9が配置されている点において、第1の実施形態と異なる。
【0149】
図13は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91のブロック図である。本実施形態に係る太陽光発電システム91は、逆流防止ダイオード9を有している。
【0150】
この逆流防止ダイオード9は、複数の太陽電池ストリング2を並列接続する場合に、各太陽電池ストリング2の出力電圧に差があっても、出力電圧の高い太陽電池ストリング2から出力電圧の低い太陽電池ストリング2に電流が流れて電力損失が発生しないように各太陽電池ストリング2の電路を分離するためのものである。この逆流防止ダイオード9は、太陽電池モジュール単体の出力端子に設けられている場合もあるが、本実施形態においては、逆流防止ダイオード9は、第1の太陽電池ストリング2Aと第2の太陽電池ストリング2Bの出力を結合する接続箱10の中に配置されている形態を例示する。
【0151】
より具体的には、図13に示すように、本実施形態においては、昇圧ユニット7の昇圧制御回路として、コイルとダイオードとスイッチ素子とを用いた方式が採用されている。この方式では回路構成上、逆流防止ダイオード9の働きをする半導体素子(図中ではダイオード)が存在するので、第2の太陽電池ストリング2Bにも逆流防止ダイオード9が配置されているのと同じ状態になっている。これにより、第2の太陽電池ストリング2Bへ第1の太陽電池ストリング2Aからの電流の流れ込みが生じ無い。そのため、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5が第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧値で制御を行っていても、第2の太陽電池ストリング2Bを昇圧ユニット7が独自にM
PPT制御をすることができる。
【0152】
このような本実施形態においては、昇圧ユニット7でもMPPT制御することができるため、第1の太陽電池ストリング2Aも第2の太陽電池ストリング2Bも各々の最大出力電力で動作することができる。
【0153】
なお、昇圧ユニット7の昇圧回路の他の方式としては、コンデンサーとスイッチとを組み合わせたチャージポンプ方式と呼ばれるものがある。この方式では、ダイオードの代わりにスイッチ素子が複数設けられ、電力を出力するとき以外は各太陽電池ストリング2の電路が遮断されるので電流の逆流が生じない。そのため、上述したような第2の太陽電池ストリング2Bを独自にMPPT制御する本実施形態においては、チャージポンプ方式も好適に用いることができる。
【0154】
なお、本実施形態のように、パワーコンディショナ6のMPPT制御による脈動を検知する場合、昇圧ユニット7内の逆流防止ダイオード9に相当する機構は、パワーコンディショナ6側の電圧や電流の脈動を検出する障害となるため、図13に示すように、脈動検知回路8は昇圧ユニット7の出力側に配置すればよい。
【0155】
なお、上述の図4を用いて説明した第2の実施形態において、昇圧ユニット7(昇圧制御回路)の中に脈動検知回路8を配置する場合に、脈動検知回路8が昇圧ユニット7(昇圧制御回路)の逆流防止ダイオード9に相当する機構よりも出力側(パワーコンディショナ6側)に配置しているのは同様の理由からである。
【0156】
以上、図13を用いて、逆流防止ダイオード9を有する第9の実施形態について説明したが、本実施形態においても、上述したように施工性が容易であり且つ複数の太陽電池ストリング2の効率的な電力変換が可能である。
【0157】
なお、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bに対応する逆流防止ダイオード9が昇圧ユニット7内部の構成である形態を例示したが、逆流防止ダイオード9の配置位置はこれに限らない。
【0158】
以下、逆流防止ダイオード9を有する第9の実施形態の変形例について、図14乃至図16を用いて説明する。
【0159】
<第9の実施形態の変形例1>
図14を用いて、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第1の変形例911について説明する。図14は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第1の変形例911を示すブロック図である。
【0160】
本実施形態においては、図14に示すように、第1の太陽電池ストリング2Aに対応する逆流防止ダイオード9(第1の逆流防止ダイオード9A)および第2の太陽電池ストリング2Bに対応する逆流防止ダイオード9(第2の逆流防止ダイオード9B)が、いずれも接続箱10の中に設けられている。
【0161】
前述した太陽光発電システム91のように、昇圧ユニット7の内部に逆流防止ダイオード9を設ける、すなわち、昇圧ユニット7だけでも逆流防止ダイオード9の役割を兼ねることができるのであるが、このような形態においては、各電路における昇圧ユニット7の有り無しで接続箱10内への逆流防止ダイオード9の搭載数も変えなければならないため接続箱10の汎用性に制限が生じる。
【0162】
それに対して、本実施形態においては、各電路における昇圧ユニット7の有無に関わらず、各電路に対応した逆流防止ダイオード9をそれぞれ接続箱10に配置している。このような構成により、昇圧ユニット7の有無に関わらずあらゆるシステムに適用可能となるため、汎用性が高まる。
【0163】
なお、このような形態においては、脈動検知回路8のみを接続箱10内の逆流防止ダイオード9よりも出力側に配置し、この脈動検知回路8から検知情報を昇圧ユニット7に送信するようにすれば良い。
【0164】
<第9の実施形態の変形例2>
次に、図15および図16を用いて、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第2の変形例912について説明する。
【0165】
図15は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第2の変形例912を示すブロック図であり、図16は、第2の変形例912における脈動検知の制御方法を説明する、脈動検知制御フロー図である。
【0166】
本実施形態においては、図15に示すように、接続箱10の内部に逆流防止ダイオード9(第1の逆流防止ダイオード9Aおよび逆流防止ダイオード9B)が第1の太陽電池ストリング2Aと第2の太陽電池ストリング2Bの両方に各々対応して配置されている。そして、脈動検知回路8が接続箱10の入力側、且つ昇圧ユニット7の出力側に配されている。
【0167】
以下、本変形例における脈動検知・昇圧制御フローについて、図16を用いて詳細に説明する。
【0168】
最初のステップとして、STEP11で昇圧ユニット7を、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲内の出力電圧で動作させる。
【0169】
そして、STEP12で所定の時間(例えば1分間)の出力電圧(もしくは電流)の波形を取り込む。
【0170】
次に、STEP13で昇圧動作を停止させる。
【0171】
その後、STEP14で脈動検出回路8における脈動検出も停止する。そして、続いて、上述したSTEP2〜STEP5を行う。
【0172】
上記一連の制御フローにおいて、STEP13とSTEP14とは同じタイミング、すなわち1つのSTEPでおこなっても良い。
【0173】
また、STEP2〜STEP5については、図2で述べた脈動検知フローと同じ動作であるため、ここでの説明は割愛する。
【0174】
なお、本実施形態においては、STEP12で取り込んだ波形がパワーコンディショナ6のMPPT制御による脈動の波形であるかどうかを判定するが、該判定方法も、図2に示す第1の実施形態と同様におこなえばよい。
【0175】
すなわち、具体的な判定の方法としては、第2太陽電池ストリング2Bの出力電力を昇圧して出力させた場合、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力によってパワーコンディショナ6が起動していれば昇圧制御回路の出力側電圧はパワーコンディショナ6のMPPT制御によって生じている脈動(電圧、電流のいずれでも)とほぼ同じ振幅の電圧変動と周期(周波数)が脈動検知回路8によって検出されるが、パワーコンディショナ6が昇圧ユニット7で昇圧された電力によって起動した場合には脈動は検出されない。これを利用して、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されればSTEP6でパワーコンディショナ6が起動していることを昇圧ユニット7に情報送信し、昇圧動作を開始するよう促す。一方、脈動が検知されなければSTEP11に戻して脈動が検知されるまで繰り返す。
【0176】
なお、先にも述べたように「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(16資電部第114号)」の定めによれば、パワーコンディショナ6の起動時の安定化のためにパワーコンディショナ6の起動は、起動に必要な電力が10分以上確認されてから行うよう指導されている。したがって、昇圧ユニット7からの出力が十分あれば第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力だけでもパワーコンディショナ6の起動は可能であるが、昇圧ユニット7から短時間の出力があってもパワーコンディショナ6は起動しないよう設計されているのでMPPT制御も開始されず脈動は生じない。このような規定を利用することで、本実施形態において、脈動検知回路8が逆流防止ダイオード9の入力側にあっても、脈動の有無を検知することができ、昇圧ユニット7の単独運転であるか否かを判定し、誤作動を回避することができるのである。
【0177】
なお、脈動検知のための判定プログラムの組み方によっては、上述した図13乃至図15で説明したような、脈動検知回路8を逆流防止ダイオード9の出力側に配置しなければならないといった回路設計における制限を解消することも可能である。
【0178】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることができる。また、本発明は上述した実施形態の種々の組合せを含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0179】
11、21、31、41、51、61、71、81、91:太陽光発電システム
2:太陽電池ストリング
2A:第1太陽電池ストリング
2B:第2太陽電池ストリング
2C:第3太陽電池ストリング
3:商用電力系統
4:交流負荷
5:MPPT制御回路
6:パワーコンディショナ
7:昇圧ユニット
7B:第2昇圧ユニット
7C:第3昇圧ユニット
71:昇圧制御回路
8:脈動検知回路
8B:第2脈動検知回路
8C:第3脈動検知回路
9:逆流防止ダイオード
9A:第1逆流防止ダイオード
9B:第2逆流防止ダイオード
10:接続箱
13:脈動検知部
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電システムおよびその制御方法、ならびに昇圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電システムは、主に、屋根などの構造物上に設置される複数の太陽電池ストリングと、該複数の太陽電池ストリングから出力される直流電力を商用電力系統に対して電圧・電流位相を同期させた交流電力に変換するパワーコンディショナと、で構成されている。複数の太陽電池ストリングは、互いに並列に接続されているとともに、各々、複数の直列接続された太陽電池素子を有している。
【0003】
近年、景観や個性を重視した住宅等に設置される太陽光発電システムにおいては、複数の太陽電池ストリングが有する太陽電池素子の数が、互いに異なる場合がある。このような場合、複数の太陽電池ストリング間の出力電圧を合わせることで、1つのパワーコンディショナでの発電効率を高めるといった技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、太陽電池素子の枚数が異なる複数の太陽電池ストリングを有する太陽光発電システムにおいて、太陽電池素子の枚数が少ない太陽電池ストリング(非標準太陽電池ストリング)の出力電圧を太陽電池素子の枚数が多い太陽電池ストリング(標準太陽電池ストリング)の出力電圧まで高める昇圧ユニットを設ける技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽光発電システムでは、太陽光発電システムの設置時に、標準太陽電池ストリングと非標準太陽電池ストリングの太陽電池素子の枚数比に基づき、切換スイッチを手動で切り換えることによって昇圧ユニットにおける昇圧電圧比率を設定している。このような昇圧電圧比率の設定では、施工時の工数の増加にともない施工コストが増加したり、切換スイッチの選択ミス等により標準太陽電池ストリングでの発電がなされる前に非標準太陽電池ストリングの出力電圧が標準太陽電池ストリングの出力電圧よりも高くなった場合に非標準太陽電池ストリングのみによる電力変換(非標準太陽電池ストリングによる単独運転)がなされて標準太陽電池ストリングでの発電が正常になされなかったりといったおそれがあった。
【0006】
そのため、施工が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換を可能にする太陽光発電システムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−312319号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムは、互いに並列に接続され且つ最大出力電力が互いに異なる第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとをMPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムであり、前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットが前記パワーコンディショナの前段に設けられている。この昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンデ
ィショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高める。
【0009】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムの制御方法は、第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとが並列にパワーコンディショナに接続される太陽光発電システムにおける制御方法である。そして、前記第1太陽電池ストリングの最大出力電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定するステップと、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めるステップと、を有する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る昇圧ユニットは、第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧してからパワーコンディショナに出力可能な昇圧ユニットである。そして、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記パワーコンディショナがMPPT制御された結果に基づく脈動が検知されると前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態に係る太陽光発電システムおよびその制御方法、ならびに昇圧ユニットによれば、第1太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナでの電力変換で生じるMPPT制御における脈動の検知に基づき第2太陽電池ストリングの出力電圧を第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することから、施工時の工数を増加させることなく、第1太陽電池ストリングの電力変換開始前の第2太陽電池ストリングによる単独運転を抑制することができるため、施工が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける脈動を検出する過程を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムに用いられる脈動検出部を含む太陽光発電システムの脈動検知部分を示す模式的なブロック図であり、(b)は、第1の実施形態に係る太陽光発電システムに用いられる脈動検知部の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システムにおける各太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフである。
【図13】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムを示す模式的なブロック図である。
【図14】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムの第1の変形例を示す模式的なブロック図である。
【図15】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムの第2の変形例を示す模式的なブロック図である。
【図16】本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システムにおける脈動を検出する過程を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおける太陽電池ストリングの出力電圧の時間的変動を示すグラフの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システム11を示す模式的なブロック図である。この太陽光発電システム11は、複数の太陽電池ストリング2を、パワーコンディショナ6を介して商用電力系統3に系統連系させるためのものである。
【0015】
具体的には、本実施形態に係る太陽光発電システム11は、第1の太陽電池ストリング2A(2)と、該第1の太陽電池ストリング2Aと並列に接続された第2の太陽電池ストリング2B(2)と、この第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bで発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ6と、第2の太陽電池ストリング2B(2)の出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7と、を有している。この昇圧ユニット7は、パワーコンディショナ6の前段、換言すれば、パワーコンディショナ6の入力側に設けられている。また、本実施形態においては、昇圧ユニット7の後段側、換言すれば、昇圧ユニット7の出力側に脈動検知回路8が設けられている。すなわち、図1に示すように、脈動検知回路8は、パワーコンディショナ6と昇圧ユニット7との間に設けられている。このような太陽光発電システム11において、パワーコンディショナ6の交流出力は、商用電力系統に接続されるとともに、交流負荷にも接続され、得られた交流電力は交流負荷等で消費される。
【0016】
以下、太陽光発電システム11における各構成について説明する。
【0017】
まず、複数の太陽電池ストリング2について説明する。第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bは、互いに直列に接続された複数の太陽電池素子や太陽電池モジュールを有している。本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bにおける太陽電池素子または太陽電池モジュールの数は、第1の太陽電池素子2Aにおける太陽電池素子または太陽電池モジュールの数よりも少ない。換言すれば、第2の太陽電池ストリング2Bにおける最大発電容量(最大出力電力)は、第1の太陽電池ストリング2Aにおける最大発電容量(最大出力電力)よりも小さい。このような第1の太陽電池
ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bは、互いに並列に接続されている。なお、第1および第2の太陽電池ストリング2A、2Bにおける太陽電池素子としては、種々の太陽電池素子を用いることができる。
【0018】
次に、昇圧ユニット7について説明する。昇圧ユニット7は、上述したように、パワーコンディショナ6の入力側に設けられている。本実施形態においては、パワーコンディショナ6の入力端子は、脈動検知回路8と接続されているため、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bと脈動検知回路8との間に設けられている。
【0019】
本実施形態において、この昇圧ユニット7は、第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧よりも第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧が低い場合に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧まで高める機能を有する。すなわち、1つのパワーコンディショナ6に互いに並列に接続された複数の太陽電池ストリング2のうち、最大発電容量(最大出力電力)がより少ない第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧まで高める機能を有する。
【0020】
より具体的には、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、パワーコンディショナ6での電力変換開始前にはパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0021】
一般に昇圧ユニット7を用いて第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に昇圧する場合、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を何倍に昇圧するかが問題となる。昇圧ユニット7の構造によって問題点も異なるが、例えば、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を一定電圧に昇圧して出力すると、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧は昇圧ユニット7によって昇圧された第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧よりも高い電圧になるまでパワーコンディショナ6に発電電力を送り込むことが出来ない。反対に、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧が昇圧ユニット7により昇圧された第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧よりも高くなると、今度は昇圧ユニット7を介して出力している第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力がパワーコンディショナ6に送り込むことが出来なくなる。
【0022】
しかしながら、本実施形態においては、上述したように、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、パワーコンディショナ6での電力変換開始前にはパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0023】
このような昇圧動作の制御により、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換がなされるまで、第2の太陽電池ストリング2Bは電力変換しないよう制御するとともに、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換が開始された後は、第2の太陽電池ストリング2Bは昇圧ユニット7を介して昇圧された第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ値である出力電圧で電力変換できるよう制御される。これにより、第1の太陽電池ストリング2Aの正常運転を妨害する昇圧系統の独立運転を防ぐことができる。その結果、異なる最大発電容量を有する複数の太陽電池ストリング2によって、電力損失の少ない効率的な電力変換が可能となる。
【0024】
また、このような構成を有する本実施形態は、回路構成が複雑であり且つ送電路に逆流
防止ダイオードを用いた構成の場合に用途に制限が生じるといった、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を監視して、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7の昇圧比を変化させて、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に追従する方法と比べて、容易な構成で且つ送電路に逆流防止ダイオードを用いた場合の適用範囲が広い。
【0025】
さらに、本実施形態は、現場で作業者が太陽電池素子や太陽電池モジュールの枚数や電圧規格を基に最適電圧を計算し、ロータリースイッチ等を手動で設定するといった手間が生じ、計算ミスや作業ミスによるトラブルが生じ易い、各太陽電池ストリング2における太陽電池の直列数(太陽電池素子やモジュールの枚数)の差から昇圧比を手動で設定する方法と異なり、施工が容易である。
【0026】
なお、この昇圧ユニット7は、独自にMPPT制御されていてもよい。すなわち、昇圧ユニット7に用いるMPPT制御回路を、後述するパワーコンディショナ6のMPPT制御回路5とは別に設けていてもよい。
【0027】
次に、パワーコンディショナ6について説明する。パワーコンディショナ6は、上述したように、複数の太陽電池ストリング2の発電電力を交流電力に変換する電力変換装置である。たとえば、パワーコンディショナ6としては、出力側に家電製品などの交流負荷を接続して商用電力系統と連系して負荷に電力を供給する系統連系型のものを用いることができる。
【0028】
パワーコンディショナ6は、DC/DC変換部とインバータ部とを含む(不図示)。
【0029】
DC/DC変換部は、特に限定されないが、例えば、スイッチング素子と、コンデンサーと、リアクトルと、ダイオードとを備えている。DC/DC変換部は、太陽電池ストリング2で発電した直流電力から200〜300Vの直流電圧を作りインバータ部へ送る。このDC/DC変換部としては、入力電圧の変化に対応して出力電圧を調節できるように、スイッチング素子を変換電圧に応じてパルスのデューティをコントロールするPWM方式により制御するものが望ましい。また、インバータ部は直流電力を交流電力に変換するものである。
【0030】
インバータ部は、例えば、トランジスタやFETやトライアックを用いたブリッジ回路で直流をスイッチングして交流に変換するスイッチング部と、スイッチング部のスイッチング周波数やデューティをコントロールする周波数制御部と、スイッチングにより交流化された電力波形を商用電力系統の交流波形に近い曲線に鈍らせるフィルター回路とで構成される。フィルター回路は、リアクトルと呼ばれるコイルとコンデンサーが組み合わされたもので、高周波成分除去フィルターとして機能する。
【0031】
本実施形態においては、パワーコンディショナ6は、MPPT制御されている。すなわち、パワーコンディショナ6は、第1の太陽電池ストリング2Aを最大出力電力で動作させるMPPT(最大電力点追従(Maximum Power-Point Tracking))制御回路5が設けられている。例えば、このMPPT制御回路5は、上述のDC/DC変換部に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態においては、前述したように第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を制御する昇圧ユニット7を有しているため、第1の太陽電池ストリング2Aに基づく電力変換がなされるまでは、このMPPT制御回路5により、パワーコンディショナ6は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を変動させて、第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧点の移動を監視していることとなる。この時、パワーコンディショナ6
での電力変換が第1の太陽電池ストリング2Aに基づくもののみであるため、この電圧点の監視により、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に脈動が生じているかどうかが確認できることとなる。
【0033】
そして、本実施形態においては、この第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧における検知可能な脈動を利用して昇圧動作を制御する。具体的には、脈動検知回路8でこの脈動を検知する。そして、この脈動を検知した脈動検知回路8は、第1の太陽電池ストリング2Aの電力変換に基づきパワーコンディショナ6でMPPT制御が行われていると判断し、これを知らせる信号を昇圧ユニット7へ送る。これにより、「パワーコンディショナ6が起動している=第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づく電力変換がなされている」と判定し、第2の太陽電池ストリング2Bに対する昇圧ユニット7による昇圧動作を制御するものである。
【0034】
このような昇圧動作の制御をおこなうことで、本実施形態においては、パワーコンディショナ6は第1の太陽電池ストリング2Aで電力変換を開始しているため、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力される。すなわち、このような昇圧動作の制御がおこなわれる本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を検出する機構や、施工時に昇圧ユニット7における出力電圧(昇圧比)を設定するロータリースイッチを別途設けることなく、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力することができる。その結果、簡単な構成でしかもスイッチなどを用いた設定作業を要することのない、施工性が容易であるとともに複数の太陽電池ストリングによる効率的な電力変換が可能な太陽光発電システムを提供できる。
【0035】
なお、この時、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧する昇圧ユニット7の出力電圧値(昇圧比)は、例えば、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲であって、且つその入力運転電圧範囲の最大定格値以下とすることができる。
【0036】
なお、本実施形態における脈動検知のフローについての詳細は、図2を用いて、後述する。また、本実施形態における昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧動作およびその際の第2の太陽電池ストリング2Bの電圧プロファイルについての詳細は、図8を用いて、後述する。
【0037】
ここで、本明細書における「第1の太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」とは、第1の太陽電池ストリングの出力電圧など第1の太陽電池ストリングの出力電力に関する種々の要素における、最大出力電力における値の近傍でのMPPT制御と略同一な周期を有する周期的な変動をいう。より具体的に、出力電力の1つの要素として出力電力の電圧を例に説明すると、「第1の太陽電池ストリングに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動が検知される」とは、昇圧ユニットの出力端子とパワーコンディショナの入力端子間の電路に設けられた電圧検出手段によって検出された出力電力の電圧が、あらかじめ設定されている任意の第1の太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧値の近傍で周期的に変動していることが確認されることをいう。なお、ここで、「周期的に変動している」とは、例えば、電圧値の変動が、周期と振幅が得られる程度に規則的なものであることをいう。
【0038】
また、ここで、本明細書における「パワーコンディショナの入力運転電圧範囲」とは、JIS C8960に規定されているように、「出力電圧、周波数などの定格緒量を満足し、安定に運転できる直流入力電圧の範囲」であり、換言すれば、「パワーコンディショナが安定に運転できる直流入力電圧範囲」のことである。
【0039】
なお、本実施形態においては、MPPT制御回路5を含むパワーコンディショナ6を例示したが、パワーコンディショナ6の構成は特にこれに限定されない。例えば、MPPT制御回路5は、パワーコンディショナ6とは別に配置してもよい。
【0040】
次に、図2を用いて、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における脈動検知フローについて、詳細に説明する。
【0041】
本実施形態においては、脈動検知回路8は、「第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」として、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における電圧成分の脈動を検知する。そして、該検知を基に、上述のように昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を制御する。すなわち、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における電圧成分の脈動の検知をトリガーにして昇圧する。
【0042】
このように電圧成分の脈動を検知して昇圧することで、変化量がより小さい電流成分等に比べて簡易な検出手段によって高い精度で脈動を検知することができる。その結果、昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧制御の精度が高まり、より効率的な電力変換が可能となる。
【0043】
なお、脈動検知回路8が検知する脈動である「第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナのMPPT制御における脈動」としては、電圧成分に限らず、上述したように、電流成分などパワーコンディショナの入力端子に入力される電力に関する種々の他の要素であってもよい。このとき、脈動検知回路8が電圧成分の脈動を検知する場合は、脈動検知回路8は電圧検出手段を有していればよく、同様に、脈動検知回路8が電流成分の脈動を検知する場合は、脈動検知回路8は電流検出手段を有していればよい。
【0044】
以下、図2に沿って、本実施形態に係る電圧成分の脈動検知のフローにおける各STEPについて詳細に説明する。
【0045】
脈動検知回路8は、STEP1でパワーコンディショナ6の入力側電圧(第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に相当)を測定する。このとき、昇圧ユニット7の昇圧動作は停止している。なお、昇圧ユニット7の回路構成によっては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力が昇圧ユニット7の出力側に無変換で出力されるので、第1の太陽電池ストリング2Aが電力変換発電を行っていない場合でも脈動検知回路8が電圧(電流)を検出してしまう場合もあるが、後述するように、この場合に検出される電圧波形は、脈動を含むものではない。
【0046】
次に、STEP2で、STEP1で検出した電圧の波形に脈動の波形が含まれているかどうかを判定できるように、検出した電圧の波形を解析する。ここでいう「電圧の波形に脈動の波形が含まれている」とは、電圧の波形に周期性を有する電圧変動が認められる波形が含まれていることをいう。また、ここでいう「電圧の波形を解析する」とは、例えば、一定の時間間隔で測定した電圧値を変動のある部分と無い部分に分け、変動のある範囲のデーターだけを抽出し、その範囲にどのような周期(周波数)、電圧(電流)の波形が存在するかを解析することをいう。そして、この段階で、波形が脈動であるとはいえない形状や連続性の無い形状であると判定すれば、以降の解析を中断しSTEP1へ戻る(STEP3に相当)。このようにSTEP2において最後まで解析しない、すなわち、脈動の周期性に関する具体的な数値を解析しないでおくことで、脈動検知フローに用いられるCPU等の演算の負担を減らすことができる。
【0047】
そしてSTEP3で、STEP2で得られた解析結果を基に、電圧の波形に脈動が検知されたか否かを判定する。すなわち、電圧の波形に脈動が検出されたと判定されればSTEP4へ進み、脈動が検出されたと判定されなければSTEP1へ戻る。上述したように本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aに基づく電力変換で生じる脈動が検知されるまで、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、パワーコンディショナ6の入力運転範囲の下限未満に設定されているため、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力ではパワーコンディショナ6は起動しない。そのため、STEP1において説明したように、脈動検出回路8が第2の太陽電池ストリング2Bの電圧を検出したとしても、第2の太陽電池ストリング2BはMPPT制御も行われていないため、MPPT制御における脈動も検出されないようになっている。
【0048】
次に、STEP4では、得られた脈動波形における周期性を解析する。具体的には、周期性を有する脈動を含む波形が確認される場合に、各周期の連続する波形形状および電圧(電流)の大きさを解析する。このとき、STEP2で抽出した波形データーとパワーコンディショナ6のMPPT制御によって生じる脈動の波形情報とを照らし合わせて、MPPT制御の波形パターンと類似する(多少の差異は誤差範囲として容認するようにすると良い)かどうかを照合する。そして、第1太陽電池ストリング2Aの発電状態に依存するいくつかの脈動波形のいずれかと適合すれば、第1太陽電池ストリング2Aに基づく脈動が検知されたと判定し、不適合であればSTEP1へ戻す。このようにして、得られた電圧の波形を解析することができる。
【0049】
なお、このとき、この解析工程において、脈動波形をより確度高く検知するために、パワーコンディショナ6のMPPT制御による波形情報を、後の工程で用いることができるように脈動検知回路8に記憶しておいてもよい。なお、該記憶は必須ではない。例えば、予め定められた電圧(電流)値と周期を越える大きさを有する波形であれば、その波形に第1太陽電池素子2Aに基づく脈動が検知されたと判定することも可能である。
【0050】
例えば、得られた脈動波形における周期性の解析として、得られた脈動波形における周波数を解析しても良い。住宅用太陽光発電装置に用いられるパワーコンディショナでは6秒〜12秒周期のものが一般的であった。また、電圧変動幅は2〜6Vが検出できた。
【0051】
そして、STEP5では、STEP4で解析した結果、得られた脈動波形における周期性が、パワーコンディショナ6のMPPT制御と略同一の周期性を示すか否かを判定する。すなわち、得られた脈動波形における周期性がパワーコンディショナ6のMPPT制御の周期性と略同一である場合にはSTEP6に進み、略同一の周期性が見出せない場合にはSTEP1に戻る。このような、得られた脈動波形における周期性が、パワーコンディショナ6のMPPT制御と略同一の周期性を示すか否かを判定するSTEP5は、換言すれば、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されたか否かを判定するSTEPである。
【0052】
なお、本実施形態においては、STEP2〜STEP5において解析と判定を異なるSTEPとしてプログラムされた形態を例示したが、脈動検出回路8における演算素子(CPU等)の演算性能が十分に高ければ、プログラム上、STEP2〜STEP5における解析と判定を一度に行うようにしても良い。
【0053】
次に、STEP6では、STEP5の判定に基づき、パワーコンディショナ6のMPPT制御による電圧成分の脈動が検知されれば、該検知を知らせる信号を昇圧ユニット7に伝達する。そして、この信号を受信した昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を開始する。すなわち、昇圧ユニット7は、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで高める。
【0054】
このように、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づきパワーコンディショナ6が起動するまで、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力が電力変換されないように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧が制御される。そのため、パワーコンディショナ6の起動電力は第1の太陽電池ストリング2Aから供給され、この第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力に基づきパワーコンディショナ6が起動した後にMPPT制御が開始される。そのため、上記STEP1〜STEP6の脈動検知フローにおいてMPPT制御における脈動が検知されれば第1の太陽電池ストリング2Aが正常に発電している状態にあると判断できる。これにより、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力を昇圧ユニット7を介して昇圧してパワーコンディショナ6に送り込んでも第2の太陽電池ストリング2Bによる単独運転になることはない。したがって、上述したように、複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能となる。
【0055】
そして、最後にSTEP7で、脈動検知回路8による脈動検知動作を停止(終了)する。なお、この一連の脈動検知フロー(STEP1〜STEP7)のリセットや再開の方法としては、例えば、夜間等の太陽電池ストリング2の発電停止状態をリセット条件としたり、朝の発電再開を再開条件としたりするなどの自動制御の方法が考えられる。なお、他のリセットや再開方法としては、強制的にリセットをかけられる様に手動のリセットスイッチを設けたり、異常時に手動で再開が可能したりする方法を採用しても良い。
【0056】
次に、図3を用いて、上述のSTEP2〜STEP5における脈動の検出方法について説明する。図3(a)は、脈動の検出に用いられる脈動検出部13を含む、本実施形態に係る太陽光発電システム11における要部のブロック図であり、図3(b)は、太陽光発電システム11における脈動検出部13の変形例を示す要部のブロック図である。
【0057】
上述したように、太陽光発電システム11において、脈動検知回路8は電圧成分の脈動を検出し、その脈動がパワーコンディショナ6のMPPT制御によるものかどうかを解析して、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動の発生を検知するものである。このような本実施形態においては、電圧成分の脈動を検知するため、脈動検知部13(センサー部)で脈動検知回路8とパワーコンディショナ6との間の電圧成分を検出する。そして、検出された電圧成分に関する情報に脈動波形が含まれているかを脈動検知回路8で解析する。
【0058】
脈動検知回路8としては、例えば、電圧解析に必要な演算素子とデーター記憶領域とA/D入力機能を有しているマイコンやCPUとを有しているものが好適である。脈動検出部13から取り込まれた電圧成分に関する情報はマイコンのA/D入力でデジタルデーターに変換されデーター記憶領域に格納される。そして、演算素子が、格納された数値から変化量を算出して波形情報を形成し、波形情報が予め定められた規定値(例えば、パワーコンディショナ6におけるMPPT制御の周期や周波数)に該当するかが判定される。そして、得られた脈動がその規定値と略同一でありMPPT制御における脈動であると判断されれば、昇圧ユニット7に脈動検知の情報を送信する。
【0059】
なお、脈動検知の情報としては、単なるON−OFF信号(信号の有り、無し)でも良いし、電圧成分の脈動情報に時間情報等を加味した情報であってもよい。後者の場合、昇圧ユニット7で受信したこれらの情報についてさらに詳細な解析を行って、昇圧動作の精度を高める(誤動作回避)ことが出来る。
【0060】
また、脈動検知回路8から昇圧ユニット7への上記情報の送信は、専用の通信線を用いておこなってもよい。また、他の送信方法として、太陽電池ストリング2の発電電力を出力する電力線に信号を重畳させて送信しても良い。さらに他の送信方法としては、脈動検
知回路8を昇圧ユニット7から離して配置する必要性がある場合には、赤外線通信ユニットや特定の小電力通信デバイスを用いて送信しても良い。
【0061】
また、脈動検知回路8の動作電源としては、第1の太陽電池ストリング2Aや第2の太陽電池ストリング2Bのいずれか供給可能な方(回路動作電圧および回路消費電流を供給できる発電電力の有る方)から電力を得てもよい。他の形態として、脈動検知回路8は、内部に蓄電池等を内蔵して自立動作できるようにしてもよく、この場合、太陽電池ストリング2の発電電力が不安定なときでも、脈動検知回路8による安定した波形解析動作が行える。なおこのとき、内蔵された蓄電池への充電は太陽電池ストリング2の発電力が十分に存在するときに行えば良い。
【0062】
またさらに、電圧の検出場所としては端子台などが好適であるので、脈動検出部13や脈動検知回路8は接続箱10や昇圧ユニット7の筐体内に配置するのが好ましい。
【0063】
なお、上述したように、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動の検知としては、電圧成分の脈動に限らず、電流成分の脈動を検知してもよい。図3(b)は、太陽光発電システム11における脈動検出方法における変形例11’として、電流成分の脈動を検知する例を示している。
【0064】
具体的には、該変形例11’は、電流成分の脈動を検知する脈動検出部13’を有する点で、太陽光発電システム11と相違する。脈動検出部13’としては、電流センサー等の素子を用いて非接触で電流成分の脈動を検出する構成を採用することが可能である。この変形例では、脈動検知回路8の配置の制限が緩和される。
【0065】
なお、図3(a)および図3(b)のいずれにおいても、脈動検知回路8は昇圧ユニット7の出力側に設置しているが、脈動検知回路8の位置はこの限りではなく、昇圧ユニット7の後段で且つパワーコンディショナ6の前段であれば、いずれの位置に配置しても良い。
【0066】
また、本実施形態に係る太陽光発電システム11においては、図1のブロック図に示すように、昇圧ユニット7は、パワーコンディショナ6から離して配置されている。すなわち、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とは別体で構成されている。このような構成により、特に、電圧成分の脈動を検知する検知方法を用いる際には、脈動検出回路8が昇圧ユニット7の近くに配置された場合であっても、第2の太陽電池ストリング2Bに電流が流れていないことにより電圧降下がほとんどない状態で、脈動を精度良く検知することができる。
【0067】
なお、図1に示すように、各太陽電池ストリング2の出力電力はパワーコンディショナ6で各々接合され並列接続されているのである。このとき、第2の太陽電池ストリング2Bと昇圧ユニット7との距離が長いと、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力は線間抵抗で減衰した後で昇圧されることになり、効率が悪い。そこで第2の太陽電池ストリング2Bの近くに昇圧ユニット7を配置し、昇圧してから送電するようにすれば、電圧値を昇圧させた分だけ電流値が減るので線間抵抗によって減衰する損失量(線間抵抗×電流)が相対的に減り、効率の良い送電が行える。この場合、脈動検知回路8は昇圧ユニット7へ脈動検知情報を送信する信号線の引き廻しによる外観への影響を考慮し、昇圧ユニット7の近くに配置することが好ましい。
【0068】
このように、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とが別体で構成された場合であって両方間の距離が大きい場合に、特に脈動検知回路8を昇圧ユニット7の近くに配置することで、より一層、複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能となる。また、両方間の距離が小さい場合であっても、脈動検知回路8を昇圧ユニット7のすぐ前段に配置することは、太陽電池ストリング2の発電電力の送電による電力損失を少なくし、電力変換可能な電力量を増やすことが可能となる観点から好ましい。
【0069】
以上のように、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6との距離に関わらず、脈動検知回路8は昇圧ユニット7のすぐ前段に配置することで、施工が容易な構成で且つ複数の太陽電池ストリング2による効率的な電力変換が可能な太陽光発電システムを提供することができる。
【0070】
次に、本実施形態に係る太陽光発電システム11における、上述した昇圧ユニット7の昇圧動作について、各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を用いて説明する。
【0071】
図8は、本実施形態に係る太陽光発電システム11における各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を示すグラフであり、縦軸が太陽電池ストリング2の出力電圧、横軸が時刻である。
【0072】
図8において、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧を実線、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を破線で示している。
【0073】
また、パワーコンディショナ6は任意の入力運転電圧範囲を有しているため、起動する、すなわち電力変換を開始するためには、ある一定範囲の直流入力電圧が必要である。図8においては、この入力運転電圧範囲の下限値(最低電圧)を一点破線で示している。なお、住宅用パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の一例としては、例えば、150V〜300Vが挙げられ、製造メーカーによって種々異なる値である。また、産業用パワーコンディショナ等では、入力運転電圧範囲の上限値が600Vを越えるものもあり、本実施形態においては、種々のパワーコンディショナを用いることができる。
【0074】
以下、本実施形態に係る太陽光発電システム11における電圧成分の脈動を検知する方法について説明すべく、図8を用いて、第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧変動について、詳細に説明する。
【0075】
図8に示すように、例えば、日の出と共に第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が上昇し出力電圧もそれに伴い上昇する。しかしながら、朝方は日射強度が十分強くはないので雲等で日差しが遮られると発電電力が急激に低下する(図中A点のような日射変動による電圧低下)場合もある。本実施形態においては、図中A点付近で日射変動が生じた形態を例にしている。なお、太陽電池ストリング2の出力電圧は無負荷であれば日射変動が生じても然程大きな変動は生じないが、本実施形態では便宜上パワーコンディショナ6が負荷として作用しているものとして説明する。
【0076】
図中A点ではパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値Vmin(以下、最低起動電圧とする)に達しているが、それ以前にあった日射変動のように最低起動電圧に達した後に再び低下することも有り得る。そのため、パワーコンディショナ6の起動は図中B点付近まで行われない。この図中A点から図中B点までの間の時間は「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(16資電部第114号)」の定めに従って設計されており、一般に太陽光発電等のパワーコンディショナ6は10分間以上の安定電力が供給された後に起動するようになっている。よって、図中B点まではパワーコンディショナ6は起動しておらず、内蔵されたMPPT制御回路5も動作していない。そのため、図8に示すように、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧の波形には脈動は生じていない。この時、日射に応じて第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は第1の太陽電池ストリング2Aと共に上昇するが、第1の太陽電池ストリング2Aと比べて直列数が少ないので第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧程度までは上昇しない。
【0077】
なお、本実施形態においては、昇圧ユニット7は昇圧動作停止時にも第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力を無変換で出力させるものとして説明する。すなわち、本実施形態においては、図8に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、昇圧動作が開始される図中点C(脈動が検知された時間tc)まで、ある程度の傾斜角度で上昇している。しかしながら、昇圧ユニット7の回路構成によっては昇圧動作停止時には出力側の電圧が0Vとなるものもある。そのような形態の昇圧ユニット7を用いてもよく、その場合においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点まで0Vで推移することとなる。
【0078】
上述したように第1の太陽電池ストリング2Aは日射に伴い規定時間が経過した後(図中B点)、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力に基づいてパワーコンディショナ6が起動しMPPT制御が開始されると第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に図中のような脈動波形が観測される。この脈動波形は、主にMPPT制御回路5が第1の太陽電池ストリング2Aの最大電力点となる最適動作電圧を確認するために動作電圧値を増減させていることによって生じたものである。すなわち、その振幅や周期(周波数)は、パワーコンディショナ6の設計思想によって異なり、同じ製造メーカーでも種々異なる値を有する。
【0079】
なお、このMPPT制御回路5によるMPPT制御における振幅や周期(周波数)は、例えば、電圧変動幅は2〜6V、変化周期は6秒〜12秒周期などである。例えば、本実施形態においては、電圧変動幅が4V、変化周期が10秒のMPPT制御をおこなってもよい。この場合、例えば、第1の太陽電池ストリング2Aの最適出力電圧が200Vであるとすると、脈動検知回路8の演算素子が8ビットのCPUであれば、0.78Vの分解能があるので、4Vの電圧変動を十分に検出することが可能である。
【0080】
図8に示すようなこの電圧成分の脈動は、図2を用いて先に述べたように、パワーコンディショナ6のMPPT制御が行われている間は常に検出される。脈動検知回路8では図中B点で脈動が検出されると、脈動波形を解析してMPPT制御によって生じた脈動波形であるかどうかを判定する。ここで、判定の方法としては、例えば、脈動波形の電圧変動幅が、MPPT制御におけるそれと略同一の値で、且つ略同一の周期であるかで他のノイズと識別する等が挙げられる。より具体的には、上述したように、MPPT制御回路5によって電圧変動幅が4V、変化周期が10秒のMPPT制御をおこなっている場合、検出した脈動波形における各周期(第1周期、第2周期…)の波形が略同一であり、且つ、電圧変動幅が約4V、変化周期が約10秒であればよい。
【0081】
なお、図8は、図2に示す脈動検知フローにおけるSTEP1で測定する電圧値のデーターを用いて作成したグラフであるが、ここで判定に用いる周期(周波数)は前記電圧値のデーター(波形の数)が多いほど信頼性が向上する。該判定のために測定する波形の数は、適宜選択すればよい。
【0082】
そして、脈動検知回路8が、図8に示すような第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動を検知したと判定すると、第2の太陽電池ストリング2Bと接続されている昇圧ユニット7に起動を促す信号を送信する(図中C点)。これにより昇圧ユニット7による昇圧動作が開始され、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点から上昇し、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と等しくなる(図中F点)。この時、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力のパワーコンディショナ6による電力変換が開始される。そのため、図中F点から、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力電圧も第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同
じ値で脈動するようになる。なお、このとき、上述したように、昇圧ユニット7の昇圧比は、既にパワーコンディショナ6は第1の太陽電池ストリング2Aで電力変換を開始しているため、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲であって、且つその入力運転電圧範囲の最大定格値以下に設定しておくだけでよい。これにより、昇圧後の第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ電圧値で出力される。
【0083】
以上述べたように、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aによってパワーコンディショナ6のMPPT制御が動作し脈動を発生させたことを検知した(図中C点)後に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を開始するようにしている。このことによって、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力の電力変換が開始される前に昇圧ユニット7で昇圧された電力にパワーコンディショナ6がMPPT制御をかけることを低減でき、昇圧系統の単独運転を抑制できる太陽光発電システムを提供できる。また、このように昇圧系統の単独運転が起こらない構成とすることにより、昇圧ユニット7に単独運転防止のための昇圧電圧の設定機構や設定工程を別途設ける必要が無くなり、回路構成を簡素化するとともに設置作業性も向上する。
【0084】
また、本実施形態においては、昇圧ユニット7は、図中C点でMPPT制御における脈動を検知した信号を受信すると、一気に第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)まで高めている。すなわち、図8に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧は、図中C点までは無変換で出力されることによりある一定の傾斜角度で上昇し、昇圧ユニット7によって昇圧動作がなされたら、縦軸に平行な軌跡を有するように、時間tcにおいて第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧まで昇圧される。このような昇圧動作の形態は、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力をいち早く昇圧してパワーコンディショナ6に入力することができるため、第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力を好適に活用することができる。また、このような形態においては、昇圧ユニット7の昇圧動作を規定するプログラムが容易であるため、コストの低減も図れる。
【0085】
なお、図3(b)に示した電流成分の脈動を検知する場合においても、上述した電圧成分の脈動を検知する場合と同様であり、図8に示す出力電圧の波形を出力電流の波形と置き換えて見れば良い。そして、電流成分の脈動を検知する場合においても、同様の効果が得られる。ただし、電流成分の脈動の波形は電圧成分の脈動の波形と位相が逆なのでその点は注意して、MPPT制御が動作したことによる脈動の可否を判定すべきことは言うまでもない。
【0086】
また、脈動の検知においては、上述したように電圧成分および電流成分に限らず、太陽電池ストリングの出力電力に関する種々の要素を用いて脈動の可否判定を行ってもよいが、可否判定の容易性から、脈動の振幅の大きさが大きい電圧成分や電流成分の脈動を検知するのがより好ましい。
【0087】
以上、本実施形態においては、図8に示すように、図中B点以降で得られた脈動波形においては、第1周期の波形は、後続の第2周期の波形および第3周期の波形と略同一であり、該波形を用いた脈動検知の判定について、説明したが、検出される波形はこれに限らない。
【0088】
そこで、以下に、第1、第2および第3周期の波形が略同一ではない事例について、図17を用いて、説明する。
【0089】
図17は、本実施形態において、STEP1で得られた電圧成分を示す波形の他の例を
示す。具体的には、図17には、図8における図中B点以降の波形部分に対応する部分を取り出して示している。
【0090】
ここで、図17における電圧V1は、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6への入力電圧に相当する。なお、以下、図17に示すように、電圧V1に基づきパワーコンディショナ6が起動(図中B点)してから時間t1までのV3―V4間の電圧変動について、上述したSTEP1において、脈動かどうか判定する手順を説明する。
【0091】
まず、サンプリングした電圧成分の波形データーを基に周期性を有する波形があるか否かを判定する。すなわち、周期Tを有する波形が存在するか否かを判定する。具体的には、例えば、簡単な方法としては、周期Tの開始点V1から電圧が上昇した後、再度、電圧V1に下がり、再び電圧V1に上昇するまでを1周期として、この1周期に含まれる波形を1波形と認識する。そして、その1波形において、その波形が電圧値V1を基点に左右対称の形状であるかどうかや、その波形における電圧の最大値と最小値の電圧値V1からの変動幅が同じであるかどうか、電圧値V1−V1間の山のカーブに谷などが含まれていないかどうか、という点を基に、検出された電圧波形の波形形状を解析する。なお、このとき、電圧の振れ幅や1周期の時間も解析項目として用いてもよい。
【0092】
次に、MPPT制御による脈動の場合は、その波形に連続性があることから、検出された電圧波形のデーターにおいて、同じ波形が連続する、もしくは周期や波形の電圧変動がある程度(例えば10%の誤差範囲なら)似ていれば同じ波形と判定し、MPPT制御における脈動があると判定することができる。なお、このとき、連続する2つの波形、具体的には、1つ目の波形(周期T1における波形)と2つ目の波形(周期T2における波形)とを比較して判定すればよい。すなわち、3つ目の波形(周期T3における波形)を用いて判定する場合は、比較対象の波形としては、2つ目の波形(周期T2における波形)を用いればよい。
【0093】
この比較判定において、もし、周期T1と周期T2における波形が略同一で、且つ周期T2と周期T3の波形も略同一であると判定されれば、波形には連続性があるといえるので、MPPT制御による電圧脈動が検知されたと判定することができる。この判定に基づき、昇圧ユニット7に脈動検知の情報送信をおこない、昇圧動作の開始を促す。もし、波形に連続性がないと判定されれば、再度、新たな電圧成分の波形データーの入手作業に戻る。なお、情報送信後は脈動検知動作を停止する。
【0094】
以上のように、MPPT制御による波形が、略同一の1周期の波形が連続したものではなくても、比較的安定している(波形の形状・大きさの差異が少ない)場合には、波形を相対的に比較して連続性を判定することで、周期性を有する脈動か否かを判定してもよい。このような判定にすれば、波形の規格値(電圧等の振幅や周期)が不明であっても波形の連続性から周期性を有する脈動を検知することができる。この周期性を有する脈動波形の種々の値(振幅や周期)を用いて、MPPT制御回路5によるMPPT制御における脈動か否かの判定が可能となる。これにより、多様なメーカーのパワーコンディショナ6のMPPT制御回路5に対応した脈動検知が可能となり、汎用性に優れる。
【0095】
なお、このような判定方法においては、上述の2つの波形(周期T1における波形および周期T2における波形)を比較した際の、波形の電圧等の振幅や周期における許容差の値を予め設けておき、2つの波形の各値の差がその対応する許容差の範囲に該当する場合は、検出された波形は周期性を有すると、判定してもよい。このような判定方法にすれば、より確実に波形判定ができる。なお、このときの許容差の範囲の設定の方法としては、脈動検知回路5の内部メモリーに各メーカーのパワーコンディショナ6で用いられているMPPT制御回路8の電圧の振幅や周期の情報から上限と下限を選んで設定したり、検出された波形の周期に併せて対応する電圧の振幅の電圧値を読み出して用いたりする方法がある。
【0096】
<第2の実施形態>
図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係る太陽光発電システム21について、説明する。図4(a)は、第2の実施形態に係る太陽光発電システム21のブロック図であり、図4(b)は、図4(a)の要部拡大図である。本実施形態は、脈動検知回路8の配置について、第1の実施形態と異なる。なお、ここでは第1の実施形態と異なる構成のみについて言及する。後述の実施形態においても同様である。
【0097】
第2の実施形態に係る太陽光発電システム21は、具体的には、図4(a)に示すように、脈動検知回路8が昇圧ユニット7の内部に配置されている。このような構成により、上述したような脈動検知回路8から昇圧ユニット7への情報送信に用いられる情報送信線距離や、昇圧ユニット7と脈動検知回路8との間の配線距離を短くすることができる。その結果、昇圧ユニット7までにおける第2の太陽電池ストリング2Bの発電電力の送電による電力損失を少なくし電力変換可能な電力量を増やすことが可能となるとともに、配線部材や筐体を削減してシステムコストの低減が図れる。
【0098】
このような形態においては、脈動検知回路8としては、図4(b)に示すように昇圧ユニット7の内部の昇圧動作を行う昇圧制御回路71を用いればよい。すなわち、昇圧ユニット7のCPUに脈動検知のプログラムを持たせ、脈動検知回路8としての機能を兼任させるようにしている。このような形態においては、脈動の波形解析が昇圧ユニット7で行えるので、脈動検知回路8と昇圧ユニット7の昇圧制御回路との通信手段が不要となり回路構成がより簡素化できる。また、このように昇圧制御回路71が脈動検知回路8として機能する本実施形態においては、脈動制御回路8が昇圧制御もおこなうため、脈動検知フローにおいて、誤動作防止のための複数回に渡る昇圧動作の確認などといった昇圧ユニット7の動作プログラムに最適化した昇圧開始の判断プロセスが採用できる。そのため、より精度の高い昇圧動作制御が可能となる。
【0099】
<第3の実施形態>
図5を用いて、本発明の第3の実施形態に係る太陽光発電システム31について説明する。図5は、第3の実施形態に係る太陽光発電システム31のブロック図である。本実施形態においては、昇圧ユニット7の配置において、第1の実施形態と異なる。
【0100】
本実施形態においては、図5に示すように、昇圧ユニット7がパワーコンディショナ6の筐体内に配置されている。すなわち、昇圧ユニット7とパワーコンディショナ6とが一体化されている。
【0101】
このような形態によれば、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5がMPPT制御している送電線に、脈動検出回路8を容易に取り付けることができる。そのため、脈動検知回路8の配置位置も特に制限を受けないことから、太陽光発電システムのシステム設計の自由度が高まる。
【0102】
また、このような形態においては、図4(b)で述べたように、脈動検知回路8を昇圧ユニット7の制御用CPU(昇圧制御回路)で兼任させることもできるとともに、脈動検知回路8をパワーコンディショナ6のMPPT制御用CPUに図2の脈動検知フローで述べた脈動検知・昇圧制御プログラムを加味して兼任させることも可能である。
【0103】
<第4の実施形態>
図6を用いて、本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システム41について説明する。本実施形態においては、パワーコンディショナ6に並列に接続される太陽電池ストリング2の数において、第1の実施形態と異なる。
【0104】
具体的には、図6に示すように、太陽光発電システム41は、第1の太陽電池ストリング2Aおよび第2の太陽電池ストリング2Bに加えて、第3の太陽電池ストリング2Cの系統が存在する。この第3の太陽電池ストリング2Cは、第2の太陽電池ストリング2Bと同様の構成とすることができる。すなわち、第3の太陽電池ストリング2Cも昇圧系統であり、第3の太陽電池ストリング2Cにおける太陽電池素子の数は、第1の太陽電池ストリング2Aにおける太陽電池素子の数よりも小さく、第3の太陽電池ストリング2Cの出力は昇圧ユニット7によって昇圧されてパワーコンディショナ6で電力変換される。つまり、本実施形態においては、昇圧ユニット7が複数個存在するシステムである。なお、本実施形態においては、図12における昇圧動作(図中C点)までの各太陽電池ストリング2の電圧変動から分かるように、第3の太陽電池ストリング2Cにおける太陽電池素子の数は、第2の太陽電池ストリング2Bにおける太陽電池素子の数と同じ場合を例示している。
【0105】
具体的には、本実施形態によれば、第2の太陽電池ストリング2Bには第2の昇圧ユニット7Bと第2脈動検知回路8B、第3の太陽電池ストリング2Cには第3の昇圧ユニット7Cと第3の脈動検知回路8Cとが各々配置されており、昇圧ユニット7Bと脈動検知回路8B、昇圧ユニット7Cと脈動検知回路8Cは互いに独立して動作する。第2の昇圧ユニット7Bは、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧し、第3の昇圧ユニット7Cは、第3の太陽電池ストリング2Cの出力電圧を昇圧する。第2の脈動検知回路8Bおよび第3の脈動検知回路8Cは、いずれも第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動を検知する。
【0106】
そして、本実施形態においては、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における昇圧ユニット7と同様に、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5が動作するまでは第2の昇圧ユニット7Bと第3の昇圧ユニット7Cとは停止状態である。そして、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が上昇するとともにパワーコンディショナ6が起動しMPPT制御回路5が動作すると、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が発生する。この脈動を、第2の脈動検知回路8Bと第3の脈動検知回路8Cがそれぞれ検知すると、各々、対応する系統(第2の太陽電池ストリング2Bおよび第3の太陽電池ストリング2Cの系統)に接続された昇圧ユニット7(第2の昇圧ユニット7Bおよび第3の昇圧ユニット7C)に脈動検知情報を送信し、昇圧動作の開始を促す。
【0107】
なお、このとき、いずれかの昇圧ユニット7(第2昇圧ユニット7Bまたは第3昇圧ユニット7C)が先に昇圧動作を開始したとしても、既に第1の太陽電池ストリング2Aに基づきパワーコンディショナ6が起動しているため、各脈動検知回路8(第2および第3の脈動検知回路8B、8C)は第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動は正常に検出し続けられる。そのため、他方の昇圧ユニット7も遅れて昇圧動作を開始することが可能である。これにより、複数の昇圧系統で得られる発電電力も正常にパワーコンディショナ6による電力変換に利用することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態においては、複数の昇圧系統を有する形態であっても、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力がパワーコンディショナ6で電力変換される前に昇圧ユニット7が動作しないため、昇圧系統の独立運転を防ぐことができる。そのため、複数の太陽電池ストリング2の効率的な電力変換が可能となる。
【0109】
次に、図12を用いて、本実施形態における、第1の太陽電池ストリング2A、第2の太陽電池ストリング2Bおよび第3の太陽電池ストリング2Cの出力電圧変動について、より詳細に説明する。
【0110】
本実施形態においては、図12に示すように、昇圧ユニット7を用いた太陽電池ストリング2の系統が複数ある場合の、各昇圧ユニット7の昇圧動作の開始タイミングをずらす制御をおこなっている。
【0111】
本実施形態においては、図6で示したように、昇圧ユニット7を有さない第1の太陽電池ストリング2Aと、第2の昇圧ユニット7Bを有する第2の太陽電池ストリング2Bと、第3の昇圧ユニット7Cを有する第3の太陽電池ストリング2Cとがパワーコンディショナ6に並列接続されている。
【0112】
第1の実施形態と同様に、まず、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力のパワーコンディショナ6による電力変換が開始されて、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されると、第2の太陽電池ストリング2Bの第2の昇圧ユニット7Bが図中C点で昇圧動作を開始する。そして、さらに、本実施形態においては、第2の昇圧ユニット7Bの昇圧動作から遅れて、第3の太陽電池ストリング2Cの第3の昇圧ユニット7Cが図中E点で昇圧動作を開始する。
【0113】
本実施形態においては、このように複数の昇圧ユニット7(7B、7C)の昇圧動作をずらすことによって、入力電流が加算されることによって生じる、パワーコンディショナ6で電力変換された交流出力の電流・電圧の変動を時間的に分散させることができる。これにより、交流出力の電流・電圧の相対的な変化量を小さく抑えることができる、その結果、パワーコンディショナ6から交流負荷などへの供給電圧の安定化が図れる。
【0114】
なお、図12に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧に加えても電圧波形(電圧脈動)には変化が生じない。そのため、本実施形態のようにシステム中に昇圧ユニット7が複数存在する場合、他の昇圧ユニット7がいつ起動したかを見極めることは難しいため、予め各昇圧ユニット7の起動のタイムラグを設定しておくと良い。すなわち、例えば、第2の昇圧ユニット7Bは、脈動検知の信号を受信してすぐ起動するとし、第3の昇圧ユニット7Cは、脈動検知の信号を受信してからt時間後に起動するよう設定してもよい。
【0115】
なお、上述したように、本実施形態においては電圧成分の脈動を検知する形態を例示して説明したが、第1の実施形態と同様、電流成分の脈動を検知してもよい。このような電流波形(電流脈動)における脈動検知回路8を用いる場合は、他の昇圧ユニット7の昇圧動作に基づく他の太陽電池ストリング2の電力変換の開始を電流センサーによって電流の増減に基づき解析することが可能である。そのため、このような場合においては、他の昇圧ユニット7の昇圧開始を電流増加で検知してから一定時間後、例えば10秒後、に昇圧動作を開始するように設定すれば良い。なお、この場合、最初の昇圧ユニット7が昇圧開始するタイミングはランダムに選択されるようにしておけば、複数の昇圧ユニット7が同時に起動し難くて良い。
【0116】
なお、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cの構成が略同一の構成を有する形態を例示したが、複数の昇圧系統は、互いに異なる構成を有していてもよい。
【0117】
また、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cの図中
C点までの出力電圧の変動が同一である形態を例示したが、特にこれに限らない。例えば、各太陽電池ストリング2B、2Cの出力電圧を、図中C点に至るまで、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限(Vmin)未満となるよう、個々に任意に制御してもよい。
【0118】
さらに、本実施形態においては、第2および第3の太陽電池ストリング2B、2Cのいずも、対応する昇圧ユニット7(7B、7C)によって、第1の実施形態と同様、時間tcに、図中C点から一気に第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)まで昇圧しているが、昇圧方法はこれに限らない。
【0119】
またさらに、本実施形態においては、昇圧ユニット7を有する昇圧系統の数が2であるシステムを例示したが、昇圧系統の数はこれに限らず、昇圧系統の数が3系統以上であっても構わない。
【0120】
<第5の実施形態>
図7を用いて、本発明の第5の実施形態に係る太陽光発電システム51について説明する。本実施形態においては、第4の実施形態に係る太陽光発電システム41が、互いに同様の構成を有した複数の昇圧ユニット7の系統を有する一方、互いに異なる構成を有した複数の昇圧ユニット7の系統を有している点において、第4の実施形態と異なる。なお、ここでは第4の実施形態と異なる構成のみについて言及する。
【0121】
具体的には、図7に示すように、昇圧ユニット7が複数ある場合において、1つの脈動検知回路8で複数の昇圧ユニット7の制御を行う。すなわち、複数の系統の昇圧ユニット7(7B、7C)の個々に対応する脈動検知回路8(8B、8C)を有する第4の実施形態に対して、複数の系統の昇圧ユニット7(7B、7C)に対し、脈動検知回路8は1個である。
【0122】
本実施形態においては、脈動検知回路8でMPPT制御における脈動を検知すれば脈動検知情報を各昇圧ユニット7にそれぞれ送信することで、各昇圧ユニット7の昇圧動作の開始を促している。
【0123】
このような形態においては、各昇圧ユニット7への情報送信を行う信号線は複数本必要であるが、脈動検知回路8本体は1個で済む。これにより、特に電流センサーを用いる電流成分の脈動を検知する方式では、部材の削減効果が高いため、システムコストの低減が図れる。
【0124】
以下、脈動検知に基づく昇圧方法について、第1の実施形態と異なる3つの実施形態について、各太陽電池ストリング2の出力電圧の時間的変動を示すグラフを基に詳細に説明する。なお、後述する種々の異なる昇圧方法は、該昇圧方法に対応したプログラムを、MPPT制御回路5および脈動検知回路8などに設定することで実現される。
【0125】
<第6の実施形態>
図9を用いて、本発明の第6の実施形態に係る太陽光発電システム61について説明する。図9は、第1の実施形態に係る太陽光発電システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。
【0126】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0127】
第1の実施形態においては、図中C点から第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を
昇圧する昇圧比を、図中C点における第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧と第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧とを基に算出して、図中C点から一気に図中F点まで昇圧しているのに対して、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から段階的に高めている。すなわち、本実施形態においては、図9に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から、第1段階の昇圧で第1の太陽電池ストリング2Aと同じにならないように、出力電圧値が一足飛びに他段階で高めている。
【0128】
より具体的には、例えば、脈動検知回路8がMPPT制御における電圧成分の脈動(または電流脈動)を検知して昇圧ユニット7に昇圧開始を促す信号を送信すると、信号を受信した昇圧ユニット7は図中C点で昇圧を開始する。このとき、例えば、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧が200V、パワーコンディショナ6の最低起動電圧が150Vであるとすると、次のように段階的な昇圧動作を行う。
【0129】
まず、昇圧ユニット7は第1段階の昇圧として、図中C点から第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を130V(図中C1点)まで昇圧する。
【0130】
そして、電圧脈動が継続して検知される場合には、第2段階の昇圧として、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を160V(図中C3点)まで昇圧させる。すなわち、脈動検知回路8はMPPT制御における電圧成分の脈動が継続して検知されていることを確認して昇圧ユニット7に第2段階の昇圧開始を促す信号を送信する。この信号を受信した昇圧ユニット7は図中C2点で第2段階の昇圧を開始する。この第2段階での昇圧のトリガーとなる信号としては、図2の脈動検知フローチャートにおけるSTEP6の情報信号を用いれば良く、昇圧ユニット7が信号を受けた回数に応じて昇圧電圧を切り替えるように設定することで実現可能である。なお、このとき、第1段階の昇圧から第2段階の昇圧までの時間間隔は図2のフローチャートの経過時間としてよいが、第1の太陽電池ストリング2Aの変化を掴むにはある程度の時間を取って情報信号の送受信をおこなうことで、脈動検知の精度が向上する。そのため、当該観点から、特に図示しないが、図2におけるSTEP1〜STEP5に回数や時間のループを加味するのも好適である。
【0131】
次に、電圧成分の脈動が継続して検知できる場合には、第2段階の昇圧と同様に、第3段階の昇圧として、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧と同じ200V(図中F点)まで昇圧し、STEP7を終了する。すなわち、脈動検知回路8はMPPT制御における電圧成分の脈動が継続して検知されていることを確認して、昇圧ユニット7に第3段階の昇圧開始を促す信号を送信すると、信号を受信した昇圧ユニット7は図中C4点で第3段階の昇圧を開始する。この第3段階の昇圧によって、本実施形態においては、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)にまで昇圧する。
【0132】
以上のように、本実施形態においては、昇圧ユニット7による第2の太陽電池ストリング2Bにおける昇圧動作において、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を段階的に高めていく。このことにより、第1の太陽電池ストリング2Aの出力状態がまだ不安定な時に、日射急変によって第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧とパワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値(Vmin)との大小関係の逆転が生じないかを複数回確認することができる。そのため、パワーコンディショナ6のMPPT制御が、第2の太陽電池ストリング2Bの昇圧された出力側に移って単独昇圧運転になり難くすることができる。
【0133】
また、このように第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を段階的に上げていくことで、パワーコンディショナ6を停止させないように動作電力を供給して待機させることも
可能である。そのため、パワーコンディショナ6の起動・停止に伴う騒音の発生を低減することもできる。
【0134】
なお、上述の例で用いた電圧値等は例として述べたものでありこれに限定されるものでななく、例えば、本実施形態では、パワーコンディショナ6のMPPT制御が行われる最低電圧(パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲の下限値:Vmin)を170Vとしたが、この値は特にこれに限定されるものではない。
【0135】
また、本実施形態においては、昇圧段階を3段階としたが2段階以上であれば、特に昇圧段階の数に制限はなく、段階数を多くしてもよい。
【0136】
また、特に図示しないが、この3段階の昇圧制御においては他の制御方法を用いておこなってもよい。例えば、図2に示す脈動検知フローにおいて、STEP6に基づいて動作した昇圧動作を停止させずにSTEP1に戻し、第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が復帰してMPPT制御が再開されて電圧脈動が検知できるまで、昇圧ユニットによって第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧として160Vの昇圧電圧を維持するようにしても良い。この場合、パワーコンディショナ6の起動・停止の際であって解列リレー等の大型接点が接続・分離する際に発する騒音の回数を低減させることができるという利点がある。
【0137】
<第7の実施形態>
図10を用いて、本発明の第7の実施形態に係る太陽光発電システム71について説明する。図10は、第1の実施形態に係る太陽光システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。
【0138】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0139】
上述したように、第1の実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図8に示すように図中C点から一気に高めており、また、第6の実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図9に示すように3段階で段階的に高めている。
【0140】
それに対して、本実施形態においては、図10に示すように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、図中C点から、無段階に徐々に高めるように制御している。すなわち、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を、MPPT制御における脈動が検知されれば、図中C点から第1の太陽電池ストリング2Aの出力電圧(図中F点)、まである一定の傾斜角度で連続的に高めている。
【0141】
このように、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧動作を、無段階で連続的におこなうことで、段階的におこなう形態において各段階に移る際に生じる昇圧電圧の急激な変化に伴うスイッチングノイズの発生を緩和し、周辺回路や外部機器への悪影響を防ぐことができる。
【0142】
<第8の実施形態>
図11を用いて、本発明の第8の実施形態に係る太陽光発電システム81について説明する。図11は、第1の実施形態に係る太陽光システム11における昇圧方法を説明する際に引用した図8に対応する。本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧の昇圧方法において、第1の実施形態と異なる。
【0143】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知した後に昇圧動作を開始する。
【0144】
第1の実施形態においては、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知し、脈動検知回路8から発信された電圧成分の脈動が検知されたことを知らせる信号を昇圧ユニット7が受信したとき(図中C点)に、第2の太陽電池ストリング2Bの出力電圧を昇圧している。
【0145】
それに対して、本実施形態においては、図11に示すように、電圧成分の脈動を検知し、その旨の信号を受信した後に、昇圧動作を開始するまでの間に一定のタイムラグを設けている。すなわち、本実施形態においては、MPPT制御における電圧成分の脈動を検知し、その信号を受信した図中C点から一定時間後(図中D点)に昇圧動作を開始するものである。より具体的には、電圧成分の脈動が検知された図中C点では昇圧動作を開始せず、例えば、図中C点から30分後の図中D点で昇圧動作を開始するものである。
【0146】
ビルの陰等の影響で第1の太陽電池ストリング2Aの発電電力が朝遅くまで安定しないような環境では、MPPT制御における脈動検知後も第1の太陽電池ストリング2A出力の急変(低下)が有り得るが、本実施形態のように、検知タイミングから任意の時間遅れて昇圧動作を開始させることで、より効率的な複数の太陽電池ストリングでの電力変換が可能となる。
【0147】
なお、本実施形態においては、受信から昇圧動作までのタイムラグ(一定時間)を決定する際には、固定値を内部メモリー等に記憶させた固定値を用いて決定しても良いが、過去の発電データーから第1の太陽電池の発電電力が安定するまでの時間を判定して最適な時間を自動設定するようにすると良い。
【0148】
<第9の実施形態>
図13を用いて、本発明の第9の実施形態に係る太陽光発電システム91について説明する。本実施形態においては、太陽電池ストリング2とパワーコンディショナ6との間に逆流防止ダイオード9が配置されている点において、第1の実施形態と異なる。
【0149】
図13は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91のブロック図である。本実施形態に係る太陽光発電システム91は、逆流防止ダイオード9を有している。
【0150】
この逆流防止ダイオード9は、複数の太陽電池ストリング2を並列接続する場合に、各太陽電池ストリング2の出力電圧に差があっても、出力電圧の高い太陽電池ストリング2から出力電圧の低い太陽電池ストリング2に電流が流れて電力損失が発生しないように各太陽電池ストリング2の電路を分離するためのものである。この逆流防止ダイオード9は、太陽電池モジュール単体の出力端子に設けられている場合もあるが、本実施形態においては、逆流防止ダイオード9は、第1の太陽電池ストリング2Aと第2の太陽電池ストリング2Bの出力を結合する接続箱10の中に配置されている形態を例示する。
【0151】
より具体的には、図13に示すように、本実施形態においては、昇圧ユニット7の昇圧制御回路として、コイルとダイオードとスイッチ素子とを用いた方式が採用されている。この方式では回路構成上、逆流防止ダイオード9の働きをする半導体素子(図中ではダイオード)が存在するので、第2の太陽電池ストリング2Bにも逆流防止ダイオード9が配置されているのと同じ状態になっている。これにより、第2の太陽電池ストリング2Bへ第1の太陽電池ストリング2Aからの電流の流れ込みが生じ無い。そのため、パワーコンディショナ6のMPPT制御回路5が第1の太陽電池ストリング2Aの最大出力電力の電圧値で制御を行っていても、第2の太陽電池ストリング2Bを昇圧ユニット7が独自にM
PPT制御をすることができる。
【0152】
このような本実施形態においては、昇圧ユニット7でもMPPT制御することができるため、第1の太陽電池ストリング2Aも第2の太陽電池ストリング2Bも各々の最大出力電力で動作することができる。
【0153】
なお、昇圧ユニット7の昇圧回路の他の方式としては、コンデンサーとスイッチとを組み合わせたチャージポンプ方式と呼ばれるものがある。この方式では、ダイオードの代わりにスイッチ素子が複数設けられ、電力を出力するとき以外は各太陽電池ストリング2の電路が遮断されるので電流の逆流が生じない。そのため、上述したような第2の太陽電池ストリング2Bを独自にMPPT制御する本実施形態においては、チャージポンプ方式も好適に用いることができる。
【0154】
なお、本実施形態のように、パワーコンディショナ6のMPPT制御による脈動を検知する場合、昇圧ユニット7内の逆流防止ダイオード9に相当する機構は、パワーコンディショナ6側の電圧や電流の脈動を検出する障害となるため、図13に示すように、脈動検知回路8は昇圧ユニット7の出力側に配置すればよい。
【0155】
なお、上述の図4を用いて説明した第2の実施形態において、昇圧ユニット7(昇圧制御回路)の中に脈動検知回路8を配置する場合に、脈動検知回路8が昇圧ユニット7(昇圧制御回路)の逆流防止ダイオード9に相当する機構よりも出力側(パワーコンディショナ6側)に配置しているのは同様の理由からである。
【0156】
以上、図13を用いて、逆流防止ダイオード9を有する第9の実施形態について説明したが、本実施形態においても、上述したように施工性が容易であり且つ複数の太陽電池ストリング2の効率的な電力変換が可能である。
【0157】
なお、本実施形態においては、第2の太陽電池ストリング2Bに対応する逆流防止ダイオード9が昇圧ユニット7内部の構成である形態を例示したが、逆流防止ダイオード9の配置位置はこれに限らない。
【0158】
以下、逆流防止ダイオード9を有する第9の実施形態の変形例について、図14乃至図16を用いて説明する。
【0159】
<第9の実施形態の変形例1>
図14を用いて、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第1の変形例911について説明する。図14は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第1の変形例911を示すブロック図である。
【0160】
本実施形態においては、図14に示すように、第1の太陽電池ストリング2Aに対応する逆流防止ダイオード9(第1の逆流防止ダイオード9A)および第2の太陽電池ストリング2Bに対応する逆流防止ダイオード9(第2の逆流防止ダイオード9B)が、いずれも接続箱10の中に設けられている。
【0161】
前述した太陽光発電システム91のように、昇圧ユニット7の内部に逆流防止ダイオード9を設ける、すなわち、昇圧ユニット7だけでも逆流防止ダイオード9の役割を兼ねることができるのであるが、このような形態においては、各電路における昇圧ユニット7の有り無しで接続箱10内への逆流防止ダイオード9の搭載数も変えなければならないため接続箱10の汎用性に制限が生じる。
【0162】
それに対して、本実施形態においては、各電路における昇圧ユニット7の有無に関わらず、各電路に対応した逆流防止ダイオード9をそれぞれ接続箱10に配置している。このような構成により、昇圧ユニット7の有無に関わらずあらゆるシステムに適用可能となるため、汎用性が高まる。
【0163】
なお、このような形態においては、脈動検知回路8のみを接続箱10内の逆流防止ダイオード9よりも出力側に配置し、この脈動検知回路8から検知情報を昇圧ユニット7に送信するようにすれば良い。
【0164】
<第9の実施形態の変形例2>
次に、図15および図16を用いて、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第2の変形例912について説明する。
【0165】
図15は、第9の実施形態に係る太陽光発電システム91の第2の変形例912を示すブロック図であり、図16は、第2の変形例912における脈動検知の制御方法を説明する、脈動検知制御フロー図である。
【0166】
本実施形態においては、図15に示すように、接続箱10の内部に逆流防止ダイオード9(第1の逆流防止ダイオード9Aおよび逆流防止ダイオード9B)が第1の太陽電池ストリング2Aと第2の太陽電池ストリング2Bの両方に各々対応して配置されている。そして、脈動検知回路8が接続箱10の入力側、且つ昇圧ユニット7の出力側に配されている。
【0167】
以下、本変形例における脈動検知・昇圧制御フローについて、図16を用いて詳細に説明する。
【0168】
最初のステップとして、STEP11で昇圧ユニット7を、パワーコンディショナ6の入力運転電圧範囲内の出力電圧で動作させる。
【0169】
そして、STEP12で所定の時間(例えば1分間)の出力電圧(もしくは電流)の波形を取り込む。
【0170】
次に、STEP13で昇圧動作を停止させる。
【0171】
その後、STEP14で脈動検出回路8における脈動検出も停止する。そして、続いて、上述したSTEP2〜STEP5を行う。
【0172】
上記一連の制御フローにおいて、STEP13とSTEP14とは同じタイミング、すなわち1つのSTEPでおこなっても良い。
【0173】
また、STEP2〜STEP5については、図2で述べた脈動検知フローと同じ動作であるため、ここでの説明は割愛する。
【0174】
なお、本実施形態においては、STEP12で取り込んだ波形がパワーコンディショナ6のMPPT制御による脈動の波形であるかどうかを判定するが、該判定方法も、図2に示す第1の実施形態と同様におこなえばよい。
【0175】
すなわち、具体的な判定の方法としては、第2太陽電池ストリング2Bの出力電力を昇圧して出力させた場合、第1の太陽電池ストリング2Aの出力電力によってパワーコンディショナ6が起動していれば昇圧制御回路の出力側電圧はパワーコンディショナ6のMPPT制御によって生じている脈動(電圧、電流のいずれでも)とほぼ同じ振幅の電圧変動と周期(周波数)が脈動検知回路8によって検出されるが、パワーコンディショナ6が昇圧ユニット7で昇圧された電力によって起動した場合には脈動は検出されない。これを利用して、第1の太陽電池ストリング2Aに基づくパワーコンディショナ6のMPPT制御における脈動が検知されればSTEP6でパワーコンディショナ6が起動していることを昇圧ユニット7に情報送信し、昇圧動作を開始するよう促す。一方、脈動が検知されなければSTEP11に戻して脈動が検知されるまで繰り返す。
【0176】
なお、先にも述べたように「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(16資電部第114号)」の定めによれば、パワーコンディショナ6の起動時の安定化のためにパワーコンディショナ6の起動は、起動に必要な電力が10分以上確認されてから行うよう指導されている。したがって、昇圧ユニット7からの出力が十分あれば第2の太陽電池ストリング2Bの出力電力だけでもパワーコンディショナ6の起動は可能であるが、昇圧ユニット7から短時間の出力があってもパワーコンディショナ6は起動しないよう設計されているのでMPPT制御も開始されず脈動は生じない。このような規定を利用することで、本実施形態において、脈動検知回路8が逆流防止ダイオード9の入力側にあっても、脈動の有無を検知することができ、昇圧ユニット7の単独運転であるか否かを判定し、誤作動を回避することができるのである。
【0177】
なお、脈動検知のための判定プログラムの組み方によっては、上述した図13乃至図15で説明したような、脈動検知回路8を逆流防止ダイオード9の出力側に配置しなければならないといった回路設計における制限を解消することも可能である。
【0178】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることができる。また、本発明は上述した実施形態の種々の組合せを含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0179】
11、21、31、41、51、61、71、81、91:太陽光発電システム
2:太陽電池ストリング
2A:第1太陽電池ストリング
2B:第2太陽電池ストリング
2C:第3太陽電池ストリング
3:商用電力系統
4:交流負荷
5:MPPT制御回路
6:パワーコンディショナ
7:昇圧ユニット
7B:第2昇圧ユニット
7C:第3昇圧ユニット
71:昇圧制御回路
8:脈動検知回路
8B:第2脈動検知回路
8C:第3脈動検知回路
9:逆流防止ダイオード
9A:第1逆流防止ダイオード
9B:第2逆流防止ダイオード
10:接続箱
13:脈動検知部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続され且つ最大出力電力が互いに異なる第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとを、MPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムであって、
前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットが前記パワーコンディショナの前段に設けられており、
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めることを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナにおける電力変換で生じる前記MPPT制御における電圧成分の脈動の検知によって高めることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記昇圧ユニットのすぐ後段に配置され、前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における電圧成分の脈動を検知する検知部をさらに有していることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における脈動が検知されれば、前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで段階的に高めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における脈動が検知されれば、前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで連続的に高めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記昇圧ユニットは、前記パワーコンディショナから離して配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記昇圧ユニットと前記パワーコンディショナとは一体化されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記昇圧ユニットは、前記MPPT制御における脈動が検知されるまで前記昇圧を抑制されることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧してからパワーコンディショナに出力可能な昇圧ユニットであって、
前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記パワーコンディショナがMPPT制御された結果に基づく脈動が検知されると前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することを特徴と
する昇圧ユニット。
【請求項10】
第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとが並列にパワーコンディショナに接続される太陽光発電システムにおける制御方法であって、
前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定するステップと、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めるステップと、を有する制御方法。
【請求項1】
互いに並列に接続され且つ最大出力電力が互いに異なる第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとを、MPPT制御されているパワーコンディショナを介して商用電力系統に系統連系させるための太陽光発電システムであって、
前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで高める昇圧ユニットが前記パワーコンディショナの前段に設けられており、
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めることを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナにおける電力変換で生じる前記MPPT制御における電圧成分の脈動の検知によって高めることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記昇圧ユニットのすぐ後段に配置され、前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における電圧成分の脈動を検知する検知部をさらに有していることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における脈動が検知されれば、前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで段階的に高めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記昇圧ユニットは、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナでの電力変換で生じる前記MPPT制御における脈動が検知されれば、前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで連続的に高めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記昇圧ユニットは、前記パワーコンディショナから離して配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記昇圧ユニットと前記パワーコンディショナとは一体化されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記昇圧ユニットは、前記MPPT制御における脈動が検知されるまで前記昇圧を抑制されることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧してからパワーコンディショナに出力可能な昇圧ユニットであって、
前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には、前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定し、前記パワーコンディショナがMPPT制御された結果に基づく脈動が検知されると前記第2太陽電池ストリングの出力電圧を前記第1太陽電池ストリングの出力電圧まで昇圧することを特徴と
する昇圧ユニット。
【請求項10】
第1太陽電池ストリングと第2太陽電池ストリングとが並列にパワーコンディショナに接続される太陽光発電システムにおける制御方法であって、
前記第1太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧よりも前記第2太陽電池ストリングの最大出力電力の電圧が低い場合に、前記第2太陽電池ストリングの前記出力電圧を、前記パワーコンディショナでの電力変換開始前には該パワーコンディショナの入力運転電圧範囲の下限未満に設定するステップと、前記第1太陽電池ストリングに基づく前記パワーコンディショナの前記MPPT制御における脈動が検知されれば前記第1太陽電池ストリングの前記出力電圧まで高めるステップと、を有する制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−50850(P2013−50850A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188360(P2011−188360)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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