説明

太陽光発電システム

【課題】太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールを電力系統へ連系するパワーコンディショナとを電気的に接続する回路全体の状況を容易に測定可能な太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】太陽光発電システム1は、複数の太陽電池ストリング6を多段階かつ電気的に並列接続する複数の接続箱7と、終端に位置する接続箱7bに電気的に接続して太陽電池ストリング6を電力系統へ連系するパワーコンディショナ11と、接続箱7の入力側における電流を計測する複数の入力側電流計25と、接続箱7の出力側における電流を計測する複数の出力側電流計26と、接続箱7の出力側における電圧を計測する複数の電圧計27と、入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得して送信する複数の情報収集装置31と、情報収集装置31から入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を受信して記憶する記憶装置32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、受光面に光を受けて発電する太陽電池モジュールを複数有する発電システムであり、複数の太陽電池モジュールを直列、並列に接続して所望の直流電圧と発電電力を得る。具体的には、太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールを直列に接続して太陽電池ストリングを構成し、複数の太陽電池ストリングを並列に接続して所望の直流電圧と発電電力を得る。
【0003】
ところで、近年、所謂メガソーラーシステムと呼ばれ、1MWを超える発電能力を有する太陽光発電システムの開発が進んでいる。メガソーラーシステムは、数十Wの発電能力を有する太陽電池モジュールを極めて多量(例えば、数千枚以上)に備える。そこで、メガソーラーシステムのような太陽光発電システムは、複数の太陽電池ストリングを並列に接続する多段の接続箱を用いて、複数の太陽電池ストリングを並列かつ多段階に接続する。
【0004】
このような大規模の太陽光発電システムにおいて太陽電池モジュールが故障すると、故障した太陽電池モジュールを特定するために多大な時間と労力を必要とする。
【0005】
そこで、それぞれの太陽電池モジュールから当該太陽電池モジュールの位置情報、特性および温度データを収集して状況を容易かつ迅速に確認可能な太陽光発電システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−267031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の太陽光発電システムは、個々の太陽電池モジュールの状況を確認して、故障した太陽電池モジュールの位置を容易に知ることが可能である。
【0008】
ところで、メガソーラーシステムのような大規模な太陽光発電システムは、太陽電池モジュールの他に、多数の接続箱や、これらを電気的に接続する多数のケーブルを備える。これら多数の接続箱やケーブルも太陽電池モジュールと同様に故障する虞があり、故障した場合に故障箇所を特定することは太陽電池と同様に多大な時間と労力を必要とする。
【0009】
しかしながら、従来の太陽光発電システムでは、個々の太陽電池モジュールの故障の有無や故障した太陽電池モジュールの位置情報を知ることはできるが、接続箱やケーブルを含む回路全体の故障の有無や故障箇所の位置を知ることは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールを電力系統へ連系するパワーコンディショナとを電気的に接続する回路全体の状況を容易に測定可能な太陽光発電システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る太陽光発電システムは、それぞれが電気的に直列接続する複数の太陽電池モジュールを有する複数の太陽電池ストリングと、それぞれが複数の前記太陽電池ストリングを多段階かつ電気的に並列接続する複数の接続箱と、終端に位置する前記接続箱に電気的に接続して前記太陽電池モジュールまたは前記太陽電池ストリングを電力系統へ連系するパワーコンディショナと、それぞれが前記接続箱の入力側における電流を計測する複数の入力側電流計と、それぞれが前記接続箱の出力側における電流を計測する複数の出力側電流計と、それぞれが前記接続箱の出力側における電圧を計測する複数の電圧計と、それぞれが前記入力側電流計、前記出力側電流計および前記電圧計の計測結果を取得して送信する複数の情報収集装置と、前記情報収集装置から前記入力側電流計、前記出力側電流計および前記電圧計の計測結果を受信して記憶する記憶装置と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムを示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの監視系統を示すブロック図。
【図3】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの接続箱を示すブロック図。
【図4】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの測定結果の一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの始端に位置する接続箱における出力特性の一例を示す線図。
【図6】本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの終端に位置する接続箱における出力特性の一例を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る太陽光発電システムの実施形態について図1から図6を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムを示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、太陽電池モジュール5を直列、並列に接続して所望の直流電圧と発電能力とを得ることが可能であり、小規模な太陽光発電システムからメガソーラーシステムのような大規模な太陽光発電システムまで、発電能力に応じて必要数の太陽電池モジュール5を備える。
【0016】
太陽光発電システム1は、それぞれが電気的に直列に接続する複数の太陽電池モジュール5を有する複数の太陽電池ストリング6と、それぞれが複数の太陽電池ストリング6を多段階かつ電気的に並列に接続する複数の接続箱7と、終端に位置する接続箱7bに電気的に接続して太陽電池モジュール5または太陽電池ストリング6を電力系統101へ連系するパワーコンディショナ11と、を備える。
【0017】
太陽電池モジュール5は、数十Wの発電能力を有し、長方形状の受光面で光を受けて発電する。太陽電池ストリング6は、所望の直流電圧に応じて所要数の太陽電池モジュール5を直列に接続した回路である。なお、太陽光発電システム1は、太陽電池ストリング6に代えて単体の太陽電池モジュール5を電気的に並列に接続するものでも良く、太陽電池モジュール5および太陽電池ストリング6の数量は合計2つ以上であればいくつでも良い。太陽電池モジュール5および太陽電池ストリング6を総称して、単に「太陽電池5、6」と呼ぶ。
【0018】
複数の接続箱7のうち、太陽電池ストリング6に直接接続する接続箱7を「始端に位置する接続箱7a」と呼び、パワーコンディショナ11に直接接続する接続箱7を「終端に位置する接続箱7b」と呼ぶ。複数の接続箱7は、所望の直流電流に応じて所要数の太陽電池ストリング6を電気的に並列に接続する。また、複数の接続箱7は、接続箱7aを電気的に並列に接続する接続箱7bによって太陽電池ストリング6を多段階に接続する。さらに複数の接続箱7は、パワーコンディショナ11の入力回路数に応じて複数の接続箱7bを備える。
【0019】
なお、太陽光発電システム1は、所望の直流電流に応じて始端に位置する接続箱7aと終端に位置する接続箱7bとの間に任意の段数の接続箱(図示省略)を配置することができる。また、太陽光発電システム1が小規模であり太陽電池モジュール5または太陽電池ストリング6の数量が比較的少数である場合、接続箱7aをパワーコンディショナ11へ直接接続する単段の構成であっても良い。
【0020】
パワーコンディショナ11は、太陽電池5、6が出力する直流電力を所定周波数(例えば、商用電源周波数)の交流電力に変換するインバータ12を備え、交流系統に接続する負荷設備(図示省略)に電力供給したり、電力系統101に並列接続して電力供給したりする。
【0021】
また、パワーコンディショナ11は、太陽電池5、6の出力が日射強度や太陽電池5、6の表面温度によって変動するために、最大出力点を追従するように太陽電池5、6の動作点を変化して太陽電池5、6から最大電力(最大出力)を取り出す最大電力追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)を行う。最大電力追従制御は、パワーコンディショナ11の直流動作電圧もしくは直流電流またはこれらの両方を一定時間間隔でわずかに変動し、そのときの太陽電池5、6の出力電力と前回の出力電力記憶値とを比較して常に太陽電池5、6の出力電力が大きくなるようにパワーコンディショナ11の直流動作電圧を変化する。
【0022】
さらに、パワーコンディショナ11は、インバータ12の入力側における電流を計測する入力側電流計15と、インバータ12の入力側における電圧を計測する入力側電圧計16と、インバータ12の出力側における電流を計測する出力側電流計17と、インバータ12の出力側における電圧を計測する出力側電圧計18と、インバータ12の出力側における周波数を計測する周波数測定器19と、を備える。
【0023】
ケーブル21は、太陽電池モジュール5、太陽電池ストリング6、接続箱7およびパワーコンディショナ11を電気的に接続する。
【0024】
また、太陽光発電システム1は、それぞれが接続箱7の入力側における電流を計測する複数の入力側電流計25と、それぞれが接続箱7の出力側における電流を計測する複数の出力側電流計26と、それぞれが接続箱7の出力側における電圧を計測する複数の電圧計27と、を備える。
【0025】
さらに、太陽光発電システム1は、それぞれが入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得して送信する複数の情報収集装置31と、情報収集装置31から入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を受信(図1中、矢印R)して記憶する記憶装置32と、を備える。
【0026】
情報収集装置31は、それぞれの接続箱7に納まり、当該接続箱7における入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得する。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの監視系統を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る太陽光発電システム1の監視系統35は、それぞれの接続箱7に納まる情報収集装置31から通信回線36を通じて入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得し、記憶装置32に記憶する。また、監視系統35は、パワーコンディショナ11から第二通信回線37を通じて入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19の計測結果を取得し、記憶装置32に記憶する。
【0029】
記憶装置32の少なくとも一部は、通信回線36に接続する1台または数台のパーソナル・コンピュータ38である。パーソナル・コンピュータ38に代えてCPU、DSP等の演算チップを搭載した演算ボードであっても良い。
【0030】
パーソナル・コンピュータ38は、時刻情報を計数する時刻計数装置を兼ねる。具体的には、パーソナル・コンピュータ38は、太陽光発電システム1内のNTPタイムサーバであり、太陽光発電システム1外のNTPタイムサーバを利用して時計を合わせる。
【0031】
通信回線36は、情報収集装置31とパーソナル・コンピュータ38との間で情報の送受信を行う。通信回線36は、例えば、トークン・リング、IEEE802.11(x)、Ethernet(登録商標)またはその他の無線ベースまたは有線ベースのデータ通信メカニズム等の既存の多数のデータ転送メカニズムである。本実施形態に係る通信回線36は、Ethernet(登録商標)およびIEEE802.11(x)を利用する無線通信装置39を介してパーソナル・コンピュータ38と情報収集装置31とを接続する。
【0032】
第二通信回線37は、通信回線36と同様、例えば、トークン・リング、IEEE802.11(x)、Ethernet(登録商標)またはその他の無線ベースまたは有線ベースのデータ通信メカニズム等の既存の多数のデータ転送メカニズムである。本実施形態に係る第二通信回線37は、ネットワークハブ41を介してパーソナル・コンピュータ38とパワーコンディショナ11とを接続する。
【0033】
情報収集装置31は、パーソナル・コンピュータ38の時刻情報に同期する内部時計42に基づき同時刻に入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得し、取得時の時刻を計測結果に添付して記憶装置32へ送信する。また、情報収集装置31は、予め定める所定の経過時間(例えば1秒)ごとに入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を取得し、取得時の時刻を計測結果に添付して記憶装置32へ送信する。情報収集装置31は、入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を一旦記憶した後、非同期に記憶装置32へ送信する。
【0034】
また、監視系統35は、記憶装置32から入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を読み出してパワーコンディショナ11が出力する発電量を推定し、この推定値とパワーコンディショナ11が出力する発電量の測定値とを比較して太陽電池5、6に電気的に接続する回路における異常の有無を診断する診断装置43を備える。
【0035】
診断装置43は、ルータ45および第二通信回線37を通じて記憶装置32およびパワーコンディショナ11に接続する。
【0036】
診断装置43は、記憶装置32から入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の計測結果を読み出してパワーコンディショナ11が出力する発電量を推定する一方、記憶装置32から入力側電流計15、入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19を読み出してパワーコンディショナ11が出力する発電量の測定値を得る。なお、診断装置43は、パワーコンディショナ11から直接的に入力側電流計15、入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19を受信してパワーコンディショナ11が出力する発電量の測定値としても良い。
【0037】
図3は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの接続箱を示すブロック図である。
【0038】
図3に示すように、本実施形態に係る太陽光発電システム1の接続箱7は、太陽電池ストリング6または他の接続箱7を電気的に並列に接続するケーブル21と、入力側電流計25と、出力側電流計26と、電圧計27と、情報収集装置31と、を納める。
【0039】
ケーブル21は、太陽電池ストリング6または前段に位置する他の接続箱7の出力を束ねてパワーコンディショナ11または後段に位置する他の接続箱7へ送る。ケーブル21は、正極側の導線21aおよび負極側の導線21bを備える。
【0040】
入力側電流計25および出力側電流計26は、例えばシャント抵抗器であり、情報収集装置31に接続する。
【0041】
情報収集装置31は、通信回線36を通じてパーソナル・コンピュータ38と通信を行うことができる。情報収集装置31は、SNTP(Simple Network Time Protocol)を利用し、NTPタイムサーバとしてのパーソナル・コンピュータ38を利用して内部時計42を合わせる。
【0042】
情報収集装置31は、同じ接続箱7に納まる入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27それぞれに接続し、これらの計測結果を取得する。情報収集装置31は、入力側電流計25、出力側電流計26および電圧計27の少なくとも1つの計測結果を取得するものであれば良い。
【0043】
入力側電流計25、出力側電流計26、電圧計27および情報収集装置31は、太陽電池5、6が出力する電力によって動作するものであり、より具体的には、パワーコンディショナ11が出力する交流電力によって動作する。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの測定結果の一例を示す図である。
【0045】
図4に示すように、本実施形態に係る記憶装置32としてのパーソナル・コンピュータ38は、計測結果(入力側電流計25、出力側電流計26、電圧計27、入力側電流計15、入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19の計測結果)と、当該計測結果の取得時の時刻とを対にして、測定点ごとに表形式で記憶する。
【0046】
なお、図4におけるYY:MM:DD:HH:MM:SSは時刻データであり、計測結果の取得年月日、時間(時、分、秒)を表し、同じ計測点においては同時刻のデータは無く、全測定点に渡って同時刻のデータが1群ずつ存在する。
【0047】
また、各測定点は、入力側電流計25、出力側電流計26、電圧計27、入力側電流計15、入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19のいずれかに一対一で対応付けられる。
【0048】
このように構成された太陽光発電システム1は、接続箱7の入力側と出力側との測定結果およびインバータ12の入力側と出力側との測定結果を次々に比較することによって故障の有無を診断する。
【0049】
図5は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの始端に位置する接続箱における出力特性の一例を示す線図である。
【0050】
図6は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの終端に位置する接続箱における出力特性の一例を示す線図である。
【0051】
なお、図5および図6は、縦軸に電流値I、横軸に電圧値Vを取る。
【0052】
先ず、図5に示すように、本実施形態に係る太陽光発電システム1の始端に位置する接続箱7aに着目する。それぞれの太陽電池ストリング6の出力特性Sは、相互に直列に接続する太陽電池モジュール5の出力特性Mの水平和である。この太陽電池ストリング6の出力特性Sは、接続箱7aの入力側で測定される。
【0053】
接続箱7aの出力特性A−1は、相互に並列に接続する太陽電池ストリング6の出力特性Sの垂直和である。この接続箱7aの出力特性A−1は、接続箱7aの出力側で測定される。
【0054】
しかるに、接続箱7aの出力側で測定する出力特性A−1と、接続箱7aの入力側で測定する太陽電池ストリング6の出力特性Sの垂直和の値とが不一致であれば、接続箱7a内に故障が生じていることが分かる。
【0055】
また、接続箱7aの出力側で測定する出力特性A−1と、接続箱7bの入力側で測定する接続箱7aの出力特性A−2とが不一致であれば、接続箱7aと接続箱7bとを中継するケーブル21に故障が生じていることが分かる。
【0056】
次いで、図6に示すように、本実施形態に係る太陽光発電システム1の終端に位置する接続箱7bに着目する。接続箱7bの出力特性A−3は、接続箱7bの入力側で測定する接続箱7aの出力特性A−2の垂直和である。この接続箱7bの出力特性A−3は、接続箱7bの出力側で測定される。
【0057】
しかるに、接続箱7bの出力側で測定する出力特性A−3と、接続箱7bの入力側で測定する接続箱7aの出力特性A−2の垂直和の値とが不一致であれば、接続箱7b内に故障が生じていることが分かる。
【0058】
さらに同様にして、接続箱7bの出力側で測定する出力特性A−3の垂直和の値と、インバータ12の入力側で測定する出力特性I−1とを比較することによって、接続箱7bとインバータ12とを接続するケーブル21や、インバータ12そのものの故障の有無を診断することもできる。
【0059】
また、太陽電池ストリング6に対する放射照度や太陽電池ストリング6の温度を測定して太陽電池ストリング6の出力特性Sを推定することによって、この推定値と接続箱7aの入力側で測定する太陽電池ストリング6の出力特性Sの測定結果とを比較することで太陽電池ストリング6の故障の有無を診断することもできる。
【0060】
さらに、接続箱7aの入力側で測定する太陽電池ストリング6の出力特性Sから太陽光発電システム1全体の出力を推定することも可能であり、この推定値とインバータ12の出力の測定結果を比較することによって、太陽光発電システム1全体の健全性を簡便に確認することもできる。仮にこの比較結果が不一致であれば、それぞれの接続箱7の入力側と出力側との測定結果を比較することによって故障箇所を容易に特定することができる。
【0061】
本実施形態に係る太陽光発電システム1は、入力側電流計25、出力側電流計26、電圧計27、入力側電流計15、入力側電圧計16、出力側電流計17、出力側電圧計18および周波数測定器19の計測結果を取得し、各測定箇所における出力特性の測定結果と、当該計測箇所よりも前段側の計測結果から推定する出力特性の推定値とを比較することによって、太陽電池5、6、接続箱7、パワーコンディショナ11、ケーブル21の故障を判断する。このため、太陽光発電システム1は、ミリ秒オーダーの精度を保って各測定箇所における測定の同期を行うことが好ましい。
【0062】
ところで、従来の太陽光発電システムの場合、各測定箇所からパーソナル・コンピュータへ計測結果を送信する場合、一般に、所謂ポーリング方式と呼ばれる通信制御が行われる。このポーリング方式では、親局としてのパーソナル・コンピュータは、予め設定されている順序で子局である計測箇所へ送信権が必要か否かを尋ね、尋ねられた計測箇所は測定結果の送信が必要であれば測定結果を送信し、必要なければパーソナル・コンピュータへその旨の信号を返す。このポーリング方式の場合、多数の測定箇所が同時期に測定結果の取得と送信とを行うと、測定箇所からパーソナル・コンピュータへ送る測定結果の情報量が通信回線のデータ伝送量を超えてしまい、測定結果を消失してしまう虞がある。他方、データ伝送量を減じるため、各測定箇所で測定結果の取得および送信を行うタイミングを安易にずらしてしまうと、測定箇所間の測定結果の同期が取れない。
【0063】
そこで、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、情報収集装置31の内部時計42を同期し、所定の時間毎に測定結果を取得することによって各測定箇所における計測の同期を図る。また、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、取得時の時刻を計測結果に添付した後、情報収集装置31から記憶装置32へ非同期に測定結果を送ることによって送信するデータの容量を抑制し、通信回線36の負荷を下げ、測定結果を確実に記憶装置32へ記憶する。
【0064】
このように、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、接続箱7の入力側および出力側における出力特性の推定値と測定値とを比較することによって、接続箱7やケーブル21を含む回路全体の状況を容易に測定できる。
【0065】
ところで、一般に、太陽光発電システム1は、気温や天候の影響で出力が変化し易いため、全ての接続箱7における計測の同時性が不十分であると、各計測箇所における出力特性の推定値と測定値との比較判断が困難になる。そこで、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、時刻計数装置としてのパーソナル・コンピュータ38に基づき情報収集装置31の内部時計42を合わせ、接続箱7の入力側および出力側における測定の同期を図ることによって、全ての接続箱7における計測を略同時に行い、接続箱7の入力側および出力側における出力特性の推定値と測定値との比較判断の信頼性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、メガソーラーシステムのように計測箇所が多数に上り測定結果のデータ量が大量であっても、測定結果に時刻を添付し、各情報収集装置31から非同期に測定結果を送信することによって、限られたデータ伝送量の通信回線36を有効に活用して測定結果を確実に記憶装置32へ記憶できる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、パワーコンディショナ11が出力する交流電力によって入力側電流計25、出力側電流計26、電圧計27および情報収集装置31を駆動するため、電力系統101側から連系変電設備(図示省略)を経て太陽光発電システム1構内の広域に亘って商用電力を導くケーブルを敷設する必要がなく、保守性、施工性に優れている。
【0068】
さらにまた、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、各情報収集装置31から非同期に測定結果を送信可能であることから、通信回線36を容易に無線化可能であり、これによって測定結果を伝送するケーブルを太陽光発電システム1の構内で広域に亘って敷設する必要がなく、保守性、施工性に優れている。
【0069】
また、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、接続箱7の入力側および出力側における出力特性の推定値と測定値とを比較することによって、接続箱7やケーブル21を含む回路全体の故障の有無や故障箇所をもれなく、迅速に特定することができる。
【0070】
したがって、本実施形態に係る太陽光発電システム1によれば、太陽電池モジュール5と、太陽電池モジュール5を電力系統へ連系するパワーコンディショナ11とを電気的に接続する回路全体の状況を容易に測定できる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 太陽光発電システム
5 太陽電池モジュール
6 太陽電池ストリング
7 接続箱
7a 接続箱
7b 接続箱
11 パワーコンディショナ
12 インバータ
15 入力側電流計
16 入力側電圧計
17 出力側電流計
18 出力側電圧計
19 周波数測定器
21 ケーブル
25 入力側電流計
26 出力側電流計
27 電圧計
31 情報収集装置
32 記憶装置
35 監視系統
36 通信回線
37 第二通信回線
38 パーソナル・コンピュータ
39 無線通信装置
41 ネットワークハブ
42 内部時計
43 診断装置
45 ルータ
101 電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが電気的に直列接続する複数の太陽電池モジュールを有する複数の太陽電池ストリングと、
それぞれが複数の前記太陽電池ストリングを多段階かつ電気的に並列接続する複数の接続箱と、
終端に位置する前記接続箱に電気的に接続して前記太陽電池モジュールまたは前記太陽電池ストリングを電力系統へ連系するパワーコンディショナと、
それぞれが前記接続箱の入力側における電流を計測する複数の入力側電流計と、
それぞれが前記接続箱の出力側における電流を計測する複数の出力側電流計と、
それぞれが前記接続箱の出力側における電圧を計測する複数の電圧計と、
それぞれが前記入力側電流計、前記出力側電流計および前記電圧計の計測結果を取得して送信する複数の情報収集装置と、
前記情報収集装置から前記入力側電流計、前記出力側電流計および前記電圧計の計測結果を受信して記憶する記憶装置と、を備えることを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
時刻情報を計数する時刻計数装置を備え、
前記情報収集装置は、前記時刻情報に同期する内部時計に基づき同時刻に前記計測結果を取得し、取得時の時刻を前記計測結果に添付することを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
それぞれの前記情報収集装置は、前記計測結果を非同期に送信することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記入力側電流計、前記出力側電流計、前記電圧計および前記情報収集装置は、前記太陽電池モジュールまたは前記太陽電池ストリングが出力する電力によって動作することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記情報収集装置と前記記憶装置との間で情報の送受信を行う無線通信装置を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記記憶装置から前記測定結果を読み出して前記パワーコンディショナが出力する発電量を推定し、この推定値と前記パワーコンディショナが出力する発電量の測定値とを比較して前記太陽電池ストリングに電気的に接続する回路における異常の有無を診断する診断装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38345(P2013−38345A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175293(P2011−175293)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】