説明

太陽光発電用パワーコンディショナ

【課題】不必要なリレーのオン及びオフの繰り返しを防止する太陽光発電用パワーコンディショナを提供する。
【解決手段】昇圧チョッパ12aの出力電圧を徐々に上昇させ、その間の入力電圧の最大変動量と第1閾値を比較し、入力電圧の最大変動量が第1閾値以上であれば、昇圧チョッパに接続されている太陽電池ストリング11aの供給可能最大電力が不十分であると判断して昇圧チョッパを停止し、最大変動量が第1閾値未満であれば、供給可能最大電力が十分であると判断してインバータ13を起動し、リレー17をオンする。昇圧チョッパが停止されたときに、タイマ18のカウント値又はリレー17がオンされてからオフされるまでの間の太陽電池ストリングの総発電量を第2閾値と比較し、タイマのカウント値又は太陽電池ストリングの総発電量が第2閾値未満のときは、昇圧チョッパを再起動させるときに、制御部16は第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電用パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、太陽光発電用パワーコンディショナ50には、例えば図6に示すように、一群の太陽電池パネルの直列接続体(以下、「太陽電池ストリング」と称する)51a、51b・・・が並列に接続されている。各太陽電池ストリング51a、51b・・・は昇圧チョッパ52に接続され、所定の電圧に昇圧され、昇圧された直流電力はインバータ53により交流電力に変換される。インバータ53の出力は、さらに分電盤54に入力され、家庭用の電気機器55a、55b・・・に供給されると共に、売電用メータ(図示せず)を介して電力系統56に逆潮流される。パワーコンディショナ50には、インバータ53の出力を外部に出力するか否かを切り替えるリレー57が設けられており、インバータ53の起動に合わせてリレー57がオン/オフされる。
【0003】
パワーコンディショナ50に複数の太陽電池ストリング51a、51b・・・が接続される場合には、各太陽電池ストリング51a、51b・・・からの出力電圧は、おおむね太陽電池パネルの直列枚数に比例する。太陽電池パネル51a、51b・・・の直列接続枚数が異なると、個々の太陽電池パネルの最大出力点電圧が変わってしまうので、複数の太陽電池ストリング51a、51b・・・の出力を合成すると、その出力特性が複数のピーク点を有することになる。そのため、一般的には、各太陽電池ストリング51a、51b・・・の太陽電池パネルの直列枚数が同じになるように揃えられている。
【0004】
このようなパワーコンディショナの起動に際して、例えば特許文献1では、太陽電池ストリングの出力電圧(開放電圧)を所定の閾値と比較し、閾値よりも大きいときは出力可能として昇圧チョッパ及びインバータを起動させている。ところが、太陽電池パネルの出力電圧は、日照量だけでなく太陽電池パネルの直列接続枚数に依存するところが大きいので、日照量が少なく供給可能な最大電力が少ない場合でも、太陽電池ストリングからの出力電圧(開放電圧)が閾値よりも大きくなり、インバータが起動されることがある。インバータが起動され、リレーがオンされると、電気機器などの負荷に電流が流れ、各太陽電池パネルから電流が引き出される。日照量が少なく、各太陽電池パネルから供給可能な電力が少ない場合、太陽電池パネルから電流が引き出されると、すぐに出力電圧が降下してしまう。その結果、インバータからの出力電圧が系統電圧よりも低下すると、図示しない制御部は、リレーをオフして、インバータを停止させる。一方、太陽電池パネルから電流が引き出されなくなると、すぐに太陽電池パネルの出力電圧は上昇する。各太陽電池パネルの出力電圧が回復し、制御部はインバータを再起動させ、リレーをオンさせる。その後、日照量が増加しないときは、このような動作を繰り返し、リレーがオン及びオフを繰り返す。このようなリレーのオン及びオフの繰り返しは、居住者にとっては騒音となり、また、リレーの劣化の原因となる。
【0005】
このようなリレーのオン及びオフの繰り返しを防止するため、特許文献2では、昇圧チョッパの出力端に接続された平滑コンデンサの充電に要した電力から太陽電池ストリングから供給可能な最大電力を推定し、推定された最大電力に基づいてインバータの起動を制御している。ところが、例えば平滑コンデンサに残存する電荷の影響などにより、最大電力の推定値が大きすぎて、太陽電池ストリングから実際に供給可能な最大電力と乖離している場合、上記リレーのオン及びオフの繰り返しが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−156313号公報
【特許文献2】特開2009−247184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、リレーがオンしてからオフするまでの時間やその間の太陽電池ストリングの実際の発電量などを考慮し、それによってリレーがオン及びオフを繰り返すことを防止可能な太陽光発電用パワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る太陽光発電用パワーコンディショナは、一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された太陽電池ストリングに接続され、前記太陽電池ストリングの出力電圧を所定の電圧に昇圧する電圧変換回路と、前記電圧変換回路からの直流電力を交流電力に変換する直流/交流変換回路と、前記直流/交流変換回路の出力端に接続され、前記直流/交流変換回路が起動されるときにオンされ前記直流/交流変換回路が停止されるときにオフされるリレーと、前記電圧変換回路に入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部と、前記電圧変換回路から出力される出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記電圧変換回路及び前記直流/交流変換回路の起動及び停止を制御すると共に、前記太陽電池ストリングの発電量を演算する制御部と、前記電圧変換回路が起動されてから停止されるまでの時間をカウントする計時部を備え、前記制御部は、前記直流/交流変換回路を起動させる前に前記電圧変換回路を起動させ、前記電圧変換回路の出力電圧が所定の電圧になるように徐々に上昇させ、その間の前記入力電圧検出部により検出された入力電圧の最大変動量と第1閾値を比較し、前記入力電圧の最大変動量が前記第1閾値以上であれば、前記電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングの供給可能最大電力が不十分であると判断して、前記電圧変換回路を停止し、前記入力電圧の最大変動量が前記第1閾値未満であれば、前記電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングの供給可能最大電力が十分であると判断して、前記電圧変換回路の起動を継続し、さらに、前記直流/交流変換回路を起動し、前記リレーをオンし、前記電圧変換回路が停止されたときに、前記計時部のカウント値又は前記電圧変換回路が起動されてから停止されるまでの間の前記太陽電池ストリングの発電量を第2閾値と比較し、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のときは、前記制御部は、前記電圧変換回路を再起動させるときに、前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることを特徴とする。
【0009】
または、前記制御部は、前記電圧変換回路の出力電圧が所定の電圧になるように徐々に上昇させる際の電圧変化率を変化させる機能をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のときは、前記電圧変換回路を再起動させるときに、前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることに換えて、又は前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることに加えて、前記電圧変化率をそれ以前の電圧変化率よりも大きくすることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1閾値の値を記憶する記憶部をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のとき、前記第1閾値の値を前記記憶部に記憶し、次にその電圧変換回路を再起動する際、前記記憶部に記憶されている第1閾値の値を初期値とすることが好ましい。
【0011】
また、前記電圧変化率を記憶する記憶部をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のとき、前記電圧変化率を前記記憶部に記憶し、次に前記電圧変換回路を再起動する際、前記記憶部に記憶されている電圧変化率を初期値とすることが好ましい。
【0012】
前記出力電圧検出部は、前記制御部が前記電圧変換回路を起動させる際、前記電圧変換回路から出力される出力電圧を検出し、前記制御部は、前記所定の電圧と検出した出力電圧の差分電圧に応じた所定の係数を前記入力電圧の最大変動量に積算して前記第1閾値と比較することが好ましい。
【0013】
前記太陽電池ストリング及びその太陽電池ストリングに接続された前記電圧変換回路は複数組設けられており、前記制御部は、複数の前記電圧変換回路を個別に制御することが好ましい。
【0014】
また、前記制御部は、起動されているいずれかの電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングからの出力電力が第3閾値未満となったときに、その電圧変換回路を停止し、全ての電圧変換回路の起動が停止されたときに、前記直流/交流変換回路を停止し、前記リレーをオフすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このような構成によれば、実際の太陽電池ストリングからの発電量が少なく、リレーがオン及びオフを繰り返す可能性がある場合に、第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくし及び/又は電圧変換回路の出力電圧を徐々に上昇させる際の電圧変化率をそれ以前の電圧変化率よりも大きくするので、リレーがオン及びオフされる可能性が徐々に低くなる。その結果、不必要にリレーがオン/オフされることが少なくなり、騒音の低減及びリレーの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナの構成を示すブロック図。
【図2】太陽電池ストリングの出力特性(電力/電圧特性又はP−V特性)の一例を示す図。
【図3】昇圧チョッパの入力電圧と出力電圧の変化を示す図であり、(a)は昇圧チョッパの出力電圧の変化、(b)は昇圧チョッパの入力電圧の変化を示す。
【図4】開放電圧及びコンデンサの充電に必要な電力が同じであると仮定した場合の、日照量が多い場合と日照量が少ない場合の太陽電池ストリングのP−V特性を示す図。
【図5】図3と比較して、昇圧チョッパの出力電圧の電圧変化率を大きくした場合の昇圧チョッパの入力電圧と出力電圧の変化を示す図。
【図6】従来の一般的な太陽光発電用パワーコンディショナの構成を示すブロック図。
【図7】開放電圧は低いけれども、日照量が多く、十分に負荷に電力を供給できる太陽電池ストリングと、開放電圧は高いけれども、日照量が少なく、十分に負荷に電力を供給できない太陽電池ストリングのP−V特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナについて説明する。図1は、本実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナ1のブロック構成の一例を示す。この構成例では、例えば寄棟屋根の各面に太陽電池パネルを設置する場合を想定しており、屋根の各面の面積に応じて、設置可能な太陽電池パネルの枚数が異なる。そこで、屋根の各面に設置された太陽電池パネルを直列接続して、それを1つの太陽電池ストリングとし、各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cに、それぞれ独立した昇圧チョッパ(電圧変換回路)12a、12b、12c、12cを接続している。しかしながら、図6に示すように、各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cにおける太陽電池パネルの直列接続枚数が同じ場合は、これら各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cを並列接続して、1つの昇圧チョッパで制御してもよい。なお、制御部16によって、各昇圧チョッパ12a、12b、12c、12cを個別に最大出力点追従制御するので、各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cから供給可能な最大電力を、漏れなく有効に出力することができる。
【0018】
各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cと昇圧チョッパ12a、12b、12c、12cの間には、昇圧チョッパ12a、12b、12c、12cに入力される入力電圧を検出するための入力電圧検出部14a、14b、14cが設けられている。昇圧チョッパ12a、12b、12c、12cの出力側は並列に接続され、1つのインバータ(直流/交流変換回路)13に接続されている。また、このパワーコンディショナ1では、複数の昇圧チョッパ12a、12b、12c、12cの並列接続点とインバータ13の間に1つの出力電圧検出部15が設けられている。インバータ13と分電盤54との間にはリレー17が設けられており、制御部16は、インバータ13を起動するときにリレー17をオンし、インバータ13を停止するときにリレー17をオフする。制御部16は、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、タイマ18及びメモリ(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなど)19が接続されている。なお、昇圧チョッパが1つの場合、昇圧チョッパの入力側と出力側にそれぞれ入力電圧検出部と出力電圧検出部が設けられていればよい。
【0019】
図2は、一例として日照条件が良く、全ての太陽電池ストリング11a、11b、11cにおいて発電可能である場合の各太陽電池ストリング11a、11b、11cのP−V特性(電力/電圧特性)を示す。この場合、各太陽電池ストリング11a、11b、11cに対して個別に最大出力点追従制御を行い、負荷55a、55b・・・で消費されなかった余った電力は、系統56に逆潮流される。そのため、インバータ13の出力電圧Voutは系統56の電圧(例えば、実効電圧200V)よりも高く設定され、それに伴ってインバータ13の入力電圧Vinも決定される。制御部16は、各昇圧チョッパ12a、12b、12cの入力電圧(すなわち、各太陽電池ストリング11a、11b、11cの出力電圧)がVa、Vb、Vcとなるように制御する。同時に、制御部16は、各昇圧チョッパ12a、12b、12cをPWM(Pulse Width Modulation)制御を行い、各入力電圧Va、Vb、Vcをそれぞれインバータ13の入力電圧Vinに昇圧する。
【0020】
次に、このパワーコンディショナ1の起動について説明する。パワーコンディショナ1を起動する場合、制御部16は、インバータ13を起動せず、リレー17をオフにした状態のまま、各昇圧チョッパ12a、12b、12cを順に起動させる。各昇圧チョッパ12a、12b、12cの起動に際して、制御部16は、例えば最初の昇圧チョッパ12aに接続されている入力電圧検出部14aにより検出された入力電圧(開放電圧)と所定の電圧閾値(第5閾値)を比較する。各太陽電池ストリング11a、11b、11cを構成する太陽電池パネルの直列接続枚数に応じて開放電圧が変化するので、この電圧閾値は、各太陽電池ストリング11a、11b、11cに接続された各昇圧チョッパ12a、12b、12c毎に、個別に設定される。入力電圧が所定の電圧閾値未満の場合、例えば夜間や悪天候時など、太陽電池パネルに入射する光が少なく、負荷55a、55b・・・を駆動できるだけの電力が得られないことが明らかなときは、制御部16は昇圧チョッパ12a、12b、12cを起動させない。
【0021】
入力電圧が所定の電圧閾値以上の場合、制御部16は、昇圧チョッパ12aを起動すると共に、入力電圧検出部14aにより検出された入力電圧と出力電圧検出部15により検出された出力電圧をモニタする。入力電圧検出部14a及び出力電圧検出部15は、例えば昇圧チョッパ12aの入力端子の間及び出力端子の間に接続されたコンデンサ(図示せず)の端子電圧を検出する。昇圧チョッパ12aを起動すると、太陽電池ストリング11aから電流が引き出され、昇圧チョッパ12aへの入力電圧が低下し始める。一方、昇圧チョッパ12aの出力端子の間に接続されたコンデンサに充電が開始され、その端子間電圧が徐々に上昇する。
【0022】
図3は、昇圧チョッパの入力電圧と出力電圧の変化を示す。図3中、(a)は昇圧チョッパ12aの出力電圧の変化を示し、(b)は昇圧チョッパ12aの入力電圧の変化を示す。また、図4は、同一の太陽電池ストリング11aについて、開放電圧及びコンデンサの充電に必要な電力が同じであると仮定して、日照量が多い場合(実線)と日照量が少ない場合(破線)のP−V特性を示す。日照量が多い場合、太陽電池ストリング11aの供給可能な最大電力が大きく、P−V特性曲線の傾きも急である。そのため、開放電圧から僅かに電圧が下がっただけでも、コンデンサの充電に必要な電力量がまかなえる。換言すれば、昇圧チョッパ12aの入力電圧の最大低下値は小さい。それに対して、日照量が少ない場合、太陽電池ストリング11aの供給可能な最大電力が小さく、P−V特性曲線の傾きも緩やかである。そのため、開放電圧からかなり電圧が下がらなければ、コンデンサの充電に必要な電力量には到達しない。換言すれば、昇圧チョッパ12aの入力電圧の最大低下値は大きい。そのため、昇圧チョッパ12aの起動に際し、その昇圧チョッパ12aの入力電圧と出力電圧をモニタしておけば、その昇圧チョッパ12aに接続されている太陽電池ストリング11aが発電可能であるか否かを判断することができる。
【0023】
昇圧チョッパ12aの出力電圧が変化している間、制御部16は、入力電圧検出部14aにより検出された入力電圧の最大低下値(又は最大変動量)を算出し、その値を所定の電圧閾値(第1閾値)と比較する。そして、入力電圧の最大低下値が第1閾値以上になると、昇圧チョッパ12aを停止する。入力電圧の最大低下値が第1閾値以上の場合、図4において破線で示したP−V特性曲線のように、昇圧チョッパ12aに接続されている太陽電池ストリング11aの日照量が少なく、発電可能な電力量が不十分であると判断することができる。一方、第1閾値を超える入力電圧の最大低下値が発生しない場合、入力電圧の最大低下値が所定の値になれば、例えば図4において実線で示したP−V特性曲線のように、日照量が多く、発電可能な電力量が十分であると判断することができる。そして、制御部16は、昇圧チョッパ12aに接続されている太陽電池ストリング11aの発電可能な電力量が十分であると判断し、昇圧チョッパ12aの起動を継続する。
【0024】
いずれかの昇圧チョッパ12a、12b、12cについて起動の継続又は停止の判断を行った後、その昇圧チョッパが1つでも起動が継続されているときは、制御部16がインバータ13を起動し、リレー17をオンする。
【0025】
なお、パワーコンディショナ1が連系運転されているときは、制御部16は、起動されている昇圧チョッパについて、最大出力点追従制御を行う。そして、昇圧チョッパの起動開始からの累積の発電量を演算する。また、タイマ18は昇圧チョッパの起動開始(又はリレー17のオン)からの時間をカウントする。また、制御部16は、起動されている昇圧チョッパに接続されている太陽電池ストリングから出力電力をモニタし、出力電力が所定の電力閾値(第3閾値)未満となったときに、その昇圧チョッパを停止する。すなわち、日没や天候の悪化など、日照条件の変化などにより、太陽電池ストリングから十分な電力が供給できなくなったときは、発電を停止する。
【0026】
ところで、太陽電池ストリング11a、11b、11cのP−V特性は、実際に昇圧チョッパ12a、12b、12cを起動し、最大出力点追従制御を行うまでは、不明である。そのため、上記のように昇圧チョッパ12a、12b、12cのいずれかの入力電圧の最大低下値(最大変動量)が第1閾値未満であり、制御部16が発電可能であると判断しても、実際には日照量が少なく、発電量が不十分である場合も起こりうる。その場合、タイマ18によりカウントされた昇圧チョッパの起動開始から停止されるまで(又はリレー17のオンからオフまで)の時間が短い。そこで、制御部16は、タイマ18のカウント値を所定の時間閾値(第2閾値)と比較し、そのカウント値が第2閾値未満のときは、次にその昇圧チョッパを再起動させるときに、上記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくする。すなわち、その昇圧チョッパが再起動されにくくする。それによって、その昇圧チョッパの再起動及び停止に起因して、リレー17が短時間のうちにオン及びオフされるのを防止することができる。
【0027】
あるいは、昇圧チョッパ12a、12b、12cからの出力電圧及び出力電流に基づいて、昇圧チョッパ12a、12b、12cが起動されてから停止されるまでの発電量を演算又は計測するように、制御部16を発電量計測部として機能するように構成してもよい。上記のように、昇圧チョッパが起動されてから停止されるまでの時間が短い場合、その昇圧チョッパに接続されている太陽電池ストリングの発電量も少ない。そこで、いずれかの昇圧チョッパが停止されたときに、制御部16は、その昇圧チョッパについて演算又は計測された発電量を所定の電力量閾値(第2閾値)と比較する。そして、その発電量が第2閾値未満のときは、制御部16は、その昇圧チョッパを再起動させるときに、上記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくするようにしてもよい。
【0028】
あるいは、第1閾値の値を小さくする代わりに、図5に示すように、昇圧チョッパ12a、12b、12cの出力電圧を徐々に上昇させる際の電圧変化率を大きくする(例えば、勾配急にする)ように、制御部16を電圧変化率制御部として機能するように構成してもよい。その場合、コンデンサの充電時間が短くなり、コンデンサの充電に必要な単位時間あたりの電力が大きくなり、昇圧チョッパの入力電圧の最大低下値(最大変動量)が大きくなる。その結果、第1閾値を変化させなくても、その昇圧チョッパが再起動されにくくなる。あるいは、第1閾値と電圧変化率の両方を変化させてもよい。
【0029】
さらに、タイマ18のカウント値又は発電量が前記第2閾値以上のとき、そのときの(更新された)第1閾値又は電圧変化率をメモリ19に記憶させてもよい。そして、次にその昇圧チョッパを再起動する際、メモリ19に記憶されている第1閾値又は電圧変化率を初期値としてもよい。すなわち、正常に昇圧チョッパ12a、12b、12cを起動させた条件を記憶しておくことにより、パワーコンディショナ1をリセットした後、再起動させても、昇圧チョッパ12a、12b、12cが不必要に起動及び停止を繰り返すことはない。
【0030】
ところで、出力電圧検出部15は、昇圧チョッパ12a、12b、12cの出力端子の間に接続されたコンデンサの端子電圧を検出している。そのため、このコンデンサに残存している電荷量によって、昇圧チョッパを再起動させるときの出力電圧の初期値(図3(a)参照)が異なり、それに伴ってコンデンサの充電に必要な電力も異なる。仮に、コンデンサの残存電荷量が多い場合、コンデンサの充電に必要な電力が少なく、電力が小さくても充電が完了してしまう。そのため、実際には日照条件が悪く発電量が不十分な場合であっても、誤って発電量が十分であると判断して、昇圧チョッパを起動してしまう可能性がある。そこで、制御部16を以下のように変形してもよい。例えば昇圧チョッパ12aを起動させる際、制御部16は、出力電圧検出部15から出力される出力電圧(すなわちコンデンサの残存電荷量に応じた電圧)を検出し、所定の電圧Vinと検出した出力電圧の差分電圧を求める。そして、入力電圧検出部14aにより検出された入力電圧の最大変動量に、差分電圧に応じた所定の係数を入力電圧の最大低下値(最大変動量)に積算し、第1閾値と比較する。所定の係数は、差分電圧と入力電圧の最大低下値(最大変動量)を用いて演算で求めてもよいし、あらかじめルックアップテーブルの形式でメモリ19に記憶しておいてもよい。それによって、より正確に、昇圧チョッパの起動又は停止の判断が可能になる。また、出力電圧検出部15に、コンデンサの放電回路を設け、昇圧チョッパが停止されるたびに、コンデンサに残存する電荷を放電するように構成してもよい。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、出力電圧検出部15は、複数の昇圧チョッパ12a、12b、12cの並列接続点とインバータ13の間に1つだけ設けられているが、昇圧チョッパ12a、12b、12cの出力端子の間にそれぞれ個別に設けてもよい。また、1つの制御部16によって全ての昇圧チョッパ12a、12b、12cを制御しているが、各昇圧チョッパ12a、12b、12cにそれぞれ個別の制御部を設けてもよい。さらに、1つの制御部16によって全ての昇圧チョッパ12a、12b、12cを制御しているが、制御部16は時分割的に各昇圧チョッパ12a、12b、12cを制御しており、各昇圧チョッパ12a、12b、12cにそれぞれ個別の制御部を設けた場合と等価である。さらに、昇圧チョッパが起動後短時間のうちに停止された場合、昇圧チョッパの再起動に際して、太陽電池ストリングの開放電圧と比較される所定の電圧閾値の値を高くする(更新する)ようにしてもよい。そして、更新された電圧閾値をメモリ19に記憶させ、次にその昇圧チョッパを再起動する際、メモリ19に記憶されている電圧閾値を初期値としてもよい。
【0032】
さらに、上記実施形態では、各太陽電池ストリング11a、11b、11cにそれぞれ独立した昇圧チョッパ12a、12b、12cを接続した場合を例示したが、各太陽電池ストリング11a、11b、11c、11cを並列接続して、1つの昇圧チョッパで制御してもよい。その場合は、上記説明のうち、制御部16は、昇圧チョッパ12aに関する動作のみを行う。
【符号の説明】
【0033】
1 パワーコンディショナ
11a、11b、11c 太陽電池ストリング
12a、12b、12c 昇圧チョッパ(電圧変換回路)
13 インバータ(直流/交流変換回路)
14a、14b、14c 入力電圧検出部
15 出力電圧検出部
16 制御部
17 リレー
18 タイマ(計時部)
19 メモリ(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された太陽電池ストリングに接続され、前記太陽電池ストリングの出力電圧を所定の電圧に昇圧する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路からの直流電力を交流電力に変換する直流/交流変換回路と、
前記直流/交流変換回路の出力端に接続され、前記直流/交流変換回路が起動されるときにオンされ前記直流/交流変換回路が停止されるときにオフされるリレーと、
前記電圧変換回路に入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記電圧変換回路から出力される出力電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記電圧変換回路及び前記直流/交流変換回路の起動及び停止を制御すると共に、前記太陽電池ストリングの発電量を演算する制御部と、
前記電圧変換回路が起動されてから停止されるまでの時間をカウントする計時部を備え、
前記制御部は、
前記直流/交流変換回路を起動させる前に前記電圧変換回路を起動させ、
前記電圧変換回路の出力電圧が所定の電圧になるように徐々に上昇させ、その間の前記入力電圧検出部により検出された入力電圧の最大変動量と第1閾値を比較し、
前記入力電圧の最大変動量が前記第1閾値以上であれば、前記電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングの供給可能最大電力が不十分であると判断して、前記電圧変換回路を停止し、
前記入力電圧の最大変動量が前記第1閾値未満であれば、前記電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングの供給可能最大電力が十分であると判断して、前記電圧変換回路の起動を継続し、さらに、前記直流/交流変換回路を起動し、前記リレーをオンし、
前記電圧変換回路が停止されたときに、前記計時部のカウント値又は前記電圧変換回路が起動されてから停止されるまでの間の前記太陽電池ストリングの発電量を第2閾値と比較し、
前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のときは、前記制御部は、前記電圧変換回路を再起動させるときに、前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることを特徴とする太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項2】
前記制御部は、前記電圧変換回路の出力電圧が所定の電圧になるように徐々に上昇させる際の電圧変化率を変化させる機能をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のときは、前記電圧変換回路を再起動させるときに、前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることに換えて、又は前記第1閾値の値をそれ以前の値よりも小さくすることに加えて、前記電圧変化率をそれ以前の電圧変化率よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項3】
前記第1閾値の値を記憶する記憶部をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のとき、前記第1閾値の値を前記記憶部に記憶し、次にその電圧変換回路を再起動する際、前記記憶部に記憶されている第1閾値の値を初期値とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項4】
前記電圧変化率を記憶する記憶部をさらに備え、前記カウント値又は前記発電量が前記第2閾値未満のとき、前記電圧変化率を前記記憶部に記憶し、次に前記電圧変換回路を再起動する際、前記記憶部に記憶されている電圧変化率を初期値とすることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項5】
前記出力電圧検出部は、前記制御部が前記電圧変換回路を起動させる際、前記電圧変換回路から出力される出力電圧を検出し、
前記制御部は、前記所定の電圧と検出した出力電圧の差分電圧に応じた所定の係数を前記入力電圧の最大変動量に積算して前記第1閾値と比較することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項6】
前記太陽電池ストリング及びその太陽電池ストリングに接続された前記電圧変換回路は複数組設けられており、前記制御部は、複数の前記電圧変換回路を個別に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項7】
前記制御部は、起動されているいずれかの電圧変換回路に接続されている太陽電池ストリングからの出力電力が第3閾値未満となったときに、その電圧変換回路を停止し、全ての電圧変換回路の起動が停止されたときに、前記直流/交流変換回路を停止し、前記リレーをオフすることを特徴とする請求項6に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−102631(P2013−102631A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245150(P2011−245150)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】