太陽光発電設備の制御装置
【課題】電力系統に短時間停電が発生し系統復電したときに短時間停電前の最大出力まで高速で回復できる太陽光発電設備の制御装置を提供することである。
【解決手段】系統状態判定部22は、太陽電池11が接続された電力系統15の電圧を監視し電力系統15が停電状態か否かを判定し、電力系統15が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池11の動作電圧Vを動作電圧記憶部23に記憶し、最大電力追従制御部18は、電力系統11が停電状態から復帰したときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させる。
【解決手段】系統状態判定部22は、太陽電池11が接続された電力系統15の電圧を監視し電力系統15が停電状態か否かを判定し、電力系統15が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池11の動作電圧Vを動作電圧記憶部23に記憶し、最大電力追従制御部18は、電力系統11が停電状態から復帰したときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用して発電する太陽光発電設備を電力系統に連系して運転制御する太陽光発電設備の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、日射強度及び温度により最大電力を発生させる動作点が異なるため、太陽電池の発電電力を有効に活用するには、刻々変化していく最適動作点に追従させて発電することが重要となる。
【0003】
このような最大電力を取り出す最適動作点を求めるには、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に追従制御させる最大電力追従制御{MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御}が用いられる。例えば、現状の動作点で得られる出力電力と、現状の動作点から少しだけ移動させた動作点で得られる出力電力とを比較して最適動作点への方向判断を行い、最適動作点へと追従させる山登り法などが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、太陽光発電設備が連系された電力系統に短時間停電が発生した場合、太陽光発電設備の出力を零にして短時間停電復帰後に再起動するようにしている。例えば、電力系統に2秒間の短時間停電に起因して単独運転状態が発生すると、太陽光発電設備を停止して系統復電300秒経過後に再起動するようにしている。
【0005】
図13は、太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフである。図13に示すように、太陽光発電設備は、日射強度及び温度が一定の場合には一定のV−I特性曲線C1及び一定のV−P特性曲線P1を有し、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}である。通常時は、この最適動作点C11となるように太陽光発電設備の出力電圧Vが制御される。
【0006】
図14は太陽光発電設備の従来の運転特性を示す出力電圧V及び出力電力Pの特性図である。太陽光発電設備が電力系統に接続された初期状態においては、出力電圧Vは開放電圧Voに等しく、出力電圧Vを調整して出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0007】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Voに調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、時点t3で電力系統が復電すると、太陽光発電設備は再起動し、最大電力追従制御により出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していく。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t4でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは短時間停電前の最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−295688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、大量の太陽光発電設備が導入された電力系統に短時間停電が発生すると、大量の太陽光発電設備が一斉に出力電圧Vは開放電圧Voに調整され出力電力Pが零となるので、電力需給バランスが崩れることになり電力系統の運用に大きな影響を及ぼす可能性ある。特に、太陽光発電設備は再起動にあたって最大電力追従制御により、最大出力動作電圧V1までゆっくり山登り制御となるので、短時間停電前の最大出力P1maxまで回復するまでに時間がかかり系統安定化に寄与できない。そこで、太陽光発電設備が短時間停電を乗り越え高速再起動するFRT(Fault Ride Through)機能を備えることが要請されている。
【0010】
本発明の目的は、電力系統に短時間停電が発生し系統復電したときに短時間停電前の最大出力まで高速で回復できる太陽光発電設備の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力電流値又は電力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値以上のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値未満のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池の動作電圧を動作電圧記憶部に記憶し、電力系統が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部は、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となる。従って、電力系統が停電状態から復帰した際に日射強度が低下していた場合には、最大電力追従制御の制御再開時における一時的な出力電力の低下を防止できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、最大電力追従制御部は、再起動時の太陽電池の出力値が出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上のときは、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、最大電力追従制御部は、再起動時の太陽電池の出力値が出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の一例を示す太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図3】図2に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の他の一例を示す日射強度をパラメータとしたV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図5】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より小さい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図6】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度と同じである場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図7】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より大きい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図。
【図9】本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池の出力電力が停止直前の出力電力以上のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図10】図9に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図11】本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池の出力電力が停止直前の出力電力未満のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図12】図11に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図13】太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフ。
【図14】太陽光発電設備の従来の運転特性を示す出力電圧V及び出力電力Pの特性図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図である。
【0021】
太陽光発電設備の太陽電池11で発電した直流電力は電力変換器12で交流電力に変換され、変圧器13及び開閉器14を介して電力系統15に連系される。太陽電池11の出力電圧Vdは電圧検出器16で検出され、また太陽電池11の出力電流Idは電流検出器17で検出され、最大電力追従制御部18に入力される。最大電力追従制御部18は、太陽電池11の出力が最大となる最適動作点に太陽電池11の出力電圧Vdを追従制御させ、太陽電池11の最大出力Pmaxを得るための出力目標値Prを求め出力制御部19に出力する。出力制御部19は電力変換器12の出力が最大電力追従制御部18からの出力目標値Prになるようにゲート駆動回路20にゲート駆動信号を出力し、電力変換器12はゲート駆動信号により駆動制御する。
【0022】
また、太陽電池11が接続された電力系統16の接続端の交流電圧Vaは電圧検出器21で検出され系統状態判定部22に入力される。系統状態判定部22は太陽電池が接続された電力系統15の接続端の交流電圧Vaを監視し、電力系統15が停電状態か否かを判定する。系統状態判定部22は電力系統15が停電状態となったと判定したときは、出力制御部19及び動作電圧記憶部23に停電状態になったことを通知する。
【0023】
動作電圧記憶部23は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態となったことの通知を受けると、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1を記憶する。一方、出力制御部19は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態となったことの通知を受けると、太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Voになるように、つまり太陽電池11の出力電力Pが零になるようにゲート駆動回路20を介して電力変換器12の出力を制御する。これにより、太陽電池11の出力電力Pは最大電力追従制御部18からの出力目標値Prから零に制御される。
【0024】
次に、系統状態判定部22は電力系統15が停電状態から復電したことを検出すると、最大電力追従制御部18に電力系統15が復電したことを通知する。最大電力追従制御部18は系統状態判定部22から電力系統15が復電したことの通知を受けると、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開する。このように、電力系統15の停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開するので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0025】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の一例を示す太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図2に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Voになるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0026】
そして、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、V−I特性曲線C1上の出力電力P1が最大出力P1maxとなる最適動作点C11に短時間で到達することができる。
【0027】
図3は、図2に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0028】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Voに調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、時点t3で電力系統が復電すると、太陽光発電設備は再起動し、最大電力追従制御により出力電圧目標値V1rを停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御が再開される。従って、V−I特性曲線C1上の最適動作点C11の近傍から、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxに制御される。
【0029】
このように、電力系統15が停電状態から復帰したときは、電力系統15の停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開するので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0030】
以上の説明では、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるにあたり、停電直前の動作点V1から電圧を移動させる方向は特に定めていないので、そのときの状態により電圧上昇方向または電圧下降方向を選択することになるが、停電直前の動作電圧V1から電圧を移動させる方向として、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるようにしてもよい。
【0031】
これは、電力系統15が停電状態から復帰し太陽光発電設備を電力系統15に併入したときは、太陽光発電設備の出力電力Pが大きいほど電力系統15にとって好ましい状態であり、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となるようにするためである。
【0032】
図4は、日射強度をパラメータとした太陽電池の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽電池の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフである。図4では太陽電池の温度を一定とした場合の日射強度をパラメータとしたV−I特性曲線及びV−P特性曲線を示している。V−I特性曲線C1は日射強度が中間の場合の特性曲線、V−I特性曲線C2は日射強度が大きい場合の特性曲線、V−I特性曲線C3は日射強度が小さい場合の特性曲線である。
【0033】
日射強度が中間の場合には、V−I特性曲線C1上の座標C11(V1,I1)のときに出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P1が最大電力P1maxとなり開放電圧はVo1である。また、日射強度が大きい場合には、V−I特性曲線C2上の座標C22(V2,I2)が出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P2が最大電力P2maxとなり開放電圧はVo2である。同様に、日射強度が小さい場合には、V−I特性曲線C3上の座標C33(V3,I3)が出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P3が最大電力P3maxとなり開放電圧はVo3である。
【0034】
図5は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より小さい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。いま、日射強度が中間であり、V−I特性曲線C1上で運転されるものとする。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0035】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧VはV−I特性曲線C1上の開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が小さくなりV−I特性曲線C3となったとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化し、時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動する。この場合、時点t3での日射強度が小さくなってV−I特性曲線C3となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C3上で最大電力追従制御が再開される。
【0036】
最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、日照強度が小さいV−I特性曲線C3上の停電直前の動作電圧V1との交点X3から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは大きくなる方向となり、V−I特性曲線C3上の最適動作点C33で、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P3maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が低下していた場合には、最大電力追従制御の制御再開時の時点t3における出力電力Pは大きくなる方向に制御されるので、一時的な出力電力Pの低下を防止できる。
【0037】
図6は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度と同じである場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。この場合、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、短時間停電前と同じ日照強度であるV−I特性曲線C1上の停電直前の動作電圧V1との交点C11から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは小さくなる方向となるが、2ステップ目からは出力電力Pが大きくなる方向の電圧上昇方向に移動するので、図6の時点t3’からはV−I特性曲線C1上の最適動作点C11に向けた最大電力追従制御が行われ、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が同じである場合には、1ステップ目は太陽光発電設備の出力電力Pは一時的に下がる方向になるが、日射強度が小さくなっている場合よりは出力電力Pは大きいので特に問題はない。
【0038】
図7は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より大きい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。図7に示すように、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が大きくなりV−I特性曲線C2となったとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化する。この場合、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、日照強度が大きいV−I特性曲線C2上の停電直前の動作電圧V1との交点X2から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは小さくなる方向となるが、2ステップ目からは出力電力Pが大きくなる方向の電圧上昇方向に移動するので、図7の時点t3’からはV−I特性曲線C2上の最適動作点C22に向けた最大電力追従制御が行われ、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P2maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が大きい場合には、1ステップ目は太陽光発電設備の出力電力Pは一時的に下がる方向になるが、日射強度が小さくなっている場合よりは出力電力Pは大きいので特に問題はない。
【0039】
このように、電力系統15が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、短時間停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させるので、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となる。これにより、日射強度が減少しているときは、1ステップ分だけ早く最適動作点に到達することができ、最大出力P3maxに到達するのが早くなる。なお、日射強度が減少していないときは1ステップ分だけ遅く最適動作点に到達することになるが、太陽光発電設備の出力電力Pは日射強度が小さくなっている場合よりは大きいので、その遅れは許容する。
【0040】
次に、図8は本発明の第2の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池11の出力値を記憶する出力値記憶部24を追加して設け、最大電力追従制御部18は、電力系統15が停電状態から復帰したときは、停電直前の太陽電池の動作電圧での再起動時に太陽電池11の出力値が出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池11の出力値が停止直前の出力値以上のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ、一方、太陽電池11の出力値が停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させ、太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0041】
出力値記憶部24は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態であると判定されたときは、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて停電直前の太陽電池11の出力電力P1を演算して記憶する。すなわち、出力値記憶部24は、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて、常時、太陽電池11の出力電力Pを演算しており、系統状態判定部22から電力系統15が停電状態である旨の通知を受けると、そのときの出力電力Pを停電直前の太陽電池11の出力電力Pxとして記憶する。
【0042】
最大電力追従制御部18は、系統状態判定部22から電力系統15が復帰した旨の通知を受けると、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧V1での出力電力Pを再起動時の太陽電池11の出力電力Pyとして求め、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力電力Px以上かどうかを判定する。
【0043】
再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0044】
一方、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させ、太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるようにしたものである。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0045】
図9は本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図9に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Vo1になるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0046】
そして、電力系統15が復電する以前に日照強度が大きくなったとすると、V−I特性曲線C1はV−I特性曲線C2となり、開放電圧がVo1からVo2に変化する。この状態で、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は、日照強度が大きくなったV−I特性曲線C2上で、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1での太陽電池11の出力電力Pyを求める。そして、この出力電力Pyが停電直前の出力電力Px以上かどうかを判定することになる。この場合、出力電力Pyが出力電力Px以上であるので、最大電力追従制御部18は、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させることになる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線C2に適合した最大電力追従制御が可能となり、日射強度が大きいV−I特性曲線C2上の出力電力P2が最大出力P2maxとなる最適動作点C22に最大電力追従制御される。
【0047】
図10は、図9に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Vo1から最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0048】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が大きくなりV−I特性曲線C1からV−I特性曲線C2に変化したとすると、開放電圧がVo1からVo2に変化する。
【0049】
その後の時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動することになるが、この場合、時点t3では日射強度が大きいV−I特性曲線C2となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C2上で最大電力追従制御が再開される。その場合、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上であるので、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から電圧上昇方向に電圧を移動する。これは、日射強度が大きいV−I特性曲線C2の場合は、V−I特性曲線C1より電圧上昇方向に最大出力点があるからである。これにより、1ステップ分だけ早く最大出力点C22に到達する。
【0050】
図11は本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px未満のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図11に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Vo1になるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0051】
そして、電力系統15が復電する以前に日照強度が小さくなったとすると、V−I特性曲線C1はV−I特性曲線C3となり、開放電圧がVo1からVo3に変化する。この状態で、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は、日照強度が小さくなったV−I特性曲線C3上で、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1での太陽電池11の出力電力Pyを求める。そして、この出力電力Pyが停電直前の出力電力Px以上かどうかを判定することになる。この場合、出力電力Pyが出力電力Px未満であるので、最大電力追従制御部18は、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させることになる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線C3に適合した最大電力追従制御が可能となり、日射強度が小さいV−I特性曲線C3上の出力電力P3が最大出力P3maxとなる最適動作点C33に最大電力追従制御される。
【0052】
図12は、図11に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Vo1から最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0053】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が小さくなりV−I特性曲線C1からV−I特性曲線C3に変化したとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化する。
【0054】
その後の時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動することになるが、この場合、時点t3では日射強度が小さいV−I特性曲線C3となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C3上で最大電力追従制御が再開される。その場合、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px未満であるので、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から電圧下降方向に電圧を移動する。これは、日射強度が小さいV−I特性曲線C3の場合は、V−I特性曲線C1より電圧下降方向に最大出力点があるからである。これにより、1ステップ分だけ早く最大出力点C22に到達する。
【0055】
このように、電力系統15が停電状態から復帰して太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力電力Px以上のときは、停電直前の動作電圧V1から電圧上昇方向に移動させ、停止直前の出力電力Px未満のときは、停電直前の動作電圧V1から電圧下降方向に移動させるので、1ステップ分だけ早く最大出力点に到達することができ、電力系統の安定化に寄与できる。
【符号の説明】
【0056】
11…太陽電池、12…電力変換器、13…変圧器、14…開閉器、15…電力系統、16…電圧検出器、17…電流検出器、18…最大電力追従制御部、19…出力制御部、20…ゲート駆動回路、21…電圧検出器、22…系統状態判定部、23…動作電圧記憶部、24…出力値記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用して発電する太陽光発電設備を電力系統に連系して運転制御する太陽光発電設備の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、日射強度及び温度により最大電力を発生させる動作点が異なるため、太陽電池の発電電力を有効に活用するには、刻々変化していく最適動作点に追従させて発電することが重要となる。
【0003】
このような最大電力を取り出す最適動作点を求めるには、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に追従制御させる最大電力追従制御{MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御}が用いられる。例えば、現状の動作点で得られる出力電力と、現状の動作点から少しだけ移動させた動作点で得られる出力電力とを比較して最適動作点への方向判断を行い、最適動作点へと追従させる山登り法などが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、太陽光発電設備が連系された電力系統に短時間停電が発生した場合、太陽光発電設備の出力を零にして短時間停電復帰後に再起動するようにしている。例えば、電力系統に2秒間の短時間停電に起因して単独運転状態が発生すると、太陽光発電設備を停止して系統復電300秒経過後に再起動するようにしている。
【0005】
図13は、太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフである。図13に示すように、太陽光発電設備は、日射強度及び温度が一定の場合には一定のV−I特性曲線C1及び一定のV−P特性曲線P1を有し、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}である。通常時は、この最適動作点C11となるように太陽光発電設備の出力電圧Vが制御される。
【0006】
図14は太陽光発電設備の従来の運転特性を示す出力電圧V及び出力電力Pの特性図である。太陽光発電設備が電力系統に接続された初期状態においては、出力電圧Vは開放電圧Voに等しく、出力電圧Vを調整して出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0007】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Voに調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、時点t3で電力系統が復電すると、太陽光発電設備は再起動し、最大電力追従制御により出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していく。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t4でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは短時間停電前の最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−295688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、大量の太陽光発電設備が導入された電力系統に短時間停電が発生すると、大量の太陽光発電設備が一斉に出力電圧Vは開放電圧Voに調整され出力電力Pが零となるので、電力需給バランスが崩れることになり電力系統の運用に大きな影響を及ぼす可能性ある。特に、太陽光発電設備は再起動にあたって最大電力追従制御により、最大出力動作電圧V1までゆっくり山登り制御となるので、短時間停電前の最大出力P1maxまで回復するまでに時間がかかり系統安定化に寄与できない。そこで、太陽光発電設備が短時間停電を乗り越え高速再起動するFRT(Fault Ride Through)機能を備えることが要請されている。
【0010】
本発明の目的は、電力系統に短時間停電が発生し系統復電したときに短時間停電前の最大出力まで高速で回復できる太陽光発電設備の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力電流値又は電力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値以上のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明に係わる太陽光発電設備の制御装置は、太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値未満のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池の動作電圧を動作電圧記憶部に記憶し、電力系統が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部は、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となる。従って、電力系統が停電状態から復帰した際に日射強度が低下していた場合には、最大電力追従制御の制御再開時における一時的な出力電力の低下を防止できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、最大電力追従制御部は、再起動時の太陽電池の出力値が出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上のときは、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、電力系統が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、最大電力追従制御部は、再起動時の太陽電池の出力値が出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、電力系統が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の一例を示す太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図3】図2に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の他の一例を示す日射強度をパラメータとしたV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図5】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より小さい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図6】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度と同じである場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図7】電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より大きい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図。
【図9】本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池の出力電力が停止直前の出力電力以上のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図10】図9に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図11】本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池の出力電力が停止直前の出力電力未満のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフ。
【図12】図11に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図。
【図13】太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽光発電設備の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフ。
【図14】太陽光発電設備の従来の運転特性を示す出力電圧V及び出力電力Pの特性図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図である。
【0021】
太陽光発電設備の太陽電池11で発電した直流電力は電力変換器12で交流電力に変換され、変圧器13及び開閉器14を介して電力系統15に連系される。太陽電池11の出力電圧Vdは電圧検出器16で検出され、また太陽電池11の出力電流Idは電流検出器17で検出され、最大電力追従制御部18に入力される。最大電力追従制御部18は、太陽電池11の出力が最大となる最適動作点に太陽電池11の出力電圧Vdを追従制御させ、太陽電池11の最大出力Pmaxを得るための出力目標値Prを求め出力制御部19に出力する。出力制御部19は電力変換器12の出力が最大電力追従制御部18からの出力目標値Prになるようにゲート駆動回路20にゲート駆動信号を出力し、電力変換器12はゲート駆動信号により駆動制御する。
【0022】
また、太陽電池11が接続された電力系統16の接続端の交流電圧Vaは電圧検出器21で検出され系統状態判定部22に入力される。系統状態判定部22は太陽電池が接続された電力系統15の接続端の交流電圧Vaを監視し、電力系統15が停電状態か否かを判定する。系統状態判定部22は電力系統15が停電状態となったと判定したときは、出力制御部19及び動作電圧記憶部23に停電状態になったことを通知する。
【0023】
動作電圧記憶部23は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態となったことの通知を受けると、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1を記憶する。一方、出力制御部19は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態となったことの通知を受けると、太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Voになるように、つまり太陽電池11の出力電力Pが零になるようにゲート駆動回路20を介して電力変換器12の出力を制御する。これにより、太陽電池11の出力電力Pは最大電力追従制御部18からの出力目標値Prから零に制御される。
【0024】
次に、系統状態判定部22は電力系統15が停電状態から復電したことを検出すると、最大電力追従制御部18に電力系統15が復電したことを通知する。最大電力追従制御部18は系統状態判定部22から電力系統15が復電したことの通知を受けると、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開する。このように、電力系統15の停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開するので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0025】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の動作の一例を示す太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図2に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Voになるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0026】
そして、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させるので、V−I特性曲線C1上の出力電力P1が最大出力P1maxとなる最適動作点C11に短時間で到達することができる。
【0027】
図3は、図2に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0028】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Voに調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、時点t3で電力系統が復電すると、太陽光発電設備は再起動し、最大電力追従制御により出力電圧目標値V1rを停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御が再開される。従って、V−I特性曲線C1上の最適動作点C11の近傍から、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxに制御される。
【0029】
このように、電力系統15が停電状態から復帰したときは、電力系統15の停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から最大電力追従制御を再開するので、短時間停電前の最大出力まで高速で回復でき、電力系統の安定化に寄与できる。
【0030】
以上の説明では、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるにあたり、停電直前の動作点V1から電圧を移動させる方向は特に定めていないので、そのときの状態により電圧上昇方向または電圧下降方向を選択することになるが、停電直前の動作電圧V1から電圧を移動させる方向として、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるようにしてもよい。
【0031】
これは、電力系統15が停電状態から復帰し太陽光発電設備を電力系統15に併入したときは、太陽光発電設備の出力電力Pが大きいほど電力系統15にとって好ましい状態であり、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となるようにするためである。
【0032】
図4は、日射強度をパラメータとした太陽電池の出力電圧Vと出力電流Iとの関係を示したV−I特性及び太陽電池の出力電圧Vと出力電力Pとの関係を示したV−P特性の一例のグラフである。図4では太陽電池の温度を一定とした場合の日射強度をパラメータとしたV−I特性曲線及びV−P特性曲線を示している。V−I特性曲線C1は日射強度が中間の場合の特性曲線、V−I特性曲線C2は日射強度が大きい場合の特性曲線、V−I特性曲線C3は日射強度が小さい場合の特性曲線である。
【0033】
日射強度が中間の場合には、V−I特性曲線C1上の座標C11(V1,I1)のときに出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P1が最大電力P1maxとなり開放電圧はVo1である。また、日射強度が大きい場合には、V−I特性曲線C2上の座標C22(V2,I2)が出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P2が最大電力P2maxとなり開放電圧はVo2である。同様に、日射強度が小さい場合には、V−I特性曲線C3上の座標C33(V3,I3)が出力電力が最大となる最適動作点であり、V−P特性曲線P3が最大電力P3maxとなり開放電圧はVo3である。
【0034】
図5は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より小さい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。いま、日射強度が中間であり、V−I特性曲線C1上で運転されるものとする。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Voから最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0035】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧VはV−I特性曲線C1上の開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が小さくなりV−I特性曲線C3となったとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化し、時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動する。この場合、時点t3での日射強度が小さくなってV−I特性曲線C3となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C3上で最大電力追従制御が再開される。
【0036】
最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、日照強度が小さいV−I特性曲線C3上の停電直前の動作電圧V1との交点X3から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは大きくなる方向となり、V−I特性曲線C3上の最適動作点C33で、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P3maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が低下していた場合には、最大電力追従制御の制御再開時の時点t3における出力電力Pは大きくなる方向に制御されるので、一時的な出力電力Pの低下を防止できる。
【0037】
図6は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度と同じである場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。この場合、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、短時間停電前と同じ日照強度であるV−I特性曲線C1上の停電直前の動作電圧V1との交点C11から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは小さくなる方向となるが、2ステップ目からは出力電力Pが大きくなる方向の電圧上昇方向に移動するので、図6の時点t3’からはV−I特性曲線C1上の最適動作点C11に向けた最大電力追従制御が行われ、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が同じである場合には、1ステップ目は太陽光発電設備の出力電力Pは一時的に下がる方向になるが、日射強度が小さくなっている場合よりは出力電力Pは大きいので特に問題はない。
【0038】
図7は、電力系統が復電したときの日照強度が短時間停電が発生したときの日照強度より大きい場合の太陽光発電設備の出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。図7に示すように、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が大きくなりV−I特性曲線C2となったとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化する。この場合、最大電力追従制御の開始時の1ステップ目は、必ず電圧下降方向に移動させて最適動作点に追従制御させるので、動作点は、図4に示すように、日照強度が大きいV−I特性曲線C2上の停電直前の動作電圧V1との交点X2から電圧下降方向に移動する。従って、出力電力Pは小さくなる方向となるが、2ステップ目からは出力電力Pが大きくなる方向の電圧上昇方向に移動するので、図7の時点t3’からはV−I特性曲線C2上の最適動作点C22に向けた最大電力追従制御が行われ、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P2maxに制御される。このように、電力系統15が停電状態から復帰した際に日射強度が大きい場合には、1ステップ目は太陽光発電設備の出力電力Pは一時的に下がる方向になるが、日射強度が小さくなっている場合よりは出力電力Pは大きいので特に問題はない。
【0039】
このように、電力系統15が停電状態から復帰して太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、短時間停電直前の太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させるので、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっていた場合には、必ず出力電力が大きくなる方向となる。これにより、日射強度が減少しているときは、1ステップ分だけ早く最適動作点に到達することができ、最大出力P3maxに到達するのが早くなる。なお、日射強度が減少していないときは1ステップ分だけ遅く最適動作点に到達することになるが、太陽光発電設備の出力電力Pは日射強度が小さくなっている場合よりは大きいので、その遅れは許容する。
【0040】
次に、図8は本発明の第2の実施の形態に係わる太陽光発電設備の制御装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態であると判定されたときは停電直前の太陽電池11の出力値を記憶する出力値記憶部24を追加して設け、最大電力追従制御部18は、電力系統15が停電状態から復帰したときは、停電直前の太陽電池の動作電圧での再起動時に太陽電池11の出力値が出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池11の出力値が停止直前の出力値以上のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ、一方、太陽電池11の出力値が停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させ、太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0041】
出力値記憶部24は、系統状態判定部22により電力系統15が停電状態であると判定されたときは、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて停電直前の太陽電池11の出力電力P1を演算して記憶する。すなわち、出力値記憶部24は、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて、常時、太陽電池11の出力電力Pを演算しており、系統状態判定部22から電力系統15が停電状態である旨の通知を受けると、そのときの出力電力Pを停電直前の太陽電池11の出力電力Pxとして記憶する。
【0042】
最大電力追従制御部18は、系統状態判定部22から電力系統15が復帰した旨の通知を受けると、太陽電池11の出力電圧Vd及び出力電流Idに基づいて、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池の動作電圧V1での出力電力Pを再起動時の太陽電池11の出力電力Pyとして求め、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力電力Px以上かどうかを判定する。
【0043】
再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0044】
一方、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力値未満のときは、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させ、太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させるようにしたものである。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線に適合した最大電力追従制御が可能となる。
【0045】
図9は本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図9に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Vo1になるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0046】
そして、電力系統15が復電する以前に日照強度が大きくなったとすると、V−I特性曲線C1はV−I特性曲線C2となり、開放電圧がVo1からVo2に変化する。この状態で、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は、日照強度が大きくなったV−I特性曲線C2上で、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1での太陽電池11の出力電力Pyを求める。そして、この出力電力Pyが停電直前の出力電力Px以上かどうかを判定することになる。この場合、出力電力Pyが出力電力Px以上であるので、最大電力追従制御部18は、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧上昇方向に移動させることになる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より大きくなっているV−I特性曲線C2に適合した最大電力追従制御が可能となり、日射強度が大きいV−I特性曲線C2上の出力電力P2が最大出力P2maxとなる最適動作点C22に最大電力追従制御される。
【0047】
図10は、図9に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Vo1から最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0048】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が大きくなりV−I特性曲線C1からV−I特性曲線C2に変化したとすると、開放電圧がVo1からVo2に変化する。
【0049】
その後の時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動することになるが、この場合、時点t3では日射強度が大きいV−I特性曲線C2となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C2上で最大電力追従制御が再開される。その場合、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px以上であるので、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から電圧上昇方向に電圧を移動する。これは、日射強度が大きいV−I特性曲線C2の場合は、V−I特性曲線C1より電圧上昇方向に最大出力点があるからである。これにより、1ステップ分だけ早く最大出力点C22に到達する。
【0050】
図11は本発明の第2の実施の形態で再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px未満のときの太陽光発電設備のV−I特性及びV−P特性の一例のグラフである。図11に示すように、通常時は、出力制御部19は、V−I特性曲線C1上の出力電力が最大出力P1maxとなる最適動作点C11{座標C11(V1,I1)}で運転制御している。この状態で、電力系統15が停電状態となると、動作電圧記憶部23はそのときの太陽電池11の動作電圧V1を記憶し、出力制御部19は太陽電池11の出力電圧Vdが太陽電池11の開放電圧Vo1になるように、つまり太陽電池11の出力電力P1が零になるように、ゲート駆動回路20を介して電力変換器12を制御する。
【0051】
そして、電力系統15が復電する以前に日照強度が小さくなったとすると、V−I特性曲線C1はV−I特性曲線C3となり、開放電圧がVo1からVo3に変化する。この状態で、電力系統15が停電状態から復帰したときは、最大電力追従制御部18は、日照強度が小さくなったV−I特性曲線C3上で、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧V1での太陽電池11の出力電力Pyを求める。そして、この出力電力Pyが停電直前の出力電力Px以上かどうかを判定することになる。この場合、出力電力Pyが出力電力Px未満であるので、最大電力追従制御部18は、動作電圧記憶部23に記憶した停電直前の太陽電池11の動作電圧から電圧下降方向に移動させることになる。これにより、電力系統15が停電状態から復帰したときの日射強度が短時間停電時の日射強度より小さくなっているV−I特性曲線C3に適合した最大電力追従制御が可能となり、日射強度が小さいV−I特性曲線C3上の出力電力P3が最大出力P3maxとなる最適動作点C33に最大電力追従制御される。
【0052】
図12は、図11に示した太陽光発電設備の運転特性での出力電圧V及び出力電力Pの一例の特性図である。太陽光発電設備が電力系統15に接続された初期状態の時点t0においては、出力電圧Vは零であり出力電圧Vを開放電圧Voに調整してから出力電力Pを零から徐々に増加させる。つまり、時点t0で出力電圧目標値V1rを開放電圧Vo1から最大電力追従制御により段階的に下降していくことになる。これに伴い、太陽光発電設備の出力電力Pは段階的に上昇し、時点t1でV−I特性曲線C1上の最適動作点C11になると、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxでほぼ一定となる。
【0053】
太陽光発電設備の出力電力Pが最大出力P1maxでほぼ一定で運転されている状態で、いま、時点t2において電力系統に短時間停電が発生したとすると、太陽光発電設備の出力電圧Vは開放電圧Vo1に調整される。これにより、太陽光発電設備の出力電力Pは最大出力P1maxから一挙に零に調整される。そして、電力系統15が復電する時点t3以前の時点t2’で日照強度が小さくなりV−I特性曲線C1からV−I特性曲線C3に変化したとすると、開放電圧がVo1からVo3に変化する。
【0054】
その後の時点t3で電力系統が復電すると太陽光発電設備は再起動することになるが、この場合、時点t3では日射強度が小さいV−I特性曲線C3となっているので、太陽光発電設備は、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1からV−I特性曲線C3上で最大電力追従制御が再開される。その場合、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが停止直前の出力電力Px未満であるので、停電直前の太陽電池11の動作電圧V1から電圧下降方向に電圧を移動する。これは、日射強度が小さいV−I特性曲線C3の場合は、V−I特性曲線C1より電圧下降方向に最大出力点があるからである。これにより、1ステップ分だけ早く最大出力点C22に到達する。
【0055】
このように、電力系統15が停電状態から復帰して太陽電池11の電圧を最適動作点に追従制御させる際に、再起動時の太陽電池11の出力電力Pyが出力値記憶部24に記憶した停止直前の出力電力Px以上のときは、停電直前の動作電圧V1から電圧上昇方向に移動させ、停止直前の出力電力Px未満のときは、停電直前の動作電圧V1から電圧下降方向に移動させるので、1ステップ分だけ早く最大出力点に到達することができ、電力系統の安定化に寄与できる。
【符号の説明】
【0056】
11…太陽電池、12…電力変換器、13…変圧器、14…開閉器、15…電力系統、16…電圧検出器、17…電流検出器、18…最大電力追従制御部、19…出力制御部、20…ゲート駆動回路、21…電圧検出器、22…系統状態判定部、23…動作電圧記憶部、24…出力値記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項2】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項3】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値以上のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項4】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値未満のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項1】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項2】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項3】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値以上かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値以上のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧上昇方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【請求項4】
太陽電池で発電した直流を電力変換器で交流に変換し電力系統に供給するようにした太陽光発電設備の制御装置において、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に前記太陽電池の電圧を追従制御させ前記太陽電池の最大出力を得る最大電力追従制御部と、太陽電池が接続された電力系統の電圧を監視し電力系統が停電状態か否かを判定する前記系統状態判定部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の動作電圧を記憶する動作電圧記憶部と、前記系統状態判定部により前記電力系統が停電状態であると判定されたときは停電直前の前記太陽電池の出力値を記憶する出力値記憶部と、前記電力系統が停電状態でないときは前記最大電力追従制御部で得られた最大出力になるように前記電力変換器の出力を制御し前記電力系統が停電状態であるときは前記太陽電池の電圧が前記太陽電池の開放電圧になるように前記電力変換器の出力を制御する出力制御部とを備え、前記電力系統が停電状態から復帰したときは、前記最大電力追従制御部は、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧での再起動時に前記太陽電池の出力値が前記出力値記憶部に記憶した停止直前の出力値未満かどうかを判定し、太陽電池の出力値が停止直前の出力値未満のときは、前記動作電圧記憶部に記憶した停電直前の前記太陽電池の動作電圧から電圧下降方向に移動させ前記太陽電池の電圧を最適動作点に追従制御させることを特徴とする太陽光発電設備の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−101455(P2011−101455A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252892(P2009−252892)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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