説明

太陽電池システム

【課題】動植物の育成に最適な波長の光を必要な光量だけ施設内に導入して余剰な光で発電する可動式の太陽電池システムを提供すること。
【解決手段】太陽電池システム1は、ハウス型の育成施設Hの天井部分に配置された可動太陽電池パネル10(以下、パネル10という)と、壁部分に配置された可動太陽電池パネル20(以下、パネル20という)を備える。パネル10,20は光透過性の基板11と樹脂フィルム13の間に色素増感太陽電池セル12(以下、セル12という)および集電配線15を封入したもので、セル12と集電配線15はストライプ状などの様々な模様状に配置される。この配置パターンを調整して太陽光の透過率を調整することができる。セル12は、光合成に不要な波長成分を吸収して発電し、他の波長成分は透過させて育成施設H内に供給する。パネル10,20はプリーツスクリーン状やルーバー状に動く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物の育成施設に設置させる太陽電池システムに関し、特に、動植物の育成に最適な波長成分および光量の太陽光については育成施設内に導入し、不要な波長成分の光や必要量を超える分の太陽光で発電を行うことができる太陽電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動植物の育成施設において、施設内における水量、光量、通気量、温度などの環境を調整して動植物の育成に適した環境にするために、かなりのエネルギーを必要としていた。育成施設では、水量、光量、通気量、温度などを気候の変化や一日の中での太陽光の強さの変化に対応して調整しなければならない。また、動植物の成育過程に応じた環境の調整も必要である。そこで、育成施設においては、さまざまな環境調整用の設備などが利用されていた。
【0003】
例えば、日焼けや温度上昇による育成障害を防ぐため、寒冷紗が利用されていた。既存品の寒冷紗の遮光率はおおむね10%〜80%の範囲で選択できるが、寒冷紗自体の遮光率は一定である。従って、遮光率を調整するためには、寒冷紗を適切な位置まで手繰りあげたり張り直したりする必要があり、大変な労力がかかる作業であった。このような作業を一日の中での太陽光の変化に合わせて行うのは限界があるので、最も日焼けや温度焼けなどの障害の発生の危険性が高い時間帯に合わせて遮光率を設定しているのが現状である。
【0004】
寒冷紗で光量の調整を行うと、温度調整はなりゆきまかせになる。太陽光が当たると遠赤外線を放射する寒冷紗を用いて保温性を高めることがあるが、この場合、日差しが強いと温度が上がりすぎてしまうことがある。よって、温度焼けを防ぐために育成空間の冷却や強制通気が必要になり、その設備を稼動させるために、電力使用量が増える傾向にあった。寒冷紗による日差しの調節では、このように、太陽光エネルギーが遮光されたり余剰な熱に変換されたりして無駄に消費されるばかりか、温まった育成空間を冷却するために別途電力が消費されるので、エネルギー効率が悪い。よって、地球温暖化対策の面からも問題がある。
【0005】
そこで、近年、無駄に消費されている太陽光エネルギーで必要電力をまかなうために、育成施設の外壁もしくは屋根に、太陽電池を設置することが提案されている。例えば、特許文献1には、天井や壁を構成するパネルの内部に可動式の太陽発電パネルを配列した植物栽培ハウスが記載されている。この植物栽培ハウスでは、太陽電池パネルの傾きを太陽光の入射角に連動させて調整することができるので、可動しない場合よりも発電量を多くすることができる。また、特許文献2には、ガラス張りの温室の屋根材として太陽電池モジュールを使用すること、太陽電池モジュールを光透過性にすること、および、太陽光の透過率が異なる複数の太陽電池パネルを用意して太陽光の透過量を調整することが記載されている。
【特許文献1】特開平8−126438号公報
【特許文献2】特開2002−76421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2では、太陽電池パネルを透過する光量を調整したり、余剰な光を利用して発電することは提案されているものの、育成施設内に供給される太陽光の光量だけでなく、波長成分についても、動植物の育成に適した内容にするという提案はなされていなかった。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、気候などの環境条件の変動に応じて、適宜、動植物の育成に最適な波長の光を必要な光量だけ施設内に導入して余剰な光で発電することができる太陽電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の太陽電池システムでは、
動植物を育成するための育成空間の少なくとも一部を覆うように設置される太陽電池パネルを備えた太陽電池システムであって、
前記太陽電池パネルは、光透過性の基板と、当該基板上に配置された発電素子および集電部を有し、
前記太陽電池パネルの受光面における前記発電素子および前記集電部の配置パターンは、前記受光面に入射する太陽光を、前記育成空間における動植物の育成に必要な光量だけ透過させるように設定されており、
前記発電素子は色素増感太陽電池素子からなり、
当該色素増感太陽電池素子は、太陽光の波長成分のうち、前記育成空間における動植物の育成に必要でない波長成分を吸収する増感色素を有することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明では、光透過性の基板の上に色素増感太陽電池素子を配置して太陽電池パネルを構成している。色素増感太陽電池素子は、透明電極などの光透過性のある材質で形成されており、半導体層に担持された増感色素によって所定の波長成分が吸収されるものの、それ以外の波長成分の光は大部分透過する構造である。本発明では、受光面における発電素子や集電部の配置パターンを適宜設定することにより、動植物の育成に必要とされる光量だけ太陽光を透過させて、育成空間に供給することができる。また、本発明の色素増感太陽電池素子で用いられている増感色素は、特に、動植物の育成に必要でない波長成分(例えば、500〜550nmの中波長成分)の光を良く吸収し、必要な波長成分(例えば、430〜460nmの短波長成分、および、610〜780nmの長波長成分)の光についてはあまり吸収しないものである。
【0010】
このような構成により、太陽光エネルギーのうち、動植物の育成に必要な波長成分の光は育成施設内に供給して活用し、育成にあまり必要ではない波長成分の光は増感色素によって吸収して発電用のエネルギーとして活用できるので、無駄なく太陽エネルギーを活用できる。また、太陽電池パネルの光透過率が適切なレベルになるように構成し、動植物の育成に必要な量以上の太陽光を育成施設内に導入しないようにしているので、余剰な太陽光によって育成施設内の温度が必要以上に上がってしまうことを抑制できる。よって、冷房や通気などの環境調整用のエネルギー消費の増大を抑制できる。これにより、エネルギーコストを削減できる。また、炭酸ガスの排出を削減して地球温暖化を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記発電素子は、前記受光面上において、ストライプ状、井桁状、ドットパターン状を含む規則的な繰り返し模様になるように配置されているとよい。また、前記集電部は、前記発電素子の片側電極面に接続され、前記受光面上において、ストライプ状、井桁状、ドットパターン状を含む規則的な繰り返し模様になるように配置されるか、または、前記受光面全面にわたって薄膜状に形成されているとよい。このように、発電素子および集電部の配置パターンを調整することにより、受光面における発電素子および集電部が配置された部分と隙間部分の面積比率を変えて、太陽電池パネル全体としての光透過率を調整できる。また、発電素子の面積を調整することにより、増感色素による特定の波長成分の光の吸収量を調整し、育成空間に供給する光の量を波長成分ごとに調整できる。
【0012】
本発明において、太陽電池パネルの少なくとも一部は可動であるような構成にするとよい。このようにすると、太陽光の入射方向の変化に追随して受光面を動かすことができる。また、育成空間を覆うように配置されている太陽電池パネル同士の隙間や他の部材との隙間を調整して、通気経路を確保することができる。
【0013】
本発明において、前記太陽電池パネルの少なくとも一部を動かすための駆動装置と、当該駆動装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記育成空間に入射する太陽光の変化に対応して前記太陽電池パネルを動かすように前記駆動装置を自動制御するとよい。また、前記駆動装置を前記制御装置による自動制御と手動制御に切り換えるための切換手段を有するとよい。このように、自動制御で太陽電池パネルを動かすことができれば、育成施設内に太陽光を必要な分だけ導入するための調整作業を手動で行う必要がなくなり、調整作業の手間を削減できる。また、駆動装置を手動制御に切り替えることができれば、不規則な天候の変化や育成スケジュールの変更などに対応して太陽電池パネルを手動で調整できる。
【0014】
より具体的には、本発明において、前記育成空間に入射する太陽光を検出するセンサを備え、前記制御装置は、前記センサの検出信号に基づいて前記駆動装置を自動制御するように構成するとよい。このように、センサを用いれば、不規則な天候の変化に対応して太陽電池パネルの動作を制御できるので、太陽光の供給量の制御をより確実に行うことができる。
【0015】
また、前記制御装置は、季節および時刻による太陽光の入射方向および入射量の変動データを有しており、当該変動データに基づいて前記駆動装置を自動制御するとよい。このように、予め太陽光の変動パターンのデータを有していれば、育成施設における日照の変動をシミュレーションでき、これに基づいて太陽光の導入量の制御を行うことができる。
【0016】
本発明において、前記制御装置は、前記育成空間における動植物の育成スケジュールのデータを有しており、必要な波長成分および光量の太陽光が、必要な時期に育成空間に導入されるように、前記太陽電池パネルを動かす自動制御を行うとよい。このように、育成スケジュールを予め制御プログラムに組み込んでおけば、育成施設内に太陽光を必要な分だけ導入するための調整作業の手間をさらに削減できる。
【0017】
本発明において、前記太陽電池パネルが複数枚一列に配列されて2本の平行なフレーム材の間に架設されており、当該複数枚の太陽電池パネルのそれぞれが、前記フレーム材に直交する回転軸まわりに回転可能に支持された構成にするとよい。また、この様な構成において、前記複数枚の太陽電池パネルのそれぞれの両端を、前記フレーム材に沿って走行するスライダに連結するとよい。このようにすると、太陽電池パネルの受光面の角度を連続的に変えることができ、遮光量や光透過量を調整して育成施設内への太陽光の供給量を調整できる。特に、複数の太陽電池パネルを同期して回転させれば、ブラインドやルーバーのように動かして遮光量や光透過量を調整することができる。また、隣接する太陽電池パネルや他の部材との間に通気用の隙間を形成することができる。また、このような構成では、太陽電池パネルをフレーム材に沿って走行させて1箇所に集めることができるので、太陽電池パネルを1箇所に片付けて育成空間に太陽光を全て取り込んだり、再び育成空間を覆うように太陽電池パネルをセットする作業を自動制御で容易に行うことができる。
【0018】
本発明において、前記太陽電池パネルを支持する2本の平行なフレーム材と、当該2本のフレーム材のそれぞれに沿って走行する複数のスライダと、前記太陽電池パネルが複数枚一列に配列されてプリーツ状に折り畳み可能に連結された連結体を備え、当該連結体は、前記2本の平行なフレーム材の間に、折り畳み時における谷線と前記フレーム材とが直交するように架設されており、前記スライダは、前記連結体の端辺における前記谷線との交差位置の近傍に連結された構成にするとよい。このようにすると、太陽電池パネルをプリーツスクリーン状に開閉でき、太陽電池パネルを折り畳んで片付けて太陽光を全て取り込んだり、再び育成空間を覆うように太陽電池パネルをセットする作業を自動制御で容易に行うことができる。
【0019】
本発明において、前記太陽電池パネルを支持する2本の平行なフレーム材と、当該2本のフレーム材のそれぞれに沿って走行するスライダを備え、前記太陽電池パネルは、巻き取り可能なフレキシブルパネルであり、当該フレキシブルパネルは、前記2本の平行なフレーム材の間に張設され、その一辺が、前記フレーム材と直交する巻き取り軸に取り付けられ、且つ、前記2本のフレーム材のそれぞれに沿って配置された各辺の所定位置に前記スライダが連結されており、前記巻取り軸が正逆回転可能である構成にするとよい。このようにすると、太陽電池パネルをロールスクリーン状に開閉でき、太陽電池パネルを巻き取って片付けて太陽光を全て取り込んだり、再び育成空間を覆うように太陽電池パネルをセットする作業を自動制御で容易に行うことができる。
【0020】
本発明において、前記太陽電池パネルの荷重を前記スライダとの連結部を除く位置において支持するための支持部材が設けられているとよい。このようにすると、太陽電池パネルの荷重による撓みを抑制することができる。
【0021】
本発明において、前記育成空間における通気量、温度、及び湿度の少なくともいずれかを含む育成環境を調整するための環境調整機器を備え、前記環境調整機器および前記太陽電池パネルを動かすための電力として、前記発電素子で発電された電力を使用可能であるとよい。このようにすれば、環境調整機器や太陽電池パネルを動かすための外部電源からの電源供給を減らすことができるので、エネルギー消費の増大を抑制できる。
【0022】
本発明において、前記太陽電池パネルの少なくとも一部が、太陽光の透過率と吸収する波長成分の少なくともいずれかが異なる他の前記太陽電池パネルと交換可能であるとよい。このように、太陽電池パネル自体を交換することができれば、異なる波長域の太陽光を吸収する増感色素を用いた太陽電池パネル(吸収する波長成分が異なる太陽電池パネル)に交換することにより、育成空間内に供給する太陽光の波長成分を変えることができる。また、発電素子の配置パターンや配置面積が異なる太陽電池パネル(透過率が異なるパネル)に交換することができれば、太陽光の供給量の調整可能量が大きくなる。
【0023】
本発明において、前記太陽電池パネルは、吸収する波長成分が異なる複数種類の太陽電池パネルを含み、当該複数種類の太陽電池パネルが、それぞれ独立に作動可能であるとよい。このようにすると、特定の波長成分を吸収する太陽電池パネルだけを動かして、全ての太陽電池パネルに吸収される波長成分のうち、特定の波長成分だけを増減することができる。これにより、波長成分ごとに吸収量を調整できるようになるので、異なる波長成分を必要とする複数種類の動植物に対して、それぞれ最適な波長成分の光を供給できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、動植物の育成に必要とされる光量だけ太陽光を透過させて育成空間に供給し、必要な量以上の太陽光を育成施設内に導入しないようにしているので、余剰な太陽光によって育成施設内の温度が必要以上に上がってしまうことを抑制でき、冷房や通気などの環境調整用のエネルギー消費の増大を抑制できる。また、太陽光エネルギーのうち、動植物の育成に必要な波長成分の光は育成施設内に導入して活用し、育成にあまり必要ではない波長成分の光は増感色素によって吸収して発電用のエネルギーとして活用できるので、無駄なく太陽エネルギーを活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を適用した太陽電池システムの実施の形態について説明する。
【0026】
(太陽電池システムの構成)
図1は、本実施形態の太陽電池システム1を設置した育成施設Hの概略構成を示す斜視図である。太陽電池システム1は、蓄電器2および自動制御盤3を備えており、ハウス型の育成施設H内に設置されている。太陽電池システム1において発電された電気は、太陽電池システム1が備える太陽電池パネル(後述するパネル10,20)を動かすための動力として消費されると共に、配線4により送電され、環境調整機器5の作動用の電力として消費される。また、発電量が使用電力量よりも多いときは、蓄電器2に余剰電力を送って蓄電したり、外部に電力を供給することもできる。
【0027】
自動制御盤3は太陽電池システム1全体を自動制御するためのものであるが、必要に応じてシステム内の装置を手動制御に切り換え可能である。環境調整機器5は、育成施設H内の環境、例えば、通気量、温度、湿度などを調整するための機器であり、育成施設内外の通気を行うための換気装置や送風装置、あるいは温度調整用の冷房装置などの様々な機器が想定される。また、太陽電池システム1は、育成施設H内に設置されたセンサ6を備える。センサ6は、気温検出用の温度センサ6aや、育成施設H内に入射する太陽光を検出する日照センサ6bなどである。センサ6の出力は自動制御盤3に入力される。なお、自動制御盤3は、正確な現在時刻を検出するための電波時計などの計時部を有している。
【0028】
太陽電池システム1は、育成施設H内において全体として矩形断面のトンネル状の空間を形成するように配置されており、トンネル状の空間の天井部分に配置された天井用の可動太陽電池パネル10(以下、パネル10という)と、壁部分に配置された壁面用の可動太陽電池パネル20(以下、パネル20という)を備えている。パネル10およびパネル20によって囲まれるトンネル状の空間が、動植物の育成を行うための育成空間Rである。太陽電池システム1は、パネル10およびパネル20を支持する柱梁状のフレーム30と、パネル10および20を動かすための駆動装置40を備えている。
【0029】
パネル10およびパネル20は、いずれも長方形の板状のパネルモジュールである。パネル10は、柱梁状に組まれたフレーム30における梁部材である2本の平行かつ水平なフレーム材31,32の間に架設されている。一方、パネル20は、床面に対して垂直に設置されており、フレーム材31,32と、床面上においてフレーム材31,32の下方に平行に敷設されたフレーム材33,34との間に架設されている。パネル10およびパネル20は、育成空間Rにおける天井面および左右の壁面に相当する位置に、それぞれ、複数枚を一列に並べて架設されている。
【0030】
天井部分に設置されたパネル10は、隣合うパネル10同士が、隣接する辺(長辺)において連結されており、全体として1つの連結体10Aになっている。この連結体10Aは、連結部において屈曲可能であり、全体としてプリーツ状に折り畳み可能である。図2(a)は連結体10Aの平面図である。この図に示すように、連結体10Aは、折り畳み時における谷線10Bがフレーム材31,32と直交するように架設されている。連結体10Aにおける各パネル10の短辺には、プリーツ状に折り畳んだときに谷線10B側寄りの位置に、支持軸7が回転自在に取り付けられている。この支持軸7は、フレーム材31または32に連結されており、フレーム材31または32に沿ってスライド可能である。つまり、支持軸7はスライダとして機能する。図2(b)は連結体10Aを平面状に伸ばして天井面全体を覆った状態、図2(c)は連結体10Aをプリーツ状に折り畳んで天井の一端側に寄せた状態を示す。
【0031】
支持軸7は、図示しない動力伝達機構によって駆動装置40に連結されている。自動制御盤3からの制御信号に基づいて駆動装置40が作動すると、支持軸7がフレーム材31,32に沿ってスライドする。これにより、連結体10Aは支持軸7と共にフレーム材31,32に沿ってスライドしつつ、プリーツ状に折り畳まれたり、平面状に伸ばされたりする。連結体10Aの折り畳み量や、折り畳んだ連結体10Aを天井部分のどの位置に移動させるかは、自動制御盤3により制御可能である。また、自動制御盤3を手動制御に切り換えることにより、駆動装置40への制御信号を手入力して、自動制御盤3の制御プログラムとは無関係に連結体10Aを作動させることができる。
【0032】
壁面部分に設置されたパネル20は、隣り合うパネル20同士が物理的に連結されていないので、それぞれ独立に動かすことが可能である。図3(a)は、フレーム材31,33の間に架設されたパネル20の正面図である。この図に示すように、各パネル20における短辺(上下の辺)の中央には、それぞれ、支持軸8が固定されている。各支持軸8は各パネル20の中心軸を通っており、フレーム材31または33に回転可能に連結されている。
【0033】
支持軸8は、支持軸7と同様に、図示しない動力伝達機構によって駆動装置40に連結されている。自動制御盤3からの制御信号に基づいて駆動装置40が作動すると、支持軸8がその軸中心まわりに所定角度だけ回転する。これにより、図3(b)に示すように、パネル20が育成空間Rの壁面に対して所定角度だけ傾く。壁面に沿って並んだ複数のパネル20は、同期して回転させることもできるし、それぞれ独立に回転させることもできる。複数の支持軸8を同期させて回転すれば、複数のパネル20をルーバーやブラインドのように動かして遮光量を調整できる。また、各支持軸8をフレーム材31〜34に沿ってスライド可能にすれば、図3(c)に示すように、壁面の一端側にパネル20を重ねて集積し、壁面側から入射する太陽光を全て育成空間Rに導入することもできる。
【0034】
(太陽電池パネルの構成)
次に、パネル10とパネル20の構成について説明する。図4はパネル10(20)の部分断面図である。パネル10とパネル20は、隣り合うパネル間の連結部分やフレーム30との連結部分を除く基本構成は同一である。パネル10は、薄い長方形の板状であり、透明なガラス製などの基板11の上に色素増感太陽電池セル12(色素増感太陽電池素子、発電素子:以下、セル12という)を配列し、その上から、基板11全体を覆うように、接着剤を塗布した透明な樹脂フィルム13を貼り付けてある。基板11と樹脂フィルム13の外周端面は、発電した電力を外部に流すための配線が通る部分を除いて、図示しないシール材などにより密封されている。パネル10(20)の外周には枠材14が取り付けられている。
【0035】
セル12は、陰極側の電極層である透明導電層12a、色素増感半導体層(色素担持層)12b、電解質層12c、および陽極側の電極層である透明導電層12dがこの順に積層された構造である。透明導電層12aには、ITO層やFTO層などの透明導電膜が用いられる。色素増感半導体層12bには、ナノサイズの二酸化チタン(TiO)微粒子をペースト状にして熱処理することにより多孔質膜を形成し、この多孔質膜を増感色素の溶液に浸して、多孔質状の表面に増感色素を担持させたものが用いられる。電解質層12cには、ヨウ素を含む液状の電解質液を絶縁性多孔質層などに含浸させて保持させたものや、あるいはゲル状の電解質などが用いられる。電解質層12cは、電解質液が漏出しないように外周端部が封止されている。透明導電層12dは、ITO層やFTO層などの透明導電膜であり、その電解質層12c側の表面に、白金などの薄い集電層を形成したものが用いられる。
【0036】
セル12は、このような構成により、透明導電層12a側から入射した光が透明導電層12aを透過して色素増感半導体層12bに到達し、色素増感半導体層12bに担持された増感色素に吸収される。吸収された光により色素増感半導体層12bを形成する二酸化チタン(TiO)が励起して透明導電層12a側に電子を放出すると共に、電解質層12cから電子を受け取る。これにより電流が発生し、発電が行われる。
【0037】
本実施形態では、色素増感半導体層12bに担持される増感色素として、ルテニウム錯体などの中波長成分の光を良く吸収する色素が用いられる。ルテニウム錯体は、特に500〜600nmの中波長成分の光を良く吸収する一方、400〜500nmの短波長成分、および、600〜700nmの長波長成分の光についてはあまり吸収しない。400〜500nm、および600〜700nmの波長成分の光は、光合成に必要であるため、動植物(魚を含む)の育成に必要な波長成分である。つまり、ルテニウム錯体を用いると、基板11側から透明導電層12aに入射した光のうち、光合成に必要でない波長成分の光を吸収して発電エネルギーとして利用することができる一方、光合成に必要な波長成分の光はほとんど吸収せず透過させ、パネル10(20)によって遮蔽された空間内に導入することができる。なお、ルテニウム錯体は高価であるため、他の増感色素でこのような特性をもつものを用いれば、より好適である。
【0038】
セル12は、透明導電層12aを基板11側に向けて配置してあるので、パネル10(20)における受光面16は、基板11側の面である。パネル10(20)は、受光面16が育成空間Rの外側を向くように設置される。また、セル12の透明導電層12a,12dには、それぞれ、発電した電気を外部に流すための集電配線(集電部)15(図5参照)が接続されている。なお、図4では集電配線15を省略している。集電配線15は、セル12と共に基板11と樹脂フィルム13との間に封入されている。集電配線15は、透明導電層12a,12dとの接続するための電極を備えており、パネル10(20)内に配列された色素増感太陽電池セル12の全てを直列あるいは並列に接続するように配置されている。本実施形態では、基板11上における色素増感太陽電池セル12および集電配線15の配置が、様々な規則的な繰り返し模様になるような配置になっている。集電配線15は、例えばリード線や金属製電極などの光透過性のない素材で形成することもできるし、金属薄膜などのある程度光透過性のある素材で形成してもよい。
【0039】
パネル10(20)では、セル12や集電配線15(図5参照)が配置されていない隙間に入射した太陽光L1は、そのほとんどが透過して育成空間R内に入射する。一方、セル12が配置された部分に入射する太陽光L2は、増感色素によって吸収される光量分だけ少なくなっている。従って、パネル10(20)全体としての光の透過量は、セル12の配置面積比率が大きいほど小さくなる。また、波長成分ごとの透過量については、増感色素によって吸収される波長成分の光量が、セル12の配置面積が大きいほど小さくなる。
【0040】
図5に、受光面16におけるセル12および集電配線15の配置パターンの例を示す。図5(a)は、色素増感太陽電池セル12を細長い帯状に形成し、これらを一定間隔でストライプ状に配列したものである。帯状のセル12は、単セルでもよいし、複数の色素増感太陽電池セルを1列に並べたセルの集合体として構成してもよい。この場合、集電配線15は、セル12に重ねて配置されており、隣り合うセル12の間には隙間Gが形成されている。図5(b)は、ストライプ状に配置したセル12と直交する方向に、集電配線15を一定間隔で配置して格子状の模様を形成したものである。集電配線15の配列ピッチは、例えば、ストライプのライン方向に並べたセル12の単セルの長さとすることができる。図5(c)は、セル12を格子状に配列したものである。なお、これらの繰り返し模様以外にも、例えば、セル12をドットパターン状に配置したり、直線形ではなく曲線形の帯状のセルを一定間隔で配列したり、などの各種の模様状に配置することもできる。
【0041】
集電配線15については、ストライプ状などの模様状に配置するほか、例えば、セル12の陰極側の電極層に接している基板11の表面全面にある程度光透過性のある金属薄膜を形成して、セル12が配置される面全体を面状の集電部にしてもよい。このようにすれば、セル12の配置パターンの変更に対応して集電配線15の配置を変更する必要がなくなり、且つ、光透過性を確保できる。なお、陽極側の電極層に接続する電極を金属薄膜にしてもよい。
【0042】
セル12および集電配線15の配置パターンの調整を行うことにより、受光面16におけるセル12および集電配線15が配置された部分と隙間部分の面積比率を変えて、パネル10(20)全体としての光透過率を調整できる。また、セル12の面積を調整することにより、増感色素による特定の波長成分の光の吸収量を調整し、育成空間Rに供給する光の量を波長成分ごとに調整できる。
【0043】
(太陽電池システムの動作およびその制御)
太陽電池システム1における自動制御盤3には、育成空間Rへの太陽光の供給量を、予め定められた動植物の育成スケジュールに従って制御するための、パネル10,20の制御プログラムが記憶されている。例えば、自動制御盤3には、育成空間Rで育成される動植物の種類ごとに、どのような光量および波長成分の太陽光をどのようなスケジュールで供給するべきかの目標供給量のデータが記憶されている。また、自動制御盤3には、育成施設Hが建設された緯度および経度、あるいは標高や周囲の地形、建物などの条件を考慮して算出された、太陽光の入射量や入射方向の季節および時刻による変動データが記憶されている。
【0044】
自動制御盤3は、これらのデータに基づき、育成空間Rへの太陽光の供給量ができるだけ目標量に近くなるようなパネル10,20の位置や姿勢(受光面の角度)を算出し、駆動装置40に制御信号を送ってパネル10,20を動かす。パネル10は、プリーツスクリーン状に動かすことができるので、育成空間Rの天井部分を、必要な位置において必要な面積だけ覆うことができる。また、パネル20は、ブラインドやルーバーのように動かすことができるので、必要な量だけ傾けて太陽光を導入することができる。
【0045】
自動制御盤3は、このようなパネル10,20の調整を所定時間ごとに行う。なお、その都度最適なパネル10,20の位置や姿勢を算出せず、あらかじめパネル10,20の位置や姿勢の変動パターンを記憶しておいてもよい。また、予め太陽光の変動データを準備せず、日照センサ6bによって太陽光の変動(入射角や照度、波長成分(色)など)を所定時間ごとに検出し、この検出データに基づき、刻々と変化する太陽光に合わせてパネル10,20の動作を制御することもできる。
【0046】
また、自動制御盤3には、育成空間Rで育成される動植物の種類ごとに、育成空間Rを動植物に最適な温度環境にするための目標温度データと、この目標温度データに従って育成空間Rを温度管理するための制御プログラムが記憶されている。太陽電池システム1は、温度センサ6aを備えているので、温度センサ6aの検出データに基づいて、気温が上がりすぎたときはパネル10(20)を太陽光の遮蔽量が多くなるように動かしたり、環境調整機器5を作動させて通気や冷房などを行って、育成空間Rを目標温度に保つことができる。なお、温度だけでなく湿度や通気量などを目標値にする制御を行ってもよい。
【0047】
なお、動植物の成育が標準的なスケジュールどおりに進まずに育成スケジュールの変更が必要になったときや、急な天候の変化が起こったりした場合には、各装置を自動制御盤3による自動制御から手動制御に切り換えて、手動で制御信号を入力することにより、パネル10,20や環境調整機器5を制御して育成空間Rの環境を調整することもできる。
【0048】
(本実施形態の効果)
本実施形態の太陽電池システムは、以上のように、パネル10および20の受光面におけるセル12や集電配線15の配置パターンが適切に設定されているので、動植物の育成に必要とされる光量だけ太陽光を透過させて、育成空間Rに供給することができる。よって、余剰な太陽光によって育成施設内の温度が必要以上に上がってしまうことを抑制でき、冷房や通気などの環境調整用のエネルギー消費の増大を抑制できる。これにより、エネルギーコストを削減できる。また、炭酸ガスの排出を削減して地球温暖化を抑制できる。
【0049】
また、セル12は色素増感太陽電池セルであるので、太陽光エネルギーのうち、動植物の育成にあまり必要ではない波長成分の光を増感色素によって吸収して発電用のエネルギーとして活用し、育成に必要な波長成分の光(例えば、400〜500nm、および600〜700nmの波長成分の光)は透過させて育成施設内に供給することができる。よって、無駄なく太陽エネルギーを活用できる。
【0050】
本実施形態では、パネル10,20が可動であることにより、太陽光の入射方向の変化に追随して受光面16を動かすことができる。また、育成空間Rを覆うように配置されているパネル同士の隙間や他の部材との隙間を調整して通気経路を確保し、温度調整を行うことができる。よって、動植物の高温障害を抑制できる。
【0051】
本実施形態では、セル12や集電配線15を受光面16上において、ストライプ状、井桁状、ドットパターン状を含む規則的な繰り返し模様になるように配置したことにより、受光面16におけるセル12および集電配線15が配置された部分と隙間部分の面積比率を変えて、パネル10(20)全体としての光透過率を調整できる。また、セル12の面積を調整することにより、増感色素による特定の波長成分の光の吸収量を調整し、育成空間Rに供給する光の量を波長成分ごとに調整できる。
【0052】
本実施形態では、自動制御盤3により、動植物の育成スケジュールに従って自動制御でパネル10,20や環境調整機器5を動かし、必要な太陽光や温度環境を与えることができるので、育成空間R内に太陽光を必要な分だけ導入するための調整作業を手動で行う必要がなく、調整作業の手間を削減できる。また、手動制御に切り替えることができるので、不規則な天候の変化や育成スケジュールの変更などに対応して太陽電池パネルを手動で調整できる。また、センサ6で現在の日照や温度を検出してそのデータに基づいて自動制御を行うことができるので、不規則な天候の変化にも対応でき、太陽光の供給量の制御や温度制御をより適切に行うことができる。
【0053】
本実施形態では、パネル10をプリーツスクリーン状に開閉できるので、パネル10を折り畳んで片付けて太陽光を全て取り込んだり、再び育成空間Rを覆うようにパネル10をセットする作業を自動制御で容易に行うことができる。また、パネル20をブラインドやルーバーのように動かすことができるので、遮光量の調整を自動制御で容易に行うことができる。
【0054】
本実施形態では、環境調整機器5およびパネル10,20を動かすための電力として、セル12で発電された電力を使用できるので、環境調整機器5やパネル10,20を動かすための外部電源からの電源供給を減らすことができ、エネルギー消費の増大を抑制できる。
【0055】
(改変例)
上記実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、例えば、以下のように改変できる。
(1)図6に示すように、育成空間Rの天井部分に、プリーツスクリーン式のパネル10に代えて、巻き取り式の可動太陽電池パネル100を張設してもよい。可動太陽電池パネル100は、例えば、パネル10,20における基板11の代わりにフレキシブルな透明フィルムを用いて形成したフレキシブルパネルである。可動太陽電池パネル100は、フレーム材31,32の間に張設され、その1辺が、フレーム材31,32と直交する巻き取り軸101に取り付けられている。巻き取り軸101は正逆方向に回転可能であり、図示しない動力伝達機構によって駆動装置40に連結されている。可動太陽電池パネル100の自由端側の角部には、フレーム材31,33に沿って走行するスライダ102が取り付けられている。このような構成により、自動制御盤3からの制御信号に基づいて、可動太陽電池パネル100を巻き取ったり再び天井部分に繰り出すことができる。
【0056】
(2)上記実施形態では、波長の調整方法として増感色素による特定波長成分の光の吸収のみを挙げていたが、基板11や樹脂フィルム13、あるいはセル12を構成する透明導電層12a,12dの構成を変えることにより、吸収する波長成分の調整を行うこともできる。例えば、基板11や樹脂フィルム13に金コロイドを分散、もしくは蒸着することにより、長波長成分の光(赤い光)の透過率を短波長成分や中波長成分の光の透過率よりも相対的に高くして、長波長成分の光を重点的に供給することができる。また、金コロイドの蒸着膜の厚さを200Å以上にすることにより、短波長成分の光(青い光)の透過率を相対的に高くして、短波長成分の光を重点的に供給することができる。また、基板11や樹脂フィルム13に緑色の補色である赤紫の色素を含有させることにより、緑色の光(中波長成分の光)を吸収させて赤、青の光(短波長成分と長波長成分の光)のみを透過させることもできる。また、ITO膜などの透明導電層12aあるいは12dの厚さを制御することにより、透過する波長を制御することも可能である。
【0057】
(3)上記実施形態では、光透過性の発電素子である色素増感太陽電池セルを1種類だけ用いていたが、異なる構成の色素増感太陽電池セルを組み合わせて太陽電池パネルを構成してもよい。例えば、ある動物や植物の育成には不要な太陽光の波長成分が、1種類の増感色素では全て吸収することができなかった場合には、異なる増感色素を用いた2種類の発電素子を重ねたセルをガラス基板などの間に封入して太陽電池パネルを作製する。この太陽電池パネルを用いることにより、より適切な波長成分の光を育成空間Rに供給でき、また、より無駄なく太陽エネルギーを活用できる。
【0058】
(4)上記実施形態におけるパネル10,20を、太陽光の透過率や波長成分ごとの吸収量が異なる別の太陽電池パネルと交換可能にしてもよい。例えば、セル12や集電配線15の受光面16における配置パターンが異なる太陽電池パネルや、異なる増感色素を用いた太陽電池パネルと交換可能にする。これにより、育成空間Rに供給する太陽光の光量や波長成分の調整幅を大きくすることができる。
【0059】
(5)上記実施形態におけるパネル10,20として、それぞれ異なる波長成分を吸収する色素増感太陽電池セルを用いた複数種類の太陽電池パネル(例えば、中波長成分のみを吸収する太陽電池パネルと、中波長成分および長波長成分を吸収する太陽電池パネルなど)を組み合わせて用いるとよい。このとき、異なる波長成分を吸収する太陽電池パネルを、それぞれ独立に作動可能にするとよい。これにより、例えば、特定の波長成分を吸収する太陽電池パネルだけを太陽光の入射方向に対して傾けることができる。すなわち、特定の波長成分を吸収する太陽電池パネルだけを動かして、全ての太陽電池パネルに吸収される波長成分のうち、特定の波長成分だけを増減することができる。よって、育成空間Rに供給する太陽光の光量や波長成分のより複雑な調整が可能になる。特に、波長成分ごとに吸収量を調整できるようになるので、異なる波長成分を必要とする複数種類の動植物に対して、それぞれ最適な波長成分の光を供給できるようになる。
【0060】
(6)上記実施形態では、発電素子として色素増感太陽電池素子を用いていたが、光透過性がある他の発電素子を用いても良い。また、波長成分によって透過率が異なる特性があれば、なお好適である。
【0061】
(7)上記実施形態および図6に示す改変例では、パネル10,20,100を両端だけで支持していたが、各パネルの撓みを防止するために、各パネルの中央部分を支持するフレーム(支持部材)をフレーム材31,32と平行に設置して3本のフレームで各パネルを支持してもよい。また、4本以上のフレームで各パネルを支持してもよい。また、支持方法は、フレームの上に載せる方法に限定されず、上から吊って支持する方法でもよい。また、各パネルを駆動するスライダは、必ずしも両端のフレーム上を走行する必要はなく、中央のフレーム上にのみ駆動スライダを設け、両端辺に取り付けられたスライダは駆動力を伝達せず、単にガイド部材としてのみ機能するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】太陽電池システムにおける天井用の可動太陽電池パネルの説明図である。
【図3】太陽電池システムにおける壁面用の可動太陽電池パネルの説明図である。
【図4】可動太陽電池パネルの部分断面図である。
【図5】受光面における色素増感太陽電池セルおよび集電配線の配置パターンである。
【図6】本発明の改変例に係る天井用の可動太陽電池パネルの説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 太陽電池システム
2 蓄電器
3 自動制御盤
4 配線
5 環境調整機器
6 センサ
6a 温度センサ
6b 日照センサ
7 支持軸
8 支持軸
10,20 可動太陽電池パネル(パネル)
10A 連結体
10B 谷線
11 基板
12 色素増感太陽電池セル(セル)
12a,12d 透明導電層
12b 色素増感半導体層
12c 電解質層
13 樹脂フィルム
14 枠材
15 集電配線
16 受光面
30 フレーム
31〜34 フレーム材
40 駆動装置
100 可動太陽電池パネル
101 巻き取り軸
102 スライダ
G 隙間
H 育成施設
R 育成空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物を育成するための育成空間の少なくとも一部を覆うように設置される太陽電池パネルを備えた太陽電池システムであって、
前記太陽電池パネルは、光透過性の基板と、当該基板上に配置された発電素子および集電部を有し、
前記太陽電池パネルの受光面における前記発電素子および前記集電部の配置パターンは、前記受光面に入射する太陽光を、前記育成空間における動植物の育成に必要な光量だけ透過させるように設定されており、
前記発電素子は色素増感太陽電池素子からなり、
当該色素増感太陽電池素子は、太陽光の波長成分のうち、前記育成空間における動植物の育成に必要でない波長成分を吸収する増感色素を有することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池システムにおいて、
前記発電素子は、前記受光面上において、ストライプ状、井桁状、ドットパターン状を含む規則的な繰り返し模様になるように配置されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池システムにおいて、
前記集電部は、前記発電素子の片側電極面に接続され、前記受光面上において、ストライプ状、井桁状、ドットパターン状を含む規則的な繰り返し模様になるように配置されるか、または、前記受光面全面にわたって薄膜状に形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルの少なくとも一部は可動であることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルの少なくとも一部を動かすための駆動装置と、当該駆動装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記育成空間に入射する太陽光の変化に対応して前記太陽電池パネルを動かすように前記駆動装置を自動制御することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽電池システムにおいて、
前記駆動装置を前記制御装置による自動制御と手動制御に切り換えるための切換手段を有することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の太陽電池システムにおいて、
前記育成空間に入射する太陽光を検出するセンサを備え、
前記制御装置は、前記センサの検出信号に基づいて前記駆動装置を自動制御することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記制御装置は、季節および時刻による太陽光の入射方向および入射量の変動データを有しており、当該変動データに基づいて前記駆動装置を自動制御することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記制御装置は、前記育成空間における動植物の育成スケジュールのデータを有しており、必要な波長成分および光量の太陽光が、必要な時期に育成空間に導入されるように、前記太陽電池パネルを動かす自動制御を行うことを特徴とする太陽電池システム。
【請求項10】
請求項4ないし9に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルが複数枚一列に配列されて2本の平行なフレーム材の間に架設されており、当該複数枚の太陽電池パネルのそれぞれが、前記フレーム材に直交する回転軸まわりに回転可能に支持されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項11】
請求項10に記載の太陽電池システムにおいて、
前記複数枚の太陽電池パネルのそれぞれの両端を、前記フレーム材に沿って走行するスライダに連結することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項12】
請求項4ないし9のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルを支持する2本の平行なフレーム材と、当該2本のフレーム材のそれぞれに沿って走行する複数のスライダと、前記太陽電池パネルが複数枚一列に配列されてプリーツ状に折り畳み可能に連結された連結体を備え、
当該連結体は、前記2本の平行なフレーム材の間に、折り畳み時における谷線と前記フレーム材とが直交するように架設されており、
前記スライダは、前記連結体の端辺における前記谷線との交差位置の近傍に連結されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項13】
請求項4ないし9のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルを支持する2本の平行なフレーム材と、当該2本のフレーム材のそれぞれに沿って走行するスライダを備え、
前記太陽電池パネルは、巻き取り可能なフレキシブルパネルであり、
当該フレキシブルパネルは、前記2本の平行なフレーム材の間に張設され、その一辺が、前記フレーム材と直交する巻き取り軸に取り付けられ、且つ、前記2本のフレーム材のそれぞれに沿って配置された各辺の所定位置に前記スライダが連結されており、
前記巻取り軸が正逆回転可能であることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルの荷重を前記スライダとの連結部を除く位置において支持するための支持部材が設けられていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記育成空間における通気量、温度、及び湿度の少なくともいずれかを含む育成環境を調整するための環境調整機器を備え、
前記環境調整機器および前記太陽電池パネルを動かすための電力として、前記発電素子で発電された電力を使用可能であることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルの少なくとも一部が、太陽光の透過率と吸収する波長成分の少なくともいずれかが異なる他の前記太陽電池パネルと交換可能であることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかの項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池パネルは、吸収する波長成分が異なる複数種類の太陽電池パネルを含み、当該複数種類の太陽電池パネルが、それぞれ独立に作動可能であることを特徴とする太陽電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−129686(P2009−129686A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303212(P2007−303212)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(507386807)きそミクロ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】