説明

太陽電池モジュールおよびそれを用いた太陽電池アレイ

【課題】高い強度を備えるとともにひずみの発生を効率的に低減することができる太陽モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル2と、太陽電池パネル2の外周部に配置されたフレームと、太陽電池パネル2の裏面側に配置され前記フレームに渡設された補助フレーム16とを備える。前記フレームは、第1固定部41と、第1固定部41よりも長くかつ第1固定部41と対向する対向部分11aおよび第1固定部41に対向しない非対向部分11bを有する第2固定部42とを有する。補助フレーム16は、太陽電池パネル2の裏面側から見たときに、一端が第2固定部42の非対向部分11bに接続され、中央部が太陽電池パネル2の裏面における第1固定部41と第2固定部42の対向部分11aとで挟まれた第1領域R1以外の第2領域R2を通り、他の一端が、第1領域R1に向かって傾斜するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールおよびそれを用いた太陽電池アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、積雪荷重や風圧荷重を加えられるとひずみを生じ、このひずみにより太陽電池モジュール中の太陽電池素子のクラックや、太陽電池素子とインナーリードの電気的接続部に剥離が生じる可能性がある。このことから荷重に対して強度の高い構造の太陽電池モジュールが求められている。そこで、強度を高めた構造の太陽電池モジュールとして、矩形の太陽電池モジュールであって、その裏面側のフレーム間に補助フレームを架設した太陽電池モジュールが提案されている。(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
一方、太陽電池モジュールは、屋根面などの種々の形状の被設置面における充填率を高めて、被設置面における発電容量の向上が求められている。そこで、台形や三角形の屋根面に、高い充填率で設置できる太陽電池モジュールとして、屋根面の斜辺に沿った傾斜部を有する太陽電池モジュールが提案されている。(例えば、下記の特許文献2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−6625公報
【特許文献2】特開2002−76422公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された矩形の太陽電池モジュールは、中心線に対して線対称な形状である。そのため、荷重が加えられたとき、応力は受光面側から見て中心線に対して線対称に分布し、太陽電池モジュールの変位は中心線の交点で最大となる。このとき、特許文献1に開示されたように、太陽電池モジュールの一辺と平行で前記交点を通るように前記補助フレームを配置することによって、太陽電池モジュールのひずみを低減することができた。
【0006】
しかしながら、特許文献2に示されたような傾斜部を有する太陽電池モジュールは、矩形の太陽電池モジュールと比較して、被設置面に対する固定部分が小さいとともに、非対称に分布したひずみを生じる。このことから、強度を高めるとともに、効率的に太陽電池モジュールのひずみを低減することが求められる。
【0007】
そこで本発明の目的は、傾斜部を有する太陽電池モジュールであって、高い強度を備えるとともにひずみを効率的に低減した、太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの外周部に配置されたフレームと、前記太陽電池パネルの裏面側に配置され前記フレームに渡設された補助フレームとを備える。前記フレームは、被設置面に固定されるとともに略平行に位置して互いに長さが異なる2つの固定部を有している。該2つの固定部は、第1固定部と、該第1固定部よりも長くかつ前記第1固定部と対向する対向部分および前記第1固定部に対向しない非対向部分を有する第2固定部とを有する。前記補助フレームは、前記太陽電池パネルの前記裏面側から見たときに、一端が前記第2固定部の前記非対
向部分に接続され、中央部が前記裏面における前記第1固定部と前記第2固定部の前記対向部分とで挟まれた第1領域以外の第2領域を通り、他の一端が、前記第1領域に向かって傾斜するように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
上述の太陽電池モジュールによれば、略平行に位置し互いに長さが異なる2つの固定部を有する太陽電池モジュールにおいて、太陽電池パネルに非対称に分布したひずみを効率的に低減することができる。これにより太陽電池パネル中の太陽電池素子のクラックや、太陽電池素子とインナーリードとの間の電気的接続部の剥離を低減し、荷重に対して強度の高い太陽電池モジュールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールを示す図であり、(a)は太陽電池モジュールを受光面側から見た平面図を示し、(b)は図1(a)の太陽電池モジュールを裏面側から見た平面図を示し、(c)は図1(a)のA−A’線における断面図を示し、(d)は図1(a)のB−B’線における断面図を示し、(e)は図1(a)のC−C’線における断面図を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュールの太陽電池パネルを示す図であり、(a)は太陽電池パネルを受光面側から見た平面図を示し、(b)は図2(a)を裏面側から見た平面図を示し、(c)は図2(a)のD−D’線における断面図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュールを架台に設置してなる太陽電池アレイを示し、(a)は太陽電池アレイの斜視図を示し、(b)は図3(a)のE−E’線における断面図を示し、(c)は図3(b)のF部の部分拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュールに荷重を加えたときの様子を示すモデル図である。
【図5】比較例として本発明を用いていない太陽電池モジュール(比較例1)および該比較例1の太陽電池モジュールを架台に設置し正圧荷重を加えたときのシミュレーション結果について示す図面であり、(a)は太陽電池モジュール(比較例1)を裏面側から見た平面図を示し、(b)はシミュレーション結果を示す。
【図6】比較例として本発明を用いていない太陽電池モジュール(比較例2)および該比較例2の太陽電池モジュールを架台に設置し正圧荷重を加えたときのシミュレーション結果について示す図面であり、(a)は太陽電池モジュール(比較例2)を裏面側から見た平面図を示し、(b)はシミュレーション結果を示す。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュールを架台に設置し正圧荷重を加えたときのシミュレーション結果を示す図面である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る太陽電池モジュールを示す図面であり、(a)は太陽電池モジュールを裏面側から見た平面図であり、(b)は図8(a)の太陽電池モジュールを架台に設置し荷重を加えたときのシミュレーション結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1実施形態)
<太陽電池モジュール>
本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1について、図1乃至図4を用いて、詳細に説明する。
【0013】
図1(a)および図1(b)に示すように、太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル
2と、太陽電池パネル2の外周部に配置されたフレームと、太陽電池パネル2を裏面側から支持する補助フレーム16とを備えている。フレームは、太陽電池パネル2を保持するものであり、第1フレーム(上辺)12、第2フレーム(下辺)11、第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15を有している。ここで、以下、第1フレーム(上辺)12および第5フレーム(斜辺)15をまとめて第1フレーム部分と称し、第2フレーム(下辺)11を第2フレーム部分とも称する場合がある。また、第1フレーム部分である第1フレーム(上辺)12および第5フレーム(斜辺)15を、それぞれ、平行部および傾斜部とも称する。
【0014】
これらのフレームのうち、第2フレーム(下辺)11および第1フレーム(上辺)12が、被設置面に固定され、第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15は被設置面に固定されない。
【0015】
まず、図2を用いて、本実施形態に係る太陽電池モジュール1に用いられる太陽電池パネル2について、説明する。
【0016】
図2に示すように、太陽電池パネル2は、平面視したときに五角形、具体的には、矩形の一角を切り落として得られる斜辺2gを有する五角形の形状である。以下で太陽電池パネル2を図2(b)のように配置したときに、下側に位置する辺を下辺2c、上側に位置する辺を上辺2d、右側に位置する辺を右辺2e、左側に位置する辺を左辺2f、前述の斜辺を斜辺2gと呼ぶものとする。
【0017】
太陽電池パネル2は、受光面2a側から順に、基板を兼ねる透光性基板3と、熱硬化性樹脂よりなる一対の充填材4と、一対の充填材4に周囲を保護され互いにインナーリード5で電気的に接続された複数の太陽電池素子6と、裏面を保護する裏面保護材7と、裏面保護材7に接着され出力を外部に取り出すための端子ボックス8とを備えている。
【0018】
また、太陽電池パネル2は、主として光を受光する受光面2aとこの受光面2aの裏面に相当する非受光面2bとを有している。本実施形態においては、受光面2aは透光性基板3の一主面であり、非受光面2bは、裏面保護材7の一主面である。なお、非受光面2bは、全く受光しないわけではなく、例えば、裏面保護材7および太陽電池素子6と裏面保護材7との間に位置する充填材4が透光性を有する材質で形成することにより、非受光面2b側から入射される光の一部を受ける形態であってもよい。
【0019】
透光性基板3は、太陽電池モジュール1の基板として機能し、例えば、ガラスやポリカーボネート樹脂などからなる光透過率の高い材料からなる。
【0020】
一対の充填材4は、太陽電池素子6を封止する機能を有し、例えば、熱硬化性樹脂よりなる。
【0021】
複数の太陽電池素子6は、一対の充填材4に周囲を保護され、互いにインナーリード5で電気的に接続されている。太陽電池素子6は、例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等からなる平板状のものが用いられる。このようなシリコン基板を用いる場合は、インナーリード5で隣接するシリコン基板同士を電気的に接続している。また、太陽電池素子6には、例えば、薄膜太陽電池、カルコパイライト系太陽電池(例えば、CIGS(Cu(In,Ga)Se)、CISS(Cu(In,Ga)(Se,S)およびCIS(CuInS)などを含む)、CdTe太陽電池または結晶シリコン基板上に薄膜アモルファスを形成した太陽電池等を用いてもよい。
【0022】
裏面保護材7は、太陽電池モジュール1の裏面を保護する機能を有し、例えば、ガラス
やポリカーボネート樹脂、またはポリビニルフルオライド(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、或いは、これらの2種以上を積層した樹脂よりなる。
【0023】
端子ボックス8は、裏面保護材7に接着され、複数の太陽電池素子6から得られた出力電力を外部に取り出す機能を有している。
上述したように、太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル2、フレームおよび補助フレーム16を備えている。
【0024】
図1に示すように、太陽電池モジュール1において、太陽電池パネル2の下辺2cを第2フレーム(下辺)11で保護し、上辺2dを第1フレーム(上辺)12で保護し、右辺2eを第3フレーム(右辺)13で保護し、左辺2fを第4フレーム(左辺)14で保護し、斜辺2gを第5フレーム(斜辺)15で保護している。そして、太陽電池パネル2の非受光面2bを第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12との間に渡設された補助フレーム16で支持している。これら第1乃至第5フレームは、例えば、その当接部でネジにより互いに固定される。
【0025】
図1(c)および図1(d)に示すように、第2フレーム(下辺)11および第1フレーム(上辺)12は、それぞれ、その長手方向に直交する断面において、太陽電池パネル2を嵌入することができる嵌合溝17を有する。第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15においても同様に、嵌合溝17が設けられている。太陽電池パネル2が、各フレームの嵌合溝17に嵌入することで、太陽電パネル2は各フレームに固定されて保護される。
【0026】
一方、図1(e)に示すように、補助フレーム16は、長手方向に直交する断面から見ると略H字型の形状を有する。
【0027】
また、図1(b)に示すように、第2フレーム(下辺)11は、第1フレーム(上辺)12よりも長い。そして、上述したように、第1フレーム(上辺)12および第2フレーム(下辺)11は、被設置面に固定されるフレームであり、全長にわたり固定されることから、互いに異なる長さの固定部を有している。具体的には、第1フレーム(上辺)12は、被設置面に固定される第1固定部41を有しており、第2フレーム(下辺)11は、被設置面に固定されるとともに第1固定部41よりも長い第2固定部42を有している。本実施形態においては、第1フレーム12および第2フレーム(下辺)11のいずれも、全長に渡って被設置面に固定されるため、第1固定部41は、第1フレーム(上辺)12そのものであり、第2固定部42は、第2フレーム(下辺)11そのものである。そして、第2固定部42は、第1固定部41と対向する対向部分11aと、第1固定部41と対向しない非対向部分11bとを有している。本実施形態においては、第2固定部42、すなわち、第2フレーム(下辺)11は、1つの対向部分11aと非対向部分11bとを有している。
【0028】
以下で第2フレーム(下辺)11のうち、第1フレーム(上辺)12と対向する部分を対向部分11aとよび、第1フレーム(上辺)12に対向しない部分を非対向部分11bと呼ぶ。このとき、太陽電池パネル2の裏面のうち、第1固定部41と第2固定部42の対向部分11aとで挟まれた領域を第1領域R1とし、第1領域R1以外の領域を第2領域R2とする。
【0029】
また、非対向部分11bのうち、対向部分11aに近接する端部を第1端部11cと呼び、対向部分11aから離れた端部を第2端部11dと呼ぶ。そして、第5フレーム(斜辺)15のうち、第1フレーム(上辺)12と当接する部分を第3端部15aと呼び、第
4フレーム(左辺)14と当接する部分を第4端部15bと呼ぶ。さらに、第2フレーム(下辺)11と当接する補助フレーム16の一端を第1当接部(下)16aと呼び、補助フレーム16の他端を第2当接部(上)16bと呼ぶ。
なお本実施形態において、補助フレーム16の一端(第1当接部16a)が、第2フレーム(下辺)11(第2固定部42)の非固定部分11bに接続されている。そして、補助フレーム16の他の一端(第2当接部16b)が、第1領域R1に向かって傾斜するように、補助部材16が配置されており、補助フレーム16は第2当接部(上)16bにおいて第1フレーム(上辺)12と当接する。具体的には、補助フレーム16の他の一端(第2当接部(上)16b)は、前記一端の第2固定部42への接続位置よりも第1領域R1に近い接続位置で第1固定部41に接続されている。そして、補助フレーム16の中央部は、第2領域R2を通っている。ここで、中央部は、例えば、フレームに接続された端部以外の部分をいい、本発明においては、実質的には、この中央部の少なくとも一部が第2領域R2を通っていればよい。
【0030】
より具体的には、本実施形態においては、このような補助フレーム16の第1当接部(下)16aは、第2フレーム(下辺)11の非対向部分11bに位置する。そして、補助フレーム16の第2当接部(上)16bは、第1フレーム(上)12に位置する。
【0031】
さらに、本実施形態においては、第2固定部42(第2フレーム(下辺)11)と補助フレーム16のなす角度を角度θ1とし、第2固定部42(第2フレーム(下辺)11)と第5フレーム(斜辺)15のなす角度を角度θ2としたとき、θ1とθ2は下記の関係を有する。なおここで、角度θ2は、第2固定部42と傾斜部のなす角度とも言い換えられる。
0<θ2<θ1<90°
上述した第1フレーム(上辺)12、第2フレーム(下辺)11、第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14、第5フレーム(斜辺)15および補助フレーム16は、例えば、アルミニウムの押し出し成形や、鋼板のロール成形により製造することができる。
【0032】
なお、補助フレーム16の断面形状は、図1(e)に示すH型形状以外に、例えば、I型、T型、L字型、三角型の形状、または、角管、丸管形状など用途に合せて適宜選択するとよい。
【0033】
<太陽電池アレイ>
以下、上述した第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1を用いた太陽電池アレイ20について、詳細に説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る太陽電池アレイ20は、複数の太陽電池モジュール1と、太陽電池モジュール1のフレームを被設置面に固定する架台(固定部材)21とを備えている。具体的には、太陽電池アレイ20において、複数の太陽電池モジュール1が、架台21上に支持されて被設置面に固定されている。
【0034】
このとき、第1フレーム(上辺)12および第2フレーム(下辺)11は、それぞれ、所謂、屋根の流れ方向に垂直な方向に沿って配置され、第3フレーム(右辺)13および第4フレーム(左辺)14は、それぞれ、所謂、屋根の流れ方向に沿って配置される。
【0035】
そして、上述したように、本実施形態においては、図3に示すように、架台21は、太陽電池モジュール1の第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12とを支持する。すなわち、第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12とが被設置面に固定されるフレームである。なお、このとき、第4フレーム(左辺)14と第5フレーム(斜辺)15は、第2フレーム(下辺)11および第1フレーム(上辺)と接合された側の
一端の端部のみが架台で支持されるものの、他の部分は架台で支持されていない。
【0036】
以上、本実施形態に係る太陽電池モジュール1においては、裏面側から見たときに、補助フレーム16が、一端が第2固定部42の非対向部分11bに接続され、中央部が第2領域R2を通り、他端が第1領域に向かって傾斜するように配置されている。これにより、略平行に位置して互いに長さが異なる2つの固定部を有する太陽電池モジュール1において、応力が一様に分布せず、ひずみが生じ易い非対向部分11bに対応する第2領域R2に補強フレーム16が配置されることとなる。その結果、ひずみを効率的に低減することができる。
【0037】
より具体的には、太陽電池パネル2の左辺2fと斜辺2gが形成するコーナー部2h付近では、形状が不連続に変化していることから積雪荷重や風圧荷重などの外力が加わったとき、応力が一様に分布しない。また、第2フレーム(下辺)11および第1フレーム(上辺)12とが架台21で支持されるのに対して、第4フレーム(左辺)14と第5フレーム(斜辺)15とは、架台21で支持されていない。このことから、図4に示すように、荷重が加わると第5フレーム(斜辺)15の変位は、第3端部15aからの距離に比例して大きくなり、正圧荷重が加わった時は第5フレーム(斜辺)15は下方への変位を生じる。このためコーナー部2h付近で最もひずみが大きくなりやすい傾向にある。
【0038】
ここで、図1(b)に示すように、本実施形態に係る太陽電池モジュール1においては、第5フレーム(斜辺)15へ並走するように、補助フレーム16が、第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12との間に渡設されている。これにより、ひずみを効率的に低減することができる。
【0039】
以下でひずみを低減するメカニズムについてより詳細に述べる。
【0040】
第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12とは、架台21で支持されていることから、第4フレーム(左辺)14や第5フレーム(斜辺)15に比較して変位を生じにくい。そして、本実施形態においては、補助フレーム16は、架台21で支持された第2フレーム(下辺)11と第1フレーム(上辺)12との間に架設されていることから、同様に変位を生じにくい。
【0041】
さらに、補助フレーム16は、前述のように0<θ1<θ2<90°の関係を満たすように、第5フレーム(斜辺)15と並列に配置されている。このことから、補助フレーム16は第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15とで支持する太陽電池パネル2の支点間距離を小さく保つことができる。これにより太陽電池パネル2のひずみをさらに低減することができる。
【0042】
また後でシミュレーション結果を用いて述べるように、太陽電池パネル2のひずみはコーナー部2h近傍で大きくなりやすい傾向にある。本実施形態においては、補助フレーム16が、上述したように、第2領域R2を通り太陽電池パネル2のコーナー部2h近傍を支持する。これにより、さらに太陽電池パネル2のひずみを低減することができる。
【0043】
なお、補助フレーム16の第2当接部(上)16bは、図1(b)に示すように、第1フレーム(上辺)11の中点よりも第3端部15a側に位置してもよい。これにより支点間距離より小さくしてコーナー部2hのひずみを低減することができる。
【0044】
以下で上述した本実施形態に係る太陽電池モジュール1のひずみ低減効果について、正圧負荷を与えた際の、太陽電池モジュール1のシミュレーション結果と、比較例の太陽電池モジュールのシミュレーション結果とを用いて説明する。
【0045】
ここで、比較例の太陽電池モジュールとして、2つの太陽電池モジュールを用いてシミュレーションを行った。まず比較例の太陽電池モジュール30(比較例1)と太陽電池モジュール31(比較例2)の各構成と、ぞれぞれの太陽電池モジュールについてのシミュレーション結果を説明する。
【0046】
太陽電池モジュール30(比較例1)は、図5(a)に示すように、太陽電池パネル2の外周に第2フレーム(下辺)11、第1フレーム(上辺)12、第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15のみを設け、補助フレーム16を設けていないものである。
【0047】
一方、太陽電池モジュール31(比較例2)は、図6(a)に示すように、太陽電池パネル2の外周に第1フレーム(上辺)12、第2フレーム(下辺)11、第3フレーム(右辺)13、第4フレーム(左辺)14および第5フレーム(斜辺)15を設けている。そして、補助フレーム16が、第1フレーム(下辺)11と第2フレーム(上辺)12とに渡設されており、平面視したときに第1フレーム(下辺)11と直交するように配置されている。
【0048】
なお、太陽電池モジュール1、太陽電池モジュール30(比較例1)および太陽電池モジュール31(比較例2)は、外形状および各部材の材質や寸法など、補助フレーム16の有無および補助フレーム16の配置位置以外の他の構成については、全て同様の構成である。
【0049】
まず、太陽電池モジュール30(比較例1)に正圧荷重を加えた場合のシミュレーション結果について説明する。なお、図5(b)は、ひずみの分布を示す図である。後述する図5(b)、図7および図8(b)も同様に、各対応する太陽電池モジュールにおけるシミュレーション結果であり、ひずみの分布を示す図である。
【0050】
図5(b)に示すように、太陽電池モジュール30(比較例1)においては、太陽電池パネル2のコーナー部2h付近に大きいひずみが生じることが分かる。そして、ひずみの最大値は、約700μであった。これは図4を用いて前述のしたように、第3端部15aから遠ざかるのに比例して、第5フレーム(斜辺)15のたわみが大きくなったためと考えられる。
【0051】
次に、太陽電池モジュール31(比較例2)に正圧荷重を加えた場合のシミュレーション結果について説明する。
【0052】
図6(a)に示すように、太陽電池モジュール31(比較例2)においては、第5フレーム(斜辺)15の中点と第2フレーム(下辺)11との間を、第2フレーム(下辺)11と直交するように補助フレーム16が渡設されている。
【0053】
このような太陽電池モジュール31(比較例2)においては、図6(b)に示すように、太陽電池モジュール30(比較例1)と比較してひずみが低減されているものの、第5フレーム(斜辺)15と補助フレーム16との接合部付近において大きいひずみが生じることが分かる。本比較例2において、ひずみの最大値は約350μであった。これは第2当接部16bが、第3端部15aと離間していることから、正圧荷重を加えられた際に、第5フレーム(斜辺)15とともに下方へ変位し、上記第2当接部16b付近で屈曲を生じ、ひずみを十分に低減できないためと考えられる。
【0054】
以上のように太陽電池モジュール30(比較例1)および太陽電池モジュール31(比
較例2)は、最大ひずみが大きいため、太陽電池素子6のクラックや、太陽電池素子6とインナーリード5の電気的な接続部の剥離が生じる可能性が高いことがわかった。
【0055】
次に、本発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1のシミュレーション結果について説明する。
【0056】
前述の比較例1および比較例2の場合と同様の条件にて、太陽電池モジュール1に荷重を加えるシミュレーションを行ったところ、太陽電池パネル2のひずみの最大値はコーナー部2h付近で生じ、その値は170μであった。これにより、本実施形態に係る太陽電池モジュール1においては、大幅にひずみを低減できることがわかった。これにより、太陽電池素子6におけるクラックの低減が図れ、太陽電池素子6とインナーリード5との電気的接続の信頼性が高まる。
【0057】
なお、本実施形態においては、図1(b)に示すように、太陽電池モジュール1として左側にのみ斜辺2gを有する形状の太陽電池モジュールを例示したが、左側の斜辺2gに対して線対称で右側に斜辺を有する形状の太陽電池モジュールであっても好適に上述した効果を得ることができる。なお、このような形態においては、第2フレーム(下辺)11は、1つの対向部分11aと、該対向部分11aの両側に位置する2つの非対向部分11bとを有する。
【0058】
また、本実施形態においては、図1(b)に示すように、補助フレーム16の他の一端は第1フレーム(上辺)12の中央部分と当接し、補助フレーム16の一端は第2フレーム(下辺)11の対向部分11bの中央部分と当接している形態を例示した。すなわち、第2当接部16bは第1フレーム(上辺)12の中央部分に位置し、第1当接部16aは第2フレーム(下辺)11の中央部分に位置している形態を例示した。しかしながら、第1当接部16aおよび第2当接部16bは、このような位置に限定されない。例えば、第1当接部16aが対向部分11bの第2端部11dに位置し、第2当接部16bが第1フレーム(上辺)12の第5フレーム(斜辺)15側端部、すなわち、第5フレーム(斜辺)15の第3端部15aに位置している形態であってもよい。このような形態においては、応力緩和およびひずみを低減する効果が高まる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る太陽電池モジュール101について、図8を用いて詳細に説明する。
【0060】
本実施形態に係る太陽電池モジュール101は、補助フレーム16の配置位置において、より具体的には、補助フレーム16が第2フレーム(下辺)11と第5フレーム(斜辺)15との間に渡設された点で、第1実施形態と相違する。
【0061】
このように補助フレーム16の第2当接部(上)16bは、必ずしも第1フレーム(上辺)12上に位置する必要はなく、第5フレーム(斜辺)15上に位置してもよい。このような形態であっても、上述した第1の実施形態と同様に、太陽電池モジュール101の強度を高めるとともに、ひずみを効率的に低減することができる。特に、本実施形態においては、第5フレーム(斜辺)15に補助フレーム16が渡設されるため、補助フレーム16の寸法を小さくすることができる。そのため、本実施形態においては、太陽電池パネル2におけるひずみを低減する効果および部材コストを低減する効果の両方を兼ね備えることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、図8(a)に示すように、第2フレーム(下辺)11上において、非対向部分11bの第1端部11cと第1当接部(下)16bとの間の距離D
1と、非対向部分11bの第2端部11dと第1当接部(下)16aとの間の距離D2は下記の関係にある。
【0063】
D1>D2
このように、第2フレーム(下辺)11の非対向部分11bにおいて第1当接部(下)16aの位置が、「D1>D2」の関係にあることにより、補助フレーム16と第5フレーム(斜辺)15、および補助フレーム16と第4フレーム(左辺)14で支持される太陽電池パネル2の支点間距離をより小さくすることができる。これにより太陽電池モジュール1に荷重が負荷された時に太陽電池パネル2に生じるひずみをより低減することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る太陽電池モジュール101おいては、第5フレーム(斜辺)15上の第3端部15aと第2当接部(上)16aとの間の距離D3と、第4端部15bと第2当接部(上)16aとの間の距離D4は下記の関係にある。
【0065】
D3<D4
このように、第5フレーム(斜辺)15上の第2当接部(上)16bの位置が「D3<D4」の関係にあることにより、第2当接部(上)16bは第5フレーム(斜辺)15上の第3端部15a近傍に位置する。このように配置された第2当接部(上)16bは第3端部15aに近いことから、第2当接部(上)16bの位置における第5フレーム(斜辺)15の変位は小さい。これにより第5フレーム(斜辺)15に補助フレーム16を架設した場合であっても、太陽電池パネル2のコーナー部2h付近のひずみを効率的に低減することができる。
【0066】
さらに補助フレーム16を第5フレーム(斜辺)15に渡設したことにより、補助フレーム16の長さを短くすることができ、少ない原材料で第1実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、「D3<D4」の関係を満たすように補助フレーム16が配置されることにより、ひずみ低減する効果および材料を削減する効果をより好適に兼ね備えることができる。
【0067】
次に本実施形態に係る太陽電池モジュール101のシミュレーション結果について、図8(b)を用いて説明する。
【0068】
前述の比較例1、比較例2および太陽電池モジュール1の場合と同様の条件にて、太陽電池モジュール101に荷重を加えるシミュレーションを行った。その結果、太陽電池パネル2のコーナー部2h付近で生じるひずみの最大値は150μであった。これにより本実施形態に係る太陽電池モジュール101においては、効率的にひずみを低減できることが明らかになった。
【0069】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。また、本発明は上述した実施形態の種々の組合せを含むものであることは言うまでもない。
【0070】
例えば、上述の実施形態においては、いずれも五角形状の太陽電池モジュールを例示したが、太陽電池モジュールの外形はこれに限らない。例えば、四角形状の太陽電池モジュールであってもよい。このような場合、略平行に位置して互いに長さが異なる2つの固定部は、互いに対向する2辺に設けられ、その2つの固定部が上述した構成を備えることで、上記効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、101:太陽電池モジュール
2:太陽電池パネル
2a:受光面
2b:非受光面
2c:下辺
2d:上辺
2e:右辺
2f:左辺
2g:斜辺
2h:コーナー部
3:透光性基板
4:充填材
5:インナーリード
6:太陽電池素子
7:裏面保護材
8:端子ボックス
11:第2フレーム(下辺)
11a:対向部分
11b:非対向部分
11c:第1端部
11d:第2端部
12:第1フレーム(上辺)
13:第3フレーム(右辺)
14:第4フレーム(左辺)
15:第5フレーム(斜辺)
15a:第3端部
15b:第4端部
16:補助フレーム
16a:第1当接部(下)
16b:第2当接部(上)
17:嵌合溝
20:太陽電池アレイ
21:架台
30:太陽電池モジュール(比較例1)
31:太陽電池モジュール(比較例2)
41:第1固定部
42:第2固定部
R1:第1領域
R2:第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルと、
該太陽電池パネルの外周部に配置されたフレームと、
前記太陽電池パネルの裏面側に配置され前記フレームに渡設された補助フレームとを備え、
前記フレームは、被設置面に固定されるとともに略平行に位置して互いに長さが異なる2つの固定部を有しており、
該2つの固定部は、第1固定部と、該第1固定部よりも長くかつ前記第1固定部と対向する対向部分および前記第1固定部に対向しない非対向部分を有する第2固定部とを有し、前記補助フレームは、前記太陽電池パネルの前記裏面側から見たときに、一端が前記第2固定部の前記非対向部分に接続され、中央部が前記裏面における前記第1固定部と前記第2固定部の前記対向部分とで挟まれた第1領域以外の第2領域を通り、他の一端が、前記第1領域に向かって傾斜するように配置されている、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記フレームは、前記第1固定部を有している第1フレーム部分と、前記第2固定部を有している第2フレーム部分とを備え、
前記第1フレーム部分は、前記第1固定部を有する平行部と、該平行部に接続するとともに前記裏面側から見たときに前記第2フレーム部分の前記第2固定部に対して傾斜して配置される傾斜部とを有しており、
前記裏面側から見たときに、前記第2固定部に対する前記補助フレームの傾斜角度θ1は、前記第2固定部に対する前記傾斜部の傾斜角度θ2よりも大きい、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記補助フレームは、前記第2固定部の前記非対向部分から前記傾斜部に向かって渡設されている、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第2固定部は、前記対向部分および前記非対向部分を1つずつ有しており、
前記非対向部分は、前記対向部分に近接する第1端部と、該第1端部よりも前記対向部分から離れた第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に位置して前記補助フレームに当接する第1当接部とを有しており、
前記非対向部分において、前記第1端部と前記第1当接部との距離D1は、前記第2端部と前記第1当接部との距離D2よりも大きい、請求項2または3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記平行部に近接する第3端部と、該第1端部よりも前記平行部から離れた第4端部と、前記第3端部と前記第4端部との間に位置して前記補助フレームに当接する第2当接部とを有しており、
前記傾斜部において、前記第3端部と前記第2当接部との距離D3は、前記第4端部と前記第2当接部との距離D4よりも小さい、請求項3または4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記補助フレームは、前記第2フレーム部分の前記非対向部分から前記平行部に向かって渡設されている、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
前記フレームを前記被設置面に固定する固定部材とを備えており、
前記2つの固定部は、前記固定部材を介して前記被設置面に固定される、太陽電池アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77693(P2013−77693A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216535(P2011−216535)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】