太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法、並びに屋根構造
【課題】屋根部材又は屋根下地上にクギやネジ等を打ち込むことによって固定しても、雨漏りや部材の腐食等の問題が発生しない太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法を提供することである。
【解決手段】屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具1であり、締結要素を挿通可能な取付け孔12が設けられており、取付け孔12に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、前記取付け孔12がパテ状の封止材15で密栓されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具を提供する。
【解決手段】屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具1であり、締結要素を挿通可能な取付け孔12が設けられており、取付け孔12に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、前記取付け孔12がパテ状の封止材15で密栓されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを屋根構造上に載置するための取付け具、太陽電池モジュールを屋根に取付ける取付け方法、太陽電池モジュールを取付けた屋根構造に関するものであり、より詳細には、雨漏りの発生を防止可能な太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法、並びに屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと端子その他の付属品を一体化したものであり、太陽光を受けて電力を発生させることができる。
近年、このような太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に敷き詰めて設置し、家庭で使用する電力を太陽電池モジュールが発生する電力で賄う太陽光発電システムを採用する家庭が増加しつつある。
【0003】
ここで太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置する方策として代表的なものに、以下の2つの方策が挙げられる。まず第1の方策は、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせ、屋根下地に敷設した瓦と太陽電池モジュールを置換する方策である。そして第2の方策は、スレート瓦等が敷設された屋根の上にさらに太陽電池モジュールを設置する方策である。
【0004】
第2の方策を具体的に説明すると、公知のスレート屋根や金属板による屋根等の屋根上に取付け金具を設け、当該取付け金具を介して太陽電池モジュールを取付けるものである。具体的には、まず木材その他の材料で屋根の傾斜形状を作り、その上に板張りをすると共に防水シートを設置する等によって屋根下地構造を作り、その上にスレート瓦や金属板等の屋根部材を平面的に並べる。こうして完成した基礎屋根構造に対して屋根部材にドリルで孔を開け、屋根部材及び防水シートにネジ又はクギ等を貫通して下地の板張りに打ち込み、取付け金具を固定する。そして取付け金具に太陽電池モジュールをネジ止めすることにより屋根上に太陽電池モジュールを設置する。
【0005】
しかしながらこのように太陽電池モジュールを設置すると、屋根部材にドリルで孔を開けてしまうことにより、屋根部材だけでなく屋根下地の防水シートまでにも孔が開いてしまう。また場合によっては、下地の板にまで貫通孔が開いてしまう可能性がある。そしてこれらの孔から雨水や雪溶け水といった屋根上の水が侵入してしまうことにより、雨漏りや部材の腐食等の問題が発生してしまう虞がある。
【0006】
そこでこのような雨漏りを防ぐ技術として、例えば、特許文献1に開示されている設置装置が知られている。特許文献1に開示されている設置装置は、金属板の一部を挟持することで屋根上に固定される止め具を有し、止め具によって支持部材を屋根上に固定し、その支持部材で太陽電池モジュールを屋根上に支持するものである。即ち特許文献1に開示されている設置装置は、金属板の一部を挟持して止め具を屋根上に固定するので、屋根部材にネジ又はクギ等を挿通するための貫通孔を設けなくてよい。そのため貫通孔からの水の侵入が発生せず、雨漏り等の問題を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−57397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に開示されている設置装置では、屋根部材の一部を挟み込んで止め具を固定するという構造上、クギやネジ等を下地の板張りに打ち込んで止め具を固定する場合に比べて、固定する力が脆弱になってしまうという問題がある。
【0009】
そこで本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、クギやネジ等を下地の板張りに打ち込んで止め具を固定しても雨漏りや部材の腐食等の問題が発生しない太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具であり、締結要素を挿通可能な取付け孔が複数設けられており、取付け孔に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、前記取付け孔に粘性を有する封止材が配されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具である。
【0011】
ここで締結要素とは、ネジやクギ等の上位概念である。
本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、複数の取付け孔に締結要素を挿通して取付けるため、屋根に対する強固な取付けが可能となっている。また、本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、取付け孔内に粘性を有する封止材が配されているため、締結要素を取付け孔に挿通する際に、屋根部材に形成された貫通孔に粘性を有する封止材が押し込まれる。つまり、太陽電池モジュールの取付け具から押し出された封止材が屋根部材の貫通孔を隙間なく塞ぐ。このことにより、太陽電池モジュールの取付け具の外側表面側から屋根部材側への水の進入や、屋根部材より屋根下地側への水の侵入を阻止することができる。そのため、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題を確実に阻止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記取付け孔の開口が形成される面に屋根保護材が取付けられており、当該屋根保護材は複数の貫通孔を有しており、前記取付け孔の開口と前記貫通孔の開口が重なりあう状態で配されるとともに、前記封止材が前記貫通孔に配されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0013】
かかる構成によると、太陽電池モジュールの取付け具と屋根部材又は屋根下地との間に屋根保護材を設けることができるので、太陽電池モジュールの取付け具を屋根上に取付ける際に屋根部材や屋根下地が傷つけられることが無い。そのことにより、屋根部材や屋根下地が傷つけられた部分から劣化し、劣化した部分から雨水等の水が侵入するという問題を阻止できる。
さらに、取付け孔と連なる位置に屋根保護材の貫通孔が配されているため、封止材を取付け孔のみならず、貫通孔にも配することができる。つまり、屋根保護材を設けない場合に比べて、より多くの封止材を配することができる。
これらのことから、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題をより確実に阻止できる。
なお、上記した「屋根保護材の貫通孔」は孔状のものに限らず、例えば屋根保護材を貫通する切れ目等であってもよい。しかしながら、貫通孔にするとより多くの封止材を配することができるため望ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記封止材は前記取付け孔の開口と貫通孔の開口の少なくともいずれかからはみ出した状態でこれらを密栓することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0015】
封止材は粘度が高い又は表面張力の強い封止材を採用する等により、取付け孔や貫通孔の開口から溢れた状態で配されることが望ましい。また、取付け孔や貫通孔を密栓するように配されることが望ましい。このようにすると、より多量な封止材を配することができるため、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題をより確実に阻止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記封止材は合成樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールの取付け具に使用される封止材は、合成樹脂材であることが望ましい。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記屋根保護材は弾性圧縮可能であり、圧縮状態で止水性を有するものであって、取付け時に屋根部材に接触することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0019】
かかる構成によると、雨漏りや屋根下地側への水の侵入をより確実に阻止できる。具体的に説明すると、太陽電池モジュールの取付け具と屋根部材との間に位置する屋根保護材は、太陽電池モジュールの取付け具を屋根部材上に取付けたとき、太陽電池モジュールの取付け具によって屋根部材側へ押圧されて圧縮された状態になる。ここで、本発明の屋根保護材は圧縮された状態において止水性を有するため、屋根保護材と屋根部材との間に水が浸入しない。したがって、屋根保護材の縁部分より内側に位置する貫通孔に水が到達するということがなく、雨漏りや屋根下地側への水の侵入をより確実に阻止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け具を使用して複数の屋根部材が載置された基礎屋根構造を有する建屋に太陽電池モジュールを取付ける取付け方法であって、封止材が配された前記取付け孔に締結要素を挿通し、屋根部材に形成された孔へ、締結要素によって封止材を押し出す工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付け方法である。
【0021】
本発明の太陽電池モジュールの取付け方法では、太陽電池モジュールの取付け具の取付け孔から押し出された封止材が屋根部材に形成された孔に流入し、屋根部材に形成された孔を密栓するため、雨漏りや部材の腐食等の問題を確実に防ぐことができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、予め屋根部材に形成された孔へ棒状の締結要素を挿通する工程を有するものであって、前記予め屋根部材に形成された孔の径が締結要素の径より1.5乃至3mm大きくなっていることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュールの取付け方法である。
【0023】
かかる構成によると、締結要素を固定する際、粘着性と高い止水性を有する封止材が、締結要素によって事前に屋根部材に形成した貫通孔へと押し込まれるとき、締結要素と屋根部材に形成された孔の内周面との間に十分な隙間があり、十分な量の封止材を貫通孔に押し込むことができる。さらに、屋根部材に形成された孔の径に対して締結要素の径が十分に大きいので、屋根部材に形成された孔に挿通した締結要素が孔の内側でぐらつくといった不具合を防止できる。
したがって、屋根部材に形成された孔をより確実に液密に封止できるため、雨漏りや屋根下地側への水の進入をより確実に阻止できる。加えて、太陽電池モジュールの取付け具を強固に取付けることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、複数の屋根部材が屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置された基礎屋根構造を有し、前記基礎屋根構造上に請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具が載置されており、屋根部材に形成された孔に締結要素によって前記取付け孔側から押し込まれた封止材が配されており、前記太陽電池モジュールの取付け具を介して、複数の太陽電池モジュールが基礎屋根構造に取付けられていることを特徴とする屋根構造である。
【0025】
本発明の屋根構造では、太陽電池モジュールの取付け具の取付け孔側から締結要素によって押し込まれた封止材が、屋根部材に形成された孔に流し込まれた状態で太陽電池モジュールの取付け具が取付けられている。そのため、屋根部材に形成された孔を封止材が密栓するため、雨漏りや部材の腐食等の問題を確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、太陽電池モジュールの取付け具をネジやクギ等の締結要素によって屋根上に固定しても、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題が発生しないという効果がある。そのため、太陽電池モジュールの取付け具を屋根上に強力に固着できると共に、防水性の高い太陽電池モジュールの取付けが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の太陽電池モジュールの取付け具を示す斜視図である。
【図2】図1の取付け具のレール部材を示す斜視図である。
【図3】図2のレール部材をA方向から見た平面図である。
【図4】図2のレール部材の分解斜視図である。
【図5】図1の取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図6】図7の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図7】図1の取付け具を屋根構造上に取付ける際の様子を示す断面図であり、(a)は取付ける前の状態を示し、(b)は取付けた後の状態を示す。
【図8】図6の太陽電池モジュールのA−A線拡大断面図である。
【図9】図8のA部分を拡大した部分拡大図である。
【図10】図6のB−B線拡大断面図である。
【図11】図1とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を示す斜視図である。
【図12】図1,図11とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図13】図12の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図14】図13の屋根構造及び太陽電池モジュール並びに取付けに関する部材等のB―B線部分拡大断面図である。
【図15】図1,図11,図12とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図16】図15の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図17】図16の屋根構造及び太陽電池モジュール並びに取付けに関する部材等をB―B線でその一部を破断した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態の取付け具1(太陽電池モジュールの取付け具)は、図1に示されるように、レール部材2と固定具3とを備えて成るものである。
【0030】
レール部材2は、図2に示されるように本体部材5と屋根保護材6から形成されている。
【0031】
本体部材5は、断面倒C字状をした長尺状の部材である。具体的には、底板部8,2つの側壁部9(9a,9b),2つの載置部10(10a,10b)から形成されるものである。
【0032】
底板部8は細長い平板状の部分であり、図2,3に示されるように、4つの取付け孔12(12a,12b,12c,12d)が列状に並んで設けられている。そして、取付け孔12は夫々底板部8を上面から下面へ貫通する孔であり、その開口面積はそれぞれ等しくなっている。
【0033】
側壁部9(9a,9b)は、底板部8の短手方向(図2におけるX方向)両端部にそれぞれ立設されるものであり、どちらも鉛直方向(図2におけるY方向)上側へ向かって略垂直に突出している。つまり、2つの側壁部9(9a,9b)は対向する位置に設けられている。
【0034】
載置部10(10a,10b)は、側壁部9(9a,9b)の各最頂部にそれぞれ設けられており、底板部8の短手方向(図2におけるX方向)と略平行であって互いに近づく方向へ突出している。
【0035】
屋根保護材6はEPDM(エチレンプロピレンゴム)発泡体等の適宜な衝撃吸収性が高く、止水性の高い材料によって形成される直方体状の部材である。なお、本実施形態の屋根保護材6は、元の体積の半分まで圧縮した状態においても高い止水性を発揮する。そして、図2,4に示されるように、この屋根保護材6の長手方向(図2,4におけるZ方向)の長さ及び短手方向(図2,4におけるX方向)の長さは、前記した本体部材5の底板部8のそれと略同一となっている。さらに屋根保護材6には、屋根保護材6の上面と底板部8の下面とを重ね合わせた際に、底板部8の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)に対応する位置に、取付け孔(貫通孔)13(13a,13b,13c,13d)が設けられている。この取付け孔13(13a,13b,13c,13d)は、屋根保護材6を上面から下面へ貫通する孔であり、その開口面積は底板部8の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)の開口面積と等しい、若しくは大きくなっている。
【0036】
ここで、図2,3に示されるように、本体部材5の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)と屋根保護材6の取付け孔13(13a,13b,13c,13d)には、パテ状の封止材15がコーキングガン等の適宜な手段によって隙間なく注入されている。
【0037】
封止材15は粘性十分であり、パテ状又はコーキング材状であって、ブチルゴム、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等、粘着性と高い止水性を有する樹脂が用いられる。つまりこの封止材15には、ねばねばした触感を有するもの、半固体状のもの、極めて粘度の高い液体状のもの等が好適に使用される。
【0038】
固定具3は、図1に示されるように、押圧用ボルト29,上板部材30,下板部材31押圧用ナット32から形成されている。
【0039】
押圧用ボルト29は公知の六角ボルトであり、押圧用ナット32と一対となっている。
【0040】
上板部材30は外形が長方形平板状の部材であり、その底面には長手方向の両端部近傍にそれぞれ係合溝33が設けられている。そして係合溝33は、断面長方形で上板部材30の短手方向と平行な方向へ延びている。またその中心部分には、上面から下面へ貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0041】
下板部材31は外形が長方形平板状の部材であり、その長手方向の長さは、前述したレール部材2の本体部材5における底板部8の短手方向の長さと略同等である。より詳細には、底板部8の短手方向の長さから側壁部9の幅を2倍した長さを引いた長さL1(図1)と略同等である。加えて、下板部材31はその中心部分に上面から下面へ貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0042】
次に本実施形態の取付け具1の組み立て構造について、図1を参照しながら説明する。
【0043】
レール部材2の底板部8の上側(図1におけるY方向上側)には下板部材31が配されており、レール部材2の載置部10の上側には上板部材30が配されている。そして、上板部材30と下板部材31はその中心部分が重なるように配置されており、前記した上板部材30の貫通孔と下板部材31の貫通孔はその中心軸が同じ位置になっている。そして、押圧用ボルト29が頭部(図示せず)を下側(図1におけるY方向下側)に配した状態で下板部材31の貫通孔と上板部材30の貫通孔を連通し、押圧用ナット32の雌ネジ孔と上板部材30上側で螺合している。つまり、押圧用ボルト29の頭部(図示せず)の上側に下板部材31が位置しており、下板部材31の上側に上板部材30が位置しており、上板部材30の上側に押圧用ナット32が位置している。
【0044】
このため本実施形態の取付け具1は、押圧用ナット32を緩めることで固定具3をレール部材2に対して相対的に上方向(図1におけるY方向上側)へ持ち上げる事ができる状態になる。
詳細に説明すると、押圧用ナット32を緩めると押圧用ボルト29の頭部と押圧用ナット32との間隔が広がる。その状態で上板部材30を押圧用ナット32に当接するまで上側へ持ち上げることにより、上板部材30と下板部材31の間隔を広げることができる。ここで、固定具3は下板部材31の上面がレール部材2の載置部10の裏面に当接するまで持ち上げる事が出来るため、上板部材30と下板部材31の間隔が広がる程、固定具3のレール部材2に対して相対的に上方向へ移動することができる距離も大きくなる。
【0045】
また、本実施形態の取付け具1は、押圧用ナット32を締めることで、固定具3をレール部材2に固定することができる。
詳細に説明すると、押圧用ナット32を締めると押圧用ボルト29の頭部と押圧用ナット32との間隔が狭まる。したがって、上板部材30をレール部材10の載置部10に載せた状態で押圧用ナット32を締め続けると、押圧用ボルト29の頭部が押圧用ナット32に近づいていくにつれて、押圧用ボルト29の頭部に押された下板部材31も押圧用ナット32に近づいていく。そして、ついには下板部材31上面が載置部10の裏面に接触する。この状態で、さらに押圧用ボルト29を締めると、上板部材30は上方向(図1におけるY方向上側)からレール部材2に押圧し、下板部材31は下方向(図1におけるY方向下側)からレール部材2を押圧する。つまり、レール部材2を固定具3の上板部材30と下板部材31で挟み込むことにより、固定具3はレール部材2に固定される。
【0046】
次に、本実施形態の取付け具1による太陽電池モジュールの取付け方法について説明する。なお、図5のような屋根下地にスレート瓦17(屋根部材)を敷設した公知の屋根構造18(基礎屋根構造)に対して太陽電池モジュール20(図6)を取付ける場合について説明するが、本実施形態の取付け具1を取付ける屋根構造がこれに限るものでないことは当然である。
【0047】
第1の工程として、図5に示されるように、太陽電池モジュール20の設置に先立って屋根構造18上に取付け具1を取付ける。即ち、完成された屋根構造であるところの屋根構造18のスレート瓦17上に取付け具1を取付ける。詳細には、まず、取付け具1の「設置予定位置」に取付け具1を配置する。このとき、屋根の傾斜方向に直交する方向(図5,6におけるY方向)にレール部材2の両端部が向くように配置する。
なお「設置予定位置」とは、図6に示される様に、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に設置した際に、太陽電池モジュール20の屋根の傾斜方向(図6におけるX方向)の両端部が位置する場所である。
【0048】
次に配置した取付け具1をスレート瓦17上に取付ける。具体的には、図7に示されるように、木ネジ又はクギ等の締結要素22を本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26に挿通する。そして、スレート瓦17の下孔26に挿通した締結要素22をさらにねじ込む(押し込む)ことによってスレート瓦17の下部にある防水シート23を締結要素22が貫通する。そしてさらに、防水シート23を貫通した締結要素22をさらに屋根下地24側へ押圧する(ねじ込む、押し込む)ことによって、屋根下地24に係止穴27が形成される。このとき、締結要素22の先端側の部分と係止穴27とが係合することにより、取付け具1がスレート瓦17及び屋根下地24に対して固定される。換言すると、レール部材2とスレート瓦17とが屋根下地24に締結要素22を介して一体に取付けられる。
ところで、このように締結要素22を挿通する前に、スレート瓦17に下孔26を予め形成しておく。なお、スレート瓦17に下孔26を設ける際、防水シート23及び屋根下地24には穴を開けないものとする。このスレート瓦17に形成する下孔26の径は、締結要素22の各孔と係合する部分(例えばねじ山部分)の径(以下締結要素22の径とする)より1.5mm乃至3mmだけ大きくなっている。
なお、締結要素22を屋根下地24と係合させる際には、電動クギ打ち機等の適宜な手段により、押し込む、ねじ込むといった適宜な動作を行うことで係合することができる。
【0049】
このとき本実施形態では、スレート瓦17に予め下孔26を形成するときに防水シート23及び屋根下地に穴を空けず、締結要素22を屋根下地24に係合させるときに締結要素22によって防水シート23及び屋根下地に孔(穴)を形成している。このことにより、防水シート23に形成される孔の径を締結要素22の径とほぼ同じとすることができる。即ち、防水シート23に形成される孔の内周と締結要素22との間の隙間を無くす、又は略無くすことができる。そのため、防水シート23の機能を損なうことが無い、又は殆ど損なうことがない。
【0050】
またこのとき、取付け具1をスレート瓦17上に取付けると、本体部材5に押圧されて屋根保護材6が圧縮される。ここで本実施形態の屋根保護材6は、圧縮した状態においても高い止水性を有するため、スレート瓦17と屋根保護材6の間への雨水等の水の浸入を阻止又は抑制できる。換言すると、取付け具1の4周から内側への水の浸入を防止又は抑制できる。そのため、雨水等の水が本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26の位置まで到達しない、又はわずかしか到達しない。
【0051】
さらにこのとき、本体部材5と屋根保護材6の取付け孔12,13の少なくともいずれかには封止材15が充填されている。図7に示されるように、本体部材5又は屋根保護材6の取付け孔12,13に封止材15が充填された状態において、締結要素22が本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26の順に貫通することにより、スレート瓦17の下孔26に封止材15を押し込むことができる。即ち、締結要素22によって取付け孔12(及び/又は取付け孔13)より押し出された封止材15が、締結要素22が屋根下地24側へ向かって進むと共に、締結要素22によってスレート瓦17の下孔26内に押し込まれて、当該下孔26が液密に封止される。
また締結要素22をねじ込んだ場合、締結要素22の周囲に封止材15が巻きつき、締結要素22が屋根下地24側へ向かって進むことによって、締結要素22と共に封止材15もまた屋根下地24側へ向かって進む。つまり、締結要素22によってスレート瓦17の下孔26に封止材15が運ばれる。さらに、締結要素22を押し込んだ場合と同様に、締結要素22をねじ込んだ場合においても締結要素22に押された封止材15がスレート瓦17の下孔26に押し込まれる。
【0052】
つまり、本実施形態の封止材15は、本体部材5と屋根保護材6の取付け孔12,13の少なくともいずれかに予め配され、締結要素22に巻きついて運ばれたり、締結要素22に押し出されたりすることによってスレート瓦の下孔26、屋根保護材6とスレート瓦17との間、スレート瓦17と屋根下地24の間といった適宜な場所に配される。換言すると、本実施形態の封止材15は締結要素22によって運ばれたり、締結要素22によって押されたりすることによって広範囲に広がっていき、適宜な位置に配される。
【0053】
またこのとき、上記したように、スレート瓦17に形成した下孔26の径が締結要素22の径より1.5mmから3mm大きくなっている。このことにより、十分且つ適量の封止材15をスレート瓦17の下孔26(及びその周辺)に配置可能であると共に、レール部材2等とスレート瓦17とを強固に取付けることが容易となる。
【0054】
詳説すると、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より小さい場合、締結要素22がスレート瓦17を貫通するためには、締結要素22を下孔26にねじ込む(押し込む)等によって下孔26を押し広げる必要がある。また、スレート瓦17に下孔が形成されていない場合、締結要素22がスレート瓦17を貫通するためには、締結要素22をねじ込む等によってスレート瓦17に貫通孔を穿設する必要がある。即ち、これらの場合、締結要素22がスレート瓦17に接触した後に下孔26の径を広げる、又は貫通孔を形成する。したがって、外部側から押圧された締結要素22がスレート瓦17に接近していき、締結要素22の先端部分がスレート瓦17に最初に接触するまでの間、スレート瓦17の外部側表面には十分な大きさの開口を有する下孔26がない、又は、貫通孔そのものがない状態となっている。このような状態では、締結要素22のスレート瓦17への接近に伴って押し出された封止材15を、下孔26又は貫通孔内に十分な量だけ流し込むことが困難になる。したがって、スレート瓦17の下孔26の径は締結要素22の径より大きいことが望ましい。
【0055】
しかしながら、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、締結要素22を下孔26に挿通したときに締結要素22がぐらついてしまうという問題がある。具体的に説明すると、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、締結要素22を下孔26に挿通したとき、締結要素22が下孔26内を挿通方向と交わる方向に大きく移動可能となってしまう。そのため、本体部材5,屋根保護部材6,スレート瓦17を貫通した締結要素22を屋根下地24に係合させたとき、風等の何らか外力が加わることよって締結要素22が下孔26内を移動してしまうと、本体部材5及び屋根保護部材6がガタついてしまうおそれがある。
またさらに、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、この下孔26と締結要素22の間に水が浸入し易くなるため、下孔26を液密に封止することが困難になってしまう。
したがって、本体部材5及び屋根保護材6を強固に取付けつつ、雨水等の液体のスレート瓦17側から屋根下地24側への進入を防ぐという観点から、スレート瓦17に形成した下孔26の径が締結要素22の径より1.5mmから3mm大きくなっていることが好ましいといえる。
【0056】
このように、本実施形態によると十分な量の封止材15が確実に適宜な場所に配される。さらに、本実施形態によるとスレート瓦17の下孔26が確実に液密に封止されると共に、締結要素22がスレート瓦17と強固に係合する。
したがって、本実施形態によるとスレート瓦17側から屋根下地24側へ雨水や雪溶け水等の屋根上の水が流れ込むことを防止でき、雨漏り等の問題を防ぐことができる。加えて、レール部材2等を安定した状態でスレート瓦17に取付けることができる。
【0057】
そして第2の工程として、図6に示されるように、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に載置し、取付け具1によって固定する。以下詳細に説明する。
【0058】
本実施形態で取付ける太陽電池モジュール20は、図8で示されるように、その短手方向両端にフレーム35を取付けて形成されるものである。なおこのフレーム35は、図9で示されるように、上側(図9における上側)に太陽電池パネルを挟み込むための挟持部36が形成されており、断面コ字状の挟持部36から下側へ向かって壁部37が突出した状態で設けられている。さらに、フレーム35は壁部37の下側に壁部37と垂直に交わる平板状の足板部38を備えている。足板部38にはその短手方向両端部に上側へ向かって突出するリブ39が形成されており、リブ39と壁部37との間に底の浅い溝40が形成されている。そして、図10で示されるように、この溝40を利用して太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定するものである。
【0059】
具体的には固定具3の押圧用ナット32を緩めることにより、固定具3(上板部材30)をレール部材2に対して上方向(図1におけるY方向上側)へ移動可能な状態にする。そして上板部材30を持ち上げ、レール部材2と上板部材30との間に太陽電池モジュール20のフレーム35を設置する。そして、上板部材30を下側へ移動させて、上板部材30の係合溝33にリブ39を嵌め込んだ状態で、押圧用ナット32を締めることにより、フレーム35のリブ39及び溝40を上板部材30で上側から押圧する。つまり、レール部材2と上板部材30で太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込み、レール部材2に太陽電池モジュール20を固定する。
【0060】
この工程を繰り返し、全ての太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定することで、取付け作業が完了する。
【0061】
上記した実施形態では、レール部材2の底板部8が2つの載置部10の幅の合計より大きな幅を有し、幅と直交する方向に細長く延びている。そして、この底板部8の下面全面に亘って板状の屋根保護材6が取り付けられており、屋根保護材6の底面部分の全面がスレート瓦17と接触している。即ち、屋根保護部材6は長方形長板の全面という比較的広い面積でスレート瓦17と面接触している。換言すると、一体に取付けられた本体部材5及び屋根保護部材6は、広範囲に亘る広がりを有する面でスレート瓦17と面接触している。
さらに、上記した実施形態では、複数の締結要素22を所定の間隔をおいて列状に配することによって、レール部材2をスレート瓦17及び屋根下地24(以下スレート瓦17等とする)に一体に取付けている。つまり、レール部材2は、長手方向に沿って所定の間隔をおいた複数の箇所をスレート瓦17等に対して固定することにより、スレート瓦17等に一体に取付けられている。
このように、レール部材2とスレート瓦17等を広い面積で面接触させると共に、長い直方体状のレール部材2を長手方向に沿って所定の間隔をおいた複数の箇所でスレート瓦17等に固定することにより、レール部材2をスレート瓦17に対して強固且つ安定した状態で取付けることができる。
【0062】
以下で、本発明の太陽電池モジュールの取付け具について、上記した実施形態とは異なる実施形態について説明するが、上記した実施形態と同様な構造については同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
上記した実施形態では、本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13の内部に封止材15を配したが、封止材15の配置はこれに限るものではない。例えば、粘度が高い又は表面張力の高い封止材を採用し、取付け孔の内部を封止材で密閉するとともに、取付け孔の開口から封止材が溢れるように配置してもよい。このように配置すると、より多量の封止材15を本体部材5や屋根保護材6の取付け孔12,13の周辺に配置でき、より確実に屋根部材(スレート瓦17)の下孔26等を封止材で密栓できる。
【0064】
上記した実施形態では、屋根部材(スレート瓦17)に取付けるレール部材2と、太陽電池モジュール20を固定するための固定具3とが別途設けられている取付け具について説明したが、本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。例えば、図11に示すように、屋根部材に取付ける固定部43,44と、太陽電池モジュールを載置する載置部45,46が一体となった取付け具42の取付け孔47に封止材15を配してもよい。
【0065】
また本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせたものの一部であってもよい。即ち、そのような太陽電池モジュールの取付け孔に封止材を配する構成であってもよい。このような構成によると、締結要素を取付け孔に挿入した際に、封止材が屋根下地の取付け孔に流れ込むことで屋根下地の取付け孔を密栓する。
【0066】
上記した実施形態では、図5で示されるように、桁行方向(屋根の傾斜方向に直交する方向であり、図5におけるY方向)にレール部材2の両端部が向くように配置し、固定具3が桁行方向に沿って可動するものであったが、本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。
本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、例えば、図12乃至図14で示されるように、梁間方向(桁行方向に対して垂直な方向であり、図5,図12におけるX方向)にレール部材2の両端部が向くように配置し、固定具3が梁間方向に沿って可動する取付け具51であってもよい。このとき、上板部材30の底面には、断面長方形で上板部材30の長手方向と平行に延びる係合溝53が2つ設けられており、これらは上板部材30の底面の短手方向の両端部分にそれぞれ位置している。そして、係合溝53の延び方向はレール部材2の長手方向と直交している。
【0067】
この取付け具51による太陽電池モジュール20の取付け方法について説明する。太陽電池モジュール20を取付けるとき、上板部材30とレール部材2の間に太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込む。このとき、フレーム35の足板部38に形成されたリブ39を上板部材30の係合溝53に嵌め込んだ状態とする。そして、上板部材30でフレーム35の足板部38を押圧することにより、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。なお、この取付け具51においても、上記した実施形態と同様に、上板部材30が梁間方向の上下に位置する太陽電池モジュール20のそれぞれのフレーム35を同時に押圧可能となっている。つまり、取付け具51は、その長手方向の両側に位置する太陽電池モジュール20を屋根構造18に固定可能となっている。
【0068】
またさらに、上記した実施形態では、断面略C字状で延びるレール部材2であったが本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。レール部材及び固定具の形状は適宜変更してよい。例えば、外形略角柱状のような適宜な形状の基台に対して溝や切り欠きを設ける構成でもよく、板状の材料を折り曲げ加工して基台を形成する構成でもよく、平板状の基台から外側へ突出する突起を設ける構成であってもよい。そして固定具は、基台によって規定の方向にのみ移動可能であり、且つ基台に対して適宜の位置で係止可能であると共に、太陽電池モジュール又はその周辺部材を基台に固定可能であればよい。つまり本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、例えば、図15乃至図17で示されるような取付け具61であってもよい。この取付け具61について以下で詳細に説明する。
【0069】
本実施形態の取付け具61は、図15で示されるように、レール部材62,位置決め部材63,固定具64を備えて成るものである。
【0070】
レール部材62は、本体部材66と、当該本体部材66に一体に取付けられた屋根保護材67から形成されている。
本体部材66は、板状部66aと、当該板状部66aから外側へ向かって突出する突起部66bから形成されている。突起部66bは、板状部分66aの短手方向の中心近傍に形成され、断面略T字状で板状部66aの長手方向に延びている。また、板状部66aの短手方向の両端部には複数の取付け孔69が設けられており、これら複数の取付け孔69は、板状部66aの長手方向において所定の間隔をおいて列状に配されている。つまり、板状部66aの短手方向の両端部には、複数の取付け孔69から形成される列がそれぞれ一列ずつ形成されている(片側については作図の都合上図示を省略する)。
【0071】
屋根保護部材67は、上記した実施形態の屋根保護部材6と同様の材料によって形成される板状の部材であり、水平に位置する天面及び底面と、これらと略垂直に交わる4つの側面から形成されている。ここで、屋根保護部材67の天面及び底面は、本体部材66の底面と略同形となっている。そして、屋根保護部材67には、屋根保護部材の天面と本体部材66の底面を重ねあわせたときに本体部材66の取付け孔69に対応する位置に、貫通孔(図示せず)が設けられている。この貫通孔の開口面積は、本体部材66の取付け孔69の開口面積と等しい、若しくは大きくなっている。
【0072】
位置決め部材63は断面略C字状で延びる部材であり、それぞれ長方形板状の天板部63a、2つの側板部63b,2つの底板部63c(片側については作図の都合上図示を省略する)から形成されている。ここで、2つの側板部63bは天板部63aの短手方向両端部からそれぞれ略垂直に垂下されている。加えて、2つの底板部63cは、それぞれ2つの側板部63bの垂下先端から互いに近付く方向へ突出している。このとき、2つの底板部63cはそれぞれ側板部63bに対して略垂直に突出しており、その突出方向の先端部分は離隔している。つまり、2つの底板部63cの突出方向の先端部分は、空間を挟んで対向する位置にある。
【0073】
固定具64は、略正方形板状の部材であり、その底面には2つの係合溝70が形成されている。2つの係合溝70はそれぞれ固定具64の短手方向の両端部分に位置しており、断面長方形状であって、固定具64の長手方向に沿って延びている。
【0074】
次にこの取付け具61の組み立て構造について図15を参照しつつ詳細に説明する。
位置決め部材63の天板部63a,2つの側板部63b,2つの底板部63cによって囲まれて形成される空間は、本体部材66に形成された突起部66bの突出方向の先端部分を挿入可能となっている。そして位置決め部材63は、位置決め部材63を本体部材66に嵌め込んだ状態(本体部材66の突起部66bの先端部分が位置決め部材63内部側に位置した状態)で、突起部66bの延び方向に沿って移動可能となっている。なお、位置決め部材63を本体部材66に嵌め込んだ状態においては、位置決め部材63は本体部材66に対して突起部66bの延び方向(本体部材66の長手方向)にのみ相対的に移動可能となっている。このとき、他の方向への移動は、位置決め部材63の天板部63a,側板部63b,底板部63cの内側の面と本体部材66の突起部66bが当接することにより、阻止される。
【0075】
ここで、位置決め部材63の片側の側板部63bには、位置固定用ボルト72が一体に取付けられている。位置決め部材63の内部側に本体部材66の突起部66bが位置した状態において、この位置固定用ボルト72を締めつけることにより、位置決め部材63が本体部材66に固定される。即ち、位置固定用ボルト72が本体部材66を押圧することによって、位置決め部材63の内側の面が本体部材66と密着し、位置決め部材63が本体部材66に対して相対的に移動できなくなる。
【0076】
また、位置決め部材63の天面には固定具64が載置されている。このとき、作図の都合上図示を省略するが、位置決め部材63には天板部63aに外部と内側部分とを連続する貫通孔が形成されており、また、固定具64にも天面から底面を貫通する貫通孔が形成されている。そしてこれらの位置決め部材の貫通孔及び固定具64の貫通孔を押圧用ボルト73が連通している状態となっている。また押圧用ボルト73は、固定具64の天面側で押圧用ナット74と螺合している。
このことにより、押圧用ナット74を締めつけると、押圧用ナット74に押圧された固定具64が位置決め部材63に密着する。また、押圧用ナット74を緩めると、位置決め部材63に対して固定具64が天地方向に相対的に移動可能となる。
【0077】
次に、この取付け具61による太陽電池モジュールの取付けについて説明する。
太陽電池モジュール20の設置に先立って、屋根構造18上に載置する。即ち、完成された屋根構造であるところの屋根構造18のスレート瓦17上に取付け具61を取付ける。詳細には、まず、取付け具61の「設置予定位置」に取付け具61を配置する。このとき、屋根の梁間方向(桁行方向に対して垂直な方向であり、図15,図16におけるX方向)にレール部材62の両端部が向くように配置する。
なお「設置予定位置」とは、図16に示される様に、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に設置した際に、太陽電池モジュール20の屋根の傾斜方向(図16におけるX方向)の両端部が位置する場所である。
【0078】
このとき、本体部材66の取付け孔69及び屋根保護部材67の貫通孔(図示せず)には封止材15が配されている。その状態で、本体部材66の取付け孔69、屋根保護部材67の貫通孔(図示せず)、スレート瓦17を締結要素22によって貫通し、締結要素22の少なくとも先端部分と屋根下地24とを係合させる。このとき、締結要素22を挿通することによる封止材15の配置位置の変化については、上述の取付け具1の場合と同じであるため、同様の説明を省略する。
【0079】
そして、取付け具61が屋根構造18と一体に取付けられた状態において、取付け具61によって太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。
具体的には、位置決め部材63をレール部材62に対して相対的に移動させて適宜な位置に配置する。その状態で、位置固定用ボルト72を締めつけることにより、位置決め部材63をレール部材62に固定する。また、押圧用ナット74を緩め、固定具64を位置決め部材63に対して天地方向へ相対的に移動可能な状態にする。
【0080】
固定具64を持ち上げ、固定具64と位置決め部材63との間に太陽電池モジュール20のフレーム35を設置する。そして、固定具64を下側へ移動させて、固定部64の係合溝70にリブ39を嵌め込んだ状態で、押圧用ナット74を締めることにより、フレーム35のリブ39及び溝40を固定具64で上側から押圧する。つまり、位置決め部材63と固定具64で太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込み、取付け具61に太陽電池モジュール20を固定する。
【0081】
そして、屋根構造18上の各所で固定具64と太陽電池モジュール20とを固定することにより、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。
【0082】
即ち、本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、屋根部材又は屋根下地に接触する部分を有し、当該接触する部分に内部に封止材を有する貫通孔が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0083】
1 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
6 屋根保護材
12 取付け孔
13 取付け孔(貫通孔)
15 封止材
17 スレート瓦(屋根部材)
18 屋根構造(基礎屋根構造)
22 締結要素
24 屋根下地
51 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
61 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
67 屋根保護材
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを屋根構造上に載置するための取付け具、太陽電池モジュールを屋根に取付ける取付け方法、太陽電池モジュールを取付けた屋根構造に関するものであり、より詳細には、雨漏りの発生を防止可能な太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法、並びに屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと端子その他の付属品を一体化したものであり、太陽光を受けて電力を発生させることができる。
近年、このような太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に敷き詰めて設置し、家庭で使用する電力を太陽電池モジュールが発生する電力で賄う太陽光発電システムを採用する家庭が増加しつつある。
【0003】
ここで太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置する方策として代表的なものに、以下の2つの方策が挙げられる。まず第1の方策は、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせ、屋根下地に敷設した瓦と太陽電池モジュールを置換する方策である。そして第2の方策は、スレート瓦等が敷設された屋根の上にさらに太陽電池モジュールを設置する方策である。
【0004】
第2の方策を具体的に説明すると、公知のスレート屋根や金属板による屋根等の屋根上に取付け金具を設け、当該取付け金具を介して太陽電池モジュールを取付けるものである。具体的には、まず木材その他の材料で屋根の傾斜形状を作り、その上に板張りをすると共に防水シートを設置する等によって屋根下地構造を作り、その上にスレート瓦や金属板等の屋根部材を平面的に並べる。こうして完成した基礎屋根構造に対して屋根部材にドリルで孔を開け、屋根部材及び防水シートにネジ又はクギ等を貫通して下地の板張りに打ち込み、取付け金具を固定する。そして取付け金具に太陽電池モジュールをネジ止めすることにより屋根上に太陽電池モジュールを設置する。
【0005】
しかしながらこのように太陽電池モジュールを設置すると、屋根部材にドリルで孔を開けてしまうことにより、屋根部材だけでなく屋根下地の防水シートまでにも孔が開いてしまう。また場合によっては、下地の板にまで貫通孔が開いてしまう可能性がある。そしてこれらの孔から雨水や雪溶け水といった屋根上の水が侵入してしまうことにより、雨漏りや部材の腐食等の問題が発生してしまう虞がある。
【0006】
そこでこのような雨漏りを防ぐ技術として、例えば、特許文献1に開示されている設置装置が知られている。特許文献1に開示されている設置装置は、金属板の一部を挟持することで屋根上に固定される止め具を有し、止め具によって支持部材を屋根上に固定し、その支持部材で太陽電池モジュールを屋根上に支持するものである。即ち特許文献1に開示されている設置装置は、金属板の一部を挟持して止め具を屋根上に固定するので、屋根部材にネジ又はクギ等を挿通するための貫通孔を設けなくてよい。そのため貫通孔からの水の侵入が発生せず、雨漏り等の問題を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−57397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に開示されている設置装置では、屋根部材の一部を挟み込んで止め具を固定するという構造上、クギやネジ等を下地の板張りに打ち込んで止め具を固定する場合に比べて、固定する力が脆弱になってしまうという問題がある。
【0009】
そこで本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、クギやネジ等を下地の板張りに打ち込んで止め具を固定しても雨漏りや部材の腐食等の問題が発生しない太陽電池モジュールの取付け具及び太陽電池モジュールの取付け方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具であり、締結要素を挿通可能な取付け孔が複数設けられており、取付け孔に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、前記取付け孔に粘性を有する封止材が配されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具である。
【0011】
ここで締結要素とは、ネジやクギ等の上位概念である。
本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、複数の取付け孔に締結要素を挿通して取付けるため、屋根に対する強固な取付けが可能となっている。また、本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、取付け孔内に粘性を有する封止材が配されているため、締結要素を取付け孔に挿通する際に、屋根部材に形成された貫通孔に粘性を有する封止材が押し込まれる。つまり、太陽電池モジュールの取付け具から押し出された封止材が屋根部材の貫通孔を隙間なく塞ぐ。このことにより、太陽電池モジュールの取付け具の外側表面側から屋根部材側への水の進入や、屋根部材より屋根下地側への水の侵入を阻止することができる。そのため、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題を確実に阻止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記取付け孔の開口が形成される面に屋根保護材が取付けられており、当該屋根保護材は複数の貫通孔を有しており、前記取付け孔の開口と前記貫通孔の開口が重なりあう状態で配されるとともに、前記封止材が前記貫通孔に配されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0013】
かかる構成によると、太陽電池モジュールの取付け具と屋根部材又は屋根下地との間に屋根保護材を設けることができるので、太陽電池モジュールの取付け具を屋根上に取付ける際に屋根部材や屋根下地が傷つけられることが無い。そのことにより、屋根部材や屋根下地が傷つけられた部分から劣化し、劣化した部分から雨水等の水が侵入するという問題を阻止できる。
さらに、取付け孔と連なる位置に屋根保護材の貫通孔が配されているため、封止材を取付け孔のみならず、貫通孔にも配することができる。つまり、屋根保護材を設けない場合に比べて、より多くの封止材を配することができる。
これらのことから、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題をより確実に阻止できる。
なお、上記した「屋根保護材の貫通孔」は孔状のものに限らず、例えば屋根保護材を貫通する切れ目等であってもよい。しかしながら、貫通孔にするとより多くの封止材を配することができるため望ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記封止材は前記取付け孔の開口と貫通孔の開口の少なくともいずれかからはみ出した状態でこれらを密栓することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0015】
封止材は粘度が高い又は表面張力の強い封止材を採用する等により、取付け孔や貫通孔の開口から溢れた状態で配されることが望ましい。また、取付け孔や貫通孔を密栓するように配されることが望ましい。このようにすると、より多量な封止材を配することができるため、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題をより確実に阻止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記封止材は合成樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールの取付け具に使用される封止材は、合成樹脂材であることが望ましい。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記屋根保護材は弾性圧縮可能であり、圧縮状態で止水性を有するものであって、取付け時に屋根部材に接触することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具である。
【0019】
かかる構成によると、雨漏りや屋根下地側への水の侵入をより確実に阻止できる。具体的に説明すると、太陽電池モジュールの取付け具と屋根部材との間に位置する屋根保護材は、太陽電池モジュールの取付け具を屋根部材上に取付けたとき、太陽電池モジュールの取付け具によって屋根部材側へ押圧されて圧縮された状態になる。ここで、本発明の屋根保護材は圧縮された状態において止水性を有するため、屋根保護材と屋根部材との間に水が浸入しない。したがって、屋根保護材の縁部分より内側に位置する貫通孔に水が到達するということがなく、雨漏りや屋根下地側への水の侵入をより確実に阻止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け具を使用して複数の屋根部材が載置された基礎屋根構造を有する建屋に太陽電池モジュールを取付ける取付け方法であって、封止材が配された前記取付け孔に締結要素を挿通し、屋根部材に形成された孔へ、締結要素によって封止材を押し出す工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付け方法である。
【0021】
本発明の太陽電池モジュールの取付け方法では、太陽電池モジュールの取付け具の取付け孔から押し出された封止材が屋根部材に形成された孔に流入し、屋根部材に形成された孔を密栓するため、雨漏りや部材の腐食等の問題を確実に防ぐことができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、予め屋根部材に形成された孔へ棒状の締結要素を挿通する工程を有するものであって、前記予め屋根部材に形成された孔の径が締結要素の径より1.5乃至3mm大きくなっていることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュールの取付け方法である。
【0023】
かかる構成によると、締結要素を固定する際、粘着性と高い止水性を有する封止材が、締結要素によって事前に屋根部材に形成した貫通孔へと押し込まれるとき、締結要素と屋根部材に形成された孔の内周面との間に十分な隙間があり、十分な量の封止材を貫通孔に押し込むことができる。さらに、屋根部材に形成された孔の径に対して締結要素の径が十分に大きいので、屋根部材に形成された孔に挿通した締結要素が孔の内側でぐらつくといった不具合を防止できる。
したがって、屋根部材に形成された孔をより確実に液密に封止できるため、雨漏りや屋根下地側への水の進入をより確実に阻止できる。加えて、太陽電池モジュールの取付け具を強固に取付けることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、複数の屋根部材が屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置された基礎屋根構造を有し、前記基礎屋根構造上に請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具が載置されており、屋根部材に形成された孔に締結要素によって前記取付け孔側から押し込まれた封止材が配されており、前記太陽電池モジュールの取付け具を介して、複数の太陽電池モジュールが基礎屋根構造に取付けられていることを特徴とする屋根構造である。
【0025】
本発明の屋根構造では、太陽電池モジュールの取付け具の取付け孔側から締結要素によって押し込まれた封止材が、屋根部材に形成された孔に流し込まれた状態で太陽電池モジュールの取付け具が取付けられている。そのため、屋根部材に形成された孔を封止材が密栓するため、雨漏りや部材の腐食等の問題を確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、太陽電池モジュールの取付け具をネジやクギ等の締結要素によって屋根上に固定しても、雨漏りや屋根下地側への水の侵入による部材の腐食といった問題が発生しないという効果がある。そのため、太陽電池モジュールの取付け具を屋根上に強力に固着できると共に、防水性の高い太陽電池モジュールの取付けが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の太陽電池モジュールの取付け具を示す斜視図である。
【図2】図1の取付け具のレール部材を示す斜視図である。
【図3】図2のレール部材をA方向から見た平面図である。
【図4】図2のレール部材の分解斜視図である。
【図5】図1の取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図6】図7の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図7】図1の取付け具を屋根構造上に取付ける際の様子を示す断面図であり、(a)は取付ける前の状態を示し、(b)は取付けた後の状態を示す。
【図8】図6の太陽電池モジュールのA−A線拡大断面図である。
【図9】図8のA部分を拡大した部分拡大図である。
【図10】図6のB−B線拡大断面図である。
【図11】図1とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を示す斜視図である。
【図12】図1,図11とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図13】図12の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図14】図13の屋根構造及び太陽電池モジュール並びに取付けに関する部材等のB―B線部分拡大断面図である。
【図15】図1,図11,図12とは別の本発明の太陽電池モジュールの取付け具を屋根構造上に配置した様子を模式的に示す斜視図である。
【図16】図15の屋根構造に太陽電池モジュールを取付けていく様子を模式的に示す斜視図である。
【図17】図16の屋根構造及び太陽電池モジュール並びに取付けに関する部材等をB―B線でその一部を破断した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態の取付け具1(太陽電池モジュールの取付け具)は、図1に示されるように、レール部材2と固定具3とを備えて成るものである。
【0030】
レール部材2は、図2に示されるように本体部材5と屋根保護材6から形成されている。
【0031】
本体部材5は、断面倒C字状をした長尺状の部材である。具体的には、底板部8,2つの側壁部9(9a,9b),2つの載置部10(10a,10b)から形成されるものである。
【0032】
底板部8は細長い平板状の部分であり、図2,3に示されるように、4つの取付け孔12(12a,12b,12c,12d)が列状に並んで設けられている。そして、取付け孔12は夫々底板部8を上面から下面へ貫通する孔であり、その開口面積はそれぞれ等しくなっている。
【0033】
側壁部9(9a,9b)は、底板部8の短手方向(図2におけるX方向)両端部にそれぞれ立設されるものであり、どちらも鉛直方向(図2におけるY方向)上側へ向かって略垂直に突出している。つまり、2つの側壁部9(9a,9b)は対向する位置に設けられている。
【0034】
載置部10(10a,10b)は、側壁部9(9a,9b)の各最頂部にそれぞれ設けられており、底板部8の短手方向(図2におけるX方向)と略平行であって互いに近づく方向へ突出している。
【0035】
屋根保護材6はEPDM(エチレンプロピレンゴム)発泡体等の適宜な衝撃吸収性が高く、止水性の高い材料によって形成される直方体状の部材である。なお、本実施形態の屋根保護材6は、元の体積の半分まで圧縮した状態においても高い止水性を発揮する。そして、図2,4に示されるように、この屋根保護材6の長手方向(図2,4におけるZ方向)の長さ及び短手方向(図2,4におけるX方向)の長さは、前記した本体部材5の底板部8のそれと略同一となっている。さらに屋根保護材6には、屋根保護材6の上面と底板部8の下面とを重ね合わせた際に、底板部8の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)に対応する位置に、取付け孔(貫通孔)13(13a,13b,13c,13d)が設けられている。この取付け孔13(13a,13b,13c,13d)は、屋根保護材6を上面から下面へ貫通する孔であり、その開口面積は底板部8の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)の開口面積と等しい、若しくは大きくなっている。
【0036】
ここで、図2,3に示されるように、本体部材5の取付け孔12(12a,12b,12c,12d)と屋根保護材6の取付け孔13(13a,13b,13c,13d)には、パテ状の封止材15がコーキングガン等の適宜な手段によって隙間なく注入されている。
【0037】
封止材15は粘性十分であり、パテ状又はコーキング材状であって、ブチルゴム、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等、粘着性と高い止水性を有する樹脂が用いられる。つまりこの封止材15には、ねばねばした触感を有するもの、半固体状のもの、極めて粘度の高い液体状のもの等が好適に使用される。
【0038】
固定具3は、図1に示されるように、押圧用ボルト29,上板部材30,下板部材31押圧用ナット32から形成されている。
【0039】
押圧用ボルト29は公知の六角ボルトであり、押圧用ナット32と一対となっている。
【0040】
上板部材30は外形が長方形平板状の部材であり、その底面には長手方向の両端部近傍にそれぞれ係合溝33が設けられている。そして係合溝33は、断面長方形で上板部材30の短手方向と平行な方向へ延びている。またその中心部分には、上面から下面へ貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0041】
下板部材31は外形が長方形平板状の部材であり、その長手方向の長さは、前述したレール部材2の本体部材5における底板部8の短手方向の長さと略同等である。より詳細には、底板部8の短手方向の長さから側壁部9の幅を2倍した長さを引いた長さL1(図1)と略同等である。加えて、下板部材31はその中心部分に上面から下面へ貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0042】
次に本実施形態の取付け具1の組み立て構造について、図1を参照しながら説明する。
【0043】
レール部材2の底板部8の上側(図1におけるY方向上側)には下板部材31が配されており、レール部材2の載置部10の上側には上板部材30が配されている。そして、上板部材30と下板部材31はその中心部分が重なるように配置されており、前記した上板部材30の貫通孔と下板部材31の貫通孔はその中心軸が同じ位置になっている。そして、押圧用ボルト29が頭部(図示せず)を下側(図1におけるY方向下側)に配した状態で下板部材31の貫通孔と上板部材30の貫通孔を連通し、押圧用ナット32の雌ネジ孔と上板部材30上側で螺合している。つまり、押圧用ボルト29の頭部(図示せず)の上側に下板部材31が位置しており、下板部材31の上側に上板部材30が位置しており、上板部材30の上側に押圧用ナット32が位置している。
【0044】
このため本実施形態の取付け具1は、押圧用ナット32を緩めることで固定具3をレール部材2に対して相対的に上方向(図1におけるY方向上側)へ持ち上げる事ができる状態になる。
詳細に説明すると、押圧用ナット32を緩めると押圧用ボルト29の頭部と押圧用ナット32との間隔が広がる。その状態で上板部材30を押圧用ナット32に当接するまで上側へ持ち上げることにより、上板部材30と下板部材31の間隔を広げることができる。ここで、固定具3は下板部材31の上面がレール部材2の載置部10の裏面に当接するまで持ち上げる事が出来るため、上板部材30と下板部材31の間隔が広がる程、固定具3のレール部材2に対して相対的に上方向へ移動することができる距離も大きくなる。
【0045】
また、本実施形態の取付け具1は、押圧用ナット32を締めることで、固定具3をレール部材2に固定することができる。
詳細に説明すると、押圧用ナット32を締めると押圧用ボルト29の頭部と押圧用ナット32との間隔が狭まる。したがって、上板部材30をレール部材10の載置部10に載せた状態で押圧用ナット32を締め続けると、押圧用ボルト29の頭部が押圧用ナット32に近づいていくにつれて、押圧用ボルト29の頭部に押された下板部材31も押圧用ナット32に近づいていく。そして、ついには下板部材31上面が載置部10の裏面に接触する。この状態で、さらに押圧用ボルト29を締めると、上板部材30は上方向(図1におけるY方向上側)からレール部材2に押圧し、下板部材31は下方向(図1におけるY方向下側)からレール部材2を押圧する。つまり、レール部材2を固定具3の上板部材30と下板部材31で挟み込むことにより、固定具3はレール部材2に固定される。
【0046】
次に、本実施形態の取付け具1による太陽電池モジュールの取付け方法について説明する。なお、図5のような屋根下地にスレート瓦17(屋根部材)を敷設した公知の屋根構造18(基礎屋根構造)に対して太陽電池モジュール20(図6)を取付ける場合について説明するが、本実施形態の取付け具1を取付ける屋根構造がこれに限るものでないことは当然である。
【0047】
第1の工程として、図5に示されるように、太陽電池モジュール20の設置に先立って屋根構造18上に取付け具1を取付ける。即ち、完成された屋根構造であるところの屋根構造18のスレート瓦17上に取付け具1を取付ける。詳細には、まず、取付け具1の「設置予定位置」に取付け具1を配置する。このとき、屋根の傾斜方向に直交する方向(図5,6におけるY方向)にレール部材2の両端部が向くように配置する。
なお「設置予定位置」とは、図6に示される様に、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に設置した際に、太陽電池モジュール20の屋根の傾斜方向(図6におけるX方向)の両端部が位置する場所である。
【0048】
次に配置した取付け具1をスレート瓦17上に取付ける。具体的には、図7に示されるように、木ネジ又はクギ等の締結要素22を本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26に挿通する。そして、スレート瓦17の下孔26に挿通した締結要素22をさらにねじ込む(押し込む)ことによってスレート瓦17の下部にある防水シート23を締結要素22が貫通する。そしてさらに、防水シート23を貫通した締結要素22をさらに屋根下地24側へ押圧する(ねじ込む、押し込む)ことによって、屋根下地24に係止穴27が形成される。このとき、締結要素22の先端側の部分と係止穴27とが係合することにより、取付け具1がスレート瓦17及び屋根下地24に対して固定される。換言すると、レール部材2とスレート瓦17とが屋根下地24に締結要素22を介して一体に取付けられる。
ところで、このように締結要素22を挿通する前に、スレート瓦17に下孔26を予め形成しておく。なお、スレート瓦17に下孔26を設ける際、防水シート23及び屋根下地24には穴を開けないものとする。このスレート瓦17に形成する下孔26の径は、締結要素22の各孔と係合する部分(例えばねじ山部分)の径(以下締結要素22の径とする)より1.5mm乃至3mmだけ大きくなっている。
なお、締結要素22を屋根下地24と係合させる際には、電動クギ打ち機等の適宜な手段により、押し込む、ねじ込むといった適宜な動作を行うことで係合することができる。
【0049】
このとき本実施形態では、スレート瓦17に予め下孔26を形成するときに防水シート23及び屋根下地に穴を空けず、締結要素22を屋根下地24に係合させるときに締結要素22によって防水シート23及び屋根下地に孔(穴)を形成している。このことにより、防水シート23に形成される孔の径を締結要素22の径とほぼ同じとすることができる。即ち、防水シート23に形成される孔の内周と締結要素22との間の隙間を無くす、又は略無くすことができる。そのため、防水シート23の機能を損なうことが無い、又は殆ど損なうことがない。
【0050】
またこのとき、取付け具1をスレート瓦17上に取付けると、本体部材5に押圧されて屋根保護材6が圧縮される。ここで本実施形態の屋根保護材6は、圧縮した状態においても高い止水性を有するため、スレート瓦17と屋根保護材6の間への雨水等の水の浸入を阻止又は抑制できる。換言すると、取付け具1の4周から内側への水の浸入を防止又は抑制できる。そのため、雨水等の水が本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26の位置まで到達しない、又はわずかしか到達しない。
【0051】
さらにこのとき、本体部材5と屋根保護材6の取付け孔12,13の少なくともいずれかには封止材15が充填されている。図7に示されるように、本体部材5又は屋根保護材6の取付け孔12,13に封止材15が充填された状態において、締結要素22が本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13、スレート瓦17の下孔26の順に貫通することにより、スレート瓦17の下孔26に封止材15を押し込むことができる。即ち、締結要素22によって取付け孔12(及び/又は取付け孔13)より押し出された封止材15が、締結要素22が屋根下地24側へ向かって進むと共に、締結要素22によってスレート瓦17の下孔26内に押し込まれて、当該下孔26が液密に封止される。
また締結要素22をねじ込んだ場合、締結要素22の周囲に封止材15が巻きつき、締結要素22が屋根下地24側へ向かって進むことによって、締結要素22と共に封止材15もまた屋根下地24側へ向かって進む。つまり、締結要素22によってスレート瓦17の下孔26に封止材15が運ばれる。さらに、締結要素22を押し込んだ場合と同様に、締結要素22をねじ込んだ場合においても締結要素22に押された封止材15がスレート瓦17の下孔26に押し込まれる。
【0052】
つまり、本実施形態の封止材15は、本体部材5と屋根保護材6の取付け孔12,13の少なくともいずれかに予め配され、締結要素22に巻きついて運ばれたり、締結要素22に押し出されたりすることによってスレート瓦の下孔26、屋根保護材6とスレート瓦17との間、スレート瓦17と屋根下地24の間といった適宜な場所に配される。換言すると、本実施形態の封止材15は締結要素22によって運ばれたり、締結要素22によって押されたりすることによって広範囲に広がっていき、適宜な位置に配される。
【0053】
またこのとき、上記したように、スレート瓦17に形成した下孔26の径が締結要素22の径より1.5mmから3mm大きくなっている。このことにより、十分且つ適量の封止材15をスレート瓦17の下孔26(及びその周辺)に配置可能であると共に、レール部材2等とスレート瓦17とを強固に取付けることが容易となる。
【0054】
詳説すると、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より小さい場合、締結要素22がスレート瓦17を貫通するためには、締結要素22を下孔26にねじ込む(押し込む)等によって下孔26を押し広げる必要がある。また、スレート瓦17に下孔が形成されていない場合、締結要素22がスレート瓦17を貫通するためには、締結要素22をねじ込む等によってスレート瓦17に貫通孔を穿設する必要がある。即ち、これらの場合、締結要素22がスレート瓦17に接触した後に下孔26の径を広げる、又は貫通孔を形成する。したがって、外部側から押圧された締結要素22がスレート瓦17に接近していき、締結要素22の先端部分がスレート瓦17に最初に接触するまでの間、スレート瓦17の外部側表面には十分な大きさの開口を有する下孔26がない、又は、貫通孔そのものがない状態となっている。このような状態では、締結要素22のスレート瓦17への接近に伴って押し出された封止材15を、下孔26又は貫通孔内に十分な量だけ流し込むことが困難になる。したがって、スレート瓦17の下孔26の径は締結要素22の径より大きいことが望ましい。
【0055】
しかしながら、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、締結要素22を下孔26に挿通したときに締結要素22がぐらついてしまうという問題がある。具体的に説明すると、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、締結要素22を下孔26に挿通したとき、締結要素22が下孔26内を挿通方向と交わる方向に大きく移動可能となってしまう。そのため、本体部材5,屋根保護部材6,スレート瓦17を貫通した締結要素22を屋根下地24に係合させたとき、風等の何らか外力が加わることよって締結要素22が下孔26内を移動してしまうと、本体部材5及び屋根保護部材6がガタついてしまうおそれがある。
またさらに、スレート瓦17の下孔26の径が締結要素22の径より大き過ぎる場合、この下孔26と締結要素22の間に水が浸入し易くなるため、下孔26を液密に封止することが困難になってしまう。
したがって、本体部材5及び屋根保護材6を強固に取付けつつ、雨水等の液体のスレート瓦17側から屋根下地24側への進入を防ぐという観点から、スレート瓦17に形成した下孔26の径が締結要素22の径より1.5mmから3mm大きくなっていることが好ましいといえる。
【0056】
このように、本実施形態によると十分な量の封止材15が確実に適宜な場所に配される。さらに、本実施形態によるとスレート瓦17の下孔26が確実に液密に封止されると共に、締結要素22がスレート瓦17と強固に係合する。
したがって、本実施形態によるとスレート瓦17側から屋根下地24側へ雨水や雪溶け水等の屋根上の水が流れ込むことを防止でき、雨漏り等の問題を防ぐことができる。加えて、レール部材2等を安定した状態でスレート瓦17に取付けることができる。
【0057】
そして第2の工程として、図6に示されるように、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に載置し、取付け具1によって固定する。以下詳細に説明する。
【0058】
本実施形態で取付ける太陽電池モジュール20は、図8で示されるように、その短手方向両端にフレーム35を取付けて形成されるものである。なおこのフレーム35は、図9で示されるように、上側(図9における上側)に太陽電池パネルを挟み込むための挟持部36が形成されており、断面コ字状の挟持部36から下側へ向かって壁部37が突出した状態で設けられている。さらに、フレーム35は壁部37の下側に壁部37と垂直に交わる平板状の足板部38を備えている。足板部38にはその短手方向両端部に上側へ向かって突出するリブ39が形成されており、リブ39と壁部37との間に底の浅い溝40が形成されている。そして、図10で示されるように、この溝40を利用して太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定するものである。
【0059】
具体的には固定具3の押圧用ナット32を緩めることにより、固定具3(上板部材30)をレール部材2に対して上方向(図1におけるY方向上側)へ移動可能な状態にする。そして上板部材30を持ち上げ、レール部材2と上板部材30との間に太陽電池モジュール20のフレーム35を設置する。そして、上板部材30を下側へ移動させて、上板部材30の係合溝33にリブ39を嵌め込んだ状態で、押圧用ナット32を締めることにより、フレーム35のリブ39及び溝40を上板部材30で上側から押圧する。つまり、レール部材2と上板部材30で太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込み、レール部材2に太陽電池モジュール20を固定する。
【0060】
この工程を繰り返し、全ての太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定することで、取付け作業が完了する。
【0061】
上記した実施形態では、レール部材2の底板部8が2つの載置部10の幅の合計より大きな幅を有し、幅と直交する方向に細長く延びている。そして、この底板部8の下面全面に亘って板状の屋根保護材6が取り付けられており、屋根保護材6の底面部分の全面がスレート瓦17と接触している。即ち、屋根保護部材6は長方形長板の全面という比較的広い面積でスレート瓦17と面接触している。換言すると、一体に取付けられた本体部材5及び屋根保護部材6は、広範囲に亘る広がりを有する面でスレート瓦17と面接触している。
さらに、上記した実施形態では、複数の締結要素22を所定の間隔をおいて列状に配することによって、レール部材2をスレート瓦17及び屋根下地24(以下スレート瓦17等とする)に一体に取付けている。つまり、レール部材2は、長手方向に沿って所定の間隔をおいた複数の箇所をスレート瓦17等に対して固定することにより、スレート瓦17等に一体に取付けられている。
このように、レール部材2とスレート瓦17等を広い面積で面接触させると共に、長い直方体状のレール部材2を長手方向に沿って所定の間隔をおいた複数の箇所でスレート瓦17等に固定することにより、レール部材2をスレート瓦17に対して強固且つ安定した状態で取付けることができる。
【0062】
以下で、本発明の太陽電池モジュールの取付け具について、上記した実施形態とは異なる実施形態について説明するが、上記した実施形態と同様な構造については同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
上記した実施形態では、本体部材5の取付け孔12、屋根保護材6の取付け孔13の内部に封止材15を配したが、封止材15の配置はこれに限るものではない。例えば、粘度が高い又は表面張力の高い封止材を採用し、取付け孔の内部を封止材で密閉するとともに、取付け孔の開口から封止材が溢れるように配置してもよい。このように配置すると、より多量の封止材15を本体部材5や屋根保護材6の取付け孔12,13の周辺に配置でき、より確実に屋根部材(スレート瓦17)の下孔26等を封止材で密栓できる。
【0064】
上記した実施形態では、屋根部材(スレート瓦17)に取付けるレール部材2と、太陽電池モジュール20を固定するための固定具3とが別途設けられている取付け具について説明したが、本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。例えば、図11に示すように、屋根部材に取付ける固定部43,44と、太陽電池モジュールを載置する載置部45,46が一体となった取付け具42の取付け孔47に封止材15を配してもよい。
【0065】
また本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせたものの一部であってもよい。即ち、そのような太陽電池モジュールの取付け孔に封止材を配する構成であってもよい。このような構成によると、締結要素を取付け孔に挿入した際に、封止材が屋根下地の取付け孔に流れ込むことで屋根下地の取付け孔を密栓する。
【0066】
上記した実施形態では、図5で示されるように、桁行方向(屋根の傾斜方向に直交する方向であり、図5におけるY方向)にレール部材2の両端部が向くように配置し、固定具3が桁行方向に沿って可動するものであったが、本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。
本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、例えば、図12乃至図14で示されるように、梁間方向(桁行方向に対して垂直な方向であり、図5,図12におけるX方向)にレール部材2の両端部が向くように配置し、固定具3が梁間方向に沿って可動する取付け具51であってもよい。このとき、上板部材30の底面には、断面長方形で上板部材30の長手方向と平行に延びる係合溝53が2つ設けられており、これらは上板部材30の底面の短手方向の両端部分にそれぞれ位置している。そして、係合溝53の延び方向はレール部材2の長手方向と直交している。
【0067】
この取付け具51による太陽電池モジュール20の取付け方法について説明する。太陽電池モジュール20を取付けるとき、上板部材30とレール部材2の間に太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込む。このとき、フレーム35の足板部38に形成されたリブ39を上板部材30の係合溝53に嵌め込んだ状態とする。そして、上板部材30でフレーム35の足板部38を押圧することにより、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。なお、この取付け具51においても、上記した実施形態と同様に、上板部材30が梁間方向の上下に位置する太陽電池モジュール20のそれぞれのフレーム35を同時に押圧可能となっている。つまり、取付け具51は、その長手方向の両側に位置する太陽電池モジュール20を屋根構造18に固定可能となっている。
【0068】
またさらに、上記した実施形態では、断面略C字状で延びるレール部材2であったが本発明の太陽電池モジュールの取付け具はこれに限るものではない。レール部材及び固定具の形状は適宜変更してよい。例えば、外形略角柱状のような適宜な形状の基台に対して溝や切り欠きを設ける構成でもよく、板状の材料を折り曲げ加工して基台を形成する構成でもよく、平板状の基台から外側へ突出する突起を設ける構成であってもよい。そして固定具は、基台によって規定の方向にのみ移動可能であり、且つ基台に対して適宜の位置で係止可能であると共に、太陽電池モジュール又はその周辺部材を基台に固定可能であればよい。つまり本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、例えば、図15乃至図17で示されるような取付け具61であってもよい。この取付け具61について以下で詳細に説明する。
【0069】
本実施形態の取付け具61は、図15で示されるように、レール部材62,位置決め部材63,固定具64を備えて成るものである。
【0070】
レール部材62は、本体部材66と、当該本体部材66に一体に取付けられた屋根保護材67から形成されている。
本体部材66は、板状部66aと、当該板状部66aから外側へ向かって突出する突起部66bから形成されている。突起部66bは、板状部分66aの短手方向の中心近傍に形成され、断面略T字状で板状部66aの長手方向に延びている。また、板状部66aの短手方向の両端部には複数の取付け孔69が設けられており、これら複数の取付け孔69は、板状部66aの長手方向において所定の間隔をおいて列状に配されている。つまり、板状部66aの短手方向の両端部には、複数の取付け孔69から形成される列がそれぞれ一列ずつ形成されている(片側については作図の都合上図示を省略する)。
【0071】
屋根保護部材67は、上記した実施形態の屋根保護部材6と同様の材料によって形成される板状の部材であり、水平に位置する天面及び底面と、これらと略垂直に交わる4つの側面から形成されている。ここで、屋根保護部材67の天面及び底面は、本体部材66の底面と略同形となっている。そして、屋根保護部材67には、屋根保護部材の天面と本体部材66の底面を重ねあわせたときに本体部材66の取付け孔69に対応する位置に、貫通孔(図示せず)が設けられている。この貫通孔の開口面積は、本体部材66の取付け孔69の開口面積と等しい、若しくは大きくなっている。
【0072】
位置決め部材63は断面略C字状で延びる部材であり、それぞれ長方形板状の天板部63a、2つの側板部63b,2つの底板部63c(片側については作図の都合上図示を省略する)から形成されている。ここで、2つの側板部63bは天板部63aの短手方向両端部からそれぞれ略垂直に垂下されている。加えて、2つの底板部63cは、それぞれ2つの側板部63bの垂下先端から互いに近付く方向へ突出している。このとき、2つの底板部63cはそれぞれ側板部63bに対して略垂直に突出しており、その突出方向の先端部分は離隔している。つまり、2つの底板部63cの突出方向の先端部分は、空間を挟んで対向する位置にある。
【0073】
固定具64は、略正方形板状の部材であり、その底面には2つの係合溝70が形成されている。2つの係合溝70はそれぞれ固定具64の短手方向の両端部分に位置しており、断面長方形状であって、固定具64の長手方向に沿って延びている。
【0074】
次にこの取付け具61の組み立て構造について図15を参照しつつ詳細に説明する。
位置決め部材63の天板部63a,2つの側板部63b,2つの底板部63cによって囲まれて形成される空間は、本体部材66に形成された突起部66bの突出方向の先端部分を挿入可能となっている。そして位置決め部材63は、位置決め部材63を本体部材66に嵌め込んだ状態(本体部材66の突起部66bの先端部分が位置決め部材63内部側に位置した状態)で、突起部66bの延び方向に沿って移動可能となっている。なお、位置決め部材63を本体部材66に嵌め込んだ状態においては、位置決め部材63は本体部材66に対して突起部66bの延び方向(本体部材66の長手方向)にのみ相対的に移動可能となっている。このとき、他の方向への移動は、位置決め部材63の天板部63a,側板部63b,底板部63cの内側の面と本体部材66の突起部66bが当接することにより、阻止される。
【0075】
ここで、位置決め部材63の片側の側板部63bには、位置固定用ボルト72が一体に取付けられている。位置決め部材63の内部側に本体部材66の突起部66bが位置した状態において、この位置固定用ボルト72を締めつけることにより、位置決め部材63が本体部材66に固定される。即ち、位置固定用ボルト72が本体部材66を押圧することによって、位置決め部材63の内側の面が本体部材66と密着し、位置決め部材63が本体部材66に対して相対的に移動できなくなる。
【0076】
また、位置決め部材63の天面には固定具64が載置されている。このとき、作図の都合上図示を省略するが、位置決め部材63には天板部63aに外部と内側部分とを連続する貫通孔が形成されており、また、固定具64にも天面から底面を貫通する貫通孔が形成されている。そしてこれらの位置決め部材の貫通孔及び固定具64の貫通孔を押圧用ボルト73が連通している状態となっている。また押圧用ボルト73は、固定具64の天面側で押圧用ナット74と螺合している。
このことにより、押圧用ナット74を締めつけると、押圧用ナット74に押圧された固定具64が位置決め部材63に密着する。また、押圧用ナット74を緩めると、位置決め部材63に対して固定具64が天地方向に相対的に移動可能となる。
【0077】
次に、この取付け具61による太陽電池モジュールの取付けについて説明する。
太陽電池モジュール20の設置に先立って、屋根構造18上に載置する。即ち、完成された屋根構造であるところの屋根構造18のスレート瓦17上に取付け具61を取付ける。詳細には、まず、取付け具61の「設置予定位置」に取付け具61を配置する。このとき、屋根の梁間方向(桁行方向に対して垂直な方向であり、図15,図16におけるX方向)にレール部材62の両端部が向くように配置する。
なお「設置予定位置」とは、図16に示される様に、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に設置した際に、太陽電池モジュール20の屋根の傾斜方向(図16におけるX方向)の両端部が位置する場所である。
【0078】
このとき、本体部材66の取付け孔69及び屋根保護部材67の貫通孔(図示せず)には封止材15が配されている。その状態で、本体部材66の取付け孔69、屋根保護部材67の貫通孔(図示せず)、スレート瓦17を締結要素22によって貫通し、締結要素22の少なくとも先端部分と屋根下地24とを係合させる。このとき、締結要素22を挿通することによる封止材15の配置位置の変化については、上述の取付け具1の場合と同じであるため、同様の説明を省略する。
【0079】
そして、取付け具61が屋根構造18と一体に取付けられた状態において、取付け具61によって太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。
具体的には、位置決め部材63をレール部材62に対して相対的に移動させて適宜な位置に配置する。その状態で、位置固定用ボルト72を締めつけることにより、位置決め部材63をレール部材62に固定する。また、押圧用ナット74を緩め、固定具64を位置決め部材63に対して天地方向へ相対的に移動可能な状態にする。
【0080】
固定具64を持ち上げ、固定具64と位置決め部材63との間に太陽電池モジュール20のフレーム35を設置する。そして、固定具64を下側へ移動させて、固定部64の係合溝70にリブ39を嵌め込んだ状態で、押圧用ナット74を締めることにより、フレーム35のリブ39及び溝40を固定具64で上側から押圧する。つまり、位置決め部材63と固定具64で太陽電池モジュール20のフレーム35を挟み込み、取付け具61に太陽電池モジュール20を固定する。
【0081】
そして、屋根構造18上の各所で固定具64と太陽電池モジュール20とを固定することにより、太陽電池モジュール20を屋根構造18上に固定する。
【0082】
即ち、本発明の太陽電池モジュールの取付け具は、屋根部材又は屋根下地に接触する部分を有し、当該接触する部分に内部に封止材を有する貫通孔が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0083】
1 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
6 屋根保護材
12 取付け孔
13 取付け孔(貫通孔)
15 封止材
17 スレート瓦(屋根部材)
18 屋根構造(基礎屋根構造)
22 締結要素
24 屋根下地
51 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
61 取付け具(太陽電池モジュールの取付け具)
67 屋根保護材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具であり、締結要素を挿通可能な取付け孔が複数設けられており、取付け孔に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、
前記取付け孔に粘性を有する封止材が配されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項2】
前記取付け孔の開口が形成される面に屋根保護材が取付けられており、当該屋根保護材は複数の貫通孔を有しており、前記取付け孔の開口と前記貫通孔の開口が重なりあう状態で配されるとともに、前記封止材が前記貫通孔に配されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項3】
前記封止材は前記取付け孔の開口と貫通孔の開口の少なくともいずれかからはみ出した状態でこれらを密栓することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項4】
前記封止材は合成樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項5】
前記屋根保護材は弾性圧縮可能であり、圧縮状態で止水性を有するものであって、
取付け時に屋根部材に接触することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け具を使用して複数の屋根部材が載置された基礎屋根構造を有する建屋に太陽電池モジュールを取付ける取付け方法であって、
封止材が配された前記取付け孔に締結要素を挿通し、屋根部材に形成された孔へ、締結要素によって封止材を押し出す工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付け方法。
【請求項7】
予め屋根部材に形成された孔へ棒状の締結要素を挿通する工程を有するものであって、前記予め屋根部材に形成された孔の径が締結要素の径より1.5乃至3mm大きくなっていることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュールの取付け方法。
【請求項8】
複数の屋根部材が屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置された基礎屋根構造を有し、前記基礎屋根構造上に請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具が載置されており、屋根部材に形成された孔に締結要素によって前記取付け孔側から押し込まれた封止材が配されており、前記太陽電池モジュールの取付け具を介して、複数の太陽電池モジュールが基礎屋根構造に取付けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項1】
屋根上に太陽電池モジュールを固定するための取付け具であり、締結要素を挿通可能な取付け孔が複数設けられており、取付け孔に締結要素を挿通し屋根下地と屋根部材の少なくともいずれかに締結要素を係合させて屋根下地又は屋根部材に固定するものであって、
前記取付け孔に粘性を有する封止材が配されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項2】
前記取付け孔の開口が形成される面に屋根保護材が取付けられており、当該屋根保護材は複数の貫通孔を有しており、前記取付け孔の開口と前記貫通孔の開口が重なりあう状態で配されるとともに、前記封止材が前記貫通孔に配されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項3】
前記封止材は前記取付け孔の開口と貫通孔の開口の少なくともいずれかからはみ出した状態でこれらを密栓することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項4】
前記封止材は合成樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項5】
前記屋根保護材は弾性圧縮可能であり、圧縮状態で止水性を有するものであって、
取付け時に屋根部材に接触することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け具を使用して複数の屋根部材が載置された基礎屋根構造を有する建屋に太陽電池モジュールを取付ける取付け方法であって、
封止材が配された前記取付け孔に締結要素を挿通し、屋根部材に形成された孔へ、締結要素によって封止材を押し出す工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付け方法。
【請求項7】
予め屋根部材に形成された孔へ棒状の締結要素を挿通する工程を有するものであって、前記予め屋根部材に形成された孔の径が締結要素の径より1.5乃至3mm大きくなっていることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュールの取付け方法。
【請求項8】
複数の屋根部材が屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置された基礎屋根構造を有し、前記基礎屋根構造上に請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの取付け具が載置されており、屋根部材に形成された孔に締結要素によって前記取付け孔側から押し込まれた封止材が配されており、前記太陽電池モジュールの取付け具を介して、複数の太陽電池モジュールが基礎屋根構造に取付けられていることを特徴とする屋根構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−193569(P2012−193569A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59264(P2011−59264)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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