説明

太陽電池モジュールの取付構造

【課題】支持構造がシンプルで太陽電池モジュールを安定して取付できるとともに施工性に優れる太陽電池モジュールの取付構造を提供する。
【解決手段】屋根下地板に屋根材を敷設して構成された屋根の上に配設される複数の太陽電池モジュールと、この太陽電池モジュールを支持する支持体と、この支持体を屋根に取付ける取付具とを具え、前記屋根材には、貫通した切欠部が形成され、前記取付具は、前記切欠部に挿入されるとともに前記屋根下地板の上に載置した状態で固着され、かつ前記支持体を取付けるための上に向く固定ボルトを有する固定金具からなり、前記切欠部及び前記固定金具を覆って水密する被覆カバーを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根面にソーラー発電装置を設置する際に用いる、太陽電池モジュールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラー発電は、環境負荷が小さく資源を節約できるため、地球温暖化の基となるCO2 (二酸化炭素)を含む排出ガスによる環境汚染、エネルギー資源の枯渇など地球的規模の課題対策として開発が進み、商業ビル、公共施設を始めとして一般家庭へも普及している。
【0003】
ところで、瓦等の屋根材はその上に物を設置することを考慮することなく設計、製造されたものである。従って戸建て住宅等において前記屋根材の上に太陽電池モジュールを設置する場合は、屋根面が緩急様々な勾配を持つとともに完全な雨仕舞が要求されるなどの諸条件も加わって、複雑な構造により太陽電池モジュールが支持され、施工性も劣りがちである。そこでこれに対し改良が重ねられ、様々な取付構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その一つとして図9、10に示される取付構造では、先ず図9(A)に示すように、屋根材aに上から電気ドリルbを用いて貫通孔dを穿設し、次いで図9(B)に示すように、防水性維持のため、前記貫通孔d内にブチルゴム等の水密材nを充填し、図9(C)に示すように、その上から挿入するとともに屋根下地板fに打ち込んでビスe1により、縦レールgを固定している。
【0005】
また図11に示される取付構造では、屋根材aの一部(a1)を一旦取外し、露出した屋根下地板f上にベース合板i及びスペース合板jが、屋根下地板fを貫通し垂木kに打ち込まれたビスe2により固着される。そして基板m1と、この基板m1の軒先側端縁から立ち上がる縦片m2と、この縦片m2の上端から軒先側に向け伸びる上片m3とが一体に折り曲げ形成されたZ字状金具mの前記基板m1の棟側をビスe3によりスペース合板j上に固着するとともに上片m3に縦レールgが取付けられる。そして前記取外された屋根材a1が元の位置の戻されて取付部が雨仕舞される。
【0006】
【特許文献1】特開2004−162487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら図9、10に示される前者の取付構造においては、屋根材a上に載置される縦レールgを介して太陽電池モジュールhの荷重が屋根材aに負荷するため、台風などの強風下大きな応力が発生する時屋根材aに割れ、欠けを生じ易く、太陽電池モジュールhの支持が不安定であるとともに雨漏りの恐れがある。特に既設建物の屋根にリフォームによって太陽光発電設備を設置する場合は屋根材aが経年劣化により強度低下していることも多く、雨仕舞を損なう可能性が高い。
【0008】
また本工法は図9(C)に示すように、穿設された貫通孔dに充填された水密材nにビスe1を挿入するとともに屋根下地板fに打ち込んで縦レールgを取付けるため、取付後における水密材nによる止水状態を目視で確認することができず、ビスe1の挿入時に水密材nが貫通孔dから離脱する可能性もあり、雨仕舞の信頼性が低い。
【0009】
さらに、屋根材aに穿設された貫通孔dの径はビスe1よりやや大きい程度であるため、この貫通孔dを通して屋根下地板fの厚さ、材質、経年劣化の程度等の状況を目視確認することはできない。従ってリフォームにおいて、ビスe1の固定強度が判定できないため、予測に基づいて多めに固定せざるを得ず、信頼性を欠くとともに施工性が低下する。
【0010】
また図11に示される後者の取付構造においては、勾配方向上下に隣接する屋根材aの重なり部から延出しうるZ字状金具mを介して、縦レールgを屋根下地板fに取付けているため、基板m1の棟側でビスe3により屋根下地板fに固着された位置に対し、勾配下方に大きくズレた位置において縦レールgが上片m3により支持されている。したがって、太陽電池モジュールhに対して風荷重による正負の動圧が作用したとき、Z字状金具mに曲げ力の作用により変形し、太陽電池モジュールhの支持が不安定な状態となる。
【0011】
また本発明の実施態様の課題として、ビスe2を垂木kに対して打ち込んで固定する場合、ルーフィングシートが敷設されていることもあり垂木kの位置は屋根下地板f上からでは不明なため、垂木を外しがちとなりその時には取付強度が不足する。
【0012】
本発明は、取付具は、屋根材に形成された切欠部に挿入されるとともに屋根下地板の上に載置した状態で固着されることを基本とし、支持構造がシンプルで太陽電池モジュールを安定して取付できるとともに施工性に優れる太陽電池モジュールの取付構造の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、屋根下地板に屋根材を敷設して構成された屋根の上に配設される複数の太陽電池モジュールと、この太陽電池モジュールを支持する支持体と、この支持体を屋根に取付ける取付具とを具え、前記屋根材には、貫通した切欠部が形成され、前記取付具は、前記切欠部に挿入されるとともに前記屋根下地板の上に載置した状態で固着され、かつ前記支持体を取付けるための上に向く固定ボルトを有する固定金具からなり、前記切欠部及び前記固定金具を覆って水密する被覆カバーを設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明では、前記固定金具は、下に向け開口するコ字体と、このコ字体の向き合う縦片下端から各々外側に折れ曲って伸びる取付フランジとを具えてハット状をなし、前記被覆カバーは、カバー本体とこのカバー本体の上に重ねて配されるキャップとからなり、前記カバー本体は、前記固定金具の上方を囲むシェル部と、このシェル部の周縁部から周囲に向け屋根面に沿って伸びる鍔部とからなるとともに前記キャップは、カバー本体のシェル部に上方から嵌合することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、前記取付具は、拡開固着具を用いて屋根下地板に固着され、前記拡開固着具は、屋根下地板に穿設される取付孔に挿通される挿通部と、この挿通部の下端に形成され、かつ前記取付孔に上側から挿入されるとともに屋根下地板の下側で拡開して屋根下地板に係合する抜け止め部とを含み、前記抜け止め部と屋根下地板との係合を利用して、取付具を屋根下地板に固着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明は、取付具は屋根材に形成した切欠部に挿入して屋根下地に固着されるため、太陽電池モジュールの荷重は取付具を介して略直下の屋根下地により支持される。その結果支持構造がシンプル化されるとともに太陽電池モジュールの取付強度が安定し、台風など強風下においても確実に支持されるとともに施工性に優れる。また太陽電池モジュールの荷重が屋根材に掛からないため、屋根材の破損が防止され、既設建物に対してリフォームにより取付施工する場合に屋根材が経年劣化していても、雨漏れの恐れがない。さらに前記リフォームにおいて、切欠部を介して屋根下地板の劣化状態を目視確認できるため、状況に対応した施工が可能となり信頼性を高めうる。また、固定ボルトを用いて支持体を強固に支持できるとともに被覆カバーにより精度の高い雨仕舞を構成できる。また請求項2に係る発明では、固定金具は取付フランジを用いて屋根下地板に強力に固定されるため、太陽電池モジュールの取付状態が安定し、カバー本体は屋根面に沿って伸びる鍔部を有するため、屋根面上に安定して取付けられるとともに、雨仕舞を良好とし、しかもカバー本体のシェル部にキャップが嵌合するため、雨仕舞の精度が更に向上する。
【0017】
また請求項3に係る発明のように、拡開固着具を用いて取付具を屋根下地板に固着すると、リフォームの場合に屋根下地板が経年劣化していても、それを破損することなく安定した取付強度を得ることができ、さらに垂木の位置に関係なく取付具を固定できるため施工性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、太陽電池モジュールの取付構造1は、屋根Rの上に配設される複数の太陽電池モジュールMと、この太陽電池モジュールMを支持する支持体4と、この支持体4を屋根Rに取付ける取付具5とを具える。
【0019】
前記太陽電池モジュールMは、太陽光を電気エネルギーに変換する機能を持つ最小単位である太陽電池セルが複数接続され、さらにその表面に透明フィルム、透明樹脂、裏面に絶縁樹脂、補強材などを配した耐候性パッケージ内に納められて平板状に構成されるものである。その平面形状は通常矩形状とし、一辺が例えば500〜2000mm程度に形成されるが、設置箇所の状況に応じて三角形状、台形状などに形成されるものもある。そして太陽電池モジュールMは複数枚が屋根上に配設されるとともに直列、並列に接続されて、太陽電池アレイが構成される。
【0020】
前記太陽電池モジュールMを設置する屋根Rは、図1に示すように、屋根下地板2に屋根材3を敷設して構成される。そして本形態の屋根Rは、図1に示すように、矩形状をなす外周枠21a1と、この外周枠21a1の内側に架け渡された縦又は横の補強枠21a2とかなるパネルフレーム21aの上面に、屋根下地板(野地板)2を形成するパネル面材21bを貼着した屋根パネル21を用いて構成されたものが例示される。該屋根パネル21は桁側の壁パネル22の上枠22aにボックス金具23を介して固着され、下端部は鼻隠し板24で被覆されている。該鼻隠し板24は、その外側に、ブラケット25aを用いて軒樋25が取り付けられ、かつ前記桁側の壁パネル22との間に軒天井材26が架け渡されている。なおこの軒天井材26により、前記屋根パネル21の軒先下面が覆われて化粧される。
【0021】
前記屋根材3は、屋根防水のため屋根下地板2の上に敷設されたルーフィングシート27の上に配設され、個々の屋根材3は、略矩形の平板状をなし、軒先から棟方向に向かって、棟側の屋根材3の下端部を軒側の屋根材3の上端部に重ねながら隙間なく屋根下地板2に取り付けられる。屋根材3は、プレスセメント瓦、施釉セメント瓦、コンクリート瓦、いぶし瓦、金属瓦等各種のものを採用しうる。
【0022】
前記屋根材3には、図3に示すように、切欠部6が形成される。本形態の切欠部6は円形をなし、太陽電池モジュールMの必要支持強度に基づき、割り付けられた所定のピッチで隔設される。またその直径は、例えば20〜80mm程度、本形態では40mmの大きさに形成され、電動ドリルに装着したホールソーを用いて切削形成することができる。このように形成された切欠部6を介して屋根材3の上から屋根下地板2の厚さ、材質、劣化状態などの状況を目視で確認し、その状況に応じて適宜太陽電池モジュールMの固定手段の選択、変更、補強処置などを適確に行ない、その結果太陽電池モジュール取付の信頼性が高めることができる。なお前記切欠部6は円形以外に、矩形、三角形、正五角形などとすることもできる。
【0023】
また本形態では、屋根下地板2の前記切欠部6の中央直下に、拡開固着具15を装着するための取付孔16が穿設される。この取付孔16は、直径が例えば10〜40mm程度、本形態では22mmの円孔に形成される。そして取付孔16は、電動ドリルに装着したドリルビット或いはホールソーを前記切欠部6内に挿入することにより穿設できる。
【0024】
前記取付孔16に装着する拡開固着具15は、図2、3に示すように、挿通部17と、抜け止め部18とからなる。挿通部17は、下端外周にネジ28が螺刻された円筒体17Aと、この円筒体17Aの上端全周から外側へ伸びる鍔体17Bとからなる。該鍔体17Bは挿通部17よりも大きな直径を有し、円筒体17Aが上から挿入された時、取付孔16の上縁部に係合して挿通部17を支持できるように形成される。但し鍔体17Bは、前記切欠部6内を通過しうるよう、切欠部6よりも小径に形成される。
【0025】
前記抜け止め部18は、上下に貫通するネジ孔29を有するナット状体18Aと、このナット状体18Aの外周に、上向きと外向きとの間で起倒可能に軸着され、放射状に隔設された複数、本形態では6本の係止脚18Bとからなる。またナット状体18Aの上面には、内周面にネジ30が螺刻された凹部40を有する。
【0026】
前記拡開固着具15を取付孔16に取付けるに際し図3に示すように、下端を前記抜け止め部18のネジ孔29に螺合したネジ棒31の上部を把持して、抜け止め部18を取付孔16に上から挿入する。抜け止め部18の係止脚18Bは、この挿入時に取付孔16の内周にガイドされ上向きの姿勢でネジ棒31に沿うため、取付孔16をスムースに通過できる。しかし取付孔16を通過した後は、係止脚18Bは自重により先端が外側へ倒れて、取付孔16の下方縁部に係合するため、抜け止め部18は再び取付孔16から屋根下地板2の上に抜け出すことができくなる。ネジ棒31を引き上げることにより抜け止め部18を取付孔16周縁の屋根下地板2下面に密着係合させ、この状態で前記ネジ棒31を挿入して下方へスライドさせた挿通部17のネジ28を、抜け止め部18のネジ30に螺合することにより挿通部17の鍔体17Bと抜け止め部18の係止脚18Bとで屋根下地板2の取付孔16周縁を挟着し、これにより拡開固着具15が屋根下地板2に固定される。なおこの時、屋根下地板2の取付孔16周縁下面と係止脚18Bとの間にドーナッツ板状のゴムパッキン32を挿入することにより、前記拡開固着具15の空転が防止されるため、拡開固着具15をより安定して固定できる。
【0027】
前記取付具5は、本形態では、縦長の筒部7と、屋根下地板2に固着される固定部8と、支持体4を取付ける装着部9とからなる。筒部7は、本形態では円筒形状をなし、前記切欠部6よりも例えば数mm程度小径に形成されて、切欠部6内に配される。また筒部7の形状は、前記切欠部6の形状に合わせて矩形、三角形、正五角形などとすることもできる。このように筒部7の断面形状を切欠部6の形状と同じとすると、双方の間の隙間を均一に小さく形成でき雨仕舞が良好となる点で好ましい。また、筒部7の高さは、例えば30〜50mm程度である。さらに複数種類の高さの筒部7を部品として準備すると、筒部7の選択、取替により太陽電池モジュールMの設置高さを任意に調整できる点で好ましい。
【0028】
前記固定部8は、本形態では図2、4に示すように、ベース板8Aと、このベース板8Aから立ち上がる一対の固定片8B、8Bとからなる。ベース板8Aは中央に通孔33を有する略円盤状をなし、かつ縁部に切欠き34を設ける。また固定片8Bは、前記筒部7の内部に挿入されその内周面に沿うように横断面湾曲状に形成される。また前記装着部9は、本形態では、図2、4に示すように、上に伸びる装着ボルト35を有する上板9Aと、この上板9A下面から垂下する一対の固定脚片9B、9Bとからなる。そして固定脚片9Bは、筒部7の内側で前記固定片8Bの内側に沿うように横断面湾曲状に形成されている。
【0029】
そして、前記ベース板8Aの通孔33に挿入されたボルト36を前記拡開固着具15のネジ孔29に螺装することにより、固定片8B、8Bが前記屋根材3の切欠部6に挿入された状態で固定部8が屋根下地板2に固着される。この時本形態では、固定部8と拡開固着具15との間にパッキン55が介装されるため、屋根下地板2の取付孔16の水密性が確保される点で好ましい。さらに、ベース板8Aの前記切欠き34に係合したビス54を拡開固着具15に打ち込むことにより固定部8が廻り止めされる。このように本形態では、取付具5を構成するパーツとして分離して形成された固定部8を用いて、屋根下地板2への固着を行うため、小さな切欠部6を通しての固着作業を簡単に行うことができる。
【0030】
前記筒部7を上から切欠部6内に挿入するとともに、その下部を前記屋根下地板2に固着された固定部8の固定片8B、8Bに外嵌する。更に上板9Aが筒部7の上端に当接する迄前記装着部9の固定脚片9B、9Bを筒部7の内部に挿入し、これにより前記固定脚片9B、9Bを固定部の固定片8B、8Bの内側に嵌合させる。そして筒部7、固定片8A及び固定脚片9Bを連続して貫通するビス37により筒部7と、固定部8と、装着部9とを一体化させ、これにより取付具5の全体が屋根下地板2に固着される。このとき、筒部7と屋根材3の切欠部6との間の小間隙に、シーリング材38を充填して防水性を確保する。このシール作業は充填状況を屋根上から作業者がはっきりと目視で確認できるため、信頼性が高い点で好ましい。
【0031】
また、本形態では、図2、4に示すように、取付具5の屋根勾配上側を覆う水よけカバー39を取り付ける。この水よけカバー39は、切欠部6の両側方から屋根勾配上側を連続的に覆うカバー基板39Aと、このカバー基板39Aから立ち上がり、取付具5を囲むU字状のカラー39Bとからなり、前記ビス37がカラー39Bを貫通することにより、取付具5に固定される。図2に示すように、カバー基板39Aの屋根勾配上端部は、切欠部6を設けた屋根材3と、その勾配上に配される屋根材3との間に挿入される。このように、本形態では屋根材3を貫通する取付具5の勾配上側を水よけカバー39が覆うため、雨仕舞が良好となる点で好ましい。
【0032】
前記支持体4は、本形態では図1に示すように、屋根勾配方向の縦レール4Aと、屋根勾配方向に間隔を隔てて配設される横レール4Bとからなる。前記縦レール4Aはその下部フランジ4A1を貫通する前記装着部9の装着ボルト35にナット41を螺装して締め付けることにより、上下端を含む複数箇所で取付具5を介して屋根Rに取り付けられる。そして、前記縦レール4Aの上部フランジ4A2に前記横レール4Bが載置されるとともに固着具42により固着され、これにより縦レール4Aと横レール4Bとで格子状をなす支持体4が屋根Rに取付られる。
【0033】
前記横レール4Bの上に、太陽電池モジュールMの上下端が、専用金具43を用いて取り付けられる。このように太陽電池モジュールMを支持する取付具5は屋根材3に形成された切欠部6に挿入されるとともに屋根下地板2に固着され、従って太陽電池モジュールMの荷重は取付具5を介して略直下位置の屋根下地板2に支持される。その結果支持構造がシンプル化されるとともに太陽電池モジュールMの取付強度が安定し、台風など強風下においても確実に支持されるとともに施工性に優れる。しかも、太陽電池モジュールMの荷重が直接屋根材3に掛からないため、屋根材3を破損する恐れがない。特に既設建物に対しリフォームで取付ける場合、屋根材3が経年劣化していても雨漏れすることがない。
【0034】
しかも本形態では、屋根下地板2とその下側の抜け止め部18との係合を利用して取付具5が屋根下地板2に固着され、しかも前記係合する範囲は抜け止め部18が拡開するため広い面積に拡がり、リフォーム施工の際、屋根下地板2が劣化により強度を低下している場合においても、応力が分散して屋根下地板2に破損を生じることなく安定した取付強度がえられる点で好ましい。しかも垂木に固着具を打ち込んで固定する場合のように垂木の配置位置を確認し、かつ垂木の位置に制約されることがないため作業性に優れる。
【0035】
図5は、他の実施形態を例示している。前記実施態様と異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要な構成に同じ符号を付すのみとする。本形態の取付具5は、前記と同様に縦長円筒形状の筒部7と、屋根下地板2に固着される固定部8と、支持体4を取付ける装着部9とからなる。本形態の固定部8は、屋根勾配と直角方向に並ぶ一対の固定片8B、8Bを有し、かつ装着部9も同方向に並ぶ一対の固定脚片9B、9Bを設け、筒部7、固定片8A及び固定脚片9Bを連続して貫通するビス37により筒部7と、固定部8と、装着部9とが一体化される。また本形態の装着部9は、上板9Aの両側縁が上に折れ曲がる一対の挟持片9C、9Cを設けることによりコ字状をなし、縦レール(図示せず)を、挟持片9C、9C内に嵌合することにより安定的に支持できる点で好ましい。
【0036】
図6、7は、更に他の実施形態を例示している。本形態の切欠部6は、屋根材3に矩形状に開口して形成される。そして切欠部6の周縁部は、シーリング材46を充填することにより水密封止される。
【0037】
また、前記切欠部6に向き合う屋根下地板2に穿設された4個の取付孔16に、拡開固着具15が挿入される。本形態の拡開固着具15は、図7に示すように、ネジ棒から成る挿通部17と、この挿通部17の下端に、略中央部を軸着されることにより揺動可能な棒状の抜け止め部18とからなる。そしてこの抜け止め部18が縦方向に向いて挿通部17に沿う状態で前記取付孔16に上から挿入され、抜け止め部18が取付孔16通過後、水平に回動して拡開することにより前記抜け止め部18は屋根下地板2に係合し、その結果挿通部17を上方に引き上げてもこれに抗して、屋根下地板2の上に抜け出すことができない。
【0038】
また本形態の取付具5は、図8に示すように、下に向いて開口するコ字体11Aと、このコ字体11Aの向合う縦片11A1、11A1の下端から各々外側に折れ曲がって伸び、取付孔44が穿設された取付フランジ11B、11Bとを有してハット状をなし、かつ上に向く固定ボルト10を設けた固定金具11により構成されたものを例示している。そしてこの固定金具11は、前記拡開固着具15の挿通部17を取付孔44に挿入するとともにナット45を螺装してネジ止めすることにより、前記抜け止め部18の屋根下地板2に対する係合を利用して、屋根下地板2に固着される。このように、本形態の固定金具11は、両側に形成された平面状の取付フランジ11Bを用いて屋根下地板2に固定されるため、太陽電池モジュールMを安定して取付けしうる。
【0039】
本形態では、切欠部6及び前記固定金具11を覆う被覆カバー12が取付けられる。そしてこの被覆カバー12は、カバー本体13と、このカバー本体13の上に嵌合されるキャップ14との二重に構成され、前記切欠部6及び固定金具11を取付けた取付孔16の上を覆うことにより水密性を高めている。前記カバー本体13は、図8に示すように、固定金具11の上方を囲むホームベース状のシェル部13Aと、このシェル部13A周縁から、屋根勾配上方及び両側方に向けて屋根面に沿って伸びる鍔部13Bとからなり、シェル部13Aには前記固定ボルト10の挿入及びその位置調整を可能とするための切欠き48を設ける。そして鍔部13Bはその屋根勾配上端部が、切欠部6を設けた屋根材3と、その勾配上に配される屋根材3との間に挿入されるとともに固着具49により固定される。このようにカバー本体13は、屋根面に沿う鍔部13Bを有するため、屋根面上で安定した取付けられるとともに雨仕舞が良好となる。
【0040】
キャップ14は、シェル部13Aと同形かつシェル部13Aの上に嵌合できるように、シェル部13Aよりも少し大きく形成されている。このように、カバー本体13のシェル部13Aとキャップ14とで二重防水を構成するため、良好な雨仕舞効果が得られる。またキャップ14は、その上面に固定ボルト10を挿通するボルト孔47を有し、このボルト孔47から突出する固定ボルト10に、支持体取付金具50が螺着される。これにより、前記支持体取付金具50は前記被覆カバー12を介して固定金具11上に安定して固定される。
【0041】
太陽電池モジュールMを支持する支持体4を構成する縦レール51は、図7に示すように、コ字状のレール本体51Aの両側に、外方に伸びる水平な翼片51B、51Bを設ける。前記支持体取付金具50は、その一側部に内側に向いて開く取付溝52を有し、この取付溝52に前記縦レール51の一方の翼片51Bを嵌合するとともに、他方の翼片51Bを支持体取付金具50に螺着された押片53で挟着することにより、縦レール51が固定される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する断面図である。
【図2】その要部拡大図である。
【図3】その一部の分解斜視図である。
【図4】その異なる部分の分解斜視図である。
【図5】他の実施の形態を例示する斜視図である。
【図6】さらに他の実施の形態を例示する断面図である。
【図7】その要部拡大図である。
【図8】その分解斜視図である。
【図9】従来例を示し、(A)乃至(C)はその構築順序を説明する要部断面図である。
【図10】他の従来例の断面図である。
【図11】その要部拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 太陽電池モジュールの取付構造
2 屋根下地板
3 屋根材
4 支持体
5 取付具
6 切欠部
7 筒部
8 固定部
9 装着部
10 固定ボルト
11 固定金具
11A コ字体
11A1 縦片
11B 取付フランジ
12 被覆カバー
13 カバー本体
13A シェル部
13B 鍔部
14 キャップ
15 拡開固着具
16 取付孔
17 挿通部
18 抜け止め部
M 太陽電池モジュール
R 屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根下地板に屋根材を敷設して構成された屋根の上に配設される複数の太陽電池モジュールと、この太陽電池モジュールを支持する支持体と、この支持体を屋根に取付ける取付具とを具え、
前記屋根材には、貫通した切欠部が形成され、
前記取付具は、前記切欠部に挿入されるとともに前記屋根下地板の上に載置した状態で固着され、かつ前記支持体を取付けるための上に向く固定ボルトを有する固定金具からなり、
前記切欠部及び前記固定金具を覆って水密する被覆カバーを設けたことを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項2】
前記固定金具は、下に向け開口するコ字体と、このコ字体の向き合う縦片下端から各々外側に折れ曲って伸びる取付フランジとを具えてハット状をなし、
前記被覆カバーは、カバー本体とこのカバー本体の上に重ねて配されるキャップとからなり、
前記カバー本体は、前記固定金具の上方を囲むシェル部と、このシェル部の周縁部から周囲に向け屋根面に沿って伸びる鍔部とからなるとともに前記キャップは、カバー本体のシェル部に上方から嵌合することを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項3】
前記取付具は、拡開固着具を用いて屋根下地板に固着され、
前記拡開固着具は、屋根下地板に穿設される取付孔に挿通される挿通部と、この挿通部の下端に形成され、かつ前記取付孔に上側から挿入されるとともに屋根下地板の下側で拡開して屋根下地板に係合する抜け止め部とを含み、
前記抜け止め部と屋根下地板との係合を利用して、取付具を屋根下地板に固着することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−231914(P2008−231914A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136955(P2008−136955)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【分割の表示】特願2004−283208(P2004−283208)の分割
【原出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】