説明

定着温度制御装置、画像形成装置および定着温度制御方法

【課題】 画像形成装置の定着部において、サーモカット部から離れた箇所で異常高温状態が発生しても、少ない構成部品で熱暴走を抑える。
【解決手段】 第1、第2の加熱部H1、H2は、加熱ローラ本体39に配置され、駆動電力印加によって加熱ローラ本体39を加熱する。温度検出部33は加熱ローラ本体39の温度を検出する。サーモカット部35は、第2の加熱部H2近傍に配置され、遮断動作に必要な期間にわたって加熱されたとき第1、第2の加熱部H1、H2への駆動電力印加を遮断する。温度制御部37は、温度検出部33からの検出温度が異常高温の基準温度より上昇すれば、第2の加熱部H2をこの加熱の有無に拘わらず加熱制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着温度制御装置、画像形成装置および定着温度制御方法に係り、トナーを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ機又はこれらの機能を有するデジタル複合機(MFP:Multi Function Peripheral)等の画像形成装置に搭載して好適する定着温度制御装置、これを搭載した当該画像形成装置および定着温度制御方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置は、原稿から読み取った画像データに基づき回転感光体の表面に潜像を形成し、トナーカセットから供給したトナーによってその潜像からトナー像を形成し、その回転感光体とこれに加圧配置された加圧ローラとの間に用紙を搬送することによって用紙にトナー像を転写させ、その用紙を加熱ローラと加圧ローラ間に通し、転写トナーを加熱定着させて排紙する構成が良く知られている。
【0003】
そして、その加熱ローラは、寸法の異なる多種類の用紙に対応させるために、図示はしないが、長尺状の加熱ローラ本体内に、この中央部を中心に加熱するメインヒータランプと、これとは配光が異なり両端部を中心に加熱するサブヒータランプとを内蔵し、電源からの駆動電力を印加して加熱制御している。
【0004】
しかも、熱源であるヒータランプに配光が異なるものを複数具備させている画像形成装置があり、サーモカット部材を複数のヒータランプに合わせて複数配置するか、又は全てのヒータランプの暴走に対して検出可能位置に設置する構成が提供されている。
【0005】
また、電源部等の不具合によって加熱ローラのヒータランプの熱暴走が発生して加熱ローラが必要以上に高温になるのを防ぐため、加熱ローラの外周温度が所定温度以上に上昇したとき、ヒータランプへの駆動電力印加を遮断するめ、ヒータランプ毎にサーモカット部を配置している。
【0006】
例えば、特許第3885485号(特許文献1)の熱定着装置もこの種のものである。
【0007】
この特許文献1に係る熱定着装置は、所定の温度分布中心を境にしてローラの軸方向で対称の温度分布となるようローラを加熱するヒータと、ローラの温度を検知する温度検知手段とヒータの加熱動作を遮断する複数のサーマルカットオフ手段とを有し、それら温度検知手段と複数のサーマルカットオフ手段が、ローラの軸方向において温度分布中心から対称となる所定の間隔を隔てた位置に対応したローラの表面に対向配置され、複数のサーマルカットオフ手段が、温度分布において同一位置に対応したローラの円周上に配置され、温度検知手段と複数のサーマルカットオフ手段のうちの1つとは、ローラの軸線を含む同一面上に配置されて構成されており、サーマルカットオフ手段が温度検知手段による検知温度と実質的に同温度を感知可能で、より迅速かつ的確にローラの過度な加熱防止が可能であるうえ、1つのサーマルカットオフ手段が不良であっても他のサーマルカットオフ手段が迅速かつ的確に作動し、安全性および信頼性を向上させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3885485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1では、定着装置に複数のサーモカット部材を配置して熱暴走した定着装置に対して供給電力を遮断する構成を提供するものであるが、各ヒータランプに合わせて複数のサーモカット部材を配置するから、部品点数が増加してコストアップとなり易い。
【0010】
さらに、全てのヒータランプの各熱暴走に対して検出可能位置にサーモカット部材を配置する構成では、熱暴走時に最も高温となる部分の検出が困難となり、サーモカット動作の反応が鈍くなって安全機能が低下する心配もある。
【0011】
そこで、本発明者は、画像形成装置における加熱ローラに配置する複数の加熱部の動作について鋭意観察検討した結果、複数の加熱部のうち一部を有用に加熱利用することにより、サーモカット部の個数を減少させても全体の熱暴走防止が容易になる点に着目し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、加熱ローラにおいてサーモカット部から離れた箇所で熱暴走等が発生しても、少ないサーモカット部によってその熱暴走を抑え、安全性を確保することが可能な画像形成装置の定着温度制御装置、当該画像形成装置および定着温度制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係る定着温度制御装置は、画像形成装置に配置された加熱ローラ本体と、この加熱ローラ本体に分散して内蔵され駆動電力の印加によって当該加熱ローラ本体を加熱する第1および第2の加熱部と、その加熱ローラ本体の温度を検出する温度検出部と、その第2の加熱部近傍に配置され、遮断動作に必要な期間にわたって加熱されたとき第1および第2の加熱部への駆動電力印加を遮断するサーモカット部と、その温度検出部の検出温度に基づきその駆動電力を印加制御して第1および第2の加熱部を温度制御する温度制御部であって、その温度検出部からの検出温度が所定の基準温度を超えて上昇すれば、その第2の加熱部を加熱制御する温度制御部と、を具備している。
【0014】
本発明の請求項2に係る定着温度制御装置は、上記第1および第2の加熱部が配光の異なる特性を有し、上記サーモカット部がその第2の加熱部において配光の高い部分近傍に配置されて構成されている。
【0015】
本発明の請求項3に係る定着温度制御装置は、上記第1の加熱部がその加熱ローラ本体の両端部に配置され、上記第2の加熱部がその加熱ローラ本体の中央部に配置されて構成されている。
【0016】
本発明の請求項4に係る定着温度制御装置は、その温度検出部からの検出温度が基準温度を超えている状況下でその第1の加熱部が加熱制御されていないとき、上記温度制御部がその第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
【0017】
本発明の請求項5に係る定着温度制御装置は、その温度検出部からの検出温度が基準温度を超えている状況下でその第1の加熱部が加熱制御されているとき、上記温度制御部が、第1および第2の加熱部への駆動電力の印加を遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても温度検出部からの検出温度が前記基準温度を超え続けるとき、上記第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
【0018】
本発明の請求項6に係る定着温度制御装置は、その温度検出部からの検出温度が所定期間にわたって基準温度を継続して超えるとき、上記温度制御部がその第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、それら請求項1〜6いずれか1記載の定着温度制御装置と、画像データに基づき画像形成する画像像形成部とを有する構成である。
【0019】
本発明の請求項8に係る定着温度制御方法は、画像形成装置に配置された加熱ローラ本体に対してこれに内蔵された第1および第2の加熱部に駆動電力を印加して当該加熱ローラ本体を加熱する加熱処理と、その加熱ローラ本体の温度を検出する温度検出処理と、その温度検出処理によって検出された検出温度が所定の基準温度を超えて上昇したとき、その第2の加熱部近傍に配置されたサーモカット部の遮断動作を引き起こす遮断に必要な期間にわたって第2の加熱部を加熱制御する特定加熱処理と、この特定処理によってサーモカット部の遮断動作を引き起こし、それら第1および第2の加熱部への駆動電力の印加を遮断する遮断処理と、を具備している。
【0020】
本発明の請求項9に係る定着温度制御方法は、上記第1および第2の加熱部が配光の異なる特性を有するヒータランプであり、上記サーモカット部をその第2の加熱部において配光の高い部分近傍に配置する構成を有している。
【0021】
本発明の請求項10に係る定着温度制御方法は、上記第1の加熱部をその加熱ローラ本体内の両端部に配置し、上記第2の加熱部をその加熱ローラ本体内の中央部に配置してなる構成を有している。
【0022】
本発明の請求項11に係る定着温度制御方法は、その温度検出部からの検出温度が基準温度を超えている状況下で第1の加熱部が加熱されていないとき、上記特定加熱処理がその第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
【0023】
本発明の請求項12に係る定着温度制御方法は、その検出温度が基準温度を超えている状況下で第1の加熱部が加熱されているとき、上記特定加熱処理が、それら第1および第2の加熱部への駆動電力の印加を遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても検出温度が所定の基準温度を超え続けるとき、その第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
【0024】
本発明の請求項13に係る定着温度制御方法は、検出温度が所定期間にわたって基準温度を継続して超えるとき、上記特定加熱処理がその第2の加熱部を加熱制御する構成を有している。
【発明の効果】
【0025】
このような本発明の請求項1、8に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法では、第1および第2の加熱部への駆動電力の印加によって加熱される加熱ローラ本体の温度を温度検出部で温度検出し、その検出温度が所定の基準温度を超えて上昇したとき、その第2の加熱部近傍のサーモカット部について、この遮断動作を引き起こすに必要な期間にわたって第2の加熱部を特定加熱制御し、それら第1および第2の加熱部への前記駆動電力の印加を遮断するから、少ないサーモカット部によって加熱ローラの熱暴走を抑え、安全性を確保可能である。
【0026】
本発明の請求項2、9に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法では、上記第1および第2の加熱部が配光の異なる特性のヒータランプからなり、上記サーモカット部がその第2の加熱部において配光の高い部分近傍に配置されるから、基準温度を超えて上昇した検出温度や、サーモカット部の遮断動作が確実である。
【0027】
本発明の請求項3、10に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法では、上記第1の加熱部が加熱ローラ本体の両端部に配置され、上記第2の加熱部がその加熱ローラ本体の中央部に配置されるから、基準温度を超えて上昇した検出温度や、サーモカット部の遮断動作がさらに一層、確実である。
【0028】
本発明の請求項4、11に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法は、その温度検出部からの検出温度が基準温度を超えている状況下で第1の加熱部が加熱されていないとき、上記特定加熱処理がその第2の加熱部を加熱制御するから、第1の加熱部が加熱されていなくとも、その第2の加熱部を加熱制御してサーモカット部を遮断動作可能である。
【0029】
本発明の請求項5、12に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法は、その検出温度が基準温度を超えている状況下で第1の加熱部が加熱されているとき、上記特定加熱処理が、それら第1および第2の加熱部への駆動電力の印加を遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても検出温度が所定の基準温度を超え続けるとき、その第2の加熱部を加熱制御するから、一度、第1および第2の加熱部の加熱を遮断した後、サーモカット部を遮断動作させることにより、速く熱暴走を抑えることが可能である。
【0030】
本発明の請求項6、13に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法は、検出温度が所定期間にわたって基準温度を継続して超えるとき、上記特定加熱処理がその第2の加熱部を加熱制御するから、誤動作を防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る定着温度制御装置を画像形成装置とともに実施の形態を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の内部構成を示す要部構成図である。
【図3】本発明に係る定着温度制御装置の主要部を説明する図である。
【図4】本発明に係る定着温度制御装置の主要部を説明する図である。
【図5】本発明に係る定着温度制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る定着温度制御装置、定着温度制御方法および画像形成装置の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0033】
なお、本発明に係る定着温度制御装置および定着温度制御方法は、本発明に係る画像形成装置を説明する過程で説明する。
【0034】
図1は本発明に係る定着温度制御装置を含む画像形成装置の実施の形態を示す概略ブロック図であり、図2は図1の画像形成装置の内部構成を説明する要部構成図である。
【0035】
図1において、画像形成装置Aは、主制御部1を中心としてこれに接続された画像読取部3、記憶部5、操作パネル部7、印刷装置9、通信部11を有して構成された例えば複合機である。画像形成装置Aは、これら以外にも構成要素を有するが、本発明の要部ではないので説明および図示を省略する。なお、主制御部1の機能については後述する。
【0036】
画像読取部3は、主制御部1の制御の下、図2に示すように、本体ケース13の上部に配置され、原稿から画像を光学的に読み込み、フィルタ処理等した電子的な画像データを印刷ジョブとして生成する公知のスキャナであり、生成した画像データが原稿の頁毎に記憶部5に順次記憶されるようになっている。
【0037】
図1の記憶部5は、主制御部1の制御の下、画像読取部3又は通信部11からの画像データ等を記憶する読み書き可能な不揮発性メモリ、例えばハードディスク(HDD)である。
【0038】
操作パネル部7は、図2に示すように、本体ケース13の上部に配置された公知の例えば液晶ディスプレイ表示部とタッチスイッチ式の入力部を兼ねたものであり、主制御部1の制御の下、画像形成装置Aにおける動作状態、後述する熱暴走に係る警告情報等を表示する表示部であるとともに、当該機器Aの操作指示入力を受け付ける操作部である。
【0039】
図1の印刷装置9は、主制御部1の制御の下、図2に示すように、用紙のセットされる給紙段15と、この給紙段15から1次給紙されて搬送された用紙を所定の間隔をおいて2次給紙するレジストローラ17と、記憶部5から読み出した画像データに基づきトナーカセット19からのトナーによってトナー像が形成される回転感光体21と、2次給紙された用紙にトナー像を転写するために回転感光体21に圧接配置された加圧ローラ23と、回転感光体21および加圧ローラ23の下流側に位置する加熱ローラ25と加圧ローラ27からなり転写トナー像を定着する定着部29とを有する、例えばモノクロ又はカラーの画像形成部である。
【0040】
印刷装置9には、図1に示すように、定着温度制御装置31が含まれるが、詳細は後述する。
【0041】
通信部11は、主制御部1の制御の下で、外部の図示しない画像形成装置等との間で画像データ等を送受信する機能を有している。
【0042】
主制御部1は、CPU、このCPUの起動プログラムを記憶したROM、作業用のRAMその他を有し、動作プログラムによって画像読取部3、記憶部5、操作パネル部7、入出力部13、印刷装置9、通信部11を制御し、画像読取部3から読み取られ記憶部5に格納された画像データを印刷装置9に渡して印刷制御(画像形成制御)する機能を有している。
【0043】
次に、上述した本発明の定着温度制御装置31を図3および図4を参照して説明する。
【0044】
本発明の定着温度制御装置31は、図3に示すように、加熱ローラ25、温度検出部33、サーモカット部35、温度制御部37およびスイッチ部SWと、を有して形成されている。
【0045】
なお、加熱ローラ25には、これと軸方向寸法の同じ加圧ローラ27が当接されるが、便宜上、図3および図4では図示を省略した。
【0046】
加熱ローラ25は、図3および図4に示すように、本体ケース13(図3および図4では図示せず。)に直接又は間接的に回転自在に軸支された長尺状にして円筒形の加熱ローラ本体39と、この加熱ローラ本体39内部にあって軸方向の両端部に内蔵配置され、その当該加熱ローラ本体39の両端部を中心に加熱する一対の第1の加熱部H1と、当該加熱ローラ本体39内部にあって軸方向の中央部に内蔵配置され、当該加熱ローラ本体39の第1の加熱部H1の間、すなわち軸方向中心部を加熱する第2の加熱部H2とを有している。
【0047】
第1の加熱部H1および第2の加熱部H2は、各々配光の異なる特性を有する例えばハロゲンヒータ等のヒートランプであり、加熱ローラ本体39の両端部および中央部において、各々配光の高い部分に配置されており、図示しない電源部からスイッチ部SWを介して印加される駆動電力によって加熱(点灯)、加熱停止(消灯)される。なお、配光とは昇温率の高い部分と低い部分の分布である。
【0048】
電源部は、第1の加熱部H1および第2の加熱部H2に直流駆動電源を印加して加熱させる公知のものである。
【0049】
スイッチ部SWは、温度制御部37によってオンオフ制御されるスイッチSW1、SW2であって、電源部から直流駆動電源を第1の加熱部H1に印加、遮断するスイッチSW1と、電源部から直流駆動電源を第2の加熱部H2に印加、遮断するスイッチSW2とを有している。
【0050】
温度検出部33は、加熱ローラ本体39における片方の端部外周に接触するように配置され、加熱ローラ本体39の端部温度を接触状態で検出するサーミスタ等からなる接触形温度センサであり、検出信号を温度制御部37に出力するようになっている。
【0051】
サーモカット部35は、加熱ローラ本体39における中央部、例えば第2の加熱部H2の近傍外周に僅かの間隔を置いて非接触状態で配置された温度ヒューズやサーモスタットであり、加熱ローラ本体39の中央部温度に基づき、それら第1および第2の加熱部への駆動電力の印加を遮断する機能を有する。
【0052】
すなわち、サーモカット部35は、スイッチ部SWに接続されており、遮断動作(サーモカット動作)を引き起こすに必要な期間(遮断確保期間)にわたって主に第2の加熱部H2から熱量を受けて加熱動作されたとき、それら第1および第2の加熱部H1、H2への駆動電力の印加を遮断する機能を有している。
【0053】
温度制御部37は、図示しない主電源のオン動作に連動してスイッチSW1、SW2をオン制御し、第1および第2の加熱部H1、H2を定着可能上限温度まで昇温制御するとともに、温度検出部33からの検出信号に基づき、定着可能上限温度を超えて昇温されたときスイッチSW1、SW2をオフ制御するとともに定着可能上限温度を超えて低下したときスイッチSW1、SW2をオン制御し、加熱ローラ25の端部および中央部の温度を定着可能上限温度に安定制御するシーケンスコントローラである。
【0054】
温度制御部37は、サーモカット部35がこの遮断動作を引き起こすに十分な遮断確保期間にわたって第2の加熱部H2を加熱動作させる機能を有しており、サーモカット部35が遮断動作すると、第1および第2の加熱部H1、H2への駆動電力の印加が遮断される。
【0055】
すなわち、温度制御部37は、温度検出部33からの検出温度が異常高温に係る基準温度を超えたとき、熱暴走に係る警告情報を例えば主制御部1から操作パネル部7に表示制御するとともに、その状況下で第1の加熱部H1が加熱されていないとき、サーモカット部35の遮断確保期間にわたって第2の加熱部H2を加熱制御する機能を有している。
【0056】
さらに、温度制御部37は、温度検出部33からの検出温度が異常高温に係る基準温度を超えている状況下で第1の加熱部H1が加熱されているとき、スイッチ部SWを制御して第1および第2の加熱部H1、H2への駆動電力の印加を所定期間(例えば20秒)だけ遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても温度検出部33からの検出温度が異常高温に係る基準温度を超え続けるとき、第2の加熱部H2を遮断確保期間にわたって加熱制御する機能を有している。
【0057】
なお、温度制御部37は、図示はしないが、CPU、このCPUの起動プログラムを記憶したROM、作業用のRAMその他を有して形成されている。
【0058】
次に、上述した本発明に係る定着温度制御装置の動作を、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
動作プログラムが開始されると、ステップS1にて温度制御部37が温度検出部33からの検出温度を取得(温度検出処理)するとともに基準温度とを比較し、検出温度が基準温度を超えると、加熱ローラ25(加熱ローラ本体39)が異常高温状態であると検出する。
【0060】
続く、ステップS2にて温度制御部37が警告情報を上位部である主制御部1を介して操作パネル部7に出力して表示制御し、ステップS3へ移る。
【0061】
ステップS3では、温度制御部37が第1の加熱部H1の加熱中の有無を判別し、第1の加熱部H1が加熱停止中であってステップS3がNOであれば、ステップ4にて第2の加熱部H2を加熱制御するとともに加熱期間カウントを開始し、ステップS5にて加熱期間カウントが遮断確保動作期間に達するまでカウントを継続するとともに第2の加熱部H2の加熱も継続する(特定加熱処理)。
【0062】
加熱期間カウントが遮断確保動作期間に達してステップS5がYESになると、ステップS6にてサーモカット部35が遮断動作し、第1および第2の加熱部H1、H2への駆動電力の印加を遮断し、第1および第2の加熱部H1、H2が加熱停止制御される(遮断処理)。
【0063】
第1の加熱部H1が加熱中であってステップS3がYESであれば、ステップ7にて温度制御部37が第1および第2の加熱部H1、H2を加熱停止制御するとともに、加熱停止期間カウント開始し、ステップS8にて検出温度が基準温度を超えて低下するか否か判別し、検出温度が低下して異常高温が検出されなければ終了する(特定加熱処理)。
【0064】
検出温度が基準温度を超えて低下せずに異常高温が検出され続けてステップS8がNOであれば、ステップS9にて停止期間カウントが所定期間に達するまで温度制御部37がステップS8、S9を繰り返し、加熱停止期間カウントが所定期間に達すると、ステップS4に移ってステップS4以降を処理する(特定加熱処理)。
【0065】
なお、これらの主要処理が本発明に係る定着温度制御方法を構成する。
【0066】
このように本発明の定着温度制御装置31は、画像形成装置Aに配置された加熱ローラ本体39(加熱ローラ25)と、この加熱ローラ本体39に分散して内蔵され駆動電力の印加によって加熱ローラ本体39を加熱する第1、第2の加熱部H1、H2と、その加熱ローラ本体39の温度を検出する温度検出部33と、その第2の加熱部H2近傍に配置され、遮断確保期間にわたって加熱されたとき第1、第2の加熱部H1、H2への駆動電力印加を遮断するサーモカット部35と、その温度検出部33の検出温度に基づき駆動電力を印加制御して第1、第2の加熱部H1、H2を温度制御する温度制御部37を具備している。
【0067】
しかも、温度制御部37は、温度検出部33からの検出温度が所定の異常高温に係る基準温度を超えて上昇すれば、第2の加熱部H2をこの加熱の有無に拘わらず加熱制御する機能を有している。
【0068】
そのため、例えば、第1の加熱部H2が加熱され続け、サーモカット部35から離れた箇所で加熱熱暴走等の異常高温状態が発生しても、1個のサーモカット部35によって早期に熱暴走を抑え、安全性を確保可能であるし、構成部品が減少して構成も簡単、小形になる。
【0069】
そして、それら第1、第2の加熱部H1、H2が配光の異なる特性を有するヒートランプからなり、サーモカット部35が加熱ローラ本体39中央部の第2の加熱部H2において配光の高い部分近傍に配置されてなるから、基準温度を超えて上昇した検出温度やサーモカット部35の遮断動作が確実である。
【0070】
また、上述した定着温度制御装置31において、温度検出部33からの検出温度が基準温度を超えている状況下で第1の加熱部H1が加熱されていないとき、第2の加熱部H2を加熱制御するから、第1の加熱部H1が加熱されていなくとも第2の加熱部H2を加熱制御し、サーモカット部35の遮断動作を確保可能である。
【0071】
さらに、同じ状況下で第1の加熱部H1が加熱されているときは、それら第1および第2の加熱部H1、H2への駆動電力印加を遮断制御して検出温度の状態を監視するから、速く熱暴走を抑えることが可能である。
【0072】
もし、検出温度が基準温度を超え続けて異常高温であれば、第2の加熱部H2を加熱制御するから、一度、第1および第2の加熱部H1、H2の加熱を遮断してから第2の加熱部H2を再度加熱制御してサーモカット部35を遮断動作させることにより、確実に熱暴走を抑えることが可能である。
【0073】
なお、本発明の定着温度制御装置31において、検出温度が所定期間にわたって基準温度を継続して超えるとき、第2の加熱部H2を加熱制御する構成にすれば、誤動作を防止可能であり、これに対応させて温度制御部37を形成すれば良い。
【0074】
なお、上述した構成の定着温度制御装置31において、第1の加熱部H1を一対で形成したが、本発明では複数の加熱部で第1の加熱部H1を形成する構成も可能である。
【0075】
上述した本発明に係る定着温度制御装置31を搭載した本発明の画像形成装置Aにおいても、定着温度制御装置と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 主制御部
3 画像読取部
5 記憶部
7 操作パネル部(表示部、入力部)
9 印刷装置
11 通信部
13 本体ケース
15 給紙段
17 レジストローラ
21 回転感光体
23、27 加圧ローラ
25 加熱ローラ
29 定着部
31 定着温度制御装置
33 温度検出部
35 サーモカット部
37 温度制御部
39 加熱ローラ本体
A 画像形成装置(複合機)
H1 第1の加熱部(ヒータランプ)
H2 第2の加熱部(ヒータランプ)
SW スイッチ部
SW1、SW2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に配置された加熱ローラ本体と、
この加熱ローラ本体に分散して内蔵され駆動電力の印加によって前記加熱ローラ本体を加熱する第1および第2の加熱部と、
前記加熱ローラ本体の温度を検出する温度検出部と、
前記第2の加熱部近傍に配置され、遮断動作に必要な期間にわたって加熱されたとき前記第1および第2の加熱部への前記駆動電力印加を遮断するサーモカット部と、
前記温度検出部の検出温度に基づき前記駆動電力を印加制御して前記第1および第2の加熱部を温度制御する温度制御部であって、前記温度検出部からの検出温度が所定の基準温度を超えて上昇すれば、前記第2の加熱部を熱制御する温度制御部と、
を具備することを特徴とする定着温度制御装置。
【請求項2】
前記第1および第2の加熱部は配光の異なる特性を有するヒータランプからなり、前記サーモカット部は前記第2の加熱部において配光の高い部分近傍に配置されてなる請求項1記載の定着温度制御装置。
【請求項3】
前記第1の加熱部は前記加熱ローラ本体の両端部に配置され、前記第2の加熱部は前記加熱ローラ本体の中央部に配置されてなる請求項1又は2記載の定着温度制御装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記温度検出部からの検出温度が前記基準温度を超えている状況下で前記第1の加熱部が加熱制御されていないとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項1〜3いずれか1記載の定着温度制御装置。
【請求項5】
前記温度制御部は、前記温度検出部からの検出温度が前記基準温度を超えている状況下で前記第1の加熱部が加熱制御されているとき、前記第1および第2の加熱部への前記駆動電力の印加を遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても前記温度検出部からの検出温度が前記基準温度を超え続けるとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項1〜3いずれか1記載の定着温度制御装置。
【請求項6】
前記温度制御部は、前記温度検出部からの検出温度が所定期間にわたって前記基準温度を継続して超えるとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項1〜5いずれか1記載の定着温度制御装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6いずれか1記載の定着温度制御装置と、画像データに基づき画像形成する画像像形成部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置に配置された加熱ローラ本体に対してこれに内蔵された第1および第2の加熱部に駆動電力を印加して当該加熱ローラ本体を加熱する加熱処理と、
前記加熱ローラ本体の温度を検出する温度検出処理と、
この温度検出部処理によって検出された検出温度が所定の基準温度を超えて上昇したとき、前記第2の加熱部近傍に配置されたサーモカット部の遮断動作を引き起こすに必要な期間にわたって前記第2の加熱部を加熱制御する特定加熱処理と、
前記特定加熱処理によって前記サーモカット部の遮断動作を引き起こし、前記第1および第2の加熱部への前記駆動電力の印加を遮断する遮断処理と、
を具備することを特徴とする定着温度制御方法。
【請求項9】
前記第1および第2の加熱部は配光の異なる特性を有するヒータランプであり、前記サーモカット部は前記第2の加熱部において配光の高い部分近傍に配置する請求項8記載の定着温度制御方法。
【請求項10】
前記第1の加熱部は前記加熱ローラ本体の両端部に配置し、前記第2の加熱部は前記加熱ローラ本体の中央部に配置する請求項8又は9記載の定着温度制御方法。
【請求項11】
前記特定加熱処理は、前記温度検出部からの検出温度が前記基準温度を超えている状況下で前記第1の加熱部を加熱していないとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項8〜10いずれか1記載の定着温度制御方法。
【請求項12】
前記特定加熱処理は、前記検出温度が前記基準温度を超えている状況下で前記第1の加熱部を加熱しているとき、前記第1および第2の加熱部への前記駆動電力の印加を遮断制御するとともに、当該遮断制御によっても前記検出温度が所定の基準温度を超え続けるとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項8〜10いずれか1記載の定着温度制御方法。
【請求項13】
前記特定加熱処理は、前記検出温度が所定期間にわたって前記基準温度を継続して超えるとき、前記第2の加熱部を加熱制御する請求項8〜12いずれか1記載の定着温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−95289(P2011−95289A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246189(P2009−246189)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】