説明

密封装置

【課題】シール性を維持しつつ、より一層、摩擦抵抗の低減を図った密封装置を提供する。
【解決手段】環状の密封装置100における中心軸を通る切断面で見た場合に、第1傾斜面110Xと第2傾斜面110Yとの間の曲面の曲率半径をR0,環状溝における密封対象流体側(O)の側面と第1傾斜面110Xとの間の湾曲面の曲率半径を、各環状溝について、それぞれR1a,R2a,R3a,R4aとし、環状溝における大気側(A)の側面と第1傾斜面110Xとの間の湾曲面の曲率半径を、各環状溝について、それぞれR1b,R2b,R3b,R4bとした場合に、R1b,R2b,R3b,R4b<R0<R1a,R2a,R3a,R4aを満たすように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に往復移動する2部材間の環状隙間を密封する密封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動用の密封装置において、摩擦抵抗を低減させるために、シールリップにおける摺動面に複数の環状溝を設ける技術が知られている。また、このように複数の環状溝を設けることによるシール性の低下を抑制するために、各環状溝における両側面の摺動面に対する傾斜角度を異ならせるようにすることで、油などの密封対象流体を密封対象流体側に引き戻すようにする技術が知られている(特許文献1参照)。この技術は、環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と摺動面との間のエッジの角度の方が、密封対象流体側の側面と摺動面との間のエッジの角度よりも小さくすることにより、漏れ量よりも密封対象流体側への密封対象流体の戻し量の方が多くなるようにしたものである。
【0003】
ここで、例えば、油圧が1MPa以上2MPa以下の油を密封する場合であって、油がブレーキオイルなどの潤滑性の悪い(粘度の低い)ものであった場合には、密封装置におけるシールリップのリップ先端を湾曲面で構成し、かつゴム製の密封装置におけるゴム材料として、硬度の比較的低いもの(硬度70度程度)が採用されるのが一般的である。
【0004】
このような場合に、摩擦抵抗を低減させるために、上記の従来技術を適用した場合には、環状溝の側面と摺動面との間がエッジであるため、潤滑油膜をきれいに掻き取ってしまい、潤滑効果が得られにくいという問題がある。その他、関連する技術として、特許文献2,3に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2592489号公報
【特許文献2】特開2008−101704号公報
【特許文献3】特開2006−322528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シール性を維持しつつ、より一層、摩擦抵抗の低減を図った密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の密封装置は、
相対的に往復移動する2部材間の環状隙間を密封する密封装置において、
密封対象流体側かつ前記2部材のうちの一方の部材に向かって伸び、該一方の部材の表面に摺動自在に接触するシールリップを備え、
該シールリップにおける密封対象流体側とは反対側の第1傾斜面には、密封対象流体側から、その反対側に向かって、それぞれ間隔をあけて複数の環状溝が設けられると共に、
これらの環状溝における密封対象流体側側面と第1傾斜面との間、及び密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間は、いずれも湾曲面となっており、かつ前記シールリップの先端の密封対象流体側の第2傾斜面と第1傾斜面との間も湾曲面となるように構
成された密封装置であって、
環状の密封装置における中心軸を通る切断面で見た場合に、
第1傾斜面と第2傾斜面との間の曲面の曲率半径は、前記複数の環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも大きく、前記複数の環状溝における密封対象流体側側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、環状溝における側面と第1傾斜面との間は湾曲面で構成されているので、摺動時において、一方の部材の表面の密封対象流体をきれいに掻き取ってしまうようなことはなく、潤滑性が維持される。また、複数の環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径と、複数の環状溝における密封対象流体側側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径との関係により、密封対象流体を密封対象流体側に戻す機能が発揮される。また、これらの曲率半径と、第1傾斜面と第2傾斜面との間の曲面の曲率半径との関係により、密封対象流体側とは反対側への密封対象流体の掻き出しをより抑制することができる。
【0010】
また、環状の密封装置における中心軸を通る切断面で見た場合に、
前記複数の環状溝のうち密封対象流体側のいくつかの環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径は、他の環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも小さいとよい。
【0011】
これにより、主に、密封対象流体側のいくつかの環状溝の部位で、密封対象流体を密封対象流体側に戻す機能を発揮させ、他の環状溝の部位では、当該機能をそれ程発揮させないようにして、摺動面全体の潤滑性を保たせることができる。
【0012】
密封対象流体側からの圧力が作用していない状態において、前記複数の環状溝のうち最も密封対象流体側の環状溝の両側の第1傾斜面の部分が、前記一方の部材の表面に密着するように構成されているとよい。
【0013】
これにより、圧力が作用していない状態や圧力が低い状態でも、潤滑性及びシール性が維持される。
【0014】
前記複数の環状溝における密封対象流体側側面は、いずれも第1傾斜面に対して傾斜した面で構成されており、第1傾斜面と平行な底面を介することなく密封対象流体側とは反対側の側面に繋がっているとよい。
【0015】
これにより、高圧時等において、環状溝の溝底面が一方の部材表面に密着してしまうことを抑制できる。これにより、面圧分布が不安定になってしまうことを抑制できる。また、第1傾斜面と平行な底面を設ける場合に比して、環状溝の溝幅を狭くできるので、環状溝の配置密度を高めることができる。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、シール性を維持しつつ、より一層、摩擦抵抗の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る密封装置のシールリップ先端の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係るゴム状弾性体製の密封装置について説明する。
【0021】
<密封装置の全体構成>
特に、図1を参照して、本発明の実施例に係る密封装置の全体構成について説明する。本実施例に係る密封装置100は、相対的に往復移動する2部材(例えば、軸200とハウジング)間の環状隙間を密封するために用いられる。本実施例において、密封対象流体は油であり、図1中、左側が密封対象流体側(O)である。また、図1中、右側が密封対象流体側とは反対側の大気側(A)である。
【0022】
図1では、密封装置100には外力が作用していない状態において、環状の密封装置100における中心軸を通る面で、密封装置100を切断した断面図を模式的に示している。なお、密封装置100は回転対称形状であり、当該中心軸を通る切断面は、どの面で切断しても同一形状である。また、図1では、密封装置100が装着される場合における軸200の外周表面とハウジングの軸孔300の内周表面の位置を点線にて示している。
【0023】
密封装置100は、軸孔300の内周表面に摺動自在に接触する第1シールリップ110と、軸200の外周表面に接触する第2シールリップ120とを備えている。この密封装置100は、断面形状が略U字形状であり、Uパッキンとも呼ばれる。この密封装置100は、図1に示すように、これら第1シールリップ110及び第2シールリップ120が設けられている側が、密封対象流体側(O)を向くように配置される。図1から明らかなように、第1シールリップ110は、密封対象流体側(O)かつハウジングの軸孔300に向かって伸び、軸孔300の内周表面に摺動自在に接触するように構成されている。
【0024】
また、この第1シールリップ110は、リップ先端において、大気側(A)の第1傾斜面110Xと、密封対象流体側(O)の第2傾斜面110Yとを有する。なお、第1傾斜面110Xは密封対象流体側(O)に向かって拡径するテーパ面で構成され、第2傾斜面110Yは密封対象流体側(O)に向かって縮径するテーパ面で構成される。なお、密封装置100における第1シールリップ110よりも大気側(A)の外周表面は円筒面130で構成されている。すなわち、当該円筒面130と、軸孔300の内周表面は平行となるように構成されている。
【0025】
<第1シールリップ>
特に、図2を参照して、第1シールリップ110について、より詳細に説明する。
【0026】
第1シールリップ110における第1傾斜面110Xには、密封対象流体側(O)から大気側(A)に向かって、それぞれ間隔をあけて複数の環状溝が設けられている。ここでは、説明の便宜上、適宜、これら複数の環状溝を、それぞれ第1環状溝111,第2環状溝112,第3環状溝113,第4環状溝114と称する。
【0027】
また、上記の通り、これらの環状溝は間隔を空けて設けられているため、第1傾斜面110X(つまり、テーパ面)は残存している。図1においては、第1傾斜面110Xのう
ち、第1環状溝111よりも先端側の部位には110X1,第1環状溝111と第2環状溝112との間の部位には110X2,第2環状溝112と第3環状溝113との間の部位には110X3,第3環状溝113と第4環状溝114との間の部位には110X4をそれぞれ付している。
【0028】
そして、これらの環状溝における密封対象流体側(O)の側面と第1傾斜面110Xとの間はいずれも湾曲面で構成されている。また、これらの環状溝における大気側(A)の側面と第1傾斜面110Xとの間についても、いずれも湾曲面となっている。更に、第1シールリップ110の先端の第2傾斜面110Yと第1傾斜面110Xとの間も湾曲面となるように構成されている。
【0029】
ここで、環状の密封装置100における中心軸を通る切断面で見た場合に、上記の各湾曲面の曲率半径を以下のように定める。
【0030】
第1傾斜面110Xと第2傾斜面110Yとの間の曲面の曲率半径をR0とする。環状溝における密封対象流体側(O)の側面と第1傾斜面110Xとの間の湾曲面の曲率半径を、第1環状溝111,第2環状溝112,第3環状溝113,第4環状溝114について、それぞれR1a,R2a,R3a,R4aとする。環状溝における大気側(A)の側面と第1傾斜面110Xとの間の湾曲面の曲率半径を、第1環状溝111,第2環状溝112,第3環状溝113,第4環状溝114について、それぞれR1b,R2b,R3b,R4bとする。
【0031】
このとき、本実施例に係る密封装置100は、
R1b,R2b,R3b,R4b<R0<R1a,R2a,R3a,R4a(式1)
を満たすように構成されている。
【0032】
本実施例では、R1a=R2a=R3a=R4aとしているが、必ずしも、このように設定する必要はない。
【0033】
また、R1b,R2b,R3b,R4bについては、
R1b<R2b=R3b=R4b(式2)
または、
R1b=R2b<R3b=R4b(式3)
を満たすようにするのが好ましい。
【0034】
また、R1a,R2a,R3a,R4aについては、極力大きくするのが望ましい。
【0035】
また、本実施例においては、密封対象流体側(O)からの圧力が作用していない状態において、複数の環状溝のうち最も密封対象流体側(O)の第1環状溝111の両側の第1傾斜面の部分110X1,110X2が、軸孔300の内周表面に密着するように構成されている。なお、それよりも大気側(O)における第1傾斜面の部分110X3,110X4が、軸孔300の内周表面に密着するように構成してもよく、圧力が作用していない状態で、どの部位まで軸孔300の内周表面に密着させるかは、使用環境に応じて、適宜設定すればよい。ただし、上記の通り、少なくとも第1傾斜面の部分110X1,110X2については、軸孔300の内周表面に密着するように構成される。
【0036】
また、本実施例においては、第1環状溝111,第2環状溝112,第3環状溝113,第4環状溝114における密封対象流体側(O)の側面は、いずれも第1傾斜面110Xに対して傾斜した面で構成されており、第1傾斜面110Xと平行な底面を介することなく大気側(A)の側面に繋がっている。従って、各環状溝の断面形状は、略三角形とな
っている。なお、本実施例においては、各環状溝の大気側(A)の側面は、第1傾斜面110Xに対して傾斜した面で構成されているが、第1傾斜面110Xに対して垂直な面で構成してもよい。また、本実施例においては、各環状溝の密封対象流体側(O)の側面と大気側(A)の側面は湾曲面で繋がるように構成されている。
【0037】
また、本実施例においては、第1環状溝111,第2環状溝112,第3環状溝113,第4環状溝114の溝の深さをいずれも等しくしている。なお、金型加工の観点からは、加工が容易であることから各環状溝における溝の深さを等しくするのが望ましいが、必ずしも深さを等しくする必要はない。
【0038】
<本実施例に係る密封装置の優れた点>
以上のように、本実施例に係る密封装置100によれば、第1シールリップ110の第1傾斜面110Xに設けられた複数の環状溝について、これらの両側の側面と第1傾斜面110Xとの間は湾曲面で構成されている。
【0039】
従って、軸200とハウジングとの相対的な移動に伴って、第1シールリップ110と軸孔300の内周表面とが摺動した場合に、当該内周表面上の油をきれいに掻き取ってしまうようなことはなく、潤滑性が維持される。
【0040】
また、第1シールリップ110における各湾曲面の(断面で見た場合の)曲率半径が上記(式1)におけるR1b,R2b,R3b,R4b<R1a,R2a,R3a,R4aの関係から、第1シールリップ110と軸孔300の内周表面とが摺動した場合に、密封対象流体である油を密封対象流体側(O)に戻す機能が発揮され、シール性が向上する。また、上記(式1)におけるR0についての他の曲率半径との関係により、油の大気側(A)への掻き出しをより抑制することができる。すなわち、R0<R1a,R2a,R3a,R4aの関係から、面圧の分布(軸線方向に対する面圧の推移)については、R1a,R2a,R3a,R4aの部位の方が、R0の部位よりも、面圧の変位量(傾き)が小さくなるため、軸200とハウジングとの相対的な往復移動時におけるR0の部位からの油漏れを抑制することができる。
【0041】
また、上記の通り、各環状溝においては、上記(式2)または(式3)を満たすようにするのが好ましい。これにより、主に、密封対象流体側(O)のいくつかの環状溝の部位で、密封対象流体である油を密封対象流体側(O)に戻す機能を発揮させ、他の環状溝の部位では、当該機能をそれ程発揮させないようにして、摺動面全体の潤滑性を保たせることができる。なお、複数の環状溝のうち密封対象流体側(O)のいくつかの環状溝に関して、環状溝における大気側(A)の側面と第1傾斜面110Xとの間の湾曲面の曲率半径を小さめに設定し、それ以外の環状溝については大きめに設定すればよく、必ずしも、上記(式2)や(式3)に限定されるものではない。また、例えば、R1b<R2b<R3b<R4bの関係を満たすようにすることもできる。
【0042】
また、R1a,R2a,R3a,R4aについては、極力大きくすることによって、密封対象流体側(O)から大気側(A)への面圧分布において、面圧の勾配を小さくすることができ、高圧時においても摺動部に油膜を保持し、潤滑性を安定的に維持することができる。
【0043】
また、本実施例では、密封対象流体側(O)からの圧力が作用していない状態において、第1環状溝111の両側の第1傾斜面の部分110X1,110X2が、軸孔300の内周表面に密着するように構成されている。これにより、圧力が作用していない状態や圧力が低い状態でも、潤滑性及びシール性が維持される。つまり、上記面圧分布において、面圧を分散でき、かつ圧力が低い状態で、第1シールリップ110と軸孔300の内周表
面とが摺動しても、密封対象流体側(O)に油を戻す機能を発揮させることができる。
【0044】
また、本実施例においては、複数の環状溝における密封対象流体側(O)の側面は、いずれも第1傾斜面110Xに対して傾斜した面で構成されており、第1傾斜面110Xと平行な底面を介することなく大気側(A)の側面に繋がっている。従って、高圧時等において、環状溝の溝底面が軸孔300の内周表面に密着してしまうことを抑制できる。これにより、面圧分布が不安定になってしまうことを抑制できる。また、第1傾斜面と平行な底面を設ける場合に比して、環状溝の溝幅を狭くできるので、環状溝の配置密度を高めることができる。
【0045】
また、本実施例においては、密封装置100における第1シールリップ110よりも大気側(A)の外周表面は円筒面130で構成されている。従って、第1シールリップ110よりも大気側(A)に移動した油をスムーズに密封対象流体側(O)に戻すことができる。
【0046】
以上のように、本実施例に係る密封装置100によれば、無圧状態であっても高圧状態であっても、シール性を維持しつつ、油膜を安定的に維持させることができ、摩擦抵抗の低減を図ることができる。従って、比較的高圧環境下で使用される場合や、密封対象流体が潤滑性の悪い(粘度の低い)油のような場合や、密封装置100の素材として、比較的高度の低いゴム材料が採用される場合であっても、本実施例に係る密封装置100を好適に用いることができる。また、本実施例に係る密封装置100の場合には、特許文献1に開示されている技術のように、シールリップがスプリングなどによって摺動側の相手部材に押し付けられることがないため、密封対象流体の圧力が低い場合には軸孔300の内周表面に対する接触圧力は低いものの、上記の通り、シール性が維持される。なお、本実施例では、軸孔の内周表面に摺動自在に接触するシールリップに対して、複数の環状溝を設ける場合を例にして説明したが、本発明は、軸表面に対して摺動自在に接触するシールリップに対して、複数の環状溝を設ける場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 密封装置
110 第1シールリップ
110X 第1傾斜面
110Y 第2傾斜面
111 第1環状溝
112 第2環状溝
113 第3環状溝
114 第4環状溝
120 第2シールリップ
130 円筒面
200 軸
300 軸孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に往復移動する2部材間の環状隙間を密封する密封装置において、
密封対象流体側かつ前記2部材のうちの一方の部材に向かって伸び、該一方の部材の表面に摺動自在に接触するシールリップを備え、
該シールリップにおける密封対象流体側とは反対側の第1傾斜面には、密封対象流体側から、その反対側に向かって、それぞれ間隔をあけて複数の環状溝が設けられると共に、
これらの環状溝における密封対象流体側側面と第1傾斜面との間、及び密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間は、いずれも湾曲面となっており、かつ前記シールリップの先端の密封対象流体側の第2傾斜面と第1傾斜面との間も湾曲面となるように構成された密封装置であって、
環状の密封装置における中心軸を通る切断面で見た場合に、
第1傾斜面と第2傾斜面との間の曲面の曲率半径は、前記複数の環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも大きく、前記複数の環状溝における密封対象流体側側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも小さいことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
環状の密封装置における中心軸を通る切断面で見た場合に、
前記複数の環状溝のうち密封対象流体側のいくつかの環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径は、他の環状溝における密封対象流体側とは反対側の側面と第1傾斜面との間の各曲面の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
密封対象流体側からの圧力が作用していない状態において、前記複数の環状溝のうち最も密封対象流体側の環状溝の両側の第1傾斜面の部分が、前記一方の部材の表面に密着するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記複数の環状溝における密封対象流体側側面は、いずれも第1傾斜面に対して傾斜した面で構成されており、第1傾斜面と平行な底面を介することなく密封対象流体側とは反対側の側面に繋がっていることを特徴とする請求項1,2または3に記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211659(P2012−211659A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78089(P2011−78089)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【特許番号】特許第5056968号(P5056968)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】