説明

寸法測定方法及び装置

【課題】 非接触三次元測定装置を用いて製缶構造物の寸法測定を行う方法と装置を提供する。
【解決手段】 寸法測定装置1は、マスト10とターンテーブル30を備え、レーザビームを用いた三次元測定機22はマスト10に昇降自在に取付けられる。ターンテーブル30上にはワーク100が取付けられ、基準点位置に複数のスチールボールB,B・・・が置かれる。三次元測定機22は、複数のスチールボールの位置を測定するとともに、ワークの各部の座標位置の測定データを得る。測定データで作成されたワーク形状をCADデータに重ね合わせて、ベストフィットを得る。ベストフィットに基づいてワークの各部品の寸法を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の構造物の寸法測定に適した寸法測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両の台車枠等の構造物は、鋼材をプレス加工や鋳造加工した部品を溶接加工等により製缶し、製造される。
台車枠は、他の部品の取付けのために、機械加工が施されるので、台車枠素材の各部の寸法、形状を正確に測定する必要がある。
大型の構造物を非接触で測定する手段として、レーザ光を利用した測定方法が本出願人により提案されており、下記の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−130874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上述した技術を更に発展させたレーザ光を利用した三次元測定機と旋回テーブルを備えた測定方法と装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の寸法測定方法は、非接触三次元測定機と、寸法測定の対象ワークを載置するターンテーブルと、ターンテーブル上に設定される複数の基準点を備え、非接触三次元測定機は、ターンテーブル上の基準点を測定することにより、測定機の位置データを修正し、修正した位置データに基いてターンテーブル上のワークを測定するものである。
また、本発明の寸法測定装置は、レーザビームを用いた非接触三次元測定装置と、非接触三次元測定装置を昇降駆動する昇降装置と、ワークを載置するターンテーブルと、ターンテーブルと、ターンテーブル上に設定される複数の基準点にとりつけられるボールと、を備え、非接触三次元測定機は、ターンテーブル上のボールの位置をレーザビームにより測定して、測定機の位置データを修正する機能と、修正された位置データに基いてワークの各部にレーザビームを照射してワークの寸法を測定する機能を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図1は、本発明の寸法測定装置の外観図である。
全体を符号1で示す寸法測定装置は、ベース5で連結されるマスト10とターンテーブル30を備える。マスト10は、ガイドレール12を有し、測定ヘッド20をZ軸方向に案内する。なお、マストとターンテーブルは互に独立した構造とすることもできる。
【0006】
測定ヘッド20は、三次元測定機22を有し、三次元測定機22は、レーザビームLBをワーク100の各部位に照射し、三次元データを検知する。三次元データは、ラインLを介してパソコンPC1に送られ、データ処理される。
このデータは、ラインLを介して複合加工機MTの制御用パソコンPC2に送られ、取付位置等の加工用に利用される。
【0007】
ターンテーブル30は、矢印R方向に360度旋回可能であり、この旋回角度位置情報はPC1に送られる。
【0008】
ターンテーブル30上には、取付治具32を介してワーク100が取付けられる。ターンテーブル30上には、基準点位置に複数のスチールボールB、B、B、・・・が設置される。
三次元測定機22は、このターンテーブル30上のスチールボールの位置を測定し、ワークの各部の座標位置の測定データと関連づける。各方位からの測定データも、スチールボールの測定データによって関連づけられる。
【0009】
図2は、ワークである台車枠素材の外観を示す。
台車枠100は、レール方向に延びる2本の部材110と、部材110を連結する2本のパイプ部材120を備える。そして各部材には、モータやブレーキ装置を取付けるための座を有するフランジ部材等の部品が溶接等により固着される。
【0010】
図3は、図2に示した台車枠100を三次元測定機により測定した全体のデータDを示す。
パソコンPC1は、ワーク100のCADデータCを記載している。図4は、このワーク100のCADデータCに図3で示した測定データDを重ね合わせたものを示す。
【0011】
図5は、測定データのうちから、部品測定データPDのみをとり出したものを示す。
【0012】
図6は、部品測定データPDをワーク100のCADデータCに重ね合わせた状態を示し、図7は、図6の要部の拡大図である。
【0013】
図7は、ワーク100の部材の取付座152の拡大図であって、取付座152のCADデータCに部品測定データPDを重ね合わせた状態を示す。
ワーク100のCADデータCに対して、実際のワークを測定した部品データPDの差を評価して、例えば後工程の機械加工での削り代等を算出する。各部品の削り代等が最適(ベストフィット)すなわち、CADデータと測定データの誤差が最小となるように、測定データを移動させて、CADデータとの重ね合わせ操作を繰り返す。
ベストフィットが見出せれば、このときのワークの基準面をワーク表面に対してケガキを施し、後工程の機械加工の基準面として利用する。ケガキは、あらかじめワークに塗布しておいた塗料(例えば、有機ホウ素系塗料)にレーザを照射し、この塗料を変色させる。
【0014】
図8は、測定処理のフロー図である。
ステップS10でスタートした処理は、ステップS11で三次元測定機22のZ軸方向の現在の位置とターンテーブル30の現在の旋回角度データをパソコンPC1に転送する。
ステップS12で三次元測定機の昇降装置とターンテーブルを駆動し、ステップS13でターンテーブル上の基準点に配置した各ボールB、B、・・・を測定し、ステップS14で三次元測定機の位置データを修正する。
【0015】
ステップS15では、ターンテーブル上に取り付けたワークの位置確認のための測定を行い、ステップS16でワークの取り付け位置の確認を行う。
ワークの取り付け位置が不良であれば、ステップS17でワークの取り付け位置の再確認が必要な旨のアラームを出し、ステップS15へ戻る。
ワークの位置がおおむね適正であれば、ステップS18へ移行し、三次元測定機の昇降位置とターンテーブルを駆動し、ステップS19でターンテーブル上の基準点のボールを測定する。ステップS20で三次元測定機の位置データを修正し、ステップS21でワーク外形の測定を実行する。必要に応じてステップS18以下の工程を繰返す。
【0016】
ステップS22でワーク外形の測定データのノイズを除去し、ステップS23でワーク外形のCADデータとの間でベストフィット処理を行う。
ベストフィット処理が完了したら、ステップS24で三次元測定機の昇降装置とターンテーブルを駆動して位置を設定し、ステップS25でターンテーブル上の基準点の測定を行い、ステップS26で三次元測定機の位置データを修正し、ステップS27でワークの各部品の詳細を測定する。ステップS24以下の工程を必要回数繰返す。
【0017】
ステップS28で部品詳細測定データのノイズを除去し、ステップS29でCADデータと比較して部品取付位置誤差を算出する。ステップS30で誤差、加工補正データを複合加工機側のパソコンへ出力する。
ステップS31で再度三次元測定機の昇降装置とテーブルを駆動し、ステップS32で基準点の測定を行う。ステップS33で三次元測定機の位置データを修正し、ステップS34でワークの基準断面の計測を行う。ワークの基準断面は図2の面S、S、S、Sで示される。
【0018】
ステップS35で三次元測定機の昇降装置とターンテーブルを駆動し、ステップS36でワーク上の基準面断面線を指示し、ケガキを施す。このケガキは、例えばワーク表面に薬剤を塗布し、レーザビームを照射することにより、薬剤がその部分だけ着色されるような手段を用いる。
これにより、非接触で行うことができる。
このケガキ工程は必要回数繰返して行う。ケガキ処理が完了したなら、S37で三次元測定機の昇降装置とターンテーブルを原点位置に復帰させ、ステップS38で処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の寸法測定装置の外観図。
【図2】台車枠の斜視図。
【図3】台車枠の測定データを示す説明図。
【図4】測定データとCADデータの重ね合わせを示す説明図。
【図5】部品の測定データを示す説明図。
【図6】部品の測定データとCADデータの重ね合わせを示す説明図。
【図7】部品の測定データとCADデータの重ね合わせを示す拡大説明図。
【図8】本発明の寸法測定とケガキの処理を示すフロー図。
【符号の説明】
【0020】
1 寸法測定装置
10 マスト
20 測定ヘッド
22 三次元測定機
30 ターンテーブル
100 ワーク
、B、B・・・ ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触三次元測定機と、寸法測定の対象ワークを載置するターンテーブルと、ターンテーブル上に設定される複数の基準点を備え、非接触三次元測定機は、ターンテーブル上の基準点を測定することにより、測定機の位置データを修正し、修正した位置データに基いてターンテーブル上のワークを測定する寸法測定方法。
【請求項2】
ワークの測定データと、ワークのCADデータとを重ね合わせることによりワークの寸法を測定する請求項1記載の寸法測定方法。
【請求項3】
ワーク全体の測定データとワークのCADデータを重ね合わせてベストフィット処理を行い、ワークに設けられる部品の測定データとCADデータを重ね合わせることでワークの部品の寸法を測定する寸法測定方法。
【請求項4】
ワークの基準断面を計測する工程と、ケガキ用の塗料を塗布する工程と、ワークの表面に基準断面線をケガキする工程を備える請求項1記載の寸法測定方法。
【請求項5】
レーザビームを用いた非接触三次元測定装置と、非接触三次元測定装置を昇降駆動する昇降装置と、ワークを載置するターンテーブルと、ターンテーブルと、ターンテーブル上に設定される複数の基準点にとりつけられるボールと、を備え、
非接触三次元測定機は、ターンテーブル上のボールの位置をレーザビームにより測定して、測定機の位置データを修正する機能と、修正された位置データに基いてワークの各部にレーザビームを照射してワークの寸法を測定する機能を備える寸法測定装置。
【請求項6】
レーザビームを用いた非接触三次元測定機は、ワーク表面にケガキ線を描く機能を備える請求項5記載の寸法測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−329745(P2006−329745A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151974(P2005−151974)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】