説明

導電性材料の製造方法

【課題】微細なパターンが得られ、かつマイグレーションが抑制された導電性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性基板上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光、現像処理することで、樹脂成分を含有する銀パターンおよび/または樹脂成分を含有する非銀パターン部を設け、その後、該銀パターンおよび/または非銀パターン部に、該樹脂成分を架橋する架橋剤を作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材、アンテナ回路、タッチパネル、電子回路等の用途に用いることができる導電性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板表面へ金属パターンを形成させた配線回路が電子部材、半導体素子に広く用いられている。これらの金属としては導電性が高い銀、銅がよく用いられるが、これら金属はイオンマイグレーションが発生しやすいという問題があり、とりわけ銀はこの問題が顕著に表れる。
【0003】
イオンマイグレーションとは一種の電極作用であり、電圧印可された電極間に電解液が存在した場合、陽極の金属が溶出し、陰極へ移行、析出する現象である。イオンマイグレーションが配線金属間で起こり、溶出、移行し、析出した金属が短絡してしまうと回路機能を果たさなくなってしまう。
【0004】
特に最近は半導体集積回路やチップ部品等の小型化により、配線パターンの微細化が急速に進んでいる。金属パターンの代表的な作製方法としては、金属薄膜上にフォトレジストをコートし、フォトリソグラフィとエッチングを組み合わせたもの、基板上に金属微粒子含有ペーストをスクリーン印刷したもの等がある。これらの方法ではパターン解像度としては線幅数十μm程度が限界であり、細線均一性の点からも好ましくない。一方、ハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を用いた写真法によるパターニングでは細線が10μm以下の均一なパターン作製が可能となり、高精細パターンに適している(特許文献1〜3)。しかしながらこの場合、得られるパターンが有する金属は銀であるため、マイグレーションが起きやすい金属である銀による配線パターンの微細化は、イオンマイグレーションによる回路の短絡がさらに生じやすくなってしまい、対策が望まれていた。
【0005】
従来、プリント配線基板におけるイオンマイグレーションを防止する方法として、金属のイオン化を抑制するために、銀と銅との合金層を備えた銀コート銅粉末を用いる方法(特許文献4)や、予め材料に還元剤を導入しておき、イオン化した金属を還元する方法(特許文献5)等が提案されている。他にも溶出した金属イオンを捕捉するためにキレート化剤等を予め材料に導入しておく方法(特許文献6)が提案されている。
【0006】
しかしながら、写真法においては、特許文献4の技術を応用することはできず、またハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体にイオン化した金属を還元する還元剤や溶出した金属イオンを捕捉するためのキレート化剤を適用した場合、感度が著しく低下したり、また画像形成そのものが不可能になるため、上記マイグレーション抑制方法の適用は非常に困難であり、他の抑制方法が望まれる。
【0007】
また、上記の回路の微細化に加え、プリント配線基板の高多層化も加速している。そのため、絶縁性基板として安価で軽量である樹脂基板を用いた基板等が多用されるようになってきた。通常、樹脂基板はガラスやシリコン等の基板と比べて吸湿性が大きく、よりイオンマイグレーションが起こりやすい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/51276号パンフレット
【特許文献2】特開平2004−221564号公報
【特許文献3】特開2003−77350号公報
【特許文献4】特開2003−105404号公報
【特許文献5】特開平11−289158号公報
【特許文献6】特開2006−260885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は微細なパターンが得られ、かつマイグレーションが抑制された導電性材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
絶縁性基板上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光、現像処理することで、樹脂成分を含有する銀パターンおよび/または樹脂成分を含有する非銀パターン部を設け、その後、該銀パターンおよび/または非銀パターン部に、該樹脂成分を架橋する架橋剤を作用させることを特徴とする導電性材料の製造方法により、本発明の目的を達成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、微細なパターンが得られ、かつマイグレーションが抑制された導電性材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】IPC−SM−840に規定されている櫛形電極の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、絶縁性基板上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光、現像処理することで、樹脂成分を含有する銀パターンおよび/または樹脂成分を含有する非銀パターン部を設け、その後、該銀パターンおよび/または非銀パターン部に、該樹脂成分を架橋する架橋剤を作用させることにより、金属のマイグレーションを抑制する。従って、銀パターン部か非銀パターン部のいずれか一方には架橋剤が作用する樹脂成分がなければならない。ここで、銀パターン部の樹脂成分とは、銀パターン部が含有する金属銀と混在している樹脂成分を指し、非銀パターン部の樹脂成分とは、銀パターンが存在しない絶縁性基板の表面上に存在する層が含有する樹脂成分を指す。
【0014】
<架橋剤>
本発明で用いられる架橋剤は、絶縁性基板上の銀パターンおよび/または非銀パターン部が含有する樹脂成分を架橋するものであり、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、ジアルデヒド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、ビニルスルホン架橋剤、トリアジン架橋剤等が挙げられる。好ましい架橋剤は架橋の対象となる樹脂成分の種類によって異なる。好ましい組み合わせ例としては、エポキシ架橋剤と活性水素含有樹脂(例えば、ポリエチレンイミン)、イソシアネート架橋剤と活性水素含有樹脂(例えば、ポリエチレンイミン)、ジアルデヒド架橋剤とアミノ基含有高分子(例えば、ゼラチン等)、オキサゾリン架橋剤とカルボキシル基含有樹脂(例えば、カルボキシル基含有ポリアクリレート等)、メラミン架橋剤と水酸基含有樹脂(例えば、ポリビニルアルコール等)等が挙げられる。以下に架橋剤について詳細に述べる。
【0015】
エポキシ架橋剤は、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等が挙げられ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0016】
エポキシ架橋剤は化成品として上市されており、例えばナガセケムテックス(株)よりデナコールシリーズとして入手できる。
【0017】
イソシアネート架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4、4′−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ビトリレン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等、また、これらをポリイソシアネート化したものである。
【0018】
イソシアネート架橋剤は水溶媒で使用するには親水基を導入した水分散タイプが好ましく、上記に示したポリイソシアネートに5〜50のエチレンオキサイド繰り返し単位からなるノニオン性親水基含有化合物を2〜50質量%導入したものが好ましい。水分散安定性を考慮した場合、特に好ましいのはポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。エチレンオキサイド繰り返し単位が5個未満では、自己乳化能を発現することが出来ない場合がある。50個を超えると親水性ポリイソシアネートの結晶性が高くなり、固体となる場合がある。
【0019】
イソシアネート架橋剤は化成品として上市されており、例えば旭化成ケミカルズ(株)よりデュラネートシリーズとして入手できる。
【0020】
ジアルデヒド架橋剤は、グルタルアルデヒド型の化合物である。有用なジアルデヒドは、炭素数2〜3の連鎖または2〜3個の炭素と酸素結合鎖によって離されたアルデヒド官能基を有する脂肪族化合物を含む。例えば、グルタルアルデヒド、α−メチルグルタルアルデヒド、β−メチルグルタルアルデヒド、マレインジアルデヒド、コハク酸ジアルデヒド、メチルコハク酸ジアルデヒド、メトキシコハク酸ジアルデヒド、α−ブトキシ−グルタルアルデヒド、α−メチル−β−エトキシグルタルアルデヒド、α−メトキシ−β−エトキシグルタルアルデヒド、α−n−ブトキシグルタルアルデヒド、α,α−ジメチルグルタルアルデヒド、α,α−ジメトキシコハク酸ジアルデヒド、β−イソプロピルコハク酸ジアルデヒド、α,α−ジエチルコハク酸ジアルデヒド、ブチルマレインジアルデヒド、およびβ−イソプロポキシコハク酸ジアルデヒドン等が挙げられる。
【0021】
オキサゾリン架橋剤は、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作製できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの一種または二種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの一種または二種以上のモノマーを使用することができる。
【0022】
オキサゾリン架橋剤は化成品として上市されており、例えば(株)日本触媒よりエポクロスシリーズとして入手できる。
【0023】
メラミン架橋剤は、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物が好ましい。メチロールメラミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
【0024】
本発明の架橋剤での処理は、絶縁性基板上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光、現像処理することで、樹脂成分を含有する銀パターンおよび/または樹脂成分を含有する非銀パターン部を有する導電性材料を作製し、その後、該銀パターンおよび/または非銀パターン部に、該樹脂成分を架橋する架橋剤を作用させる。
【0025】
本発明において架橋剤を作用させるとは、例えば、架橋剤溶液に該導電性材料を浸漬する方法、架橋剤溶液を該導電性材料に噴霧する方法等が挙げられる。架橋剤溶液中の架橋剤濃度には制限はないが、10〜50質量%程度が好ましい。低過ぎると処理速度が低下し、高過ぎると架橋剤によっては粘度が高過ぎて処理しにくくなる場合がある。処理温度は処理速度の点から25〜45℃程度が好ましい。また、架橋剤溶液中に二種以上の架橋剤が含まれていてもよく、別溶液で逐次処理してもよい。
【0026】
架橋剤を希釈する溶媒としては、ハロゲン化銀乳剤層が有する絶縁性基板を浸食しないものであれば特に限定はなく、それぞれの架橋剤と相溶するものであればよい。また、混合溶媒としてもよい。環境、安全面からは水が好ましい。さらに、架橋剤溶液は消泡剤、界面活性剤等の助剤を含有していてもよい。
【0027】
本発明の架橋剤処理に用いる導電性材料前駆体が有する絶縁性基板としてはポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等の樹脂基板、ガラス等がある。プリント基板用途としては、軽量、フレキシビリティーの点から樹脂基板が好ましいが、マイグレーションは発生しやすくなるため、本発明の効果はより顕著になる。
【0028】
<樹脂成分>
本発明での非銀パターン部が含有する樹脂成分とは、絶縁性基板上に設けた易接着層が含有する樹脂成分が挙げられる。また、後述する物理現像核層であってもよい。これら易接着層は、通常は絶縁性基板表面の全面にあり、金属パターン形成時に非金属パターン部にそのまま残存する。易接着層の一般的な構成としては、ポリマーラテックス等、水溶性高分子化合物等の水膨潤性の被膜形成可能な高分子化合物を含有する層である。
【0029】
易接着層に用いることのできるポリマーラテックスや水溶性高分子化合物は、水膨潤性の被膜が形成されるものであれば特に限定されないが、例えばポリマーラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン重合体などがあり、共重合体としては例えばエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリカーボネート系ウレタン等が挙げられる。また、水溶性高分子化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ニトロセルロース、ゼラチン等やこれらの混合物などを挙げることができる。
【0030】
本発明の製造方法において得られる導電性材料は、絶縁性基板上にハロゲン化銀写真感光材料によって銀パターンが形成される。写真法であることから、細線均一性すなわち画質が良く、銀によるパターンであることから導電性が良い。
【0031】
銀パターン部が含有する樹脂成分とは、ハロゲン化銀乳剤層中に含有しているポリマーラテックスや、水溶性高分子化合物等の水膨潤性の被膜形成可能な高分子化合物のことであり、露光、現像処理して得られた導電性材料の銀パターン部に残存する。
【0032】
次に絶縁性基板上にハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体について説明する。本発明の導電性材料の製造方法は絶縁性基板上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体にパターン露光を行う。パターン露光を行った後の現像処理方法としては、(1)銀塩拡散転写法に従う現像処理、(2)直接現像後に定着する現像処理、(3)硬化現像法に従う現像処理、の3つに代表される現像処理方法により銀パターン形成される。(1)の方法は例えば特公昭42−23745号公報に記載される方法であり、(2)の方法は例えば USP6706165B2に記載の方法であり、(3)の方法は例えばJ.Photo.Sci.誌11号 p 1、A.G.Tull著(1963)あるいは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」、T.H.James著等に記載されている方法である。
【0033】
以下、本発明における(1)の現像処理方法を用いる導電性材料前駆体をタイプ1、(2)の現像処理方法を用いる導電性材料前駆体をタイプ2、(3)の現像処理方法を用いる導電性材料前駆体をタイプ3と略して、順に説明する。これらの中でもタイプ1が銀パターン部に樹脂成分を含まないことから導電性が最も高く、本発明の導電性材料の製造方法に用いる前駆体としては最も好ましい。
【0034】
<タイプ1>
前記(1)の銀塩拡散転写法に従う現像処理方法とは、詳細には、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層とを少なくともこの順に有する導電性材料前駆体を露光し、次に未露光部である画像部のハロゲン化銀粒子を可溶性銀錯塩形成剤で溶解して可溶性銀錯塩として溶解させ、物理現像核上まで拡散してきた可溶性銀錯塩をハイドロキノン等の還元剤(現像主薬)で還元して金属銀を析出させて画像を形成する。その後水洗除去して、ハロゲン化銀乳剤層などを洗い流し、樹脂基板上に像様に銀からなるパターンを形成する。このとき、銀パターン上には樹脂成分は存在せず、非銀パターン部のみに存在し、本発明の架橋対象となる。
【0035】
物理現像核層は樹脂成分を含み、現像処理後も絶縁性基板上に残存するため、本発明の架橋の対象となる。また、タイプ1の導電性材料前駆体は、非感光性層を絶縁性基板から最も遠い最外層として、または物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主とする層である。ここでいう水溶性高分子化合物とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0036】
かかる水溶性高分子化合物としては、具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子化合物は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層の水溶性高分子化合物の含有量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0037】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0038】
タイプ1の導電性材料前駆体における物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイドおよび硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法などによってプラスチック樹脂フィルム上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0039】
物理現像核層は、水溶性高分子化合物を含有する。水溶性高分子化合物量は物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子化合物としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンアクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。好ましい水溶性高分子化合物は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられる。
【0040】
物理現像核層には、例えばクロムミョウバンのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子架橋剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々タンパク質の架橋剤の一種もしくは二種以上を含有することが好ましい。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、下記の易接着層および物理現像核層に含まれる合計のタンパク質に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0041】
タイプ1の導電性材料前駆体においては、物理現像核層と絶縁性基板の間にタンパク質からなる易接着層(タンパク質含有易接着層;以降、単に易接着層という)を有することは好ましい。絶縁性基板と易接着層の間には、さらに塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を有することは好ましい。易接着層に用いられるタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。易接着層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり10〜300mgが好ましい。
【0042】
物理現像核層や易接着層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0043】
タイプ1の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0044】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されているような公知の手法を用いることができる。中でも同時混合法の一種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0045】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0046】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0047】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0048】
タイプ1の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した易接着層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または絶縁性基板が透明な場合には、絶縁性基板を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として0.5以上である。
【0049】
上記タイプ1の導電性材料前駆体を用い、かかる前駆体を露光するための方法は、所望のパターンを有する透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。
【0050】
任意の形状パターンの透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して銀パターンを得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層および中間層、保護層は水洗除去されて、銀パターンが表面に露出する。
【0051】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラー等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラー等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0052】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤および還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0053】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0054】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った透明導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0055】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0056】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0057】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0058】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0059】
現像液のpHは10以上が好ましく、さらに11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、リン酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0060】
前記露光および現像処理により形成された導電性材料の銀画像部にさらに導電性を付与する目的で、導電性金属粒子を担持させるためのめっき処理を行うことができる。
【0061】
<タイプ2>
前記(2)の直接現像後に定着する現像処理とは、詳細には、例えばネガ乳剤を用いる場合、像様に光センサーのハロゲン化銀粒子を露光することで潜像を形成し、潜像を触媒として現像液中のハイドロキノンなどの還元剤でハロゲン化銀を還元、金属銀を形成する。その後定着処理により未感光部のハロゲン化銀を除去し、基板上に像様のバインダーに保持された銀粒子からなるパターンを形成する。従って、銀パターン、非銀パターン部ともに樹脂成分(主としてゼラチン)が残存し、本発明の架橋の対象となる。
【0062】
タイプ2の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が絶縁性基板上に設けられるが、ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせてもよい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の方法が用いられる。中でもコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。
【0063】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状など)、八面体状、十四面体状など様々な形状であることができる。
【0064】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0065】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。バインダーとして非水溶性ポリマーおよび水溶性高分子化合物のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。好ましい水溶性高分子化合物としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン化銀乳剤層には上記水溶性高分子化合物の他に非水溶性ポリマーとしての高分子ラテックスを用いることもできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。ハロゲン化銀乳剤層に用いられる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0067】
高分子ラテックスはその使用量が多過ぎると塗布性に悪影響を及ぼすため、水溶性高分子化合物との質量比(高分子ラテックス/水溶性高分子化合物)が1.0以下で用いることが好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤層に含有する高分子ラテックスと水溶性高分子化合物の総量、すなわち総バインダー量については、バインダー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる、一方、多過ぎると多量にめっきをしないと導電性が得られなくなり、生産性を落としてしまうなど、品質に大きな影響を与える場合がある。好ましいハロゲン化銀(銀換算)と総バインダーとの質量比(銀/総バインダー)は1.2以上、より好ましくは1.5〜3.5である。
【0068】
タイプ2に用いる導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層は硬膜剤により、硬膜されることが好ましい。硬膜剤としては例えばクロムミョウバンのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子架橋剤としてのジアルデヒド澱粉等やその他にもResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような物質を用いることができる。また硬膜剤は一種もしくは二種以上混合させて用いることもできる。硬膜剤は、ハロゲン化銀乳剤層に含有されるバインダーに対して0.1〜10質量%を含有させるのが好ましく、特に0.5〜8質量%が好ましい。
【0069】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、タイプ1同様の公知の写真用添加剤を用いることができる。
【0070】
タイプ2の導電性材料前駆体には必要に応じて絶縁性基板のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗り層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層などを設けることができる。またタイプ2の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、タイプ1の導電性材前駆体で説明したものと同様の目的、方法で含有することができる。
【0071】
タイプ2の導電性材料前駆体を露光した後には、少なくとも現像処理、定着処理、水洗処理を行う。露光は前述のタイプ1で説明した方法と同様である。
【0072】
本発明におけるタイプ2の導電性材料の製造に用いる現像液は、基本組成として現像主薬、保恒剤、アルカリ剤、カブリ防止剤からなる。現像主薬としては具体的にヒドロキノン、アスコルビン酸、p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、フェニドン等が挙げられる。これらの一部は導電性材料前駆体に含有させてもよい。保恒剤としては、亜硫酸イオンなどがある。アルカリ剤は、現像主薬の還元性を発揮するために必要であり、現像液のpHを9以上、好ましくは10以上になるように添加される。また安定に塩基性を保つための、炭酸塩やリン酸塩のような緩衝剤も用いられる。さらに現像核を持たないハロゲン化銀粒子が還元されないように加えられるカブリ防止剤としては、臭化物イオン、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなどが挙げられる。
【0073】
さらに本発明におけるタイプ2の導電性材料の製造に用いる現像液として可溶性銀錯塩形成剤を含有させることが高い導電性を得る上で好ましい。可溶性銀錯塩形成剤としては。具体的にはチオ硫酸アンモニウムやチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0074】
アミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0075】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また可溶性銀錯塩形成剤の使用量としては0.1〜40g/L、好ましくは1〜20g/Lである。現像処理温度は通常15℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは25〜40℃である。
【0076】
定着処理は未現像部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。定着処理には公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができ、「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社(株))p321記載の定着液などが挙げられる。
【0077】
その中でも、チオ硫酸塩以外の脱銀剤が含まれる定着液が好ましい。その場合の脱銀剤としてはチオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0078】
これらの脱銀剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、拡散転写現像液で述べた可溶性銀錯塩形成剤と同義である。また、チオシアン酸塩については脱銀能力は高いのだが、人体に対する安全性の観点から使用することは好ましくない。
【0079】
これらの脱銀剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また脱銀剤の使用量としては脱銀剤の合計で定着液1リットル当たり0.01〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。
【0080】
定着液としては脱銀剤の他にも保恒剤として亜硫酸塩、重亜硫酸塩、pH緩衝剤として酢酸、硼酸アミン、リン酸塩などを含むことができる。また、架橋剤として水溶性アルミニウム(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリミョウバン等)、アルミニウムの沈澱防止剤として二塩基酸(例えば、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム等)も含有させることができる。定着液の好ましいpHは脱銀剤の種類により異なり、特にアミンを使用する場合は8以上,好ましくは9以上である。定着処理温度は通常10℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは18〜30℃である。
【0081】
<タイプ3>
前述の(3)硬化現像処理法とは、詳細には、光センサーのハロゲン化銀粒子を像様に露光して潜像を形成し、これを触媒としてハロゲン化銀を還元する時に、ハイドロキノン等のその酸化体がゼラチンの硬化作用を持つ還元剤を用い、金属銀を形成すると同時に金属銀周囲のゼラチンを硬化させ、画像を形成させた後、水洗除去して非硬化部を洗い流す。タイプ2と同様銀粒子はバインダーに保持されているが、非画像部には絶縁性基材のみ、あるいは易接着層が残ることとなる。
【0082】
タイプ3に用いる導電性材料前駆体に用いられる絶縁性基板としては、タイプ1、タイプ2の導電性材料前駆体に用いる絶縁性基板と同様のものを使用することができる。
【0083】
本発明に用いるタイプ3の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が絶縁性基板上に設けられる。ハロゲン化銀としてはタイプ2の導電性材料前駆体に用いるのと同様のハロゲン化銀を用いることができる。
【0084】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。非水溶性ポリマーおよび水溶性高分子化合物のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質類、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これら水溶性ポリマーの中でもゼラチンなどのタンパク質が好ましい。
【0085】
タイプ3の導電性材料が有するハロゲン化銀乳剤層には上記水溶性高分子化合物の他に非水溶性ポリマーとしての高分子ラテックスを用いることもできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0086】
ハロゲン化銀乳剤層が含有する水溶性ポリマーと高分子ラテックスの総量、すなわち総バインダー量については、バインダー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる、一方、多過ぎると導電性が得られ難くなり、生産性を落としてしまうなど、品質に大きな影響を与える場合がある。好ましいハロゲン化銀(銀換算)と総バインダーとの質量比(銀/総バインダー)は0.5以上、より好ましくは1.5〜3.5である。また、好ましい総バインダー量は0.05〜3g/m、さらに好ましくは0.1〜1g/mである。
【0087】
ハロゲン化銀乳剤層にはタイプ2の導電性材料前駆体同様、種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。
【0088】
タイプ3の導電性材料前駆体には必要に応じて絶縁性基板のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗り層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層、ハロゲン化銀乳剤層の下に易接着層などを設けることができる。またタイプ1、タイプ2の導電性材料前駆体同様ハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を含有することができる。
【0089】
タイプ3の導電性材料前駆体のオーバー層、易接着層についてはハロゲン化銀乳剤層と同様のバインダーを用いることができる。それぞれの層の使用目的に応じて好ましいバインダー量は異なるが、特に硬化現像処理を利用して画像状にそれらの層を硬化させ、必要な部分のみ残したい場合、例えばオーバー層に無電解めっきの触媒核を含有させる場合などでは、ハロゲン化銀乳剤層中で起きる硬化反応を利用するので、できるだけ薄いほうが好ましく、好ましい使用量は0.1g/m以下、さらに好ましくは0.05〜0.001g/mである。さらにオーバー層、易接着層には公知の界面活性剤、現像抑制剤、イラジエーション防止色素、顔料、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0090】
タイプ3の導電性材料前駆体には硬化現像薬を含有することが特に好ましい。硬化現像薬としては、ポリヒドロキシベンゼン、例えばハイドロキノン、カテコール、クロロハイドロキノン、ピロガロール、ブロモハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、トルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジクロロハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジブロモハイドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−1−アセトフェノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、4−フェニルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−s−ブチルピロガロール、4,5−ジブロモカテコール、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ベンゾイルアミノハイドロキノン等がある。また、アミノフェノール化合物、例えばN−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール−2,4−ジアミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール、2−メチル−p−アミノフェノール、2−ヒドロキシメチル−p−アミノフェノールなど、また、その他にも例えば特開2001−215711号公報、特開2001−215732号公報、特開2001−312031号公報、特開2002−62664号公報記載の公知の硬化現像薬を用いることができるが、特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼンが好ましい。また、これらの硬化現像薬を併用して用いることも可能である。さらに、3−ピラゾリドン類、例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、および1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドンなどの公知の写真現像液に用いる還元剤を上記硬化現像薬に併せて用いることも可能である。
【0091】
タイプ3の導電性材料前駆体には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。本発明における膨潤抑制剤とは導電性材料前駆体を硬化現像液で処理する際に水溶性バインダーが膨潤するのを防ぎ、画像のぼけを防いで透過性を上げ、また導電性を上げるために用いる。膨潤抑制剤として作用するかどうかはpH3.5の5質量%ゼラチン水溶液に膨潤抑制剤0.35モル/Lになるよう加えてゼラチンの沈澱が発生するかどうかで調べられ、この試験でゼラチンの沈澱が発生するような薬品は全て膨潤抑制剤として作用する。膨潤抑制剤の具体例としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化マンガン、リン酸マグネシウムなどの無機塩類、あるいは例えばベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールジスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸、1−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、ジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸類、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸、無水マレイン酸とビニルスルホン酸の共重合物、ポリビニルアクリルアミドなどの高分子沈澱剤として用いられる化合物などが挙げられる。これら膨潤抑制剤は単独でも組み合わせて用いても良いが、無機塩類、特に硫酸塩類を使用することが好ましい。これら膨潤抑制剤は導電性材料前駆体のどの層に含有されていても良いが、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。これら膨潤抑制剤の好ましい含有量は0.01〜10g/m、さらに好ましくは0.1〜2g/mである。
【0092】
タイプ3の導電性材料前駆体にはさらに無電解めっき触媒や導電性物質などを含有させることも可能である。
【0093】
上記タイプ3の導電性材料前駆体を用い、導電性材料を作製するための方法は、前述のタイプ1、タイプ2で説明した方法で露光することができる。
【0094】
タイプ3では導電性材料前駆体を露光した後に硬化現像を行う。硬化現像液にはアルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、現像助薬、例えば3−ピラゾリジノン類、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤等を含ませることができる。現像液のpHは通常10〜14である。通常の銀塩写真現像液に用いる保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウムなどは硬化現像による硬化反応を停める作用があるので、本発明における硬化現像液では保恒剤は少なくとも20g/L以下の使用量、好ましくは10g/L以下の使用量が好ましい。
【0095】
タイプ3の硬化現像液には導電性材料前駆体に硬化現像薬を含有させない場合は硬化現像薬を含有する。硬化現像薬としては導電性材料前駆体に含有させるのと同様の硬化現像薬を用いることができる。好ましい硬化現像薬の含有量は1〜50g/Lである。硬化現像薬を現像液中に含有させる場合、保恒性が悪く、すぐに空気酸化してしまうので、使用の直前にアルカリ性水溶液に溶解することが好ましい。
【0096】
タイプ3の硬化現像液には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。膨潤抑制剤としては導電性材料前駆体に含有させるのと同様の膨潤抑制剤を用いることができる。好ましい膨潤抑制剤の含有量は50〜300g/L、好ましくは100〜250g/Lである。
【0097】
タイプ3の硬化現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば導電性材料前駆体上に処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。特に硬化現像薬含有硬化現像液を用いる場合には塗布方式にし、硬化現像を繰り返し用いないようにするほうが好ましい。
【0098】
タイプ3の硬化現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2〜30℃であり、10〜25℃がより好ましい。現像時間は5〜30秒であり、好ましくは5〜10秒である。
【0099】
タイプ3の導電性材料を製造する工程には、光透過部のハロゲン化銀乳剤層を除去し、絶縁性基板面を露出させる工程が含まれる。本工程はハロゲン化銀乳剤の除去を主目的としているので、本工程で用いられる処理液は水を主成分とする。処理液は緩衝成分を含有してもよい。また、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有することができる。ハロゲン化銀乳剤を除去する方法としては、スポンジ等で擦り取る方法、ローラーを膜面に当ててスリップさせることによってはがしとる方法、ローラーを膜面に接触させてローラーに巻き付ける方法等がある。処理液流をハロゲン化銀乳剤面に当てる方法としては、シャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。
【0100】
タイプ3において硬化現像処理後にハロゲン化銀溶剤を含む物理現像液で導電性材料前駆体を処理し、硬化現像で硬化されたレリーフ像中にある銀を増大させ、導電性を得ることもできる。物理現像工程はハロゲン化銀乳剤層の除去工程の前であっても、後であっても良いが、光透過部のハロゲン化銀も銀の供給源として使用できることから除去前に物理現像工程を行うことが好ましい。また、物理現像液に銀塩を加えるなど、さらなる銀イオンの供給を行い、物理現像工程でより銀を大きくすることもできる。
【0101】
物理現像液に用いられる還元剤は、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0102】
物理現像液のpHは8以上が好ましく、さらに9〜11が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、リン酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の物理現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0103】
物理現像液には、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物を加えることが好ましい。適量の臭化物の存在下で現像を行うと、得られた金属銀の導電性が良化するからである。好ましい臭化物濃度は1×10−4モル/L以上1×10−2モル/L以下である。
【0104】
物理現像液のカリウムイオン濃度は物理現像液中の全アルカリ金属イオンの70モル%以上が好ましい。カリウムイオン濃度を70モル%以上にすることである程度前駆体を物理現像処理した状態であっても、得られる金属銀の導電性が比較的良好であるからである。カリウムイオンはいかなる形態および方法で供給されても良い。例えば、水酸化物塩、亜硫酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩等として予め物理現像液に添加しておく方法が挙げられる。
【0105】
本発明における物理現像液は可溶性銀錯塩形成剤を含有する。可溶性銀錯塩形成剤は、非感光性銀塩を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物である。物理現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0106】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った透明導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0107】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0108】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、処理液1リットル当たり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は処理液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0109】
タイプ3において物理現像液はさらに銀イオンを含有することも可能である。銀イオンの好ましい含有量は0.01〜1モル/L、さらに好ましくは0.02〜0.5モル/Lである。あるいは物理現像液に銀イオンを含有させるかわりに、導電性材料前駆体に感度の低いハロゲン化銀乳剤を含有させてもよい。感度の低いハロゲン化銀乳剤とは導電性材料前駆体に使われているハロゲン化銀乳剤(以下高感度乳剤と略す)の70%以下の感度を有するハロゲン化銀乳剤のことを意味し、該低感度ハロゲン化銀乳剤(以下低感度乳剤と略す)は好ましくは銀で換算して0.5〜5g/m、より好ましくは1〜3g/m導電性材料前駆体に含有される。高感度銀乳剤と低感度乳剤の比率は特に限定する必要はないが、好ましい範囲は銀で換算して高感度乳剤:低感度乳剤=1:10〜2:1、さらに好ましくは1:5〜1:1である。
【0110】
タイプ3において物理現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば導電性材料前駆体上に処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0111】
導電性および金属光沢を向上させるための好ましい物理現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2〜25℃であり、10〜20℃がより好ましい。現像時間は30〜180秒であり、好ましくは40〜120秒である。
【0112】
以下実施例によって、本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0113】
(タイプ1の導電性材料前駆体の作製)
絶縁性基板として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この絶縁性基板上に下記組成の裏塗り層を塗布、乾燥した。
【0114】
<裏塗り層組成>1m当たり
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
界面活性剤(S−1) 400mg
染料1 200mg
【0115】
【化1】

【0116】
次に裏塗り層を有する絶縁性基板の、裏塗り層とは反対側の面に下記のようにして作製した硫化パラジウムを含有する物理現像核層塗液を塗布、乾燥した。
【0117】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0118】
<物理現像核層塗液の調製>1m当たり
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキザール水溶液 0.2ml
界面活性剤(S−1) 4mg
デナコールEX−830 20mg
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
10質量%SP−200水溶液 0.5ml
(日本触媒(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0119】
続いて、絶縁性基板に近いほうから順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、および保護層を上記物理現像核層の上に塗布し、導電性材料前駆体を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸による金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1g当たり0.5gのゼラチンを含む。
【0120】
<中間層組成>1m当たり
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
<ハロゲン化銀乳剤層組成>1m当たり
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 20mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0121】
<保護層組成>1m当たり
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 15mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0122】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、IPC−SM−840に規定されている櫛形電極の形状(導体幅:100μm、導体間:100μm、重ね代:15.75mm、図1参照)のパターン(以下、マイグレーション試験パターン)の透過原稿を密着させて露光した。
【0123】
露光した導電性材料前駆体を下記組成のアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)で20℃で60秒の浸漬処理を行ったのち40℃温水で水洗、乾燥した。このようにして銀パターンを有する導電性材料を得た。この導電性材料においては、非銀パターン部のみに樹脂成分が残存している。
【0124】
<アルカリ処理液>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する
【0125】
このようにして得られた導電性材料前駆体に、以下の通りの処理を実施した。
【0126】
<A−1>
デュラネートWB40−100(旭化成工業(株)製自己乳化性イソシアネート)10質量%水溶液(40℃)に5分浸漬。
【0127】
<A−2>
デナコールEX−313(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)10質量%水溶液(40℃)に5分浸漬。
【0128】
<A−3>
グルタルアルデヒド10質量%水溶液(40℃)に5分浸漬。
【0129】
<A−4>
水(40℃)に5分浸漬。
【0130】
(タイプ2の導電性材料前駆体の作製)
タイプ1と同様にポリエチレンテレフタレートフィルムに裏塗り層を塗布した。
【0131】
続いて、絶縁性基板の裏塗り層と反対側に下記ハロゲン化銀乳剤層2を塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸とを用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3g当たり1gのゼラチンを含む。
【0132】
<ハロゲン化銀乳剤層組成2>1m当たり
ゼラチン 1g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
グリオキサール(40%水溶液) 50mg
【0133】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、前述のマイグレーション試験パターンのネガ用透過原稿を密着させて露光した。
【0134】
続いて、下記処方の直接現像液ロに30℃で30秒間浸漬した後、続いて2%酢酸溶液に20℃で30秒浸漬させ停止処理した。
【0135】
<直接現像液ロ>
亜硫酸ナトリウム 70g/L
ハイドロキノン 18g/L
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.7g/L
炭酸カリウム 30g/L
臭化カリウム 3g/L
N−(2−アミノエチル)エタノールアミン 3g/L
水酸化ナトリウム pH=10.5となる量
【0136】
現像、停止処理の終った導電性材料前駆体を下記定着液に20℃180秒浸漬させた。
【0137】
<定着液処方>
N−(2−アミノエチル)エタノールアミン 300g
pHが10.5となるよう、5規定水酸化ナトリウム水溶液で調整し、さらに水を加えて全量を1Lとする。
【0138】
このようにして得られた導電性材料においては、銀パターン部、非銀パターン部ともに樹脂成分が残存している。この導電性材料に、以下の通りの処理を実施した。
【0139】
<B−1>
グルタルアルデヒド10質量%水溶液(40℃)に5分浸漬。
【0140】
(タイプ3の導電性材料前駆体の作製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム両面に以下の易接着層を設けた。なお、部数は全て固形分質量換算である。
<下塗り層組成>
下塗り第1層:塩化ビニリデンラテックス(旭化成工業製、L−536B、ビニリデン含有率90%以上)、100部、乾燥膜厚0.3μm。
下塗り第2層:石灰処理ゼラチン、80部、自己乳化性イソシアネート化合物(旭化成工業製、デュラネートWB40−100)、20部、乾燥膜厚0.15μm。
【0141】
このようにして得られた易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムにタイプ1と同様に裏塗り層を塗布した。
【0142】
<裏塗り層組成>1m当たり
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0143】
続いて、絶縁性基板の裏塗り層と反対側に下記ハロゲン化銀乳剤層3を塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。また、ハロゲン化銀乳剤の保護バインダーの一部に分子量1万以下の低分子ゼラチンを用いることで混合後の脱塩処理工程で低分子ゼラチンが水洗除去時に除去されるようした。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸とを用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3g当たり0.5gのゼラチンを含む。
【0144】
<ハロゲン化銀乳剤層組成3>1m当たり
ゼラチン 1.0g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
4−フェニルカテコール 20mg
硫酸ナトリウム 0.05g
【0145】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、前述のマイグレーション試験パターンのネガ用透過原稿を密着させて露光した。
【0146】
続いて、下記処方の硬化現像液で23℃30秒浸漬処理して硬化現像し、その後下記拡散転写現像液ハで25℃40秒処理し、その後35℃の温水で水洗除去処理を行った。
【0147】
<硬化現像液>
水酸化ナトリウム 20g
臭化カリウム 1g
亜硫酸ナトリウム 1g
【0148】
<拡散転写現像液ハ>
リン酸3カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 50g
N−メチルエタノールアミン 10g
臭化カリウム 0.5g
全量を水で1000mlとする
リン酸を加えpH=10.5に調整する
【0149】
このようにして得られた導電性材料においては、銀パターン部、非銀パターン部ともに樹脂成分が残存している。この導電性材料に、以下の通りの処理を実施した。
【0150】
<C−1>
グルタルアルデヒド10質量%水溶液(40℃)に5分浸漬。
【0151】
以上のようにして得られたマイグレーション試験パターンを有する金属パターン材料のマイグレーション評価を実施した。まず、金属パターン材料を、高温高湿試験機内部にセットし、機外から標準電圧発生装置により電圧を印加し、評価試験中における線間絶縁抵抗を、マイグレーション評価システム(ESPEC製のマイグレーション評価システムAMI)を用いて、常時モニタリングし、試験中に線間絶縁抵抗が10Ωを切るまでの時間を測定した。なお、試験環境条件は80℃90%RHであり、印加電圧は50Vであった。結果を表1に示す。
【0152】
また、それぞれの条件においてマイグレーション試験パターンのかわりにメッシュパターン(線幅10μm、線間100μm)サンプルも作製し、表面抵抗率をダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。
【0153】
【表1】

【0154】
表1から明らかなように、本発明により、微細なパターンが得られ、かつマイグレーションが抑制された導電性材料を作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光、現像処理することで、樹脂成分を含有する銀パターンおよび/または樹脂成分を含有する非銀パターン部を設け、その後、該銀パターンおよび/または非銀パターン部に、該樹脂成分を架橋する架橋剤を作用させることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項2】
前記導電性材料前駆体が基板上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層とをこの順に有することを特徴とする請求項1に記載の導電性材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−205927(P2010−205927A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49722(P2009−49722)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】