説明

導電性窒化ケイ素材料とその製造方法

【課題】 強度や破壊靭性等に優れた導電性窒化ケイ素焼結体を提供する。抵抗体として有用である。
【解決手段】 平均粒子径が1.0μm以下の酸化マグネシウム0.1〜5重量%を添加してえられるSi−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)を主として含む粒界相を2〜20重量%、及び窒化ケイ素を残量、並びにCNTを外掛けで0.3〜12重量%含有して成る導電性窒化ケイ素焼結体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化ケイ素を主成分とする導電性を有する焼結体からなりカーボンナノチューブ(以下「CNT」という。)を含む窒化ケイ素焼結体及びその製造方法に関する。この窒化ケイ素焼結体は、新しい抵抗体等に応用できる。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素は、耐熱性、高強度、耐摩耗性、耐熱衝撃性などの優れた特徴を有するため、エンジニアリングセラミックスとして注目され、これまで軸受部材、圧延用などの各種ロール材、コンプレッサ用ベーン、ターボロータ、切削工具などに実用化されている。
この窒化ケイ素は難焼結性物質であることから、焼結体の作製にあたっては焼結助剤を中心に、種々の添加剤が用いられている。その主流の組成系としては、窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系、窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム−酸化チタン系などが知られている。これらの組成において、希土類酸化物などの焼結助剤は、焼結中にSi−R−Al−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)などからなる粒界相(ガラス相)を生成し、焼結体を緻密化して高強度化するための成分である。
この窒化ケイ素焼結体においては、焼結助剤の添加によって曲げ強度、破壊靭性値、耐熱衝撃性、耐摩耗性などの向上が図られたことがこの材料の実用化を達成させた要因であったが、この材料は本質的に電気的に絶縁体であるため、これが逆に使用中に静電気を生じて微粉体を付着させる結果を招き、相手金属を傷つけたり種々のトラブルのもとになっている。そのため導電性の窒化ケイ素セラミックスの開発が強く求められていた。
【0003】
このような目的の下に、窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系に二ホウ化チタン(TiB2)や二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)を添加した研究例が認められるが、この場合はかなり多くの導電体の添加が必要であり、本来の窒化ケイ素の性質を失ってしまうため好ましいとは言い難い。
また、導電性炭素物質を添加することも検討されているが、炭素粉末を加えた場合かなり多くの炭素を加えることが必要であり、その一方で炭素の添加が窒化ケイ素−焼結助剤系の緻密化を大幅に阻害するため、緻密体を得ることが極めて難しい(非特許文献1)。また,窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系に炭素繊維(CNT)を添加した例も認められるが、炭素粉体を用いる以上に緻密化は困難な状況である(非特許文献2、特許文献1)。
一方、窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系に、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム等を添加すると耐摩耗性が向上し、更に必要に応じて窒化アルミニウムを添加すると焼結性が著しく向上することが知られている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】米国公開特許20040029706
【特許文献2】特開2004-2067
【非特許文献1】Cs. Balazsi et al., "Manufacture and examination of C/Si3N4 nanocomposites", Journal of the European Ceramic Society 2004,vol. 24, p3287-3294
【非特許文献2】Material Science and Engineering C23 (2003) 1133-1137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、導電性及び緻密性を有する窒化ケイ素焼結体を提供することを目的とする。即ち、窒化ケイ素−希土類酸化物−マグネシア系、或いは窒化ケイ素−希土類酸化物−マグネシア−酸化アルミニウム系に導電体としてカーボンナノチューブを含有させて導電性を付与し、緻密な窒化ケイ素系焼結体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常、窒化ケイ素焼結体にカーボンナノチューブ(CNT)を含有させると焼結性を阻害することから、窒化ケイ素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系のみの場合は緻密化は困難であり、そのため、ホットプレスやHIPに頼らざるを得ない。
本発明者らは、焼結助剤として, 希土類酸化物−マグネシアに加えて、さらに必要に応じて酸化アルミニウムおよび(或いは)窒化アルミニウムを添加させて緻密化を一段と促進させると、この系にCNTを添加しても、緻密化の達成は容易になり、導電性を付与し優れた機械的特性を持つ窒化ケイ素焼結体が得られることを見出した。
この組み合わせによれば、常圧焼結や、雰囲気加圧焼結など外部から圧力を加えない製造方法でも緻密化が可能である。もちろんホットプレスや放電プラズマ焼結(SPS)を適用しても容易に緻密化が可能である。
【0007】
以上から本発明は、窒化ケイ素−希土類酸化物−マグネシア系、必要に応じて酸化アルミニウムおよび(或いは)窒化アルミニウムを添加させてこれに適当量のカーボンナノチューブを添加することを基本とするものである。ここにいう窒化ケイ素系焼結体は窒化ケイ素結晶粒(若干Al,Oを固溶)と粒界相からなるものである。すなわち、その製法は上記に示したほかこのような構造体になりうるものは総て許容される。
また、CNTは高温での焼成時間に応じて、接触しているか近傍の窒化ケイ素等と反応して炭化ケイ素(SiC)を生成する。この場合は、炭化ケイ素はナノチューブにそって生成するため耐熱性、耐食性等に優れる導電体として十分機能させることが出来る。
【0008】
即ち、本発明は、希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、平均粒子径が1.0μm以下の酸化マグネシウム0〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0〜5重量%、窒化アルミニウムが0〜5重量%、及び残部が酸素含有量が1.7重量%以下で平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を成形し、焼結してなる窒化ケイ素焼結体である。この場合、窒化ケイ素粉末はα相含有率が45%以上を用いるのがよい。
【0009】
また本発明の好ましい窒化ケイ素焼結体は、Si−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)を主として含む粒界相を2〜20重量%、及び窒化ケイ素を残量、好ましくは75〜97重量%、並びにCNTを外掛けで0.3〜12重量%含有して成る窒化ケイ素焼結体と表すこともできる。
【0010】
更に、本発明は、希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、平均粒子径が1μm以下の酸化マグネシウム0.1〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0.1〜5重量%、窒化アルミニウムが0〜5重量%、及び残部が酸素含有量が1.7重量%以下でα相型窒化ケイ素が90重量%以上で平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を所望の形状に成形し脱脂する工程、及び該成形体を1600〜1900℃で焼結する工程から成る窒化ケイ素焼結体の製法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の窒化ケイ素焼結体は、CNTを含むため導電性であり、かつ、CNTを含むにもかかわらず緻密性が確保されているので、高密度である。従って、このような窒化ケイ素焼結体から成る耐摩耗性部材は、導電性であるため使用中に静電気を生じて微粉体を付着することがなく、かつ耐摩耗性が高いという特徴を有することができる。
CNTを添加した系においては焼結性が悪いため、汎用性の高い焼結法では緻密化は困難であるが、本発明による方法を用いることによってこれが達成できる点で工業的な価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の窒化ケイ素焼結体は、希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、平均粒子径が1μm以下の酸化マグネシウム0.1〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0〜5重量%、窒化アルミニウムが5重量%以下、及び残部が酸素含有量が1.7重量%以下で平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を焼結させることにより形成される。
【0013】
原料である窒化ケイ素は、α相型とβ相型とがあり、いずれを用いてもよいが、α相含有率が45%以上が適している。窒化ケイ素原料粉末は平均粒子径が1.0μm以下で、かつ酸素含有量が1.7重量%以下であることが好ましい。このような微細でかつ不純物の少ない窒化ケイ素粉末を用いることによって、気孔率及び最大気孔径が小さい高強度の窒化ケイ素焼結体が得易くなる。窒化ケイ素原料粉末の平均粒子径は0.4〜0.8μmの範囲であることがより好ましい。また、酸素含有量については0.5〜1.5重量%の範囲であることがより好ましい。
【0014】
このような原料を用いて得られる焼結体中の窒化ケイ素の含有量は通常75〜97重量%、好ましくは80〜95重量%である。窒化ケイ素の含有量が少ないと、窒化ケイ素に対して焼結助剤の量が多くなり、焼結体の曲げ強度、破壊靭性、摩耗特性などの特性が低下する傾向にある。逆に、窒化ケイ素の含有量が多いと、焼結助剤の量が相対的に少なくなることから緻密化が不十分である。
【0015】
希土類化合物は、特に限定されるものではないが、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)などの酸化物、窒化物、硼化物、炭化物、珪化物の少なくとも1種が好ましい。特に、Si−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(Rは希土類化合物を表す。)から主としてなる粒界相を形成し易い観点から、Y、Ce、Sm、Nd、Erなどの酸化物を用いることが好ましい。
【0016】
酸化アルミニウムは、その前駆体である遷移アルミナや炭酸塩などを用いても差し支えない。これらのアルミニウム化合物は、焼結時にSi−R−Mg−Al−O−N化合物(Rは希土類化合物を表す。)を容易に形成する。
本発明においては、酸化アルミニウムおよび(或いは)窒化アルミニウムを添加する場合は、Si−R−Mg−Al−O−N化合物(Rは希土類化合物を表す。)から主としてなる粒界相が容易に形成される。この場合は、Alと酸素はサイアロンを形成するので、窒化ケイ素焼結体中の窒化ケイ素粒子は通常サイアロンとして存在する。
【0017】
焼結助剤として、希土類酸化物−マグネシアに加えて、必要に応じて酸化アルミニウムおよび(或いは)窒化アルミニウムを用いると、Si−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)からなる粒界相が容易に形成される。
本発明の窒化ケイ素焼結体は、Si−R−Mg−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−Al−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)を主として含む粒界相を2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%含有する。粒界相の含有量が2重量%未満であると、窒化ケイ素焼結体が十分に緻密化しないことから、気孔率が増大して曲げ強度や破壊靭性などが低下してしまう。一方、粒界相の含有量が20重量%を超えると、過剰な粒界相により窒化けい素焼結体の曲げ強度、破壊靭性、摺動部材に利用した場合の転がり寿命などが低下する。
粒界相は、X線マイクロアナライザー(EPMA)によりその成分を測定することができる。その量は断面積から換算する。
【0018】
本発明の窒化ケイ素焼結体は、上記以外の他の成分を含有していてもよい。例えば、窒化ケイ素焼結体のさらなる緻密化のために、タングステン(W)などの酸化物、窒化物、硼化物、珪化物やシリカなどを含有していてもよい。これらの化合物の含有量は総量で0.1〜5重量%の範囲とすることが好ましい。
【0019】
カーボンナノチューブ(CNT)としては、米国特許4663230号、米国特許4663230号、米国特許5165909号、米国特許5171560号、米国特許5578543号、米国特許5589152号、米国特許5650370号、米国特許6235674号等に記載の中空構造で分岐の少ない炭素系繊維をいう。このCNTのサイズは、通常直径0.4〜200nm、長径1〜1000μm、好ましくは直径20nm、長径100〜500μmである。その添加量は外掛け(即ち、CNTを含まない窒化ケイ素焼結体の重量を基準として)で0.3〜12重量%、好ましくは1.2〜4.2重量%であればよく、その量に応じて導電率を制御することができる。CNTが少ないと焼結性は良好であるが、導電率が10−1Ω−1−1以下と低くなり、一方、CNTが多いと焼結性が低下するため好ましくない。
【0020】
次に、本発明の製造方法について説明する。その製造法は特に限定されないが、通常は次のようなプロセスを基本とする。
まず、組成は、Si(85〜97重量%)−Y(0.5〜10重量%)−MgO(0.1〜5重量%)(或いは、Al及び/或いはAlN(0.1〜5重量%))−CNT(0.3〜12重量%)を基本系とする。
【0021】
典型的な製造プロセスを以下に示す。
各添加物粉末を窒化ケイ素原料粉末に対して所定量添加し、更に有機バインダや分散媒などを加えてよく混合した後、一軸プレスやラバープレスなどの公知の成形法を適用して原料混合体を所望の形状に成形する。各原料粉末の混合にあたっては、各微細粒子の凝集を防ぎ均一に分散させることが必要でありそれによって焼結促進効果が大きくなることが期待される。
【0022】
次に、上記のように作製した成形体に脱脂処理を施して脱脂成形体を作製する。この脱脂成形体を1600〜1900℃、好ましくは1750〜1850℃で焼結して窒化ケイ素焼結体が得られる。この温度が低いと緻密化が進みにくく、高いと窒化ケイ素の分解が生じてしまう傾向にある。
焼結操作については、常圧焼結、加圧焼結(ホットプレス)、雰囲気加圧焼結、HIP(熱間静水圧プレス:ホットアイソスタティックプレス)焼結などの様々な焼結方法が適用可能である。
【0023】
更に、より高密度の焼結体の作成と焼結体の強度を支配する欠陥を除去するために、常圧焼結後にHIP処理を行うなど、複数の方法を組合せてもよい。目的に応じて使い分ければよいが、コストの面からは常圧焼結或いは雰囲気加圧焼結が好ましい。
特に、前記焼結後に、得られた窒化ケイ素焼結体に30MPa以上の非酸化性雰囲気下にて1600〜1850℃で熱間静水圧加圧(HIP)処理を施すことが好ましい。
【0024】
このようにして得られた窒化ケイ素焼結体は好ましくは以下の性質を持つ。
CNTは主として粒界近傍に存在し、そのアスペクト比は500〜10000であり、その含有量は0.3〜12質量%の範囲にある。
導電率は10−1〜10Sm−1の範囲にある。
この窒化ケイ素焼結体の気孔率は1.5質量%以下であり、かつ最大気孔径は2μm以下である。この窒化ケイ素焼結体の3点曲げ強度は600MPa以上であり、かつ破壊靭性値は5MPa・m1/2以上である。
【実施例1】
【0025】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
酸素含有量が1.3重量%、平均粒子径が0.55μmのSi(窒化けい素)原料粉末(宇部興産製E−10)92重量%に、焼結助剤として平均粒子径が0.9μmのY(酸化イットリウム)粉末(信越化学工業製)を5重量%、平均粒子径が0.7μmのAl(アルミナ)粉末(住友化学工業製AKP−50)を3重量%を秤量し、これに、平均粒子径が0.2μmのMgO(マグネシア)粉末(宇部化学(株)製)を2.5重量%と、平均粒子径が1.0μmのAlN(窒化アルミニウム)粉末を5重量%を外掛けで秤量した。更に、これらの外掛けでCNTを1.8重量%秤量した.これらをエチルアルコール中で窒化ケイ素ボールを用いて96時間湿式混合した後に乾燥して原料混合物を調製した。
【0026】
得られた原料混合物に有機バインダを所定量添加して調合造粒粉とした後、50MPaの成形圧力でプレス成形し、曲げ強度測定用サンプルとして直径15mm×厚み5mm及び直径25mm×厚み5mmの円板状成形体を多数制作した。
各成形体を450℃の空気気流中にて4時間脱脂した後、0.1MPaの窒素ガス雰囲気中にて1350℃×1時間の条件で保持した後、0.9MPaの窒素ガス雰囲気中にて1800℃×2時間の条件で焼結し、更に、100MPaの窒素ガス雰囲気中にて1700℃×1時間の条件でHIP処理して、窒化ケイ素焼結体を作製した。
この窒化ケイ素焼結体中の粒界相をX線マイクロアナライザー(日本電子(株)製)で観察したところ、Si−Y−Mg−Al−O−N化合物が主成分であってその割合は約13重量%であった。
【0027】
実施例2〜8
実施例1で使用した窒化ケイ素原料粉末、酸化マグネシウム粉末、Al2O3粉末、AlN粉末、希土類酸化物粉末、、導電性を持つCNT等を、それぞれ下表(表1)に示す組成比となるように調合して原料混合物を調製し、実施例1と同様に窒化ケイ素焼結体を作製した。焼成の詳細な条件は表の注に記す。
【0028】
【表1】

注)Rは希土類元素を表す、
*:AlN、MgOの量はSi、R及びAlの合計重量100に対する重量を表し、CNTの量はSi、R、Al、MgO及びAlNの合計重量100に対する重量を表す。
**:焼成条件等は以下のとおり:
1:1350℃,1h,0.01MPaN2 → 1850℃,4h,0.07MPa N2 → 1700℃,1h,1000MPaN2
2:1と同様。但し、HIP処理なし。
【0029】
表1から明らかなように、本発明の窒化ケイ素焼結体は、いずれも優れた導電性が確保されることが認められる。実施例1で得られた窒化ケ素焼結体の走査型電子顕微鏡写真(日本電子(株)TSM-5200、二次電子像)を用いて観察した結果、CNTが粒界相に囲まれて存在していることが認められている。
【0030】
比較例1
比較としてCNTを用いない以外は実施例1と同一条件で窒化ケイ素焼結体を作製し、同様に窒化ケイ素製ボールを作製した。また、別の比較例としてCNTを13重量%添加および酸化マグネシウムを添加しない場合を検討した。その結果、本発明のような好ましい結果は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、酸化マグネシウム0.1〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0〜5重量%、窒化アルミニウムが0〜5重量%、及び残部が平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を成形し、焼結してなる窒化ケイ素焼結体。
【請求項2】
窒化ケイ素から成る結晶粒を母相とし、Si−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(但し、Rは希土類元素を表す。)を主とする粒界相を含む請求項1に記載の窒化ケイ素焼結体。
【請求項3】
前記CNTが、直径0.4〜200nm、長径1〜1000μmである請求項1〜2のいずれか一項に記載の窒化ケイ素焼結体。
【請求項4】
Si−R−Mg−Al−O−N化合物、或いはSi−R−Mg−O−N化合物(Rは希土類元素を表す。)を主として含む粒界相を2〜20重量%、及び窒化ケイ素を残量、並びにCNTを外掛けで0.3〜12重量%含有して成る窒化ケイ素焼結体。
【請求項5】
希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、平均粒子径が1.0μm以下の酸化マグネシウム0.1〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0〜5重量%、窒化アルミニウムが0〜5重量%、及び残部が平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を所望の形状に成形し脱脂する工程、及び該成形体を1600〜1900℃で焼結する工程から成る窒化ケイ素焼結体の製法。
【請求項6】
希土類化合物が酸化物換算で0.5〜10重量%、平均粒子径が1.0μm以下の酸化マグネシウム0.1〜5重量%、酸化アルミニウム又はその前駆体が0〜5重量%、窒化アルミニウムが0〜5重量%、及び残部が酸素含有量が1.7重量%以下でα相型窒化ケイ素が90重量%以上で平均粒子径が1.0μm以下の窒化ケイ素粉末から成る混合物であって、更にCNTを外掛けで0.3〜12重量%含む混合物を所望の形状に成形し脱脂する工程、及び該成形体を1600〜1900℃で焼結する工程から成る窒化ケイ素焼結体の製法。
【請求項7】
更に、前記焼結工程により得られた窒化ケイ素焼結体に、30MPa以上の非酸化性雰囲気下にて1600〜1850℃で熱間静水圧加圧(HIP)処理を施す工程を含む請求項6に記載の窒化ケイ素焼結体の製法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化ケイ素焼結体又は請求項6若しくは7に記載の製法により製造された導電性窒化ケイ素焼結体。

【公開番号】特開2006−182590(P2006−182590A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376116(P2004−376116)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】