説明

履き物、その内部構造体及び姿勢矯正方法

【課題】立ち姿勢の矯正を容易に行うことができる履き物、その内部構造体及び履き物の製造方法を提供する。
【解決手段】靴20の内部構造体1は、足の拇指球に対応する拇指球位置、小指球に対応する小指球位置、踵骨の内側の位置である踵内側位置、踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうち3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる足骨支持部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履き物、その内部構造体及び姿勢矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、利き腕、利き足による左右の違いや生活習慣に起因して、前後左右の筋肉の緊張量に差が生じている。筋肉の緊張量に差があると、骨格が前後左右に歪み、バランスが崩れてしまう。こうした骨格の歪みが生じると、姿勢が悪くなり、身体の各部位に作用する荷重が一方向に偏ってしまい、肩こり、頭痛、視力の低下等の症状が生じることが知られている。
【0003】
これに対し、近年、骨格の歪みを矯正したり、体重を支える各支点を結ぶ足のアーチを回復させるインソール等が開発されている。例えば、特許文献1には、縦方向に緩やかに湾曲する突部を備えた靴の中敷きが記載されている。この突部は、足のアーチの頂点となる舟状骨や立方骨等を支持することで、足のアーチ構造の回復を図っている。
【特許文献1】特開平9−224703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人体の骨格バランスの崩れ方及びその度合いには、個人差がある。特許文献1に記載された中敷きでは、人それぞれ異なる骨格バランスの崩れに対応することができない。また、使用者毎に、姿勢を矯正する方向や、矯正を行う度合いを調整した履き物をそれぞれ製造する場合にあっては、一足の製造工程に手間が掛かり、コストも増大が避けられない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、立ち姿勢の矯正を容易に行うことができる履き物、その内部構造体及び姿勢矯正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる足骨支持部を備えることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、履き物は、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち、3位置において、各々対応する位置の足骨を持ち上げる足骨支持部を備える。このため、骨格の歪みの要因となる位置に足骨支持部が設けられた履き物を履くことによって、重心位置が適切な位置となって前後左右のバランスが整えられ、使用者の立ち姿勢を理想的な姿勢にすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記各足骨支持部の各々は、その高さが各別に設定されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、足骨突き上げ部は、その高さが各別に設定されているので、人それぞれ異なる骨格バランスの崩れ方の度合いに対応することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の履き物において、前記足骨支持部が設けられる3位置は、前記拇指球位置及び前記小指球位置のいずれかと、前記踵内側位置と、前記踵外側位置であることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、踵内側位置及び踵外側位置と、拇指球位置及び小指球位置のいずれかに足骨支持部が設けられるので、骨格の前後左右のバランスを理想的なバランスに整えることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる足骨支持部を備えることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、内部構造体は、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち、3位置において、各々対応する位置の足骨を持ち上げる足骨支持部を備える。このため、骨格の歪みの要因となる位置に足骨支持部が設けられた内部構造体を履き物に設け、その履き物を履いた際に、重心位置が適切な位置となって前後左右のバランスが整えられ、使用者の立ち姿勢を理想的な姿勢にすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の履き物の内部構造体において、前記各足骨支持部の各々は、その高さが各別に設定されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明によれば、足骨突き上げ部は、その高さが各別に設定されているので、人それぞれ異なる骨格バランスの崩れ方の度合いに対応することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の内部構造体において、前記足骨支持部が設けられる3位置は、前記拇指球位置及び前記小指球位置のいずれかと、前記踵内側位置と、前記踵外側位置であることを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、内部構造体には、踵内側位置及び踵外側位置と、拇指球位置及び小指球位置のいずれかに足骨支持部が設けられるので、骨格の前後左右のバランスを理想的なバランスに整えることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、使用者の立ち姿勢を矯正する姿勢矯正方法であって、足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を持ち上げる足骨支持部を備える履き物もしくはその内部構造体をそれら足骨支持部の配置及び高さの違いに応じて複数用意し、それら足骨支持部の配置及び高さが異なる履き物もしくはその内部構造体を右足及び左足にそれぞれ選択的に適用することによって使用者の立ち姿勢を矯正することを要旨とする。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置にそれぞれ対応して、対応する位置の足骨を突き上げる足骨支持部の配置及び高さを変更した履き物もしくは内部構造体を複数用意する。そして、履き物もしくは内部構造体を右足及び左足にそれぞれ選択的に適用する。このため、使用者の骨格の歪みの要因となる位置に足骨突き上げ部が設けられた履き物又は内部構造体を選択することによって、骨格の前後左右のバランスを理想的なバランスに整えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用者の骨格バランスの崩れに応じて姿勢の矯正を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1は、履き物
としての靴20の内部構造体1を示す分解斜視図であって、右足用の内部構造体1を示している。
【0020】
靴20の内部構造体1は、靴20の内側に配置され、使用者の足を足裏側から支持する部材である。図1に示すように、内部構造体1は、使用者の足裏面に当接する中敷き3と、中敷き3の下方に配置された中底2とを有している。また、中底2と中敷き3との間には、足骨を支持する各支持部材4がそれぞれ設けられ、各支持部材4は、足の拇指球、小指球、踵内側及び踵外側の4位置のうち3位置の足骨を支持する足骨支持部を構成する。これらの支持部材4の配置を変更することによって、右足及び左足のそれぞれに2つの配置パターンが存在し、さらに支持部材4の厚さを変更することによって、右足及び左足のそれぞれに4つのパターンが存在する。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に示す内部構造体1は、右足用の内部構造体1である。右足における支持部材4の配置パターンには、配置パターンA及び配置パターンBのパターンがある。図2(a)に示す内部構造体1は、配置パターンAの内部構造体1であって、拇指球支持部5A、踵内側支持部6A及び踵支持部7が中底2と中敷き3との間に介在している。中底2と中敷き3との間に設けられた拇指球支持部5Aは、使用者が靴20を履いた際に、その拇指球を支持する足骨支持部を構成する。拇指球支持部5Aの大きさは、拇指球を安定して支持できる大きさであればよく、その形状は、楕円形状、円形状、矩形状等、特に限定されない。また、拇指球支持部5A自体の厚さは、第1の厚さ(例えば1ミリ)、又は第1の厚さよりも大きい第2の厚さ(例えば2ミリ)である。拇指球支持部5Aの材質は、特に限定されないが、低反発性に優れる軟質のポリウレタン等を採用すると履き心地を向上できる。
【0022】
また、踵内側支持部6Aは、踵内側を支持する足骨支持部を構成し、踵支持部7上に重ねられている。配置パターンAでは、踵内側支持部6Aは、踵全域を支持する踵支持部7の左半分に配置される。踵内側支持部6Aの大きさは、踵部の内側を安定して支持できる大きさであればよく、その形状は、楕円形状、円形状、矩形状、台形状等、特に限定されない。尚、踵内側支持部6Aは、図では踵支持部7の約半分の大きさとし、踵支持部7からはみ出さないように重ねたが、踵支持部7からはみ出すように重ねてもよい。
【0023】
また、踵内側支持部6A自体の厚さは、第1の厚さ(例えば1ミリ)、又は第1の厚さよりも大きい第2の厚さ(例えば2ミリ)である。踵内側支持部6Aの材質は、特に限定されないが、低反発性に優れる軟質のポリウレタン等を採用すると履き心地を向上できる。
【0024】
さらに、踵支持部7のうち、踵内側支持部6Aが被覆していない外側位置は、踵外側を支持する足骨支持部を構成する。踵支持部7は、踵全域を支持できる大きさであればよく、その形状は、楕円形状、円形状、矩形状、半月形状等、特に限定されない。また、踵支持部7は、例えば1ミリの厚さに形成されている。
【0025】
図2(b)に示す内部構造体1は、配置パターンBの内部構造体1であって、小指球支持部5B、踵外側を支持する踵外側支持部6B及び踵支持部7が中底2と中敷き3との間に介在している。中底と中敷き3との間に設けられた小指球支持部5Bは、使用者が靴20を履いた際に小指球を支持する足骨支持部を構成する。小指球支持部5Bの大きさは、小指球を安定して支持できる大きさであればよく、その形状は、楕円形状、円形状、矩形状等、特に限定されない。小指球支持部5B自体の厚みは、第1の厚さ(例えば1ミリ)又は第1の厚さよりも大きい第2の厚さ(例えば2ミリ)である。尚、図では、拇指球支持部5Aと小指球支持部5Bとを異なる大きさにしたが、同じ大きさ及び形状に形成してもよい。小指球支持部5Bの材質は、特に限定されないが、低反発性に優れる軟質のポリ
ウレタン等を採用すると履き心地を向上できる。
【0026】
また、踵外側支持部6Bは、踵外側を支持する足骨支持部を構成する。踵外側支持部6Bの大きさは、踵部の外側を安定して支持できる大きさであればよく、その形状は、踵内側支持部6Aと同様に、特に限定されない。さらに踵外側支持部6B自体の厚さは、第1の厚さ(例えば1ミリ)、又は第1の厚さよりも大きい第2の厚さ(例えば2ミリ)である。尚、図では、踵内側支持部6Aと、踵外側支持部6Bとを左右対称の形状及び同じ面積(大きさ)としたが、同じ形状にしてもよいし、左右対称とはならない異なる形状及び面積(大きさ)にしてもよい。
【0027】
さらに、踵支持部7のうち、踵外側支持部6Bが被覆していない内側位置は、踵内側を支持する足骨支持部を構成する。
一方、左足用の内部構造体1には、上記配置パターンAを左右反転させた配置パターンCと、上記配置パターンBを左右反転させた配置パターンDとが存在する。さらに、これらの各配置パターンA〜Dには、支持部材4の厚さを変更したパターンがそれぞれ2種類ずつあるため、右足用の内部構造体1及び左足用の内部構造体1の組合せは、合計で16種類となる。そして、これらの16種類の中から、使用者のバランスの崩れに合わせたパターンが選択的に適用される。
【0028】
次に、内部構造体1の高さ方向の構造について図3に従って説明する。図3(a)及び図3(b)は、図2(a)のA−A線における断面図、図3(c)及び図3(d)は、図2(a)のB−B線における断面図、図4は、図2(a)のC−C線における断面図である。
【0029】
図3(a)は第1の厚さの拇指球支持部5Aを有する内部構造体1であり、図3(b)は第2の厚さの拇指球支持部5Aを有する内部構造体1を示す。拇指球支持部5Aを取り付ける際は、例えば中底2の表面2Aに対し、接着剤等により拇指球支持部5Aを貼着し、その上から中敷き3を敷設して、中底2と中敷き3との間に拇指球支持部5Aを挟み込む。中敷き3は数ミリ程度の厚さであるため、拇指球支持部5Aの介在により、足の拇指球に当接する拇指球位置が、周囲の中敷き3の表面3Aより突出した、足骨支持部としての突部10となる。この突部10は、拇指球支持部5Aの厚さが異なると、図3(a)及び図3(b)に示すように異なる高さになる。また、小指球支持部5Bを中底2に貼着し、その上に中敷き3を敷設した場合もまた、小指球位置が周囲の中敷き3の表面3Aより突出した突部10を形成する。
【0030】
また図3(a)及び図3(b)に示すように、拇指球支持部5Aの側縁には、中底2側(下方)に向かって傾斜するテーパ部11が形成されている。尚、図では、拇指球支持部5Aの側縁のうち、内部構造体1の側縁にあたる一部には、テーパ部11を形成しないようにしたが、全周に形成してもよい。また、小指球支持部5Bにも同様に、テーパ部11が形成されている。これにより、中底2と支持部5A,5Bとの間に大きな段差が生じないため、使用者の足裏が中敷き3を介して中底2と各支持部5A,5Bとの境目に当接した際に違和感を感じることがない。また、中敷き3が、各支持部5A,5Bのテーパ形状に沿って敷設されるので、中底2と中敷き3との間であって、各支持部5A,5Bの側縁付近に不要な隙間が形成されない。
【0031】
また、図3(c)は、第1の厚さの踵内側支持部6Aを有する内部構造体1であり、図3(d)は第2の厚さの踵内側支持部6Aを有する内部構造体1を示す。踵支持部7及び踵内側支持部6Aを取り付ける際は、例えば中底2の表面2Aに対し、接着剤等により踵支持部7を貼着し、踵支持部7の半分に踵内側支持部6Aを貼着して、その上から中敷き3を敷設する。その結果、踵内側位置は、踵内側支持部6A及び踵支持部7の介在により
、その周囲の中敷き3の表面3Aよりも突出し、踵内側を支持する足骨支持部としての突部12となる。また、踵外側位置は、踵支持部7の介在により、その周囲(土踏まず側)の中敷き3の表面3Aよりも突出した突部14となる。踵内側位置の突部12の高さは、踵外側位置の突部14よりも高くなっている。また、踵支持部7及び踵外側支持部6Bを中底2に貼着し、その上に中敷き3を敷設した場合もまた、踵内側位置及び踵外側位置が、周囲の中敷き3の表面3Aより突出した突部となる。
【0032】
また、図3(c)及び図3(d)に示すように、踵内側支持部6Aの側縁には、中底2側(下方)に向かって傾斜するテーパ部13が形成されている。尚、図では踵内側支持部6Aの側縁のうち、内部構造体1の側縁にあたる一部には、テーパ部13を形成しないようにしたが、全周に形成してもよい。また、踵外側支持部6Bにも同様に、テーパ部13が形成されている。これにより、中底2と支持部6A,6Bとの間に大きな段差が生じないため、使用者の足裏が中敷き3を介して中底2と支持部6Aとの境目に当接した際に違和感を感じることがない。また、中敷き3が、各支持部6A,6Bのテーパ形状に沿って敷設されるので、中底2と中敷き3との間であって、各支持部6A,6Bの側縁付近に不要な隙間が形成されない。
【0033】
また、本実施形態では、一つの内部構造体1では、各支持部材4のうち、踵支持部7以外の支持部材4の厚さをそれぞれ同一の厚さとする。例えば、配置パターンAの拇指球支持部5Aが上記した第1の厚さである場合には、踵内側支持部6Aも第1の厚さになっている。また、拇指球支持部5Aが第2の厚さである場合には、踵内側支持部6Aも第2の厚さになっている。さらに、小指球支持部5Bが第1の厚さである場合には、踵外側支持部6Bも第1の厚さになっており、小指球支持部5Bが第2の厚さである場合には、踵外側支持部6Bも第2の厚さになっている。尚、使用者の左足用の内部構造体1と、右足用の内部構造体1とで、支持部材4の厚みが異なっていてもよい。例えば、左足用の配置パターンAの内部構造体1の拇指球支持部5A及び踵内側支持部6Aの厚さが、第1の厚さであって、右足用の配置パターンDの内部構造体1の小指球支持部5B及び踵外側支持部6Bの厚さが、第2の厚さであってもよい。
【0034】
図4は、第1の厚さの拇指球支持部5Aと、第1の厚さの踵内側支持部6Aとを有する内部構造体1の縦方向の断面図である。踵内側位置の突部12は、踵支持部7が中敷き3と踵内側支持部6Aとの間に介在することにより、拇指球位置の突部10よりも若干高くなっているが、各支持部5A,6Aの厚さを揃えることにより、骨格の前後方向のバランスが整えられるようになっている。
【0035】
次に、配置パターンの組合せについて図5に従って説明する。右足用の配置パターンA,Bと、左足用の配置パターンC,Dとをそれぞれ組み合わせると、図5(a)〜(d)の4つの配置パターンが得られる。
【0036】
図5(a)は、右足用に配置パターンAの内部構造体1を採用し、左足用に配置パターンDの内部構造体1を採用した場合の平面図である。この配置パターンの組合せにおいて、踵支持部7以外の支持部材の厚さの組合せである「左足の支持部材の厚さ;右足の支持部材の厚さ」は、「第1の厚さ;第1の厚さ」、「第1の厚さ;第2の厚さ」、「第2の厚さ;第1の厚さ」、「第2の厚さ;第2の厚さ」の4つの組合せがある。このため、図5(a)の配置パターンの組合せには、厚さの組合せにより、さらに4つのパターンが存在する。
【0037】
図5(b)は、右足用に配置パターンBの内部構造体1を採用し、左足用に配置パターンDの内部構造体を採用した場合の平面図である。上記したように、この配置パターンにおいて、厚さの組合せは、図5(a)の場合と同様に4つの組合せがある。即ち、図5(
b)の配置パターンの組合せにも、厚さの組合せにより、さらに4つのパターンが存在する。
【0038】
図5(c)は、右足用に配置パターンAの内部構造体1を採用し、左足用に配置パターンCの内部構造体1を採用した場合の平面図である。この配置パターンにおいても、厚さの組合せにより、さらに4パターンが存在する。
【0039】
図5(d)は、右足用に配置パターンBの内部構造体1を採用し、左足用に配置パターンCの内部構造体1を採用した場合の平面図である。この配置パターンにおいても、厚さの組合せにより、4つのパターンが存在する。
【0040】
これにより、図5(a)〜図5(d)の配置パターンには、それぞれ4つの厚さの組合せがあるため、使用者が選択可能な靴20のパターンとしては、上記したように16通りのパターンがある。この16通りのパターンのうち、使用者のバランスの崩れを矯正するために最適なパターンが一つ選択される。例えば、右足において内側の方向にバランスが崩れている場合等には、右足に対して配置パターンAの履き物が選択され、バランスが崩れた度合いにより、第1の厚さ又は第2の厚さが選択される。このため、16種類の予め製造された左右一対の靴20を用意し、例えば使用者に試し履きをさせるなど、予め決定された選択方法に従い、使用者の骨格バランスの崩れ方に応じた最適なパターンを選択することができる。即ち、人それぞれ異なる骨格の歪みやバランスの崩れ方に対応した姿勢の矯正を容易に行うことができる。
【0041】
次に、足骨支持部の作用について図6〜図9に従って説明する。図6〜図9は、右足用の内部構造体1の模式図であって、図6及び図7は、配置パターンAの内部構造体1を示し、図8及び図9は、配置パターンBの内部構造体1を示す。
【0042】
配置パターンAは、右足の内側にバランスが下がった使用者に適している。図6に示すように、配置パターンAの拇指球位置に形成された突部10は、中敷き3等を介して、足100の拇指球P1を足裏側から支持する。図7に示すように、拇指球位置には、基節骨102及び第1中足骨103等が存在し、突部10は基節骨102の及び第1中足骨103等を足裏側から突き上げて、その高さ方向(鉛直方向)の位置を高くする。
【0043】
また、踵位置の突部12,14は、踵全体の高さを全体的に上げて、歩行性や運動性を向上する。また、踵内側の突部12は、踵内側支持部6Aが介在することにより、踵外側の突部14よりも高く、図7に示すように、踵内側位置の踵骨104の内側を持ち上げて、踵内側の高さ方向(鉛直方向)の位置を高くする。
【0044】
この配置パターンAに適した使用者が、この内部構造体1の靴20を右足に履き、さらに左足にも最適な靴20を選択すると、バランスの崩れた方向の部位が持ち上げられ、首部の頚骨の骨頭部から、膝関節、股関節を結ぶ軸が作られる。また、大腿骨の向きが適切な向きに調整され、骨盤の上下方向における傾き、左右のバランスも調整される。このため、立ち姿勢における重心位置が適切な位置となり、理想的なバランスの姿勢となる。また、このようにバランスが整えられると、足のアーチ(図6参照)も理想的な状態に形成される。
【0045】
また、図8に示すように、配置パターンBの内部構造体1の小指球支持部5Bは、中敷き3等を介して、足の小指球P2を足裏側から支持する。図9に示すように、小指球位置には、基節骨105と第5中足骨106等が存在し、小指球支持部5Bは、基節骨105及び第5中足骨106を足裏側から突き上げて、その高さ方向(鉛直方向)の位置を高くする。
【0046】
また、踵位置の突部12,14は、踵全体の高さを上げて歩行性や運動性を向上する。また、踵外側の突部12は、踵外側支持部6Bが介在することにより、踵内側の突部14よりも高い。このため、突部12は、図9に示すように、踵骨104の外側を持ち上げて、その高さ方向(鉛直方向)の位置を高くする。
【0047】
その結果、この配置パターンBに適した使用者が、この内部構造体1が装着された靴20を右足に履き、さらに左足にも最適なパターンの靴20を選択すると、上記した効果と同様に、立ち姿勢における重心位置が適切な位置となり、理想的なバランスの姿勢となる。また、このようにバランスが整えられると、足のアーチ(図8参照)も理想的な状態に形成される。
【0048】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、靴20の内部構造体1は、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち、3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる支持部材4を中底2と中敷き3との間に備えている。各支持部材4は、中敷き3の表面3Aから突出した足骨支持部をそれぞれ形成する。このため、骨格の歪みやバランスの崩れの要因となる位置にその突部が設けられた靴20を履くことによって、人それぞれ異なる骨格の歪みやバランスの崩れ方に対応した立ち姿勢の矯正を容易に行うことができる。
【0049】
(2)上記実施形態では、各々対応する足骨を支持する突部10,12,14はその高さが各別に設定されている。このため、人それぞれ異なる骨格バランスの崩れ方の度合いに対応することができる。
【0050】
(3)上記実施形態では、踵内側位置と踵外側位置とに足骨支持部が設けられるとともに、拇指球位置及び小指球位置のいずれかに足骨支持部が設けられる。このため、3位置で骨格バランスの崩れを効率的に矯正することができる。
【0051】
(4)上記実施形態では、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち3位置において、支持部材4を備えた内部構造体1を備えた左右一対の靴20を、支持部材4の配置及び厚さの違いに応じて16種類用意し、その靴20を右足及び左足にそれぞれ選択的に適用するようにした。従って、使用者の骨格バランスの崩れ方に合わせて履き物をオーダーメードする必要が無く、製造コストを低減し、立ち姿勢を容易に矯正することができる。
【0052】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、踵支持部7を省略し、踵内側、踵外側をそれぞれ支持する踵内側支持部材、踵外側支持部材を中底2と中敷き3との間に介在させて足骨支持部を構成してもよい。そして、その厚さを各別に設定することにより、踵内側及び踵外側の高さ位置を変更するようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、各支持部5,6を中底2と中敷き3との間に設けたが、中敷き3の表面3Aに設けても良い。また中底2の下に設けられる部材に貼着してもよい。各支持部5,6を中敷き3の表面3Aに設けるとき、例えば各支持部5,6を、赤、青等の色付きの材質で形成すると、各支持部5,6が設けられていることを一目で認識させることができる。
【0054】
・上記実施形態では、靴20として靴を例に挙げたが、スリッパ、サンダル等に具体化してもよい。図10は、履き物をスリッパ21に具体化した場合の平面図である。スリッ
パ21のうち、左足用のスリッパ21Aには、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置に支持部材4が設けられ、踵外側支持部6Bの厚さは、踵内側支持部6Aの厚さよりも大きくなっている。右足用のスリッパ21Bには配置パターンAが用いられ、拇指球位置、踵内側位置及び踵外側位置に支持部材4が設けられている。各支持部材4は、足裏面と当接する底部22A,22Bに埋め込まれている。或いは、底部22A,22Bの上面23A,23Bに各支持部材4を貼着してもよい。或いは、各支持部材4を設ける替わりに、底部22A,22Bのうち、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち3位置を、肉厚にして突部を形成してもよい。
【0055】
・支持部材4は、例えばインソール等、履き物に対して着脱可能な内部構造体に設けてもよい。例えば、インソールの上層と下層との間に各支持部材4を介在させてもよいし、インソール本体の表面又は裏面に各支持部材4をそれぞれ貼着するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、左足用の靴20に用いる配置パターンと、右足用の靴20に用いる配置パターンとを分けたが、左右両用の内部構造体1又は靴20である場合には、配置パターンは、配置パターンAと配置パターンBのみとなる。さらに、これらに厚さの変化をもたせると、合計4パターンとなる。この場合、4パターンの靴20を製造すればよいので、製造コストを低減できる。
【0057】
・上記実施形態では、各支持部材4を中底2及び中敷き3の間に挟むことにより、突部を形成したが、プレス成形等を施した配置パターンA〜Dの樹脂板に履き心地を向上するための中敷きを敷設して、内部構造体1を構成してもよい。或いは、ウレタン材等を配置パターンA〜Dの立体形状に切削加工した内部構造体1を製造してもよい。或いは、拇指球位置、小指球位置、踵内側位置及び踵外側位置の4位置のうち3位置を肉厚にしたポリウレタン等により内部構造体1を製造してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、内部構造体1に足骨を支持する突部を形成するようにしたが、ウレタン等の軟質な内部構造体に、各支持部材4をプラスチック等の硬質な部材を埋め込んで、表面を平らにしてもよい。そして、靴20を履いた際に、軟質部分だけが荷重によって沈み込み、各支持部材4は各々対応する足骨を支持するようにしてもよい。
【0059】
・上記した16種類のパターン以外に、特殊なバランスの崩れ方に対応するために、拇指球位置及び小指球位置と、踵内側位置及び踵外側位置のいずれか一方とに支持部材4を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】靴の内部構造体を示す分解斜視図。
【図2】(a)は配置パターンA、(b)は配置パターンBの内部構造体の平面図。
【図3】(a)は第1の厚さ、(b)は第2の厚さの拇指球支持部を有する内部構造体の横断面図、(c)は第1の厚さ、(d)は第2の厚さの踵内側支持部を有する内部構造体の横断面図。
【図4】内部構造体の縦断面図。
【図5】(a)は配置パターンA,D、(b)は配置パターンB,D、(c)は配置パターンA,C、(d)は配置パターンB,Cの組合せの各内部構造体の平面図。
【図6】配置パターンAの履き物を履いた場合の模式図。
【図7】拇指球支持部及び踵内側支持部と、足骨の対応関係を示す模式図。
【図8】配置パターンBの履き物を履いた場合の模式図。
【図9】小指球支持部及び踵外側支持部と、足骨の対応関係を示す模式図。
【図10】別例の履き物の平面図。
【符号の説明】
【0061】
1…内部構造体、10…足骨支持部としての突部、12…足骨支持部としての突部、14…足骨支持部としての突部、20…履き物としての靴、21…履き物としてのスリッパ、P1…拇指球、P2…小指球、100…足、101…踵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる足骨支持部を備えることを特徴とする履き物。
【請求項2】
前記各足骨支持部の各々は、その高さが各別に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の履き物。
【請求項3】
前記足骨支持部が設けられる3位置は、前記拇指球位置及び前記小指球位置のいずれかと、前記踵内側位置と、前記踵外側位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の履き物。
【請求項4】
足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を各別に持ち上げる足骨支持部を備えることを特徴とする履き物の内部構造体。
【請求項5】
前記各足骨支持部の各々は、その高さが各別に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の履き物の内部構造体。
【請求項6】
前記足骨支持部が設けられる3位置は、前記拇指球位置及び前記小指球位置のいずれかと、前記踵内側位置と、前記踵外側位置であることを特徴とする請求項4又は5に記載の内部構造体。
【請求項7】
使用者の立ち姿勢を矯正する姿勢矯正方法であって、
足の拇指球の位置である拇指球位置、及び小指球の位置である小指球位置、及び踵の内側の位置である踵内側位置、及び踵の外側の位置である踵外側位置の4位置のうちの3位置において、各々対応する位置の足骨を持ち上げる足骨支持部を備える履き物もしくはその内部構造体をそれら足骨支持部の配置及び高さの違いに応じて複数用意し、それら足骨支持部の配置及び高さが異なる履き物もしくはその内部構造体を右足及び左足にそれぞれ選択的に適用することによって使用者の立ち姿勢を矯正することを特徴とする姿勢矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−247501(P2009−247501A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97507(P2008−97507)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(507256061)
【Fターム(参考)】