説明

履物

【課題】 着用者に違和感を与えることなく機能性物質を設置することができる履物を提供する。
【解決手段】 所定厚さの靴底を有する履物1であって、靴底2に凹設され、着用時に足裏と接する靴底2の靴底内面4における少なくとも一部に開口部7を有する収容空間部8と、収容空間部8に収容される機能性物質とを具備することを特徴とする。また、収容空間部8と通気するスリット9を有し、靴底2の開口部7を覆う中敷き5をさらに有して構成されている。また、開口部7は、履物1の足先側に形成されているものが特に望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関するものであり、詳しくは、靴底に乾燥剤等を収容可能な履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、足の冷えや蒸れ等の問題を解消するために、靴等の履物又は靴下の中に、保温剤として使い捨てカイロ、又は除湿剤としてシリカゲル等の種々の機能を備える機能性物質を入れた状態で着用する方法が用いられている。特に、寒冷地などでは、雪下ろしなどの室外の作業を長時間行う必要があり、作業者の長靴等の中の温度は著しく低い温度になることがあり、上述した使い捨てカイロ等による保温対策を講じることが多く行われている。
【0003】
上記従来技術は、一般的な事項であり、本出願人は、本出願時において、この従来技術を特定する文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように靴下等の中に機能性物質を入れた場合、この靴下等を着用した着用者の足裏や足甲部等にこの機能性物質が接触するため、着用した際に痛みや違和感を伴う可能性があった。特に、靴下の中に入れた場合には、機能性素材が直接足に接触することとなるため、やけどや怪我などの原因となるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、着用者に違和感を与えることなく機能性物質を設置することができる履物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明の採った手段は、
「所定厚さの靴底を有する履物であって、
前記靴底に凹設され、着用時に足裏と接する前記靴底の靴底内面の少なくとも一部に開口部を有する収容空間部と、
前記収容空間部に収容される機能性物質と
を具備することを特徴とする履物」
である。
【0007】
ここで、履物としては、屋外用の靴やサンダル、又は屋内用のスリッパ等が例示される。さらに、足のふくらはぎ部分まで覆うブーツや長靴、或いは危険作業の際に使用される安全靴等を挙げることもできる。すなわち、既存の履物のほとんどに対して本発明を適用することが可能である。
【0008】
また、機能性物質とは、履物の着用感の向上、又は、履物内の環境の向上を図るためのものであり、例えば、空気中の酸素と接触して発熱する発熱組成物が通気性のある袋に封入されたカイロ等の保温剤、内部に保冷物質が封入された保冷パック等の保冷等が挙げられる。
【0009】
上記構成の履物では、靴底に、この履物の着用者が足を当接させる靴底内面に開口部を有する収容空間部が凹設されており、この収容空間部に機能性物質が収容される。これにより、機能性物質は靴底内に設置されることとなるため、着用者の足がこの機能性物質に接触することがなくなる。したがって、上記構成の履物によれば、着用者に違和感を与えることなく機能性物質を設置することができる。
【0010】
なお、機能性物質の形態としては、特に限定されるものではなく、ゲル状、粉末状、又はタブレット状等の任意の形態を用いることができるが、固形状の機能性物質や袋等に封入した状態の機能性物質を使用することによって、収容空間部に収容した機能性物質を他の機能を有する機能性物質に容易に交換することが可能になり、好適である。これにより、履物の着用状況や着用者の希望に応じて収容空間部に収容する機能性物質を変更することによって、種々の状況に対応することができる。
【0011】
また、機能性物質の幅寸法及び高さ寸法としては、収容空間部に収容可能なものであれば特に限定されるものではないが、機能性物質が収容空間内で揺動したり、収容空間の内壁に衝突したりすることを防止するために、収容空間の幅寸法及び高さ寸法と略同一寸法であることが好適である。
【0012】
上述の履物において、
「前記収容空間部と通気可能な孔部を有し、前記靴底の前記開口部を覆う中敷きをさらに有することを特徴とする履物」
とすることもできる。
【0013】
ここで、靴底内面に形成された収容空間部の開口部が着用者の足に接触することによって、着用者に違和感を与える可能性がある。
【0014】
上記構成の履物では、収容空間部の開口部を被覆する中敷きが靴底内面に設置される。これにより、着用者の足が開口部に接触することがなくなる。したがって、上記構成によれば、より的確に違和感なく使用することができる履物とすることができる。なお、中敷きに使用する素材としては、着用者の足を確実に支えるために、木、又は合成樹脂等の硬質の素材を用いることが好適である。また、中敷きに形成される孔部の大きさとしては、特に限定されないが、機能性物質を収容空間部内に収容するためには、機能性物質の大きさよりも小寸であることが好適である。そして、孔部の個数としては、特に限定されないが、機能性物質が奏する効果を向上させるためには、複数個設けられていることが好適である。また、中敷きと靴底内面との間に接着テープ等の固定手段を設け、着用時に中敷きがずれないようにするものであっても構わない。
【0015】
また、靴底の厚み寸法としては、大きくすると、収容空間部の深さ寸法を大きく設定することが可能になり、この収容空間に収容可能な機能性物質を多様化することが可能となる点で好適であり、25mm以上、好ましくは30mm以上、さらに好ましくは35mm以上とするのがよい。一方、上限としては、特に限定されるものではないが、この履物を着用する着用者の安全性を向上させるという点では、靴底の厚み寸法は小さくすることが好適であり、55mm以下、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは45mm以下とするのがよい。
【0016】
上述の履物において、
「前記開口部は、前記靴底内面の足先側に形成されていることを特徴とする履物」
とすることもできる。
【0017】
足先を覆う靴等の通気性に優れない履物を長時間着用した場合等には、特に足先に蒸れが生じやすく、水虫の原因等になる可能性がある。また、着用者が冷え性である場合や冬場である場合等には、身体の末端である足先に冷えが生じやすい。
【0018】
上記構成の履物では、開口部は、足先側の靴底内面に形成される。これにより、機能性物質は特に足先側に機能することとなる。したがって、上記構成によれば、特に足先側に効率良く機能性物質の効果を奏することができる履物とすることができる。
【0019】
上述の履物において、
「前記機能性物質は、保温材、保冷剤、吸湿剤、又は脱臭剤の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする履物」
とすることもできる。
【0020】
ここで、上述のように、保温剤及び保冷剤としては、カイロや保冷パック等が例示される。
【0021】
そして、除湿剤としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又はシリカゲル等の吸湿機能を有する成分を含むものが例示される。そして、脱臭剤としては、活性炭、ゼオライト、又はシリカゲル等の悪臭成分の吸着機能を有する成分を含むものが例示される。
【0022】
上記構成の履物では、収容空間部に収容される機能性物質として、保温材、保冷剤、吸湿剤、又は脱臭剤の少なくともいずれか一つが用いられる。これにより、履物の着用感の向上、又は、履物内の環境の向上を図ることができる。さらに、収容空間部に収容する機能性物質を適宜変更することにより、一つの履物に対して複数の機能を奏させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上述の通り、本発明によれば、靴底に、着用者の足と接触する靴底内面に開口部を有する収容空間部を凹設することによって、靴底内に機能性物質を設置することが可能となり、着用者に違和感を与えることなく機能性物質を設置することができる履物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明に係る履物の実施形態の一例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態の履物1は、靴底2と、この靴底2に取付けられた甲被3と、靴底2の靴底内面4に配置された中敷き5と、靴底2内に収容された機能性物質6とから構成されているサンダルである。なお、機能性物質6としては、靴底2内に収容することによって、履物1の着用感の向上、又は、履物1内の環境の向上を図ることができるものであれば特に限定されるものではないが、本実施例においては、市販の使い捨てカイロを、保温機能を有する機能性物質6として使用している。
【0026】
ここで、靴底2について、さらに詳しく説明する。図2に示すように、靴底2は、靴底内面4を有する上底2aと、この上底2aにおける靴底内面4と対抗する面に取付けられ、地面に接地する下底2bと、靴底内面4から形成された開口部7と、この開口部7に連通して内部に機能性物質6を収容可能な収容空間部8とを備えている。そして、図1に示すように、甲被3は、上底2a及び下底2b間に挟み込まれて固定されている。
【0027】
次に、中敷き5についてさらに詳しく説明する。図1に示すように、中敷き5は、プラスチック板によって靴底2の靴底内面4と略同形状に形成されているものであり、靴底内面4に配置した際に開口部7と対向する位置に形成された長穴形状の複数のスリット9を備えるものである。ここで、スリット9が本発明における孔部に相当する。
【0028】
次に、本実施形態の履物1の使用方法について説明する。
【0029】
まず、図3に示すように、中敷き5を靴底2から取り外した状態で機能性物質6を靴底2の収容空間部8に収容する。そして、中敷き5を靴底2の靴底内面4に外周を合致させて配置する。これにより、機能性物質6が靴底2内に収容される。
【0030】
このとき、収容空間部8の開口部7は中敷き5によって覆われる。これにより、機能性物質6は靴底2内に設置されることとなるため、着用者の足に接触することがなくなる。さらに、収容空間部8の開口部7は、中敷き5によって覆われるため、この開口部7も着用者の足に接触することがなくなる。これにより、着用者は、この履物1を違和感なく使用することができる。
【0031】
また、収容空間部8収容された機能性物質6は、袋状のカイロであるため、収容空間部8から容易に取り出すことが可能である。これにより、着用者の希望に応じて、保冷剤や除湿剤などの他の機能性物質6への交換を容易に行うことができる。
【0032】
また、図3に示すように、収容空間部8に連通する開口部7は、靴底内面4における足先側に形成されているため、冷えが生じやすい足先を効率良く保温することができる。
【0033】
以上、本発明に係る一例を説明したが、本発明はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0034】
すなわち、本実施形態においては、履物1として、サンダルを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、ブーツ、スニーカー、又はスリッパ等の他の履物であっても構わない。
【0035】
さらに、本実施形態の履物1において、機能性物質6として、保温機能を有するカイロをを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、脱臭機能、消臭機能、吸湿機能、滅菌機能、又は芳香機能等の種々の機能を有するものを使用するものであっても構わない。また、機能性物質6の形態として、袋に封入した状態のものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、液体状、ゲル状、粉末状、粒子状、マイクロカプセル等の形態を用いるものであっても構わない。
【0036】
さらに、本実施形態の履物1において、中敷き5として靴底2における靴底内面5の全体を覆うものを例示したが、これに限定されるものではない。中敷きの形状としては、少なくとも靴底内面5に形成された開口部7を覆うものであれば、より小寸に形成されたものであっても構わない。また、中敷き5に形成された孔部としてスリット9を例示したがこれに限定されるものではない。例えば、開孔形状が略円形を為して形成されているものであっても構わない。
【0037】
さらに、本実施形態の履物1においては、収容空間部8は一箇所に凹設されているものであり、収容空間部8の開口部7は、靴底内面4における足先側に形成されているものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、収容空間部8が複数箇所に凹設されているものや、収容空間部8の開口部7が、靴底内面4における踵側に形成されているものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】履物の構成を示す斜視図である。
【図2】履物の構成を示す断面図である。
【図3】履物の構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 履物
2 靴底
2b 下底
2a 上底
3 甲被
4 靴底内面
5 中敷き
6 機能性物質
7 開口部
8 収容空間部
9 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚さの靴底を有する履物であって、
前記靴底に凹設され、着用時に足裏と接する前記靴底の靴底内面の少なくとも一部に開口部を有する収容空間部と、
前記収容空間部に収容される機能性物質と
を具備することを特徴とする履物。
【請求項2】
前記収容空間部と通気可能な孔部を有し、前記靴底の前記開口部を覆う中敷きをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記開口部は、
前記靴底内面の足先側に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記機能性物質は、
保温材、保冷剤、吸湿剤、又は脱臭剤の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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