説明

履物

【課題】内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助を可能とするスペーサのうち、少なくとも2つを装用者が自らの自由な選択で組み合わせることが可能である履物を提供する。
【解決手段】装用者の足底とほぼ等しい平面形状とされた足底板と、第1のスペーサと第2のスペーサの少なくとも2つのスペーサを備え、該足底板と、該スペーサを面ファスナーによって着脱自在とする。また、履物は、例えばサンダルや靴の中敷の形態をとり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴やサンダル、スリッパ、及び、靴の中敷のように、装用者が足に装着して使用する履物に関する。より具体的には、装用者の足底に接する面に適当な高さのスペーサを取り付けることが可能な履物であり、かつ、装用者自らによってスペーサの形状や位置を調整可能とされている履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、足底の土踏まず部分のアーチ形成を補助することが可能な履物が実用に供されている。これらは、典型的には、靴や靴の中敷の土踏まずにあたる部分にゴム等の弾性を有する材料で構成された、厚みのあるスペーサが設けられた履物とされている。以下、このような構成を有する履物を、アーチ補助付履物と呼ぶことにする。
【0003】
さて、アーチ補助付履物が使用される理由は、人間が歩行等する際に、足底の土踏まず部分のアーチ状のカーブ(以下、簡単のため「縦アーチ」という)が形成されていることが、歩行時の疲労や筋肉の過度の緊張及び痛みを招かないために極めて重要であるからである。ところが、疲労の蓄積や筋力の衰え等の原因により、正常な縦アーチを維持できなくなることがしばしば発生し、こうなるとさらなる疲労を招来するという悪循環に陥ってしまう。そこで、アーチ補助付履物によって、人工的に縦アーチの形成を補助し、このような状況を改善することが行われているのである。
【0004】
しかし、人間の足の形状は個々人によって相当に異なり、縦アーチの補助に使用すべきスペーサの位置や形状、大きさは様々である。さらに、一人の人間でも右足と左足で形状が異なることは普通であり、当然に右足と左足で異なるスペーサが使用されるべきものである。しかし、このような要請に応えるには、非常に多くの種類のアーチ補助付履物を製造しなければならず、現実的には装用者のそれぞれに最も適したアーチ補助付履物を提供することはきわめて困難であった。
【0005】
このような課題を解決するため、実用新案登録第3142306号に開示された考案では、縦アーチのサポート及び踵骨を適正な位置に固定する機能を有するスペーサを、インソールの上面に取り付けることができる構成とし、装用者が自らの好む位置にこれらを組み立てることを可能とした構成が開示されている。これによれば、個人の足の形状等に応じた好ましい位置にスペーサを設けることができる可能性が高まる。つまり、個人の特性に合った、より好ましいアーチ補助付履物を提供できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3142306号
【0007】
しかし、縦アーチの補助と踵の支持を行うスペーサも、その相対的位置を装用者に応じて調整できることが好ましく、これら機能を一体のスペーサで実現する前記考案ではこのような要請にこたえることができなかった。
【0008】
また、本願発明の発明者の研究によれば、縦アーチの補助と踵の支持が必ずしも多くの装用者にとって最も重要とは言えず、むしろ、補助すべきは次の3カ所であることが明らかになっている。すなわち、内縦アーチ、外縦アーチ、横アーチである。人間の体重を主に支えるのは、足底のうち、親指の付け根、小指の付け根、踵の3点であり、この間が筋肉や靭帯の働きでアーチ状のカーブを形成しているのであるから、筋肉の疲労等で維持できなくなったアーチを補助するということは、この3点間を補助するということである。具体的には、親指の付け根と踵の間である内縦アーチ、小指の付け根と踵の間である外縦アーチ、親指の付け根と小指の付け根の間である横アーチであり、ここで内縦アーチは、よく知られる縦アーチ(土踏まず)とほぼ同義である。
【0009】
つまり、本願発明者は、これら3つのアーチを、必要に応じて個人の特性や足のかたちに適した形状のスペーサで補助することで、より高い効果が得られることを見出し、このことに着目して、歩行時等の疲労や痛みの発生の抑制を達成しようと考えた。例えば、開帳足や外反母趾といった症状は、縦アーチの補助や踵の支持のみでは改善することができないと考えられるが、前記3つのアーチの補助の組み合わせではこれらの症状の改善も実現できる。しかし、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助を個人の足の特性に合わせて最適な状態で実現することができるものは知られていない。
【0010】
この理由の一つとして、これを実現するには、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助のそれぞれに対応して、形状や大きさが違うものを何種類も用意しなければならず、必要となる履物の種類の数はこれらの積になるのであるから、結果として天文学的な種類の履物が必要になってしまうことがあげられる。現実的にこのような種類の製品を製造することはほとんど不可能であり、たとえば、それぞれの大きさと高さを3種類用意するだけでも、1カ所について9種類のスペーサが発生し、これが3カ所組み合わせられると、729種類もの商品が必要になる。高価な受注生産品を例外とすれば、このような多品種生産は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助を可能とするスペーサのうち、少なくとも2つを装用者が自らの自由な選択で組み合わせることを可能とし、開帳足や外反母趾といった症状の改善や、歩行時等の疲労や痛みの発生の抑制を期待できる履物を提供することを、解決しようとする課題としている。さらに、本発明はこれに限らず、追加のスペーサを装用者自身が組み合わせて使用することにより、運動時の姿勢の矯正等を実現可能な履物を提供することも、解決しようとする課題としている。加えて、本発明は、踵部を高くして、装用者の身長を高く見せる効果を奏する履物を提供することをも、解決しようとする課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)前記課題を解決するため、本発明は、
装用者の足底とほぼ等しい平面形状とされた足底板と、
第1のスペーサと第2のスペーサの少なくとも2つのスペーサを備え、
該足底板と、該スペーサは着脱自在とされている、
ことを特徴とする、履物としている。
【0013】
ここで、履物とは、足をほぼ包み込む構造を有する靴に限らず、紐またはバンドのみで足に固定される、サンダルやスリッパのようなものを含む概念である。また、靴の中敷きのように、単体では足に固定する機能を有しないとしても、他の靴と組み合わせることで間接的に足に固定して使用されるものをも含む概念である。装用者の足底の適切な位置にスペーサを当接させることで、内縦アーチの補助や外縦アーチの補助、横アーチの補助等を実現しようとする目的において、これらはいずれも同じ作用効果を得られるものだからである。また、装用者の姿勢を矯正したり、身長を高く見せるといった、アーチ補助とは異なる目的でスペーサを使用する場合についても、やはり同様の手段で実現されるものであり、該履物と同じ概念でとらえることができる。
【0014】
装用者の足底とほぼ等しい平面形状の足底板と少なくとも2つのスペーサが着脱自在とされているので、装用者は個人の足の特性に応じたスペーサを選択して取り付けることが可能である。スペーサ自体は、例えば、内縦アーチの補助に対応したものが大きさが3種類、高さが3種類の9種類のものからいずれかを選択可能とされ、横アーチの補助についても同様に9種類の選択が可能とされているとすると、装用者はこれらの組み合わせで、81種類もの履物を得ることが可能である。また、これを左右の足それぞれについて行うことができるので、装用者が個人の特性に応じた最適な履物を得られる可能性が高まる。
【0015】
また、履物の製造者にとっても、非常に多くの種類の製品を製造するかわりに、各スペーサを数種類準備すれば、その後は装用者自身が各々の特性にあった履物に組み立ててくれるのであるから、製造しなければならない製品の種類が少なくなり、生産性の観点ですこぶる都合がよい。とくに、スペーサは、熱可塑性樹脂やそのエラストマ、または、シリコーンゴムやジエンゴム等のゴム類を金型を用いて成形して製造することが、品質の安定性やコストの観点で好ましいが、製品の種類が増えると、準備しなければならない金型の数が増えてしまい、著しく大きな投資を必要としてしまう。従って、製造しなければならない製品の種類が少なくなる本構成は、製造者にとっても好ましい。
【0016】
また、少なくとも2つのスペーサを含むので、例えば、装用者は内縦アーチの補助のみでなく横アーチの補助も併せて行う、あるいは、内縦アーチの補助と外縦アーチの補助を行う、というように、自由に組み合わせた履物を得ることができる。さらに、例えば、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助に加えて、さらに踵の下部に厚みのあるスペーサを設けて、装用時に踵が高く持ち上がり、これによって装用者の身長を高く見せる効果を有する履物とすることも、装用者の好みや必要に応じて自在である。
【0017】
また、足底板とスペーサが分離可能であるため、装用者がスペーサをナイフやハサミで適当に切断する等してその形状を微調整することも容易である。これにより、製造者が提供するスペーサの種類が限られていたとしても、装用者がその足の形状に合わせた最適な履物を得られるという効果が得られる。スペーサと足底板が一体であったり、あるいは、これらは分離していても、例えばアーチ補助と踵支持のスペーサが一体となっていると、これらを所望の形状に加工することは容易ではない。その点、補助の必要な部位ごとにスペーサが独立している本発明であれば、各部位ごとに大きすぎる部分を切り落とすといった簡単な調整が可能になるのである。
【0018】
また、本発明は、
第3のスペーサを備える
ことを特徴とする履物とすることが好ましい。
【0019】
すでに説明したとおり、本願発明者の研究によれば、足底で、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助の3カ所を組み合わせることで、開帳足や外反母趾といった症状の改善や、歩行時等の疲労や筋肉の過度の緊張及び痛みの発生の抑制を達成が期待できる。これらのうち、2カ所を自由に選択することでも、相当程度に効果が見込めるが、最大の効果はやはり、装用者が前記3カ所のそれぞれに応じたスペーサを自由に組み合わせられることである。また、装用者が姿勢の矯正効果や身長を高く見せる効果を欲した場合に、この要請にこたえることのできるスペーサが入手可能であることがより好ましい。従って、本発明は、前記第1のスペーサ及び第2のスペーサの2つのスペーサに加え、第3のスペーサを備えることを特徴とする履物とすることが好ましい。もちろん、製造者の判断と投資により、装用者のさらなる利便性の向上を達成するため、第4のスペーサや第5のスペーサを備える構成とすることは全く差し支えない。
【0020】
(2)本発明は、
前記足底板の上面における前記スペーサの取り付け位置は、少なくとも5mm以上調整可能である、
ことを特徴とする(1)に記載の履物としている。
【0021】
すでに説明したとおり、本発明においては、例えば、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助のそれぞれを、数種類のスペーサから選択して組み合わせることが可能であり、しかも、各々のスペーサは装用者自身によって比較的容易に切断等して形状を調整できるのであるから、すでに装用者の足の形状や好みに応じた適合性のかなり高い履物であるといえる。しかし、足の形状や大きさはまさに装用者に応じて十人十色的に様々であるので、調整の余地は大きければ大きい方が好ましいことは当然である。
【0022】
そこで、本発明は、足底板に対するスペーサの取り付け位置を少なくとも5mm以上調整可能とすることが好ましい。足底板の決まった位置ではなく、ある程度位置をずらしてスペーサを取り付けることを可能とすれば、より多くの装用者に適合できる可能性が高まることは当然であるが、このことは逆の見方をすれば、製造者の準備するスペーサの種類が多少少なくても、多くの装用者が満足できる履物となる可能性が高くなるともいえる。製造者の投資を抑制しつつ、多くの装用者が満足できることは、当然ながら好ましいことであり、スペーサの取り付け位置を調整できることは、このような効果を得られる好ましい特徴である。
【0023】
ところで、足底板とスペーサの着脱は、様々な手法で実施することができるが、例えば、足底板の上面に小さな窪みを多数設けておき、これと嵌合可能な突出部をスペーサの下面に設けておくことができる。このようにすれば、スペーサ下面の突出部を、足底板のどの窪みと嵌合させるかによって、足底板に対するスペーサの取り付け位置を調整できる。ここで、足底板のどの程度の範囲に窪みを設けるかによって、スペーサの取り付け位置の調整範囲が決定するが、ほとんどの装用者にとって、5mmも調整範囲が設けられていれば十分に満足のいく結果が得られ、一方でこれ未満では、調整が不足する装用者が増える。そこで、本発明は、足底板に対するスペーサの取り付け位置を少なくとも5mm以上調整可能とすることが好ましいのである。
【0024】
なお、調整範囲は実施可能である限り大きい方が、多くの装用者の要求に応えられる可能性が高まる点で好ましいことは言うまでもない。例えば、10mm程度の調整範囲があれば、装用者の靴のサイズが異なる場合であっても(日本国においては、通常5mm刻みのサイズで靴が販売されることが多い)、これに追随してスペーサの位置を調整しきれる可能性が高くなるのでより好ましい。
【0025】
また本発明は、
前記足底板の上面の任意の位置に前記スペーサを着脱可能とされている、
ことを特徴とする(2)に記載の履物とすることが好ましい。
【0026】
足底の特定個所にスペーサを設けることで優れた効果が期待できることはすでに説明したとおりであるが、足底板のどのような位置にどのようなスペーサを取り付けることを望むかは、究極的には履物の装用者が判断することである。たとえば、装用者の足底に鶏眼(いわゆるウオノメ)が存在していた場合には、歩行時にこれに体重がかかることを避けるために、鶏眼部分をくり抜いたドーナツ状のスペーサを足底板の該当箇所に装着することが考えられる。しかし、このような事情を、履物の製造者が事前に予想し、足底板上で鶏眼等に合わせた位置にスペーサを取り付けられるように専用の構造を設けておくことは不可能である。従って、足底板の上面の任意位置にスペーサを着脱可能とされていることが好ましい。
【0027】
(3)本発明は、
前記スペーサと前記足底板は面ファスナーによって着脱可能とされている、
ことを特徴とする、(2)に記載の履物とすることが好ましい。
【0028】
前記のとおり、足底板の上面の任意の位置にスペーサを着脱可能とすることが好ましいが、このような機能を実現する手段として、面ファスナーを用いることが好ましい。一般的な面ファスナーは、フック状に起毛されたフック側とループ状に密集して起毛されたループ側の2種類からなり、フック側とループ側とを押し付けるとそれだけで貼り付き、かつ、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできるもので、例えば、マジックテープ(株式会社クラレの登録商標)の名称で製造・販売されている。足底板の上面の全面に面ファスナーを設けておき、スペーサの下面に対となる面ファスナーを設けておけば、足底板の任意位置にスペーサが着脱自在となり、また、スペーサの下面全体で足底板と固定することから、比較的強い固定力が得られる点でも優れている。
【0029】
さらに、面ファスナーは一般に、薄くかつ軽量なものが得られ、これらは履き心地がよく軽量で疲れにくい履物を実現する材料として好ましい特徴である。また、すでに大量に製造・流通しているために極めて入手性がよく、比較的安価である点でも優れている。
【0030】
もっとも、本発明において、足底板とスペーサの着脱を実現する手段は、必ずしも面ファスナーに限られない。たとえば、スナップボタンを使用することも可能であるし、また、前記のように、足底板に細かい窪みを多数設けておき、スペーサの下面にこれに嵌合する細かい突出部を設け、これらが嵌合することで位置が固定される構成としてもよい。
【0031】
このような構成では、足底板の上面のほぼ任意の位置にスペーサを着脱可能とすることは可能であるものの、その取り付け位置の分解能は面ファスナーを使用した場合ほど細かくすることは困難であり、せいぜい、数mmピッチでの取り付け位置の選択となってしまう。しかし、この分解能は、スペーサの取り付け位置の選択という目的においては通常必要十分と考えられるものであり、また、分解能がやや粗いために、一度取り外したスペーサを元の位置に取り付けることが容易であるという利点がある。
【0032】
(4)本発明は、
前記面ファスナーはループ側とフック側からなり、
該ループ側が前記足底板に設けられており、
該フック側が前記スペーサに設けられている、
ことを特徴とする、(3)に記載の履物とすることが好ましい。
【0033】
すでに説明した通り、面ファスナーには通常ループ側とフック側があり、これらの組み合わせ時のみにお互いに張り付くものが普通である。一部には、組み合わせを選ばずに任意の面に対して着脱自在とされた面ファスナーも存在するが、本発明においては、前記ループ側とフック側を有し、しかも、ループ側を足底板上面に、フック側をスペーサ下面に設ける構成とすることが好ましい。なぜなら、面ファスナーのループ側は、細かいループ状に繊維が起毛されているのみで、これに接する通常の布等には特段の作用を奏することがない。しかし、面ファスナーのフック側は、フック状(鈎針状)の起毛がなされており、面ファスナーのループ側と引っかかって強力に張り付くことは当然であるが、それ以外の通常の布等にも引っかかりを生じ、ある程度の張り付きを生じる。
【0034】
このため、足底板上面に面ファスナーのフック側を設けると、履物の装用者の足に痛みを伴う刺激を与えたり、あるいは、装用者が靴下等を着用している場合には、足底板と靴下が張り付いてしまうという不都合を生じる。そこで、足底板上面側には、一般の布等に張り付くことのない面ファスナーのループ側を設け、通常は装用者の足や靴下と触れることのないスペーサの下面に、面ファスナーのフック側を設けることが好ましい。
【0035】
(5)本発明は、
前記面ファスナーは、前記スペーサーの該面ファスナーが設けられる面の外縁部から少なくとも1mm以上内側に設けられている、
ことを特徴とする、(4)に記載の履物とすることが好ましい。
【0036】
すでに説明した通り、足底板とスペーサを面ファスナーで着脱する構成とすると、有利な特徴が多く得られるものの、装用者の足に刺激を与えたり、あるいは装用者の着用している靴下に張り付いてしまうという不具合を生じることが懸念される。そこで、スペーサに面ファスナー設ける際に、取り付け面の外縁に沿って少なくとも1mm程度、面ファスナーが設けられていない隙間(間隙)を設けるとよい。つまり、スペーサの取り付け面よりも小さめの面ファスナーとすることで、足底板にスペーサを取り付けた際に、面ファスナーに装用者の足や、装用者の着用している靴下が接触しなくなるため、前記の不都合が生じなくなるのである。
【0037】
なお、面ファスナーの外縁部と、スペーサ上でのこれの取りつけ面の外縁部の隙間は、必ずしも1mm程度には限らず、製造上の都合等により適宜選択することができる。例えば、面ファスナーをスペーサに取り付ける際に、多少の位置ずれが発生する場合があり、間隙があまりに小さいと面ファスナーの端部がスペーサの外縁部に現れてしまうことが考えられる。このような事態を回避する為、間隙を例えば3mm程度とすることも可能である。
【0038】
また、本発明は、
前記スペーサーの前記面ファスナーが設けられる部分が、少なくとも0.5mm以上窪んだ形状とされている、
ことを特徴とする、(5)に記載の履物とすることが好ましい。
【0039】
スペーサーの底面に面ファスナーを設けた場合、この履物の装用者の体重は、スペーサーを介して面ファスナーが支えることになる。しかし、これでは面ファスナーに過度な力がかかるばかりか、装用者の歩行などに伴って、面ファスナーにかかる力が繰り返し変動してしまうことになり、短期間に面ファスナーの劣化を招く可能性がある。例えば、繰り返し面ファスナーのフックが折損して張り付かなくなる場合が考えられる。
【0040】
このような不具合を避けるため、本発明においては、面ファスナーを取り付ける面のうち、実際に面ファスナーを取り付ける部分を僅かに窪ませることが好ましい。このようにすることで、装用者の体重は面ファスナーにかからず、スペーサの前記間隙部分と足底板の直接接触によって支持されため、前記のような面ファスナーの劣化を回避できるからである。なお、面ファスナーは必ずしも完全に密着させなくとも、フックとループが接触すると互いに張り付くので、面ファスナーの取り付け位置が多少窪んでいたとしても取り付けには特段の問題を生じない。なお、間隙部分が装用者の体重を支持することになるので、間隙部分には相応の強度が必要であり、従ってこの場合は間隙を3mm程度のように広めに設けることが好ましい。
【0041】
(6)本発明は、
前記スペーサが上面に取り付けられた前記足底板の上面に、カバーシートを着脱可能とされている、
ことを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか1に記載の履物とすることが好ましい。
【0042】
本発明においては、足底板とスペーサは着脱自在とされているため、これらの間にわずかながら隙間が生じることがある。この隙間に、履物の着脱時に装用者の足や、あるいは、装用者の着用している靴下等が引っ掛かり、スペーサが外れてしまったり位置がずれてしまったりという不都合が生じる可能性がある。また、足底板とスペーサが面ファスナーによって着脱される構成では、これらの間の密着性はかなり高いとはいうものの、わずかな隙間から面ファスナーのフック面に、装用者の着用している靴下等が張り付いてしまって不快感を与えてしまうという懸念もある。
【0043】
そこで、スペーサを取り付けた足底板の上面全体をすきまなく覆うことのできるカバーシートを設けることで、足底板とスペーサの間の隙間に足等が引っ掛かったり、面ファスナーが装用者に不快感を与えたりといった不都合の発生を防止することができる。
【0044】
なお、カバーシート自体の材質等は、装用者が良好な装用感が得られることはもちろんであるが、スペーサによって作られる凹凸の存在にもかかわらず、足底板上面全体を無理なくカバーできるものでなければならないため、伸縮性に富む柔軟な材料で構成されるか、少なくとも薄くしなやかで柔軟性を有するように構成させることが好ましい。
【0045】
また、本発明は、
前記カバーシートの下面には面ファスナーを備えている、
ことを特徴とする、(6)に記載の履物とすることが好ましい。
【0046】
すでに説明した通り、カバーシートは、スペーサによって凹凸の作られた足底板全体をカバーしなければならないので、その位置がずれてしまったりする場合が発生しがちである。カバーシート自体は、装用者の足底のアーチ等を補助するものではなく、多少位置がずれたとしても、履物自体の機能に大きな影響を与えるものではないが、このような場合にカバーシートに皺などが発生すると、履物の装用感を損ねてしまう。
【0047】
そこで、カバーシートを足底板に固定する手段を備えることが好ましい。具体的には、カバーシートの下面に面ファスナーを備え、足底板上面とカバーシート下面が張り付くようにするとよい。また、この場合、足底板上面にも面ファスナーを設けていることが好ましいことは言うまでもない。
【0048】
また、さらに、スペーサーの上面にも面ファスナーを設けることもできる。具体的には、足底板の上面とスペーサーの上面に面ファスナーのループ側を備え、スペーサーの下面とカバーシートの下面に面ファスナーのフック側を備えるとよい。このようにすると、履物のすべての個所で、足底板とスペーサーとカバーシートが実質的に一体となり、位置ずれなどを生じる懸念は実質的に皆無とすることができる。
【0049】
なお、いずれの場合も、かならずしもカバーシートの下面全面を面ファスナーとする必要はない。カバーシートの下面の一部のみ、例えば、固定力は弱まるものの、カバーシートの周部に沿って面ファスナーを設けたとしても、位置ずれ等の不都合を発生する危険は大幅に低減することができる。
【0050】
また、本発明は、
前記カバーシートの下面と前記足底板の上面にはスナップボタンを備え、
これらがお互いに着脱自在とされている、
ことを特徴とする、(6)に記載の履物とすることが好ましい。
【0051】
カバーシートの下面の一部のみを足底板の上面と固定可能とするだけでも、位置ずれ等の不都合を発生する危険は大幅に低減できるため、これらの固定は必ずしも全面固定を実現できる面ファスナーでなければならない必然性はなく、例えば、スナップボタンのような手段を用いても構わない。
【0052】
また、本発明は、
前記カバーシートは伸縮性を有する材料で構成されている、
ことを特徴とする、(6)に記載の履物とすることが好ましい。
【0053】
すでに述べた通り、カバーシートは足底板の上面にスペーサによる凹凸が存在するにもかかわらず、足底板の上面を隙間なく覆えることが好ましく、このためにカバーシートは柔軟性を有する素材で構成されることが好ましいのだが、厳密には、凹凸部を隙間なく覆うには平坦な部分を隙間なく覆うよりも広い面積のカバーシートが必要であることは明らかである。立体的な形状を平面的なカバーシートでカバーしようとしている以上、この矛盾が発生することは不可避なのであるが、現実にはスペーサによって形成する足底板上面の凹凸の高さは通常数mm乃至20mm程度と、足底板の上面面積に対して比較的小さいものであるため、カバーシートの微小な浮きや皺によってこのような矛盾が吸収され、実用上は大きな問題となることはない。
【0054】
しかし、カバーシートに部分的に強い張力が働く部分ができたり、あるいは、僅かなたるみを有する部分ができたりすることは避けられず、これらが装用感に多少の影響を与えることはある。そこで、カバーシートを伸縮性を有する材料で構成すると、無理なく足底板の上面をカバーシートで覆うことが可能となり、その装用感はさらに向上する。
【0055】
また、本発明は、
前記カバーシートは熱可塑性樹脂シートで構成されている、
ことを特徴とする、(6)に記載の履物とすることが好ましい。
【0056】
足底板の上面にスペーサによる凹凸が存在する場合のカバーシートが、取り付ける際に凹凸に合わせて自在に変形し、その後その形状を保持するとすれば、前記と同様の装用感の良い履物が得られることは明らかである。このような機能を実現する方策として、本発明においては、カバーシートを熱可塑性樹脂シートで構成することが可能である。具体的には、家庭用ドライヤーの熱風でカバーシートの材料が軟化して凹凸に合わせて変形し、その後冷却すれば、その形状で硬化するカバーシートとすると使い勝手の良いものが得られる。
【0057】
(7)本発明は、
前記スペーサには、断面形状が略蒲鉾形状のスペーサを、少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、(1)乃至(6)のいずれか1に記載の履物としている。
【0058】
本発明に係る履物に使用するスペーサの形状は、本質的には装用者が各々の足の大きさや形状といった特性に合わせて自由に決めればよく、この意味において任意形状が許容される。しかし、本発明が解決しようとする課題の一つである、内縦アーチや外縦アーチ、横アーチの補助の目的においては、装用者の足底の各アーチは本来の形状に近い滑らかなカーブ形状に補助されることが必要であり、必然的にスペーサの形状も特徴的な形状となる。
【0059】
具体的には、足底板との着脱面である、スペーサの下面はほぼ平面形状であり、装用者の足底と接する上面はアーチ形状に合わせた曲面を構成することが好ましい。この形状は、いわゆるなまこ形に近いものであり、その断面は半楕円形状、または、いわゆる蒲鉾形に近いものである。もっとも、例えば内縦アーチを例にとると、足の中央部から内縁部に向けては緩やかにスペーサの厚みが厚くなり、内縁部付近で急激に厚みが薄くなるような、非対称な蒲鉾形としなければならない。つまり、断面形状はおおむね蒲鉾形状であるが、対象性など含めて厳密な蒲鉾形状である必要はないため、略蒲鉾形状と表現しているのである。
【0060】
スペーサの断面形状がこのような略蒲鉾形状であれば、装用者の足底に自然なアーチのカーブを作れる点で好ましく、また、装用者の足に接する部分のスペーサに角部が無いため、装用感が良い。また、多くの装用者にとって有用である形状であるので、断面形状が略蒲鉾形状のスペーサを数種類準備しておくことで、装用者がこれらの中から各々の足の特性にあったものを選択できる可能性が高まり、装用者にとってより便利な履物となる。ハサミやナイフを用いてスペーサを微調整することも可能であるが、大半の装用者にとってこのような調整は、多少なりとも面倒なものであり、自分の足に適した形状のスペーサを直接購入できることは、利便性を高めてくれるからである。
【0061】
もちろん、略蒲鉾形状の断面形状を有するスペーサは、内縦アーチや外縦アーチ、横アーチの補助の目的以外にも使用できる。例えば、比較的投影面積が小さく、高さが高い、略蒲鉾形状の断面形状を有するスペーサを使用すると、装用者の足底に指圧効果を与えることができる。この場合も、断面形状を略蒲鉾形とすることで、装用者の足底に接する部分のスペーサに角部が無いので、強い指圧効果を付与しつつも、痛み等の不快感の少ないものが得られる。
【0062】
また、本発明は、
前記スペーサには、断面形状が楔形のスペーサを、少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれか1に記載の履物としている。
【0063】
足底のアーチを補助することにより、歩行時等の疲労や痛みの発生の抑制に効果を見込めることはすでに説明した通りであるが、脚部に係る不都合はこれに限らず様々なものがあり、この中でも、いわゆるO脚やX脚といった症状に悩む者は少なくない。これら症状は、専門的な治療を要するケースもあるものの、踵にかかる体重の重心が足の内側または外側に偏っている状態を、中央部に矯正する程度で改善する程度のものも多くみられる。
【0064】
この目的で、踵部分に傾斜を設けたインソールが実用に供されている。これを靴の中に敷いて使用すると、装用者の踵が傾斜面に当接するようになり、重心が移動してO脚やX脚といった症状が緩和するというものである。しかし、体重の重心を適切に移動するために必要な傾斜や高さ、あるいは、どの程度の硬さのインソールが好ましいかといった要件は、本質的には装用者によって様々である。
【0065】
そこで、本発明においては、断面形状が楔形のスペーサを含むこととすれば、装用者がこれを用いて、自分自身にあった体重の重心移動を実現できる履物を実現できることとなる。もちろん、履物の製造者が、勾配の違う数種類の断面形状が楔形のスペーサを準備しておき、装用者がこれから自身に適したものを選択する形とすることが好ましい。また、スペーサの硬さの違いを生じる材質の違いなどについても同様である。
【0066】
もちろん、本発明はO脚やX脚といった症状に限って使用されるべきものではない。例えば、ゴルフのような一部のスポーツでは、プレーを容易にするために装用者の姿勢を矯正可能な履物が使用される場合があるが、本発明はこのような履物としても利用可能なものである。
【0067】
また、本発明は、
前記スペーサには、上面に少なくとも2つ以上の凸部が設けられているスペーサを、少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれか1に記載の履物としている。
【0068】
足底には、多数の反射区(概念的には、俗につぼと呼ばれるものに近い)と呼ばれる部位が存在しており、ここを刺激することで一定の生理的作用が得られるといわれている。また、単に爽快感を得る目的でも、足裏を刺激することが一般に行われている。これについても、足裏のどの部位をどの程度の強度で刺激することが最も好ましいかは、各個人の特性によって異なるものである。
【0069】
そこで、本発明において、足裏の反射区等を刺激可能なスペーサを設けることが好ましい。この場合、スペーサとしては、上面に複数の凸部が設けられているものとすることができる。凸部と足底の接面には、接面の面積が小さいことから大きな圧力がかかることになるので強い刺激を得ることができる。また、凸部の大きさや数を変えることで刺激の大きさをほぼ任意に調整することが可能であるので、数種類を準備しておくことで、装用者が自ら好ましい刺激の強さのスペーサを選択することが可能となる。
【0070】
また、本発明は、
前記スペーサには、上面に磁石が取り付けられているスペーサを、少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれか1に記載の履物としている。
【0071】
足底に物理的な刺激を与えることで、一定の生理的作用を得ようとしたり、あるいは、爽快感を得ようとすることが行われていることはすでに説明した通りであるが、物理的刺激以外の刺激を与えることによっても、血行を促進して凝り等の症状を緩和することを企図する試みが広く行われている。代表的なものの例として、磁石の磁気を利用するものがあげられ、磁気治療器として広く流通している。磁気によって血行が促進するメカニズムは必ずしも明らかではないものの、効果を実感する患者も存在しており、社会的な需要は確かに存在する。
【0072】
この例にしても、装用者が最も磁気を適用したい部位に磁石を当接させることが必要であり、磁石の位置が固定できること、及び、磁石の位置を装用者が自由に調整できることが好ましい。そこで、本発明においては、スペーサの上面に磁石を埋設することとし、スペーサを足底板の上面に装用者自身が固定することで、装用者の好む位置で磁石を作用させることを可能とした。なお、磁石を備えるスペーサは、専用品としてもよいし、専用品でないスペーサ、例えば、前記断面形状が略蒲鉾形状のスペーサ等、本来、アーチ補助を意図したスペーサの表面に磁石を埋設しても良い。この例でいえば、補助を必要とするアーチ部分は、もともと筋肉が疲労しやすい部位であり、このような部位の血行を促進する効果が得られることは、アーチ補助の機能と血行促進の機能の相乗効果が期待できるなど、好ましいものであるからである。
【0073】
なお、物理的刺激以外の刺激には、磁気以外によるものを適用することも可能である。例えば、一部の半導体、例えば、ゲルマニウムは、皮膚と当接させることで血行を促進させる効果が得られるという。この効果についての科学的根拠は示されていないものの、やはり社会的な需要は存在しており、スペーサの上面に埋設するなどしたものを求める需要者は少なくないと考えられる。
【0074】
(8)本発明は、
前記スペーサには、中央部にくぼみが設けられている、又は、リング形状であるものを少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれか1に記載の履物としている。
【0075】
スペーサ状のものを足底の決まった位置に当接させることを必要とする用途は、アーチの補助等のみとは限らない。例えば、鶏眼(いわゆるウオノメ)のような皮膚障害が装用者の足底に発生している場合は、鶏眼に体重がかかると激しい痛みを生じるため、ここに体重がかからないように保護する必要がある。これを実現するために、リング状のパッドが実用に供されている。これは、鶏眼がリングの中央になるよう位置に粘着剤が適用されたパッドを貼付することで、鶏眼にかかる体重を周辺部で支えようとしたものである。
【0076】
リング状のパッドによって良好な効果が得られることが多いが、鶏眼が発生する原因はしばしば靴にあるといわれている。サンダルやハイヒールを頻繁に使用するものの、靴の形が装用者の足に完全にあっていない場合、足底の同じ場所が繰り返し刺激されて角質層の増加を招き鶏眼に進展するというのである。つまり、特定の履物によって特定の位置が刺激されることが、鶏眼の原因になるというのであるから、本発明によって、繰り返し刺激が与えられる個所への刺激を軽減し、鶏眼の発生の防止を図る、または、発生してしまった鶏眼への刺激による痛みの軽減を図るとよい。
【0077】
具体的には、リング形状のスペーサを、足底板上面に装用者自身が固定することとすればよい。ただし、スペーサと足底板の固定の強さは、固定が面ファスナーによって行われる場合に典型的であるが、これらの当接面の面積で決まることが多い。また、鶏眼が問題となる個所では、体重が集中するなど、強い力がかかっていることが多く、スペーサの固定力が特に必要な場合が多い。そこで、リング状ではなく、スペーサ下面は平面状に形成されて全面が足底板との固定に寄与し、スペーサ上面には窪みが形成されていることで、鶏眼部への体重の付加を回避する構成とするとよい。
【0078】
なお、本発明は、鶏眼に限らず、切創その他、足底で体重がかからないことが望ましい事情が存在する場合に広く適用できることは言うまでもないことである。
【0079】
また、本発明は、
前記スペーサは、発砲ポリウレタンまたはシリコーンゴムまたはジエンゴムのいずれかで構成されている、
ことを特徴とする、(1)乃至(8)のいずれか1に記載の履物とすることが好ましい。
【0080】
本発明においては、その構成材料は様々なものを使用可能であるものの、スペーサに関しては足底と当接して使用されるため、ある程度の弾性を有していることが好ましい。本発明では装用者自らが自身に良く適合したスペーサを選択・加工等して使用するので、それぞれの足に良く適合した履物になるのではあるが、人の足のかたちは一日の中でも時間によって多少変わる場合があり、例えば、むくみが発生した場合には足のかたちは相当程度変化する。
【0081】
従って、スペーサにあまりに硬いものを使用していると、装用当初は良くても、時間の経過とともに微妙に足と履物の適合が悪くなるということが想定できる。そこで、僅かな足のかたちの変化程度は吸収できる程度に、スペーサに弾性があることが好ましい。具体的には、スペーサを発泡ポリウレタン、シリコーンゴム、または、ジエンゴムのいずれかで構成するとよい。これら材料は、弾性の調整が容易であり、大量に流通しているために入手性も良く、また、履物の材料として必要十分な耐久性も得られるからである。
【0082】
(9)本発明は、
前記足底板に、紐またはバンドを取り付けることを可能とした、
ことを特徴とする、(1)乃至(8)のいずれか1に記載の履物としている。
【0083】
本発明に係る履物は、装用者の足底に当接させて使用するのであるが、どのようにしてこれを実現するかについては様々な方法を使用することができるのだが、例えば、足底板に直接、紐、又は、バンドを取り付けることを可能とすることができる。足底板は、装用者の足底とほぼ等しい平面形状とされているので、これに紐、又は、バンドを取り付けることで、いわゆるサンダル類として使用することが可能になるのである。なお、ここでサンダル類とは、「サンダル (sandal) は、足全体を包まず、紐やバンドなどで足に止める履物の総称である。」(インターネットで公開される百科事典サイトWikipediaの「サンダル」の記事より引用)の意である。従って、いわゆる「ミュール」や「突っ掛け」として知られる履物を含む概念である。
【0084】
装用者が、足底板にスペーサを取り付けて自身の足に適した状態とするのみならず、足にこれを固定する紐やバンドをも自身で自由に取り付け可能とすることにより、より装用者の足に完全に適合した履物が得られるようになり、本発明の効果がより顕著になるという効果が得られる。
【0085】
ところで、紐またはバンドとは、一般に流通しているサンダル類に使用されているものと同様のものを使用すればよい。例えば、いわゆる鼻緒に相当するものでも良いし、単なるバンドによって装用者の足の甲に引っかけることで装用可能とするものでも良い。これらは、本発明に顕著な特徴を有するものではない為、一般に流通しているものと同じもの、または、相当品を利用すれば十分なのである。
【0086】
また、本発明は、
前記紐またはバンドはスナップボタンによって着脱可能とされている、
ことを特徴とする、(1)乃至(8)のいずれか1に記載の履物としていることが好ましい。
【0087】
サンダル類に使用される紐やバンドは、装用者の歩行時にかなり大きな力がかかることがある。この際に、容易に紐やバンドが、足底板から外れてしまうのでは、歩行が困難になるばかりか、時に装用者に危険を発生してしまう事態にもなりかねない。ところが、紐やバンドは足底板との当接面の面積を十分広くすることが難しい場合があり、固定強度が不足しがちになりやすい。そこで、紐やバンドと、足底板は、強力なスナップボタン(snap fastener等とも呼ばれる)によって着脱可能とすることが好ましい。
【0088】
スナップボタンは、通常金属製であり、対になる一方に凸部が、もう一方に凹部が形成され、凹部と凸部をはめ合わせることで強い力で着脱自在に容易に固定することができるものであり、服飾用途で広く流通している。これは、比較的小さい面積で強力な固定力が得られるため、紐やバンドを足底板に固定するのに都合がよいのである。
【0089】
ところで、紐やバンドを足底板に固定するには、その他の手法も使用可能であることは言うまでもない。例えば、止めかぎによってひっかけることで固定することも可能であるし、より単純に、足底板に穴を設けておき、紐やバンドをこの穴を使用してしばりつけることも可能である。要は、装用者の歩行時に外れてしまわない強力な固定力が得られ、かつ、装用者によって比較的容易に紐やバンドを着脱可能であれば、従来より知られている任意の手法を用いることが可能である。
【0090】
また、本発明は、
前記足底板は4mm以上の厚みとされている、
ことを特徴とする、(9)に記載の履物としている。
【0091】
足底板を直接、サンダル類の本体として利用する場合には、足底板自体に相当の強度が無ければ、歩行時にサンダル本体が大きくたわんでしまうという等の不都合を生じ、サンダルとして事実上機能できなくなってしまう。また、凹凸のある地面を歩行した際に、足底板の強度が不足すると、足底板を介して装用者が地面の凹凸を足底に感じてしまい、時に痛みを感じるといった不都合も生じる。
【0092】
足底板のような平板状の部材では、部材の剛性が厚みの3乗にほぼ比例するなど、厚みが強度に非常に大きな影響を与えるパラメータである。そこで、必要な強度を得るため、本発明においては足底板は4mm以上とすることが好ましい。この程度の厚みであれば、最低限の強度を確保することが可能であり、また、ある程度の地面の凹凸を吸収して装用者の足底への刺激を軽減することもできる。
【0093】
ところで、本発明に係る足底板を直接サンダル類の本体として利用する場合、ほとんどは室内履きとしての利用であると予想される為、前記記載程度の厚みの足底板でほぼ利用者を満足させることが出来るとかんげられる。しかし、より厚い足底板を使用すれば、原理上は外履きとしての利用も可能となると考えられる。例えば、足底板の厚みを8mm以上とすると、相当に凹凸のある地面を歩行したとしても、装用者が足底に痛みを感じることがほとんどなくなる。
【0094】
(10)本発明は、
(1)乃至(8)のいずれか1に記載の履物を備えることを特徴とする、サンダルとしている。
【0095】
すでに、足底板に紐またはバンドを着脱可能とし、これによって足底板を装用者の足底に固定してサンダルとして利用することについて述べているが、すでに説明した通り、装用者の歩行時等に、紐またはバンドには相当に強い力がかかることがあり、これが着脱可能であるということは、歩行時にこれらが外れてしまう可能性が考えられるということである。強力な固定力が得られるスナップボタンを用いるなども可能であるが、例えば装用者が何かのはずみで足を踏ん張った場合などに想定以上の力がかかって紐またはバンドが外れてしまう可能性を否定することは困難である。これは、時に装用者に危険が及ぶ可能性を示している。
【0096】
一方で、サンダルの紐やバンドはある程度の余裕があっても装用にさほどの影響が発生しないことが通常であるので、これを着脱自在として、装用者が各々の足の特性等に合わせた最適な調整を行う必然性はあまり高くないと言える。
【0097】
そこで、足底板にあらかじめ紐やバンドを永久的に固定した状態、すなわち、サンダルの状態としておき、これの上面に装用者が適宜スペーサを取り付けていくようにすることが考えられる。このようにすることで、紐やバンドは、一般に市販されているサンダル同様、極めて強固に足底板に永久固定することが可能となるので、装用者の歩行時に事故が発生する懸念が無くなる。また、装用者自ら、各々の足の特性に合ったアーチ補助その他を実現できるようにスペーサを組み合わせることも自在である。
【0098】
(11)本発明は、
(1)乃至(8)のいずれか1に記載の履物は、靴の中敷きである、
ことを特徴としている。
【0099】
本発明に係る発明が靴の中敷きであれば、これを装用者が普段使用している靴の内部に敷いて使用することにより、装用者の個々の足の特性に合ったアーチ補助その他が、普段使用している靴において実現されるという利点を生じる。デザイン上の嗜好により、靴自体は普段に使用しているものを利用したいが、同時に、アーチ補助その他の本発明の提供する作用効果も欲する場合はしばしば生じるが、本発明に係る発明を靴の中敷きとすることで、この要請にこたえることが可能となる。
【0100】
なお、例えば、装用者が使用を欲する靴が、例えば安全靴のような特殊なものの場合にも本発明は有用である。安全靴は、職業上の安全を確保するために欠かせない保護具であるが、特殊な靴であるために、その種類は一般的な靴と比較するとどうしても限られている。このため、装用者は必ずしも自身の足に安全靴があっていない場合であっても、やむを得ずこれの使用を続けざるを得ない場合が発生する。また、アーチ補助といった機能を有するものもほとんど流通していない。このような場合にも、本発明に係る発明を靴の中敷きとすることで、本発明の効果が発揮される。
【0101】
(12)本発明は、
前記足底板は、その最大幅が適合するサイズの靴の最大幅よりも10mm以上大きく設定されている、
ことを特徴とする、(11)に記載の靴の中敷きとしている。
【0102】
靴と、これの装用者の足は、本来は踵部分でその位置を決めるべきものである。靴と足を踵部分でしっかりと位置決めすることにより、歩行時の安定性をはじめとする靴の有する本来の性能が発揮される。ところが、靴と、靴の中敷きとの位置決めは踵部分で行うことが容易ではない。踵部分を合わせて、靴の中に靴の中敷きを挿入したとしても、歩行時に徐々に位置がずれる、具体的には、靴の中敷きが靴の中で滑って靴の先端方向へ徐々に移動してしまうのである。
【0103】
本発明においては、靴の中敷き本体を構成する足底板にスペーサが固定されるのであるから、靴の中敷きが靴の中で移動してしまうと、装用者の足底とスペーサの位置関係が崩れてしまう。これでは、アーチの補助をはじめとする、本発明に特有の効果が損なわれてしまう。
【0104】
ところで、本願発明の発明者等の研究によれば、靴の中敷きと靴の位置関係は、これらの最大幅の部分(足の指の付け根付近)の部分で固定することが可能であることが明らかになっている。すなわち、靴は踵からつま先にかけて徐々にその幅が広くなり、足の親指の付け根付近で最大の幅となったのちに、今度は徐々に幅が細くなるように作られることが常である。そこで、本発明の足底板の最大幅部分が、靴の最大幅部分と嵌め合うように設計することで、この部分でお互いの位置が固定し、これにより本発明の効果が損なわれることもなくなる。
【0105】
ここで、本願発明の発明者等は、足底板の最大幅を、靴の最大幅よりも10mm以上大きく設定することで、より足底板である靴の中敷きの位置が、靴の中で安定することを見出した。これは、靴の最大幅よりも幅の広い足底板の最大幅部分が、靴の内面に沿ってめくれあがる形になり、この部分が靴の最大幅部分に引っかかる形となることで位置が強固に固定されるからである。
【0106】
従って、足底板は、その最大幅を適合するサイズの靴の最大幅よりも10mm以上大きく設定することによって、足底板である靴の中敷きの位置が靴の中で安定し、装用者の歩行などにもかかわらず、安定して本発明の効果が持続するという効果が得られる。
【0107】
(13)本発明は、
前記足底板には、さまざまなサイズの靴の形状に応じた模様が表示されており、
該模様の最大幅は、適合する靴のサイズの最大幅よりも10mm以上大きくされている、
ことを特徴とする、(11)に記載の靴の中敷きとしている。
【0108】
そこで、装用者が自身の靴のサイズに合わせて足底板を切断する際に、足底板である靴の中敷きが、靴の中で位置が決まりやすい形状となるよう、足底板に、さまざまなサイズの靴の形状に応じた模様を表示し、この模様の最大幅を、適合する靴のサイズの最大幅よりも10mm以上大きくしておくことが好ましい。このようにすることで、装用者が無意識的に、靴の中での位置の安定性の良い靴の中敷きとなるように、足底板を切断することが期待できる。
【0109】
なお、様々な靴の形状に応じた模様とは、模様を参考に装用者が足底板をハサミ等の道具で容易に切断可能とするものである。従って、様々なサイズの靴に合わせた靴の中敷きの形状を線で表示することも可能であるし、あるいは、サイズの順に2色で交互に塗り分けを行い、結果として縞模様があらわれるように表示することもできるし、これ以外の表示方法についても様々なものを採用することができる。
【0110】
(14)本発明は、
前記足底板は、1mm乃至3mmの厚みとされている、
ことを特徴とする、(11)乃至(13)のいずれか1に記載の靴の中敷きとしている。
【0111】
靴の中敷きとして足底板を使用する場合、これの厚みが大きすぎると、装用者が普段使用している靴にこれを挿入した際に、靴の装用が不可能になってしまう。もちろん、本発明を利用する場合に、これに合わせてサイズの大きめの靴を利用することは可能である。しかし、多くの場合、装用者は普段使用している靴をそのまま使用することを欲するものである。
【0112】
このため、足底板の厚みを3mm以下とすることが好ましい。この程度であれば、装用者が普段使用している靴に挿入しても、これを問題なく装用できる場合が多いからである。
【0113】
なお、あまりに足底板が薄いと、足底板の強度が不足して、例えば足底板が容易に破損する、または、皺を生じるといった不都合が発生しやすくなる。そこで、足底板である靴の中敷きの厚みは少なくとも1mm以上とすることが好ましい。まとめると、足底板を1mm乃至3mmの厚みとすることが、最も好ましいのである。
【発明の効果】
【0114】
(1)少なくとも2つのスペーサを含むので、例えば、装用者は内縦アーチの補助のみでなく横アーチの補助も併せて行う、あるいは、内縦アーチの補助と外縦アーチの補助を行う、というように、自由に組み合わせた履物を得ることができる。足底板とスペーサが分離可能であるため、装用者がスペーサをナイフやハサミで適当に切断する等してその形状を微調整することも容易である。
【0115】
また、第3のスペーサを備えることで、内縦アーチの補助、外縦アーチの補助、横アーチの補助の3カ所を組み合わせることで、開帳足や外反母趾といった症状の改善や、歩行時等の疲労や筋肉の過度の緊張及び痛みの発生の抑制を達成が期待できる。
【0116】
(2)スペーサの取り付け位置は、少なくとも5mm以上調整可能であるので、より多くの装用者に適合できる履物となる。また、製造者の準備するスペーサの種類を少なくすることが可能となる。
【0117】
また、足底板の上面の任意の位置に前記スペーサを着脱可能としたので、例えば装用者の足底に鶏眼が存在しており、これによる痛みを緩和するスペーサを取り付けたい場合のように、履物の製造者が事前に位置を予想することが事実上不可能な場合においても、装用者が必要な位置にスペーサを取り付けることが可能となる。
【0118】
(3)スペーサと足底板は面ファスナーによって着脱可能としたので、スペーサの下面全体で強固に足底板と固定され、スペーサの端部が浮き上がるような事態が発生しにくくなる。また、薄く軽量な構造で履物が実現されるため、履き心地の良い履物となる。
【0119】
(4)面ファスナーのループ側が足底板に設けられており、フック側がスペーサに設けられている構造としたので、装用者の足や靴下と触れる足底板の上面には、引っかかりを生じることがなく、装用感の良い履物が得られる。
【0120】
(5)スペーサーの面ファスナーが設けられる面の外縁部から、1mm以上内側に面ファスナーを設けることとしたので、面ファスナーが装用者の足に接触して刺激を与えたり、装用者の着用している靴下に張り付いてしまうという不具合が発生しない。
【0121】
また、面ファスナーが設けられている部分が少なくとも0.5mm以上窪んでいるため、面ファスナーに装用者の体重がかかることもなく、長期間使用されても面ファスナーが劣化しない。
【0122】
(6)カバーシートを着脱可能としたので、足底板とスペーサの隙間に、履物の着脱時に装用者の足や、あるいは、装用者の着用している靴下等が引っ掛かり、スペーサが外れてしまったり位置がずれてしまったりという不都合が防止される。また、面ファスナーのフック面に、装用者の着用している靴下等が張り付いてしまって不快感を与えてしまうということも発生しない。
【0123】
さらに、カバーシートを伸縮性を有する材料で構成したので、足底板の上面にスペーサによる凹凸が存在するにもかかわらず、足底板の上面を隙間なく覆えることとなり、より良好な装用感が得られるようになる。
【0124】
また、カバーシートの下面には面ファスナーを備えることとしたので、足底板とスペーサーとカバーシートがよりお互いに張り付いて一体となり、位置ずれなどを生じる懸念が無くなる。
【0125】
また、カバーシートを熱可塑性樹脂シートで構成することとすれば、装用者が履物を組み立てる際に、家庭用ドライヤー等を用いて、足底板の上面のスペーサによる凹凸に合わせてカバーシートを変形させることが可能となり、その後、カバーシートは硬化するので、強靭でありながら装用感の良い履物が得られる。
【0126】
(7)断面形状が略蒲鉾形状のスペーサを、少なくとも1つ含むこととしたので、装用者の足に接する部分のスペーサに角部が無いため、装用感が良い履物が得られる。また、アーチの補助に有効であるのみならず、強い指圧効果を付与しつつも、痛み等の不快感の少ないものが得られる。
【0127】
また、断面形状が楔形のスペーサを、少なくとも1つ含むこととしたので、いわゆるO脚やX脚といった症状を緩和するといわれる、踵にかかる体重の重心が足の内側または外側に偏っている状態の中央部への矯正を実現することができる。
【0128】
さらに、上面に少なくとも2つ以上の凸部が設けられているスペーサを、少なくとも1つ含むこととしたので、足裏の反射区等に適当な刺激を与える、つまり、いわゆるつぼ押し効果を与えることが可能となる。
【0129】
さらに、上面に磁石が取り付けられているスペーサを、少なくとも1つ含むこととしたので、いわゆる磁気治療器の効果を期待できる履物となる。
【0130】
(8)前記スペーサには、中央部にくぼみが設けられている、又は、リング形状であるものを少なくとも1つ含むこととしたので、鶏眼のような皮膚障害が装用者の足底に発生している場合に、ここに体重がかからないようにするといった保護が実現される。
【0131】
また、本発明は、発砲ポリウレタンまたはシリコーンゴムまたはジエンゴムのいずれかで構成されていることとしたので、適当な硬度と弾性を両立した、装用感の良い履物が実現される。
【0132】
(9)足底板に、紐またはバンドを取り付けることを可能としたので、足底板をそのままサンダルとして利用することが可能となり、アーチの補助をはじめとする本発明の効果を有するサンダルが得られる。
【0133】
また、紐またはバンドはスナップボタンによって着脱可能としたので、強力な固定力が得られ、装用者の歩行時に、紐またはバンドが突然外れてしまうといった事故が防止される。
【0134】
また、足底板は4mm以上の厚みとしたため、サンダルとしての強度が確保され、また、ある程度の地面の凹凸を吸収して装用者の足底への刺激が軽減される。
【0135】
(10)本発明をサンダルとしたので、紐またはバンドは足底板に永久固定されることとなり、これが外れてしまうという危険が実質的に無くなる。
【0136】
(11)本発明を靴の中敷きとしたので、装用者の個々の足の特性に合ったアーチ補助その他が、普段使用している靴において実現される。
【0137】
(12)足底板は、その最大幅を適合するサイズの靴の最大幅よりも10mm以上大きく設定することとしたので、足底板である靴の中敷きの位置が靴の中で安定し、装用者の歩行などにもかかわらず、安定して本発明の効果が持続する。
【0138】
(13)足底板には、さまざまなサイズの靴の形状に応じた模様が表示されており、該模様の最大幅は、適合する靴のサイズの最大幅よりも10mm以上大きくされることとしたので、装用者が無意識的に、靴の中での位置の安定性の良い靴の中敷きとなるように、足底板を切断することが期待できる。
【0139】
(14)足底板は、1mm乃至3mmの厚みとしたので、装用者が普段使用している靴にこれを挿入しても、問題なく装用できる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の足底板の一実施例を示した説明図である。
【図2】本発明のスペーサの実施例を示した説明図である。
【図3】本発明のスペーサの実施例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0141】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0142】
図1は、本発明に係る靴の中敷きの実施例を示す説明図である。この靴の中敷きは、足底板(1)が厚み2mmのポリウレタン板の上面に、面ファスナーのループ側が表面にあらわれるように貼付されている。面ファスナーのループ面であるので、この足底板の表面に直接足が乗せたとしても、さらりとした感触であり、引っかかりを感じることはない。また、靴下を着用している場合でも、靴下の繊維が引っ掛かりを生じることはない。また、厚みが2mmと薄くできているので、これを装用者が普段使用している靴の中に挿入してそのまま靴を使用し続けることが可能である。
【0143】
この足底板(1)の上に、点線で3カ所の位置を示している。それぞれ、内縦アーチ部(2)、外縦アーチ部(3)、横アーチ部(4)であり、装用者の足の形状等によって多少の位置の違いはあるものの、おおむね点線で示した位置付近にスペーサを設けることで、装用者の足底のアーチの補助が実現される。後述するが、この位置付近に装用者自身がスペーサを取り付けて、アーチの補助効果を有する靴の中敷きとして使用する。
【0144】
この足底板(1)には、対になる幅方向の突出部が設けられており、これは、第1の固定部(5a)および第2の固定部(5b)である。この部分の間の間隔は、この靴の中敷きに対応する靴の標準的な最大幅よりも、約10mm広く作られている。このため、この靴の中敷きを靴の中に挿入すると、第1の固定部(5a)と第2の固定部(5b)が靴の内面に沿って数mm程度めくれあがることになり、これが靴の最大幅の部分に引っかかることで、中敷きの位置が靴の中で固定される。これにより、装用者の歩行時に、靴の中敷きが滑って位置が不安定になるという自体が回避される。
【0145】
図2には、足底板(1)に固定して使用するスペーサの例が示されている。それぞれのスペーサは、弾性を有するジエンゴム製であり、装用者の足の状態の他所の変化に対応して多少の変形をする。このため、例えば装用者の足が多少むくんでかたちが一時的に変化するような事態にあっても、装用感を著しく損ねるような事態には陥らない。また、最大厚みは約10mmで断面形状はいずれも略蒲鉾形とされている。これにより、装用者の足底にスペーサの角部が接触するようなこともなく、装用者が痛みを感じるようなこともない。また、足底のアーチのカーブを自然な形で補助できることにもなる。
【0146】
図2中、(1a)及び(1b)は、足底板(1)の内縦アーチ部(2)の付近に取り付けて使用することを意図したスペーサである。装用者は、いずれのスペーサが自身の足の特性によりあっているかを選択し、かつ、最も適した位置になるようにスペーサを足底板(1)に固定する。同様に、装用者は必要に応じて、(2a)及び(2b)を外縦アーチ部(3)に対応し、(3a)及び(3b)は横アーチ部(4)に対応する。
【0147】
図3を用いてスペーサについてさらに詳細に説明を行う。図3(A)はスペーサの一実施例を示す平面図であり、同図中のX−X’面における断面図が図3(B)に示されている。なお、図3(B)では説明の都合上、スペーサ(6)のみでなく、これが取り付けられる足底板(1)も表示されている。
【0148】
スペーサ(6)の底面には、足底板(1)にスペーサ(6)を固定する為に面ファスナー(7a)が貼付されている。この面ファスナー(7a)は、いわゆるフック側が表面にあらわれるように貼付されており、足底板(1)には、前面にいわゆるループ側が表面にあらわれるように面ファスナー(7b)が貼付されている。これら面ファスナーによって、スペーサ(6)は足底板(1)に強固に固定されると共に着脱自在となる。また、足底板(1)の前面にループ側の面ファスナー(7b)が貼付されていることから、その位置も自由自在となる。
【0149】
また、面ファスナー(7a)は、スペーサ(6)の裏面の外周部から3mm程度の間隙部(8)を設けた内側に貼付されている。足底板(1)にループ側の面ファスナー(7b)を設けたことから、装用者の足にフック側の面ファスナー(7a)が接触したり、装用者の靴下等に張り付いてしまうことは発生しにくいのであるが、間隙部(8)を設けることでこのような危険はより小さくなり、快適な装用感を安定して得られるようになる。なお、間隙部(8)の幅は、本実施例では3mm程度としたが、実用上は1mm程度あれば十分であることが多く、製造の容易さや必要強度を勘案して任意に設計可能である。
【0150】
また、図3(B)にあらわれているように、面ファスナー(7a)の貼付部は、スペーサ(6)の裏面よりも約1mm程度くぼんだ面としている。これにより、装用者の体重は面ファスナーではなく、主に間隙部(8)が支持することになるため、面ファスナーに過度の力がかかることなく、長期間使用を継続しても面ファスナーの劣化は最小限となる。これにより、長期間の使用によっても劣化の少ない、優れたインソールとすることができる。なお、窪みの深さは、本実施例では1mm程度としたが、これは面ファスナーのフックやループの長さによって設計すべきものであり、実用上は少なくとも0.5mm程度以上の任意の深さに設計可能である。
【0151】
また、スペーサは独立した部品として供給されるため、多少大きさを小さくする必要がある場合には、装用者が自らハサミで切断して大きさを調整することも可能である。
【0152】
このようにして、装用者は自らの足に最も適した、アーチの補助機能を有する靴の中敷きを使用できることになる。なお、ここでは説明を省略したが、必要に応じて姿勢を矯正する機能を有するスペーサや、あるいは、本発明を靴の中敷きではなく、サンダルとして実現するために、より厚い足底板に紐またはバンドを備えたものとすることも任意である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上のように、本発明はアーチの補助機能等を有する履物に広く適用できるものであり、産業上の価値はきわめて高い。
【符号の説明】
【0154】
1 足底板
2 内縦アーチ部
3 外縦アーチ部
4 横アーチ部
5a 第1の固定部
5b 第2の固定部
6 スペーサ
7a 面ファスナー(フック側)
7b 面ファスナー(ループ側)
8 間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の足底とほぼ等しい平面形状とされた足底板と、
第1のスペーサと第2のスペーサの少なくとも2つのスペーサを備え、
該足底板と、該スペーサは着脱自在とされている、
ことを特徴とする、履物。
【請求項2】
前記足底板の上面における前記スペーサの取り付け位置は、少なくとも10mm以上調整可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記スペーサと前記足底板は面ファスナーによって着脱可能とされている、
ことを特徴とする、請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記面ファスナーはループ側とフック側からなり、
該ループ側が前記足底板に設けられており、
該フック側が前記スペーサに設けられている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の履物。
【請求項5】
前記面ファスナーは、前記スペーサーの該面ファスナーが設けられる面の外縁部から少なくとも1mm以上内側に設けられている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の履物。
【請求項6】
前記スペーサが上面に取り付けられた前記足底板の上面に、カバーシートを着脱可能とされている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の履物。
【請求項7】
前記スペーサには、断面形状が略蒲鉾形状のスペーサを、少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1に記載の履物。
【請求項8】
前記スペーサには、中央部にくぼみが設けられている、又は、リング形状であるものを少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1に記載の履物。
【請求項9】
前記足底板に、紐またはバンドを取り付けることを可能とした、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1に記載の履物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1に記載の履物を備えることを特徴とする、サンダル。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1に記載の履物である、靴の中敷き。
【請求項12】
前記足底板は、その最大幅が適合するサイズの靴の最大幅よりも10mm以上大きく設定されている、
ことを特徴とする、請求項11に記載の靴の中敷き。
【請求項13】
前記足底板には、さまざまなサイズの靴の形状に応じた模様が表示されており、
該模様の最大幅は、適合する靴のサイズの最大幅よりも10mm以上大きくされている、
ことを特徴とする、請求項11に記載の靴の中敷き。
【請求項14】
前記足底板は、1mm乃至3mmの厚みとされている、
ことを特徴とする、請求項11乃至請求項13のいずれか1に記載の靴の中敷き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55594(P2012−55594A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203797(P2010−203797)
【出願日】平成22年9月11日(2010.9.11)
【出願人】(597125287)株式会社エーゾン (2)
【Fターム(参考)】