説明

布接着装置

【課題】動作を制御する指示をユーザが容易に入力することができ、接着剤を用いた布の接着作業の効率を向上させることができる布接着装置を提供する。
【解決手段】ポンプケース31から下方へ延びる支持部40は、接着剤を吐き出すノズル45を備える。また、柱部17は、モータによって駆動する上移送ローラ24を回動可能に保持するローラ保持部20を備える。上移送ローラ24は、ノズル45よりも布の搬送方向における下流側に位置し、ノズル45が接着剤を付着させた布を、押圧しながら後方へ移送する。そして、布接着装置の動作を制御するために操作者が操作する操作部47を、ノズル45又は上移送ローラ24の近傍に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布接着装置に関する。より詳細には、布に接着剤を付着させて圧着させることにより、布同士を接着させることが可能な布接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、針や縫糸による縫製を行わず、接着剤によって布同士を接着させる装置が提案されている。この装置は、液状の接着剤を布に吐き出して付着させながら、接着剤が付着した布をローラによって加圧、移送することで、布同士を接着させる。接着した布には縫糸を使用していないため、布に凹凸を生じさせることなく布同士を接着させることができる。しかし、従来の装置は、接着剤を布に付着させる動作と、布を移送させる動作とを同時に行う。よって、ユーザは、接着剤を断続的に付着させたい場合、又は、接着剤を付着させずに布だけを移送させたい場合等には、ローラによる布の加圧を解除して、手で布を移送させなければならなかった。従って、作業効率が悪かった。
【0003】
一方で、ユーザによる操作部の操作に応じてシリンダ等の駆動機構を駆動させ、布の継目部を溶着接合する溶着接合装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この溶着接合装置の操作部に設けてある切替スイッチをユーザが操作すると、溶着加工を行うシリンダ部及び腕部が、動作位置及び待機位置のいずれかに移動する。これにより、溶着接合の作業性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−326602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の装置では、布を移送するローラと操作部とが離れていた。従って、動作を制御する指示を操作部で入力できるように装置を構成しても、ユーザは、指示を入力する毎に、移送している布から離れた位置にある操作部を毎回操作しなければならなかった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、動作を制御する指示をユーザが容易に入力することができ、接着剤を用いた布の接着作業の効率を向上させることができる布接着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の布接着装置は、接着剤を布に吐出するノズルと、前記ノズルから前記接着剤を吐出させる吐出手段と、前記布を押圧しながら移送する移送手段とを備えた布接着装置であって、前記布接着装置の動作を制御する指示を与えるために操作者が操作する操作手段を備え、前記操作手段が、前記ノズル又は前記移送手段の近傍に設けられたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記ノズルを支持する支持部を備え、前記操作手段が前記支持部に設けられたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記移送手段を保持する保持部を備え、前記操作手段が前記保持部に設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の布接着装置は、請求項1から3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記吐出手段は、前記ノズルに前記接着剤を加圧して供給する供給手段と、前記供給手段による前記ノズルへの前記接着剤の供給を制御する供給制御手段とを備え、前記操作手段は、前記供給手段による前記接着剤の供給を行わせるか否かを示す信号を前記供給制御手段に出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の布接着装置は、請求項1から4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記吐出手段は、前記操作手段の操作に応じて動作し、前記接着剤を前記ノズルに導く経路を遮断する遮断手段を備えている。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の布接着装置は、請求項1から5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記操作手段は、操作者が操作するための操作部材を複数個有し、前記布接着装置の動作を制御する指示を与えるための複数の機能のうちのいずれかを、前記複数の操作部材のそれぞれに割り当てる割り当て手段を備えている。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の布接着装置は、請求項6に記載の発明の構成に加え、前記割り当て手段は、2以上の前記操作部材に同一の機能を割り当てることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の布接着装置によると、ユーザは、装置の動作を制御する指示を、操作手段を操作することによって行うことができる。さらに、操作手段がノズル又は移送手段の近傍に位置している。よって、ユーザは、布の移送を手で調整したり、作業が適切に進行していることを確認したりしながら、手を大きく移動させることなく操作手段を操作でき、布接着装置の動作を容易に制御することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の布接着装置では、ノズルを支持する支持部に操作手段が位置している。よって、ユーザは、請求項1に記載の発明の効果に加え、ノズルが適切に接着剤を吐き出していることを確認しながら、容易に布接着装置の動作を制御することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の布接着装置では、移送手段を回転可能に保持する保持部に操作手段が位置している。よって、ユーザは、請求項1に記載の発明の効果に加え、移送手段による布の圧着及び移送が適切に進行していることを確認しながら、容易に布接着装置の動作を制御することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の布接着装置によると、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加え、操作者は、操作手段を操作することで、ノズルに接着剤を加圧して供給する供給手段の動作を制御することができる。これにより、ノズルからの接着剤の吐出を直接且つ容易に制御することができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の布接着装置によると、請求項1から4のいずれかに記載の発明の効果に加え、操作者は、操作手段を操作することで、接着剤をノズルに導く経路を遮断する遮断手段の動作を制御することができる。よって、接着剤の吐出を止める場合、接着剤がノズルから垂れることなく、確実に吐出を停止させることができる。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載の布接着装置によると、請求項1から5のいずれかに記載の発明の効果に加え、操作者は、各工程での使用頻度、使い易さ等を考慮し、ノズル又は移送手段の近傍に設けてある複数の操作部材のそれぞれに、所望する機能を割り当てることができる。従って、操作者は、より容易に布の接着作業を行うことができる。
【0020】
また、本発明の請求項7に記載の布接着装置によると、2以上の前記操作部材に同一の機能を割り当てることができる。従って、請求項6に記載の発明の効果に加え、操作者は、頻繁に使用する機能が操作部材の数よりも少ない場合には、2以上の操作部材に同一の機能を割り当てることで、入力するつもりのない指示を誤って入力してしまうおそれを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態に係る布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【図2】第一の実施形態に係る接着機2を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図3】第一の実施形態に係る接着機2の正面図である。
【図4】第一の実施形態に係る接着機2の左側面図である。
【図5】第一の実施形態に係る接着機2の内部構造を前方斜め上から見た斜視図である。
【図6】図2に示す接着機2を紙面左下側から見た場合の貯蔵室26、ポンプケース31、及び支持部40の断面図である。
【図7】第一の実施形態に係る布接着装置1の電気的構成を示す模式図である。
【図8】接着作業時におけるノズル45近傍の動作を示す部分拡大斜視図である。
【図9】第一の実施形態に係る布接着装置1のCPU201が行う供給制御処理のフローチャートである。
【図10】第二の実施形態に係る布接着装置の接着機252を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図11】第二の実施形態に係る布接着装置のCPU201が行う機能割り当て処理のフローチャートである。
【図12】割り当て可能な機能の一例を示す説明図である。
【図13】接着工程の一例を示す図である。
【図14】接着工程の一例を示す図である。
【図15】接着工程の一例を示す図である。
【図16】変形例1に係る接着機302を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図17】変形例2に係る布接着装置401全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一の実施形態に係る布接着装置1について、図面を参照して説明する。尚、これらの図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0023】
はじめに、図1を参照して、布接着装置1の物理的構成について説明する。図1は、布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。図1に示すように、布接着装置1は、接着機2と、接着機2を固定するための使用台220とを備えている。接着機2は、対向配置させた布の間に接着剤を付着させ、この布を押圧し移送することで、布同士を接着させる。接着機2の構成の詳細については後述する。
【0024】
使用台220は、主に左右の支持部214,215、足掛け216、左右の脚部212,213、及び天板211を備えている。左支持部214及び右支持部215は、前後方向を長手方向とする略棒状の部材であり、前後の両端部の下面にキャスターを備えている。これにより、ユーザは使用台220を容易に移動させることができる。左支持部214の前後方向略中央部分と、右支持部215の前後方向略中央部分との間には、板状の足掛け216が架設している。足掛け216の左右方向略中央に、布の移送速度をユーザが調整するためのペダル206を設けている。
【0025】
左支持部214の中央よりもやや後端側に、鉛直上方に延びる板状の左脚部212を接続している。同様に、右支持部215の中央よりもやや後端側に、右脚部213を接続している。そして、矩形板状の天板211を、左右方向が長手方向となるように、左右の脚部212,213の上端に接続している。これにより、天板211を設置面から所定の高さに支持している。
【0026】
天板211は、上面の略中央部分に接着機2を載置している。天板211の左右方向の長さは、接着機2の左右方向の長さの約3倍である。天板211の前後方向の長さは、接着機2の前後方向の長さの約2倍である。
【0027】
また、天板211は、接着機2の固定部分の右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、各種情報を表示させる液晶表示部208と、ユーザからの各種入力設定を受け付けるパネルキー209とを備える。ユーザは、液晶表示部208を見ながらパネルキー209を操作することで、布接着装置1に対して各種動作設定を行うことができる。
【0028】
天板211は、CPU201(図7参照)等を実装した制御基板を格納するための制御ボックス3を下面に備える。制御ボックス3は、接着機2、操作パネル210、及びペダル206に電気的に接続する。
【0029】
次に、図2から図4を参照して、第一の実施形態に係る接着機2の物理的構成について説明する。図2は、接着機2を前方左斜め上から見た斜視図である。図3は、接着機2の正面図である。図4は、接着機2の左側面図である。尚、図3の上側を接着機2の上側、下側を接着機2の下側とする。図3の左側を接着機2の左側、右側を接着機2の右側とする。図3の紙面手前側を接着機2の正面側、紙面奥側を接着機2の背面側とする。
【0030】
図2及び図3に示すように、接着機2は、台座部11、脚柱部12、及びアーム部13を備えている。台座部11は、左右方向を長手方向とする略直方体状であり、天板211(図1参照)に固定している。脚柱部12は、台座部11の右端から鉛直上方に立設する。アーム部13は、脚柱部12の上端に接続し、脚柱部12の左側面よりも左方に突出している。
【0031】
台座部11は、布を押圧して移送する下移送ローラ25(図5参照)、下移送ローラ25を駆動する第三モータ93(図5参照)等を内部に備える。また、台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能し、脚柱部12は、アーム部13を支持する。これにより、ユーザは接着機2を安定させた状態で使用できる。アーム部13は、図2に示すように、後方から順に梁部14、貯蔵室26、及びポンプケース31を備えている。また、アーム部13は、布を押圧して移送させるための第二モータ92(図5参照)、後述するギアポンプ35を駆動するための第一モータ91(図5参照)等を内部に備える。
【0032】
以下、梁部14、貯蔵室26、及びポンプケース31について説明する。まず、梁部14、及び梁部14に接続するローラ保持部20について説明する。図2に示すように、梁部14は、本体部15、ばね支持部16、及び柱部17を備えている。本体部15は、アーム部13の左側後端部から左方へ水平方向に延びる略棒状の部材であり、本体部15の左右方向の長さは、台座部11の左右方向の長さの約3分の1である。ばね支持部16は板状であり、本体部15の左端部から前方へ水平方向に延びる。ばね支持部16の前後方向の長さは、台座部11の前後方向の長さの約2分の1である。柱部17は、図2及び図4に示すように、延設方向の角度が水平面に対して約45度となるような状態で、本体部15から前方斜め下方へ延びている。図4に示すように、柱部17の下端部と台座部11との間には隙間がある。
【0033】
図2に示すように、ばね支持部16の前方側の先端部には孔を形成しており、ばね18に挿通している軸部19の上端部分を孔に挿入し、上下方向に移動可能に保持させている。また、柱部17は、下端部分の左側で、左右方向を軸心方向として回動可能にローラ保持部20を軸支している。これにより、ローラ保持部20は、後端部21を揺動中心軸として、前端部22を上下方向に揺動させることができる。また、本体部15は、ばね支持部16よりも右側に、後述する支持部40の位置を移動させるためのエアシリンダ41を備えている。
【0034】
ローラ保持部20は、前端部22に円柱状の上移送ローラ24を回転可能に軸支している。上移送ローラ24の回転軸は左右方向に延びている。この上移送ローラ24は、支持部40から突出したノズル45の後方近傍に位置する。また、ローラ保持部20の中央からやや前方側の上面に設けたばね軸支部23が、ばね18に挿通している軸部19の下端を軸支している。ばね18は、ばね支持部16と軸部19の下部との間に介在し、軸部19を下方へ付勢することで、軸部19が接続しているローラ保持部20を下方へ付勢する。
【0035】
次に、貯蔵室26について説明する。図2及び図3に示すように、貯蔵室26は、上下方向を長手方向とする略直方体形状である。貯蔵室26は、アーム部13の左側、且つポンプケース31の後方部分から上方に立設する。貯蔵室26は、本体部27、蓋部28、及び蓋軸支部29を備える。本体部27の形状は上部が開口した有底筒状であり、蓋部28は、本体部27の上部開口を覆う。蓋軸支部29は、蓋部28を本体部27に軸支する。この貯蔵室26は、接着剤を本体部27の内部に貯蔵し、貯蔵した接着剤を必要に応じてギアポンプ35(図5及び図6参照)及びノズル45に供給する。
【0036】
次に、ポンプケース31、及びポンプケース31に接続する支持部40について説明する。図2及び図3に示すように、ポンプケース31は、第一ポンプケース32及び第二ポンプケース33を備えている。第一ポンプケース32は、4つのねじによってアーム部13の左側面に接続する、略立方体状の部材である。第一ポンプケース32の左側は凹部となっており、第一ポンプケース32は、適量の接着剤を高精度でノズル45に供給するギアポンプ35(図5及び図6参照)をこの凹部に備えている。そして、ギアポンプ35を覆うように、第二ポンプケース33が第一ポンプケース32の左側に4つのねじで接続する。第一ポンプケース32は、第二ポンプケース33と共にポンプ室を形成して、ギアポンプ35によるノズル45への接着剤の加圧供給を可能にしている。
【0037】
第二ポンプケース33は、図3に示すように、支持部40を揺動可能に軸支する軸支部39(図3参照)を下部の左側に備えている。ポンプケース31は、接着剤を貯蔵室26からギアポンプ35へ導く第一経路51(図6参照)と、ギアポンプ35が加圧供給する接着剤を支持部40へ導く第二経路52(図6参照)とを備えている。尚、図3に示すように、第一ポンプケース32の上下方向の長さは、アーム部13の上下方向の長さと略同一である。また、第二ポンプケース33の左右方向の位置は、台座部11の左右方向中央の位置と略同一である。
【0038】
支持部40の形状は、図2及び図3に示すように、上下方向を長手方向とする略立方体状であり、支持部40の下端部と台座部11との間には僅かな隙間がある。支持部40は、その上端に、エアシリンダ41の可動部42の先端部を軸支する軸支部43を備えている。エアシリンダ41を伸縮させると、支持部40は、軸支部39を中心軸として前後方向(図4の矢印A方向)に揺動する。これにより、ノズル45を、布の接着作業を行う場合の位置に移動させたり、保守を行う場合の位置に移動させたりすることができる。
【0039】
支持部40の下端部からは、ノズル45が左側に突出している。図2に示すように、ノズル45は円筒形状である。ノズル45は、接着剤を吐き出す吐き出し口を備えており、布の接着作業を行う場合に、吐き出し口はノズル45の下面に位置する。ユーザは、接着作業を行う場合、対向配置させた布の間にノズル45を挿入する。そして、支持部40の内部の第三経路53(図6参照)を通してギアポンプ35がノズル45に供給した接着剤を、吐き出し口から布に吐き出させる。これにより、ノズル45の下方に位置する布の表面に接着剤を付着させる。
【0040】
次に、操作部47及びバルブ開閉シリンダ49について説明する。図2及び図3に示すように、ノズルを支持する支持部40の右側の上下方向略中央には、ユーザが操作するボタン式の操作部47を設けている。操作部47は制御ボックス3に電気的に接続しており、ユーザが操作部47を操作(押下)すると、制御ボックス3のCPU201は、ノズル45からの接着剤の吐出を停止させる。この詳細は後述する。また、支持部40の前側には、接着剤の第三経路53(図6参照)を遮断するためのバルブ55(図6参照)を開閉させるバルブ開閉シリンダ49を設けている。バルブ55の詳細については後述する。
【0041】
次に、図5を参照して、第一の実施形態に係る接着機2の内部構造について説明する。図5は、接着機2の内部構造を前方斜め上から見た斜視図である。図5に示すように、接着機2は、ギアポンプ35を駆動させる第一モータ91、上移送ローラ24を駆動させる第二モータ92、下移送ローラ25を駆動させる第三モータ93等を内部に備える。以下、詳細を説明する。
【0042】
第一モータ91は、主軸121を介して回転駆動力をギアポンプ35に伝達し、ギアポンプ35を駆動する。ギアポンプ35は、主軸121に固定して回転する駆動ギア36と、駆動ギア36に外接して噛み合い回転する従動ギア37とを備えている。第一モータ91は、アーム部13のうち、ポンプケース31が接続している部分の右方に内装している。主軸121は、第一モータ91の回転軸から左方に延びる。主軸121はポンプケース31内を挿通し、左側先端部に駆動ギア36を固定する。そして、第一モータ91は、主軸121を回転させることにより、駆動ギア36及び従動ギア37を回転させる。これにより、適量の接着剤をノズル45に供給する。
【0043】
第二モータ92は、主軸126,127,128、及びベルト129,130を介して、回転駆動力を上移送ローラ24に伝達し、上移送ローラ24を駆動する。第二モータ92は、アーム部13のうち梁部14が接続している部分の右方に内装する。主軸126は、第二モータ92の回転軸から左方に延び、梁部14内を挿通して、その左側先端部は柱部17に至る。主軸127は、柱部17の下側端部内、及びローラ保持部20の後端部21内を左右方向に挿通する。主軸128は、ローラ保持部20の前端部22に軸支させた上移送ローラ24の回転軸である。主軸126の左側端部と、主軸127の右側端部との間には、ベルト129が架設している。ベルト129は柱部17に内装する。主軸127の左側端部と、主軸128の左側端部との間には、ベルト130が架設している。ベルト130はローラ保持部20に内装する。第二モータ92が回転することで、上移送ローラ24が回転する。これにより、下移送ローラ25との間に挟んだ状態の布を、押圧しながら前方から後方へ移送させる。
【0044】
第三モータ93は、主軸141及びベルト142を介して、回転駆動力を下移送ローラ25に伝達し、下移送ローラ25を駆動する。下移送ローラ25は略円筒形状であり、左右方向を回転軸として回転可能な状態で、台座部11における上移送ローラ24の下方に内装している。主軸141は、台座部11の内部の支持台座4に回転可能に接続している。第三モータ93の回転軸と主軸141との間には、ベルト142が架設している。主軸141及びベルト142は、台座部11に内装する。そして、第三モータ93が回転することで、下移送ローラ25が回転する。これにより、下移送ローラ25は、上移送ローラ24との間に挟んだ状態の布を、押圧しながら前方から後方へ移送させる。
【0045】
第一モータ91の右端には、第一モータ91の回転量を検出する第一エンコーダ94が接続している。第二モータ92の右端には、第二モータ92の回転量を検出する第二エンコーダ95が接続している。第三モータ93の右端には、第三モータ93の回転量を検出する第三エンコーダ96が接続している。
【0046】
貯蔵室26の本体部27(図2参照)は、周壁に、貯蔵室第一ヒータ101、貯蔵室第二ヒータ102、及び貯蔵室温度センサ111を備える。貯蔵室第一ヒータ101、及び貯蔵室第二ヒータ102は、本体部27を加熱することで、本体部27が貯蔵している接着剤を加熱する。貯蔵室温度センサ111は、本体部27の温度を検出することで、本体部27が貯蔵している接着剤の温度を計測する。これにより、接着機2は、ホットメルトタイプの接着剤を貯蔵室26で所定の温度に加熱し、接着剤を液化することができる。
【0047】
ポンプケース31の第二ポンプケース33は、ポンプケースヒータ103、及びポンプ温度センサ112を内装する。ポンプケースヒータ103は、第二ポンプケース33を加熱することで、ギアポンプ35から流入した接着剤を加熱する。ポンプ温度センサ112は、第二ポンプケース33の温度を計測する。
【0048】
支持部40は、支持部ヒータ104、及び支持部温度センサ113を内装する。支持部ヒータ104は、支持部40を加熱することで、第二ポンプケース33からノズル45へ流入する接着剤を加熱する。支持部温度センサ113は、支持部40の温度を計測する。
【0049】
次に、図6を参照して、接着機2における接着剤の経路、及び経路を遮断するバルブ55について説明する。図6は、図2に示す接着機2を紙面左下側から見た場合の貯蔵室26、ポンプケース31、及び支持部40の断面図である。図6に示すように、貯蔵室26の本体部27は、接着剤を貯蔵する空間を、周壁及び底壁によって形成している。底壁と接する周壁部分のうちポンプケース31側には、本体部27が貯蔵した接着剤をギアポンプ35に導くための第一経路51が貫通している。
【0050】
第一経路51は、貯蔵室26から延び、ポンプケース31の第二ポンプケース33(図2及び図3参照)内の中央で右方(図6の紙面奥側)に曲折して、駆動ギア36と従動ギア37とが噛み合う部分の上側へ至る。第一モータ91が駆動し、駆動ギア36及び従動ギア37が回転することで、第一経路51を流れてきた接着剤を加圧し、駆動ギア36と従動ギア37とが噛み合う部分の下側の第二経路52に供給する。
【0051】
第二経路52は、第二ポンプケース33(図2及び図3参照)において、ギアポンプ35の下側から左方(図6の紙面手前側)に延び、下方へ曲折して、さらに左方へ曲折し、支持部40の上端部の内部へ至る。第二経路52は、支持部40の上端部の内部で第三経路53に接続する。
【0052】
第三経路53は、支持部40の内部で上端部から下端部まで延び、支持部40の下部に固定しているノズル45に接続する。そして、第三経路53の下端部に、第三経路53を遮断するバルブ55を設けている。先述したように、バルブ55による第三経路53の開放及び遮断は、バルブ開閉シリンダ49によって動作する。バルブ開閉シリンダ49の動作は、制御ボックス3内のCPU201(図7参照)が制御する。
【0053】
次に、図7を参照して、布接着装置1の電気的構成について説明する。図7は、布接着装置1の電気的構成を示す模式図である。図7に示すように、布接着装置1は、CPU201、ROM202、RAM203、及びフラッシュメモリ99を備えている。CPU201は、操作部47、パネルキー209等の入力装置からの入力情報、及び各種センサが検出した検出情報を受信し、各種モータ、ヒータ、アクチュエータ等を制御する制御処理等を実行する。ROM202は、CPU201が実行するプログラムや各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM203は、タイマ、カウンタ、フラグ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ99は、ユーザが入力する各種設定情報を記憶する。そして、CPU201がROM202、RAM203、及びフラッシュメモリ99の記憶領域にアクセスできるように、CPU201とROM202、RAM203、及びフラッシュメモリ99とはそれぞれ電気的に接続している。
【0054】
布接着装置1は、ユーザがノズル45からの接着剤の吐出を停止させる場合に押下する操作部47を備えている。そして、接着剤の吐出を行わせるか否かを示す操作部47からの信号を認識することができるように、CPU201と操作部47とは電気的に接続している。CPU201は、認識した信号に基づいて、ノズル45に接着剤を吐出させるか否かを制御する。
【0055】
布接着装置1は、ユーザが布の移送速度を調節する場合に使用するペダル206を備える。そして、ペダル206の踏み込み量を認識することができるように、CPU201とペダル206とは電気的に接続している。CPU201は、認識したペダルの踏み込み量に基づいて、上移送ローラ24及び下移送ローラ25の回転速度を決定する。また、布接着装置1は、ユーザが各種動作設定を行う場合に使用するパネルキー209を備える。そして、ユーザによるパネルキー209の押下状態を認識することができるように、CPU201とパネルキー209とは電気的に接続している。CPU201は、認識したパネルキー209の押下状態に基づいて、各種動作設定の情報をフラッシュメモリ99に記憶させる。
【0056】
布接着装置1は、貯蔵室温度センサ111、ポンプ温度センサ112、及び支持部温度センサ113を備えている。そして、これらの温度センサ111〜113が検出した温度の情報をCPU201が認識できるように、CPU201と温度センサ111〜113とはそれぞれ電気的に接続している。CPU201は、温度センサ111〜113が検出した温度の情報を認識することで、貯蔵室26、ポンプケース31、及び支持部40の内部を流れる接着剤の温度を認識する。
【0057】
布接着装置1は、エンコーダ94〜96を備えている。そして、エンコーダ94〜96が検出した回転量の情報をCPU201が認識できるように、CPU201とエンコーダ94〜96とはそれぞれ電気的に接続している。CPU201は、エンコーダ94〜96が検出した回転量の情報を認識することで、モータ91〜93の実際の回転速度を認識する。
【0058】
布接着装置1は、液晶表示部208と、液晶表示部208を制御して所望の像を表示させる表示駆動ドライバ205とを備えている。そして、CPU201が液晶表示部208に各種情報を表示させることができるように、CPU201と表示駆動ドライバ205とは電気的に接続している。また、表示駆動ドライバ205と液晶表示部208とは電気的に接続している。
【0059】
布接着装置1は、支持部40の位置を使用位置と保守位置とに移動させるエアシリンダ41と、第三経路53を開放し又は遮断するバルブ55を動作させるバルブ開閉シリンダ49とを備えている。また、エアシリンダ41及びバルブ開閉シリンダ49へ送り込む空気の圧力制御を行うエア駆動ドライバ204を備えている。そして、CPU201は、エア駆動ドライバ204を制御することで、エアシリンダ41及びバルブ開閉シリンダ49の動作を司る。
【0060】
布接着装置1は、モータ91〜93と、モータ91〜93を所望の回転速度で回転させるモータ駆動ドライバ207とを備えている。そして、CPU201がそれぞれのモータ91〜93を所望の回転速度で回転させることができるように、CPU201とモータ駆動ドライバ207とは電気的に接続している。モータ駆動ドライバ207とモータ91〜93とはそれぞれ電気的に接続している。また、布接着装置1は、ヒータ101〜104を備えている。そして、CPU201がそれぞれのヒータ101〜104のON/OFFを制御することができるように、CPU201とそれぞれのヒータ101〜104とは電気的に接続している。
【0061】
次に、図8を参照して、上布151と下布152とを接着させる接着作業時における接着機2の動作について説明する。図8は、接着作業時におけるノズル45近傍の動作を示す部分拡大斜視図である。
【0062】
図8に示すように、布接着装置1を使用して接着作業を行う場合には、エアシリンダ41(図2から図4参照)の可動部42を伸長させ、支持部40を使用位置に配置させる。上布151及び下布152を重ねて配置し、布の接着部分にノズル45を挟む。ノズル45の後方で、上移送ローラ24及び下移送ローラ25によって上布151と下布152とを上下方向から挟む。
【0063】
この状態でユーザがペダル206を踏み込むと、ギアポンプ35(図5及び図6参照)が回動し、接着剤が経路51〜53を経由して、ノズル45の吐き出し口から下方へ吐き出る。これにより、下布152に接着剤が付着する。同時に、上移送ローラ24及び下移送ローラ25が、上布151及び下布152を前方から後方へ移送させる方向に回転する。ばね18が上移送ローラ24を下方へ付勢しているため、上移送ローラ24及び下移送ローラ25は、上布151及び下布152を押圧して接着させる。
【0064】
次に、第一の実施形態に係る布接着装置1のCPU201が実行する供給制御処理について、図9を参照して説明する。図9は、布接着装置1のCPU201が行う供給制御処理のフローチャートである。CPU201は、布の接着作業が可能な状態で、ユーザがペダル206を踏み込んだ場合に、供給制御処理を実行する。
【0065】
図9に示すように、CPU201は、供給制御処理を開始すると、ユーザがボタン式の操作部47を押下しているか否かを判断する(S1)。ユーザが操作部47を押下していなければ(S1:NO)、CPU201は、バルブ開閉シリンダ49によってバルブ55を開放させる(S2)。この状態で、CPU201は布の移送速度、すなわち、ペダルの踏み込み量に合わせて、ギアポンプ35を回転させる第一モータ91を回転させて、ノズル45に接着剤を供給させる(S3)。そして、CPU201は、ユーザによるペダル206の踏み込みが終了したか否かを判断し(S4)、終了していなければ(S4:NO)、S1の判断へ戻る。
【0066】
一方で、CPU201は、ユーザが操作部47を押下していると判断した場合には(S1:YES)、バルブ開閉シリンダ49によってバルブ55を閉鎖させ、第三経路53を遮断させる(S5)。そして、CPU201は、第一モータ91を停止させた状態で、すなわち、ギアポンプ35によるノズル45への接着剤の供給を行わずに、ペダル206の踏み込みが終了したか否かを判断する(S4)。CPU201は、ペダル206の踏み込みが終了していなければ(S4:NO)、S1の判断へ戻る。また、ペダル206の踏み込みが終了した場合には(S4:YES)、バルブ開閉シリンダ49によってバルブ55を閉鎖させて(S6)、処理を終了する。
【0067】
以上説明したように、第一の実施形態に係る布接着装置1によると、ユーザは、ノズル45から布への接着剤の吐出を、操作部47を操作することによって制御することができる。さらに、操作部47がノズル45、上移送ローラ24、及び下移送ローラ25の近傍に位置している。よって、ユーザは、布及びノズル45から顔を背けることなく、容易に接着剤の吐出を制御することができる。より詳細には、ノズル45を支持する支持部40が操作部47を備える。よって、ユーザは、ノズル45が適切に接着剤を布に付着させているか否かを容易に確認しながら、接着剤の吐出を制御することができる。
【0068】
また、ユーザが操作部47を押下した場合、布接着装置1は、ノズル45に接着剤を加圧供給するギアポンプ35の動作を停止させることで、ノズル45からの接着剤の吐出を停止させる。よって、ユーザは、無駄な電力を消費することなく、直接且つ容易にノズル45からの接着剤の吐出を停止させることができる。さらに、ユーザが操作部47を押下すると、布接着装置1は、接着剤をノズル45に導く第三経路53を遮断する。よって、布接着装置1は、接着剤をノズル45から垂らすことなく、確実に接着剤の吐出を停止させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態のギアポンプ35及び第一モータ91が、本発明の「供給手段」に相当する。図9でギアポンプ35からノズル45への接着剤の供給を制御するCPU201が「供給制御手段」として機能する。バルブ55、バルブ開閉シリンダ49、及び図9でバルブ55の動作を制御するCPU201が「遮断手段」に相当する。上移送ローラ24及び下移送ローラ25が「移送手段」に相当する。ローラ保持部20が本発明の「保持部」に相当する。
【0070】
次に、本発明の第二の実施形態に係る布接着装置について、図10から図15を参照して説明する。第二の実施形態に係る布接着装置の構成は、操作部247に複数の手元スイッチ(操作部材)248〜250を設けた点が第一の実施形態に係る布接着装置1の構成と異なるのみである。よって、第二の実施形態の説明では、上記第一の実施形態と同じ構成については同一の番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0071】
まず、図10を参照して、第二の実施形態に係る布接着装置の接着機252の物理的構成について説明する。図10は、第二の実施形態に係る布接着装置の接着機252を前方左斜め上から見た斜視図である。図10に示すように、接着機252の梁部14は、本体部15の左端部から前方へ水平方向に延びるシリンダ支持部239を備えている。シリンダ支持部239は、先端にエアシリンダ241を備えており、エアシリンダ241の出力軸は、ローラ保持部20の軸支部242に接続している。従って、エアシリンダ241を伸縮させることで、ローラ保持部20の前端部22を上下動させることができる。エアシリンダ241の動作は、エア駆動ドライバ(図7参照)が司る。
【0072】
また、接着機252の第二ポンプケース33は、支持部240を揺動可能に軸支している。支持部240の形状は、上下方向を長手方向とする略立方体状であり、支持部240の下端部と台座部11との間には僅かな隙間がある。支持部240の下端部からは、ノズル45が左側に突出している。
【0073】
支持部240の右側の上下方向略中央には、操作部247を設けてある。操作部247は、第一の実施形態に係る操作部47(図2参照)とは異なり、ユーザが操作するボタン式の操作部材である手元スイッチを3つ備えている。詳細には、操作部247は、左から順に横並びに、第一手元スイッチ248、第二手元スイッチ249、及び第三手元スイッチ250の3つの手元スイッチを備えている。手元スイッチ248〜250はノズル45の近傍に位置しているため、ユーザは、接着工程が適切に進行しているか否かを確認しながら手元スイッチ248〜250を操作することができる。
【0074】
第二の実施形態の布接着装置では、動作を制御する指示を与えるための複数の機能のいずれかを、手元スイッチ248〜250のそれぞれに割り当てることができる。従って、ユーザは、所望する機能を手元スイッチ248〜250に割り当てることで、スムーズに接着作業を行うことができる。また、後述するように、手元スイッチ248〜250に割り当てる機能を接着工程に応じて変更することで、接着工程に適した方法で動作の制御指示を入力することができる。これらの詳細について、以下説明する。
【0075】
次に、図11及び図12を参照して、第二の実施形態に係る布接着装置のCPU201が実行する機能割り当て処理について説明する。図11は、第二の実施形態に係る布接着装置のCPU201が行う機能割り当て処理のフローチャートである。図12は、割り当て可能な機能の一例を示す説明図である。機能割り当て処理は、ユーザが布接着装置の動作の制御指示を与えるための機能の1つを、操作パネル210のパネルキー209(図1参照)の操作に応じて手元スイッチ248〜250のそれぞれに割り当てる処理である。CPU201は、布接着装置の電源がオンとなると、機能割り当て処理を実行する。
【0076】
図11に示すように、CPU201は、機能割り当て処理を開始すると、パネルキー209中の設定モードキーの操作があったか否かを判断する(S21)。設定モードキーの操作がなければ(S21:NO)、この判断を繰り返し行う。設定モードキーの操作があれば(S21:YES)、液晶表示部208(図1参照)に設定画面を表示して(S22)、手元スイッチ248〜250に機能を割り当てるための設定モードとする。設定画面では、3つの手元スイッチ248〜250と、各スイッチに割り当ててある機能の機能番号及び機能名(図12参照)とを表示し、3つの手元スイッチ248〜250のうちの1つを太枠で囲んで設定対象とする。
【0077】
次いで、CPU201は、パネルキー209中の上下キーの操作があったか否かを判断する(S23)。上下キーの操作があれば(S23:YES)、3つの手元スイッチ248〜250のうち設定対象とする手元スイッチを、操作があったキーの種類(上下のいずれか)に応じて切り替える(S24)。上下キーの操作がなければ(S23:NO)、そのままS25の判断へ移行する。
【0078】
次いで、CPU201は、パネルキー209中の左右キーの操作があったか否かを判断する(S25)。左右キーの操作があれば(S25:YES)、設定対象となっている手元スイッチの機能を、操作があったキーの種類(左右のいずれか)に応じて切り替える(S26)。左右キーの操作がなければ(S25:NO)、そのままS27の判断へ移行する。
【0079】
ここで、図12を参照して、手元スイッチ248〜250に割り当てることができる機能の一例について説明する。機能番号1の「接着剤停止機能」とは、ノズル45からの接着剤の吐出及び停止の制御指示を入力する機能である。機能番号2の「接着剤吐出量切り替え機能」とは、接着剤の吐出量を切り替える指示を入力する機能である。この機能を割り当てている手元スイッチを1回操作する毎に、ノズル45から吐出させる接着剤の吐出量を、あらかじめ設定してある複数種類の吐出量のいずれかに切り替えることができる。接着剤の吐出量をこまめに調整したい場合に便利である。機能番号3の「布送り上下比率切り替え機能」とは、上移送ローラ24及び下移送ローラ25(図10参照)の回転比率の切り替え指示を入力する機能である。
【0080】
機能番号4の「ノズル上下機能」とは、支持部240を揺動させてノズル45を上下させる指示を入力する機能である。この機能を割り当てている手元スイッチを操作する毎に、エアシリンダ41(図10参照)が伸縮し、支持部240が上方又は下方へ揺動する。機能番号5の「上ローラ上下機能」とは、上移送ローラ24を上下させる指示を入力する機能である。この機能を割り当てている手元スイッチを操作する毎に、エアシリンダ241(図10参照)が伸縮し、上移送ローラ24を回動可能に保持しているローラ保持部20の前端部22が上方又は下方へ移動する。機能番号6の「布送り速度切り替え機能」とは、布の移送速度の設定の切り替えを入力する機能である。この機能を割り当てている手元スイッチを操作する毎に、布の移送速度を切り替えることができる。これらの機能の一部については、具体的な使用方法の一例を挙げて後に説明する。
【0081】
図11の説明に戻る。先述したS26の処理では、2つ又は3つの手元スイッチに同一の機能を割り当てることもできる。例えば、「接着剤停止機能」のみを頻繁に使用する接着工程であれば、第一手元スイッチ248、第二手元スイッチ249、及び第三手元スイッチ250の全てに、機能番号1の「接着剤停止機能」を割り当てることもできる。これにより、操作部247の操作が容易になると共に、入力するつもりのない指示を誤って入力してしまうおそれを低下させることができる。尚、S26の処理では、右キーの操作がある毎に、機能番号が1つ大きい機能に切り替える。一方、左キーの操作がある毎に、機能番号が1つ小さい機能に切り替える。
【0082】
左右キーの操作に対する処理が終了すると(S25:NO、又はS25:YES,S26)、CPU201は、パネルキー209中のエンターキーの操作があったか否かを判断する(S27)。エンターキーの操作が無ければ(S27:NO)、S23の判断へ戻る。エンターキーの操作があれば(S27:YES)、その時点の機能割り当ての設定をフラッシュメモリ99(図7参照)に記憶し(S28)、設定を終了するか否かを判断する(S29)。パネルキー209中のリターンキーの操作があり、設定を終了しないと判断した場合には(S29:NO)、S23の判断へ戻る。パネルキー209中の通常モードキーの操作があり、設定を終了すると判断した場合には(S29:YES)、設定画面を消去して通常モードとし(S30)、S21の判断へ戻る。
【0083】
以上説明した機能割り当て処理によって、3つの手元スイッチ248〜250のそれぞれに、複数の機能のいずれかを割り当てることができる。ユーザが3つの手元スイッチ248〜250のいずれかを操作すると、操作した手元スイッチに割り当ててある機能に応じて布接着装置が動作する。
【0084】
次に、手元スイッチ248〜250の具体的な使用方法の一例について、図13から図15を参照して説明する。
【0085】
図13は、複数の布262を、1枚の細長いテープ261に間隔を置きつつ接着する場合を示す。この接着工程では、布262の間に接着剤を吐出してはいけないため、接着剤の吐出及び停止を頻繁に切り替える必要がある。この場合、3つの手元スイッチ248〜250の少なくともいずれかに、機能番号1の「接着剤停止機能」を割り当てておけばよい。これにより、ユーザは、接着工程が適切に進行していることを確認しながら、接着剤の吐出及び停止を容易に切り替えることができる。
【0086】
図14は、2枚の布264,265の一端を、精度良く、且つ隙間無く接着する場合を示す。この接着工程では、下側の布265の先端(図中上側の角部)から後端(図中右側の角部)まで均一に接着剤を付着しなければ、2枚の布264,265の一端を隙間無く接着することはできない。そして、2枚の布264,265の先端の位置を確実に合わせなければ、精度良く接着することはできない。よって、まず下側の布265の先端に接着剤を付着し、その後、上側の布264を重ねて、上移送ローラ24及び下移送ローラ25(図10参照)による加圧、移送を行うのが望ましい。上側の布264がない状態では、上移送ローラ24に接着剤が付着して汚れてしまうため、これを防ぐために、上移送ローラ24を上昇させておく必要がある。この接着工程を行う場合、3つの手元スイッチ248〜250の少なくともいずれかに、機能番号5の「上ローラ上下機能」を割り当てておけばよい。これにより、ユーザは、頻繁に入力が必要な上ローラの上下動の制御指示を、容易に、且つ適切なタイミングで行うことができる。
【0087】
図15は、曲線状の細長い布267を、布268の曲線部分に接着する場合を示す。ここで、一般的な布の伸縮特性には方向性がある。具体的に説明すると、布が縦糸及び横糸の組み合わせからなる織物である場合は、縦糸或いは横糸が伸長する方向と平行な方向よりも、縦糸或いは横糸が伸長する方向に対して斜めの方向(バイアス方向)に布が伸び易い。また、布が編物であるニット地の場合は、網目のループが縦方向に配列する方向(縦方向)よりも、横方向に配列する方向(横方向)に布が伸び易い。このため、図15に示すような曲線状の布267と布268とを接着する場合、布の移送方向に対して、布の縦糸或いは横糸が伸長する方向又は布の網目方向が、布を移送するに従って変化する。このため、布の伸び方が不均一になって、接着後の布が波打ってしまう不具合が生じ易い。これを防止するためには、布の伸び方に合わせて、上移送ローラ24及び下移送ローラ25の回転比率(布送りの上下比率)を接着位置に応じて適宜変更する必要がある。この接着工程を行う場合、3つの手元スイッチ248〜250の少なくともいずれかに、機能番号3の「布送り上下比率切り替え機能」を割り当てておけばよい。これにより、ユーザは、布送りの上下比率を、接着位置に応じて容易に変更することができる。
【0088】
以上説明したように、第二の実施形態に係る布接着装置によると、ユーザは、各工程での使用頻度、使い易さ等を考慮し、ノズル45の近傍に設けてある複数の手元スイッチ248〜250のそれぞれに、所望する機能を割り当てることができる。従って、ユーザは、より容易に布の接着作業を行うことができる。また、頻繁に使用する機能が手元スイッチ248〜250の数よりも少ない場合には、2以上の手元スイッチに同一の機能を割り当てることで、入力するつもりのない制御指示を誤って入力してしまうおそれを低下させることができる。尚、図11に示す機能割り当て処理を行うCPU201が、本発明の「割り当て手段」として機能する。
【0089】
尚、上記実施形態に示した構成や処理は例示であり、各種の変更が可能であることは言うまでもない。以下、上記実施形態の変形例について説明する。尚、下記の変形例では、上記実施形態と同じ構成については同一の番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0090】
まず、図16を参照して、上記実施形態の変形例1について説明する。図16は、変形例1に係る接着機302を前方左斜め上から見た斜視図である。図16に示すように、ユーザが動作の制御指示を入力する場合に操作する操作部347は、上移送ローラ24を保持するローラ保持部20に設けてもよい。これにより、ユーザは、上移送ローラ24による布の圧着及び移送が適切に行われていることを確認しながら、容易に制御指示を入力することができる。すなわち、操作部47,347は、ノズルを支持する支持部40、又は上移送ローラ24を保持するローラ保持部20に設けることがより望ましい。しかし、操作部47,347を設ける位置は、ノズル45又は上移送ローラ24の近傍であれば、その他の位置に設けてもよい。例えば、梁部14のばね支持部16から吊り下げるように操作部47,347を設けても、ユーザは、作業が適切に進んでいることを確認しながら接着剤の吐出を制御することができる。尚、複数の手元スイッチを有する操作部をローラ保持部20に設けてもよいことは言うまでもない。
【0091】
また、変形例1に係る接着機302は、バルブ55、及びバルブ55を動作させるバルブ開閉シリンダ49(図6参照)を備えていない。つまり、接着剤の吐出を止める場合、上記実施形態のように、ギアポンプ35の動作を停止させ、且つ第三経路53を遮断することがより望ましいが、いずれか一方の方法で接着剤の吐出を止めてもよい。例えば、変形例1に係る接着機302のように、ギアポンプ35を停止させる方法のみを用いてもよい。また、接着剤の経路を遮断する方法のみを用いてもよい。さらに、他の方法を用いて接着剤の供給を停止させてもよい。
【0092】
次に、図17を参照して、上記実施形態の変形例2について説明する。図17は、変形例2に係る布接着装置401全体を前方斜め上から見た斜視図である。図17に示すように、ユーザが、接着機402のノズル45からの接着剤の吐出を制御する場合に操作する操作部447を、ユーザの膝元に設けてもよい。変形例2に係る布接着装置401は、右脚部213の左側の面に操作部447を備えている。これにより、ユーザは、作業が適切に進んでいることを確認しながら、接着剤の吐出を膝で容易に制御することができる。
【0093】
また、上記実施形態はその他の変更も可能である。例えば、上記実施形態のバルブ55の動作は、CPU201がバルブ開閉シリンダ49を制御することで行っている。しかし、バルブ55の構成は適宜変更が可能である。例えば、ユーザが操作部47を押下することで、バルブ55が直接動作して第三経路53を遮断する構成としてもよい。また、空気で動作するバルブ開閉シリンダ49でなく、ソレノイド等を用いてバルブ55を動作させてもよいことは言うまでもない。また、バルブ55を設ける位置も、第三経路53の下端に限らない。また、布を移送するための構成も適宜変更できる。例えば、下移送ローラ25の代わりにベルトを用いてもよいし、下移送ローラ25を省略してもよい。
【0094】
また、上記第一の実施形態の操作部47のボタンは、ユーザが手を離すとばね力によって自動的に非操作位置へ戻るボタンである。よって、ユーザは、接着剤の吐出を停止させたい場合のみ操作部47を押下すればよいため、接着剤の吐出を容易に制御することができる。しかし、操作部47は、ユーザが手を離しても状態を維持する切り替え式の操作部であってもよい。この場合、ユーザは、接着剤の吐出を長時間停止させたい場合でも、操作部47を操作し続けることなく吐出を停止させることができる。
【0095】
また、上記第二の実施形態では、手元スイッチ248〜250に割り当てることができる機能として6つの機能を例示したが(図12参照)、割り当てることができる機能はこれに限られない。また、機能を割り当てる方法が適宜変更できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
1,401 布接着装置
2,252,302,402 接着機
3 制御ボックス
20 ローラ保持部
24 上移送ローラ
25 下移送ローラ
35 ギアポンプ
40,240 支持部
45 ノズル
47,247 操作部
248 第一手元スイッチ
249 第二手元スイッチ
250 第三手元スイッチ
49 バルブ開閉シリンダ
53 第三経路
55 バルブ
91 第一モータ
92 第二モータ
93 第三モータ
201 CPU
204 エア駆動ドライバ
207 モータ駆動ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を布に吐出するノズルと、
前記ノズルから前記接着剤を吐出させる吐出手段と、
前記布を押圧しながら移送する移送手段とを備えた布接着装置であって、
前記布接着装置の動作を制御する指示を与えるために操作者が操作する操作手段を備え、
前記操作手段が、前記ノズル又は前記移送手段の近傍に設けられたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記ノズルを支持する支持部を備え、
前記操作手段が前記支持部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記移送手段を保持する保持部を備え、
前記操作手段が前記保持部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記吐出手段は、
前記ノズルに前記接着剤を加圧して供給する供給手段と、
前記供給手段による前記ノズルへの前記接着剤の供給を制御する供給制御手段とを備え、
前記操作手段は、前記供給手段による前記接着剤の供給を行わせるか否かを示す信号を前記供給制御手段に出力することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の布接着装置。
【請求項5】
前記吐出手段は、
前記操作手段の操作に応じて動作し、前記接着剤を前記ノズルに導く経路を遮断する遮断手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の布接着装置。
【請求項6】
前記操作手段は、操作者が操作するための操作部材を複数個有し、
前記布接着装置の動作を制御する指示を与えるための複数の機能のうちのいずれかを、前記複数の操作部材のそれぞれに割り当てる割り当て手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の布接着装置。
【請求項7】
前記割り当て手段は、2以上の前記操作部材に同一の機能を割り当てることが可能であることを特徴とする請求項6に記載の布接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−203028(P2010−203028A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128547(P2009−128547)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】