説明

床下通気用弾性パッキン。

【課題】建物の基礎と土台間で用いられる通気用パッキンにおいて、基礎天端の不陸については別途にパッキンの上または下に不陸調整板を差し込んで土台の水平を保たせているのが実情である。又、土台の経年乾燥による収縮で床鳴り発生の防止対策として床下にもぐって緩んだナットの締め直しているのが実情であり、これらの煩わしさを解決する。
【解決の手段】床下通気用パッキンにおいて、通気口を円形とすることで該パッキンに弾性機能をもたせ、この弾性の働きで基礎天端の不陸対策調整板は不要となり、土台の経年乾燥での収縮による床鳴り対策作業の軽減にも寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅のコンクリート基礎と木の土台の間に通気用の隙間を形成するについて、該隙間に介装される床下通気用パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
高さ可変の床下換気材としての通気パッキン(基礎パッキン、土台パッキン等その呼称は様々である)に関しては、特開2006−104843号公報や特開2007−231515号公報等が知られているが、いずれも円形をした合成樹脂成形品でアンカーボルトに必ず挿通させる構造・仕様であり、アンカーボルトのない所での高さ調整が不安定であり、作業の現場での設置時に基礎天端の不陸に対しての高さを調整するのみで、住宅完成後の経年乾燥による土台の収縮には対応できない。
【0003】
又、鋼製の高さ可変の通気パッキンとして、特開平10−219856号公報が知られている。同公報は土台に接する側を基板部として、基礎側に一定の高さで固定された支持用突起とスリット加工した波板状の高さの異なる弾性突出片を複数個施して高さを可変できる構造としている。
【0004】
しかしながら、いかに波板状のスリット弾性突出片を設けて高さを可変できる構造といっても、一定の高さで固定された支持用突起の底辺(基礎接地面)までしか高さを変えられず、しかも、住宅の荷重に耐えるためにはよほど板厚を厚くしなければならず価格的にも高価なものになってしまう。
【0005】
又、合成樹脂性の高さ可変の通気パッキンに関しては、特開2002−309683号公報が知られている。同公報では基部と昇降上面部とスペーサの三部品で構成され、高さ調整用に前記スペーサを差し込んで基礎天端の不陸に対応しているが、部品点数の多さに加えて、構造的にも複雑である。又、特開2002−309684号公報の場合、こちらはパッキン自体をスライドさせて基礎天端の不陸に対応しているが、両公報共に住宅完成後の経年乾燥による土台の収縮には対応できない。
【0006】
又、弾性の機能をもった免震部材として特開平1−304239号公報が知られている。同公報では、上下板面に弾性機能をもたせたテーパー形状の円柱を連設しての免震構造であるが、部品点数の多さと取り付け時の煩雑さでコスト的にも高くつき、更に、通気面積を確保することについては考慮がなされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記欠点を解決する課題として、基本的には床下の通気を促すための部材であり、それがためには、先ず、木造住宅建築の指標とされる住宅金融支援機構の監修になる(財)住宅金融普及協会発行の「木造住宅工事仕様書」P24の3.3.10床下換気の項の1に示されている「土台の全周にわたって、1m当り有効面積75cm以上の換気孔を設ける」の規定を踏まえる必要がある。その上で、(1)基礎の不陸に対して、不陸調整板を使用しないで不陸対応できること。(2)住宅の完成後の経年乾燥による土台の収縮にも床下にもぐってナットを締め直さずに対応できる機能を備えていること。(3)製品化に対しては部品点数を少なくしてコストの低減を図ること。等の機能を備えた製品が求められる。
【0008】
【特許文献1】特開第2006−104843号公報
【特許文献2】特開第2007−231515号公報
【特許文献3】特開平10−219856号公報
【特許文献4】特開第2002−309683号公報
【特許文献5】特開第2002−309684号公報
【特許文献6】特開平1−304239号公報
【非特許文献1】住宅金融支援機構監修「木造住宅工事仕様書」平成20年改訂版
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建物の基礎と土台間に用いられる床下通気用パッキンであって、土台と同程度の幅をもたせ、円形通気口を板状プレートで挟み、全体としての長さを最長910ミリ前後として前記基礎の様々な長さに対して鋸等で自在に切断できるようにし、前記円形通気口は基礎天端の不陸や前記土台の経年乾燥による収縮に対して弾性の働きで土台の水平を保たせ、高さについては建物の荷重で前記通気用パッキンが低くなっても住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」に示されている“土台1メートルで75平方センチメートル以上の換気面積を確保すること”の所定の換気面積が確保される構造としたことを特徴とする床下通気用弾性パッキンを提供することで解決の手段とする。
【0010】
又、本発明は、請求項1に記載の床下通気用パッキンであって、前記円形通気口の上下面部の左右に滑り止め用金具を複数個所備えていることを特徴とする床下通気用弾性パッキンを提供することで解決の手段とする。
【0011】
又、本発明は、請求項1に記載の床下通気用パッキンであって、土台締結用アンカーボルトが位置ずれして立ち上がっていても、前記板状のプレートに数種類の幅の異なるルーズホールを複数個施すことにより無理なく挿通できることを特徴とする床下通気用弾性パッキンを提供することで解決の手段とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の床下通気用弾性パッキンによれば、円形通気口を施すことにより基礎天端の不陸に対し、あるいは土台の経年乾燥による収縮に対して弾性の働きで土台の水平が保持される効果が得られ、且つ、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」に示されている“土台1メートルに75平方センチメートル以上の換気面積を確保すること”の所定の換気面積を確保できる効果があり、請求項2に記載の床下通気用弾性パッキンによれば、該パッキンの上下面の左右に滑り止め用の金具を複数個所備えることにより地震等での横滑りを防止する効果があり、請求項3に記載の床下通気用弾性パッキンによれば、該パッキンの板状のプレートに数種類の幅の異なるルーズホールを施すことにより、位置ずれアンカーボルトにも無理なく挿通できるという施工上の大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の床下通気用弾性パッキン(以下、弾性パッキンと称する)の実施の形態について詳述する。図1は弾性パッキンの一例としての平面図1と側面図1aである。図1-2は滑り止め用金具である。図1-3はルーズホール、図2は滑り止め用金具の側面図2-1と展開図2-2と斜視図2-3の拡大図である。
【0014】
本発明の弾性パッキンは合成樹脂を主素材とし、円形通気口1bをΦ20とし、適度な間隔を空けて配し、外見的にはこの円形通気口を板状のプレート1cで挟んでいる形状であるが樹脂一体の成形品であり、肉厚を1ミリとしている。円形通気口と円形通気口の間も肉厚1ミリ以外はすべて通気がとれる構造である。そして長さを最大910ミリ前後としている。勿論、成形加工機の能力や加工性,製造コストあるいは施工性等を鑑みて80ミリ〜910ミリの範囲で製造することが好ましい。
【0015】
本発明の弾性パッキンは建築の現場施工時にΦ20の円形通気口1bはアンカーボルトが土台を貫通してナットで締結される際、圧縮されて楕円状になって低く横に広がるが、その時、互いの円形通気口がぶつかり合うところで過度の荷重が掛からない限り10ミリ以下にはなりにくい構造としている。
【0016】
過度の荷重とは、通常の荷重の2倍以上の異常な荷重がかかることを過度の荷重とみなすのが一般的な見方である。床面積20坪で木造二階建ての住宅の荷重はおよそ50トンと言われており、直下型地震で家が数十センチ持ち上がってそのまま下に落ちてくるような事のない限り、2倍(100トン)以上の荷重がかかることは通常ではあり得ない。
【0017】
本発明の弾性パッキンを0016の条件に当てはめると、全長910ミリの弾性パッキンを、仮に100本使用するとして、このとき弾性パッキン1本にかかる荷重は50000Kg÷100本=500Kgとなる。耐荷重試験の結果にもよるが、今までの経験から推測すると弾性パッキン1本にかかる荷重は10,000Kg(10トン)前後が想定され、これ自体が通常荷重500Kgの20倍の過度の荷重に耐え得ることになる。
【0018】
本発明の弾性パッキンは基礎の天端に不陸のある部位では円形通気口が弾性作用で土台の水平を保つ働きをなす。又、住宅建築後、数年経つと土台が経年乾燥によって収縮し、その結果、土台を締結しているナットに緩みが生じ床鳴り発生の原因ともなっている。この土台の経年乾燥による収縮にも円形通気口が弾性作用で土台の水平を保つ働きをする。
【0019】
次に、本発明の弾性パッキンには複数の滑り防止用金具1-2を複数個施して地震等での横滑りを防止する機能をもたせている。このクリップ形状の金具の先端近くに施してある円筒突起1-2aが基礎や土台に食い込み横滑りを防止する。
【0020】
このクリップ形状の金具の組み付け方法として、弾性パッキンに取り付ける位置に案内穴1-4を施し、クリップ形状の金具を左右から挟みこんで半球形部1-2bがこの案内穴を通して円筒突起1-2aのへこみ部分に入り込んで固定される。
【0021】
次に、本発明の弾性パッキンには土台締結用アンカーボルトが位置ずれして立ち上がっていても、弾性パッキンの板状のプレートに数種類の幅の異なるルーズホール1-3を複数個備えることにより無理なく挿通できる構造としている。
【0022】
本発明の弾性パッキンは樹脂成形機等によって加工が可能である。
【0023】
又、本発明の弾性パッキンはステンレススチール等の鋼材で成型することも可能である。
この場合、滑り止め用の円筒突起とルーズホールを施した鋼製の板状プレートを鋼製パイプの上と下に電気溶接又は接着剤等で固定することで製品化が可能となる。
【0024】
以上説明したように、本発明の弾性パッキンを提供することにより、不陸調整板が不要となって施工性が向上し価格の低減にも寄与する。又、住宅完成後に於いても緩んだナットの締め付け作業等の工務店のメンテナンス作業も軽減される。
【0025】
尚、0014〜0017に示した数値は限定あるいは拘束されるものではなく、本発明の弾性パッキンの本来の目的を達成するために、強度試験や加工性、施工性あるいは経済性等を検証して自由に数値変更ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態による弾性パッキンの平面図と側面図である。
【図2】本発明の実施形態による滑り止め用クリップの側面図と展開図と斜視図の拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
1 弾性パッキンの平面図
1a 弾性パッキンの側面図
1b 円形通気口
1c 板状プレート
1-2 滑り止め用クリップ
1-2a 滑り止め用クリップの円筒突起
1-2b 滑り止め用クリップの固定用半球形突起(1-2aと1-2bは同位置となる)
1-3 アンカーボルト挿通用ルーズホール
1-4 滑り止め用クリップを弾性パッキンに取り付ける案内穴(1-2aと1-2bと1-3bは同位置となるため図面上は隠れて見えない。)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と土台間に用いられる床下通気用パッキンであって、土台と同程度の幅をもたせ、円形通気口を板状プレートで挟み、全体としての長さを最長910ミリ前後として前記基礎の様々な長さに対して鋸等で自在に切断できるようにし、前記円形通気口は基礎天端の不陸や前記土台の経年乾燥による収縮に対して弾性の働きで土台の水平を保たせ、高さについては建物の荷重で前記通気用パッキンが低くなっても住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」に示されている“土台1メートルで75平方センチメートル以上の換気面積を確保すること”の所定の換気面積が確保される構造としたことを特徴とする床下通気用弾性パッキン。
【請求項2】
請求項1に記載の床下通気用パッキンであって、前記円形通気口の上下面部の左右に滑り止め用金具を複数個所備えていることを特徴とする床下通気用弾性パッキン。
【請求項3】
請求項1に記載の床下通気用パッキンであって、土台締結用アンカーボルトが位置ずれして立ち上がっていても、前記板状のプレートに数種類の幅の異なるルーズホールを複数個施すことにより無理なく挿通できることを特徴とする床下通気用弾性パッキン。


【図1】
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【図2】
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