説明

床構造

【課題】生産性及び施工性を向上しうる。
【解決手段】水平モジュールMの整数倍の柱間距離D1で立設された複数本の柱3を含む構造体を有する工業化住宅の床構造である。床構造は、柱3が立設された柱通り6に、水平モジュールMのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)の寸法L1を有する複数の床パネル5を含む。床パネル5は、柱3との干渉を防ぐ切欠き部8を有する切欠きパネル7を含むことにより、柱3を除く実質的な床面全域Tに敷設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性及び施工性を向上しうる床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家屋の床や壁等の構造部分を、予め工場で生産した床パネルや壁パネル等の構成部材を用いて形成し、施工性の向上や品質の安定化などを図った工業化住宅が普及している。
【0003】
図7(a)は、従来の工業化住宅のシングルグリッド設計の1階部分の床構造の一例を示す平面図、図7(b)には、そのA−A断面図を示す。前記床構造は、基礎g上の土台や束材等で支持された大引を含む床支持材aと、該床支持材aの上に敷設される平面視略矩形状の複数の床パネルbとを含んで構成される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
また、基礎g上には、予め定められた構造体モジュールm(例えば900mm)の整数倍(この実施形態では1倍)の柱間距離eで複数本の柱cが立設されている。シングルグリッドで住宅を設計する場合、床パネルbには、柱cとの干渉を防ぐための切欠き部dが形成される。これにより、床パネルbは柱cを除いた実質的な床面全域に敷設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−264562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の床構造では、床パネルbは、構造体モジュールmとは互いに関連付けられていない水平モジュールf(例えば、540mm等)を基準に設計されていた。このため、床パネルbに形成される切欠き部dの位置が、各床パネル毎で異なりやすく、多種類の床パネルbを製造する必要がある等、生産性が悪いという問題があった。また、切欠き部dの施工位置によっては、床パネルbの強度の低下や、加工精度の低下などを招くおそれもあった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、水平モジュールの整数倍の柱間距離で立設された複数本の柱を含む柱通りに、前記水平モジュールのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)の寸法を有する複数の床パネルを用いることを基本として、床パネルに形成される前記切欠き部の位置を標準化し、ひいては床パネルの種類数を減らして生産性や施工性を大幅に向上しうる床構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、水平モジュールの整数倍の柱間距離で立設された複数本の柱を含む構造体を有する工業化住宅の床構造であって、前記柱が立設された柱通りに、前記水平モジュールのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)の寸法を有する複数の床パネルを含み、かつ前記床パネルは、前記柱との干渉を防ぐ切欠き部を有する切欠きパネルを含むことにより、前記柱を除く実質的な床面全域に敷設されることを特徴とする。
【0009】
また請求項2記載の発明は、前記切欠きパネルは、前記柱通りの一端側に入隅状の切欠き部を有する第1の切欠きパネルと、前記柱通りの他端側に入隅状の切欠き部を有する第2の切欠きパネルとからなる2種類のみからなる請求項1記載の床構造である。
【0010】
また請求項3記載の発明は、前記床パネルは、前記切欠き部を有しない切欠き無しパネルを含む請求項1又は2に記載の床構造である。
【0011】
また請求項4記載の発明は、前記構造体には、柱が異なる柱間距離で立設された柱通りを有するとともに、該柱通りには、最小の柱間距離の1/2倍の前記寸法を有し、しかも前記柱通りの一端側に入隅状の切欠き部を有する第1の切欠きパネルと、前記柱通りの他端側に入隅状の切欠き部を有する第2の切欠きパネルと、切欠き部を有しない切欠き無しパネルとの3種類の床パネルのみが配される請求項1記載の床構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床構造は、床パネルと柱とが、同一の水平モジュールを基準に設計される。従って、床パネルの切欠き部の位置が標準化され、ひいては床パネルの種類数を減らして生産性を向上することができる。また、床パネルの柱通り上における寸法を適切に決めることにより、切欠き部の施工位置によるパネル強度の低下や、加工精度の低下なども防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の床構造の一形態を例示する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の切欠きパネルを拡大して示す平面図である。
【図4】(a)は床パネルの寸法が水平モジュールの1/3倍に設定された床構造を示す拡大図、(b)は床パネルの寸法が水平モジュールの1/4倍に設定された床構造を示す拡大図である。
【図5】他の実施形態の床構造を示す平面図である。
【図6】さらに他の実施形態の床構造を示す平面図である。
【図7】(a)は従来の工業化住宅のシングルグリッド設計の代表的な床構造の平面図、(b)はそのA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1及び図2には、本実施形態の工業化住宅の一階部分の床構造を示す。該工業化住宅では、水平モジュールMの整数倍の柱間距離D1で立設された複数本の柱3を含む構造体を有する。他方、床構造は、前記柱3が立設された柱通り6に、前記水平モジュールMのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)の寸法E1を有する複数の床パネル5が床支持材2上に敷設される。
【0015】
本実施形態の水平モジュールMは、900mmに設定されるが、この寸法に限定されるものではない。工業化住宅では、外壁パネルや屋根パネル等を水平モジュールMのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)として規格化することにより各部材を標準化することができる。なお、図1において、左右にのびる柱通り6の寸法L1は、例えば水平モジュールMの4倍(4P)に設定されている。
【0016】
前記柱3には、例えば断面角パイプ状の鋼材が用いられ、その底部は、例えば取付金具を介して基礎Fのアンカーボルト等に固着される。そして、柱3、3間には、例えば工場等で製造された外壁パネル(図示せず)が固着される。
【0017】
本実施形態の床支持材2は、基礎Fの上面に沿って配された土台13と、土間コンクリート15上に束材16を介して支持された水平方向にのびる大引14とを含む。これらは、床パネル5の底部を支持し、該床パネル5と釘又はボルト等にて固定される。土台13は、図1において左右にのびる第1の土台13Aと、該第1の土台13Aと直交する向きにのびる第2の土台13Bとを含む。
【0018】
本実施形態の床パネル5は、例えば、予め工場で製造されたもので、根太等の枠材と、その上面に固着された例えば木質材、合板又はコンクリートパネル等の面材とから構成される。また、床パネル5は、後述の切欠き部8を除き、同一の輪郭形状、本実施形態では平面視略矩形状に形成される。
【0019】
また、床パネル5は、前記柱通り6に沿った寸法E1が、水平モジュールMのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)に設定される。本実施形態では、前記寸法E1は、水平モジュールMの1/2倍に設定されている。従って、床パネル5は、前記柱通り6上において、隣り合う柱3、3間に2枚、合計8枚敷設される。
【0020】
さらに、床パネル5には、柱3との干渉を防ぐ切欠き部8を有する切欠きパネル7が含まれる。これにより、床パネル5は、柱3を除く実質的な床面全域Tに敷設される。なお、床面全域Tとは、第1、第2の土台13A、13Bの長手方向に沿って各柱3の中心3cを結んで囲まれる領域とする。
【0021】
本実施形態の床パネル5は、図3に拡大して示されるように、前記柱通り6上において、一端側(この例では右側)に切欠き部8aを有する第1の切欠きパネル7Aと、他端側(この例では左側)に切欠き部8bを有する第2の切欠きパネル7Bの2種類のみからなる。
【0022】
このように、本実施形態の床構造は、柱3と床パネル5とが、同一の水平モジュールMを基準に設計されるので、該切欠きパネル7の切欠き部8の位置が上述のように2種類に標準化される。これにより、床パネル5の種類数を減らして生産性や施工性を大幅に向上しうる。また、本実施形態のように、床パネル5の柱通り6に沿った寸法E1を適切に決めることにより、切欠き部8の施工位置によるパネル強度の低下や、加工精度の低下なども防止できる。また、各切欠きパネル7の切欠き部8a、8bは、一端側又は他端側で、それぞれ入隅状に形成されるので、一辺の中間部で凹状に形成される切欠き部と比べて、加工性及び加工精度を向上しうる。
【0023】
図4(a)には、柱通り6に沿った床パネル5の寸法E1が、柱間距離D1の1/3倍に設定された床構造が示される。また、図4(b)には、前記寸法E1が柱間距離D1の1/4倍に設定された床パネル5が敷設された床構造が示される。いずれの床パネル5も、第1の切欠きパネル7A、第2の切欠きパネル7B、及び切欠き部8を有しない切欠き無しパネル10の3種類に標準化することができる。
【0024】
図5には、本発明の床構造の他の実施形態の平面図が示される。
この実施形態において、構造体は、柱3が異なる柱間距離D2及びD3で立設された柱通り6を有する。柱間距離D2は水平モジュールMの1倍、柱間距離D3は水平モジュールMの2倍に設定されている。
【0025】
また、床パネル5は、柱通り6に沿った寸法E2が、最小の柱間距離(即ち、柱間距離D2)の1/2倍に設定される。つまり、寸法E2は、水平モジュールMの1/2倍に相当する。他方、この実施形態において、床パネル5の前記寸法E2と直角方向の寸法E3は、水平モジュールMの2倍で構成されている。これにより、床パネル5は、前記柱通り6において各6枚、床面全域に合計12枚敷設される。
【0026】
また、床パネル5としては、第1の切欠きパネル7A、第2の切欠きパネル7B及び切欠き無しパネル10の3種類のみが配される。このように、本実施形態の床構造は、構造体に、柱3が異なる柱間距離D2、D3で立設された柱通り6を有しても、床パネル5の柱通り上の寸法を最適化することにより、3種類の床パネル5のみで床面全域Tに敷設でき、床パネル5の種類数の増加を抑制しうる。
【0027】
図6には、さらに本発明の他の実施形態の平面図が示される。
この実施形態においては、図5の実施形態とほぼ同様であるが、柱通り6と直角な柱通り17においても、異なる柱間距離D2及びD4で柱3が立設されている。この実施形態では、柱通り17において、柱間距離D2は水平モジュールMの1倍、柱間距離D4は水平モジュールMの3倍に設定されている。
【0028】
このような実施形態の場合、例えば、図において右上及び左下に配される第1の切欠きパネル7Aの長辺の中間位置に、柱3との干渉を防ぐ切欠き部12を形成するだけで敷設できるので、床パネル5の種類数を4に抑えることができる。
【0029】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。例えば2階、3階等の床構造にも勿論適用することができる。この場合、床支持材2には床梁などが含まれる。
【符号の説明】
【0030】
3 柱
5 床パネル
6 柱通り
7 切欠きパネル
8 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平モジュールの整数倍の柱間距離で立設された複数本の柱を含む構造体を有する工業化住宅の床構造であって、
前記柱が立設された柱通りに、前記水平モジュールのn倍又は1/n倍(ただし、nは1以上の整数)の寸法を有する複数の床パネルを含み、かつ
前記床パネルは、前記柱との干渉を防ぐ切欠き部を有する切欠きパネルを含むことにより、前記柱を除く実質的な床面全域に敷設されることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記切欠きパネルは、前記柱通りの一端側に入隅状の切欠き部を有する第1の切欠きパネルと、前記柱通りの他端側に入隅状の切欠き部を有する第2の切欠きパネルとからなる2種類のみからなる請求項1記載の床構造。
【請求項3】
前記床パネルは、前記切欠き部を有しない切欠き無しパネルを含む請求項1又は2に記載の床構造。
【請求項4】
前記構造体には、柱が異なる柱間距離で立設された柱通りを有するとともに、該柱通りには、最小の柱間距離の1/2倍の前記寸法を有し、しかも前記柱通りの一端側に入隅状の切欠き部を有する第1の切欠きパネルと、前記柱通りの他端側に入隅状の切欠き部を有する第2の切欠きパネルと、切欠き部を有しない切欠き無しパネルとの3種類の床パネルのみが配される請求項1記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265650(P2010−265650A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116896(P2009−116896)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】