座屈拘束ブレース、および座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム
【課題】繰り返し荷重に対し弾性領域での変形が維持できるとともに、端部領域の剛性が向上して安定した耐地震強度が得られる座屈拘束ブレース、及びこれを用いた耐力フレームを提供する。
【解決手段】構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする。
【解決手段】構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁などの垂直構面、及び床などの水平構面の内側に架け渡されて、水平力に対する建築物の変形を有効に防止できる座屈拘束ブレースと、この座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム、及び座屈拘束ブレースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の座屈拘束ブレースは、鋼板等を用いたブレース本体としてのブレース芯材を、鋼管等を用いた補剛材の内側に挿入し、これらブレース芯材と補剛材との隙間に、モルタル、合成樹脂等硬化性の材料を充填した構造が多く採用されている。
【0003】
このように構成された座屈拘束ブレースでは、圧縮荷重を受ける際に発生するブレース芯材の座屈が、補剛材の曲げ剛性によって拘束されることから、比較的小さな断面のブレース芯材で、引張力及び圧縮力の両方に充分抵抗して、ブレースとして必要な補強効果を得ることができる。その結果、地震発生時など建築物に大きな水平力が発生すると、小断面のブレース芯材はこれらの外力に応じて柔軟に弾性伸縮できることから、エネルギー吸収効果の高い紡錘型の復元力特性を生じて、建築物の接合部、周辺の構造材の強度を高めることなく、優れた耐震性を発揮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−220637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブレース芯材が座屈しようとする力を補剛材に確実に伝達するためには、モルタル等を隙間を生じることなく充填することが要求される。更にはブレース芯材が自由に伸縮できるようにするため、ブレース芯材に絶縁材を被覆して、ブレース芯材と充填材とを縁切りする処置が必要となるなど、高いレベルの品質管理が必要となる。その結果、工程が煩雑となって充填作業自体に手間がかかる。しかもブレース芯材に、充填剤の重さが加わることから、部材の全体重量が大きく増加する。その結果、部材製造・物流の作業性が低下するとともにスペースの狭い施工現場での荷扱いが特にやり難く、更には上階への部材搬入の際、荷役機械の設置が必要となるため能率が低下し、他方作業者の負荷が大きく労働障害を発生する恐れもある。
【0006】
そこで本出願人は図10に示すように、軸力を負担する長尺板状のブレース芯材aと、このブレース芯材aに添設してブレース芯材aを補強する内補剛材bと、前記ブレース芯材a及び内補剛材bに外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材aを補強する筒状の外補剛材dとを具える座屈拘束ブレースを提案した(特願2006−253130)。
【0007】
しかしながら、内補剛材bの端部が外補剛材dから延出してフリーとなるため、地震時に継続した繰り返し荷重が軸方向に作用すると、内補剛材bの端部がブレース芯材aに沿う状態から分離して変形し易く、その結果ブレース芯材aの端部が座屈しがちである。従って前記座屈拘束ブレースを取り付けた耐力フレームに、水平荷重を繰り返し負荷して、変形履歴を測定すると、図11に示すように、耐力フレームが塑性変形を生じて構造強度が低下する結果を招き、更なる改善が望まれていた。
【0008】
本発明は、外補剛材から延出した内補剛材の延出部に、ブレース芯材と密着した状態を維持させる端部拘束手段を設けることを基本とし、繰り返し荷重に対し弾性領域での変形が維持できるとともに、端部領域の剛性が向上して安定した耐地震強度が得られる座屈拘束ブレース、及びこれを用いた耐力フレームの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明における端部拘束手段は、前記内補剛材の延出部を覆う略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することによって構成され、止め具とブレース芯材とで、延出部をスライド可能に嵌合した状態で拘束することを特徴とし、請求項3に係る発明における端部拘束手段は、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって構成され、前記延出部を係止片とブレース芯材とで挟着した状態で拘束することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明において、前記外補剛材は、金属を用いて形成されるとともにブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、この変形部によって、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明において、前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着し、請求項6に係る発明において、前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の耐力フレームは、前記請求項1〜6のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであって、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明においては、外力が作用した際、座屈拘束ブレースの端部に大きな応力が働いて大きな変形が生じるが、端部拘束手段によって、内補剛材の延出部がブレース芯材に密に添着した状態を維持できることから、双方が一体となって応力を負担する。従って座屈拘束ブレースを組込んだ構造体は、繰り返し荷重に対して弾性領域での変形が維持されることから高い剛性が得られる。特に地震荷重のように繰り返し荷重が作用しても、端部拘束手段によってブレース芯材と内補剛材とが束ねられて一体に挙動することにより、弱点箇所となり易い座屈拘束ブレース端部領域の剛性が向上するため、安定した耐地震強度が得られる。
【0015】
請求項2に係る発明のように、ブレース芯材に固着した略溝形状の止め具によって内補剛材の延出部を覆う端部拘束手段を構成すると、前記延出部が安定的に支持されてブレース芯材と一体に挙動するため、安定した耐震性能が得られる。しかも、略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することにより、外補剛材が途切れる端部領域においても、ブレース芯材に対する補強効果が低減することがなく、全長に亘って均一な剛性が得られる。更には、内補剛材の延出部が略溝形状の止め具によって覆われることから、止め具がブレース芯材を構造矩体の溶接する際に飛び散る溶接スパッタに対するカバーの役割をするため、ブレース芯材と内補剛材とが固着して、座屈拘束ブレースが狙いとする補強性能の変化を防止できる。
【0016】
請求項3に係る発明のように、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって内補剛材の延出部を拘束する端部拘束手段を構成すると、構造を簡単でシンプル化でき、しかもブレース芯材と内補剛材の相対移動を確保しつつ、内補剛材が単独で遊離して変形することを防止できる。
【0017】
請求項4に係る発明のように、ブレース芯材に外挿した外補剛材の内側へ向いた変形部により、外補剛材及び内補剛材をブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制すると、座屈防止に直接必要なもの以外には何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。金属を用いた外補剛材に対する外側からの加圧力によって変形部を形成することにより、外補剛材をブレース芯材に圧着して座屈拘束ブレースが形成されるため、外補剛材に使用される金属の種類、厚さに応じた加圧力の管理のみで、適正な大きさの変形部を設けることができ、ブレース芯材の座屈変形を確実に抑止しうる外補剛材の適正な圧着が得られる。
【0018】
請求項5に係る発明のように、角筒状の外補剛材内部空間を二分割する位置に配置したブレース芯材によって二分割された矩形分割空間に、断面コ字状の内補剛材を収容すると、ブレース芯材がウェブに挟着されることから、伸縮にともなう長さ方向のズレを許容しつつ、座屈は安定的に支持できる。また変形部は、溝形材のフランジ先端に当接した状態で形成されることから、外側からの加圧力によって形成された変形部は、溝形材の双方フランジ間に膨出して形成されるため、ブレース芯材を確実に圧着できる。
【0019】
請求項6に係る発明のように、メッキ仕上げしたブレース芯材を用いると、ブレース芯材の伸縮時に、外補剛材、内補剛材との間に滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材による地震エネルギー吸収効果を損なうことがない。
【0020】
本発明の耐力フレームは、矩形状の外周枠の内側に張り出して設けた取付プレートに、前記座屈拘束ブレースのブレース芯材の両端部を固着していることから、外周枠に負荷する地震時の水平力が、ブレース芯材によって確実に支持されるとともに、ブレース芯材が伸縮することにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて有効に減衰する。従って、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、座屈拘束ブレース1は、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材2と、このブレース芯材2に添設してブレース芯材2を補強する内補剛材5と、前記ブレース芯材2及び内補剛材5に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材2を補強する外補剛材3と、内補剛材5のブレース芯材2に対する密着状態を維持する端部拘束手段10とを具える。
【0022】
前記ブレース芯材2は、長尺板状をなし、幅寸法が例えば、20〜100mm程度、本形態では44mmとし、厚さ寸法が例えば、3〜15mm程度、本形態では6mmに形成されている。長さ寸法はブレース芯材2を取り付ける構造体のサイズに応じて適宜設定されるが、本形態では1300mmのものが例示される。
【0023】
ブレース芯材2は、通常炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの鉄鋼材料が好適に用いられる。さらに本形態では、ブレース芯材2には、メッキ仕上げが施されている。メッキ仕上げは、0.1〜5μ程度の金属被膜を設けたもので、金属として亜鉛、錫、鉛など防食メッキの他、硬質クロムメッキが好適に採用される。メッキ手段としては、電気メッキ、化学変化による化学メッキ、溶融メッキ、蒸着メッキなどから基材、目的によって選ぶことができる。このようにブレース芯材2をメッキ仕上げすると、ブレース芯材2が伸縮する際、接触する相手方の外補剛材3、内補剛材5との間で滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材2がフリーに伸縮できて地震エネルギーの吸収効果を損なうことがない点で好ましい。
【0024】
前記内補剛材5は、外補剛材3よりも長い寸法を有し、従って外補剛材3の中に挿入すると、その両端部が外補剛材3から食み出した延出部9を形成する。本形態の内補剛材5は、断面コ字状の軽量溝型鋼からなる溝形材6によって構成される。
【0025】
前記外補剛材3は、内補剛材5よりも短かく形成された筒状をなし、本形態では互いに直行する4つの面板部に囲まれて断面が正方形をなす角筒体を用いたものが例示される。外補剛材3としては、このほか断面形状が長矩形、三角形、正多角形などの角筒体、或るいは円筒体などを用いることができる。外補剛材3は、塑性加工が容易に行なえる金属を用いて形成され、ブレース芯材2と同様、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼を含む鉄鋼材料が好適に用いられる。
【0026】
前記外補剛材3は、ブレース芯材2及び、ブレース芯材2の両側面にウェブ6Wを当接して添設した状態で配置した一対の内補剛材5に外挿して、これらを密に束ねることにより座屈拘束ブレース1を組み立てている。従って、ブレース芯材2は、外補剛材3の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置されるとともに、前記二分割された各矩形分割空間内において、一対の内補剛材5がそのウェブ6Wをブレース芯材2に当接した姿勢で配置されている。
【0027】
また前記外補剛材3は図2に示すように、ブレース芯材2及びその両側に添設した一対の内補剛材5が挿入しうる大きさに形成される。即ち外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔は、ブレース芯材2の幅寸法よりも、例えば0.5〜5mm程度大きなな寸法に形成される。そして内補剛材5は、そのウェブ6Wがブレース芯材2に重なる方向に配置され、従って各々のフランジ6Fは前記4つの面板部の中で、ブレース芯材2に平行な面板部(以下、平行面板部21という)の両側部寄りの領域に向き合って配される。
【0028】
さらに外補剛材3の前記平行面板部21には、ブレース芯材2に向けて外側から加圧することにより内側へ向けて滑らかに湾曲変形した変形部4が形成される。本形態の変形部4は、外補剛材3の全長に亘って連続しているが、一定長さで独立して形成される変形部4を間隔を隔てて複数個隔設してもよい。このような変形部4によって、外補剛材3及び内補剛材5がブレース芯材2に圧着して一体化され、その結果長尺板状のブレース芯材2に圧縮荷重が掛かった際、ブレース芯材2に発生しがちな座屈を抑制している。しかし変形部4による圧着は、金属の塑性変形により得られた或る範囲の圧力に留まることから、ブレース芯材2は自由な伸縮変形が許容される。なおこの変形部4の凹み深さDは、例えば、0.03〜3.0mm程度、好ましくは0.07〜1.5mm、本形態では0.5mmとしている。
【0029】
本形態では前記の如く、外補剛材3の内部空間で、ブレース芯材2との間に挿入された内補剛材5が、外補剛材3の変形部4とブレース芯材2との間で挟着されることから、外補剛材3と内補剛材5とを組み合わせることで更に高い剛性が得られ、ブレース芯材2の座屈を確実に抑制することができる。しかもブレース芯材2が構造上の必要性などから特殊な断面形状となっても、適宜これに対応して内補剛材5の大きさ、形状を変更選択することにより、変形部4でブレース芯材2を確実に圧着することができる。
【0030】
本形態の内補剛材5は、前記の如く一対の断面コ字状の溝形材6によって構成され、各々の溝形材6は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材2に向けてウェブ6Wを当接して配置されることから、ブレース芯材2に荷重が働いて伸縮しても、当接面において長さ方向のズレが許容され、しかも座屈を安定的に支持できる。
【0031】
さらに変形部4は、外側からの加圧力によって形成され、本形態では溝形材6の一対のフランジ6F、6F間に膨出して形成された変形部4が溝形材6の一対のフランジ6F、6F先端に当接することにより、外補剛材3及び内補剛材5がブレース芯材2に圧着するため、ブレース芯材2を確実に圧着できる点で好ましい。
【0032】
このように外補剛材3が、その変形部4でブレース芯材2に圧着して座屈を防止することから、座屈防止のため直接補強材となるもの以外は、何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。しかもこの変形部4は、金属製の外補剛材3を外側から加圧して形成するため、外補剛材3に用いる金属の種類、厚さに応じた加圧力を管理して、適正な大きさの変形部4を設けることで、外補剛材3をブレース芯材2に適正に圧着し、ブレース芯材2の座屈変形を確実に抑止することができる。
【0033】
前記端部拘束手段10は、内補剛材5が外補剛材3よりも長いことから、外補剛材3から食み出した端部領域で形成される延出部9に対し、ブレース芯材2に密着した状態を維持させるものである。本形態の端部拘束手段10は図1に示すように、前記延出部9を隙間なく覆うとともに、ブレース芯材2に溶着した略溝形状の止め具11によって構成される。このように延出部9は、止め具11とブレース芯材2とで形成される筒状部の内側にスライド可能に嵌合し、そのため内補剛材5の延出部9がブレース芯材2から離れて変形することを防止している。
【0034】
従って外力が作用した際、座屈拘束ブレースの端部に応力が発生して大きな変形が生じるが、端部拘束手段10を設けることによって、内補剛材5の延出部9がブレース芯材2に密に添着した状態を維持するため、双方が一体となって応力を負担する。従って座屈拘束ブレース1を組込んだ構造体として図3に例示する耐力フレームは、図8に示すように、繰り返し荷重に対して弾性領域での変形が維持されて塑性変形の発生がなく、高い剛性を発揮することが実証される。なお図8のグラフは、本発明の座屈拘束ブレース1を取り付けた耐力フレームに、水平荷重を繰り返し負荷した時の、荷重と水平変形量の相関を表し、図3に示す耐力フレームの変形履歴を示すものである。
【0035】
特に地震荷重のような繰り返し荷重に対しても、端部拘束手段10によってブレース芯材2と内補剛材5とが束ねられて一体に挙動するため、弱点箇所となり易い座屈拘束ブレースの端部領域の剛性が向上し、その結果安定した耐地震強度が得られる。
【0036】
更に本形態では、ブレース芯材2に固着した略溝形状の止め具によって内補剛材5の延出部を覆う端部拘束手段10を構成していることから、延出部9が強固に、かつ安定して支持される結果、内補剛材5が全長に亘ってブレース芯材2と一体に挙動することから、優れた耐震性能が得られる。
【0037】
しかも、略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することにより、外補剛材3が途切れる端部領域においても、ブレース芯材2に対する補強効果が低減することがなく、従って全長に亘って均一な剛性が得られる。また内補剛材5の延出部9が略溝形状の止め具11によって覆われるため、止め具11がブレース芯材2を構造矩体の溶接する際に飛び散る溶接スパッタに対するカバーとなって、ブレース芯材2と内補剛材5とが誤って固着され、座屈拘束ブレースが狙いとする補強性能が変化することを防止できる。
【0038】
本発明の座屈拘束ブレース1の製造するに際しては、図7(A)(B)に示すように、ブレース芯材2及びこれを挟む一対の内補剛材5、5をサンドイッチ状に揃えて、角筒状の外補剛材3の内部へ向けて端部から挿入し、ブレース芯材2及び内補剛材5を外補剛材3内部の所定位置に配置する。このとき図7(C)に示すように、ブレース芯材2の厚さ寸法、及び2つの内補剛材5のフランジ長さを足した寸法は、外補剛材3の前記平行面板部21の間隔よりも、例えば0.5〜5mm程度小さく形成されている。しかも、ブレース芯材2の幅寸法は、外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔よりも少し小さな寸法に形成され、また内補剛材5のフランジの間隔は更に小さく形成されている。従ってブレース芯材2及び内補剛材5は、外補剛材3の内部にスムースに挿入することができる。
【0039】
次いで前記圧着工程では図7(C)に示すように、プレス装置の上、下のポンチ22U、22Dにより、前記外補剛材3の2つの平行面板部21を外側から内側へ向けて、各々直角に押圧することにより、図1に示すように、前記平行面板部21に内側へ湾曲して緩やかに凹んだ変形部4を形成する。このように形成された変形部4によって、外補剛材3は内補剛材5を介してブレース芯材2に圧着される。その結果ブレース芯材2が圧縮力を受けても、外補剛材3及び内補剛材5によって座屈発生が阻止されることから、圧縮力を支持することができる。しかもブレース組立工程において、内補剛材5を外補剛材3内に挿入し、圧着工程においては、プレス装置を用いて加圧するだけの操作で座屈拘束ブレース1を形成出来ることから、何ら熟練を要することなく単純作業で座屈拘束ブレース1が製造できる。従って、高い生産性が得られるとともに、座屈拘束ブレース1の品質バラツキを生じることがない。しかも硬化性の充填剤を使用しないことから、座屈拘束ブレース1全体が軽量化できるとともに、製造工場、及び施工現場での作業性、安全性が向上する。
【0040】
最終工程で、前記の如く外補剛材3よりも長く形成されるため、外補剛材3の両端から延出する内補剛材5の延出部9に被せた略溝形の止め具11を、ブレース芯材2に溶着することによって、前記延出部9をスライド可能に保持する端部拘束手段10を形成する。
【0041】
本発明の耐力フレームは、前記の如く形成され、製造された座屈拘束ブレース1を構成部材として含むものであり、建築架構体に取付けることにより、水平耐力を負担して耐震強度を向上する。また耐力フレームは図3に示すように矩形状の外周枠7と、この外周枠7の内側に張り出して設けられた取付プレート8とを含み構成される。
【0042】
前記外周枠7は上、下に水平に配される上枠7U、下枠7D及び、この上枠7U、下枠7Dの左右両端部間を繋ぐ垂直な竪枠7V、7Vとからなり、各枠材端部相互が固着され、縦長の矩形状をなす。各々の枠材は断面正方形の角筒状をなし、本形態では50mm角の鋼管を用いている。
【0043】
図4に示すように、竪枠7Vの上端部と上枠7Uの側端部は、双方の枠材端部に形成したスリットに上プレート23を嵌合するとともに溶接して固着している。同様に図6に示すように、竪枠7Vの下端部と下枠7Dの側端部は下プレート24を介して固着している。更に前記上プレート23の上側端部には、水平な上取付板25を固着している。また竪枠7V下部に設けたコ字材26及び下プレート24下部は、水平な下取付板27を固着している。尚上取付板25にはネジ孔28が穿設され、梁(図示せず)に挿通された取付ボルト29をこのネジ孔28に螺着して、耐力フレームの上部を固着できる。他方下取付板27には挿通孔30が穿設され、この挿通孔30に挿通する取付ボルト(図示せず)を用いて耐力フレームの下部を土台、梁などに固着できる。更に図3、5に示すように、一方の竪枠7Vの略中間高さ位置に、内側に向いた縦長の中間プレート31が溶着される。
【0044】
耐力フレームに取り付けられる座屈拘束ブレースは、前記の如く外補剛材3の両端部から、ブレース芯材2、及び内補剛材5の両端部が各々20〜100mm程度食み出す程度、外補剛材3よりも長く形成されている。
【0045】
本形態では、外周枠7の内側に、くの字状に一対の座屈拘束ブレースが配置され、前記上プレート23と中間プレート31との間、及び中間プレート31と下プレート24との間に各々が架け渡される。そして上、下のプレート23、24及び中間プレート31に斜め方向に線状に形成された切込みに、ブレース芯材2の端部を嵌合するとともに溶接してブレース芯材2の両端を固着している。従って建築架構体に取付けられることにより外周枠7に掛かる地震時の水平力を、ブレース芯材2によって確実に支持することができる。更にはブレース芯材2が外補剛材3及び内補剛材5に支持されることから座屈を生じることなく伸縮するため、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて効果的に減衰する。このように、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。なお本形態では、前記上、下のプレート23、24の外周枠7の内側の領域、及び中間プレート31が、ブレース芯材2の端部を固着する取付プレート8を構成している。
【0046】
図9は座屈拘束ブレース1の他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態の端部拘束手段10は、外端部12Aがブレース芯材2に固着されるとともに、ブレース芯材2の長手方向に平行に、しかもブレース芯材2との間に内補剛材5のウェブ6Wの厚さと略同寸法の間隙を隔てつつ、中央方向にのびる延長部12Bを一体に設けた鍵状の係止片12によって構成される。この係止片12の延長部12Bとブレース芯材2とで内補剛材5のウェブ6Wの延出部9のウェブ6Wを挟着することによって、内補剛材5とブレース芯材2との密着状態を維持している。
【0047】
本形態のように、鍵状の係止片12によって内補剛材5の延出部9を拘束する端部拘束手段10を構成すると、単純な部品構成によって構造をシンプル化でき、しかもブレース芯材2と内補剛材5の相対移動を確保しつつ、内補剛材5が遊離して単独で変形することを有効に防止できる点で好ましい。
【0048】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する斜視図である。
【図2】その断面図である。
【図3】本発明の耐力フレームを例示する斜視図である。
【図4】その要部の拡大斜視図である。
【図5】他の要部の拡大斜視図である。
【図6】更に他の要部の拡大斜視図である。
【図7】(A)(B)(C)は、座屈拘束ブレースの製造工程を示す略図である。
【図8】耐力フレームの繰返し水平荷重試験の変形履歴を示すグラフである。
【図9】座屈拘束ブレースの他の実施形態を例示する斜視図である。
【図10】従来例の斜視図である。
【図11】従来例の繰返し水平荷重試験の変形履歴を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 座屈拘束ブレース
2 ブレース芯材
3 外補剛材
4 変形部
5 内補剛材
6 溝形材
6F フランジ
6W 向けてウェブ
7 外周枠
8 取付プレート
9 延出部
10 端部拘束手段
11 止め具
12 係止片
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁などの垂直構面、及び床などの水平構面の内側に架け渡されて、水平力に対する建築物の変形を有効に防止できる座屈拘束ブレースと、この座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム、及び座屈拘束ブレースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の座屈拘束ブレースは、鋼板等を用いたブレース本体としてのブレース芯材を、鋼管等を用いた補剛材の内側に挿入し、これらブレース芯材と補剛材との隙間に、モルタル、合成樹脂等硬化性の材料を充填した構造が多く採用されている。
【0003】
このように構成された座屈拘束ブレースでは、圧縮荷重を受ける際に発生するブレース芯材の座屈が、補剛材の曲げ剛性によって拘束されることから、比較的小さな断面のブレース芯材で、引張力及び圧縮力の両方に充分抵抗して、ブレースとして必要な補強効果を得ることができる。その結果、地震発生時など建築物に大きな水平力が発生すると、小断面のブレース芯材はこれらの外力に応じて柔軟に弾性伸縮できることから、エネルギー吸収効果の高い紡錘型の復元力特性を生じて、建築物の接合部、周辺の構造材の強度を高めることなく、優れた耐震性を発揮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−220637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブレース芯材が座屈しようとする力を補剛材に確実に伝達するためには、モルタル等を隙間を生じることなく充填することが要求される。更にはブレース芯材が自由に伸縮できるようにするため、ブレース芯材に絶縁材を被覆して、ブレース芯材と充填材とを縁切りする処置が必要となるなど、高いレベルの品質管理が必要となる。その結果、工程が煩雑となって充填作業自体に手間がかかる。しかもブレース芯材に、充填剤の重さが加わることから、部材の全体重量が大きく増加する。その結果、部材製造・物流の作業性が低下するとともにスペースの狭い施工現場での荷扱いが特にやり難く、更には上階への部材搬入の際、荷役機械の設置が必要となるため能率が低下し、他方作業者の負荷が大きく労働障害を発生する恐れもある。
【0006】
そこで本出願人は図10に示すように、軸力を負担する長尺板状のブレース芯材aと、このブレース芯材aに添設してブレース芯材aを補強する内補剛材bと、前記ブレース芯材a及び内補剛材bに外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材aを補強する筒状の外補剛材dとを具える座屈拘束ブレースを提案した(特願2006−253130)。
【0007】
しかしながら、内補剛材bの端部が外補剛材dから延出してフリーとなるため、地震時に継続した繰り返し荷重が軸方向に作用すると、内補剛材bの端部がブレース芯材aに沿う状態から分離して変形し易く、その結果ブレース芯材aの端部が座屈しがちである。従って前記座屈拘束ブレースを取り付けた耐力フレームに、水平荷重を繰り返し負荷して、変形履歴を測定すると、図11に示すように、耐力フレームが塑性変形を生じて構造強度が低下する結果を招き、更なる改善が望まれていた。
【0008】
本発明は、外補剛材から延出した内補剛材の延出部に、ブレース芯材と密着した状態を維持させる端部拘束手段を設けることを基本とし、繰り返し荷重に対し弾性領域での変形が維持できるとともに、端部領域の剛性が向上して安定した耐地震強度が得られる座屈拘束ブレース、及びこれを用いた耐力フレームの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明における端部拘束手段は、前記内補剛材の延出部を覆う略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することによって構成され、止め具とブレース芯材とで、延出部をスライド可能に嵌合した状態で拘束することを特徴とし、請求項3に係る発明における端部拘束手段は、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって構成され、前記延出部を係止片とブレース芯材とで挟着した状態で拘束することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明において、前記外補剛材は、金属を用いて形成されるとともにブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、この変形部によって、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明において、前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着し、請求項6に係る発明において、前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の耐力フレームは、前記請求項1〜6のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであって、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明においては、外力が作用した際、座屈拘束ブレースの端部に大きな応力が働いて大きな変形が生じるが、端部拘束手段によって、内補剛材の延出部がブレース芯材に密に添着した状態を維持できることから、双方が一体となって応力を負担する。従って座屈拘束ブレースを組込んだ構造体は、繰り返し荷重に対して弾性領域での変形が維持されることから高い剛性が得られる。特に地震荷重のように繰り返し荷重が作用しても、端部拘束手段によってブレース芯材と内補剛材とが束ねられて一体に挙動することにより、弱点箇所となり易い座屈拘束ブレース端部領域の剛性が向上するため、安定した耐地震強度が得られる。
【0015】
請求項2に係る発明のように、ブレース芯材に固着した略溝形状の止め具によって内補剛材の延出部を覆う端部拘束手段を構成すると、前記延出部が安定的に支持されてブレース芯材と一体に挙動するため、安定した耐震性能が得られる。しかも、略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することにより、外補剛材が途切れる端部領域においても、ブレース芯材に対する補強効果が低減することがなく、全長に亘って均一な剛性が得られる。更には、内補剛材の延出部が略溝形状の止め具によって覆われることから、止め具がブレース芯材を構造矩体の溶接する際に飛び散る溶接スパッタに対するカバーの役割をするため、ブレース芯材と内補剛材とが固着して、座屈拘束ブレースが狙いとする補強性能の変化を防止できる。
【0016】
請求項3に係る発明のように、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって内補剛材の延出部を拘束する端部拘束手段を構成すると、構造を簡単でシンプル化でき、しかもブレース芯材と内補剛材の相対移動を確保しつつ、内補剛材が単独で遊離して変形することを防止できる。
【0017】
請求項4に係る発明のように、ブレース芯材に外挿した外補剛材の内側へ向いた変形部により、外補剛材及び内補剛材をブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制すると、座屈防止に直接必要なもの以外には何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。金属を用いた外補剛材に対する外側からの加圧力によって変形部を形成することにより、外補剛材をブレース芯材に圧着して座屈拘束ブレースが形成されるため、外補剛材に使用される金属の種類、厚さに応じた加圧力の管理のみで、適正な大きさの変形部を設けることができ、ブレース芯材の座屈変形を確実に抑止しうる外補剛材の適正な圧着が得られる。
【0018】
請求項5に係る発明のように、角筒状の外補剛材内部空間を二分割する位置に配置したブレース芯材によって二分割された矩形分割空間に、断面コ字状の内補剛材を収容すると、ブレース芯材がウェブに挟着されることから、伸縮にともなう長さ方向のズレを許容しつつ、座屈は安定的に支持できる。また変形部は、溝形材のフランジ先端に当接した状態で形成されることから、外側からの加圧力によって形成された変形部は、溝形材の双方フランジ間に膨出して形成されるため、ブレース芯材を確実に圧着できる。
【0019】
請求項6に係る発明のように、メッキ仕上げしたブレース芯材を用いると、ブレース芯材の伸縮時に、外補剛材、内補剛材との間に滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材による地震エネルギー吸収効果を損なうことがない。
【0020】
本発明の耐力フレームは、矩形状の外周枠の内側に張り出して設けた取付プレートに、前記座屈拘束ブレースのブレース芯材の両端部を固着していることから、外周枠に負荷する地震時の水平力が、ブレース芯材によって確実に支持されるとともに、ブレース芯材が伸縮することにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて有効に減衰する。従って、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、座屈拘束ブレース1は、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材2と、このブレース芯材2に添設してブレース芯材2を補強する内補剛材5と、前記ブレース芯材2及び内補剛材5に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材2を補強する外補剛材3と、内補剛材5のブレース芯材2に対する密着状態を維持する端部拘束手段10とを具える。
【0022】
前記ブレース芯材2は、長尺板状をなし、幅寸法が例えば、20〜100mm程度、本形態では44mmとし、厚さ寸法が例えば、3〜15mm程度、本形態では6mmに形成されている。長さ寸法はブレース芯材2を取り付ける構造体のサイズに応じて適宜設定されるが、本形態では1300mmのものが例示される。
【0023】
ブレース芯材2は、通常炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの鉄鋼材料が好適に用いられる。さらに本形態では、ブレース芯材2には、メッキ仕上げが施されている。メッキ仕上げは、0.1〜5μ程度の金属被膜を設けたもので、金属として亜鉛、錫、鉛など防食メッキの他、硬質クロムメッキが好適に採用される。メッキ手段としては、電気メッキ、化学変化による化学メッキ、溶融メッキ、蒸着メッキなどから基材、目的によって選ぶことができる。このようにブレース芯材2をメッキ仕上げすると、ブレース芯材2が伸縮する際、接触する相手方の外補剛材3、内補剛材5との間で滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材2がフリーに伸縮できて地震エネルギーの吸収効果を損なうことがない点で好ましい。
【0024】
前記内補剛材5は、外補剛材3よりも長い寸法を有し、従って外補剛材3の中に挿入すると、その両端部が外補剛材3から食み出した延出部9を形成する。本形態の内補剛材5は、断面コ字状の軽量溝型鋼からなる溝形材6によって構成される。
【0025】
前記外補剛材3は、内補剛材5よりも短かく形成された筒状をなし、本形態では互いに直行する4つの面板部に囲まれて断面が正方形をなす角筒体を用いたものが例示される。外補剛材3としては、このほか断面形状が長矩形、三角形、正多角形などの角筒体、或るいは円筒体などを用いることができる。外補剛材3は、塑性加工が容易に行なえる金属を用いて形成され、ブレース芯材2と同様、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼を含む鉄鋼材料が好適に用いられる。
【0026】
前記外補剛材3は、ブレース芯材2及び、ブレース芯材2の両側面にウェブ6Wを当接して添設した状態で配置した一対の内補剛材5に外挿して、これらを密に束ねることにより座屈拘束ブレース1を組み立てている。従って、ブレース芯材2は、外補剛材3の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置されるとともに、前記二分割された各矩形分割空間内において、一対の内補剛材5がそのウェブ6Wをブレース芯材2に当接した姿勢で配置されている。
【0027】
また前記外補剛材3は図2に示すように、ブレース芯材2及びその両側に添設した一対の内補剛材5が挿入しうる大きさに形成される。即ち外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔は、ブレース芯材2の幅寸法よりも、例えば0.5〜5mm程度大きなな寸法に形成される。そして内補剛材5は、そのウェブ6Wがブレース芯材2に重なる方向に配置され、従って各々のフランジ6Fは前記4つの面板部の中で、ブレース芯材2に平行な面板部(以下、平行面板部21という)の両側部寄りの領域に向き合って配される。
【0028】
さらに外補剛材3の前記平行面板部21には、ブレース芯材2に向けて外側から加圧することにより内側へ向けて滑らかに湾曲変形した変形部4が形成される。本形態の変形部4は、外補剛材3の全長に亘って連続しているが、一定長さで独立して形成される変形部4を間隔を隔てて複数個隔設してもよい。このような変形部4によって、外補剛材3及び内補剛材5がブレース芯材2に圧着して一体化され、その結果長尺板状のブレース芯材2に圧縮荷重が掛かった際、ブレース芯材2に発生しがちな座屈を抑制している。しかし変形部4による圧着は、金属の塑性変形により得られた或る範囲の圧力に留まることから、ブレース芯材2は自由な伸縮変形が許容される。なおこの変形部4の凹み深さDは、例えば、0.03〜3.0mm程度、好ましくは0.07〜1.5mm、本形態では0.5mmとしている。
【0029】
本形態では前記の如く、外補剛材3の内部空間で、ブレース芯材2との間に挿入された内補剛材5が、外補剛材3の変形部4とブレース芯材2との間で挟着されることから、外補剛材3と内補剛材5とを組み合わせることで更に高い剛性が得られ、ブレース芯材2の座屈を確実に抑制することができる。しかもブレース芯材2が構造上の必要性などから特殊な断面形状となっても、適宜これに対応して内補剛材5の大きさ、形状を変更選択することにより、変形部4でブレース芯材2を確実に圧着することができる。
【0030】
本形態の内補剛材5は、前記の如く一対の断面コ字状の溝形材6によって構成され、各々の溝形材6は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材2に向けてウェブ6Wを当接して配置されることから、ブレース芯材2に荷重が働いて伸縮しても、当接面において長さ方向のズレが許容され、しかも座屈を安定的に支持できる。
【0031】
さらに変形部4は、外側からの加圧力によって形成され、本形態では溝形材6の一対のフランジ6F、6F間に膨出して形成された変形部4が溝形材6の一対のフランジ6F、6F先端に当接することにより、外補剛材3及び内補剛材5がブレース芯材2に圧着するため、ブレース芯材2を確実に圧着できる点で好ましい。
【0032】
このように外補剛材3が、その変形部4でブレース芯材2に圧着して座屈を防止することから、座屈防止のため直接補強材となるもの以外は、何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。しかもこの変形部4は、金属製の外補剛材3を外側から加圧して形成するため、外補剛材3に用いる金属の種類、厚さに応じた加圧力を管理して、適正な大きさの変形部4を設けることで、外補剛材3をブレース芯材2に適正に圧着し、ブレース芯材2の座屈変形を確実に抑止することができる。
【0033】
前記端部拘束手段10は、内補剛材5が外補剛材3よりも長いことから、外補剛材3から食み出した端部領域で形成される延出部9に対し、ブレース芯材2に密着した状態を維持させるものである。本形態の端部拘束手段10は図1に示すように、前記延出部9を隙間なく覆うとともに、ブレース芯材2に溶着した略溝形状の止め具11によって構成される。このように延出部9は、止め具11とブレース芯材2とで形成される筒状部の内側にスライド可能に嵌合し、そのため内補剛材5の延出部9がブレース芯材2から離れて変形することを防止している。
【0034】
従って外力が作用した際、座屈拘束ブレースの端部に応力が発生して大きな変形が生じるが、端部拘束手段10を設けることによって、内補剛材5の延出部9がブレース芯材2に密に添着した状態を維持するため、双方が一体となって応力を負担する。従って座屈拘束ブレース1を組込んだ構造体として図3に例示する耐力フレームは、図8に示すように、繰り返し荷重に対して弾性領域での変形が維持されて塑性変形の発生がなく、高い剛性を発揮することが実証される。なお図8のグラフは、本発明の座屈拘束ブレース1を取り付けた耐力フレームに、水平荷重を繰り返し負荷した時の、荷重と水平変形量の相関を表し、図3に示す耐力フレームの変形履歴を示すものである。
【0035】
特に地震荷重のような繰り返し荷重に対しても、端部拘束手段10によってブレース芯材2と内補剛材5とが束ねられて一体に挙動するため、弱点箇所となり易い座屈拘束ブレースの端部領域の剛性が向上し、その結果安定した耐地震強度が得られる。
【0036】
更に本形態では、ブレース芯材2に固着した略溝形状の止め具によって内補剛材5の延出部を覆う端部拘束手段10を構成していることから、延出部9が強固に、かつ安定して支持される結果、内補剛材5が全長に亘ってブレース芯材2と一体に挙動することから、優れた耐震性能が得られる。
【0037】
しかも、略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することにより、外補剛材3が途切れる端部領域においても、ブレース芯材2に対する補強効果が低減することがなく、従って全長に亘って均一な剛性が得られる。また内補剛材5の延出部9が略溝形状の止め具11によって覆われるため、止め具11がブレース芯材2を構造矩体の溶接する際に飛び散る溶接スパッタに対するカバーとなって、ブレース芯材2と内補剛材5とが誤って固着され、座屈拘束ブレースが狙いとする補強性能が変化することを防止できる。
【0038】
本発明の座屈拘束ブレース1の製造するに際しては、図7(A)(B)に示すように、ブレース芯材2及びこれを挟む一対の内補剛材5、5をサンドイッチ状に揃えて、角筒状の外補剛材3の内部へ向けて端部から挿入し、ブレース芯材2及び内補剛材5を外補剛材3内部の所定位置に配置する。このとき図7(C)に示すように、ブレース芯材2の厚さ寸法、及び2つの内補剛材5のフランジ長さを足した寸法は、外補剛材3の前記平行面板部21の間隔よりも、例えば0.5〜5mm程度小さく形成されている。しかも、ブレース芯材2の幅寸法は、外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔よりも少し小さな寸法に形成され、また内補剛材5のフランジの間隔は更に小さく形成されている。従ってブレース芯材2及び内補剛材5は、外補剛材3の内部にスムースに挿入することができる。
【0039】
次いで前記圧着工程では図7(C)に示すように、プレス装置の上、下のポンチ22U、22Dにより、前記外補剛材3の2つの平行面板部21を外側から内側へ向けて、各々直角に押圧することにより、図1に示すように、前記平行面板部21に内側へ湾曲して緩やかに凹んだ変形部4を形成する。このように形成された変形部4によって、外補剛材3は内補剛材5を介してブレース芯材2に圧着される。その結果ブレース芯材2が圧縮力を受けても、外補剛材3及び内補剛材5によって座屈発生が阻止されることから、圧縮力を支持することができる。しかもブレース組立工程において、内補剛材5を外補剛材3内に挿入し、圧着工程においては、プレス装置を用いて加圧するだけの操作で座屈拘束ブレース1を形成出来ることから、何ら熟練を要することなく単純作業で座屈拘束ブレース1が製造できる。従って、高い生産性が得られるとともに、座屈拘束ブレース1の品質バラツキを生じることがない。しかも硬化性の充填剤を使用しないことから、座屈拘束ブレース1全体が軽量化できるとともに、製造工場、及び施工現場での作業性、安全性が向上する。
【0040】
最終工程で、前記の如く外補剛材3よりも長く形成されるため、外補剛材3の両端から延出する内補剛材5の延出部9に被せた略溝形の止め具11を、ブレース芯材2に溶着することによって、前記延出部9をスライド可能に保持する端部拘束手段10を形成する。
【0041】
本発明の耐力フレームは、前記の如く形成され、製造された座屈拘束ブレース1を構成部材として含むものであり、建築架構体に取付けることにより、水平耐力を負担して耐震強度を向上する。また耐力フレームは図3に示すように矩形状の外周枠7と、この外周枠7の内側に張り出して設けられた取付プレート8とを含み構成される。
【0042】
前記外周枠7は上、下に水平に配される上枠7U、下枠7D及び、この上枠7U、下枠7Dの左右両端部間を繋ぐ垂直な竪枠7V、7Vとからなり、各枠材端部相互が固着され、縦長の矩形状をなす。各々の枠材は断面正方形の角筒状をなし、本形態では50mm角の鋼管を用いている。
【0043】
図4に示すように、竪枠7Vの上端部と上枠7Uの側端部は、双方の枠材端部に形成したスリットに上プレート23を嵌合するとともに溶接して固着している。同様に図6に示すように、竪枠7Vの下端部と下枠7Dの側端部は下プレート24を介して固着している。更に前記上プレート23の上側端部には、水平な上取付板25を固着している。また竪枠7V下部に設けたコ字材26及び下プレート24下部は、水平な下取付板27を固着している。尚上取付板25にはネジ孔28が穿設され、梁(図示せず)に挿通された取付ボルト29をこのネジ孔28に螺着して、耐力フレームの上部を固着できる。他方下取付板27には挿通孔30が穿設され、この挿通孔30に挿通する取付ボルト(図示せず)を用いて耐力フレームの下部を土台、梁などに固着できる。更に図3、5に示すように、一方の竪枠7Vの略中間高さ位置に、内側に向いた縦長の中間プレート31が溶着される。
【0044】
耐力フレームに取り付けられる座屈拘束ブレースは、前記の如く外補剛材3の両端部から、ブレース芯材2、及び内補剛材5の両端部が各々20〜100mm程度食み出す程度、外補剛材3よりも長く形成されている。
【0045】
本形態では、外周枠7の内側に、くの字状に一対の座屈拘束ブレースが配置され、前記上プレート23と中間プレート31との間、及び中間プレート31と下プレート24との間に各々が架け渡される。そして上、下のプレート23、24及び中間プレート31に斜め方向に線状に形成された切込みに、ブレース芯材2の端部を嵌合するとともに溶接してブレース芯材2の両端を固着している。従って建築架構体に取付けられることにより外周枠7に掛かる地震時の水平力を、ブレース芯材2によって確実に支持することができる。更にはブレース芯材2が外補剛材3及び内補剛材5に支持されることから座屈を生じることなく伸縮するため、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて効果的に減衰する。このように、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。なお本形態では、前記上、下のプレート23、24の外周枠7の内側の領域、及び中間プレート31が、ブレース芯材2の端部を固着する取付プレート8を構成している。
【0046】
図9は座屈拘束ブレース1の他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態の端部拘束手段10は、外端部12Aがブレース芯材2に固着されるとともに、ブレース芯材2の長手方向に平行に、しかもブレース芯材2との間に内補剛材5のウェブ6Wの厚さと略同寸法の間隙を隔てつつ、中央方向にのびる延長部12Bを一体に設けた鍵状の係止片12によって構成される。この係止片12の延長部12Bとブレース芯材2とで内補剛材5のウェブ6Wの延出部9のウェブ6Wを挟着することによって、内補剛材5とブレース芯材2との密着状態を維持している。
【0047】
本形態のように、鍵状の係止片12によって内補剛材5の延出部9を拘束する端部拘束手段10を構成すると、単純な部品構成によって構造をシンプル化でき、しかもブレース芯材2と内補剛材5の相対移動を確保しつつ、内補剛材5が遊離して単独で変形することを有効に防止できる点で好ましい。
【0048】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する斜視図である。
【図2】その断面図である。
【図3】本発明の耐力フレームを例示する斜視図である。
【図4】その要部の拡大斜視図である。
【図5】他の要部の拡大斜視図である。
【図6】更に他の要部の拡大斜視図である。
【図7】(A)(B)(C)は、座屈拘束ブレースの製造工程を示す略図である。
【図8】耐力フレームの繰返し水平荷重試験の変形履歴を示すグラフである。
【図9】座屈拘束ブレースの他の実施形態を例示する斜視図である。
【図10】従来例の斜視図である。
【図11】従来例の繰返し水平荷重試験の変形履歴を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 座屈拘束ブレース
2 ブレース芯材
3 外補剛材
4 変形部
5 内補剛材
6 溝形材
6F フランジ
6W 向けてウェブ
7 外周枠
8 取付プレート
9 延出部
10 端部拘束手段
11 止め具
12 係止片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、
前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、
負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記端部拘束手段は、前記内補剛材の延出部を覆う略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することによって構成され、
止め具とブレース芯材とで、延出部をスライド可能に嵌合した状態で拘束することを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記端部拘束手段は、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって構成され、
前記延出部を係止片とブレース芯材とで挟着した状態で拘束することを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記外補剛材は、金属を用いて形成されるとともにブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、
この変形部によって、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、
前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、
前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着することを特徴とする請求項4記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであるとともに、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、
座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする耐力フレーム。
【請求項1】
構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に添設してブレース芯材を補強する内補剛材と、前記ブレース芯材及び内補剛材に外挿して両者を密に束ねるとともにブレース芯材を補強する筒状の外補剛材とを具え、
前記内補剛材は、その端部が外補剛材から延出する長さを有し、
負荷を受けてひずみ変形する際、外補剛材から延出した内補剛材の延出部がブレース芯材から遊離することを阻止して、内補剛材がブレース芯材と密着した状態を維持する端部拘束手段を設けたことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記端部拘束手段は、前記内補剛材の延出部を覆う略溝形状の止め具をブレース芯材に固着することによって構成され、
止め具とブレース芯材とで、延出部をスライド可能に嵌合した状態で拘束することを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記端部拘束手段は、ブレース芯材の端部側から中央方向に向けてのび、前記延出部に係合する鍵状の係止片によって構成され、
前記延出部を係止片とブレース芯材とで挟着した状態で拘束することを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記外補剛材は、金属を用いて形成されるとともにブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、
この変形部によって、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、
前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、
前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着することを特徴とする請求項4記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであるとともに、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、
座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする耐力フレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−255654(P2008−255654A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98634(P2007−98634)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
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