説明

廃排水送水システム

【課題】
屋内各所から排出される廃排水を排水枝管により回収し、屋外に設けられている排水主管と連結させ、さらに屋外点検枡も小型化することにより、システムの小型化を計ることを目的としている。
【解決手段】
(1)排水枝管を配設するため屋内の壁面又は床面に設けられる開口部付近で、該管の排水方向以外には蓋栓がなされているとともに、(2)排水枝管又は排水主管の材端部には熱膨張を吸収する管継手が設けられ、(3)屋外点検枡は、排水主管径と同径以下の配管と、該配管と一体的に接合された枡とからなる小口径枡で構成されており、(4)前記廃排水槽への流入口には悪臭や虫及び小動物の侵入を防ぐための封止弁と、封止弁を枢止するヒンジ部とからなる封口装置を設けることを特徴とする廃排水送水システムを提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃排水送水システムに関する技術であり、特に、飲料工場等における特殊条件の廃排水を送水する際の技術である。尚、本明細書及び特許請求の範囲、要約書、図面における「廃排水」とは「廃水」及び「排水」を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
工場等大型施設の廃排水送水設備においては、屋内の各所から排出される廃排水を図11に示すような塩ビ管や鋼管等の管を通して、屋外に配設されている枡等まで一箇所に自然流下させ、その後、その枡から屋外の廃水処理施設まで送水して、廃排水を処理していた。
【0003】
また、特許文献1では図12に示すように、各施設から排出される廃排水を、屋外に設けられている枡まで送水し、当該枡から一本のラインで廃水処理施設まで圧送していた。この枡には複数の施設から大量の廃排水が送水されてくるため、それらを処理できるよう、巨大なものを使用する必要があり、主にコンクリート製排水槽が使用されてきた。
【0004】
又、飲料水の製造過程で生じる廃排水は高温である場合が多いため、特許文献2では熱膨張を吸収する管継手が考案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−185518号公報
【特許文献2】実用新案登録第3112766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11に示すようなシステムを使用して飲料工場等から排出される高温の廃排水を流すと、蓋がされていないために廃排水の水蒸気が配管との接続口から屋内に噴出するという問題点があった。
【0007】
また、大量の廃排水が流れてくる枡において、異質な材料で構成される管と枡とを接合するためには、まず枡の壁面に穴をあけて管を通した後に、その枡に開けられた穴をモルタルで補填するという作業が必要であった。このような接合方法では、管が熱膨張等した場合にモルタルにヒビが入り、地中に廃排水が漏れるおそれもあった。管と枡を鋼で構成しようとしても、上記漏れの問題は回避できるが、巨大な金属枡が必要となるため、特注品となり、結果として部材の費用が高くなるため、使用されていないのが現状である。
【0008】
そこで本発明では上記問題を解決するべく、屋内各所から排出される廃排水を各箇所ごとに分割して回収し、屋外に設けられている排水主管と連結させ、さらに屋外点検枡を小型化することにより、システムの小型化を計ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
屋内生産機器からの廃排水を、排水枝管を介して排水主管に流入させ、該主管に所定間隔で屋外点検枡を設けつつ屋外の廃排水槽へ廃排水を集合させた後に廃水処理施設へ圧送する廃排水送水システムであって、
(1)排水枝管を配設するため屋内の床面又は壁面に設けられる開口部付近で、該管の排水方向以外には蓋栓がなされているとともに、
(2)排水枝管又は排水主管の材端部には管継手が設けられ、該管継手には外周ハウジングとゴムシーリングとを設け、外周ハウジングにはゴムシーリングを締め付ける締付調整手段を設けることによって、ゴムシーリングを圧接して管周面を密封するとともに、管の熱伸縮がある場合には該ゴムシーリングの摺動を許容し、管継手の両側には管の長手方向の所定以上の移動を阻止する一対の移動阻止フランジを設けたことを特徴とする管材の熱伸縮を吸収する管継手を設け、
(3)前記屋外点検枡は、排水主管径と同径以下の配管と、該配管と接合された枡とからなる小口径枡で構成されており、
(4)前記廃排水槽への流入口には悪臭や虫及び小動物の侵入を防ぐための封止弁と、封止弁を枢止するヒンジ部とからなる封口装置を設けることを特徴とする廃排水送水システムを提供することにより、前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は屋内の排水設備を分割して、一箇所に集まる廃排水量を少なくしている。それによって各設備の小型化をすることができ、金属製、特にステンレス製の配管及び枡を使用することが可能になった。そのため、配管から枡等の部材を工場生産し、現場で組み立てることにより、排水設備工事を容易にせしめる。また、コンクリート枡と金属製配管等、異種の材質の部材を連結することによる施工時の労力を削減し、さらに排水漏れの危険を低減できる。
【0011】
また、上記(1)のように、排水枝管を配設するため屋内の壁面又は床面に設けられる開口部付近で、該管の排水方向以外には蓋栓がなされているため、蒸気が開口部から噴出することはない。また、工場内へのねずみ等の小動物や虫等の侵入を防ぐこともできる。
【0012】
さらに、上記(2)に記載の管継手は熱伸縮を吸収するため、他の管等にひずみや歪みを生じさせない。したがって、廃排水漏れの危険が低減される。
【0013】
加えて、上記(3)の小口径枡でなる屋外点検枡を使用することにより、金属製、とりわけステンレス製の小口枡を使用することができ、排水主管と同種の材質で枡を構成することができるようになった。そのため、容易に排水主管と点検枡とを接続でき、その接続部において漏れが生じることはない。さらに、廃排水に含まれる化学成分により、腐食ガスが発生する場合があるが、上記のようにステンレスで排水枝管や排水主管を構成することにより、腐食を防ぐことができる。
【0014】
上記(4)の封口装置を設けることにより、廃排水槽から虫や小動物等の異物混入を防ぐことができ、悪臭の防止にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る最良の実施の形態について、図面を元に説明する。図1は本発明の概要を示した図である。図2は排水枝管を配設するため屋内の床面に設けられる開口部付近を示すものである。図3は熱伸縮を吸収する管継手の図である。図4は管継手3の構成部材である締付調整手段38を示した図である。図5は排水主管と排水枝管および屋外点検枡の取り付け構造を示す平面図である。図6は屋外点検枡の拡大図である。図7は屋外点検枡の埋設状態ついての説明図である。図8は廃排水槽への排水流入口に設けられる封口装置の図である。
【0016】
図1に基づき、本発明のフローを説明する。まず、生産機器15等から排出される廃排水は排水枝管12を通って図2に示される接続部10を介し、屋外に埋設されている排水主管11へと送水される。排水主管11には所定の間隔で図3に示される屋外点検枡2が設けられている。こうして各排水主管11から集められた廃排水は廃排水槽6に貯留される。廃排水槽6の流入口には封口装置5が設けられている。廃排水槽6に貯留された廃排水は廃水処理施設7へとポンプ等により圧送され、廃水処理される。
【0017】
尚、本発明において「排水枝管」とは生産機器等から「排水主管」までの配管をいうものとし、「排水主管」とは単数若しくは複数の「排水枝管」が統合して廃排水槽まで配設される配管をいうものとする。排水主管11及び排水枝管12は自然流下しやすいよう、勾配を付けることが望ましい。無論、ポンプ等で圧送することも可能である。
【0018】
接続部10について図2を元に説明する。接続部10は屋内の生産機器から排出される廃排水を床下等の排水枝管12に圧送するためのものである。特に、排水枝管12を配設するため屋内の床面又は壁面に設けられる開口部付近16に設置される。そして接続部10の構成として、排水枝管の排水方向以外には蓋栓15がなされており、乾式(床排水を行わない方式をいう。)排水接続方式で構成されている。排水枝管12を予め生産機器14まで配設しておき、また蓋栓15付の接続部10を介して屋内外の排水枝管12と連結することにより、排水を漏らすことなく、また、蒸気を屋内に噴出することなく、排水主管11まで圧送することができる。
【0019】
次に管継手3について、図3及び図4を元に説明する。管継手3は特許文献2で開示したとおり、出願人らが発明したものである。排水枝管12及び排水主管11の材端部には熱膨張を吸収する管継手3が設けられる。該管継手3には外周ハウジング31と内部にゴムシーリング37とを設けている。外周ハウジング31にはゴムシーリング37を締め付ける締付調整手段38を設けることによって、ゴムシーリング37を圧接して管周面を密封するとともに、管の熱伸縮がある場合には該ゴムシーリング37の摺動を許容し、管継手の両側には管の長手方向の所定以上の移動を阻止する一対の移動阻止フランジ32,33を設けている。そして、連結ボルト34、固定ナット35、36により移動阻止フランジ32,33の距離関係を調節する。
【0020】
締付調整手段38の具体的構成は、一方に締め付けボルト取付部41を設け、他方に締付けボルト45のためのナット部42を設ける。前記ボルト取付部41は、ロッド43を巻き込んで折り返し、切断端部を再び円筒外周面に溶接し、ロッド43には一対のボルト取付孔部431が設けてある。同様に、前記ナット部42は、切断端部でロッド44を巻き込んで折り返し、切断端部を再び円筒外周面に溶接し、ロッド44には一対のナット441が設けてある。尚、管継手3の詳細は特許文献2に示す通りである。
【0021】
次に屋外点検枡2について、図5乃至7を元に説明する。本発明においては、排水主管11と排水枝管12との連結部に屋外点検枡2を設置するほか、排水主管11には所定の間隔で屋外点検枡2を取り付ける。
【0022】
また、排水主管11と屋外点検枡2との連結部において漏れが生じないように、ステンレス製で構成することがより望ましい。同一の材質にすることにより、配管の腐食等を防ぐことができるからである。図5に示すように、排水主管11と排水枝管12との連結部においては、排水主管11の排水と合流し易いよう、排水枝管12を排水主管11に対して斜めに溶接することが望ましい。
【0023】
図6に示すように、屋外点検枡2は排水主管径と同径以下の配管部21と、配管部の上部にあって該配管と一体的に接合された枡22とからなる小口径枡で構成されている。
【0024】
そして、図7に示すように、排水主管11は地中に埋設されるので、埋設深さに応じた配管部21及び枡部22を設ける。地面との境界には防護蓋や内蓋を設け、異物の混入を防ぐことができる。
【0025】
次に廃排水槽6への流入口に設けられる封口装置5について図8に基づき説明する。封口装置5は配管と内接する管部55と廃排水槽6へ流入する流入口54、廃排水槽6の壁面と固定される鍔部53、そして封止弁51と封止弁51を開閉するためのヒンジ部52とからなる。流入口54の先端部は端部角度Aが望ましくは60°となるように設けることができる。無論、垂直でも可能である。そして、流勢により開弁して廃排水は廃排水槽6に流入し、廃排水の流通がない場合、封止弁51は重力により先端部に当接するように形成している。これにより、廃排水の流通がない場合、封止弁51は閉口しているので、小動物や羽虫等の虫の侵入を防ぐとともに、防臭効果もある。
【実施例1】
【0026】
排水主管11と排水枝管12との連結部においては、排水主管の廃排水と合流し易いよう、排水枝管12を排水主管11に対して斜めに溶接することが望ましいことは上述のとおりであるが、その排水枝管12と排水主管11との間隔についての実施例を説明する。
【0027】
図9に示す排水主管11、排水枝管12との連結部において、排水主管径に応じたL、L1、及び屋外点検枡径の大きさを表1に示す値で設けることができる。
【0028】
【表1】

【実施例2】
【0029】
図10は排水主管11及び排水枝管12の配設例を示した図である。この図から明らかなとおり、本発明において、排水主管11を一つの排水送水システム中に複数設け、廃排水槽6へ流入させることができる。このように一つの工場棟内で範囲を分割して排水主管に流れる廃排水の量を軽減しているのである。尚、本図面内においては、各エリアから集められた廃排水が一つの廃排水槽6に集合した後に廃水処理施設7へと圧送されているが、無論、そのまま廃水処理施設7へと圧送されても構わない。
【実施例3】
【0030】
さらに、図10に示すように、排水枝管12には、トラップ13を設けて、小動物や虫の侵入を防止することができる。特に、屋内に設けられている接続部10と屋外用点検枡2の間に設けることができる。トラップとは、配管がU字に曲げられたり、枡が形成されるなど、一時、排水を滞留させることができるものをいい、既存のものを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の概要を示した図
【図2】屋内の排水枝管を屋外の排水枝管に接続するため屋内の床面に設けられる開口部付近を示す図
【図3】本発明にかかる熱伸縮を吸収する管継手の図
【図4】管継手の構成部材である締付調整手段の図
【図5】排水主管と排水枝管および屋外点検枡の平面図
【図6】屋外点検枡の拡大図
【図7】屋外点検枡の埋設状態ついての説明図
【図8】廃排水槽への排水流入口に設けられる封口装置の図
【図9】排水主管と排水枝管の間隔に関する実施例の図
【図10】排水主管と排水枝管の配設事例を示した図
【図11】従来の床面における廃排水送水設備の図
【図12】従来の廃排水送水システムを示す図
【符号の説明】
【0032】
2 屋外点検枡
3 伸縮継手
5 封口装置
6 廃排水槽
7 廃水処理施設
10 接続部
11 排水枝管
12 排水主管
14 生産機器
15 蓋栓
16 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内生産機器からの廃排水を、排水枝管を介して排水主管に流入させ、該主管に所定間隔で屋外点検枡を設けつつ屋外の廃排水槽へ廃排水を集合させた後に廃水処理施設へ圧送する廃排水送水システムであって、
排水枝管を配設するため屋内の床面又は壁面に設けられる開口部付近で、該管の排水方向以外には蓋栓がなされているとともに、
排水枝管又は排水主管の材端部には管継手が設けられ、該管継手には外周ハウジングとゴムシーリングとを設け、外周ハウジングにはゴムシーリングを締め付ける締付調整手段を設けることによって、ゴムシーリングを圧接して管周面を密封するとともに、管の熱伸縮がある場合には該ゴムシーリングの摺動を許容し、管継手の両側には管の長手方向の所定以上の移動を阻止する一対の移動阻止フランジを設けたことを特徴とする管材の熱伸縮を吸収する管継手を設け、
前記屋外点検枡は、排水主管径と同径以下の配管と、該配管と接合された枡とからなる小口径枡で構成されており、
前記廃排水槽への流入口には悪臭や虫及び小動物の侵入を防ぐための封止弁と、封止弁を枢止するヒンジ部とからなる封口装置を設けることを特徴とする廃排水送水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−196178(P2008−196178A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31510(P2007−31510)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(392035972)株式会社ヤマト (21)
【出願人】(504238194)株式会社日本キャンパック (8)
【出願人】(390037707)オーエスマシナリー株式会社 (15)
【Fターム(参考)】