説明

建物の防火構造

【課題】 建物周辺の火災が玄関ポーチを介して建物の内部に延焼するのを防止すること。
【解決手段】 建物1の本体屋根20Aの前面に玄関ポーチ30の付帯屋根30Aを接続した建物1の防火構造であって、本体屋根20Aの前面と付帯屋根30Aとの防火面53Aが設けられてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユニット建物等の建物の防火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット建物等の建物において、特許文献1に記載の如く、建物の本体屋根の前面に玄関ポーチの付帯屋根を接続してなるものがある。
【特許文献1】特許3176466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、建物周辺に発生した火災が玄関ポーチに引火したとき、玄関ポーチの付帯屋根から本体屋根の前面、小屋裏を介して建物の内部に延焼するおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、建物周辺の火災が玄関ポーチを介して建物の内部に延焼するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、建物の本体屋根の前面に玄関ポーチの付帯屋根を接続した建物の防火構造であって、本体屋根の前面と付帯屋根との接続部に防火面が設けられてなるようにしたものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記防火面の一部が換気口とされ、火災発生時にこの換気口を閉鎖する防火ダンパが設けられてなるようにしたものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記本体屋根が、前記付帯屋根の屋根面を該本体屋根の屋根面につなげるサブパーツを設けられてなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1)
(a)建物周辺に発生した火災が玄関ポーチに引火したとき、玄関ポーチの付帯屋根から本体屋根の前面への延焼が防火面の存在により防止され、ひいては本体屋根の小屋裏、建物の内部への延焼が防止される。
【0009】
(請求項2)
(b)防火面の一部が換気口とされているから、通常は、付帯屋根に覆われている本体屋根の前面に設けられて雨水の浸入のない大開口の換気口を介して、本体屋根の小屋裏を換気できる。
【0010】
火災が発生したときには、防火ダンパが上述の換気口を閉鎖し、この換気口から本体屋根の小屋裏に入る火災の延焼を防止する。
【0011】
(請求項3)
(c)本体屋根が、付帯屋根の屋根面を本体屋根の屋根面につなげるサブパーツを設けられる。従って、本体屋根と付帯屋根の各屋根形状の自由度を確保しながら、建物の屋根全体では、それらの本体屋根と付帯屋根をサブパーツの介在によって調和させた納まりを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は建物を示す模式斜視図、図2は建物に設けた玄関ポーチを示す断面図、図3は図2のIII部拡大図、図4は建物の本体屋根の前面に設けた防火構造を示す分解斜視図、図5は防火ダンパを示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【実施例】
【0013】
図1に示す建物1は、基礎2の上に構築されたユニット建物であり、複数の建物ユニット10を隣接配置し、各建物ユニット10の上に本体屋根ユニット20を搭載し、それら本体屋根ユニット20によって切妻の本体屋根20Aを形成する。
【0014】
尚、建物ユニット10は、壁枠組11の外面に防火性壁面材12を貼り設けられる。本体屋根ユニット20は、屋根枠組21の上に防火性屋根面材22を敷き設けられる。建物ユニット10の壁枠組11の上枠材11Aの上に、本体屋根ユニット20の屋根枠組21の下枠材21Aがボルト止めされる。
【0015】
建物1の正面には玄関ポーチ30が設けられる。玄関ポーチ30は、図2に示す如く、建物ユニット10の前面の壁枠組11と、2本の柱31、31の上端部のそれぞれに架け渡される鋼製梁32の上に、軒天受材33A、三角トラス33B等からなる屋根枠組33を支持し、屋根枠組33の上に防火性屋根面材34を敷き設け、切妻の付帯屋根30Aを形成する。
【0016】
建物1は、本体屋根20Aの前面に玄関ポーチ30の付帯屋根30Aを接続する。即ち、本体屋根ユニット20の屋根枠組21の下枠材21A、外周枠材21Bの前面に、玄関ポーチ30の屋根枠組33の三角トラス33Bが設置される。
【0017】
建物1は、本体屋根20Aの切妻の棟と、付帯屋根30Aの切妻の棟を互いに直交配置している。そして、本体屋根20Aに、付帯屋根30Aの屋根面(屋根面材34)を本体屋根20Aの屋根面(屋根面材22)につなげる左右一対のサブパーツ40を設ける。サブパーツ40は、図2、図4に示す如く、左右2個の屋根枠組41からなり、屋根枠組41の上に防火性屋根面材42を敷き設け、切妻のサブ屋根40Aを形成する。サブ屋根40Aは、サブ屋根40Aの棟の両側に三角形状の屋根面(屋根面材42)を形成する。サブ屋根40Aの屋根面(屋根面材42)は、付帯屋根30Aの屋根面(屋根面材34)に面一をなし、付帯屋根30Aの側から本体屋根20Aの側に延在して本体屋根20Aの屋根面(屋根面材22)に突き当たる。
【0018】
しかるに、建物1にあっては、火災の延焼を防止するため、本体屋根20Aの前面と、付帯屋根30Aとの接続部に以下の防火構造を具備する。
【0019】
建物1は、図4に示す如く、本体屋根20Aの前面において、本体屋根ユニット20の屋根枠組21の下枠材21A、外周枠材21Bと、サブパーツ40の屋根枠組41の前面に、OSB(オリエンテッド ストランド ボード)51、胴縁52を介して、アクリル鋼板53を貼り付ける。尚、アクリル鋼板53の下部には、本体屋根20Aの前面から建物ユニット10の壁面材12の外側に渡る水切54が設けられる。ここで、アクリル鋼板53は、本体屋根20Aの前面と付帯屋根30Aとの接続部に設けられる防火面53Aを構成する。
【0020】
建物1は、図3、図4に示す如く、本体屋根ユニット20の屋根枠組21の外周枠材21Bの長手方向に沿う複数位置のそれぞれに換気口60を形成する切欠61Aを設ける。屋根枠組21の外周枠材21Bに貼り設けられるOSB51、胴縁52、アクリル鋼板53のそれぞれにも、換気口60を形成する切欠61B、61C、61Dを設ける。換気口60は、玄関ポーチ30の付帯屋根30Aの屋根裏に開口し、本体屋根20Aの小屋裏と付帯屋根30Aの屋根裏を通気(図3の矢印)可能にし、本体屋根20Aの小屋裏を換気する。
【0021】
建物1は、火災発生時に換気口60を閉鎖する防火ダンパ70を設ける。防火ダンパ70は、アクリル鋼板53の切欠61D(換気口60)に設置される。
【0022】
防火ダンパ70は、図5に示す如く、鋼板からなる、ベース板71とカバー板72をスポット溶接等により貼り合せ、アクリル鋼板53の切欠61D(換気口60)に対応する開口71A、72Aをそれらのベース板71、カバー板72に設け、ベース板71とカバー板72の間に形成される間隙であって開口71A、72Aの上部にシャッター73を収容し、ベース板71の外面にかしめ止めした形状記憶合金製の止め具74の屈曲形状の先端ストッパ部74Aを上述のシャッター73の下縁に係止するものである。防火ダンパ70は、カバー板72をアクリル鋼板53の前面に添設させて取付けられるとき、ベース板71とカバー板72の開口71A、72Aをアクリル鋼板53の切欠61D(換気口60)に合致させる。通常は、止め具74の先端ストッパ部74Aが上述の屈曲形状をなし、シャッター73は開口71A、72Aの上部に保持され、アクリル鋼板53の切欠61D(換気口60)をそれらの開口71A、72Aにより開放する。
【0023】
火災が発生して止め具74が高温にさらされると、止め具74の先端ストッパ部74Aは直線状の記憶形状に復元してシャッター73との係止を解除され、シャッター73が自重により落下してベース板71、カバー板72の開口71A、72Aを閉じ、アクリル鋼板53の切欠61D(換気口60)を閉鎖する。これにより、換気口60を介する火災の延焼が防止される。
【0024】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)建物1周辺に発生した火災が玄関ポーチ30に引火したとき、玄関ポーチ30の付帯屋根30Aから本体屋根20Aの前面への延焼が防火面53Aの存在により防止され、ひいては本体屋根20Aの小屋裏、建物1の内部への延焼が防止される。
【0025】
(b)防火面53Aの一部が換気口60とされているから、通常は、付帯屋根30Aに覆われている本体屋根20Aの前面に設けられて雨水の浸入のない大開口の換気口60を介して、本体屋根20Aの小屋裏を換気できる。
【0026】
火災が発生したときには、防火ダンパ70が上述の換気口60を閉鎖し、この換気口60から本体屋根20Aの小屋裏に入る火災の延焼を防止する。
【0027】
(c)本体屋根20Aが、付帯屋根30Aの屋根面を本体屋根20Aの屋根面につなげるサブパーツ40を設けられる。従って、本体屋根20Aと付帯屋根30Aの各屋根形状の自由度を確保しながら、建物1の屋根全体では、それらの本体屋根20Aと付帯屋根30Aをサブパーツ40の介在によって調和させた納まりを形成できる。
【0028】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は建物を示す模式斜視図である。
【図2】図2は建物に設けた玄関ポーチを示す断面図である。
【図3】図3は図2のIII部拡大図である。
【図4】図4は建物の本体屋根の前面に設けた防火構造を示す分解斜視図である。
【図5】図5は防火ダンパを示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 建物
20A 本体屋根
30 玄関ポーチ
30A 付帯屋根
40 サブパーツ
53A 防火面
60 換気口
70 防火ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の本体屋根の前面に玄関ポーチの付帯屋根を接続した建物の防火構造であって、
本体屋根の前面と付帯屋根との接続部に防火面が設けられてなる建物の防火構造。
【請求項2】
前記防火面の一部が換気口とされ、火災発生時にこの換気口を閉鎖する防火ダンパが設けられてなる請求項1に記載の建物の防火構造。
【請求項3】
前記本体屋根が、前記付帯屋根の屋根面を該本体屋根の屋根面につなげるサブパーツを設けられてなる請求項1又は2に記載の建物の防火構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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