説明

建築用構成材の接続構造

【課題】建築用構成材を交差させて隅部又は交差部を形成するように接続させる建築用構成材の接続構造を提供する。
【解決手段】建築用構成材4Dの接続構造は、少なくとも上フランジ42と下フランジ43と、立ち上がり部41を備える建築用構成材4Dの長手方向端部同士を、複数の挿入片と補強片が立体的に組み合わされた構成を有する接続部材5Dにより、隅部を形成する。建築用構成材4Dは、少なくとも下端が解放する隙間を介して対向する立ち上がり部41を有し、立ち上がり部41の上端から延出して隙間を介して対向する第1上フランジと第2上フランジとからなる上フランジ、及び立ち上がり部41の下端から左右方向へ延出する下フランジ43からなり、建築用構成材4D,4Dを、隅部を形成するように配置すると共に、立ち上がり部41及び上フランジ42のそれぞれの隙間に接続部材5Dの挿入片と補強片を挿入して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用構成材を交差させて隅部又は交差部を形成するように接続させる建築用構成材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に用いられる構成材のコーナー部分の接続は、プレートでウェブ、上フランジ及び下フランジを挟み込むようにしてボルト・ナット等の固定具で留める構造が知られている。例えばC型鋼材からなる構成材のコーナー部分を連結する構造が提案されている(例えば特許文献1など)。
【0003】
特許文献1は、一方のC型鋼材に対して他方のC型鋼材を直交状態に突き合わせて連結させるものであり、C型鋼材の内側に当て板を、外側に連結用板を臨ませ、これら当て板と連結用板によってC型鋼材の開口部の縁部を挟み付けて接続するものであって、C型鋼材にボルト挿通孔を設ける手間が無く接続作業がいくらか軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−42002号公報(段落番号0043〜0044,図14〜15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1では、C型鋼材の開口部である一側面のみを当て板と連結用板で挟み付けるので、強固な締め付けが必要となるが、容易には十分な接続強度が得られず、また、2枚の板材で挟み込んでいるだけなので、長期間の使用により次第にC型鋼材と2枚の板材の位置関係がずれてしまうおそれがある。さらに、C型鋼材の開口部内側に当て板を配して連結用板でC型鋼材を挟み込んでボルト等で締着する作業は非常に煩雑である。
そこで、本発明では上記問題点に鑑み、接続強度を十分に確保でき且つ作業が容易な建築用構成材の隅部又は交差部の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、少なくとも上フランジと下フランジと、立ち上がり部を備える建築用構成材の長手方向端部同士を、複数の挿入片と補強片が立体的に組み合わされた構成を有する接続部材により、隅部を形成するように接続した接続構造において、建築用構成材は、少なくとも隙間を介して対向する第1立ち上がり部と第2立ち上がり部とからなる立ち上がり部を有し、第1立ち上がり部及び/又は第2立ち上がり部の上端から延出して隙間を介して対向する第1上フランジと第2上フランジとからなる上フランジ、及び第1立ち上がり部及び/又は第2立ち上がり部の下端から延出する下フランジからなり、建築用構成材を、隅部を形成するように配置すると共に、配置した各建築用構成材の立ち上がり部及び上フランジのそれぞれの隙間に接続部材の挿入片と補強片を挿入して接続することを特徴とする建築用構成材の接続構造に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明の建築用構成材の接続構造は、隅部を形成するように配置した建築用構成材の立ち上がり部及び上フランジのそれぞれのの隙間に接続部材の挿入片と補強片を位置させて接続するので、基本的には接続時に接続箇所をプレートで挟み込んでからボルト締めするような煩雑な作業を必要とせずに容易に隅部の接続を行うことができる。また、接続部材は複数の挿入片と補強片を立体的に組み合わせて形成したので、大きな負荷が加わった場合にも変形し難くなり、接続強度の補強にも貢献する。
また、上フランジ及び/又は下フランジを有するので、容易に断熱材、遮音材などの機能材や内・外装材等を配置・固定することができる。
【0008】
さらに、隅部を形成するように配置した建築用構成材に跨るように補強部材を取り付けた場合、接続強度を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)隅部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)その底面部、(c)用いた建築用構成材の隅部以外での断面図、(d)隅部における構成材の断面図、(e)他の接続部材の一例を示す斜視図、(f)他の接続部材の一例を示す斜視図、(g)他の建築用構成材の一例を示す断面図、(h)他の建築用構成材の一例を示す断面図である。
【図2】(a)建築用構成材の上フランジに跨るように補強部材を設けた隅部における接続構造の一例を接続部材を欠載して示す斜視図、(b)建築用構成材の立ち上がり部の内側に跨るように補強部材を設けた隅部における接続構造の一例を接続部材を欠載して示す斜視図、(c)建築用構成材の立ち上がり部の外側に跨るように補強部材を設けた隅部における接続構造の一例を接続部材を欠載して示す斜視図、(d)立ち上がり部の内側及び外側に跨るように補強部材を設けた建築用構成材の断面図である。
【図3】(a)建築用構成材の下フランジの重なり部分の一方を切り欠いた隅部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)その底面部、(c)建築用構成材の下フランジの重なり部分の双方を斜めに切り欠いた隅部における接続構造の一例を示す斜視図である。
【図4】建築用構成材の上フランジにも隙間を設けて接続部材を挿入した接続構造の一例を示す斜視図である。
【図5】(a)縦方向の隅部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)他の接続部材の一例を示す斜視図である。
【図6】(a)縦方向の交差部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)他の接続部材の一例を示す斜視図である。
【図7】(a)横方向の交差部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)用いた接続部材を示す斜視図、(c)建築用構成材の上フランジに跨るように補強部材を設けた横方向の隅部における接続構造の一例を接続部材を欠載して示す斜視図である。
【図8】(a)〜(l)建築用構成材のバリエーションを示す接続部分を除く主要部分の断面図である。
【図9】(a)〜(d)隙間形成部材を介して組み合わせて一体化する構成材のバリエーションを示す断面図である。
【図10】(a)第2接続部材の一例を示す斜視図、(b)その第2接続部材とほぼ同様の構成を有する補強部材を用いた横方向の交差部における接続構造の一例を示す斜視図である。
【図11】(a)他の第2接続部材を用いた縦方向の隅部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)用いた第2接続部材を示す斜視図である。
【図12】(a)他の第2接続部材を用いた縦方向の隅部における接続構造の一例を示す斜視図、(b)用いた第2接続部材が構成材の隙間に挿入される部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における建築用構成材(以下、単に構成材という)4は、図4に用いた構成材4Dであるが、参考例としてその他の図1(c),(g),(h)に示す構成材4A〜4C、図8(g)〜(i)に示す構成材4I〜4Kのように一枚の金属板を成形・加工した一部材からなる構成でも良いし、後述するようなそれぞれ別々に成形・加工された別部材(2,3)を、ボルト・ナット、ビス等による締着、溶接、かしめ等の各種一体化手段により一体化したものでも良く、少なくとも上フランジ42又は下フランジ43と、立ち上がり部41を備え、上フランジ42及び立ち上がり部41にはそれぞれ隙間を備える構成である。尚、図面上には符号4は付記していないが、前記構成材を総称的に指す説明にて用いる。後述する接続部材5についても同様である。
【0011】
図1(c)に示す構成材4Aにて説明すると、構成材4Aは、少なくとも隙間を介して対向する第1立ち上がり部111と第2立ち上がり部121とからなる立ち上がり部41を有し、第1立ち上がり部111及び/又は第2立ち上がり部121の上端から左右方向へ延出する上フランジ42、または第1立ち上がり部111及び/又は第2立ち上がり部121の下端から左右方向へ延出する下フランジ43の何れか若しくは両方からなる構成である。
この構成材4Aは、一部材からなり、立ち上がり部41は、第1立ち上がり部111と第2立ち上がり部121とが隙間を介して対向状に重合(左右に並列)して形成されている。上フランジ42は、第1立ち上がり部111の上端から左右方向の一方側へ延出する第1上フランジ112に第2立ち上がり部121の上端から左右方向の一方側へ延出する第2上フランジ122が被覆するように重合(上下に積層)して形成されている。下フランジ43は、第1立ち上がり部111の下端から左右方向の一方側へ延出する第1下フランジ113と第2立ち上がり部の下端から左右方向の他方側へ延出する第2下フランジ123とが同一平面上に並列して形成されている。
【0012】
尚、前述のように前記構成材4は、図4に用いた構成材4Dのように立ち上がり部41と上フランジ42と下フランジ43で形成され、上フランジ42及び立ち上がり部41にはそれぞれ隙間を備える構成であるが、参考例である図1(c)に示す構成材4Aや図1(h)に示す構成材4Cでは上フランジ42に隙間がなく、図1(g)に示す構成材4Bは、立ち上がり部41と下フランジ43のみで形成され、図8(i)に示す構成材4Kは、立ち上がり部41と上フランジ42のみで形成されている。
また、上フランジ42は、図4に用いた構成材4Dや参考例である図1(c)に示す構成材4Aでは、左右方向の一方側のみに形成されるが、参考例である図1(h)に示す構成材4Cは左右方向の両側に形成されている。下フランジ43は、参考例である図1(c),(g),(h)に示す構成材4A〜4Cや実施例である図4に用いた構成材4Dのように左右方向の両側に形成されるものでも良いし、参考例である図8(g),(h)に示す構成材4I,4Jのように左右方向の何れか一方のみに形成されるものでも良い。
さらに、上フランジ42は、各参考例では、第1上フランジ112に第2上フランジ122が被覆するように重合(上下に積層)して形成されているが、実施例である図4に用いた構成材4Dでは、第1上フランジ112と第2上フランジ122が隙間を介して対向状に重合して形成した。
また、図面の記載に応じて立ち上がり部41の上端に形成されるものを上フランジ42、立ち上がり部41の下端に形成されるものを下フランジ43として説明したが、施工態様によっては構成材4を上下を逆にしたり、横にして用いるようにしても良く、その場合は前述の説明は実際の位置関係とは一致しないが、後述する特殊なケースを除いて立ち上がり部41に形成される隙間の開放部側を下フランジ43、閉塞部側を上フランジ42とする。
【0013】
また、前記各構成材4の隙間に挿入する接続部材5は、前記構成材4の立ち上がり部41の隙間に挿入される複数の挿入片51,51が立体的(三次元的)に或いは平面的(二次元的、一面状)にL字状、T字状、十字状等に組み合わされた構成であり、構成材4の配置態様に応じて各種形状のものが選択される。
即ち複数の構成材4が交差するような配置、接続とは、図1〜3や図5に示すように隅部を形成する場合と、図6や図7に示すように交差部を形成する場合の両方を含み、隅部又は交差部における接続は、各構成材4の長手方向端部同士を接続しても良いし、端部と中間部を接続しても良い。また、隅部又は交差部は、直角に交わっていても良いし、斜めに交わっていても良く、角度を有して隅部又は交差部を形成していれば良い。
この接続部材5の材質は、各種金属、FRP等の複合材料等、公知の各種材質が挙げられ、所望の接続強度が得られるものであれば特に限定しない。また、接続部材5の挿入片51と構成材4の立ち上がり部41との固着はボルト・ナット等による締着、ビス止め、溶接、接着剤による接着、かしめ等が挙げられるが、所要の強度が得られれば公知の何れの方法でも良い。
【0014】
参考例である図1(a),(b)に用いた接続部材5Aは、矩形状の縦片である挿入片51,51が立体的にL字状に組み合わされ、図1(e)に示す接続部材5Bは、さらに挿入片51,51の下端から内側へ延在する三角形状の水平片である補強片52が設けられている。図1(f)に示す接続部材5Cは、さらに挿入片51,51の下端から外側へ延在する補強片53が設けられている。このように補強片52,53を接続部材5B,5Cに対して略直角方向の面で形成すると、接続部材5B,5Cの変形を防ぐことができる。また、挿入片51には、予めビスやボルト等の固定具を固定するための通孔を穿設しておくようにしても良い。
【0015】
そして、参考例である図1(a),(b)に示す接続構造では、それぞれ水平方向に配される構成材4A,4Aを交差するように配置すると共に、配置した各構成材4A,4Aの隙間に接続部材5A(の挿入片51,51)を挿入し、図面上+で示す位置でビスやボルト・ナット等の固定具により接続して平面的にL字状の隅部を形成する。図示参考例では隣接する構成材4A,4Aの上フランジ42,42及び下フランジ43,43をそれぞれ斜めに切り欠いたが、板厚程度のずれは構造物を構築する上で問題なければ重ねても良いし、一方のみを切り欠いても良い。
尚、前記各構成材4,4の隙間に接続部材5を挿入する操作は、配置させた構成材4,4に対して接続部材5を挿入する場合と、接続部材5に対して構成材4,4を適宜に動かして隙間に接続部材5が位置するようにする場合とを含むものである。
即ちこの接続構造でも、隅部を形成するように配置させた構成材4A,4Aに対して接続部材5Aを下方から上昇させて挿入しても良いし、接続部材5Aに対し、構成材4Aを上方から下降させて隙間に接続部材5Aが位置するようにしても良いし、側方(端部)からスライドさせて位置させるようにしても良い。
【0016】
このように前記構成材4の接続構造は、立ち上がり部41の隙間に接続部材5を挿入して接続するので、基本的には接続時に接続箇所をプレートで挟み込んだ後にボルト締めするような煩雑な作業を必要とせずに隅部又は交差部の接続を行うことができる。
また、こうして接続された構成材4は、上フランジ42及び/又は下フランジ43を有するので、容易に断熱材、遮音材などの機能材や内・外装材等を配置・固定することができる。
【0017】
また、図示参考例における接続部材5Aに代えて補強片52,53を有する接続部材5B,5Cを用いた場合、補強片52,53により接続部材5B,5Cの強度が向上し、変形を防ぐことができ、それを用いた隅部も大きな負荷が加わった場合に変形し難いものとなる。
【0018】
特に接続強度を上げたい場合など、必要に応じて構成材4,4に跨るように補強部材6を配して補強しても良い。
図2(a)〜(c)は前記図1と全く同様に構成材4A,4Aを接続部材5Aを用いて接続した例であって、接続部材5Aの存在を欠載(省略)しているが、例えば図2(a)に示すように構成材4A,4Aの上フランジ42,42に跨るように板状の補強部材6Aを固定しても良いし、図2(b)に示すように構成材4A,4Aの立ち上がり部41,41の内面側に沿うようにL字片状の補強部材6Bを固定しても良いし、或いは図2(c)に示すように構成材4A,4Aの立ち上がり部41,41の外面側に沿うようにL字片状の補強部材6Cを固定しても良い。これら補強部材6B,6Cの両方を用いた場合、図2(d)に示す断面図となる。
【0019】
隣接する構成材4A,4Aの重なり部分は、図3(a),(b)に示す参考例のように下フランジ43,43の重なり部分の一方を切り欠くようにしても良いし、図3(c)に示す参考例のように下フランジ43,43の両方を斜めに切り欠くようにしても良い。勿論前記図1(a),(b)に示す参考例や図2(a)〜(c)に示す参考例のように、上フランジ42,42及び下フランジ43,43をそれぞれ斜めに切り欠くようにしても良い。
図4に示す本発明の実施例は、第1上フランジ112と第2上フランジ122が隙間を介して対向状に重合して形成されている構成材4D,4Dが隅部を形成するように接続された構造を示し、上記図3(a)〜(c)と同様に上フランジ42,42同士は重なり部分が存在せず接していない。
この実施例に用いられる接続部材5Dは、矩形状の縦片である挿入片51,51が立体的にL字状に組み合わされ、さらに挿入片51,51の上端から外側へ延在する補強片54が設けられている。
そして、前記各参考例と同様に、接続部材5Dの挿入片51を構成材4Dの立ち上がり部41の隙間に挿入して接続するが、その際、補強片54を上フランジ42の隙間に挿入したので、この隅部における上フランジ42,42の強度補強も果たされ、変形を防止することができる。
【0020】
図5(a)に示す参考例は、前記図1〜4の例のようにそれぞれ水平方向に配される構成材4A,4Aを交差するように配置して横方向の隅部を形成するものではなく、縦方向(鉛直方向)に配された一方の構成材4A’と、水平方向に配された他方の構成材4Aを交差するように配置して縦方向の隅部を形成するものである。縦方向に配する構成材4A’は隅部の内側に、隙間の開放部側、即ち下フランジ43が位置するように配置した。
この参考例に用いられる接続部材5Eは、一角が切り欠かれた略矩形片状であって、前述の表記方法に従うと、挿入片51,51が平面的に(一面状に)L字状に組み合わされ、さらに挿入片51,51の側端から内側へ延在する三角形状の縦片である補強片55Aが設けられている,と表記できる。
そして、前記各参考例と同様に、接続部材5Eの挿入片51,51を構成材4A,4Aの立ち上がり部41,41の隙間に挿入し、ビスやボルト・ナット等の固定具により接続する。また、直交する下フランジ43,43の下面に沿うようにL字状の補強部材6D,6Dを接続部材5Eの補強片55の前後に固定し、当該隅部の接続強度を向上するようにした。
図5(b)に示す接続部材5Fは、補強片55Bの形状が異なる以外は上記補強部材5Eとほぼ同一の構成であり、予めビスやボルト等の固定具を固定するための通孔511を穿設した。このように補強片は、L字状、T字状(後述する図6(b)参照)等の接続部材5のコーナー部分に、同一平面上に三角形状(直線状)或いはアール状に形成して接続部材5の変形を防止しても良い。
【0021】
図6(a)に示す参考例は、上記図5(a)の例と同様に縦方向(鉛直方向)に配された一方の構成材4A’と、水平方向に配された他方の構成材4Aを交差するように配置するが、端部同士を接続して隅部を形成するものではなく、端部と中間部を接続して縦方向の交差部を形成するものである。
この参考例に用いられる接続部材5Gは、矩形片状であって、前述の表記方法に従うと、挿入片51,51が平面的に(一面状に)連続するように組み合わされている,と表記できる。
そして、前記各参考例と同様に、接続部材5Gの挿入片51,51を構成材4A,4Aの立ち上がり部41,41の隙間に挿入し、ビスやボルト・ナット等の固定具により接続する。また、直交する下フランジ43,43の下面に沿うようにL字状の補強部材6Eを、さらに直交する上フランジ42の上面と下フランジ43の下面に沿うようにL字状の補強部材6Dを固定し、当該交差部の接続強度を向上するようにした。
図6(b)に示す接続部材5Hは、略T字状片であって、縦方向に配する構成材4A’の立ち上がり部41の隙間に挿入する挿入片51’が幅広である以外は上記補強部材5Gとほぼ同一の構成であり、予めビスやボルト等の固定具を固定するための通孔511を穿設した。また、接続部材5Gのコーナー部分には、アール状に形成した補強片55Cを設けて接続部材5Gの変形を防止するようにした。
【0022】
図7(a)に示す参考例は、前記図1〜4の例のようにそれぞれ水平方向に配される構成材4A,4Aを交差するように配置するが、端部同士を接続して隅部を形成するものではなく、端部と中間部を接続して縦方向の交差部を形成するものである。
この参考例に用いられる接続部材5Iは、図7(b)に示すように矩形片の略中央を略直角に折り曲げてL字状とし、折り曲げ線の半分に沿ってスリット(=少なくとも構成材4の第2立ち上がり部121の厚みと略同一幅のスリット)を形成し、横片部の略半分を略直角に折り曲げて(立ち上げて)作製でき、恰も矩形片状の縦片56とL字状片57とをその下端で一体化させた構成である。この場合、縦片56とL字状片57の縦片571が挿入片となる。尚、この接続部材5Iを含め、接続部材5は矩形片の折り曲げによって成型するものに限らず、例えば型により成型するようにしても良い。
そして、前記各実施例と同様に、接続部材5Iの挿入片56,571を構成材4A,4Aの立ち上がり部41,41の隙間に挿入し、ビスやボルト・ナット等の固定具により接続する。この場合、挿入片56を挿入する側の構成材4A”(便宜上符号に”を付して他方と区別する)の下フランジ43(第2下フランジ123)には、予め挿入片571の厚みと略同一幅の切り込みを形成しておいた。
この場合、図7(c)に示すように交差する構成材4A”,4Aの上フランジ42,42に跨るように板状(台形状)の補強部材6Fを固定し、接続強度を補強しても良い。尚、図7(c)では接続部材5Iの記載を省略した。
尚、図示しないが挿入片が立体的(三次元的)にT字状に組み合わされた接続部材を用いた場合には、前記第2下フランジ部123に加えて第2立ち上がり部121に同様な切り込みを入れておけば良い。
【0023】
図8は、参考例の構成材4のその他の態様を示すものであり、図8(a)〜(f)に示す構成材4E〜4Hは、それぞれ別々に成形・加工された別部材(第1構成材部2,第2構成材部3)を、ボルト・ナット、ビス等による締着、溶接、かしめ等の各種一体化手段により一体化したものである。
図8(a)に示す構成材4Eは、前記図1(c)の構成材4Aと同一の断面形状を有するが、第2構成材部3の第2上フランジ32の先端で第1構成材部2と線接合して一体化されている。
図8(b)に示す構成材4Fは、第1上フランジ22と第2上フランジ32とが面接合して一体化されている。尚、面接合は、スポット溶接等による部分的な接合も含む。
図8(c)〜(e)に示す構成材4Gは、第1上フランジ22の先端に第2上フランジ32の先端(折返し部)が係合し、図示しないビスやボルト・ナット、或いは溶接等により一体化される。このように第1構成材部2と第2構成材部3の上フランジ22,32は、重合するだけであっても、係止するものでも良く、この場合、別部材2,3の組み合わせ(位置決め)を容易に実施できる。
また、立ち上がり部41の隙間(=隅部や交差部を除く部分の隙間)には、補強用部材46としてプレート状(図8(d))、L型(図示せず)、T型(図8(e))などのアングル材を配しても良い。この補強用部材46により、ボルト締めを行う場合に、第1立ち上がり部21や第2立ち上がり部31の変形を防止できる。また、立ち上がり部41の隙間ばかりでなく、上フランジ42及び下フランジ43の上下面にも表面補強用部材47を取り付けるようにしても良い。
図8(f)に示す構成材4Hは、上フランジ42の途中に溝部49形状を付加した。このように溝部49を設けることにより、第1構成材部2と第2構成材部3の一体化の際の位置決めを容易に行うことができる。
【0024】
図8(g)〜(i)に示す構成材4I〜4Kは、一枚の金属板を成形・加工した構成であって、図8(g)の構成材4Iは下フランジ43が第2下フランジ123のみで構成され、図8(h)の構成材4Jは下フランジ43が第1下フランジ113のみで構成され、図8(i)の構成材4Kは下フランジ43が存在しない。
図8(j)〜(l)に示す構成材4L〜4Nは、上記図8(g)〜(i)の構成材4I〜4Kと同一の断面形状を有するものであって、第2構成材部3の第2上フランジ32の先端で第1構成材部2と線接合して一体化されている。そして、図8(j)の構成材4Lは下フランジ43が第2下フランジ33のみで構成され、図8(k)の構成材4Mは下フランジ43が第1下フランジ23のみで構成され、図8(l)の構成材4Nは下フランジ43が存在しない。
上フランジ42についても、第1上フランジ(112又は22)と第2上フランジ(122又は32)を重合して形成するばかりでなく、第1上フランジ22のみ、或いは第2上フランジ32のみで形成しても良い。
【0025】
また、前述の図8(d)に示す構成材4Gでは、立ち上がり部41の隅部や交差部を除く部分の隙間に、プレート状の補強用部材46を挿入して強度を補強することを説明したが、構成材4を、それぞれ別々に成形・加工された別部材(第1構成材部2,第2構成材部3)を各種一体化手段により一体化して構成する態様においては、この補強用部材46を、隙間形成部材として用いても良い。
例えば図9(a)〜(d)に示す構成材4O〜4Rは、断面L字状又は断面コ字状に成形した第1構成材部2と、断面略Z字状又は断面略L字状に成形した第2構成材部3とを隙間形成部材46を介して組み合わせることにより、それぞれ下段に示すような隙間を形成することができる。即ち前述の接続に用いる端部や中間部に隙間を形成するために、それ以外の部分に適宜隙間形成部材46を配して組み合わせて一体化して構成材としても良い。尚、この場合、特に図9(b),(c)に示す構成材4P,4Qは、隙間の上下両端が開放しているので、接続部材5を挿入する作業を上下両方から実施することができる。尚、この構成材4P,4Qでは、隙間の上下両端が開放する特殊なケースであるが、上方に図示したものを上フランジ42、下方に図示したものを下フランジ43とした。
【0026】
また、構成材4の各部位の構成は、図示実施例に特に限定するものではない。 例えば図示実施例では、支持特性及び強度特性を考慮して、立ち上がり部41を鉛直状とし、上フランジ42、並びに下フランジ43を水平状としたが、所定の支持強度を有するものであれば特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
さらに、立ち上がり部41は、長手方向に沿って図示しない開口部を設けても良く、該開口部を接続部材5と固定する際のビスやボルト等の固定具を固定するための通孔としても良いし、建築物としての電気配線、その他の配線・配管などを通すための貫通孔としても良いし、第1構成材部2及び第2構成材部3を一体化させるためのボルト孔、或いは梁等に固定したL型、T型のアングル材を固定するためのボルト孔として用いても良い。また、このような開口部の形状は目的に併せて円形、長方形、楕円形など適宜決定すれば良い。例えばボルト孔としての開口部を長手方向に細長く設ければ、ボルト止めの際に位置決めの微調整が可能となる。
また、開口部は、特に立ち上がり部41を流れ方向に交わる方向に配した場合には、この開口部が空気等の連通路(空気層)となる。さらに開口部を設けることは、構成材4の重量軽減にも貢献する。
【0028】
そして、本発明により隅部を形成するように接続された構成材4は、例えば母屋端部などとして屋根構造などに好適に利用することができる。
例えば下フランジ43上にグラスウール、発泡樹脂等の断熱材、各種素材から構成される化粧材(壁材)を支持させ、上フランジ42上には断熱材からなる下地材を載置し、その上に屋根構造を施工すると、壁材の上面レベルと構成材4の上フランジ42レベル(屋根構造の下面レベル)の間に空気層が形成されるので、断熱性が高いものとなる。例えば従来の母屋上に外装構造を施工したものでは、垂木等の厚みを超えない範囲の断熱材を配することができるが、本発明では建築用構成材4の高さの範囲で調整することができるので、より高い断熱性を容易に得ることができる。
【0029】
また、接続部材5や補強部材6についても、前述のものに限定するものではなく、例えば図10〜12に示す実施例のように、隅部や交差部の当該接続部分にばかりでなく接続部分から離れた位置に大きな接続部材5や補強部材6を配するようにしても良い。
図10(a)に示す第2接続部材7Aは、横方向の交差部が形成されるように接続する接続部分のコーナー部分に配するものであり、前記補強部材6A〜6Fに比べて大きな斜片71の両端から挿入片72,72が立ち上がり、斜片71の内側には補強片73が立ち上がる構成である。
図10(b)の参考例は、挿入片72,72が形成されない以外は同一の構成を有する補強部材6G(61:斜辺,62:補強片)を前記図7(c)のコーナー部分に取り付けたものであるが、その斜辺61の両端は交差部から離れた位置の下フランジ43,43に載置されて固定される。この補強部材6Gに代えて上記第2接続部材7Aを配した場合には、挿入片72,72は、交差部から離れた位置の立ち上がり部41,41の隙間に挿入される。尚、同図では図7(c)と同様に交差部に用いた接続部材5Iの記載を省略した。
このように、接続部材5も補強部材6も、2種以上を組み合わせて用いても良く、また隅部や交差部から離れた位置に配する部材と組み合わせることにより、接続強度を多大に補強することができる。
【0030】
図11,図12に示す各実施例では、第2接続部材7B,7Cを、前記図5の実施例のコーナー部分に配したものである。尚、図11,12は他図に対して4/6スケールで表記した。
図11に用いた第2接続部材7Bは、平面形状が台形の斜片74の両端が、隅部が形成されるように接続する構成材4A,4A’の立ち上がり部41,41の隙間に挿入される挿入部分となり、斜片74の内側にはフランジ状の補強片75,75が形成された構成である。
図12に用いた第2接続部材7Cは、平面形状が1/4円弧状のアーチ片76の両端が、隅部が形成されるように接続する構成材4A,4A’の立ち上がり部41,41の隙間に挿入される挿入部分となり、アーチ片76の内側にはフランジ状の補強片77,77が形成された構成である。
このような第2接続部材7B,7Cは、前記図5の実施例にて用いられたL字状の補強部材6D,6Dのように接続部分である隅部に配されるものではなく、隅部からやや離反した部分を接続するので、トラス効果により補強効果も大きいものとなる。
【0031】
以上本発明を図面の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
111 第1立ち上がり部
112 第1上フランジ
113 第1下フランジ
121 第2立ち上がり部
122 第2上フランジ
123 第2下フランジ
2 第1構成材部
21 第1立ち上がり部
22 第1上フランジ
23 第1下フランジ
3 第2構成材部
31 第2立ち上がり部
32 第2上フランジ
33 第2下フランジ
4,4A〜4C,4E〜4R (建築用)構成材(参考例)
4D (建築用)構成材(実施例)
41 立ち上がり部
42 上フランジ
43 下フランジ
5,5A〜5I 接続部材
51 挿入片
52〜55 補強片
6A〜6F 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上フランジ又は下フランジと、立ち上がり部を備える建築用構成材の長手方向端部同士を、複数の挿入片と補強片が立体的に組み合わされた構成を有する接続部材により、隅部を形成するように接続した接続構造において、
建築用構成材は、少なくとも隙間を介して対向する第1立ち上がり部と第2立ち上がり部とからなる立ち上がり部を有し、第1立ち上がり部及び/又は第2立ち上がり部の上端から延出して隙間を介して対向する第1上フランジと第2上フランジとからなる上フランジ、及び第1立ち上がり部及び/又は第2立ち上がり部の下端から延出する下フランジからなり、
建築用構成材を、隅部を形成するように配置すると共に、配置した各建築用構成材の立ち上がり部及び上フランジのそれぞれの隙間に接続部材の挿入片と補強片を挿入して接続することを特徴とする建築用構成材の接続構造。
【請求項2】
隅部を形成するように配置した建築用構成材に跨るように補強部材を取り付けることを特徴とする請求項1に記載の建築用構成材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−236352(P2010−236352A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124225(P2010−124225)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2006−351868(P2006−351868)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)
【Fターム(参考)】