説明

建設機械の盗難防止システム、および移動機械の管理システム

【課題】建設機械のアンテナが切断等で機能しない場合も、建設機械の位置を追跡でき建設機械の盗難を防止できるシステムを提供すること。
【解決手段】盗難防止システム100において、建設機械1は、管理装置8と通信する通信端末およびアンテナ、建設機械の現在位置を計測するGPSセンサおよびアンテナ、通信アンテナおよびGPSアンテナの切断を判定する判定手段、無線LAN装置を備え、サービスカー2は、管理装置8と通信する通信端末、無線LAN装置を備え、建設機械1の無線LAN装置は、サービスカー2の無線LAN装置からの電波受信時に、通信アンテナおよびGPSアンテナの少なくとも一方が切断された旨の情報と、識別情報とを送信し、サービスカー2の通信端末は、無線LAN装置が受信した識別情報およびアンテナ切断情報をサービスカー2の現在位置情報とともに管理装置8に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の盗難防止システム、および移動機械の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械等の移動機械では、移動機械の位置情報、稼動状況、および故障履歴等の情報が、管理装置を用いてシステム管理されている。移動機械には、GPS(Global Positioning System)アンテナやGPSセンサの他、衛星通信アンテナおよび通信端末が搭載されており、移動機械の位置情報などの情報が、衛星通信アンテナを介して通信端末から管理用サーバに送信され、管理用サーバに蓄積されるようになっている。
【0003】
ここで、上記のような管理システムにおいても、GPSアンテナや衛星通信アンテナが破壊されたり、これらのアンテナとGPSセンサおよび通信端末との接続が切断されたりした場合には、移動機械の位置情報を送信することができなくなり、移動機械の追跡が不可能となってしまう。このようなことから、GPSセンサまたは通信端末において、信号が未受信の時間が基準時間を超えたときに、建設機械のエンジン始動を禁止または油圧系統を遮断して、盗難を防止する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−34955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、アンテナの破壊または切断時に移動機械の位置が取得できないという点では従来とかわりなく、移動機械が搬送されてしまった場合に、移動機械の位置を追跡できないという問題がある。
また、故障等によりアンテナが機能しなくなっている場合に、アンテナが不能であることを管理装置に知らせることができず、このような移動機械を管理できないという問題もある。
さらには、通信圏外の場所やトンネル、地下室等では、アンテナが破壊されたと誤認してしまうおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、移動機械のアンテナが、故障、破壊、または切断等により機能しない場合でも、この移動機械の位置を追跡でき、これにより移動機械の盗難を防止できる盗難防止システム、および上記した誤認を無くすとともに、アンテナの破壊を正確に検知できるようにし、移動機械を管理する管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る盗難防止システムは、建設機械の盗難を防止する盗難防止システムであって、前記建設機械と、前記建設機械のメンテナンスを行うための複数のサービスカーと、前記建設機械を管理する管理装置とを備え、前記建設機械は、前記管理装置との通信を行う通信端末と、前記通信端末に接続された通信アンテナと、前記建設機械の現在位置を計測するGPSセンサと、前記GPSセンサに接続されたGPSアンテナと、前記通信アンテナが切断されたか否かを判定する通信アンテナ切断判定手段と、前記GPSアンテナが切断されたか否かを判定するGPSアンテナ切断判定手段と、情報を送受信する無線LAN装置とを備え、前記複数のサービスカーは、前記管理装置との通信を行う通信端末と、情報を送受信する無線LAN装置とを備え、前記建設機械の無線LAN装置は、前記複数のサービスカーの無線LAN装置からの電波を受信したときに、前記通信アンテナ切断判定手段および前記GPSアンテナ切断判定手段の判定結果に基づいて、前記通信アンテナおよび前記GPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が切断された旨のアンテナ切断情報と、当該建設機械の識別情報とを送信し、前記複数のサービスカーの通信端末は、当該複数のサービスカーの無線LAN装置が受信した前記識別情報および前記アンテナ切断情報を、当該複数のサービスカーの現在位置情報とともに前記管理装置に送信することを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る管理システムは、移動機械を管理する管理システムであって、複数の移動機械と、前記複数の移動機械を管理する管理装置とを備え、前記複数の移動機械は、前記管理装置との通信を行う通信端末と、前記通信端末に接続された通信アンテナと、前記複数の移動機械の現在位置を計測するGPSセンサと、前記GPSセンサに接続されたGPSアンテナと、前記通信アンテナにおける通信が不能か否かを判定する通信不能判定手段と、前記GPSアンテナの受信が不能か否かを判定するGPS受信不能判定手段と、情報を送受信する無線LAN装置とを備え、前記無線LAN装置は、他の移動機械からの無線LAN電波を受信したときに、前記通信不能判定手段および前記GPS受信不能判定手段の判定結果に基づいて、前記通信アンテナおよび前記GPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が不能である旨のアンテナ不能情報と、当該無線LAN装置が搭載された移動機械の識別情報とを送信し、前記他の移動機械の通信端末は、当該他の移動機械の無線LAN装置が受信した前記識別情報および前記アンテナ不能情報を、当該他の移動機械の現在位置情報とともに前記管理装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明に係る盗難防止システムによれば、建設機械の無線LAN装置は、サービスカーの無線LAN装置からの電波を受信したときに、当該建設機械の通信アンテナおよびGPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が切断された旨のアンテナ切断情報と、当該建設機械の識別情報とを送信し、サービスカーの通信端末は、当該サービスカーの無線LAN装置が受信した識別情報およびアンテナ切断情報を、当該サービスカーの現在位置情報とともに管理装置に送信する。
【0010】
これによれば、建設機械の通信アンテナおよびGPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が切断された場合でも、この建設機械のアンテナ切断情報および識別情報がサービスカーに無線LAN送信され、これらの情報を受信したサービスカーが、アンテナ切断情報、識別情報、およびサービスカーの現在位置情報を管理装置に送信するので、アンテナが切断された移動機械の位置が、サービスカーの現在位置情報から把握することができる。このため、アンテナが切断された移動機械およびその現在位置を管理することができる。また、アンテナが切断された移動機械が移動されても、この移動機械の移動に伴って近隣に別のサービスカーが現れることで、このサービスカーから新たに位置情報を取得することができる。
【0011】
従って、アンテナが切断された建設機械の位置を追跡することができるので、これをもとに建設機械を探すことができる。これにより、建設機械の盗難を防止することができる。また、これらの情報を、管理装置から顧客の端末PCや携帯電話に情報提供することができる。
【0012】
第2発明に係る管理システムによれば、移動機械に搭載された無線LAN装置は、他の移動機械からの無線LAN電波を受信したときに、通信アンテナおよびGPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が不能である旨のアンテナ不能情報と、当該無線LAN装置が搭載された移動機械の識別情報とを送信し、他の移動機械の通信端末は、当該他の移動機械の無線LAN装置が受信した識別情報およびアンテナ不能情報を、当該他の移動機械の現在位置情報とともに前記管理装置に送信する。
【0013】
これによれば、移動機械の通信アンテナおよびGPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が不能となった場合でも、この移動機械についてのアンテナ不能情報および識別情報が他の移動機械に無線LAN送信され、これらの情報を受信した他の移動機械が、アンテナ不能情報、識別情報、および他の移動機械の現在位置情報を管理装置に送信するので、アンテナが不能となった移動機械の位置が、他の移動機械の現在位置情報から把握することができる。このため、アンテナが不能となった移動機械、およびその現在位置を管理することができる。また、アンテナが不能となった移動機械が移動されても、この移動機械の移動に伴って近隣に別の移動機械が現れることで、この別の移動機械から新たに位置情報を取得することができる。
【0014】
従って、アンテナが不能となった移動機械の位置を追跡することができ、必要に応じてこの建設機械のメンテナンスを行うことができる。また、これらの情報を、管理装置から顧客の端末PCや携帯電話に情報提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
〔1〕盗難防止システム100の構成
図1には、本発明の一実施形態に係る移動機械の盗難防止システム(管理システム)100の概略構成を示す模式図が示されている。この盗難防止システム100は、建設機械(移動機械)1および建設機械1のメンテナンスを行うサービスカー(移動機械)2、GPS衛星3、通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、ネットワーク7、サーバ(管理装置)8、端末PC(Personal Computer)9、および携帯電話10を備えている。
【0016】
建設機械1は、道路等の建設現場において、掘削、地均し等の作業や土砂等の運搬を行う機械であり、例えば、ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーン等の作業機械や、ダンプトラック等の運搬車両が該当する。
この建設機械1は、図2に示すように、エンジン11と、電子制御コントローラ12と、電子制御コントローラ12に接続される通信コントローラ13と、通信コントローラ13に接続されるGPSセンサ14、無線LAN(Local Area Network)装置15、および通信端末16と、GPSセンサ14に接続されるGPSアンテナ17と、無線LAN装置15に接続される無線LANアンテナ18と、通信端末16に接続される衛星通信アンテナ(通信アンテナ)19とを備えている。
【0017】
電子制御コントローラ12は、エンジン11の回転数、バッテリ電圧、燃料残量、冷却水温、サービスメータ、運転時間、その他建設機械1を駆動するための要素の状態を検出するセンサから信号を受けて、これらの要素を電子的に制御するものである。
【0018】
通信コントローラ13は、電子制御コントローラ12で検出された建設機械1の各駆動部分の状態から、建設機械1の機械情報を取得する部分であり、具体的には、建設機械1の燃料残量、稼働情報等を取得することができる。また、通信コントローラ13は、GPSセンサ14および通信端末16で受信される電波の状態から、GPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19のうちの少なくとも一方が不能で、破壊または切断されたおそれがある旨のアンテナ切断情報を生成する。そして、この通信コントローラ13は、内部に記憶領域を有し、この記憶領域には、建設機械1の号機番号(識別情報)、通算稼働時間等の情報が記憶されている。
【0019】
GPSセンサ14は、複数のGPS衛星3から出力される電波をGPSアンテナ17を介して常時受信しており、受信した電波の状態に基づいて、自己の現在位置を計測する。そして、GPSセンサ14で取得された建設機械1の現在位置情報は、通信コントローラ13に出力される。また、GPSセンサ14で取得された現在位置情報は、地図データベースと組み合わせることによって、建設機械1に搭載されたナビゲーションシステム等の画像表示装置上に、マップ表示させることができるようになっている。
【0020】
無線LAN装置15は、無線LANアンテナ18を介して無線LAN通信を行う。この無線LAN装置15は電波を常時送信しており、他の無線LAN装置からの電波を受信した時点で、無線LAN装置同士で通信が可能となるように構成されている。そして、無線LAN装置15は、他の無線LAN装置から受信した情報を通信コントローラ13に出力するとともに、通信コントローラ13から取得した情報を無線LANアンテナ18を介して送信する。
【0021】
通信端末16は、衛星通信アンテナ19を介して通信電波を常時受信しており、受信した信号を通信コントローラ13に出力する。また、通信端末16は、通信コントローラ13で取得または生成された建設機械1の現在位置情報、アンテナ切断情報、および稼働情報等を、衛星通信アンテナ19を介して出力する。通信端末16から出力された各種情報は、通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、およびネットワーク7を介してサーバ8に出力される。
【0022】
サービスカー2は、建設機械1のメンテナンスを行う移動機械であり、図3に示すように、建設機械1と同様の構成の通信コントローラ23、GPSセンサ24、無線LAN装置25、通信端末26、GPSアンテナ27、無線LANアンテナ28、および衛星通信アンテナ29を備えている。また、GPSセンサ24で取得されたサービスカー2の現在位置情報は、地図データベースと組み合わせることによって、サービスカー2に搭載されたナビゲーションシステム等の画像表示装置上に表示させることができるようになっている。
【0023】
GPSセンサ24は、GPSアンテナ27を介して受信した電波に基づいて、サービスカー2の現在位置を計測する。GPSセンサ24から出力されたサービスカー2の現在位置情報は、通信コントローラ23で取得され、通信端末26を介して衛星通信アンテナ29から出力される。また、無線LAN装置25は、無線LANアンテナ28を介して他の無線LAN装置と通信を行い、無線LAN装置25で受信した情報は、通信コントローラ23で取得され、通信端末26を介して衛星通信アンテナ29から出力される。そしてサービスカー2の現在位置情報やアンテナ切断情報は、通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、およびネットワーク7を介してサーバ8に出力される。
【0024】
ネットワーク7は、TCP/IP等の汎用のプロトコルに基づくインターネットとして構成され、このネットワーク7には、前記のネットワーク管制局6、サーバ8が接続されている。
このような構成の盗難防止システム100は、建設機械1およびサービスカー2から出力される建設機械1およびサービスカー2の現在位置情報やアンテナ切断情報等をサーバ8で取得し、サーバ8でこれらの情報を管理して、必要に応じて顧客の端末PC9や携帯電話10に情報提供する。
【0025】
〔2〕建設機械1およびサービスカー2における通信制御の制御構造
次に、図4を参照して、盗難防止システム100における建設機械1およびサービスカー2の通信制御について、通信コントローラ13,23の制御構造を中心に説明する。
なお、建設機械1の通信コントローラ13と、サービスカー2の通信コントローラ23とは同様の構成とされているため、建設機械1の通信コントローラ13の各要素には131〜137を、サービスカー2の通信コントローラ23の各要素には231〜237の符合を付して、建設機械1およびサービスカー2間で共通の説明を実施する。
【0026】
通信コントローラ13,23は、図4に示すように、通信電波強度取得手段131,231、GPS電波受信数取得手段132,232、通信アンテナ切断判定手段(通信不能判定手段)133,233、GPSアンテナ切断判定手段(GPS受信不能判定手段)134,234、アンテナ切断情報取得手段135,235、位置情報取得手段136,236、および記憶手段137,237を備えている。
【0027】
通信電波強度取得手段131,231は、衛星通信アンテナ19,29を介して通信端末16,26で常時受信される通信電波の電波強度を取得する。
GPS電波受信数取得手段132,232は、GPSセンサ14,24で受信されるGPS電波の数を取得する。つまり、GPS電波受信数取得手段132,232は、GPSセンサ14,24で受信可能なGPS衛星の個数を取得する。
【0028】
通信アンテナ切断判定手段133,233は、通信端末16,26が受信する通信電波の電波強度に基づいて、衛星通信アンテナ19,29が切断された状態にあるか否かを判定する。すなわち、通信端末16,26が受信する通信電波の電波強度は、衛星通信アンテナ19,29が正常であれば、建設機械1およびサービスカー2の位置の変化や時間の変化に応じて、緩やかな上昇または下降カーブを描くため、通信電波強度が、一定以上の急激な下降を示す場合には、衛星通信アンテナ19,29の通信が不能で、衛星通信アンテナ19,29が切断されたものと判定することができる。
【0029】
GPSアンテナ切断判定手段134,234は、GPSセンサ14,24が受信するGPS電波の受信数に基づいて、GPSアンテナ17,27が切断された状態にあるか否かを判定する。つまり、GPSセンサ14,24が受信するGPS電波数は、GPSアンテナ17,27が正常であれば、建設機械1およびサービスカー2の位置の変化や時間の変化に応じて、段階的に変化するため、GPS電波の受信数が、所定数以上の急激な下降を示す場合には、GPSアンテナ17,27の電波受信が不能で、GPSアンテナ17,27が切断されたものと判定することができる。
【0030】
アンテナ切断情報取得手段135,235は、他の建設機械1またはサービスカー2から無線LAN通信により受信したアンテナ切断情報を取得する。すなわち、アンテナ切断情報取得手段135,235は、無線LAN装置15,25で受信したアンテナ切断情報を無線LAN装置15,25から取得する。
【0031】
位置情報取得手段136,236は、GPSセンサ14,24で取得された建設機械1またはサービスカー2の現在位置情報をGPSセンサ14,24から取得する。また、位置情報取得手段136,236は、無線LAN装置15,25で受信した他の建設機械1またはサービスカー2の位置現在位置情報を取得する。
記憶手段137,237は、建設機械1の号機番号等の建設機械1に固有の情報を記憶している。また、記憶手段137,237は、電子制御コントローラ12で検出された各駆動部分の状態から取得される建設機械1の燃料残量、稼働情報等の諸情報を記憶する。
【0032】
〔3〕サーバ8における通信制御の制御構造
次に、図5を参照して、盗難防止システム100におけるサーバ8の通信制御構造について説明する。
サーバ8は、ネットワーク7に接続されるWWW(World Wide Web)サーバとして構成されている。このサーバ8は、図5に示すように、受信手段81、位置情報取得手段82、アンテナ切断情報取得手段83、詳細情報DB(Database)84、位置情報DB85、切断情報DB86、ロック設定情報DB87、ロック情報設定手段88、および送信手段89を備え、このうちの詳細情報DB84、位置情報DB85、切断情報DB86、およびロック設定情報DB87は、リレーショナルデータベースとして構成されている。
【0033】
受信手段81は、ネットワーク7を介して入力される情報の受信制御を行う部分であり、具体的には、通信端末16,26から通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、およびネットワーク7による衛星通信回線を介して入力する情報や、サーバ8の入力操作手段から入力された情報を受信する。
【0034】
位置情報取得手段82は、通信端末16,26からネットワーク7を介して送信された建設機械1やサービスカー2の現在位置情報を取得する。また、位置情報取得手段82は、取得した建設機械1やサービスカー2の現在位置情報を位置情報DB85に送信する。
アンテナ切断情報取得手段83は、通信端末16,26からネットワーク7を介して送信された建設機械1やサービスカー2のアンテナ切断情報を取得する。また、アンテナ切断情報取得手段83は、取得したアンテナ切断情報を切断情報DB86に送信する。
【0035】
位置情報DB85には、通信端末16,26の端末ID(識別情報)と、各端末IDに応じた建設機械1およびサービスカー2の号機番号、および現在位置情報が蓄積されている。すなわち、位置情報DB85には、位置情報取得手段82で取得された情報を蓄積する。
【0036】
詳細情報DB84には、通信端末16,26の各端末IDに応じた建設機械1の所有者名、連絡先、建機種類などの建設機械1に関する詳細情報や、各端末IDに応じたサービスカー2が搭載している搭載器具、搭載部品、サービスマン情報、サービスマンの携帯電話番号、サービスカー2の巡回計画情報などのサービスカー2に関する詳細情報が蓄積されている。
なお、サービスマン情報は、サービスカー2に搭乗するサービスマンの氏名や、そのサービスマンが保有する例えば危険物取扱資格などの保有スキルの情報などを含む。また、サービスカー2の巡回計画情報は、サービスカー2が巡回する巡回経路や、訪問するユーザの情報などを含む。
【0037】
ここで、詳細情報DB84に蓄積される情報は、ネットワーク7を介して建設機械1およびサービスカー2からそれぞれ送信されるものに限らない。つまり、例えば建設機械1の所有者や号機番号などは変更が少ないので、予めサーバ8側に記憶させておいてもよい。
【0038】
切断情報DB86には、建設機械1およびサービスカー2のアンテナ切断情報が、建設機械1およびサービスカー2の号機番号ごとに蓄積されている。
ロック設定情報DB87には、エンジン11の始動や建設機械1の動作をロックするための情報が蓄積されている。具体的に、ロック設定情報DB87には、例えば、エンジン11、電気系統、油圧系統など、建設機械1のどの部分をロックするかの設定や、エンジン11の始動ロックを解除するためのパスワードなどの設定が蓄積されている。
【0039】
ロック情報設定手段88は、ロック設定情報DB87に蓄積されている情報から、アンテナ切断情報に応じて、エンジン11の始動や建設機械1の動作をロックするためのロック情報を設定する。このロック情報は、ロック設定情報DB87に保存されるとともに、送信手段89からネットワーク7による衛星通信回線、ネットワーク管制局6、衛星地球局5、および通信衛星4を介して建設機械1やサービスカー2に送信される。
【0040】
送信手段89は、ネットワーク7を介して出力される情報の送信制御を行う部分であり、具体的には、建設機械1およびサービスカー2のアンテナ切断情報を顧客の端末PC9や携帯電話10に送信したり、ロック情報を建設機械1やサービスカー2に送信したりする。
【0041】
〔4〕盗難防止システム100の作用
以下、図6〜図9に基づき、盗難防止システム100の作用について説明する。なお、説明を簡単にするために、以下では建設機械1のGPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19が破壊または切断された場合について説明するが、サービスカー2のGPSアンテナ27および衛星通信アンテナ29が破壊または切断された場合も同様の処理が実施される。
【0042】
建設機械1のアンテナ切断情報を送信するまでのフローを示す図6において、建設機械1の通信コントローラ13は、先ず、通信アンテナ切断フラグのセット状況を判定し(ステップS11)、通信アンテナ切断フラグがセットされていないと判定された場合に、通信電波強度取得手段131,231は、衛星通信アンテナ19および通信端末16を介して通信電波の電波強度を取得する(ステップS12)。そして、通信アンテナ切断判定手段133,233は、取得した通信電波の電波強度に基づいて、衛星通信アンテナ19が切断された状態にあるか否かを判定し(ステップS13)、衛星通信アンテナ19が切断された状態にあると判定されると、通信コントローラ13は、通信アンテナ切断フラグをセットする(ステップS14)。
【0043】
次に、通信コントローラ13は、GPSアンテナ切断フラグのセット状況を判定し(ステップS15)、GPSアンテナ切断フラグがセットトされていない場合に、GPS電波受信数取得手段132,232は、GPSセンサ14,24で受信されるGPS電波の数を取得する(ステップS16)。そして、GPSアンテナ切断判定手段134,234は、取得したGPS電波の数に基づいて、GPSアンテナ17が切断された状態にあるか否かを判定し(ステップS17)、GPSアンテナ17が切断された状態にあると判定された場合に、通信コントローラ13は、GPSアンテナ切断フラグをセットする(ステップS18)。
【0044】
その後、通信コントローラ13は、通信アンテナ切断フラグまたはGPSアンテナ切断フラグがセットされているか否かを判定し(ステップS19)、両アンテナ切断フラグともセットされていない場合に、ステップS11に戻り処理を繰り返す。これに対し、通信アンテナ切断フラグまたはGPSアンテナ切断フラグかセットされていると判定された場合に、無線LAN装置15は、無線LANによる送信が可能か否か、より具体的には、無線LAN電波を受信しているか否かを判定する(ステップS20)。
【0045】
そして、無線LANによる送信が可能と判定されると、無線LAN装置15は、通信アンテナ切断フラグおよびGPSアンテナ切断フラグのセット状態に応じて、GPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19のうちの少なくとも一方が破壊または切断されたことを示すアンテナ切断情報を生成し、このアンテナ切断情報と、記憶手段137に記憶されている建設機械1の号機番号や通信端末16の端末IDを無線LAN送信する(ステップS21)。なお、ステップS21では、建設機械1の号機番号や通信端末16の端末IDの両方を送信してもよく、号機番号またま端末IDの何れかを送信するようにしてもよい。
【0046】
ここで、図7に示すように、アンテナ17,19が切断された建設機械1の無線LAN電波の到達範囲内に、他の建設機械1Aやサービスカー2Aが存在する場合、この建設機械1Aやサービスカー2Aは、建設機械1から無線LAN送信されたアンテナ切断情報を受信することができ、アンテナ17,19が切断された建設機械1は、近隣の建設機械1Aやサービスカー2Aからの無線LAN送信を受信できる。つまり、アンテナが切断された建設機械1と、この建設機械1の近隣の建設機械1Aおよびサービスカー2Aとの間で、無線LAN通信が可能となる。
【0047】
従って、建設機械1の無線LANの電波の到達範囲内における、建設機械1Aおよびサービスカー2Aの処理について、図8に基づき説明する。
先ず、建設機械1Aおよびサービスカー2Aにおいて、無線LAN装置15,25は、アンテナが切断された建設機械1から送信されたアンテナ切断情報を受信する(ステップS41)。
【0048】
すると、通信コントローラ13,23のアンテナ切断情報取得手段135,235は、受信したアンテナ切断情報を無線LAN装置15,25から取得し(ステップS42)、位置情報取得手段136,236は、建設機械1Aおよびサービスカー2Aのそれぞれの現在位置情報をGPSセンサ14,24から取得する(ステップS43)。そして、通信端末16,26は、取得したアンテナ切断情報と、建設機械1Aおよびサービスカー2Aのそれぞれ現在位置情報とを、衛星通信アンテナ19,29を介して出力する(ステップS44)。通信端末16,26から出力された各種情報は、通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、およびネットワーク7を介してサーバ8に出力される。
【0049】
次に、図9に基づいて、サーバ8における処理について説明する。
先ず、サーバ8の受信手段81は、建設機械1Aおよびサービスカー2Aの通信端末16,26から通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、およびネットワーク7による衛星通信回線を介して入力する情報を受信する(ステップS51)。すると、位置情報取得手段82およびアンテナ切断情報取得手段83は、受信手段81で受信された建設機械1Aおよびサービスカー2Aのそれぞれの現在位置情報と、建設機械1のアンテナ切断情報とを取得する(ステップS52)。
【0050】
その後、サーバ8は、アンテナ切断情報を切断情報DB86に保存し(ステップS53)、建設機械1Aおよびサービスカー2Aのそれぞれの現在位置情報を、建設機械1の号機番号や端末IDと関連付けて位置情報DB85に保存する(ステップS54)。そして、送信手段89は、サーバ8で取得または設定された各種情報をネットワーク7を介して発信する(ステップS55)。すなわち、送信手段89は、建設機械1のアンテナ切断情報を顧客の端末PC9や携帯電話10に送信し、建設機械1のロック情報を建設機械1Aおよびサービスカー2Aに送信する。そして、建設機械1のロック情報を受信した建設機械1Aおよびサービスカー2Aはロック情報を無線LAN送信し、このロック情報を受信した建設機械1は、ロック情報に従ってエンジン11等をロックする。
【0051】
以上のような構成の盗難防止システム100では、建設機械1のGPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19が故障または切断された場合に、通信コントローラ13は、アンテナ17,19の不能状態または切断を検知し、無線LAN装置15は、建設機械1の近隣にいる他の建設機械1Aやサービスカー2Aに、建設機械1のアンテナ17,19が不能で切断されたおそれのある旨のアンテナ切断情報を送信する。このアンテナ切断情報を受信した他の建設機械1Aやサービスカー2Aは、自車の現在位置情報および建設機械1のアンテナ切断情報をサーバ8に送信する。
【0052】
このため、建設機械1のGPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19が故障したり切断されたりして建設機械1の位置情報が取得できない場合でも、近隣の建設機械1Aやサービスカー2Aの現在位置情報から、アンテナ17,19が不能状態にある建設機械1の位置が把握できる。また、建設機械1が搬送された場合でも、建設機械1の移動に伴って、別の建設機械1Aおよびサービスカー2Aが近隣に現れれば、この建設機械1Aおよびサービスカー2Aの位置を取得することで、移動後の建設機械1の位置を把握することができる。
【0053】
ここで、アンテナ17,19が故障または切断された建設機械1の近傍に、無線LAN電波を送受信可能な複数の他の建設機械1Aやサービスカー2Aが存在する場合に、サーバ8は、これら複数の他の建設機械1Aやサービスカー2Aの現在位置情報をそれぞれ取得することができる。この場合、アンテナ17,19が故障または切断された建設機械1は、図7に示すように、他の建設機械1Aやサービスカー2Aを中心として無線LANの電波到達が可能な距離を半径とする円が、それぞれ交わる部分の範囲内に位置することがわかる。これによれば、建設機械1の位置をより正確に得ることができる。
【0054】
また、建設機械1の衛星通信アンテナ19が故障または切断され、GPSアンテナ17はGPS電波を受信可能な場合には、無線LAN装置15は、GPSセンサ14で取得した建設機械1の正確な現在位置情報およびアンテナ切断情報を送信することができる。そして、これらの情報を受信した近隣の建設機械1Aおよびサービスカー2Aは、建設機械1の現在位置情報およびアンテナ切断情報をサーバ8に送信する。
【0055】
さらに、建設機械1のGPSアンテナ17が故障または切断され、衛星通信アンテナ19は通信可能な場合には、建設機械1の無線LAN装置15は、近隣の建設機械1Aおよびサービスカー2Aから、この建設機械1Aおよびサービスカー2Aの正確な現在位置情報を取得することができる。そして、建設機械1は、自分のアンテナ切断情報と、近隣の建設機械1Aおよびサービスカー2Aの現在位置情報とをサーバ8に送信する。
【0056】
従って、GPSアンテナ17や衛星通信アンテナ19が切断され、建設機械1が盗難された場合でも、建設機械1,1Aおよびサービスカー2Aの位置情報をサーバ8に蓄積することで、建設機械1,1Aおよびサービスカー2Aの位置情報から建設機械1の位置を追跡することができる。
【0057】
また、GPSアンテナ17や衛星通信アンテナ19が故障した場合には、近隣の建設機械1Aやサービスカー2Aから、建設機械1Aやサービスカー2Aの現在位置情報および建設機械1のアンテナ切断情報がサーバ8に送信され、これらの情報がサーバ8に蓄積される。従って、GPSアンテナ17や衛星通信アンテナ19が故障した建設機械1を管理することができ、このような建設機械1をメンテナンスすることができる。
【0058】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、盗難防止システム100は、建設機械1のGPSアンテナ17および衛星通信アンテナ19が破壊または切断された場合に適用されていたがこれに限られない。本発明の盗難防止システム100は移動機械に適用され、例えば、サービスカー2のGPSアンテナ27や衛星通信アンテナ29が破壊または切断された場合にも機能する。
【0059】
前記実施形態では、建設機械1,1Aおよびサービスカー2,2Aとサーバ8との通信を衛星通信で行っていたがこれに限られず、例えば、他の建設機械との通信または地上通信を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、建設機械の盗難防止システムに用いられる他、建設機械のメンテナンスを提供するサービスカーの盗難防止システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動機械の盗難防止システムの構成を表す模式図。
【図2】前記一実施形態に係る建設機械の構成を表す模式図。
【図3】前記一実施形態に係るサービスカーの構成を表す模式図。
【図4】前記一実施形態に係る建設機械およびサービスカーの通信コントローラの構成を表す模式図。
【図5】前記一実施形態に係るサーバの構成を表す模式図。
【図6】前記一実施形態に係る盗難防止システムの移動機械の作用を示すフローチャート。
【図7】前記一実施形態に係る盗難防止システムの作用を示すための図。
【図8】前記一実施形態に係る盗難防止システムの別の移動機械の作用を示すフローチャート。
【図9】前記一実施形態に係る盗難防止システムの管理装置の作用を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0062】
1,1A…建設機械(移動機械)、2,2A…サービスカー(移動機械)、8…サーバ(管理装置)、14,24…GPSセンサ、15,25…無線LAN装置、16,26…通信端末、17,27…GPSアンテナ、19,29…衛星通信アンテナ(通信アンテナ)、100…盗難防止システム(管理システム)、133,233…通信アンテナ切断判定手段(通信不能判定手段)、134,234…GPSアンテナ切断判定手段(GPS受信不能判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の盗難を防止する盗難防止システムであって、
前記建設機械と、
前記建設機械のメンテナンスを行うための複数のサービスカーと、
前記建設機械を管理する管理装置とを備え、
前記建設機械は、
前記管理装置との通信を行う通信端末と、
前記通信端末に接続された通信アンテナと、
前記建設機械の現在位置を計測するGPSセンサと、
前記GPSセンサに接続されたGPSアンテナと、
前記通信アンテナが切断されたか否かを判定する通信アンテナ切断判定手段と、
前記GPSアンテナが切断されたか否かを判定するGPSアンテナ切断判定手段と、
情報を送受信する無線LAN装置とを備え、
前記複数のサービスカーは、
前記管理装置との通信を行う通信端末と、
情報を送受信する無線LAN装置とを備え、
前記建設機械の無線LAN装置は、前記複数のサービスカーの無線LAN装置からの電波を受信したときに、前記通信アンテナ切断判定手段および前記GPSアンテナ切断判定手段の判定結果に基づいて、前記通信アンテナおよび前記GPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が切断された旨のアンテナ切断情報と、当該建設機械の識別情報とを送信し、
前記複数のサービスカーの通信端末は、当該複数のサービスカーの無線LAN装置が受信した前記識別情報および前記アンテナ切断情報を、当該複数のサービスカーの現在位置情報とともに前記管理装置に送信する
ことを特徴とする盗難防止システム。
【請求項2】
移動機械を管理する管理システムであって、
複数の移動機械と、
前記複数の移動機械を管理する管理装置とを備え、
前記複数の移動機械は、
前記管理装置との通信を行う通信端末と、
前記通信端末に接続された通信アンテナと、
前記複数の移動機械の現在位置を計測するGPSセンサと、
前記GPSセンサに接続されたGPSアンテナと、
前記通信アンテナにおける通信が不能か否かを判定する通信不能判定手段と、
前記GPSアンテナの受信が不能か否かを判定するGPS受信不能判定手段と、
情報を送受信する無線LAN装置とを備え、
前記無線LAN装置は、他の移動機械からの無線LAN電波を受信したときに、前記通信不能判定手段および前記GPS受信不能判定手段の判定結果に基づいて、前記通信アンテナおよび前記GPSアンテナのうちの少なくとも何れか一方が不能である旨のアンテナ不能情報と、当該無線LAN装置が搭載された移動機械の識別情報とを送信し、
前記他の移動機械の通信端末は、当該他の移動機械の無線LAN装置が受信した前記識別情報および前記アンテナ不能情報を、当該他の移動機械の現在位置情報とともに前記管理装置に送信する
ことを特徴とする管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−248653(P2008−248653A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94281(P2007−94281)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】