説明

建設機械の盗難防止システム

【課題】運転者の煩わしさを軽減しつつ、管理者の意図によってセキュリティレベルを変更することができる建設機械の盗難防止システムを提供する。
【解決手段】端末装置106は、建設機械102にオーナロック設定の指令及びユーザロック設定の指令を選択的に送信可能としている。建設機械102のコントローラ41は、ユーザ暗証番号及びオーナ暗証番号を記憶しており、端末装置106からの指令に応じてオーナロック設定が設定された場合は、キー入力装置34で入力された暗証番号とユーザ暗証番号及びオーナ暗証番号のうちの一方とが一致したときに始動ロック状態を解除し、ユーザロック設定が設定された場合は、キー入力装置34で入力された暗証番号とユーザ暗証番号とが一致しても始動ロック状態を解除せず、オーナ暗証番号と一致したときに始動ロック状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械の盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の盗難防止装置は、これまで種々の技術が提唱されている。その一例として、運転者が暗証番号を入力可能な入力装置と、運転者が設定変更可能な運転者用暗証番号及び運転者が設定変更不能な管理者用暗証番号を記憶するとともに、これら記憶された暗証暗号と入力装置で入力された暗証番号とを照合し、一致したときに始動ロック状態を解除するコントロールユニットとを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。そして、例えば建設機械を始動する際に運転者がエンジンキースイッチをON操作し、運転者用暗証番号を入力装置で入力すると、コントロールユニットがエンジンキースイッチとスタータモータとの間に介装されたスタータリレーをオフからオンに切換えて(すなわち、始動ロック状態を解除して)、エンジンキースイッチの操作によってエンジンを始動可能な状態とする。また、例えば運転者が運転者用暗証番号を失念した場合等でも、運転者が管理者から管理者用暗証番号を取得して入力すれば、始動ロック状態を解除可能としている。
【0003】
また他の例として、建設機械から離れた位置に設けられ、通信手段(詳細には、例えば地上波基地局など)を介し建設機械との間で通信可能なサーバ端末(詳細には、メールサーバ及びHTTPサーバとして機能するもの)と、例えば建設機械を管理する管理事務所などに設けられ、インターネットを介しサーバ端末に接続された端末とを備えたシステムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。そして、例えば管理者が建設機械を休止すべきと判断し、端末で「始動ロック設定」及び「暗証番号」のデータを入力する操作を行うと、このデータが建設機械に送信されて、建設機械のコントローラは始動ロック設定を設定するとともに暗証番号を記憶する。その後、例えば建設機械を始動する際に運転者がエンジンキースイッチをON操作し、管理者より教示された暗証番号を入力すると、コントローラが始動ロック状態を解除する。若しくは、例えば管理者が端末で「始動ロック解除」のデータを入力する操作を行うと、このデータが建設機械に送信されて、建設機械のコントローラは始動ロック設定を解除する。すなわち、運転者が暗証番号を入力しなくとも、エンジンキースイッチの操作によってエンジンを始動可能な状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−42849号公報(図1等参照)
【特許文献2】特開2003−40081号公報(段落[0572]〜[0580]及び図1等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。すなわち、上記特許文献2に記載の従来技術では、管理者が端末からの遠隔操作によって始動ロック設定及び暗証番号を設定することにより、建設機械のセキュリティレベルを高めるようになっている。ところが、例えば建設機械の作業時間以外の時間帯やレンタルの中断期間などにおいて一時的にセキュリティレベルを高めることを目的とし、その都度、管理者によって暗証番号が設定されると、この暗証番号を管理者から取得して入力する運転者にとっては煩わしく感じる。かといって、管理者が端末からの遠隔操作によって始動ロック設定を解除すると、暗証番号を入力しなくともエンジンを始動可能な状態とするため、そのタイミングによっては、運転者不在のままセキュリティレベルが著しく低下する場合等が生じ、不都合が生じる。
【0006】
本発明の目的は、運転者の煩わしさを軽減しつつ、管理者が容易にセキュリティレベルを変更することができる建設機械の盗難防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、運転者が暗証番号を入力可能な暗証番号入力手段、運転者用暗証番号及び管理者用暗証番号を記憶する記憶手段、並びに前記記憶手段で記憶された暗証番号と前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号とが一致したときに始動ロック状態を解除するロック解除手段を備えた建設機械と、前記建設機械から離れた位置に配置され、通信手段を介し前記建設機械への指令を送信可能な管理者用端末装置とを備えた建設機械の盗難防止システムにおいて、前記管理者用端末装置は、第1始動ロック設定の指令及び第2始動ロック設定の指令を選択的に送信可能とし、前記建設機械のロック解除手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて第1始動ロック設定が設定された場合は、前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号と前記記憶手段で記憶された運転者用暗証番号及び管理者用暗証番号のうちの一方とが一致したときに始動ロック状態を解除し、前記管理者用端末装置からの指令に応じて第2始動ロック設定が設定された場合は、前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号と前記記憶手段で記憶された運転者用暗証番号とが一致しても始動ロック状態を解除せず、前記記憶手段で記憶された管理者用暗証番号と一致したときに始動ロック状態を解除する。
【0008】
このような本発明においては、建設機械は、管理者用端末装置からの指令に応じて第1始動ロック設定又は第2始動ロック設定が設定される。例えば第1始動ロック設定が設定された場合は、運転者が運転者用暗証番号を入力することにより、始動ロック状態を解除することができる。また、運転者が運転者用暗証番号を失念した場合でも、管理者から管理者用暗証番号を取得して入力することにより、始動ロック状態を解除することができる。一方、例えば第2始動ロック設定が設定された場合は、運転者が運転者用暗証番号を入力しても始動ロック状態を解除することができず、管理者用暗証番号を入力したときに始動ロック状態を解除することができる。すなわち、セキュリティレベルを高めることができる。そして、第2始動ロック設定が設定された際に運転者用暗証番号が変更されていないことから、第2始動ロック設定から第1始動ロック設定に変更された場合には、運転者が管理者から暗証番号を取得する必要がなく、運転者用暗証番号を入力すれば始動ロック状態を解除することができる。したがって、運転者の煩わしさを軽減することができる。また、管理者用端末装置からの指令に応じて第2始動ロック設定から、運転者が暗証番号を入力しなくともエンジンを始動可能な状態とするのではなく、暗証番号の入力を必要とする第1始動ロック設定に変更することができ、セキュリティレベルの著しい低下を避けることができる。したがって、例えば運転者が不在であってもセキュリティレベルを下げることができ、管理者が容易にセキュリティレベルを変更することができる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記管理者用端末装置は、管理者用暗証番号の変更の指令を送信可能とし、前記記憶手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて管理者用暗証番号を書換える。
【0010】
これにより、例えば管理者が管理者用暗証番号を運転者に教示した場合等において、その後、管理者用端末装置で管理者用暗証番号を容易に変更することができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記管理者用端末装置は、始動ロック機能を有効とする指令及び無効とする指令を選択的に送信可能とし、前記建設機械のロック解除制御手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて始動ロック機能の無効化が設定された場合、前記暗証番号入力手段で暗証番号が入力されなくとも前記建設機械の始動ロック状態を解除する。
【0012】
これにより、例えば建設機械が盗難される可能性が低い場合等において、管理者用端末装置で始動ロック機能の無効化を設定することができ、暗証番号を入力する運転者の煩わしさを軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者の煩わしさを軽減しつつ、管理者が容易にセキュリティレベルを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による建設機械の盗難防止システムの全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による油圧ショベルの運転席廻りの詳細構造を表す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による油圧ショベルの油圧駆動装置のうちブームに係わる要部構成を表す油圧回路図である。
【図5】本発明の一実施形態による油圧ショベルに搭載された盗難防止装置の構成を表す電気回路図である。
【図6】本発明の一実施形態による油圧ショベルのキー入力装置の詳細構造を表す上面図である。
【図7】本発明の一実施形態による油圧ショベルのコントローラにおける始動ロック制御の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による油圧ショベルのコントローラにおける解除制御の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による端末装置の表示画面を表す図である。
【図10】本発明の他の実施形態による端末装置の表示画面を表す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施形態による建設機械の盗難防止システムの全体構成を表す概略図である。
【0017】
この図1において、建設機械の盗難防止システムは、例えば作業現場等に配置され、盗難防止装置101を搭載した複数の建設機械102(図1中では、建設機械の一例として油圧ショベルを示しているが、これに限られない。)と、これら建設機械102との間で無線通信を行う無線通信局103と、例えば建設機械102を製造したメーカ等に設けられ、公衆回線通信網104(例えばインターネット等)を介し無線通信局103に接続されたセンタサーバ105と、例えば建設機械102を所有又は管理するレンタル会社等に設けられ、公衆回線通信網104を介しセンタサーバ105に接続された端末装置106(例えばパーソナルコンピュータ等)とで構成されている。
【0018】
センタサーバ105は、各建設機械102における機種、号機、及びその管理者等の情報を記憶したデータベースを有している。また、センタサーバ105は、建設機械102から受信した情報をデータベース上で記憶するとともに端末装置106で提供したり、端末装置106で入力された情報をデータベース上で記憶するとともに建設機械102へ送信したりするようになっている。
【0019】
次に、建設機械102の一例である油圧ショベルの詳細について説明する。図2は、油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、図3は、油圧ショベルの運転席廻りの詳細構造を表す斜視図である。なお、以降、油圧ショベルが図2に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図2中左側)、後側(図2中右側)、左側(図2中紙面に向かって手前側)、右側(図2中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0020】
これら図2及び図3において、油圧ショベルは、左右の履帯(クローラ)1を備えた下部走行体2と、この下部走行体2の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3の基礎下部構造をなす旋回フレーム4に水平方向に回動可能に取り付けられたスイングポスト5と、このスイングポスト5に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)取り付けられた多関節型のフロント作業機6と、旋回フレーム4上に設けられたいわゆるキャノピータイプの運転室7と、旋回フレーム4上の運転室7以外の大部分を覆う上部カバー8とを備えている。上部カバー8の内部には、後述するエンジン等の機器が収納されている。
【0021】
下部走行体2は、略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左右両側の後端近傍に回転自在に支持された左右の駆動輪10と、これら左右の駆動輪10をそれぞれ駆動する左右の走行用油圧モータ11と、トラックフレーム9の左右両側の前端近傍に回転自在に支持され、履帯1を介し駆動輪10の駆動力でそれぞれ回転される左右の従動輪(アイドラ)12と、トラックフレーム9の前方側に上下動可能に設けられ、ブレード用油圧シリンダ13により上下動する排土用のブレード14とを備えている。また下部走行体2の中央部には旋回台軸受(旋回輪)15が配置され、この旋回輪15の中心近傍に、下部走行体2に対し旋回フレーム4を旋回させる旋回用油圧モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0022】
スイングポスト5は、垂直ピン(図示せず)を介し旋回フレーム4に対し水平に回動可能となっている。また、スイングポスト5は、旋回フレーム4に設けられたスイング用油圧シリンダ16に、連結ピン(図示せず)を介して連結されており、スイング用油圧シリンダ16の伸縮でスイングポスト5全体が鉛直方向の軸心まわりに回動することによって、フロント作業機6が左右にスイングするようになっている。
【0023】
フロント作業機6は、スイングポスト5に回動可能に連結されたブーム17と、このブーム17の先端部に回動可能に結合されたアーム18と、このアーム18の先端部に回動可能に結合されたバケット19とを備えている。そして、ブーム17、アーム18、及びバケット19は、それぞれブーム用油圧シリンダ20、アーム用油圧シリンダ21、及びバケット用油圧シリンダ22により動作するようになっている。
【0024】
運転室7は、旋回フレーム4上の左側に設けられており、操作者が着座する座席(運転席)23と、この座席23の上方に設けられたルーフ24と、このルーフ24を支持する支柱25とを有している。
【0025】
座席23の前方側(図3中下側)には、左右の走行用油圧モータ11をそれぞれ駆動し油圧ショベルの前進又は後進走行等をさせるための手でも足でも操作可能な左右の走行用操作レバー26L,26Rが設けられている。左走行用操作レバー26Lのさらに左側(図3中右側)足元部分には、オプション用油圧アクチュエータ(例えばブレーカ用油圧モータ)を駆動するためのオプション用操作ペダル27Lが設けられている。右走行用操作レバー26Rのさらに右側(図3中左側)足元部分には、スイング用油圧シリンダ16を駆動しスイングポスト5(言い換えればフロント作業機6全体)を左右にスイングさせるためのスイング用操作ペダル27Rが設けられている。
【0026】
座席23の左側には、左側又は右側に操作することで上記旋回用油圧モータを駆動し上部旋回体3を左側又は右側に旋回させるとともに前側又は後側に操作することでアーム用油圧シリンダ21を駆動しアーム18をダンプ又はクラウドさせる十字操作式の左手動操作レバー28Lが設けられている。この左手動操作レバー28Lの把持部には、ホーン29(後述の図5参照)を吹鳴させるホーンスイッチ30(後述の図5参照)が設けられている。また、左手動操作レバー28Lの下方側には、パイロットポンプ31(後述の図4参照)等の油圧源からの元圧を遮断可能な誤操作防止用のロックレバー32が設けられている。
【0027】
座席23の右側には、左側又は右側に操作することでバケット用油圧シリンダ22を駆動しバケット19をクラウド又はダンプさせるとともに前側又は後側に操作することでブーム用油圧シリンダ20を駆動しブーム17を下げ又は上げる十字操作式の右手動操作レバー28Rと、キースイッチ33やキー入力装置34等を備えたコンソールとが設けられている。
【0028】
上述した左右の履帯1、上部旋回体3、スイングポスト5、ブレード14、ブーム17、アーム18、及びバケット19は、油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置により駆動される被駆動部材を構成している。図4は、この油圧駆動装置のうちブーム17に係わる要部構成を例にとって表す油圧回路図である。
【0029】
この図4において、エンジン(原動機)35と、このエンジン35により駆動される可変容量型の油圧ポンプ36と、エンジン33により駆動される固定容量型の上記パイロットポンプ31と、これらポンプ36,31の圧油源となる作動油タンク37と、油圧ポンプ36からの吐出圧油によって駆動される上記ブーム用油圧シリンダ20と、油圧ポンプ36からブーム用油圧シリンダ20への圧油の流れを制御する油圧パイロット式のブーム用コントロールバルブ38と、ブーム17等の動作を指示する上記右手動操作レバー28Rを備えた油圧パイロット方式の操作レバー装置39と、パイロットポンプ31からの元圧を遮断可能とするロックバルブ40とが設けられている。
【0030】
操作レバー装置39は、上記右手動操作レバー28Rと、その操作量に応じてパイロットポンプ31からの1次パイロット圧を減圧した操作パイロット圧(2次パイロット圧)を出力する一対の減圧弁39a,39bとを備えている。そして、操作レバー装置39の操作レバー28Rを図4中矢印A側(又はその反対側、以下かっこ内対応関係同じ)に操作すると、その操作量に応じて減圧弁39a(又は39b)で生成した操作パイロット圧をブーム用コントロールバルブ38のパイロット操作部38a(又は38b)へ出力し、これによってコントロールバルブ38を切換えるようになっている。
【0031】
ロックバルブ40は、パイロットポンプ31と操作レバー装置39等との間の油圧管路に設けられており、上記ロックレバー32の操作に応じて切換えられて油圧管路を連通・遮断可能とするものである。すなわち、ロックレバー32を下降位置(下げた状態)に引き下げると、通常、ロックバルブ40のソレノイド駆動部40aが通電されて(詳細は後述)、ロックバルブ40が図4中左側に示す連通位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ31からの元圧(1次パイロット圧)が操作レバー装置39等へ導かれるようになっている。一方、ロックレバー32を上昇位置(上げた状態)に引き上げると、ロックバルブ40のソレノイド駆動部40aが通電されず、バネ40bの付勢力で、ロックバルブ40が図4中右側に示す遮断位置に切換えられ、1次パイロット圧が遮断されるようになっている。
【0032】
次に、上述した油圧ショベルに搭載された盗難防止装置101の詳細について説明する。図5は、盗難防止装置101の構成を表す電気回路図である。
【0033】
この図5において、盗難防止装置101は、上記キースイッチ33と、上記キー入力装置34と、上記無線通信局103から送信されたデータを受信するともに、キースイッチ33及びキー入力装置34からの信号を入力して、所定の制御処理を行うコントローラ41と、このコントローラ41の制御によって駆動するスタータ用第1リレー42、パイロット用第1リレー43、ホーン用リレー44、及びブザー45とで構成されている。
【0034】
スタータ用第1リレー42は、例えば常閉接点42a及び駆動部42bを有しており、コントローラ41の制御によって駆動部42bが通電されると接点42aが開き状態となる。スタータ用第1リレー42の接点42は、スタータ用第1リレー(セフティリレー)46の接点46aとスタータ47との間に介装されている。
【0035】
キースイッチ33は、詳細を図示しないが、キーシリンダと、このキーシリンダに挿入して回転操作可能なエンジンキーとで構成されている。そして、例えばキースイッチ33がOFF位置に操作されると、電気系統をOFF状態とするとともに上記エンジン35を停止させる。また、例えばキースイッチがON位置又はSTART位置に操作されると、電気系統をON状態とするようになっている。また、例えばキースイッチ33がSTART位置に操作された場合は、その操作信号がスタータ用第2リレー46の駆動部46bに出力されて、スタータ用第2リレー46の接点46aが閉じ状態となる。このとき、スタータ用第1リレー42の接点42aが閉じ状態であれば、接点42a及び接点46aを介しスタータ47が給電されて駆動し、エンジン33を起動するようになっている。
【0036】
パイロット用第1リレー43は、例えば常開接点43a及び駆動部43bを有しており、コントローラ41の制御によって駆動部43bが通電されると接点43aが閉じ状態となる。パイロット用第1リレー43の接点43aは、ロックスイッチ48とパイロット用第2リレー49の駆動部49bとの間に介装されている。ロックスイッチ48は、上記ロックレバー32が上昇位置にある場合に開き状態となる。一方、ロックレバー32が下降位置にある場合に閉じ状態となる。このとき、パイロット用第1リレー43の接点43aが閉じ状態であれば、接点43a及びロックスイッチ48を介しパイロット用第2リレー49の駆動部49bが通電されて、パイロット用第2リレー49の接点49aが閉じ状態となる。これにより、パイロット用第2リレー49の接点49aを介しロックバルブ40のソレノイド駆動部40aが通電されて、ロックバルブ40が連通位置に切換えられるようになっている。
【0037】
ホーン用リレー44は、例えば常開接点44a及び駆動部44bを有しており、コントローラ41の制御によって駆動部44bが通電されると接点44aが閉じ状態となる。そして、ホーン用リレー44の接点44aを介し上記ホーン29が通電されて駆動するようになっている。なお、ホーン用リレー44の駆動部44aは、上記ホーンスイッチ30の操作によっても通電されるようになっている。
【0038】
キー入力装置34は、図6に示すように、暗証番号を入力するための0〜9までのテンキー50と、暗証番号の設定及び変更を指示する設定キー(ファンクションキー)51と、入力した暗証番号の取消等を指示する取消キー(クリアキー)52と、油圧ショベルの始動ロック状態及び解除状態をそれぞれ表示する施錠表示灯(LED)53及び開錠表示灯(LED)54とを有している。なお、テンキー50、設定キー51、及び取消キー52はそれぞれ、照明灯(LED)が内蔵されている。
【0039】
前述の図5に戻り、コントローラ41は、通信局103からのデータを受信する通信部55と、キースイッチ33及びキー入力装置34との間で信号を入出力する入出力部56と、制御処理プログラムを記憶するとともに、運転者が設定変更可能なユーザ暗証番号(運転者用暗証番号)及び運転者が設定変更不能なオーナ暗証番号(管理者用暗証番号)を記憶する記憶部(メモリ)57と、この記憶部57に記憶された制御処理プログラムに基づいて制御処理を行う制御部(CPU)58と、この制御部58からの指令に応じてスタータ用第1リレー42、パイロット用第1リレー43、ホーン用リレー44、及びブザー45を制御するドライバ59とで構成されている。
【0040】
そして、コントローラ41は、始動ロック機能(盗難防止機能)として、キースイッチ33がON位置又はSTART位置に操作された場合に、スタータ用第1リレー42の接点42aを開き状態として、エンジン35の起動が不能な状態とする。また、コントローラ41はパイロット用第1リレー43の接点43aを開き状態として、ロックバルブ39の連通位置への切換が不能な状態とし、これによって油圧アクチュエータの動作が不能な状態とする。このようにキースイッチ33がON位置又はSTART位置に操作された場合にエンジン35の起動及び油圧アクチュエータの動作が不能な状態とすることを、以降、始動ロック状態にすると称す。
【0041】
コントローラ41は、キースイッチ33がOFF位置にあるとき(又はエンジン35が停止状態にあるとき)の継続時間tを測定し、その継続時間tが予め設定された所定の待機時間T以上となるか、或いはキー入力装置34で所定のスイッチ(例えばテンキー50、設定キー51、及び取消キー52のいずれか1つ)が操作されると、上述した始動ロック状態にするようになっている。このようなコントローラ41の制御手順を図7により説明する。図7は、コントローラ41における始動ロック制御の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0042】
この図7において、まずステップ110において、キースイッチ33がOFF位置に切換えられると、エンジン35が停止する。そして、ステップ120に進んで、コントローラ41は、キー入力装置34で所定のスイッチ(例えばテンキー50、設定キー51、及び取消キー52のいずれか1つ)が操作されたかどうかを判定する。例えば所定のスイッチが操作されない場合は、ステップ120の判定が満たされず、ステップ130に移る。
【0043】
ステップ130では、コントローラ41は、キースイッチ33がOFF位置に切換えられてからの継続時間tを測定する。このとき、キー入力装置34の施錠表示灯53を消灯、開錠表示灯54を点滅させる。そして、ステップ140に進んで、コントローラ41は、測定した継続時間tが所定の待機時間T以上であるかどうかを判定する。
【0044】
キースイッチ33のOFF位置での継続時間tが所定の待機時間Tに到達するまでは、ステップ140の判定が満たされず、前述のステップ120〜140を繰り返す。そして、キースイッチ333のOFF位置での継続時間tが所定の待機時間Tに到達すると、ステップ140の判定が満たされ、ステップ150に移る。また、ステップ110においてキー入力装置33で所定のスイッチが操作された場合は、その判定が満たされ、ステップ150に移る。ステップ150では、コントローラ41は始動ロック状態とする。それ以降、キー入力装置32の施錠表示灯57を点滅、開錠表示灯58を消灯させる。
【0045】
ここで本実施形態の大きな特徴として、端末装置106は、オーナロック設定(第2始動ロック設定)及びユーザロック設定(第1始動ロック設定)を選択可能とし、その指令が建設機械102に送信されるようになっている。コントローラ41は、その指令に応じてオーナロック設定又はユーザロック設定を設定する。そして、例えばユーザロック設定が設定された場合は、キー入力装置33で入力された暗証番号と記憶部57で記憶されたユーザ暗証番号及びオーナ暗証番号のうちの一方とが一致したときに始動ロック状態を解除する。一方、例えばオーナロック設定が設定された場合は、キー入力装置33で入力された暗証番号と記憶部57で記憶されたユーザ暗証番号とが一致しても始動ロック状態を解除せず、オーナ暗証番号と一致したときに始動ロック状態を解除するようになっている。このような制御手順を図8により説明する。図8は、コントローラ41における解除制御の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0046】
この図8において、まずステップ210において、油圧ショベルの始動ロック状態で、キースイッチ33がON位置に切換えられる。このとき、コントローラ41は、キー入力装置34の施錠表示灯53及び開錠表示灯54を消灯させ、テンキー50、設定キー51、及び取消キー52に内蔵された全ての照明灯を点灯させる。そして、ステップ220に進んで、キー入力装置34で暗証番号が入力されると、ステップ230に進み、コントローラ41は、キー入力装置34で入力された暗証番号と記憶部35で記憶されたオーナ暗証番号とが一致しているかどうかを判定する。例えばオーナ暗証番号と一致すると判定された場合は、ステップ230の判定が満たされ、ステップ240に移る。ステップ240では、ブザー45を3回吹鳴させる。また、キー入力装置34の施錠表示灯57を消灯、開錠表示灯58を点灯させ、テンキー50、設定キー51、及び取消キー52に内蔵された全ての照明灯を消灯させる。そして、ステップ250に進んで、始動ロック状態を解除する。すなわち、スタータ用第1リレー42の接点42aを閉じ状態として、エンジン35の起動が可能な状態とする。また、パイロット用第1リレー43の接点43aを閉じ状態として、ロックバルブ40の連通位置への切換えが可能な状態とし、これによって油圧アクチュエータの動作が可能な状態とする。
【0047】
ステップ230においてオーナ暗証番号と一致しないと判定された場合は、その判定が満たされず、ステップ260に移る。ステップ260では、キー入力装置34で入力された暗証番号と記憶部35で記憶されたユーザ暗証番号とが一致しているかどうかを判定する。例えばユーザ暗証番号と一致すると判定された場合は、ステップ260の判定が満たされ、ステップ270に移る。ステップ270では、オーナロック設定が設定されているかどうかを判定する。例えばオーナロック設定が設定されていない場合(言い換えれば、ユーザロック設定が設定されている場合)は、ステップ270の判定が満たされず、前述のステップ240及びステップ250に進んで、始動ロック状態を解除する。
【0048】
一方、例えばオーナロック設定が設定されている場合は、ステップ270の判定が満たされ、ステップ280に移る。ステップ280では、ブザー45及びホーン29を所定時間(例えば30秒程度)連続吹鳴させる。また、始動ロック状態を解除しないので、キー入力装置34の施錠表示灯53を点滅、開錠表示灯54を消灯させ、テンキー50、設定キー51、及び取消キー52に内蔵された全ての照明灯を消灯させる。また、ステップ260においてユーザ暗証番号と一致しないと判定された場合は、その判定が満たされず、前述のステップ280に進んで同様の手順を行う。
【0049】
また、コントローラ41の記憶部57に記憶されたユーザ暗証番号を変更することを意図し、始動ロック解除の状態で、例えばテンキー50のうちの「1」キーと設定キー51が同時に操作されると、暗証番号変更モードに移行する。そして、記憶部57に予め記憶されたユーザ暗証番号がキー入力装置34で入力されてから、新規のユーザ暗証番号が入力されると、この新規の暗証番号が記憶部57で書換えられるようになっている。
【0050】
次に、端末装置106について説明する。図7は、端末装置106の表示画面を一例として表す図である。
【0051】
この図7において、端末装置106は、ロック設定領域60及びオーナ暗証番号設定領域61を有する画面62を表示する。ロック設定領域60は、機種入力欄63、号機入力欄64、ロック設定選択欄65、及び確定ボタン66で構成されている。機種入力欄63及び号機入力欄64は、プルダウンメニュー形式であり、ログインした管理者に関連する建設機械102における機種及び号機のリストがデータベースから抽出されて表示され、これらのリストから機種及び号機を選択して入力可能としている。ロック設定選択欄65は、上述したオーナロック設定のON、又はOFF(言い換えれば、ユーザロック設定)を選択可能としている。そして、確定ボタン66を操作することにより、機種入力欄63及び号機入力欄64で入力された機種及び号機に該当する建設機械102に対して、ロック設定選択欄65で選択されたオーナロック設定又はユーザロック設定の指令が送信されるようになっている。上述したコントローラ41は、この指令に応じてオーナロック設定又はユーザロック設定を設定するようになっている。
【0052】
オーナ暗証番号設定領域61は、新規のオーナ暗証番号を入力可能な暗証番号入力欄67と、確定ボタン68とで構成されている。そして、確定ボタン68を操作することにより、ログインした管理者に関連する全ての建設機械102に対して、オーナ暗証番号入力欄67で入力された新規のオーナ暗証番号に変更する指令が送信されるようになっている。上述したコントローラ41は、この指令に応じて記憶部57のオーナ暗証番号を書換えるようになっている。
【0053】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0054】
例えば管理者が建設機械102の使用許可を運転者に与えることを意図し、端末装置106の操作入力によってユーザロック設定の指令を建設機械102に送信すると、建設機械102のコントローラ41は、その指令に応じてユーザロック設定を設定する。そして、建設機械102を始動することを意図して、運転者がキースイッチ33をON操作し、キー入力装置34でユーザ暗証番号を入力すると、コントローラ41は始動ロック状態を解除して、エンジン35の起動が可能な状態とする。また、運転者がユーザ暗証番号を失念した場合でも、管理者からオーナ暗証番号を取得して入力することにより、始動ロック状態を解除することができる。
【0055】
一方、例えば管理者が建設機械102の使用許可を運転者に与えないことを意図し、端末装置106の操作入力によってオーナロック設定の指令を建設機械102に送信すると、建設機械102のコントローラ41は、その指令に応じてオーナロック設定を設定する。これにより、運転者がキー入力装置34でユーザ暗証番号を入力しても、始動ロック状態を解除することができなくなり、キー入力装置34でオーナ暗証番号を入力したときだけ、始動ロック状態を解除することができる。すなわち、セキュリティレベルを高めることができる。そして、オーナロック設定が設定された際にユーザ暗証番号が変更されていないことから、オーナロック設定からユーザロック設定に変更された場合には、運転者が管理者から暗証番号を取得する必要がなく、運転者用暗証番号を入力すれば始動ロック状態を解除することができる。したがって、運転者の煩わしさを軽減することができる。また、端末装置106からの指令に応じてオーナロック設定から、運転者が暗証番号を入力しなくともエンジンを始動可能な状態とするのではなく、暗証番号の入力を必要とするユーザロック設定に変更することができ、セキュリティレベルの著しい低下を避けることができる。したがって、例えば運転者が不在であってもセキュリティレベルを下げることができ、管理者が容易にセキュリティレベルを変更することができる。
【0056】
本発明の他の実施形態を、図10により説明する。本実施形態は、建設機械102における始動ロック機能の有効化及び無効化を選択的に設定可能とした実施形態である。なお、本実施形態において、上記一実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0057】
図10は、本実施形態における端末装置106の表示画面を一例として表す図である。
【0058】
本実施形態では、画面62のロック設定領域60は、機種入力欄63、号機入力欄64、ロック機能選択欄69、ロック設定選択欄65、及び確定ボタン66で構成されている。ロック機能選択欄69は、上述した始動ロック機能のON、又はOFFを選択可能としている。そして、例えばロック機能選択欄69でONが選択された場合に確定ボタン66を操作すると、機種入力欄63及び号機入力欄64で入力された機種及び号機に該当する建設機械102に対して、ロック設定選択欄65で選択されたオーナロック設定又はユーザロック設定の指令が送信される。一方、例えばロック機能選択欄69でOFFが選択された場合に確定ボタン66を操作すると、機種入力欄63及び号機入力欄64で入力された機種及び号機に該当する建設機械102に対して、始動ロック機能の無効化の指令が送信される。そして、コントローラ41は、この無効化の指令に応じて始動ロック機能の無効化を設定し、キー入力装置34で暗証番号が入力されなくとも始動ロック状態を解除する。
【0059】
このような本実施形態においても、上記一実施形態と同様、運転者の煩わしさを軽減しつつ、管理者が容易にセキュリティレベルを軽減することができる。また、本実施形態においては、例えば建設機械102が盗難される可能性が低い場合等において、端末装置106で始動ロック機能の無効化を設定することができ、暗証番号を入力する運転者の煩わしさを軽減することができる。
【符号の説明】
【0060】
34 キー入力装置(暗証番号入力手段)
41 コントローラ(記憶手段、ロック解除手段)
101 盗難防止装置
102 建設機械
103 無線通信局(通信手段)
104 公衆回線通信網(通信手段)
106 端末装置(管理者用端末装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が暗証番号を入力可能な暗証番号入力手段、運転者用暗証番号及び管理者用暗証番号を記憶する記憶手段、並びに前記記憶手段で記憶された暗証番号と前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号とが一致したときに始動ロック状態を解除するロック解除手段を備えた建設機械と、前記建設機械から離れた位置に配置され、通信手段を介し前記建設機械への指令を送信可能な管理者用端末装置とを備えた建設機械の盗難防止システムにおいて、
前記管理者用端末装置は、第1始動ロック設定の指令及び第2始動ロック設定の指令を選択的に送信可能とし、
前記建設機械のロック解除手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて第1始動ロック設定が設定された場合は、前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号と前記記憶手段で記憶された運転者用暗証番号及び管理者用暗証番号のうちの一方とが一致したときに始動ロック状態を解除し、前記管理者用端末装置からの指令に応じて第2始動ロック設定が設定された場合は、前記暗証番号入力手段で入力された暗証番号と前記記憶手段で記憶された運転者用暗証番号とが一致しても始動ロック状態を解除せず、前記記憶手段で記憶された管理者用暗証番号と一致したときに始動ロック状態を解除することを特徴とする建設機械の盗難防止システム。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の盗難防止システムにおいて、前記管理者用端末装置は、管理者用暗証番号の変更の指令を送信可能とし、前記記憶手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて管理者用暗証番号を書換えることを特徴とする建設機械の盗難防止システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械の盗難防止システムにおいて、前記管理者用端末装置は、始動ロック機能を有効とする指令及び無効とする指令を選択的に送信可能とし、前記建設機械のロック解除制御手段は、前記管理者用端末装置からの指令に応じて始動ロック機能の無効化が設定された場合、前記暗証番号入力手段で暗証番号が入力されなくとも前記建設機械の始動ロック状態を解除することを特徴とする建設機械の盗難防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−905(P2011−905A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143344(P2009−143344)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】