説明

建造物等用外部防護装置

【課題】 自然エネルギーを利用して自動的にビル外壁の狭い段差スペースや、橋脚ケーソン上の段差部分などに付着する塵埃や着雪を確実に除去できると共に、害鳥による糞害や営巣を確実に阻止可能とすることができる新たな外部防護技術を提供する。
【解決手段】 建造物8高所の比較的細巾状平坦面81上の一方端縁で、該平坦面81よりも高い位置に耐候性板体製振動板2の基端22がわ要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、その軒先端21を当該平坦面81他方端縁よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、同軒先端21の下面23に、別途設置した風車3から誘導した回転力伝動機構4に接続したカム5を当接してなる建造物等用外部防護装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の着雪防止や害鳥の忌避などに関連するものであり、特にビル外壁の段差や、屋根のパラメット、橋脚、鉄塔、煙突、船舶などのような高所の狭い場所へ消雪や除塵、防鳥などを可能とする防護装置を製造する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
ビル外壁の段差部分やパラペット、橋脚ケーソン上の段差など平坦面状で比較的巾狭いスペースには、冬期に雪が積もり易く、しかも除雪するのが難しい上、夜間の冷え込みで積雪が凍結して成長し、その雪庇が日中の温度上昇による融解や、さらなる着雪、氷柱の重みなどで落下し、下を通行する人や駐車中の自動車などに降りかかって大きな事故に発展してしまう虞がある外、着雪の無い春から秋にかけて雀やカラス、鳩などの外、椋鳥や岩燕などの夏鳥などによる糞害や営巣などによる汚損が発生し易い上、高所のため、除雪、清掃およびメンテナンスに非常な危険を伴い、多大な手間と経費とを要していた。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を憂慮し、例えば、下記の特許文献1(1)および(2)に提案されているものに代表されるように、モーターやコンプレッサーを駆動源として建築物屋根上の積雪を自動的且つ強制的に除雪可能とするものや、同特許文献1(3)ないし(6)に見られるように、風車で得た自然エネルギーを動力原として直接雪庇を切断したり、太陽光発電パネルをブラシ清掃したり、または、風力発電で得た電力でヒーターや流体を過熱して消雪に利用したりするもの、もしくは、例えば、特許文献1(7)および(8)のように、風力を利用して磁石を自動的に動かしたり、威嚇音を発生する動力として、鳥類を忌避可能としたものなどが散見される。
【0004】
しかし、特許文献1(1)および(2)に示されているようなものは、モーターやコンプレッサーなどの駆動源や、その駆動力を除雪装置部分に伝達する伝達機構などが不可欠であり、装置全体が複雑且つ大掛かりで高価なものとなってしまう上、装置を駆動する毎に電力を消費して多大な経費を要するものとなってしまうという欠点があり、特許文献1(3)ないし(6)の風車で得た自然の風力エネルギーをそのまま原動力とするか、または、発電力として利用し、得られた電力で高所除雪や消雪、高所清掃などに利用可能としたものは、自然に優しく経済的なものであるにはしても、その殆ど(特許文献1(5)以外)が、防鳥の機能を有しておらず、除雪や消雪などの単一の用途にしか利用できないという欠点があり、また、特許文献1(5)のように、垂直軸風車それ自体に清掃用ブラシを一体化してなるものは、塵埃の除去や害鳥の忌避などには有効であるが、ブラシが同一箇所を回転するから着雪やそれが凍結してできた氷の塊などを除去するのは難しいという欠点を有しており、また、特許文献1(7)および(8)に代表する鳥類の忌避装置類は、除雪や消雪、除塵の機能を全く有していないという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2007−285111号公報 (2)特開平5−156760号公報 (3)特開2007−191994号公報 (4)特開2003−35250号公報 (5)特開平10−311271号公報 (6)特開平10−110556号公報 (7)特開平10−248471号公報 (8)実開昭62−144489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種除雪、消雪装置や清掃装置、または、鳥類の忌避装置類などは、何れも単一の機能を有するに留まり、除塵、除雪および害鳥の忌避という機能を全て兼ね備えているものは未だ存在せず、ビル外壁の狭い段差スペースや橋脚ケーソン上の段差部分などの危険な高所に付着する氷雪、雪庇、氷柱、塵埃などを、自然エネルギーを利用して自動的に除去できる上、鳥の糞害や営巣などを確実に阻止できるようにする建造物等用としての外部防護装置は未だ存在しておらず、土木建築、建設業および舗装工事業界に携わるものとして、これら課題の解決を放置する訳にはいかなかった。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、自然エネルギーを利用して自動的にビル外壁の狭い段差スペースや、橋脚ケーソン上の段差部分などに付着する塵埃や着雪を確実に除去できると共に、害鳥による糞害や営巣を確実に阻止可能とすることができる新たな外部防護技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の建造物等用外部防護装置を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の建造物等用外部防護装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、建造物高所における比較的細巾状平坦面上であって、その奥行き寸法方向の何れか一方端縁近傍で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の振動板を、その軒先端が当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、該軒先端とは反対がわである基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、同振動板の軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ当該振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを設置してなるものとした構成を要旨とする建造物等用外部防護装置である。
【0008】
この基本的な構成からなる建造物等用外部防護装置を、より具体的なものとして示すと、建造物高所における比較的細巾状平坦面上の適所に固定可能な設置フレームを有し、同設置フレームの、該平坦面の奥行き寸法方向の何れか一方端縁近傍で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の振動板を、その軒先端が当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、該軒先端とは反対がわである基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、同設置フレームの該振動板軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ当該振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを設置し、自然の風を受けた風車の回転力を回転力伝動機構およびカムを介して、当該振動板軒先端がわの揺動運動に変換可能としてなるものとした構成からなる建造物等用外部防護装置となる。
【0009】
これを換言すると、建造物高所における比較的細巾状平坦面上であって、その奥行き寸法方向の中央で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の一対の振動板を切妻屋根型配置とするよう、それら軒先端が夫々当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、各軒先端とは反対がわで非接触対峙する基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、各振動板の軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した少なくとも1基の風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ各振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを夫々設置してなるものとした構成からなる建造物等用外部防護装置ということができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、この発明の建造物等用外部防護装置によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、電力や原動機などを必要とせず、自然風を風車に受けるだけで建造物高所における比較的細巾状平坦面上に配した振動板を自動的に揺動させ、該振動板上に積もった塵埃や雪を強制的に落下、清掃可能なものとなり、従前までであれば、当該建造物高所の平坦面上に積もった雪が巨大な雪庇や氷柱に成長し、これを放置すると落下事故に繋がる虞があるから、直ちに高所作業を実施して安全に排除しなければならず、清掃、除雪作業者には大きな危険を、また、建造物管理者には大きな経済的負担とを強いるものとなっていたが、こうした極めて危険で負担の大きな高所作業を一切不要とすることができる上、傾斜姿勢に揺動自在で野鳥などが留まるには極めて不安定な状態に設置した振動板は、害鳥を忌避して営巣を確実に防止できるから、鳥インフルエンザの発生などで近年危険視されている野鳥による糞害を確実に阻止し、建造物を衛生的に維持、管理することができるという秀れた特徴が得られるものである。
【0011】
加えて、設置フレームに振動板を軸着してなるものは、建造物高所への位置決め設置作業を各段に効率化するものとなり、カムや緩衝機構などの各部品類の位置決め作業も不要となり、設置フレームを設置するだけで各部品同士が互いに正確に位置規制されたものとなることから、足場の狭い高所での設置作業を各段に安全且つ迅速に行えるようにし、大幅な施工経費の削減を達成可能にするものとなる。
【0012】
また、設置対象となる細巾状平坦面が、パラペットや欄干などの概略凸条をなす建造物平坦面である場合などに、その奥行き寸法方向の中央で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の一対の振動板を切妻屋根型配置とするよう組み合わせてなるものは、細巾状平坦面上に塵埃や雪が積もるのを確実に防止するなどの前述の効果に加え、振動板下がわへの積雪や凍結を防止するものとなる上、切妻屋根型配置の一対の振動板同士が、互いの下面下がわ空間を閉鎖するものとなって、振動板下に吹き込む強風を受けてカムの回転動に関わらず、揺動してしまうのを阻止し、安定した揺動運動を得ることができるという効果を発揮するものとなる。
【0013】
そして、緩衝機構を組み込んでなるものは、振動板の揺動運動に伴う騒音や振動の発生を抑制して各段に静粛且つ安全で耐久性に秀れた建造物等用外部防護装置を提供可能なものとし、ゴム塊、軟質合成樹脂塊または圧縮スプリングなどの弾性体からなる圧縮緩衝体を組み込んだものは、振動板の揺動運動の落下衝撃を効果的に吸収して騒音や振動の発生を大幅に低減するものとなり、ゴム紐、軟質合成樹脂紐または引張スプリングなどの弾性伸縮体からなる伸縮緩衝体を組み込んだものは、振動板先端がわが、より正確にカムの回転動に追従するものとるから、一段と静粛で円滑な揺動運動を実現化できるものとなり、それら圧縮緩衝体および伸縮緩衝体の双方を組み込んでなるものは、さらに各段に秀れた耐久性と静粛性とを実現化できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
振動板は、建造物高所や屋外設置物などの比較的細巾状平坦面上に直接、塵埃や積雪が積もったり、野鳥などが止まったり、営巣したりしないよう被覆可能とすると共に、その外表面に付着した塵埃や積雪、野鳥の糞などを自動的に排除可能とするよう揺動可能となる機能を果たすものであり、屋外の設置に耐える耐候性板体製のものとし、その軒先端が当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした30°ないし80°望ましくは40°ないし45°の傾斜角度で下向き勾配に配した上、該軒先端とは反対がわである基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着可能なものとしなければならず、軒先端がわの適所に緩衝機構の一部または全部を設けたものとすることができる外、軒先端がわ下面の適所には、カムの当接、摺動を円滑化する低摩擦部品やガイドレールなどを設けたものとすることができ、さらに、当該平坦面に対して設置フレームを介して取り付け固定可能なものとするのが望ましく、激しい揺動に耐える亜鉛鍍金鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板、または、その他の耐候性金属板製とすることができる他、アクリル樹脂、ABS樹脂やポリカーボネートなどの合成樹脂製、あるいは、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなどの複合素材製、もしくは、それらの組み合わせからなるものなどとすることができる。
【0015】
風車は、自然風を受けて回転力を生じるものであり、その自然エネルギー利用の回転力を振動板軒先端がわの揺動に変換できるよう供給可能とするものであり、振動板設置箇所の近くで、支障のない適所に設置されたものとし、回転力伝動機構、および、それによって回転駆動可能なカムとを組み合わせ可能としたものとしなければならず、プロペラ型、オランダ型、多翼型、セルウィング型、かざぐるま型、リボン型、ループウイング型などの水平軸風車や、パドル型、サボニウス型、クロスフロー型、ジャイロミル型、ダリウス型、S字ロータ型などの垂直軸風車とすることができる外、それらの複数基を設けたものや、それらを組み合わせてなるもの、または、それらを組み合わせたものを複数基設け、同一の回転力伝動機構に接続したものなどとすることが可能である。
【0016】
回転力伝動機構は、風車が発生する回転力をカムの回転力とするよう伝達可能とするものであり、充分な耐久強度と低抵抗摩擦回転とを達成したものとしなければならず、後述する実施例に示すように、フレキシブルシャフトからなるものとすることができる外、複数のギアおよびシャフトを組み合わせてなるものや、ポンプやタービンを組み合わせた流体回路を利用したもの、または、発電機とモータを組み合わせた電気回路を利用したものなどに置き換え可能である。
【0017】
カムは、回転力伝動機構から伝達される回転力を振動板軒先端がわの揺動運動に変換可能とする機能を果たし、建造物高所における比較的細巾状平坦面上の、同平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所夫々に、水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ当該振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようにしたものとしなければならず、設置フレームの適所に着脱自在か、または、着脱不能に装着してなるものとすることができ、当該振動板軒先端がわを30°ないし80°望ましくは40°ないし45°の下向き傾斜角度範囲内で揺動可能なものとするのが望ましい。
【0018】
設置フレームは、振動板を建造物高所や屋外設置物などの比較的細巾状平坦面上に設置可能とするものであり、振動板の軒先端とは反対がわである基端の要所要所を該平坦面よりも高い位置に、水平軸心回りに揺動自在に軸着可能なものとしなければならず、ボルト結合用のフランジを一体化形成してなるものとすべきであり、後述する実施例に示すように、適所にカムを回転自在に軸着したものとすることができ、さらに、別の適所には緩衝機構を組み込んだものとすることができる。
【0019】
緩衝機構は、振動板軒先端がわの揺動運動による衝撃を円滑に緩衝可能とするものであり、例えば後述する実施例に示すように、振動板軒先端の落下に伴う打撃力を減衰、緩衝可能とするゴム塊、軟質合成樹脂塊または圧縮スプリングなどの弾性体からなる圧縮緩衝体や、振動板軒先端の揺動運動をカムの回転運動に静粛に追従可能とするゴム紐、軟質合成樹脂紐または引張スプリングなどの弾性伸縮体からなる伸縮緩衝体などとすることができる外、当該圧縮緩衝体および伸縮緩衝体を組み合わせたものなどとすることができる。
【0020】
当該建造物等用外部防護装置の設置対象は、建造物高所における比較的細巾状平坦面上であり、より具体的には、例えば、後述する実施例に示すように、ビル外壁の段差、屋根のパラペット上面、橋脚ケーソン上の段差などとすることができる外、実施例に示していないが、鉄塔や煙突などの段差部分や、船舶の高所にある狭い段差部分など、着雪や営巣し易い場所や塵埃が留まり易く、鳥害の発生が懸念される場所などに設置することができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0021】
図1の垂直軸風車利用の建造物等用外部防護装置の概念図、および、図2の振動板の側面図に示す事例は、建造物8高所の比較的細巾状平坦面81上の一方端縁で、該平坦面81よりも高い位置に耐候性板体製振動板2の基端22がわ要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、その軒先端21を当該平坦面81他方端縁よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、同軒先端21の下面23に、別途設置した風車3から誘導した回転力伝動機構4に接続したカム5を当接してなるものとした、この発明の建造物等用外部防護装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0022】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明における建造物等用外部防護装置1は、建造物8の高所における段差部分の比較的細巾状平坦面81の一辺から立ち上がる同垂直外壁82に対し、縦断面L字形の設置フレーム6を介してアンカーボルトやアンカーナット(図示せず)などを用いて確り固定してあり、該設置フレーム6の平坦面81よりも高い位置に、細長い矩形平板状であって、該平坦面81に一致するか、僅かに大きな長さ寸法であり、該平坦面81の巾寸法よりも大きく、しかも傾斜姿勢に垂れ下げ、その軒先端21が平坦面81よりも外がわに位置する巾寸法に設定したステンレス鋼板製振動板2の基端22の要所要所を、該平坦面81に平行な軸着水平軸24,24にて水平軸心回りに揺動自在に軸着したものとしてあり、同振動板2の長さ寸法方向の中央に位置する軒先端21がわ直下となる設置フレーム6には、振動板2の下面23に当接する位置に規制して配したカム5を水平軸心回りに回転自在に設置し、該カム5には、当該建造物8の平坦面81近傍となる適所に設置したパドル型の垂直軸風車3から誘導した回転力伝動機構4であるフレキシブルシャフト4を接続したものとし、図1中の白抜き矢印に示してあるように、該風車3に自然風が吹き付けると、該フレキシブルシャフト4が風車3の回転力を1:1の回転比率で、図2中に実線矢印で示してあるとおり、カム5を回転駆動可能なものとしてあり、同カム5は、その回転に伴って当該振動板2(軒先端21がわ)を同基端22軸がわ着水平軸24,24回りに40°ないし45°の垂下傾斜角度範囲内で揺動可能とするよう規制されたものとしてある。
【0023】
当該風車3は、図3の水平軸風車利用の建造物等用外部防護装置の概念図に示すように、プロペラ型の水平軸風車3からなるものとすることが可能であり、図4のビル外壁の段差部分に設けた建造物等用外部防護装置の側面図に示してあるとおり、該振動板2およびカム5は、設置フレーム6を介して建造物8であるビル8外壁段差部分の比較的細巾状平坦面81直上の垂直外壁82に設置したものとすることができる。
【0024】
当該建造物等用外部防護装置1は、図5の建造物陸屋根パラペット上に設置した建造物等用外部防護装置の側面図に示すように、建造物8である陸屋根パラペット8の細巾状平坦面81上に、その奥行き寸法方向の中央を境に、2基の縦断面L字形設置フレーム6,6の背面同士を結合させて固定し、互いの背面6,6結合部を境界に対称配置とするよう設置し、各設置フレーム6,6の該平坦面81奥行き寸法方向の中央配置となる背面寄り適所で、しかも同平坦面81よりも高い位置夫々から、一対の耐候性板体製振動板2,2を切妻屋根型配置とするよう、各軒先端21,21が夫々反対がわ向きで、当該平坦面81よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、各軒先端21,21とは反対がわである各基端22,22の要所要所夫々を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、各設置フレーム6,6の各振動板2,2軒先端21,21がわ夫々の直下で、当該平坦面81長さ寸法方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物8適所に別途設置した少なくとも1基の図示しない風車(3)から誘導した回転力伝動機構(4)に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ各振動板2,2の下面23,23夫々に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカム5,5を夫々設けてなるものとすることができる。
【0025】
また、建造物等用外部防護装置1は、図6の橋脚ケーソン上の段差部分に設置した建造物等用外部防護装置の側面図に示してあるように、建造物8である橋脚の上下中途部分に形成された外向きに露出する比較的細巾状平坦面81直上に配するよう、各平坦面81に連続する垂直外壁82に各設置フレーム6,6を夫々結合設置したものとすることができる。
【0026】
図7の圧縮緩衝体を組み込んだ建造物等用外部防護装置の側面図に示すように、振動板2軒先端21の長さ寸法方向中央1箇所か、または、適宜間隔置きの複数箇所かの何れか一方のカム5とは別の位置に、軒先端21の揺動最下点で、設置フレーム6の対応箇所に設けた硬質の衝突面部61に衝突可能で、球面体状または円筒面体状の何れかとしたゴム塊弾性体を先端に装着してなる圧縮緩衝体71を突設し、緩衝機構7を形成したものとすることが可能である。
【0027】
さらにまた、図8の伸縮緩衝体を組み込んだ建造物等用外部防護装置の側面図に示すように、振動板2軒先端21の長さ寸法方向中央1箇所か、または、適宜間隔置きの複数箇所かの何れか一方のカム5とは別の位置に、引張スプリング製の伸縮緩衝体72の一端を接続し、同伸縮緩衝体72の他端を対応する設置フレーム6適所に連結し、緩衝機構7を形成したものとすることが可能である。
【0028】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の建造物等用外部防護装置1は、図1および図2中に示すように、垂直軸風車3に自然風を受けると、その回転力をフレキシブルシャフト4がカム5に伝え、該カム5の回転動によって振動板2軒先端21がわが基端22がわの軸着水平軸24,24を中心に上下揺動し、振動板2上面に降り積もった塵埃や積雪を自動的に振り落とすものとなり、特に雪庇や氷柱などが発生、大型化する前段階で速やかに落下させることができる上、軒先端21がわが下り勾配となるようにした姿勢の振動板2が、40°ないし45°の急傾斜角度範囲内で自動的に揺動するから、鳥が止まって屯したり営巣するのを確実に忌避できるものとなって、従前までは、危険な高所作業によってのみ、汚れの清掃や、除雪、雪庇、氷柱または鳥の巣などの除去を行わなければならなかったが、こうした危険な作業を不要にすることができ、建造物の外壁や屋根を清潔に保ち、大型化した雪庇や氷柱の落下事故や鳥の糞害などを確実に防止して建造物周辺を安全で衛生的に維持、管理することができ、しかもステンレス鋼板製の軒先端21は錆びに強く、永年に亘って塗装補修などのメンテナンスが不要で、一段と経済的なものとなり、特に、季節風が強まる冬期には大きな除雪効果を達成できるものとなる。
【0029】
加えて、設置フレーム6を介して建造物8に設置可能なものとしてあるから、危険な高所設置作業中に、振動板2およびカム5の位置決めなどの困難な調整作業が一切不要となり、各段に正確で効率的な設置作業を実現化可能すると共に、該設置フレーム6を縦断面L字形としてあるから、図2、図4および図6中に示すように、様々な建造物8,8,……垂直外壁82,82,……に対して簡便に設置することが可能となり、しかも図5中に示すように、2基の建造物等用外部防護装置1,1の背面同士を結合して切妻屋根型配置に設置するだけで、パラペットなどの細巾状平坦面81を防護可能なものとすることができ、高所の設置作業効率およびその設置作業の安全性を各段に高めるたものとなる。
【0030】
さらに、図7に示すように、振動板2軒先端21に緩衝機構7である圧縮緩衝体71を設けたものは、揺動する軒先端21が落下する度毎に、そのゴム塊部分が、設置フレーム6衝突面部61に衝突して緩衝するものとなり、振動板2の揺動音を各段に低減して一層静粛に作動するものとなる上、振動板2や設置フレーム6およびカム5に加わる衝撃力を緩衝して、より耐久強度を高めたものとすることができる。
【0031】
そして、図8に示すように、振動板2軒先端21と設置フレーム6対応箇所との間に引張スプリング製伸縮緩衝体72からなる緩衝機構7を組み込んだものは、軒先端21の過剰な跳ね上がりを阻止してカム5の回転に追従して一段と静粛に揺動運動するものとなり、より耐久強度に秀れたものとすることができる。
【0032】
(結 び)
叙述の如く、この発明の建造物等用外部防護装置は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの除雪装置や風力利用の防鳥技術などに比較して、除雪や除塵、防鳥など巾広い効果を悉く達成可能とするものとなる上、高所の狭い場所に簡単、迅速且つ安全に設置することができると共に、自然の風力を利用するから各段に経済的なものとすることができ、部品点数が少なくメンテナンスの頻度を大幅に削減して、高所の狭い場所での危険な清掃や除雪作業などを一切不要にすることができるから、これまで冬期の極めて危険な高所作業などを強いられてきたビルや橋梁、鉄塔、船舶などの維持管理に携わる人々は固よりのこと、各種建造物類を建造、管理する各公共団体、各道路業界、建設業界、ビルメンテナンス業界、造船業界および海運業界などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、この発明の建造物等用外部防護装置の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】垂直軸風車を組み込んだ建造物等用外部防護装置を示す概念図である。
【図2】建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【図3】水平軸風車を組み込んだ建造物等用外部防護装置を示す概念図である。
【図4】ビル外壁の段差に設置した建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【図5】陸屋根パラペット上に設置した建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【図6】橋脚ケーソン上の段差に設置した建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【図7】圧縮緩衝体を組み込んだ建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【図8】伸縮緩衝体を組み込んだ建造物等用外部防護装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 建造物等用外部防護装置
2 振動板
21 同 軒先端
22 同 基端
23 同 下面
24 同 水平軸
3 風車
4 フレキシブルシャフト(回転力伝動機構)
5 カム
6 設置フレーム
61 同 衝突面部
7 緩衝機構
71 同 圧縮緩衝体
72 同 伸縮緩衝体
8 建造物
81 同 平坦面
82 同 垂直外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物高所における比較的細巾状平坦面上であって、その奥行き寸法方向の何れか一方端縁近傍で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の振動板を、その軒先端が当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、該軒先端とは反対がわである基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、同振動板の軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ当該振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを設置してなるものとしたことを特徴とする建造物等用外部防護装置。
【請求項2】
建造物高所における比較的細巾状平坦面上の適所に固定可能な設置フレームを有し、同設置フレームの、該平坦面の奥行き寸法方向の何れか一方端縁近傍で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の振動板を、その軒先端が当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、該軒先端とは反対がわである基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、同設置フレームの該振動板軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ当該振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを設置し、自然の風を受けた風車の回転力を回転力伝動機構およびカムを介して、当該振動板軒先端がわの揺動運動に変換可能としてなるものとしたことことを特徴とする建造物等用外部防護装置。
【請求項3】
建造物高所における比較的細巾状平坦面上であって、その奥行き寸法方向の中央で当該平坦面よりも高い位置に、耐候性板体製の一対の振動板を切妻屋根型配置とするよう、それら軒先端が夫々当該平坦面よりも僅かに外がわに位置するようにした下向き勾配に配した上、各軒先端とは反対がわで非接触対峙する基端の要所要所を水平軸心回りに揺動自在に軸着すると共に、同振動板の軒先端がわ直下で、当該平坦面長さ方向中央1箇所または適宜間隔置きの複数箇所には、当該建造物適所に別途設置した少なくとも1基の風車から誘導した回転力伝動機構に接続して水平軸心回りに回転駆動自在に軸着され、且つ各振動板の下面に当接、支持し得る位置に規制して配するようしたカムを夫々設置してなるものとしたことを特徴とする建造物等用外部防護装置。
【請求項4】
振動板軒先端がわの適所に、振動板軒先端がわのカムによる揺動運動の衝撃を緩衝可能とする緩衝機構を組み込んでなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の建造物等用外部防護装置。
【請求項5】
振動板軒先端がわ下面適所か、または、振動板軒先端がわ下面直下に対峙する建造物や設置フレームの適所かの少なくとも何れか一方に、カムによる降下位置で、同振動板軒先端がわ下面か、または、同振動板軒先端がわ下面直下に対峙する建造物や設置フレームの適所かの少なくとも何れか他方に接触可能とするよう、ゴム塊、軟質合成樹脂塊または圧縮スプリングなどの弾性体からなる圧縮緩衝体で緩衝機構を形成してなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の建造物等用外部防護装置。
【請求項6】
振動板軒先端がわの適所に、振動板軒先端がわのカムによる揺動運動に追従して伸縮自在となる、ゴム紐、軟質合成樹脂紐または引張スプリングなどの弾性伸縮体からなる伸縮緩衝体の一端を接続すると共に、同伸縮緩衝体の他端を対応する設置フレームか、または、建造物適所かの何れか一方に連結し、緩衝機構を形成してなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の建造物等用外部防護装置。
【請求項7】
振動板軒先端がわ下面適所か、または、振動板軒先端がわ下面直下に対峙する建造物や設置フレームの適所かの少なくとも何れか一方に、カムによる降下位置で、同振動板軒先端がわ下面か、または、同振動板軒先端がわ下面直下に対峙する建造物や設置フレームの適所かの少なくとも何れか他方に接触可能とするよう、ゴム塊、軟質合成樹脂塊または圧縮スプリングなどの弾性体からなる圧縮緩衝体を配した上、振動板軒先端がわの適所に、振動板軒先端がわのカムによる昇降振動に追従して伸縮自在となる、ゴム紐、軟質合成樹脂紐または引張スプリングなどの弾性伸縮体からなる伸縮緩衝体の一端を接続すると共に、同伸縮緩衝体の他端を対応する設置フレームか、または、建築物適所かの何れか一方に連結し、緩衝機構を形成してなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の建造物等用外部防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149184(P2011−149184A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10531(P2010−10531)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(505039642)和田工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】