説明

引き戸のための案内レールを有する走行装置

【解決手段】 戸棚1の天井9の上側、または底部7の下側で、レール要素19内において案内されている、位置移動装置13でもって、引き戸15は、同期して、平行に、この戸棚1から引き離され、且つその後、位置移動され得る。同様にこの引き戸15の下側縁部も案内するために、伝達軸83を介して、この引き戸15の移動が、この引き戸の上側縁部から、下側縁部に対して伝達される。この戸棚1、もしくは、この戸棚の底部7、天井9、および側壁3、および中間壁5において、如何なる切欠き部、または案内溝も、設備される必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、請求項1および9の上位概念に従う、引き戸のための案内レールを有する走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸は、戸棚の前面において、扉の外への旋回のために、空間が必要であること無しに、この戸棚を外から取り扱い可能にすることのための役目を果たす。戸棚が、ある程度の幅を超える場合、しばしば、2つ以上の引き戸が、戸棚の閉鎖のために設けられる。このような公知の引き戸は、この戸棚の天井に沿って及び/または底部内において装着されたレールの上で移動される。
引き戸が開放された場合、この引き戸は、隣接する引き戸の前または後ろに位置するに至る。これら引き戸において、如何なる、戸棚内部の最適な封隙も可能で無いことは欠点である。更に、平行に位置移動される引き戸は、美的な観点で、しばしば、不満足である。
【0003】
従来技術から、更に別の引き戸が公知であり、これら引き戸の場合、それぞれに少なくとも2つの引き戸が、閉鎖された状態において、共通の平面内において位置しており、且つ、摺動移動が可能である前に、開放のために、戸棚から離脱運動され得る。
このような公知の引き戸の場合、この引き戸は、両方の引き戸が端面側で互いに接し合うように当接する、もしくは互いに並列して位置する領域内において、先ず第一に、戸棚から離脱運動されねばならない。その際、この引き戸は転出し、即ち、この引き戸が最初に如何なる平行な移動もせず、むしろ、旋回運動をする。後に続く側方への位置移動の際に、同様に、この引き戸の残りの部分も外へと旋回し、且つ、隣接する引き戸と平行に、この隣接する引き戸の前において位置移動される。
【0004】
これら引き戸は、その際、それぞれ、位置移動装置によって保持されており、この位置移動装置が、戸棚の上にまたはこの戸棚の下に設けられており、且つ、2つの、離間された、個別に、この戸棚とねじ止めされたレールの上で、案内されている。旋回運動および後に続く平行位置移動の作動のために、この戸棚の上側、またはこの戸棚の下側に、案内カムが固定されており、予め与えられた平行の位置すれを引き起こすために、この案内カム内に位置移動装置に固定された案内要素が係合している。
この引き戸が、同様にこの引き戸の下側の縁部、もしくは、この引き戸が下側で支持されている場合は上側の縁部において、正確に平行に案内されるために、更に別の案内手段が必要である。これら案内手段は、適当な同期要素を介して、支持側から作動される。
【0005】
この目的で、それぞれに、位置移動装置と相対して位置している側において、戸棚底部、または戸棚天井内において、溝部が嵌め込まれていなければならず、この溝部内において、案内要素が旋回可能に支承され、且つ案内されている。引き戸の動きの軽い位置移動、およびそれに加えて、正確な平行案内は、従って、疑問視される。
不正確な案内の理由で、これら引き戸は、相互の接触を側方への位置移動の間じゅう防止するために、支持装置によって、強力に平行に位置移動されねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
このような様式の装置に関して、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、平行に位置移動可能な引き戸のための案内レールを有する走行装置を提案することであり、この走行装置が、公知の走行装置の欠点を解消し、且つ、動きの軽い、簡単に構成された、且つ僅かの手間暇でもって家具職人によって組み付け可能な機構を可能にするすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1および9に記述された特徴を有する、案内レールを有する走行装置によって解決される。上記走行装置の有利な実施形態は、従属請求項内において述べられている。
【発明の効果】
【0009】
支持体に固定された、旋回可能な位置調節レバーを用いて、1つのカム軌道を有する、平行位置移動のために必要な案内板を、このカム軌道の90°の範囲にまで低減すること、および、案内を、引き戸の位置移動の際に、設けられているローラー軌道において長手方向に案内可能な、旋回される旋回レバーによって行うことは可能である。走行装置の組み付けは、上記のことによって、僅かのちょっとした骨折りにまで低減され、且つ、家具製作所において、または、家具工場内において、如何なる複雑な、且つ正確に実施されるフライス加工も行われる必要はない。
付加的に、組み付け作業内において、レール要素は、製造されるべき家具に対して長さを短くされ得る。更に別の処理は、ここで、例えばこの走行装置の組み付け工場においてまたは製造者において、全く行う必要がない。
【0010】
個別の、角を曲げられた薄板からまたは有利にはアルミニウム−連続鋳造部材として製造された部材への、長手方向位置移動における位置移動装置の支承のための、両方の、平行に案内されたレールの統合は、
引き戸戸棚の製造者(家具職人、家具工場)に、簡単な方法で、レールを戸棚の上側または下側に組み付けることを可能にし、その際、この製造者は、組み付けの際に、唯一、この個別のモノブロック要素の間隔を戸棚の前方縁部に対して確定せねばならない。
同様に、案内カムを、この製造者は、レール要素内へと挿入可能であり、且つ、この製造者は、その際、単に、走行装置における引き戸の固定の場所を精確に測定し、且つ、案内カムをねじでもって固定する。このレール要素は、それに加えて、比較的に幅狭に形成され得、即ち、両方のレールが、公知の位置移動装置の場合よりも、より近傍に並んで位置可能であり、このことによって、このレール要素が、同様に、戸棚に対して、僅かの深さで組み付け可能である。
【0011】
引き戸の案内の安定性は、位置移動方向内における、位置移動装置の比較的に大きな長さによって保障される。選択的に、この位置移動装置は、同様に、2つの部分にも分割され得る。位置移動装置から比較的に遠く離間された、引き戸の縁部のための案内手段は、極めて簡単に構成されており、且つ、この引き戸の裏側に固定されている。
戸棚自体に、この目的で、単に、上方から下方へ、移動を伝達するための装置だけが固定されるべきである。この戸棚に、それに加えて、如何なる切欠き部、およびその種の他の物が設備される必要は無く、従って、閉鎖された引き戸の場合、これら引き戸の最適な周囲封隙が達成され得る。
【0012】
更に、位置移動装置の構造高さは、公知の実施形態に比してより低くされ得、このことは、戸棚の内側室に対する利得を誘起する。
本発明に従う位置移動装置でもって、従って、それぞれの戸棚において、例えば同様に既存の旋回扉のために設けられた作り付け戸棚において、案内レールのための溝部の設備、等のような更に別の処置無しに、本発明に従う引き戸は装着され得る。
【0013】
次に、図示された実施例に基づいて、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】引き戸および位置移動機構の組み付け前の、戸棚の透視図である。
【図2】閉鎖された引き戸の際の図1内における戸棚と、この戸棚の上に設けられた、右側の引き戸のための走行装置とを、上斜めから透視した部分透視図である。
【図3】戸棚の部分的な眺望でもっての、走行装置の端面側の図である。
【図4】閉鎖された引き戸の際の、取り去られたカバーを共に図示した、走行装置の透視図である。
【図4a】横方向支持体を拡大して図示した断面図である。
【図5】部分的に開放され、平行に前方へ押し出された引き戸の場合の、走行装置の透視図である。
【図6】部分的に位置移動された引き戸を有する右側の戸棚の部分の透視図、および、この引き戸の上側の、および下側の案内の同期装置の図である。
【図7】更に別の実施形態における、引き戸の下側の案内の詳細図である。
【図8】部分的に開放された引き戸の場合の、本発明の更に別の実施形態でもっての、走行装置の透視図である。
【図9】部分的に開放された引き戸の場合の、本発明の更に別の実施形態でもっての、走行装置の透視図である。
【図10】閉鎖された引き戸の場合の、図9に従う、走行装置の図である。
【図11】閉鎖された引き戸の場合の、図9に従う、走行装置の図である。
【図12】部分的に位置移動された引き戸を有する右側の戸棚の部分の透視図、および、図8、または9に従う、この引き戸の上側の、および下側の案内の同期装置、および下に設けられた走行装置の図である。
【図13】戸棚の天井における案内要素の、拡大されて図示された断面図である。
【図14】図8に従う、走行装置を有する戸棚の、下から見た、拡大された透視図である。
【図15】閉鎖された引き戸の場合の、下側に位置する同期要素の拡大された透視図である。
【図16】開放された引き戸の場合の、下側に位置する同期要素の拡大された透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1内において、2つの側壁3、2つの中間壁5、1つの底部7、および、1つの天井9、並びに、1つの背壁11を有する戸棚1が図示されている。この戸棚1の全ての要素は、矩形の裁断片から成っている。引き戸のための、本発明に従う走行装置の組込みのために、切込み部、案内レールのための溝部、陥入部、等のような、如何なる適合も必要とされない。
【0016】
戸棚1の右上側の半分体を示している図2内において、右側の側壁3は、走行装置13のための側方の閉鎖部として、上方へと、天井9を越えて延ばされている。天井9の上側に、カバー17を有する位置移動装置13が見て取れる。
このカバー17は、位置移動装置13のその下に位置する機能要素のための、塵埃保護の役目を果たす。付加的に、このカバー17は、同様に、軸45(図4)のための上側の回転軸受部としての、並びに、引き戸15の固定部としての役目を果たす。この位置移動装置13は、レール要素19の上に支承されており、このレール要素が、戸棚1の全幅にわたって延在しており、且つ、天井9の上側に、または底部7の下側に固定されている。このレール要素19は、側方に、それぞれに1つの下側のローラー軌道21を、引き戸15の質量を収容する支持ローラー23のために備えている。
これら支持ローラー23は、水平方向に位置する軸、または軸状突出部に、回転可能に軸受けされている。
【0017】
下側のローラー軌道21の上方に、上側のローラー軌道25が形成されており、これら上側のローラー軌道が、下側のローラー軌道21に対して平行に設けられており、且つ、これら下側のローラー軌道から、支持ローラー23の直径よりもほんの僅かに大きい間隔をおいて位置している。
これらローラー軌道21、25の間に、互いに一定の間隔内において、2つの更に別の案内軌道27が、対の状態で設けられた垂直方向の脚部29の間に形成されている。これら脚部は、案内ローラー31の側方の案内部の役目を果たし、これら案内ローラーが、垂直方向の軸線を中心に回転可能に軸受されており、且つ、位置移動装置13を、側方で、正確に案内する。
それぞれの案内軌道27の、両方の脚部29の間隔は、これまた同様に、
これら案内ローラーが、ほぼ遊び無く案内されるように、即ち、位置移動装置13に対して作用する力との依存関係において、これら案内ローラーが、転動の際に、それぞれに単に両方の脚部29の内の一方の脚部との接触状態にあるように、
案内ローラー31の直径よりも僅かに大きい。
【0018】
上記したレール要素19は、有利には、アルミニウムから成る連続鋳造部材として製造される。もちろん、同様に、鋼材から成る薄板曲げ部材としても形成され得る。位置移動装置13は、更に別の、2つの、互いに離間して設けられた、カバー17を介して結合された横方向支持体33を備えており、これら横方向支持体の端部に、4つの支持ローラー23が軸受けされている(図3〜5)。
これら横方向支持体33内において、上方に開放された案内通路35が、対の状態で相対して位置して互いに平行に指向する側方壁37を有して形成されている。これら側方壁37内に、上側から、それぞれ2つの互いに離間されて位置する、垂直方向軸線を中心に回転可能に軸受けされたローラー39が嵌り込んでいる。これらローラー39は、ローラー支持体41に固定されている。これらローラー39は、僅かの遊びを有して、側方壁37の間に位置している。
これら両方のローラー支持体41は、上側で、ねじ40によって、ブラケットの役目を果たすカバー17にねじ留めされている。このローラー支持体41に、更に別の、4つの支持ローラー42が、水平方向に位置する軸線上で回転可能に軸受けされている。これら支持ローラー42は、上側および下側で、側方へとローラー支持体41に形成された走行軌道44内において案内されている(図4a)。
【0019】
カバー17に、更に別の、1つの軸45が、スリーブ43のための回転軸受部として固定されている。このスリーブ43の上に、旋回可能に、位置調節レバー47が固定されており、この位置調節レバーの自由な端部に、支持ローラー55が支持されている。この軸45の下側の端部に、カムローラー48が設けられている。
【0020】
レール要素19の、ローラー軌道21および案内軌道27を有する両方の縁部を結合するベースプレート49の上において、このローラー軌道(案内軌道)27ともう一方の案内軌道27との間に、側方に案内された案内板51が、固定ねじ59でもって固定されている。この案内板51は、この案内板の表面上に、約90°にわたって延在するカム軌道53を備えており、このカム軌道内において、カムローラー48が、両側で案内されている。
このカムローラー48は、軸45の下側の端部において、回転可能に軸受けされており、且つ、上記カム軌道53内へと挿入されている。更に、この案内板51に、ローラー軌道27の近傍で、位置移動方向に開放した切欠き部57が設けられており、位置移動装置13が引き戸15の閉鎖の際に案内板51を経由して滑動する場合、この切欠き部内に、支持ローラー55が進入する。
【0021】
案内板51は、垂直方向および水平方向内において、ローラー軌道27の脚部29によって保持されている。引き戸15の走行方向内において、この案内板51は、ベースプレート49内へとねじ込み可能な、有利には、自己でねじ切りするねじ59によって保持されている。この案内板51は、戸棚1におけるレール要素19の固定の前または後に、このレール要素19の上に固定される。
そのカバーに沿って横方向支持体33が固定されている該カバー17は、少なくとも1つのばね(図示されていない)によって、図4に従い、引き込められた位置内へと引っ張られている。位置調節レバー47の端部とカバー17とに結合されている、図5内において図示されているばね61は、この位置調節レバー47を、引き戸15の走行方向に対して直角に整向された位置内において保持する、即ち、この位置内へと引っ張る役目を果たす。
【0022】
引き戸15の裏側に、この引き戸の上側の縁部の領域内において、支持レール63が、ねじでもって固定されている。この支持レール63に沿って、円錐形に形成され周囲に延在する溝部を有する保持ピン65が設けられている。これら保持ピン65は、保持条片69における狭小に寸法を設定された穿孔67内へと係合する。
この保持条片69内における、これら水平方向の穿孔67の上に、これら保持条片69に対して直角に、ねじ穿孔内へと、固定ねじ70がねじ込まれ、これら固定ねじでもって、これら保持ピン65は、遊び無しに、この保持条片69内において固定され得る。
この引き戸15を戸棚1に対して正しい位置に合わせ可能とするために、この保持条片69は、カバー17に沿って、ねじ70のような適当な手段でもって、垂直方向内においてと同様に水平方向内においても調節可能に保持されている。
【0023】
以下で、位置移動装置13の機能態様を詳細に説明する。
図示されていない取手(例えば、はめ込みタイプのグリップ(Muschelgriff))において、または、直接的に、引き戸15の側方縁部または上方縁部において、この引き戸15は、この引き戸の閉鎖位置、即ち戸棚1の壁の前方縁部に隣接する閉鎖位置から、垂直方向に、戸棚1から引き離される。
その際、カムローラー48は、最初にレール要素19に対して直角に延在し次いでアーチ状に延びるカム軌道53に沿って、図4に従う位置から、図5に従う位置内へと滑動する。
支持ローラー55は、その際、まだ、切欠き部57内において停留している。このことによって、引張り移動の開始のために、戸棚前方側面から離れての、単に、この引き戸15の平行位置移動だけが行われる。位置調節レバー47は、その際、切欠き部57内において停留している支持ローラー55の回転軸線を中心として回転する。その後、この引き戸15は、左側へと移動し、且つ、この戸棚1の内側室を開放する。
この引き戸15は、ここで、基本的に、その横に位置する引き戸15との十分な重ね合わせが行われる程度まで、左側へと位置移動され得る。この摺動移動の間じゅう、支持ローラーは、後方の案内軌道27の脚部29の上で押圧転動する。
【0024】
引き戸15が閉鎖された場合、即ち、右側へと位置移動された場合、摺動移動の終わりに、支持ローラー55は、切欠き部57内へと走入する。その後、カムローラー48は、カム軌道53内へと滑り込み、且つ、この引き戸15を、並進的に、戸棚1に沿うように引き寄せる。
このカム軌道53の終端における、真っ直ぐに延在する最後の部分によって、この引き戸15は、自ずからは開放せず、即ち左側へと位置移動せず、むしろ、手動でまたは電気駆動装置の場合電気的に行われる、手前への引張りの後に初めて開放する。
【0025】
一方では、同様に、引き戸15の下側の領域が、並進的に確実に、戸棚1の前部から持上げられ得、他方では、この引き戸15の質量の一部が支持され得るために、中間壁5、または単にそこに設けられた保持装置だけに、同期−支持装置71が固定されている。この同期−支持装置は、固定板73を備えており、この固定板に、伝達軸83が旋回可能に軸受けされており、且つ、留め部材(Bride)75によって、軸線方向に保持されている。この伝達軸83の下側の端部において、回転不能に、旋回レバー85が設けられており、この旋回レバーの自由な端部の上に、ローラー支持体77が、垂直方向の軸87を中心として旋回可能に保持されている。
このローラー支持体77において、上側に、2つの保持ローラー79、および下側に、案内ローラー79が、水平方向の軸線上に回転可能に軸受けされている。これら保持ローラー79は、引き戸15の内側に固定された案内条片81の上側縁部および下側縁部に載置しており、その際、上側に位置する保持ローラー79が窪み部(Einstich)を有しており、従って、これらローラーが、この案内条片81の上側の縁部81′を部分的に囲繞している。
【0026】
同一に形成された同期装置(同期−支持装置)71は、同様に、戸棚1の天井9の領域内においても、中間壁5に固定されており、且つ、そこで、案内条片81に係合しており、この案内条片が、ねじによって、引き戸15と結合されている。固定板73に、引張ばね95が、この引張ばねの第1の端部でもって固定されている。この引張ばねの第2の端部は、ローラー支持体77と結合されている。
【0027】
戸棚1から離れる、引き戸15の並進的な位置移動の際に、伝達軸83は回転する。何故ならば、上記伝達軸が、引き戸15と案内条片81を介して結合状態にある両方のローラー支持体77によって、外方へと案内されるからである。このことによって、この引き戸15の上側の縁部および下側の縁部が、同時に、即ち同期して、同様に並進的な位置移動を共に行うことは保障される。
同期装置71は、従って、この引き戸15の並進的な位置移動の平行性を保障する。更に続いて、この同期装置71は、この引き戸15を、位置移動装置13から離れた縁部において支持することの役目を同様に果たす。この引き戸15のそれぞれの位置において、下側の保持ローラー79は、案内条片81を介してこの引き戸15を支持し、且つ従って、走行装置13に対する回転モーメントを防止する。
【0028】
極めて幅広の引き戸の場合、走行装置13に対する、良好な負荷分布、および、大きな回転モーメントの防止のために、2つの走行装置が、隣接して、互いに並列して設けられることは可能である。
【0029】
図8に従う本発明の実施形態において、単独の位置調節レバー47の代わりに、更に別の位置調節レバーがつけ加わり、この更に別の位置調節レバーが、歯付きベルト97の形態における同期要素を介して、これら両方の位置調節レバー47の旋回運動を統制する。この歯付きベルト97は、2つの小歯車99と噛み合っており、これら小歯車が、回転不能に、これら位置調節レバー47に固定されている。これら小歯車99は、位置調節レバー47のその端部に装着されており、位置調節レバー47が、カム軌道53によって、引き戸15の持上げの際に、時計方向に約90°だけ旋回される。
図9に従う本発明の実施形態において、歯付きベルト97の位置に、関節ロッド101が備えられており、この関節ロッドの端部が、関節運動可能に、両方の位置調節レバー47の端部と結合されている。図8に従う例示においてのように、この関節ロッド101は、両方の位置調節レバー47の旋回運動の正確な同期調整を生じさせる。
戸棚1から引き戸15を引き離す際の、位置調節レバー47の旋回運動のために、従って、これら両方の位置調節レバー47の内の一方の位置調節レバーと協働するカム軌道53は十分である。もちろん、同様に2つのカム軌道53が形成されていることは可能である。
【0030】
これら位置調節レバー47の同期的に推移する旋回運動によって、引き戸15が、戸棚1から離れる正確に並進的が運動を実施し、且つ、繰り出される位置内において、捩れの無い側方へと位置移動可能であることは保障されている。
この引き戸15の位置移動の際に、これら位置調節レバー47の予期せぬ誤旋回を回避する(sicherzustellen)ために、これら位置調節レバーが、正確に、レール要素19aおよび19bに対して直角の方向に位置する状態に保持されるのではなく、むしろ、これら位置調節レバーが、ばねによって負荷された状態で、いくらか死点を越えて安定的な位置内へと誘導されている(ばねは図示されていない)。
【0031】
引き戸15の下側の縁部の、同様に確実な且つ安定的な案内を保証するために、
図7に従う、本発明の第1の実施形態内においてのように、引き戸15の裏側に案内条片81が設けられており、この案内条片の上に、ローラー支持体77が案内されている。
このローラー支持体77は、これまた同様に、旋回レバー85を介して、伝達軸83に固定されている。
この伝達軸83は、更に別のローラー支持体77を結合しており、この更に別のローラー支持体が、引き戸の上側の縁部の領域内における案内条片81の上に、同じ構造およびやり方で形成されており、且つ固定されている。
【0032】
引き戸の、それぞれに側壁3の領域内において、位置するに至るべき縁部における、引き戸15の付加的な案内を保証するために、戸棚1の天井9に、案内溝105を有する板103が固定されていることは可能である。
この案内溝105内に、この引き戸15に、関節運動可能に固定された案内レバー107が係合している。この板103内における案内溝105は、戸棚1の前方縁部に対して平行に延在する案内レール109と結合されている。
【0033】
案内レバー107は、関節運動可能に、支持アングル部材111に枢着されており、且つ、この案内レバーの自由な端部に、保持ローラー113を支持しており、
この保持ローラーが、
引き戸の位置移動の際に、案内レール109内において案内されており、且つ、
この引き戸15が繰り出された位置から引き込められた位置内へと走行した、この摺動移動の最後に、この案内レール109から案内溝105内へと滑動し、且つ、そこで、この案内レバー107におけるばねによって、引き込められた位置内において保持され、もしくは、このばねによって引き込められた位置内へと押付けられる。このことによって、同様に、戸棚1、特にサイドボードの下側においての位置移動装置13の使用の際にも、上側縁部は、ぴっちりと、この戸棚1に当接する。
仮に、人が、引き戸角部の領域内において、この引き戸角部を強固に保持し且つ位置移動しても、
この引き戸15の位置移動の間じゅう、この案内レバー107は、この引き戸15が、常に、いつも同じ間隔でもって、この戸棚の前方縁部に対して案内されることの役目を果たす(図12、13)。
【0034】
図1〜11内において図示された位置移動装置13は、それぞれに、戸棚1の天井9の上に組み付けられており、即ち、引き戸15を、位置移動装置13に懸架している。
同様に低い戸棚、例えばサイドボードに、位置移動装置13を、目に見えないように装着可能とするために、この位置移動装置は、下方から、底部7の下側に固定され得る。
支持ローラー23は、その場合に、上側のローラー軌道25に載置し、且つ、引き戸15を支持する(図14)。
【符号の説明】
【0035】
1 戸棚
3 側壁
5 中間壁
7 底部
9 天井
11 背壁
13 位置移動装置、走行装置
15 引き戸
17 カバー
19 レール要素
21 ローラー軌道、案内レール、下側のローラー軌道
23 支持ローラー
25 上側のローラー軌道
27 案内軌道、ローラー軌道
29 案内軌道、脚部
31 案内ローラー
33 支持体、横方向支持体
35 案内通路
37 側方壁
39 ローラー
41 ローラー支持体
42 支持ローラー
43 スリーブ
44 走行軌道
45 軸
47 位置調節レバー
48 カムローラー
49 ベースプレート
51 案内板
53 カム軌道
55 支持ローラー
57 切欠き部
59 ねじ、固定ねじ
61 ばね
63 支持レール
65 保持ピン
67 穿孔
69 保持条片
70 ねじ
71 同期装置、同期−支持装置
73 固定板
75 留め部材
77 ローラー支持体
79 保持ローラー、案内ローラー
81 案内条片
81′ 上側の縁部
83 伝達軸
85 旋回レバー
87 垂直方向の軸
95 引張ばね
97 歯付きベルト
99 小歯車
101 関節ロッド
103 板
105 案内溝
107 案内レバー
109 案内レール
111 支持アングル部材
113 保持ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸(15)のための、2つの平行に指向する案内レール(21)と、
側方への摺動移動のため、および戸棚(1)の扉開口部からのこの引き戸(15)の持上げのための平行送り装置とを有する走行装置であって、
この走行装置が、
これら案内レール(21)の上で位置移動可能な位置移動装置(13)と、
この位置移動装置(13)の上でこの位置移動方向に対して直角に移動可能な支持体(33)と、および、
この支持体(33)に、固定された案内要素とを備えており、
この案内要素が、
これら案内レール(21)の間に設けられたカム軌道(53)内に係合するためのものであり、且つ、平行の送りを、この引き戸(15)の側方への位置移動の間じゅう保障する様式の上記走行装置において、
上記案内要素が、支持体(33)に固定された軸(45)を備えており、この軸に、位置調節レバー(47)が旋回可能に枢着されていること、
この位置調節レバー(47)の自由な端部に、支持ローラー(55)が、案内手段として設けられていること、および、
この軸(45)の下側の端部において、カムローラー(48)が軸受けされており、このカムローラーが、戸棚(1)の案内板(51)の上のカム軌道(53)内に係合するためのものであること、
を特徴とする走行装置。
【請求項2】
軸(45)は、この軸の上側の端部でもって、支持体(33)の上を覆うカバー(17)の下側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
カムローラー(48)は、引き戸(15)の平行の送りの間じゅう、
90°以上の角度にわたって延在するカム軌道(53)内において案内されていること、
および、
支持ローラー(55)が、この平行の送りの間じゅう、この引き戸(15)の位置移動方向に片側で開放する、案内板(51)における切欠き部(57)内において、位置固定状態で保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の走行装置。
【請求項4】
支持ローラー(55)の回転軸線は、平行の送りの間じゅう、位置調節レバー(47)の旋回軸線としての機能を果たすことを特徴とする請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
位置調節レバー(47)は、
平行の送りの後、ばね(61)によって、基本的に、位置移動装置(13)のための案内軌道(29)の延長方向に対して垂直に位置する状態で保持され、および、
支持ローラー(55)を、引き戸(15)の側方への位置移動の間じゅう、案内軌道(29)に当接し、且つ、
この引き戸(15)を、戸棚(1)から持上げられた位置内において案内することを特徴とする請求項4に記載の走行装置。
【請求項6】
位置移動装置(13)に、2つの位置調節レバー(47)が互いに隣接して設けられており、且つ、
これら位置調節レバーの旋回運動が、結合手段によって、同期されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の走行装置。
【請求項7】
これら位置調節レバー(47)のための結合手段として、歯付きベルト(97)が、軸(45)の上に固定された2つの小歯車(99)に巻き付いており、これら軸はこれら位置調節レバー(47)を支持していることを特徴とする請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
これら位置調節レバー(47)のための結合手段として、関節ロッド(101)が、
2つの位置調節レバー(47)を、互いに関節運動可能に結合していることを特徴とする請求項6に記載の走行装置。
【請求項9】
引き戸(15)のための、2つの平行に指向する案内レール(21)と、
側方への摺動移動のため、および戸棚(1)の扉開口部からの引き戸(15)の持上げのための平行送り装置とを有する走行装置であって、
この走行装置が、
これら案内レール(21)の上で位置移動可能な位置移動装置(13)と、
この位置移動装置(13)の上でこの位置移動方向に対して直角に移動可能な支持体(33)と、および、
この支持体(33)に、固定された案内要素とを備えており、
この案内要素が、これら案内レール(21)の間に設けられたカム軌道(53)内に係合するためのものであり、且つ、平行の送りを、この引き戸(15)の側方への位置移動の間じゅう保障する様式の上記走行装置において、
戸棚(1)の、中間壁(5)、底部(7)および天井(9)に、または、底部(7)と天井(9)との間に組み込まれた保持要素に、装着可能な同期装置(71)が設けられており、
この同期装置が、垂直方向に指向する伝達軸(83)、および、この伝達軸の端部に、半径方向に突出する旋回レバー(85)を支持しており、
この旋回レバーに、保持ローラー(79)を備えるローラー支持体(77)が固定されており、これら保持ローラーが、案内条片(81)に当接しており、その際、
これら案内条片(81)が、引き戸(15)の内側に固定可能に形成されていることを特徴とする走行装置。
【請求項10】
旋回レバー(85)は、垂直方向に位置調節可能であり、且つ、ばね(95)でもって復帰位置移動可能であることを特徴とする請求項9に記載の走行装置。
【請求項11】
戸棚(1)の底部(7)または天井(9)に装着可能な、案内溝(105)を有する板(103)、および、
引き戸(15)に関節運動可能に固定された、ばね負荷された、保持ローラー(113)を有する案内レバー(107)が設けられており、
この保持ローラーが、この引き戸(15)の摺動移動の終わりに、案内溝(105)内へと係合するためのものであることを特徴とする請求項9または10に記載の走行装置。
【請求項12】
保持ローラー(113)は、引き戸(15)の側方への位置移動の際に、
底部(7)または天井(9)に嵌め込まれた案内レール(109)内において押圧転動することを特徴とする請求項11に記載の走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−514468(P2013−514468A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543433(P2012−543433)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/CH2010/000315
【国際公開番号】WO2011/079400
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(598153135)エク・アクチエンゲゼルシヤフト (3)
【Fターム(参考)】