説明

引戸装置

【課題】引戸枠部材の上方に敷設するレールが、戸袋の外部にのみ敷設される引戸装置でも、引戸の開閉操作をスムーズに行うことができる引戸装置を提供すること。
【解決手段】引戸枠部材2と、該引戸枠部材2内を移動する引戸4と、引戸枠部材2の一側に形成された戸袋3とからなる引戸装置において、引戸4の戸先側の上面4aに配設した戸車5と、引戸枠部材2の上方で戸袋3の外部に敷設した戸車5を支持するレール6と、床面の少なくとも、全閉位置の引戸4と全開位置の引戸4との重なり部Pに対応する位置及び引戸4の全開位置で引戸4の重心位置Gよりも戸尻側の位置に配設した引戸4の荷重を支持するための回転体7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置に関し、特に、引戸の上面に配設した戸車を支持するレールを戸袋内にまで配設しなくても引戸を安定して開閉することができるようにした引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸枠部材内を移動する上吊り式の引戸では、引戸の上面に配設した戸車を支持するレールを、引戸を収納する戸袋内まで配設する必要があり、レールの取り付けやメンテナンス時に長時間を要し、作業効率が悪いという問題があった。
【0003】
このため、図7に示す引戸装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この引戸装置20は、引戸枠部材21と、引戸枠部材21の一側に形成された戸袋22と、該戸袋22内に収納され、戸先側の上面に吊り車31及び戸尻側の下面に戸車32を配設した引戸30と、引戸枠部材21の戸袋22の外部となる開口部Wの上方に敷設した吊り車31を支持するレール23とより構成され、開口部Wの上方の戸尻側にガイドローラ24を配設して、開閉時の引戸の振れ止めをするようにしている。
【0004】
そして、この引戸装置20は、開口部Wの床面の後方となる戸袋22内の床面には、戸車32を支持する支持レール33が敷設されており、引戸30の移動を案内するようにしている。
【特許文献1】特開2007−315017号公報
【特許文献2】特開2006−194048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、戸袋22内に吊り車31を支持するレール23を配設する構造では、レール23を着脱するためのレール23の配設構造が複雑になるという問題があった。
また、上記引戸装置20のように床面に敷設した支持レール33の上を戸車32が走行するようにすると、戸車32が支持レール33から脱線することがあり、また、引戸30の開閉時に戸袋22内にゴミが入り込んだ場合に、支持レール33にゴミが堆積する等して、引戸30の開閉操作に支障をきたすことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の引戸装置の有する問題点に鑑み、引戸枠部材の上方に敷設するレールが、戸袋の外部にのみ敷設される引戸装置でも、引戸の開閉操作をスムーズに行うことができる引戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の引戸装置は、引戸枠部材と、該引戸枠部材内を移動する引戸と、引戸枠部材の一側に形成された戸袋とからなる引戸装置において、引戸の戸先側の上面に配設した戸車と、引戸枠部材の上方で戸袋の外部に敷設した戸車を支持するレールと、床面の少なくとも、全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置及び引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した引戸の荷重を支持するための回転体とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置に配設した回転体と、引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した回転体との距離を、引戸の重心から戸尻側端までの距離よりも小さくなるようにすることができる。
【0009】
また、前記回転体を、緩衝機構を介して上下方向に移動可能に配設することができる。
【0010】
さらに、引戸の底面の戸尻側には、前記回転体を案内する案内部を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の引戸装置によれば、引戸の戸先側の上面に配設した戸車と、引戸枠部材の上方で戸袋の外部に敷設した戸車を支持するレールと、床面の少なくとも、全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置及び引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した引戸の荷重を支持するための回転体とを備えたから、引戸は、上面に配設した戸車と、床面に配設された引戸の荷重を支持するための回転体によって支持されて引戸枠部材内を安定して移動するとともに、床面にはレールではなく回転体によって引戸の荷重を支持するため、戸袋内へゴミが入り込んでも引戸の開閉操作に支障をきたすことがない。
また、引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に引戸の荷重を支持するための回転体を配設するから、引戸を全開位置に移動させたときに引戸が傾くことがないように引戸を支持することができる。
【0012】
また、全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置に配設した回転体と、引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した回転体との距離を、引戸の重心から戸尻側端までの距離よりも小さくするときは、引戸の重心位置が全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置に配設した回転体の位置に到達する直前に引戸の戸尻側底面が引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した回転体によって支持されることになるから、引戸が移動中にバランスを崩して傾くことがない。
【0013】
また、前記回転体を、緩衝機構を介して上下方向に移動可能に配設するときは、引戸の移動によって、引戸の底面と床面との距離の変動を緩衝機構が上下に移動することによって吸収し、スムーズに引戸の開閉を行うことができる。
【0014】
また、引戸の底面の戸尻側には、前記回転体を案内する案内部を設けるときは、引戸の移動中に、引戸の戸尻側の底面が振れても、回転体は、案内部によって確実に引戸の底面に案内され、引戸の荷重を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の引戸装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図6に、本発明の引戸装置の一実施例を示す。
この引戸装置1は、引戸枠部材2と、該引戸枠部材2内を移動する引戸4と、引戸枠部材2の一側に形成された戸袋3とからなり、引戸4の戸先側の上面4aに配設した戸車5と、引戸枠部材2の上方で戸袋3の外部に敷設した戸車5を支持するレール6と、床面の少なくとも、全閉位置の引戸4と全開位置の引戸4との重なり部Pに対応する位置及び引戸4の全開位置で引戸4の重心位置Gよりも戸尻側の位置に配設した引戸4の荷重を支持するための回転体7とを備える。
【0017】
回転体7は、全閉位置の引戸4と全開位置の引戸4との重なり部Pに対応する位置に配設する回転体7aと、引戸4の全開位置で引戸4の重心位置Gよりも戸尻側の位置に配設する回転体7bとからなり、回転体7bは、引戸4の重心位置Gが回転体7aよりも戸尻側になる前に、引戸4の荷重を支持することができる位置、つまり、回転体7aと回転体7bとの距離を、引戸の重心から戸尻側端までの距離よりも小さくなるように配設することが好ましい。
【0018】
また、回転体7の構成は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、断面コ字状のフランジFと、該フランジFに回動自在に取り付けた車輪Kとから構成されている。
【0019】
回転体7は、引戸枠部材2の一側に形成された戸袋3の床面及び全閉位置の引戸4と全開位置の引戸4との重なり部Pに対応する位置に配設される下枠8内に取り付けられる。
下枠8は、断面コ字状の固定枠8aと、回転体7の取り付け部分となる凸部を有する取付枠8bとからなる。
固定枠8aは、戸袋3の床面に予め固定され、取付枠8bは、図3(a)に示すように、固定枠8aに突出して配設した位置決めピンCと、取付枠8bに開口した、大径部と小径部とを連続して形成したいわゆるだるま孔Dとによって取付枠8bを所望の場所に位置させ、戸袋3の外部の適宜位置で、ビス等の締結手段Bによって床面に固定するようにしている。
上記の構造によって、戸袋3の外部の締結手段Bを取り外すだけで、固定枠8aから取付枠8bを容易に取り外して引き抜くことができ、例えば、回転体7が損傷しても容易に交換することができる。
【0020】
また、回転体7は、特に、常時は引戸4を支持しない引戸4の全開位置で引戸4の重心位置Gよりも戸尻側の位置に配設する回転体7bは、緩衝機構Sを介して上下方向に移動可能に配設することが好ましい。
緩衝機構Sは、特に限定するものでなく、取付枠8bに取り付けるフランジFを上下方向に移動可能となる構成であればよく、例えば、フランジFと取付枠8bとの間に配設するスプリング等からなる弾性体を使用することができる。
これによって、引戸4の底面と床面との距離に変動が生じても、緩衝機構Sによって当該変動を吸収し、回転体7bによって引戸4を確実に支持することができる。
【0021】
引戸4の下面には、回転体7と当接するレール枠9を配設する。
レール枠9は、引戸4の枠組みの下枠とすることができ、回転体7の車輪Kと当接するレール部9aを突出形成し、引戸4の荷重をレール部9aを介して回転体7によって支持されるようにしている。この場合、車輪Kは、図2に示すように、鍔付きの車輪を利用することによって、レール部9aから脱線したり、ずれが生じたりすることなく引戸4の移動を安定させることができる。
【0022】
また、引戸4の底面の戸尻側には、回転体7bを案内する案内部10を設けることが好ましい。
案内部10の構成は、特に限定されるものではなく、本実施例においては、図4に示すように、レール枠9のレール部9aの端部を、底面傾斜部10a、側面傾斜部10b、10bとすることによって構成するようにしている。
これによって、引戸4の戸尻側の底面が振れても、回転体7bは、案内部10によって確実に引戸4の底面に案内され、引戸4の荷重を支持することができる。
【0023】
引戸枠部材2の上方で戸袋3の外部に敷設したレール6は、引戸4の戸先側の上面4aに配設した戸車5を支持する形状であれば、その形状は特に限定されず、本実施例においては、図5に示すように、下方両端から内側に向かって突設する戸車受部6aを形成する断面C字状の形状としている。
【0024】
次に、この引戸装置1の開閉動作について説明する。
【0025】
まず、引戸4が全閉位置にあるとき、引戸4は、戸先側の上面4aに配設した戸車5と、回転体7aによって支持されている(図6(a)参照)。
【0026】
引戸4を全開位置に向かって移動を開始し、引戸4の重心位置Gが回転体7aの位置に到達する直前に引戸4の戸尻側底面は、回転体7bによって支持される(図6(b)参照)。これによって、引戸4の移動中に引戸4が傾くことなく安定して移動する。
また、このとき回転体7bを、緩衝機構Sを介して上下方向に移動可能に配設するとともに、引戸4の底面の戸尻側に回転体7bを案内する案内部10を設けるようにしているから、引戸4の戸尻側の底面が振れても、引戸4は、確実に回転体7bによって支持される。
【0027】
次に、この状態から、引戸4を全開位置まで移動させ、引戸4の開放操作を終了する(図6(c)参照)。
このとき、回転体7bは、全開位置で引戸4の重心位置Gよりも戸尻側の位置に配設しているから、引戸4が傾くことなく安定した状態を保つことができる。
【0028】
そして、上記要領とは逆方向に引戸4を移動させることによって、引戸4を全閉位置に移動させることができる。
【0029】
以上、本発明の引戸装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の引戸装置は、引戸枠部材の上方に敷設するレールが、戸袋の外部にのみ敷設される場合に、戸袋内へゴミが入り込んでも引戸の開閉操作に支障をきたすことがないという特性を有していることから、学校用の引戸装置の他、種々の用途の引戸装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の引戸装置の一実施例を示す閉鎖位置での正面断面図である。
【図2】同引戸装置の回転体の側面図で、(a)は図1のX−X断面図を、(b)は図1のY−Y断面図を、それぞれ示す。
【図3】同引戸装置の回転体の平面図及び正面図で、(a)は一部切り欠きの平面図を、(b)は一部切り欠きの正面図を、それぞれ示す。
【図4】引戸の下面の戸尻側に設けた案内部の説明図で、(a)は一部切り欠きの側面図を、(b)は(a)のT−T断面図を、(c)は(a)のV−V断面図を、それぞれ示す。
【図5】図1のZ−Z断面図である。
【図6】同引戸装置の開閉動作の説明図で、(a)は引戸が全閉位置にある状態を、(b)は引戸が全開位置に向かって移動する途中の状態を、(c)は引戸が全開位置にある状態を、それぞれ示す。
【図7】従来の引戸装置を示す閉鎖位置での正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 引戸装置
2 引戸枠部材
3 戸袋
4 引戸
5 戸車
6 レール
7 回転体
10 案内部
G 引戸の重心位置
S 緩衝機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸枠部材と、該引戸枠部材内を移動する引戸と、引戸枠部材の一側に形成された戸袋とからなる引戸装置において、引戸の戸先側の上面に配設した戸車と、引戸枠部材の上方で戸袋の外部に敷設した戸車を支持するレールと、床面の少なくとも、全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置及び引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した引戸の荷重を支持するための回転体とを備えたことを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
全閉位置の引戸と全開位置の引戸の重なり部に対応する位置に配設した回転体と、引戸の全開位置で引戸の重心位置よりも戸尻側の位置に配設した回転体との距離を、引戸の重心から戸尻側端までの距離よりも小さくなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の引戸装置。
【請求項3】
前記回転体を、緩衝機構を介して上下方向に移動可能に配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の引戸装置。
【請求項4】
引戸の底面の戸尻側には、前記回転体を案内する案内部を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228388(P2009−228388A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78521(P2008−78521)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】