説明

張力・速度計測装置および方法

【課題】ウェブの種類によらずにウェブの張力を高精度に計測し、同時にウェブの速度を安価に計測する。
【解決手段】張力・速度計測装置は、搬送装置によって搬送中の物体であるウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザ1を動作させるレーザドライバ4と、半導体レーザ1から放射されたレーザ光とウェブ11からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出するフォトダイオード2および電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力に含まれる干渉波形の数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の速度および張力を算出する演算部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブの速度と張力を計測する張力・速度計測装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙、フィルム、セロファン、金属箔、ゴムなどのロール状に巻き取った物体(以下、ウェブと呼ぶ)を送出部から繰り出して、ウェブに対して所定の処理を行い、処理後のウェブを受取部によって巻き取るウェブ搬送装置では、送出部のロールの巻径と受取部のロールの巻径の変化に伴ってウェブの張力も変化する。したがって、適切な張力制御をおこたると、ウェブのしわやたわみの発生、ウェブの厚さの変化などを引き起こし、最悪の場合はウェブの切断にいたるため、張力制御が必要となる。
【0003】
従来、ウェブの張力を測定する方法としては、ロール軸に掛かる力から張力を算出する接触式の方法がある。また、別の方法として、ウェブの固有振動から張力を算出する非接触式の方法がある(特許文献1参照)。ただし、ウェブ搬送装置では、ウェブの移動速度を一定に制御し、巻き出し・巻き取りしたウェブの長さを正確に計測する必要があるが、これらの方法では、ウェブの速度を同時に測ることはできない。
【0004】
ウェブの速度と巻き取ったウェブの長さを計測する方法としては、一般的にはロール軸の回転数からウェブの速度を求め、この速度からウェブの長さを間接的に算出する方法があるが、ウェブの伸び縮みや巻き取りの張力による誤差が大きい。
また、ウェブの速度を計測する別の手段として、非接触式のドップラーレーザ速度計がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−63825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロール軸に掛かる力からウェブの張力を算出する接触式の方法では、図33に示すようにロール300の箇所でウェブ301を曲げて、ロール300の軸にかかる力からウェブ301の張力を算出するため、曲げることが難しいウェブ、例えば鋼板などに適用することができないという問題点があった。
【0007】
一方、ウェブの固有振動から張力を算出する非接触式の方法では、曲げることが難しいウェブにも適用することができる。しかし、この方法では、マイクロフォンを用いて集音し、ウェブの固有振動周波数を求めているため、外乱、すなわち雑音の混入に弱いという問題点があった。
また、ロール軸に掛かる力からウェブの張力を算出する方法やウェブの固有振動から張力を算出する方法では、ウェブの速度を同時に測ることができないという問題点があった。
【0008】
ロール軸の回転数からウェブの速度を求める方法では、ウェブの伸び縮みや巻き取りの張力による誤差が大きく、その結果として速度から間接的に算出するウェブの長さも誤差が大きくなってしまうという問題点があった。このため、ロール状に巻き取った形で販売されているウェブは規定値よりも長めで売られているものが多く、無駄が生じていた。
また、非接触式のドップラーレーザ速度計には、非常に高価であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ウェブの種類によらずにウェブの張力を高精度に計測することができ、ウェブの張力と同時にウェブの速度を安価に計測することができる張力・速度計測装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の張力・速度計測装置は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、この信号抽出手段の計数結果に基づいて前記ウェブの速度およびウェブの張力の少なくとも一方を算出する演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例において、前記演算手段は、前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、この2値化手段から出力された2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手段と、この2値化出力周期測定手段の測定結果から一定時間における2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手段と、前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手段と、前記2値化出力周期度数分布作成手段が度数分布作成の対象とする期間と同じ一定時間の期間において前記2値化出力のパルスの数を数える2値化出力計数手段と、前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記2値化出力計数手段の計数結果を補正する補正手段と、この補正手段で補正された計数結果と前記一定時間に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手段と、前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例において、前記演算手段は、前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、この2値化手段から出力された一定個数の2値化出力のパルスについて周期を測定する2値化出力周期測定手段と、前記2値化出力の一定個数のパルスについて実施された前記2値化出力周期測定手段の測定結果から前記2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手段と、前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手段と、前記2値化出力周期測定手段の測定結果から前記2値化出力の周期の総和を算出する周期和算出手段と、前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記一定個数を補正する補正手段と、この補正手段で補正された値と前記周期和算出手段で算出された周期の総和に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手段と、前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例において、前記基準周期算出手段は、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記基準周期とすることを特徴とするものである。
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例において、前記信号抽出手段は、前記検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手段と、この干渉波形計数手段が干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手段と、この干渉波形周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手段と、前記干渉波形の周期の度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsaと、前記代表値の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、これらの度数NsaとNwaに基づいて前記干渉波形計数手段の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手段とからなることを特徴とするものである。
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例は、さらに、前記信号抽出手段の計数結果の増減方向の一致不一致あるいは計数結果の平均値の変化に応じて前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段を備え、前記距離比例個数算出手段は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例において、前記演算手段は、前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、この2値化手段から出力された2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手段と、前記ウェブに所望の張力が掛かっているときの前記2値化出力の周期を目標周期としたときに、前記2値化出力周期測定手段によって測定された2値化出力の周期の度数を、前記目標周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記目標周期の第1の所定数倍以上かつ目標周期未満の周期の度数N2と、前記目標周期以上かつ目標周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記目標周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する周期分別手段と、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する判定手段と、この判定手段の判定結果に基づいて、前記ウェブの振動周波数が前記目標周波数に近づくように、前記搬送装置の送出側の駆動部と受取側の駆動部を制御する周波数制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例は、さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手段を備え、前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とするものである。
また、本発明の張力・速度計測装置の1構成例は、さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手段を備え、前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の張力・速度計測方法は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザを、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、この信号抽出手順の計数結果に基づいて前記ウェブの速度およびウェブの張力の少なくとも一方を算出する演算手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウェブの種類によらずにウェブの張力を高精度に計測することができ、ウェブの張力と同時にウェブの速度を安価に計測することができる張力・速度計測装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る張力・速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る張力・速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図5】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図6】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における演算部の速度算出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態における距離比例個数算出部の動作を説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における演算部の張力算出処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1の実施の形態における2値化部の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における周期測定部の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における2値化出力の周期の度数分布の1例を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態においてカウンタの計数結果の補正に用いる度数を模式的に表す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態におけるカウンタの計数結果の補正原理を説明するための図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における周期測定部の動作を説明するための図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態における演算部の張力算出処理を示すフローチャートである。
【図19】2値化出力にノイズが存在する場合の一定時間の設定の仕方を説明するための図である。
【図20】本発明の第5の実施の形態における信号抽出部の構成の1例を示すブロック図である。
【図21】本発明の第5の実施の形態における計数結果補正部の構成の1例を示すブロック図である。
【図22】本発明の第5の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。
【図23】本発明の第6の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図24】本発明の第6の実施の形態における符号付与部の動作を説明するための図である。
【図25】本発明の第6の実施の形態における符号付与部の動作を説明するための図である。
【図26】本発明の第7の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図27】本発明の第7の実施の形態において波形に欠落が生じた場合の2値化出力の周期の度数分布を示す図である。
【図28】本発明の第1の実施の形態においてノイズによって周期が2分割された場合の2値化出力の周期の度数分布を示す図である。
【図29】本発明の第8の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図30】本発明の第10の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化および信号抽出部の計数結果の時間変化を示す図である。
【図31】本発明の第11の実施の形態に係る張力・速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図32】張力・速度計測装置のセンサモジュールの別の配置例を示す図である。
【図33】ロール軸に掛かる力からウェブの張力を算出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る張力・速度計測装置の構成を示すブロック図である。図1の張力・速度計測装置は、測定対象のウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、ウェブ11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の張力と速度とを算出する演算部8と、演算部8の計測結果を表示する表示部9とを有する。
【0020】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とは、センサモジュール10を構成している。また、フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。
【0021】
図2は本実施の形態の張力・速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。ウェブ搬送装置は、送出側ガイド軸100と、受取側ガイド軸101と、送出側ガイド軸100に装着される送出側ロール102と、受取側ガイド軸101に装着される受取側ロール103と、送出側ガイド軸100を駆動し、送出側ロール102を回転させる送出側モータ駆動部(不図示)と、受取側ガイド軸101を駆動し、受取側ロール103を回転させる受取側モータ駆動部(不図示)と、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する制御部104とを有する。
【0022】
送出側モータ駆動部が送出側ロール102を回転させると、送出側ロール102に巻かれたウェブ11が繰り出される。受取側では、受取側モータ駆動部が受取側ロール103を回転させることにより、受取側ロール103がウェブ11を巻き取る。
制御部104は、ウェブ11の張力と速度とがそれぞれ所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
【0023】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とからなるセンサモジュール10は、図2に示すように送出側ガイド軸100と受取側ガイド軸101間のウェブ11上に配置され、ウェブ11に対してレーザ光を斜方照射する。レーザ光を斜方照射するのは、ウェブ11の速度を計測するためである。
図1のレーザドライバ4と電流−電圧変換増幅部5とフィルタ部6と信号抽出部7と演算部8と表示部9とは、制御部104の内部に設けられる。
【0024】
次に、本実施の形態の張力・速度計測装置の動作を詳細に説明する。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0025】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図3は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図3において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Ttは三角波の周期である。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0026】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、ウェブ11に入射する。ウェブ11で反射された光の一部は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0027】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図4(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図4(A)の波形(変調波)から、図3の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図4(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0028】
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。信号抽出部7は、論理ゲートからなるカウンタを利用するものでもよいし、FFT(Fast Fourier Transform)を利用してMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を計測するものでもよい。
【0029】
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図5に示すように、ミラー層1013からウェブ11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、ウェブ11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、ウェブ11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0030】
図6は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図6に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。
【0031】
次に、演算部8は、信号抽出部7が数えたMHPの数に基づいてウェブ11の速度と張力とを算出する。図7は演算部8の構成の1例を示すブロック図である。演算部8は、信号抽出部7の計数結果等を記憶する記憶部80と、半導体レーザ1とウェブ11との平均距離に比例したMHPの数(以下、距離比例個数とする)NLを求める距離比例個数算出部81と、ウェブ11の速度を算出する速度算出部82と、信号抽出部7の計数結果を2値化する2値化部83と、2値化部83から出力された2値化出力の周期を測定する周期測定部84と、2値化出力の周期の度数分布を作成する度数分布作成部85と、2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出部86と、2値化出力のパルスの数を数える2値化出力計数手段となるカウンタ87と、カウンタ87の計数結果を補正する補正部88と、補正された計数結果に基づいてウェブ11の振動周波数を算出する周波数算出部89と、ウェブ11の張力を算出する張力算出部90とから構成される。
【0032】
まず、演算部8の速度算出処理について説明する。図8は演算部8の速度算出処理を示すフローチャートである。
信号抽出部7の計数結果は、演算部8の記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、記憶部80に格納された、信号抽出部7の計数結果から距離比例個数NLを求める(図8ステップS100)。図9(A)、図9(B)は距離比例個数算出部81の動作を説明するための図であり、図9(A)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図9(B)は信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。図9(B)において、Nuは第1の発振期間P1の計数結果、Ndは第2の発振期間P2の計数結果である。
【0033】
図9(A)から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、計数結果Nuと計数結果Ndも交互に現れる。計数結果Nu,Ndは、距離比例個数NLとウェブ11の変位に比例したMHPの数(以下、変位比例個数とする)NVとの和もしくは差である。距離比例個数NLは、計数結果NuとNdの平均値に相当する。また、計数結果NuまたはNdと距離比例個数NLとの差が、変位比例個数NVに相当する。
【0034】
距離比例個数算出部81は、次式に示すように現時刻t以前の計数結果NuとNdとを用いて、距離比例個数NLを算出する。
NL=(Nu+Nd)/2 ・・・(2)
【0035】
距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0036】
次に、速度算出部82は、距離比例個数NLからウェブ11の速度を算出する(図8ステップS101)。信号抽出部7の計数結果N(すなわち、NuまたはNd)と距離比例個数NLとの差がウェブ11の速度に比例するため、半導体レーザ1の発振波長変調の搬送波(三角波)の半周期あたりのウェブ11の進行方向の変位Dは次式で算出できる。
D=λ/2×|N−NL|×cosθ ・・・(3)
【0037】
式(3)において、λは半導体レーザ1の発振平均波長、θは図2に示すように半導体レーザ1からのレーザ光の光軸がウェブ11に対してなす角度である。搬送波の周波数をfとすると、式(3)よりウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=λ×f×|N−NL|×cosθ ・・・(4)
【0038】
速度算出部82は、式(4)による速度Vの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
次に、以上のような速度算出処理と平行して行われる張力算出処理について説明する。図10は演算部8の張力算出処理を示すフローチャートである。
【0039】
まず、演算部8の2値化部83は、記憶部80に格納された、信号抽出部7の計数結果を2値化する(図10ステップS200)。図11(A)、図11(B)は2値化部83の動作を説明するための図であり、図11(A)は信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図、図11(B)は2値化部83の出力D(t)を示す図である。
【0040】
2値化部83は、信号抽出部7の計数結果NuとNdのうち、半導体レーザ1の照射面から、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面の位置の変位方向がウェブ11の速度方向と対向しているときの計数結果Nαの平均値と信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)の大小を比較して、信号抽出部7の計数結果を2値化する。この場合、2値化部83は、具体的には以下の式を実行する。
If N(t)≧Nαave then D(t)=1 ・・・(5)
If N(t)<Nαave then D(t)=0 ・・・(6)
【0041】
半導体レーザ1の発振波長が伸びているときは、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面は半導体レーザ1から離れる方向に変位する。このとき、ウェブ11の速度方向が波面の変位方向と対向しているとは、半導体レーザ1に対して近づいている方向を指す。
式(5)、式(6)において、Nαaveは現時刻t以前に求めた計数結果Nαの最新の平均値である。2値化部83は、現時刻tの計数結果N(t)が計数結果Nαの平均値Nαave以上であれば、現時刻tの出力D(t)を「1」とし、現時刻tの計数結果N(t)が計数結果Nαの平均値Nαaveより小さい場合は、現時刻tの出力D(t)を「0」とする。
【0042】
こうして、信号抽出部7の計数結果は2値化される。2値化部83の出力D(t)は記憶部80に格納される。2値化部83は、以上のような2値化処理を、搬送波の周期毎に行う。
【0043】
ウェブ11に張力が掛かっていると、ウェブ11は張力に応じた固有の振動周波数で振動している。信号抽出部7の計数結果を2値化することは、鉛直方向(図2の上下方向)に沿ったウェブ11の変位の向きを判別することを意味する。つまり、計数結果Nαが増加しているときは(D(t)=1)、ウェブ11は鉛直方向に沿って半導体レーザ1に近づく方向に動いていることを意味し、計数結果Nαが減少しているときは(D(t)=0)、ウェブ11は鉛直方向に沿って半導体レーザ1から遠ざかる方向に動いていることを意味する。したがって、基本的には2値化出力の周期を求めることができれば、ウェブ11の振動周波数を算出することができる。
【0044】
なお、2値化部83は、信号抽出部7の計数結果NuとNdのうち、半導体レーザ1の照射面から、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面の位置の変位方向がウェブ11の速度方向と対向しているときの計数結果Nαの増減に基づいて、信号抽出部7の計数結果を2値化してもよい。この場合、2値化部83は、具体的には以下の式を実行する。
If Nα(t)≧Nα(t−2) then D(t)=1 ・・・(7)
If Nα(t)<Nα(t−2) then D(t)=0 ・・・(8)
【0045】
式(7)、式(8)において、(t)は現時刻tにおいて計測されたMHPの数であることを表し、(t−2)は現時刻tの2回前に計測されたMHPの数であることを表している。計数結果Nαは、計数結果NuまたはNdのいずれか一方であり、1回おきに現れる。つまり、現時刻tの2回前とは、搬送波の1周期分前のことを意味する。なお、図9(B)の例では、計数結果NuがNαである場合を示している。
【0046】
2値化部83は、現時刻tの計数結果Nα(t)が1周期前の計数結果Nα(t−2)以上であれば、現時刻tの出力D(t)を「1」(ハイレベル)とし、現時刻tの計数結果Nα(t)が1周期前の計数結果Nα(t−2)より小さい場合は、現時刻tの出力D(t)を「0」(ローレベル)とする。
【0047】
また、ウェブ11の振動に伴う半導体レーザ1とウェブ11との距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも小さい場合、計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化は、互いの位相差が180度の正弦波形となる。特開2006−313080号公報では、このときのウェブ11の状態を微小変位状態としている。ウェブ11の状態が微小変位状態である場合は、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)において、計数結果Nαの代わりに、半導体レーザ1の照射面から、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面の位置の変位方向がウェブ11の速度方向と対向していないときの計数結果Nβを用いてもよい。
【0048】
また、ウェブ11の状態が微小変位状態である場合、2値化部83は、信号抽出部7の計数結果NuとNdとの差の増減に基づいて、信号抽出部7の計数結果を2値化してもよい。この場合、2値化部83は、例えば以下の式を実行する。なお、このように計数結果NuとNdとの差の増減に基づいて信号抽出部7の計数結果を2値化することは、上記のように計数結果Nα(t)とNα(t−2)の大小関係で信号抽出部7の計数結果を2値化することと同じである。
If Nu(t)−Nd(t−1)≧Nu(t−2)−Nd(t−3)
then D(t)=1 ・・・(9)
If Nu(t)−Nd(t−1)<Nu(t−2)−Nd(t−3)
then D(t)=0 ・・・(10)
【0049】
2値化部83は、現時刻tの計数結果Nu(t)と1回前の計数結果Nd(t−1)との差が、2回前の計数結果Nu(t−2)と3回前の計数結果Nd(t−3)との差以上であれば、現時刻tの出力D(t)を「1」とし、現時刻tの計数結果Nu(t)と1回前の計数結果Nd(t−1)との差が、2回前の計数結果Nu(t−2)と3回前の計数結果Nd(t−3)との差より小さい場合は、現時刻tの出力D(t)を「0」とする。なお、現時刻tの1回前とは、搬送波の半周期前のことであり、現時刻tの3回前とは、搬送波の3/2周期前のことを意味する。
【0050】
次に、周期測定部84は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)の周期を測定する(図10ステップS201)。図12は周期測定部84の動作を説明するための図である。図12において、H1は2値化出力D(t)の立ち上がりを検出するためのしきい値、H2は2値化出力D(t)の立ち下がりを検出するためのしきい値である。
【0051】
周期測定部84は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)をしきい値H1と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち上がりを検出し、2値化出力D(t)の立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間tuuを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定する。周期測定部84は、このような測定を2値化出力D(t)に立ち上がりエッジが発生する度に行う。
【0052】
あるいは、周期測定部84は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)をしきい値H2と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち下がりを検出し、2値化出力D(t)の立ち下がりから次の立ち下がりまでの時間tddを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定してもよい。周期測定部84は、このような測定を2値化出力D(t)に立ち下がりエッジが発生する度に行う。
【0053】
周期測定部84の測定結果は記憶部80に格納される。次に、度数分布作成部85は、周期測定部84の測定結果から、一定時間T(T>Ttであり、例えば100×Tt、すなわち三角波100個分の時間)における周期の度数分布を作成する(図10ステップS202)。図13は度数分布の1例を示す図である。度数分布作成部85が作成した度数分布は、記憶部80に格納される。度数分布作成部85は、このような度数分布の作成をT時間毎に行う。
【0054】
続いて、基準周期算出部86は、度数分布作成部85が作成した度数分布から、2値化出力D(t)の周期の代表値である基準周期T0を算出する(図10ステップS203)。一般に、周期の代表値は最頻値や中央値であるが、本実施の形態においては、最頻値や中央値が周期の代表値として適していない。そこで、基準周期算出部86は、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期T0とする。表1に、度数分布の数値例およびこの数値例における階級値と度数との積を示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の例では、度数が最大である最頻値(階級値)は1である。これに対して、階級値と度数との積が最大となる階級値は6であり、最頻値とは異なる値になっている。階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期T0とする理由については後述する。算出された基準周期T0の値は、記憶部80に格納される。基準周期算出部86は、このような基準周期T0の算出を、度数分布作成部85によって度数分布が作成される度に行う。
なお、ノイズが少ない場合には、周期の最頻値や中央値を基準周期T0としてもよい。
【0057】
一方、カウンタ87は、周期測定部84および度数分布作成部85と並行して動作し、度数分布作成部85が度数分布作成の対象とする期間と同じ一定時間Tの期間において、2値化出力D(t)の立ち上がりエッジの数Np(すなわち、2値化出力D(t)の「1」のパルスの数)を数える(図10ステップS204)。カウンタ87の計数結果Npは、記憶部80に格納される。カウンタ87は、このような2値化出力D(t)の計数をT時間毎に行う。
【0058】
補正部88は、度数分布作成部85が作成した度数分布から、基準周期T0の0.5倍以下である階級の度数の総和Nsと、基準周期T0の1.5倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、カウンタ87の計数結果Npを次式のように補正する(図10ステップS205)。
Np’=Np−Ns+Nw ・・・(11)
式(11)において、Np’は補正後の計数結果である。この補正後の計数結果Np’は、記憶部80に格納される。補正部88は、このような補正をT時間毎に行う。
【0059】
図14は度数の総和NsとNwを模式的に表す図である。図14において、Tsは基準周期T0の0.5倍の階級値、Twは基準周期T0の1.5倍の階級値である。図14における階級が、周期の代表値であることは言うまでもない。なお、図14では記載を簡略化するため、基準周期T0とTsとの間、及び基準周期T0とTwとの間の度数分布を省略している。
【0060】
図15(A)、図15(B)はカウンタ87の計数結果の補正原理を説明するための図であり、図15(A)は2値化出力D(t)を示す図、図15(B)は図15(A)に対応するカウンタ87の計数結果を示す図である。
本来、2値化出力D(t)の周期はウェブ11の振動周波数によって異なるが、ウェブ11の振動周波数が不変であれば、2値化出力D(t)のパルスは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、結果として2値化出力D(t)の波形にも欠落や信号として数えるべきでない波形が生じ、2値化出力D(t)のパルスの計数結果に誤差が生じる。
【0061】
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所での2値化出力D(t)の周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、2値化出力D(t)の周期が基準周期T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Tw以上の階級の度数の総和Nwを信号が欠落した回数と見なし、このNwをカウンタ87の計数結果Npに加算することで、信号の欠落を補正することができる。
【0062】
また、スパイクノイズなどによって本来の信号が分割された箇所での2値化出力D(t)の周期Tsは、本来の周期と比較して0.5倍よりも短い信号と0.5倍よりも長い信号の2つになる。つまり、2値化出力D(t)の周期が基準周期T0のおよそ0.5倍以下の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Ts以下の階級の度数の総和Nsを信号を過剰に数えた回数と見なし、このNsをカウンタ87の計数結果Npから減算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。以上が、式(11)に示した計数結果の補正原理である。
【0063】
周波数算出部89は、補正部88が計算した補正後の計数結果Np’に基づいて、ウェブ11の振動周波数fsigを次式のように算出する(図10ステップS206)。
fsig=Np’/T ・・・(12)
【0064】
周波数算出部89の算出結果は、記憶部80に格納される。張力算出部90は、速度算出部82が算出したウェブ11の速度Vと周波数算出部89が算出したウェブ11の振動周波数fsigとからウェブ11の張力F[N]を次式のように算出する(図10ステップS207)。
F=M×W×(2×S×fsig−V)2×10-9 ・・・(13)
【0065】
式(13)において、Mはウェブ11の1mm幅あたりの単位質量[g/m]、Wはウェブ11の幅[mm]、Sはウェブ11のスパン[mm]、すなわち図2の送出側ガイド軸100と受取側ガイド軸101間の距離である。なお、式(13)では、ウェブ11の速度Vをmm/sの単位で用いている。
【0066】
以上で、演算部8の速度算出処理と張力算出処理とが終了する。表示部9は、演算部8が算出したウェブ11の速度Vと張力Fとを表示する。
ウェブ搬送装置の制御部104は、演算部8の算出結果に基づいて、ウェブ11の速度と張力とがそれぞれ所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
【0067】
次に、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期T0とする理由について説明する。本実施の形態のように鉛直方向に沿ったウェブ11の変位を2値化した2値化出力D(t)を補正する場合においては、ウェブ11の振動周期よりも周期が短い高周波ノイズの補正が重要になる。高周波ノイズが存在する場合に、2値化出力D(t)の周期の分布の代表値として最頻値や中央値などを用いると、誤って振動周期よりも短いノイズの周期を基準として補正を掛けてしまう懸念がある。また、2値化出力D(t)が計数結果Nα(t)とNα(t−2)の大小関係で2値化されている場合、あるいは2値化出力D(t)が計数結果NuとNdの差の増減で2値化されている場合は、図11(A)の個数の最大値、最小値付近で判定が逆転し易く、2値化出力D(t)が距離比例個数NLとの大小関係で2値化されている場合は、図9(B)の個数が距離比例個数NL付近で、判定が逆転しやすいので、階級値が小さな度数がノイズとして混入し易い。そのため、振動周波数を算出するための一定時間Tの期間において、ある階級の信号が占める割合、つまり階級値と度数との積が最も大きい階級値を基準周期T0として、カウンタ87の計数結果の補正を実施する。以上が、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期T0とする理由である。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、ウェブ11の張力を非接触式で計測できることから、鋼板のような曲げることが難しいウェブ11にも適用することができ、ウェブ11の種類によらずにウェブの張力を計測することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、外乱光に強いという利点を有する自己結合型レーザ計測器を用いてウェブ11の張力を計測するので、マイクロフォンを用いてウェブの振動周波数を求める従来の方法に比べて、外乱に対する耐性を向上させることができる。また、本実施の形態では、MHPの計数結果を2値化し、2値化出力D(t)の周期を測定して一定時間Tにおける周期の度数分布を作成し、周期の度数分布から2値化出力D(t)の周期の分布の代表値である基準周期T0を算出し、一定時間Tの期間において2値化出力D(t)のパルスの数を数え、度数分布から、基準周期T0の0.5倍以下である階級の度数の総和Nsと基準周期T0の1.5倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて2値化出力D(t)のパルスの計数結果を補正することにより、2値化出力D(t)の計数誤差を補正することができるので、ウェブ11の振動周波数の計測精度を向上させることができ、結果としてウェブ11の張力の計測精度を向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、ウェブの張力と同時に、ウェブの速度を計測することができる。本実施の形態の張力・速度計測装置は、ドップラーレーザ速度計に比べて安価に実現することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、レーザ光をウェブ11に対して斜方照射しているが、レーザ光をウェブ11に対して垂直に照射してもよい。この場合は、ウェブ11の速度を計測することはできないが、ウェブ11の張力は上記と同様にして計測することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、2値化出力D(t)の周期を第1の実施の形態と異なる方法で測定するものである。本実施の形態においても、張力・速度計測装置の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。図16は本実施の形態の周期測定部84の動作を説明するための図である。図16において、H1は2値化出力D(t)の立ち上がりを検出するためのしきい値、H2は2値化出力D(t)の立ち下がりを検出するためのしきい値である。
【0073】
本実施の形態の周期測定部84は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)をしきい値H1と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち上がりを検出すると共に、2値化出力D(t)をしきい値H2と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち下がりを検出する。そして、周期測定部84は、2値化出力D(t)の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定すると共に、2値化出力D(t)の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定する。周期測定部84は、このような測定を2値化出力D(t)の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
【0074】
以上のようにして、2値化出力D(t)の周期、より正確には半周期を測定することができる。2値化出力D(t)の半周期を測定することにより、基準周期算出部86が算出するT0も周期ではなく、正確には基準半周期T0となる。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0075】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、2値化出力D(t)の周期を第1、第2の実施の形態と異なる方法で測定するものである。本実施の形態においても、張力・速度計測装置の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
【0076】
本実施の形態の周期測定部84は、2値化出力D(t)の立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間tuuを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定すると共に、2値化出力D(t)の立ち下がりから次の立ち下がりまでの時間tddを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定する。周期測定部84は、このような測定を2値化出力D(t)の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
以上のようにして、2値化出力D(t)の周期を測定することができる。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
なお、第1〜第3の実施の形態では、2値化出力D(t)の立ち上がり立ち下がりを検出するためにしきい値を用いているが、これに限定されるものではなく、フリップフロップ回路によって検出してもよいし、前回値との比較によりソフトウェア的に検出してもよい。
【0077】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、2値化出力D(t)の周期の度数分布と2値化出力D(t)のパルスの数とを求める時間を一定時間Tとしたが、この時間を可変長にしてもよい。
図17は本実施の形態の演算部8aの構成の1例を示すブロック図である。演算部8aは、記憶部80と、距離比例個数算出部81と、速度算出部82と、2値化部83と、周期測定部84aと、度数分布作成部85aと、基準周期算出部86と、補正部88aと、周波数算出部89aと、張力算出部90と、周期和算出部91とから構成される。
【0078】
半導体レーザ1、フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅部5、フィルタ部6、信号抽出部7、距離比例個数算出部81および速度算出部82の動作は、第1の実施の形態と同じであるので、演算部8aの張力算出処理について説明する。図18は演算部8aの張力算出処理を示すフローチャートである。
【0079】
演算部8aの2値化部83は、第1の実施の形態と同様に、信号抽出部7の計数結果を2値化する(図18ステップS200)。
周期測定部84aは、記憶部80に格納された2値化出力D(t)の一定個数Np(Npは2以上の自然数で、例えば100)個のパルスについて、周期を測定する(図18ステップS208)。2値化出力D(t)の周期の測定方法は、第1〜第3の実施の形態のいずれの方法を用いてもよい。周期測定部84aの測定結果は記憶部80に格納される。周期測定部84aは、このような測定を2値化出力D(t)の「1」のパルスがNp個発生する度に行う。
【0080】
度数分布作成部85aは、2値化出力D(t)の一定個数Np個のパルスについて実施された周期測定部84aの測定結果から、周期の度数分布を作成する(図18ステップS209)。度数分布作成部85aが作成した度数分布は、記憶部80に格納される。度数分布作成部85aは、このような度数分布の作成を2値化出力D(t)の「1」のパルスがNp個発生する度に行う。
基準周期算出部86の動作は、第1の実施の形態と同様である(図18ステップS203)。
【0081】
周期和算出部91は、記憶部80に格納された周期測定部84aの測定結果から、2値化出力D(t)の一定個数Np個のパルスについて測定された周期の総和Tを算出する(図18ステップS210)。算出された周期の総和Tは、記憶部80に格納される。
ただし、2値化出力D(t)の周期の測定方法として、第3の実施の形態の方法を用いる場合には、算出した値の1/2を周期の総和Tとする。
【0082】
補正部88aは、度数分布作成部85aが作成した度数分布から、基準周期T0の0.5倍以下である階級の度数の総和Nsと、基準周期T0の1.5倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、一定個数Npを式(11)のように補正する(図18ステップS211)。補正後の値Np’は、記憶部80に格納される。補正部88aは、このような補正を2値化出力D(t)の「1」のパルスがNp個発生する度に行う。
【0083】
周波数算出部89aは、補正部88aが算出した補正後の値Np’と周期和算出部91が算出した周期の総和Tに基づいて、ウェブ11の振動周波数fsigを式(12)のように算出する(図18ステップS212)。
【0084】
張力算出部90は、第1の実施の形態と同様にウェブ11の張力Fを式(13)のように算出する(図18ステップS207)。
その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。こうして、本実施の形態のように、演算部8の代わりに演算部8aを用いる場合においても、ウェブ11の張力の計測精度を向上させることができる。
【0085】
第1の実施の形態では、2値化出力D(t)の周期の度数分布と2値化出力D(t)のパルスの数とを求める時間が一定時間Tで固定されているため、周期の総和が一定時間Tと一致しない場合がある。このため、第1の実施の形態では、ウェブ11の張力に算出誤差が生じる可能性がある。
これに対して、本実施の形態では、周期和算出部91で算出される周期の総和が式(12)で用いる時間Tと等しくなるようにしたので、第1の実施の形態と同様の効果が得られるだけでなく、ウェブ11の張力の計測精度をさらに向上させることができる。
【0086】
なお、ウェブ11の振動周波数fsigを求める際の母集団のTについて、母集団の境目に前記のNsに該当するパルスがあると、図19(B)、図19(C)のように凹凸両方のノイズの可能性が考えられるが、凹のノイズなのか凸のノイズなのか判断できないためNsの短いパルスが本来Tに含まれるものか否かを判断することが困難であるため、Tに誤差が生じる可能性がある。図19(A)はノイズがない場合、図19(B)はNsに該当する凹のノイズ190が存在する場合、図19(C)はNsに該当する凸のノイズ191が存在する場合を示している。そこで、図19(B)、図19(C)のような場合には、Tの境目の前後にNsのパルスがないようにTを選択すると良い。
【0087】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、信号抽出部の別の構成例を示すものである。図20は本実施の形態の信号抽出部7aの構成の1例を示すブロック図である。信号抽出部7aは、判定部71と、論理積演算部(AND)72と、カウンタ73と、計数結果補正部74と、記憶部75とから構成される。判定部71とAND72とカウンタ73とは、干渉波形計数手段を構成している。
【0088】
図21は計数結果補正部74の構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部74は、周期測定部740と、度数分布作成部741と、代表値算出部742と、補正値算出部743とから構成される。
【0089】
図22(A)〜図22(F)は信号抽出部7aの動作を説明するための図であり、図22(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図22(B)は図22(A)に対応する判定部71の出力を示す図、図22(C)は信号抽出部7aに入力されるゲート信号GSを示す図、図22(D)は図22(B)に対応するカウンタ73の計数結果を示す図、図22(E)は信号抽出部7aに入力されるクロック信号CLKを示す図、図22(F)は図22(B)に対応する周期測定部740の測定結果を示す図である。
【0090】
まず、信号抽出部7aの判定部71は、図22(A)に示すフィルタ部6の出力電圧がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図22(B)のような判定結果を出力する。このとき、判定部71は、フィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する。
【0091】
AND72は、判定部71の出力と図22(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ73は、AND72の出力の立ち上がりをカウントする(図22(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(本実施の形態では第1の発振期間P1または第2の発振期間P2)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ73は、計数期間中のAND72の出力の立ち上がりエッジの数(すなわち、MHPの立ち上がりエッジの数)を数えることになる。
【0092】
一方、計数結果補正部74の周期測定部740は、計数期間中のAND72の出力の立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、周期測定部740は、図22(E)に示すクロック信号CLKの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図22(F)の例では、周期測定部740は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図22(E)、図22(F)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5クロック、4クロック、2クロックである。クロック信号CLKの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
記憶部75は、カウンタ73の計数結果と周期測定部740の測定結果を記憶する。
【0093】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、計数結果補正部74の度数分布作成部741は、記憶部75に記憶された測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成する。
続いて、計数結果補正部74の代表値算出部742は、度数分布作成部741が作成した度数分布から、MHPの周期の中央値(メジアン)T0を算出する。
【0094】
計数結果補正部74の補正値算出部743は、度数分布作成部741が作成した度数分布から、周期の中央値T0の0.5倍以下である階級の度数の総和Nsaと、周期の中央値T0の1.5倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、カウンタ73の計数結果を次式のように補正する。
Na’=Na−Nsa+Nwa ・・・(14)
【0095】
式(14)において、Naはカウンタ73の計数結果であるMHPの数、Na’は補正後の計数結果である。式(14)に示した計数結果の補正原理は、図15を用いて説明した、カウンタ87の計数結果の補正原理と同じである。
【0096】
補正値算出部743は、式(14)により計算した補正後の計数結果Na’の値を演算部8,8aに出力する。信号抽出部7aは、以上のような処理を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について行う。なお、本実施の形態では、MHPの周期の代表値として中央値を用いたが、MHPの周期の代表値として最頻値を用いてもよい。
【0097】
以上、本実施の形態で説明した信号抽出部7aを、第1〜第4の実施の形態において、信号抽出部7の代わりに使用することが可能である。
信号抽出部7aによれば、計数期間中のMHPの周期を測定し、この測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの周期の代表値を算出し、度数分布から、代表値の0.5倍以下である階級の度数の総和Nsaと、代表値の1.5倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、これらの度数NsaとNwaに基づいてカウンタの計数結果を補正することにより、MHPの計数誤差を補正することができるので、ウェブ11の速度および張力の計測精度を更に向上させることができる。
【0098】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態では、ウェブ11の速度や半導体レーザ1とウェブ11との距離がおおよそ分かっていることを前提にしているが、ウェブ11の速度やウェブ11との距離が分かっていない場合、距離比例個数NLを誤算出する可能性があり、結果としてウェブ11の速度および張力を誤算出する可能性がある。本実施の形態は、このような場合に対応するものである。
【0099】
図23は本実施の形態の演算部8bの構成の1例を示すブロック図である。演算部8bは、記憶部80と、距離比例個数算出部81bと、速度算出部82と、2値化部83と、周期測定部84と、度数分布作成部85と、基準周期算出部86と、カウンタ87と、補正部88と、周波数算出部89と、張力算出部90と、信号抽出部7の計数結果Nu,Ndの増減方向の一致不一致あるいは計数結果Nu,Ndの平均値の変化に応じて、信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与部92とから構成される。張力・速度計測装置の全体の構成は第1の実施の形態と同じでよい。
【0100】
半導体レーザ1、フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅部5、フィルタ部6、信号抽出部7、速度算出部82、2値化部83、周期測定部84、度数分布作成部85、基準周期算出部86、カウンタ87、補正部88、周波数算出部89および張力算出部90の動作は、第1の実施の形態と同じであるので、距離比例個数算出部81bと符号付与部92の動作について説明する。
【0101】
距離比例個数算出部81bは、ウェブ11の速度および張力の計測開始初期には、第1の実施の形態と同様に、式(2)を用いて距離比例個数NLを算出するが、途中からは式(2)の代わりに後述する符号付き計数結果を用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL=(Nu’+Nd’)/2 ・・・(15)
【0102】
式(15)において、Nu’は計数結果Nuに後述する符号付与処理を施した後の符号付き計数結果、Nd’は計数結果Ndに符号付与処理を施した後の符号付き計数結果である。式(15)が使用されるのは、符号付与部92が符号付き計数結果を出力したとき以降である。
距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81bは、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0103】
次に、符号付与部92は、信号抽出部7の計数結果Nu,Ndの増減方向の一致不一致、あるいは計数結果Nu,Ndの平均値の変化に基づいて、信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与する。図24(A)、図24(B)、図25(A)、図25(B)は符号付与部92の動作を説明するための図であり、図24(A)、図25(B)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図24(B)、図25(B)は信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。なお、図24(B)、図25(B)の例では、計数結果Nuが、半導体レーザ1の照射面から、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面の位置の変位方向がウェブ11の速度方向と対向しているときの計数結果Nαである場合を示している。
【0104】
ウェブ11の振動に伴う半導体レーザ1とウェブ11との距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも小さく、ウェブ11が鉛直方向に沿って単振動している場合、第1の発振期間P1の計数結果Nuの時間変化と第2の発振期間P2の計数結果Ndの時間変化は、図24(B)に示すように互いの位相差が180度の正弦波形となる。上記のように、このときのウェブ11の状態を微小変位状態とする。
【0105】
一方、半導体レーザ1とウェブ11との距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも大きい場合、計数結果Ndの時間変化は、図25(B)の負側の波形250が正側の波形251に折り返された形になる。特開2006−313080号公報では、この計数結果の折り返しが生じている部分におけるウェブ11の状態を変位状態としている。一方、計数結果の折り返しが生じていない部分におけるウェブ11の状態は、上記の微小変位状態である。
【0106】
計数結果の折り返しが生じている部分において、計数結果をそのまま用いて距離比例個数NLを算出すると、距離比例個数NLが本来の値と異なる値になる。
つまり、距離比例個数NLを正しく求めるためには、ウェブ11が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定し、ウェブ11が変位状態である場合には、正側に折り返されている計数結果に負の符号を付与する補正を行う必要がある。
【0107】
符号付与部92は、図24(B)に示すように計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化が同相でない場合、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力し、図25(B)に示すように計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化が同相である場合、現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する。
【0108】
現時刻tの計数結果がNuであれば、計数結果Nuの増減は、現時刻tの計数結果Nu(t)と2回前の計数結果Nu(t−2)との差Nu(t)−Nu(t−2)の符号で判別することができ、計数結果Ndの増減は、1回前の計数結果Nd(t−1)と3回前の計数結果Nd(t−3)との差Nd(t−1)−Nd(t−3)の符号で判別することができる。一方、現時刻tの計数結果がNdであれば、計数結果Nuの増減は、1回前の計数結果Nu(t−1)と3回前の計数結果Nu(t−3)との差Nu(t−1)−Nu(t−3)の符号で判別することができ、計数結果Ndの増減は、現時刻tの計数結果Nd(t)と2回前の計数結果Nd(t−2)との差Nd(t)−Nd(t−2)の符号で判別することができる。
【0109】
このような増減の判別の結果、計数結果Nu,Ndが共に増加している場合あるいは共に減少している場合は、計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化が同相であり、ウェブ11が変位状態であると判断することができる。また、計数結果Nu,Ndのどちらか一方が増加していて他方が減少している場合は、計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化が同相でなく、ウェブ11が変位状態でないと判断することができる。
【0110】
また、図25(B)で説明したような計数結果の折り返しが生じると、計数結果Nu,Ndの平均値に変化が生じる。そこで、符号付与部92は、計数結果Nu,Ndの平均値の変化に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与するようにしてもよい。
【0111】
この場合、符号付与部92は、現時刻t以前に求めた計数結果Nuの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値以内であり、かつ現時刻t以前に求めた計数結果Ndの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値以内である場合、現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する。また、符号付与部92は、現時刻t以前に求めた計数結果Nuの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したり、現時刻t以前に求めた計数結果Ndの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したりした場合、現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する。
【0112】
符号付き計数結果N’(t)は、記憶部80に格納される。符号付与部92は、以上のような符号付与処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0113】
以上のように、本実施の形態では、ウェブ11の速度や半導体レーザ1とウェブ11との距離が分かっていない場合であっても対応することができ、ウェブ11の速度および張力を誤算出する可能性を低減することができる。
なお、本実施の形態では、演算部8bを第1の実施の形態に適用しているが、他の実施の形態に適用してもよいことは言うまでもない。
【0114】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。図26は本実施の形態の演算部8cの構成の1例を示すブロック図である。演算部8cは、記憶部80と、距離比例個数算出部81と、速度算出部82と、2値化部83と、周期測定部84と、周期分別部93と、判定部94とから構成される。
なお、図26における105は、演算部8cと共にウェブ搬送装置の制御部104内に設けられる速度・周波数制御部である。
【0115】
半導体レーザ1、フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅部5、フィルタ部6、信号抽出部7、距離比例個数算出部81、速度算出部82、2値化部83および周期測定部84の動作は、第1の実施の形態と同じであるので、周期分別部93と判定部94の動作について説明する。
【0116】
周期分別部93は、ウェブ11に所望の張力が掛かっているときの2値化出力D(t)の周期(以下、目標周期Thと呼ぶ)に基づく値により2値化出力D(t)の周期の度数を分別する。すなわち、周期分別部93は、周期測定部84によって測定された2値化出力D(t)の周期TDの度数を、目標周期Thの0.5倍未満(0.5Th>TD)の周期の度数N1と、目標周期Thの0.5倍以上かつ目標周期Th未満(0.5Th≦TD<Th)の周期の度数N2と、目標周期Th以上かつ目標周期Thの1.5倍未満(Th≦TD<1.5Th)の周期の度数N3と、目標周期Thの1.5倍以上(1.5Th≦TD)の周期の度数N4の4つに分別する。
【0117】
以上のようにして、周期分別部93は、周期測定部84によって測定された2値化出力D(t)の周期の度数を分別する。周期分別部93は、一定期間ごとに周期の度数を分別する。周期分別部93の分別結果は、記憶部80に格納される。
【0118】
次に、判定部94は、周期分別部93の分別結果からウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いか低いかを判定する。目標周波数は、ウェブ11に所望の張力が掛かっているときのウェブ11の振動周波数である。判定部94は、2値化出力D(t)の周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N4が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。また、判定部94は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数N2とN3の大小を比較し、度数N3よりも度数N2が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N2よりも度数N3が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。
【0119】
判定部94は、このような判定を、周期分別部93が2値化出力D(t)の周期を分別する期間ごとに行う。
速度・周波数制御部105は、速度算出部82の速度算出結果に基づいて、ウェブ11の速度が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御すると共に、判定部94の判定結果に基づいて、ウェブ11の振動周波数が目標周波数に近づくように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
【0120】
つまり、速度・周波数制御部105は、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定された場合、ウェブ11の張力が所望の値よりも高いことを意味するので、ウェブ11の張力が低くなるように制御する。また、速度・周波数制御部105は、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定された場合、ウェブ11の張力が所望の値よりも低いことを意味するので、ウェブ11の張力が高くなるように制御する。
【0121】
図27、図28は本実施の形態の判定原理を説明するための図であり、図27は波形に欠落が生じた場合の2値化出力D(t)の周期の度数分布を示す図、図28はノイズによって周期が2分割された場合の2値化出力D(t)の周期の度数分布を示す図である。図27、図28において、Tcは2値化出力D(t)の本来の周期の度数分布aの代表値(中央値または最頻値等)である。
【0122】
例えば周期の測定時に2値化出力D(t)の欠落(検出漏れ)が発生すると、欠落が生じた箇所での2値化出力D(t)の周期は、本来の周期のおよそ2倍になり、この欠落によって生じた2値化出力D(t)の周期の度数分布は、2Tcを中心とした正規分布(図27のb)になる。この度数分布bは、2値化出力D(t)の本来の周期の度数分布aの相似形である。
一方、周期の測定時にノイズを2値化出力D(t)として誤って検出してしまうと、2値化出力D(t)の周期はランダムな割合で2分割される。このとき、ノイズを過剰に数えた結果として2分割された2値化出力D(t)の周期の度数分布は、0.5Tcに対して対称な分布になる(図28のc)。
【0123】
本実施の形態では、上記のとおり2値化出力D(t)の周期の度数を4つに分け、目標周期Thの0.5倍未満の周期の度数N1が最も大きい場合は、この度数N1がノイズによるものではなく、2値化出力D(t)の本来の周期であると見なして、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定する。また、目標周期Thの1.5倍以上の周期の度数N4が最も大きい場合は、この度数N4が2値化出力D(t)の欠落によるものではなく、2値化出力D(t)の本来の周期であると見なして、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。また、度数N1またはN4でウェブ11の振動周波数の高低を判断できない場合は、度数N1とN4を無視して、目標周期Thの0.5倍以上かつ目標周期Th未満の周期の度数N2と目標周期Th以上かつ目標周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3の大小比較で、ウェブ11の振動周波数の高低を判定する。
【0124】
こうして、本実施の形態では、周期測定時の2値化出力D(t)の欠落や過剰なノイズ検出の影響を除去し、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いか低いかを正しく判定することができ、この判定結果を使ってウェブ11の振動周波数が目標周波数になるように制御することで、ウェブ11の張力を制御することができる。
【0125】
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図29は本実施の形態の演算部8dの構成の1例を示すブロック図である。演算部8dは、記憶部80と、距離比例個数算出部81と、速度算出部82と、2値化部83と、周期測定部84と、周期分別部93と、判定部94dと、度数補正部95とから構成される。
【0126】
半導体レーザ1、フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅部5、フィルタ部6、信号抽出部7、距離比例個数算出部81、速度算出部82、2値化部83、周期測定部84、周期分別部93および速度・周波数制御部105の動作は、第1、第7の実施の形態と同じであるので、判定部94dと度数補正部95の動作について説明する。
【0127】
度数補正部95は、目標周期Thの0.5倍以上かつ目標周期Th未満の周期の度数N2の補正値N2’と、目標周期Th以上かつ目標周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3の補正値N3’を以下のように算出する。
N2’=N2−N1 ・・・(16)
N3’=N3+N1 ・・・(17)
【0128】
そして、度数補正部95は、周期分別部93が求めた度数N1,N2,N3,N4と自身が求めた補正値N2’,N3’とを判定部94dに通知する。第7の実施の形態と同様に、周期分別部93は、一定期間ごとに2値化出力D(t)の周期の度数を分別し、度数補正部95は、分別された度数を補正する。なお、度数補正部95は、補正値N2’とN3’のどちらか一方を算出すればよい。
【0129】
次に、判定部94dは、2値化出力D(t)の周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N4が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。また、判定部94dは、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、度数N3よりも補正値N2’が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、補正値N2’よりも度数N3が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。判定部94dは、このような判定を一定期間ごとに行う。
【0130】
また、度数補正部95が補正値N3’を算出する場合には判定部94dは以下のような判定を行う。すなわち、判定部94dは、2値化出力D(t)の周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N4が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。また、判定部94dは、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、度数の補正値N3’よりも度数N2が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N2よりも度数の補正値N3’が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。その他の構成は、第7の実施の形態で説明したとおりである。
【0131】
周期の測定時にノイズを過剰に数えた結果として2分割された2値化出力D(t)の周期の度数分布cは、図28に示すように、2値化出力D(t)の本来の周期の度数分布aに重なることが多い。そこで、本実施の形態では、目標周期Thの0.5倍以上かつ目標周期Th未満の周期の度数N2を式(16)のように補正し、目標周期Th以上かつ目標周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3を式(17)のように補正する。
【0132】
こうして、本実施の形態では、周期測定時の過剰なノイズ検出の影響をより効果的に除去することができ、第7の実施の形態に比べてウェブ11の振動周波数の高低の判定精度をさらに向上させることができる。
【0133】
[第9の実施の形態]
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、演算部の構成は第7の実施の形態と同様であるので、図26の符号を用いて説明する。
本実施の形態の周期分別部93は、第7の実施の形態と同様に、周期測定部84によって測定された2値化出力D(t)の周期TDの度数を、目標周期Thの0.5倍未満(0.5Th>TD)の周期の度数N1と、目標周期Thの0.5倍以上かつ目標周期Th未満(0.5Th≦TD<Th)の周期の度数N2と、目標周期Th以上かつ目標周期Thの1.5倍未満(Th≦TD<1.5Th)の周期の度数N3と、目標周期Thの1.5倍以上(1.5Th≦TD)の周期の度数N4の4つに分別する。
【0134】
第7の実施の形態と同様に、判定部94は、2値化出力D(t)の周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N4が最も大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。また、判定部94は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、目標周期Thの整数倍の周期nTh(nは2以上の整数)を基準として、周期nThの近傍であってかつ周期nTh未満である周期Tの度数を度数N2に加え、周期nThの近傍であってかつ周期nTh以上である周期Tの度数を度数N3に加える。例えば判定部94は、目標周期Thの1.5倍以上2倍未満の周期の度数を度数N2に加え、目標周期Thの2倍以上2.5倍未満の周期の度数を度数N3に加える。そして、判定部94は、この加算後の度数N2とN3の大小を比較し、度数N3よりも度数N2が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、度数N2よりも度数N3が大きい場合、ウェブ11の振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する。その他の構成は、第7の実施の形態で説明したとおりである。
【0135】
本実施の形態は、2値化出力D(t)の周期の測定時に2値化出力D(t)の欠落が発生する場合の補正方法を示すものであり、周期測定部84の測定結果においてN3<N2<(N3+N4)が成立するときに有効である。
なお、本実施の形態を第8の実施の形態と併用する場合には、補正値N2’を使う必要がある。この補正値N2’と度数N3に対して前記加算を行う。
【0136】
[第10の実施の形態]
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。第1〜第9の実施の形態では、半導体レーザ1を三角波状に発振させていたが、これに限るものではなく、図30(A)に示すように半導体レーザ1を鋸波状に発振させてもよい。すなわち、本実施の形態では、第1の発振期間P1または第2の発振期間P2のいずれか一方が繰り返し存在するように半導体レーザ1を動作させればよい。
【0137】
本実施の形態のように半導体レーザ1を鋸波状に発振させる場合においても、半導体レーザ1の発振波長の変化速度が一定であることが必要である。第1の発振期間P1または第2の発振期間P2における動作は、三角波発振の場合と同様である。図30に示すように第1の発振期間P1のみが繰り返し存在する鋸波状の発振の場合は第1の発振期間P1の処理を繰り返し行えばよく、第2の発振期間P2のみが繰り返し存在する鋸波状の発振の場合は第2の発振期間P2の処理を繰り返し行えばよいことは言うまでもない。
【0138】
ただし、信号抽出部7の計数結果を示す図30(B)からも明らかなように、本実施の形態では、計数結果Nu,Ndの平均値を求めることはできないので、距離比例個数NLが既知であることが必要となる。言い換えると、距離比例個数算出部81は、距離比例個数NLを算出する必要はなく、所定の距離比例個数NLを出力すればよい。つまり、ウェブ11が所望の速度で移動しているときの距離比例個数NLを予め求めて、距離比例個数算出部81に設定しておけばよい。
【0139】
なお、本実施の形態のように半導体レーザ1を鋸波状に発振させる構成は、第1〜第5の実施の形態および第7〜第9の実施の形態に適用することができるが、第6の実施の形態に適用することはできない。
【0140】
[第11の実施の形態]
次に、本発明の第11の実施の形態について説明する。第1〜第10の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図31は本発明の第11の実施の形態に係る張力・速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の張力・速度計測装置は、第1〜第10の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部12を用いるものである。
【0141】
電圧検出部12は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光とウェブ11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0142】
フィルタ部6は、電圧検出部12の出力電圧から搬送波を除去する。張力・速度計測装置のその他の構成は、第1〜第10の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第10の実施の形態と比較して張力・速度計測装置の部品を削減することができ、張力・速度計測装置のコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0143】
本実施の形態では、レーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する駆動電流をレーザ発振のしきい値電流付近に制御することが好ましい。これにより、半導体レーザ1の端子間電圧からMHPを抽出することが容易になる。
【0144】
なお、第1〜第11の実施の形態において少なくとも信号抽出部7,7aと演算部8,8a,8b,8c,8d,8eと制御部104とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って第1〜第11の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0145】
また、第1〜第11の実施の形態では、センサモジュール10を図2に示すように配置したが、これに限るものではない。例えば図32に示すように、半導体レーザ1からのレーザ光が送出側ロール102の箇所または受取側ロール103の箇所でウェブ11に入射するようにしてもよい。この場合、測定可能な物理量は、ウェブ11の速度と、半導体レーザ1とウェブ11との距離であり、ウェブ11の張力を測定することはできない。ウェブ11との距離を測定すれば、ロールの半径を間接的に算出することができ、ロール半径のモニタリングが実現できる。なお、自己結合型のレーザ計測器において、物体との距離を測定することは周知技術である。また、送出側ロール102の箇所または受取側ロール103の箇所で、レーザ光をウェブ11に対して垂直に照射した場合には、ウェブ11との距離のみを測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブの速度と張力を測定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0147】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7,7a…信号抽出部、8,8a,8b,8c,8d,8e…演算部、9…表示部、10…センサモジュール、11…ウェブ、12…電圧検出部、71…判定部、72…論理積演算部、73…カウンタ、74…計数結果補正部、75…記憶部、80…記憶部、81,81b…距離比例個数算出部、82…速度算出部、83…2値化部、84,84a…周期測定部、85,85a…度数分布作成部、86…基準周期算出部、87…カウンタ、88,88a…補正部、89,89a…周波数算出部、90…張力算出部、91…周期和算出部、92…符号付与部、93…周期分別部、94,94d,94e…判定部、95…度数補正部、96…正規化部、97…度数補正部、100…送出側ガイド軸、101…受取側ガイド軸、102…送出側ロール、103…受取側ロール、104…制御部、105…速度・周波数制御部、740…周期測定部、741…度数分布作成部、742…代表値算出部、743…補正値算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計数結果に基づいて前記ウェブの速度およびウェブの張力の少なくとも一方を算出する演算手段とを備えることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の張力・速度計測装置において、
前記演算手段は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、
前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、
この2値化手段から出力された2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手段と、
この2値化出力周期測定手段の測定結果から一定時間における2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手段と、
前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手段と、
前記2値化出力周期度数分布作成手段が度数分布作成の対象とする期間と同じ一定時間の期間において前記2値化出力のパルスの数を数える2値化出力計数手段と、
前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記2値化出力計数手段の計数結果を補正する補正手段と、
この補正手段で補正された計数結果と前記一定時間に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手段と、
前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手段とを備えることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の張力・速度計測装置において、
前記演算手段は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、
前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、
この2値化手段から出力された一定個数の2値化出力のパルスについて周期を測定する2値化出力周期測定手段と、
前記2値化出力の一定個数のパルスについて実施された前記2値化出力周期測定手段の測定結果から前記2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手段と、
前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手段と、
前記2値化出力周期測定手段の測定結果から前記2値化出力の周期の総和を算出する周期和算出手段と、
前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記一定個数を補正する補正手段と、
この補正手段で補正された値と前記周期和算出手段で算出された周期の総和に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手段と、
前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手段とを備えることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の張力・速度計測装置において、
前記基準周期算出手段は、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記基準周期とすることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項5】
請求項1記載の張力・速度計測装置において、
前記信号抽出手段は、
前記検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手段と、
この干渉波形計数手段が干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手段と、
この干渉波形周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手段と、
前記干渉波形の周期の度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、
前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsaと、前記代表値の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、これらの度数NsaとNwaに基づいて前記干渉波形計数手段の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手段とからなることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項6】
請求項2または3記載の張力・速度計測装置において、
さらに、前記信号抽出手段の計数結果の増減方向の一致不一致あるいは計数結果の平均値の変化に応じて前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段を備え、
前記距離比例個数算出手段は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項7】
請求項1記載の張力・速度計測装置において、
前記演算手段は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段と、
前記信号抽出手段の計数結果を2値化する2値化手段と、
この2値化手段から出力された2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手段と、
前記ウェブに所望の張力が掛かっているときの前記2値化出力の周期を目標周期としたときに、前記2値化出力周期測定手段によって測定された2値化出力の周期の度数を、前記目標周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記目標周期の第1の所定数倍以上かつ目標周期未満の周期の度数N2と、前記目標周期以上かつ目標周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記目標周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する周期分別手段と、
前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する判定手段と、
この判定手段の判定結果に基づいて、前記ウェブの振動周波数が前記目標周波数に近づくように、前記搬送装置の送出側の駆動部と受取側の駆動部を制御する周波数制御手段とを備えることを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項8】
請求項7記載の張力・速度計測装置において、
さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手段を備え、
前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項9】
請求項7記載の張力・速度計測装置において、
さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手段を備え、
前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とする張力・速度計測装置。
【請求項10】
搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザを、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計数結果に基づいて前記ウェブの速度およびウェブの張力の少なくとも一方を算出する演算手順とを備えることを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項11】
請求項10記載の張力・速度計測方法において、
前記演算手順は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手順と、
前記信号抽出手順の計数結果を2値化する2値化手順と、
この2値化手順で得られた2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手順と、
この2値化出力周期測定手順の測定結果から一定時間における2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手順と、
前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手順と、
前記2値化出力周期度数分布作成手順が度数分布作成の対象とする期間と同じ一定時間の期間において前記2値化出力のパルスの数を数える2値化出力計数手順と、
前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記2値化出力計数手順の計数結果を補正する補正手順と、
この補正手順で補正された計数結果と前記一定時間に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手順と、
前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手順とを含むことを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項12】
請求項10記載の張力・速度計測方法において、
前記演算手順は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手順と、
前記信号抽出手順の計数結果を2値化する2値化手順と、
この2値化手順で得られた一定個数の2値化出力のパルスについて周期を測定する2値化出力周期測定手順と、
前記2値化出力の一定個数のパルスについて実施された前記2値化出力周期測定手順の測定結果から前記2値化出力の周期の度数分布を作成する2値化出力周期度数分布作成手順と、
前記2値化出力の周期の度数分布から前記2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出手順と、
前記2値化出力周期測定手順の測定結果から前記2値化出力の周期の総和を算出する周期和算出手順と、
前記2値化出力の周期の度数分布から、前記基準周期の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと前記基準周期の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいて前記一定個数を補正する補正手順と、
この補正手順で補正された値と前記周期和算出手順で算出された周期の総和に基づいて前記ウェブの振動周波数を算出する周波数算出手順と、
前記ウェブの速度と前記ウェブの振動周波数に基づいて前記ウェブの張力を算出する張力算出手順とを含むことを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の張力・速度計測方法において、
前記基準周期算出手順は、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記基準周期とすることを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項14】
請求項10記載の張力・速度計測方法において、
前記信号抽出手順は、
前記検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手順と、
この干渉波形計数手順が干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手順と、
この干渉波形周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手順と、
前記干渉波形の周期の度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手順と、
前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsaと、前記代表値の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、これらの度数NsaとNwaに基づいて前記干渉波形計数手順の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手順とを含むことを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項15】
請求項11または12記載の張力・速度計測方法において、
さらに、前記信号抽出手順の計数結果の増減方向の一致不一致あるいは計数結果の平均値の変化に応じて前記信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手順を備え、
前記距離比例個数算出手順は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項16】
請求項10記載の張力・速度計測方法において、
前記演算手順は、
前記干渉波形の数の平均値を算出することにより前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
前記距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手順と、
前記信号抽出手順の計数結果を2値化する2値化手順と、
この2値化手順で得られた2値化出力の周期を測定する2値化出力周期測定手順と、
前記ウェブに所望の張力が掛かっているときの前記2値化出力の周期を目標周期としたときに、前記2値化出力周期測定手順によって測定された2値化出力の周期の度数を、前記目標周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記目標周期の第1の所定数倍以上かつ目標周期未満の周期の度数N2と、前記目標周期以上かつ目標周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記目標周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する周期分別手順と、
前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定する判定手順と、
この判定手順の判定結果に基づいて、前記ウェブの振動周波数が前記目標周波数に近づくように、前記搬送装置の送出側の駆動部と受取側の駆動部を制御する周波数制御手順とを含むことを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項17】
請求項16記載の張力・速度計測方法において、
さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手順を備え、
前記判定手順は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とする張力・速度計測方法。
【請求項18】
請求項16記載の張力・速度計測方法において、
さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手順を備え、
前記判定手順は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも高いと判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記ウェブの振動周波数が目標周波数よりも低いと判定することを特徴とする張力・速度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−230358(P2010−230358A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75825(P2009−75825)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】