説明

往復動ポンプ

【課題】往復動ポンプの逆止弁の開閉タイミングのずれを許容できるようにする。
【解決手段】往復動ポンプのプランジャ12は、連結部材14を介して、クランク機構16に駆動されている。連結部材14とプランジャ12とは、遊びdをもって係合されている。この遊びのために、クランク上死点および下死点のそれぞれの後に続く期間に、プランジャ12の動かない期間が生じる。この期間内のいずれかの時点であれば、弁の開閉タイミングのずれを許容し、異常な昇圧、逆流等を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプ、特にその駆動部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動ポンプは、往復直線運動を行うプランジャによりポンプ室の容積を増減させ、取扱い流体をここに吸い込み、またここから吐出して流体を送り出す。往復動ポンプは、取扱い流体の流れを1方向の流れとするために、逆止弁を用いている。吸込管には、ポンプに向かう流れのみを許容する逆止弁が、また吐出管にはポンプから吐出される流れのみを許容する逆止弁が設けられる。
【0003】
一般的な逆止弁は、球形の弁体が流体の流れ、圧力、重力によって動き、その位置によって流路を開閉する。高い粘度の流体を取り扱う場合、弁体の動きが遅くなったり、完全に閉まりきらないことがあり、高粘度流体を扱う場合であっても、流路の開閉タイミングを適切に制御するために強制開閉弁を用いることがある。強制開閉弁は、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、カムなどにより弁体を強制的に駆動して流路の開閉の制御を行うものである。これによれば、粘性などの流体の特性や流量などの条件によらず、弁の開閉タイミングが決まる。また、スラリを取り扱う場合にも、強制開閉弁を用いることは好ましい。強制的に弁体を移動させることで、より大きく弁体を動かして流路を広くし、スラリの含む粒状分がつまらないようにすることができる。強制開閉弁は、吸込側、吐出側の一方、または双方に設けられる。下記非特許文献1には、往復動ポンプの、プランジャとこれを駆動するクランク機構を連結する構成部分の概略構成が示されている。
【非特許文献1】ポンプ概論編纂委員会、「ポンプ概論」、第5版、日本工業出版株式会社、昭和59年7月31日、p.144
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な逆止弁、すなわち弁体が流体の流れなどで受動的に動く弁を備えた往復動ポンプにおいては、ポンプ室内の圧力が上昇すれば、この圧力によって自動的に弁が開きこれを解放する。しかし、強制開閉弁の場合、圧力が上昇しても、これが解放されることがなく、異常昇圧が生じる。また、本来開くべき期間でないときに弁が開かれてしまうと、逆流が発生したり、異常な減圧が起こったりする。したがって、開閉動作の高い制御精度が要求され、個々の部品の製作時の精度を始め、設置、調整、維持作業などにも手間がかかる。
【0005】
本発明は、強制開閉弁を用いた往復動ポンプにおいても、異常昇圧などを簡易に防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の往復動ポンプは、往復直線運動を行うプランジャと、これを駆動するクランク機構とを、遊びをもって連結する。遊びのために、プランジャの上死点、下死点付近では、プランジャの動きの止まる期間が生じる。この間のいずれかの時点で弁を開閉すれば、昇圧、逆流が生じることがない。言い換えれば、弁の開閉タイミングの管理、調整に高い精度を要求されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の往復動ポンプ10の概略構成を示す断面図である。プランジャ12は、連結部品14を介してクランク機構16により駆動され、シリンダ18内で往復運動する。シリンダ18の往復運動にてポンプ室20の容積が増減によって、取扱い流体の吸込、吐出が、吸込側強制開閉弁22、吐出側強制開閉弁24を介して行われる。強制開閉弁22,24は、空気圧制御部26より高圧空気が供給され、また解放されて、弁の開閉が制御されている。
【0008】
プランジャ12が図中左に移動している際には、吸込側強制開閉弁22が開放され、また吐出側強制開閉弁24が閉止され、吸込管28より取扱い流体がポンプ室内に流入する。プランジャ12が右に移動している際には、逆に吸込側が閉じ、吐出側が開いて、ポンプ室内の取扱い流体が吐出管30に送り出される。
【0009】
連結部品14は、回転駆動源(不図示)の回転運動がクランク機構16により変換されて往復直線運動を行う。連結部品14とプランジャ12は、図示するように遊びdをもって連結されている。連結部品本体32のプランジャ側の端には、先端孔34が設けられ、プランジャ12の基端部36を収容するようになっている。実際には、連結カラー38とプランジャの基端部36が係合されたあと、連結カラー38の外周面に切られた雄ねじと、先端孔34の内周面に切られた雌ねじを係合し、さらにロックナット40を用いて固定する。こうして、連結部品14とプランジャ12が連結される。遊びのクランク機構側の端部には、ばね、好ましくはコイルばねが配置されており、このばねは、プランジャの基端部36が遊びを移動してクランク機構側の端に突き当たる際に衝撃を緩和する。本実施形態では用いていないが、反対側の端にもばねを配置こちら側においても衝撃緩和を行ってもよい。
【0010】
図2には、クランクの回転の代表的な位置における、連結部品14とプランジャ12の係合状態を示した図である。図2(a)は、クランク機構16が下死点に達したときの状態である。連結部品14の下死点への移動、すなわち図中左方向への移動によりプランジャの基端部36は、遊びの範囲の右端に位置している。下死点通過後、連結部品14は右方向に移動を開始するが、遊びがあるので、当初はこの動きがプランジャに伝わらない。基端部36が遊び範囲の左端のばね42に到達するまで連結部材14が移動すると(図2(b))、ばねが収縮し、その後連結部材14とプランジャ12が一体となって右方向に動き始め、ポンプは吐出を始める。移動を続けクランク機構16が上死点に達したとき(図2(c))、基端部36は、未だ遊びの左端に位置している。このとき、上死点に達する前に吐出側強制開閉弁が閉じていた場合など、ポンプ室内の圧力が上昇したとき、さらにばねが収縮してプランジャのさらなる移動を抑制し、圧力の上昇を抑制する。
【0011】
クランクがさらに回転し、連結部材14が左方向に移動を始めても、遊びの範囲においては、この動きはプランジャ12には伝わらない(図2(d))。基端部36が遊び範囲の右端に達すると、その後は連結部品14とプランジャ12が一体に左に移動し、下死点に達する(図2(e))。この移動の間、ポンプにおいては取扱い流体が吸い込まれる。
【0012】
このように、クランク上死点、下死点の後、連結部材14が遊びの範囲を移動する期間、プランジャ12にはその動きが伝達されない。強制開閉弁を用いる場合には、このプランジャに動きが伝達しない期間に弁の開閉が行われるように、すなわち、上死点、または下死点をやや過ぎた時点で開閉が行われるように設定する。こうすることで、弁の開閉のタイミングがずれたとしても、プランジャに動きが伝わらない期間内で、開閉が行われ、異常昇圧などの発生が防止される。また、遊びの範囲の端にばねを配置し、異常昇圧が発生した場合に、さらにこのばねで、プランジャ12の動きを吸収して、昇圧を抑制するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の往復動ポンプの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態の往復動ポンプの動作説明図である。
【符号の説明】
【0014】
10 往復動ポンプ、12 プランジャ、14 連結部品、16 クランク機構、22 吸込側強制開閉弁、24 吐出側強制開閉弁、36 基端部、42 ばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を往復直線運動に変換するクランク機構と、
前記クランク機構によって往復直線運動をするプランジャと、
前記プランジャの運動により容積が増減するポンプ室と、
前記ポンプ室に流出入する取扱い流体の流れを制御するため、強制的に開閉される強制開閉弁と、
を有し、
前記クランク機構と前記プランジャは、プランジャの往復直線運動の方向に遊びをもって連結され、
ポンプ室の容積の増減により取扱い流体を送る往復動ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の往復動ポンプであって、前記遊びの端には、ばねが配置され、遊びの端における衝撃を緩和する、往復動ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の往復動ポンプであって、前記遊びの端には、ばねが配置され、ポンプ室内部で異常な圧力が生じた場合、このばねが収縮して、これを緩和する、
往復動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−57518(P2006−57518A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239752(P2004−239752)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】