説明

後挽き加工用のスローアウェイチップ、後挽き加工用のバイト

【課題】後挽き加工において、切り屑の排出性能を向上させて、切り屑が切削対象物の加工面を傷めることを抑制する。
【解決手段】後挽き加工用のスローアウェイチップ40は、複数の逃げ面とすくい面41とが交わる稜線のうちの第1の稜線51に第1の切刃61と第2の切刃62とが形成される。稜線のうちの切刃が形成されておらず、第1の稜線と交わる第2の稜線52と、第1の稜線51との間には、ブレーカ溝80が形成される。すくい面41を正面視した状態で、第2の稜線52に直交する切断線CLで切った断面において、切断線CLと直交する直交方向の第2の稜線52の高さは、第1の切刃61の直線形状と、第2の稜線52の直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点70aから所定の範囲にわたって、第1の切刃61,第2の切刃62の高さ以上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後挽き加工用のスローアウェイチップの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
小型自動旋盤の後挽き加工では、棒状の回転する切削対象物(ワーク)に対して、ワークの径方向に所要量切り込んだ後、ワークの長手方向に送りが行われる。従来の後挽き加工用工具では、径方向への切り込み時や長手方向への送り時において、切り屑が加工面と接触することで、加工面が傷み、加工面がきれいに仕上がらないことがあった。特に切り込みの際や、切り込みから送りへ切り替わる際には、切削物と工具のチップとの間に切り屑が挟み込まれ、加工面を大きく荒らすことがあった。
【0003】
そのため、従来の後挽き加工では、切り屑が挟み込まれても影響がない程度に薄く柔らかい切り屑を発生させるために、切削条件を極端に遅く設定することがあった。あるいは、端面部と外径部とを2度に分けて加工することがあった。このように、従来の後挽き加工では、加工能率が悪く、改善の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−314407号公報
【特許文献2】実開昭62−172505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、後挽き加工において、切り屑の排出性能を向上させて、切り屑がワークの加工面を傷めることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的とし、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記第1の切刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0008】
かかる構成の後挽き加工用のスローアウェイチップによれば、交点から所定の範囲にわたって、第2の稜線の高さが切刃以上の高さに形成されているので、切刃によって発生する切り屑が、切刃側から第2の稜線を超えて排出されること、すなわち、切削対象物の切り込み面側に排出されることを抑制することができる。したがって、切り屑が加工面と接触することを抑制することができる。その結果、切り屑が加工面を傷めることを抑制することができる。
【0009】
[適用例2]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記ワイパー刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0010】
かかる構成の後挽き加工用のスローアウェイチップによれば、適用例1の後挽き加工用のスローアウェイチップと同様の効果を奏する。しかも、ワイパー刃を備えることで、送り速度を上げても、良好な仕上げ面あらさを維持することができる。
【0011】
[適用例3]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に円弧形状に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記ワイパー刃の前記円弧形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0012】
かかる構成の後挽き加工用のスローアウェイチップによれば、適用例2の後挽き加工用のスローアウェイチップと同様の効果を奏する。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップであって、前記第2の稜線と直交する断面における、前記第2の切刃の前記直交方向の高さは、前記第1の切刃と前記第2の切刃との交点である切刃交点から所定の範囲にわたって、前記切刃交点から離れるほど低いことを特徴とする後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0014】
かかる構成の後挽き加工用のスローアウェイチップによれば、切り屑を第2の切刃の低い方、すなわち、第1の稜線に沿った方向であって、第1の切刃と反対の側の方向に導きやすくなる。その結果、切り屑を切削対象物の加工面と反対側に誘導して、切り屑が加工面を傷めることを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップであって、前記ブレーカ溝は、前記第1の稜線に沿った方向に延びて形成され、前記第1の切刃から所定範囲にわたって、前記第1の切刃から離れるほど深くなるように形成されたことを特徴とする後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0016】
かかる構成の後挽き加工用のスローアウェイチップによれば、切り屑をブレーカ溝が深い方、すなわち、第1の稜線に沿った方向であって、交点と反対の側の方向に導きやすくなる。その結果、切り屑を切削対象物の加工面と反対側に誘導して、切り屑が加工面を傷めることを抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、適用例6〜8の後挽き加工用のスローアウェイチップとしても捉えることができる。適用例6〜8についても、適用例4,5の構成を付加できることは勿論である。
[適用例6]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記第1の切刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0018】
[適用例7]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記ワイパー刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0019】
[適用例8]すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に円弧形状に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記ワイパー刃の前記円弧形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【0020】
また、本発明は、適用例9の後挽き加工用のバイトとしても捉えることができる。
[適用例9]適用例1ないし適用例8のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップと、該スローアウェイチップを保持するシャンクとを備えたことを特徴とする後挽き加工用のバイト。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップの第1実施例としてのチップ40を装着したバイト20の外観を示す説明図である。
【図2】チップ40の外観を示す説明図である。
【図3】バイト20の使用例を示す説明図である。
【図4】チップ40の切削部47,48の構成を示す説明図である。
【図5】図4に示すチップ40のA1−A1〜D1−D1断面を示す説明図である。
【図6】チップ40の効果を示す説明図である。
【図7】チップ40の先端部の形状を示す説明図である。
【図8】比較例としての従来技術(実開昭62−172505)のチップ40xの切削部47x,48xの構成を示す説明図である。
【図9】図8に示すチップ40xのA2−A2〜D2−D2断面を示す説明図である。
【図10】第1の稜線51と第2の稜線52との位置関係を示す説明図である。
【図11】バイト20におけるシャンク30とチップ40との位置関係を示す説明図である。
【図12】本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップの第2実施例としてのチップ140の切削部147,148の構成を示す説明図である。
【図13】チップ140の先端部の形状を示す説明図である。
【図14】チップ140の変形例としての形状の先端部の形状を示す説明図である。
【図15】変形例としてのバイト220の外観を示す説明図である。
【図16】変形例としてのチップ240の外観を示す説明図である。
【図17】変形例としてのバイト320の外観を示す説明図である。
【図18】変形例としてのチップ340の外観を示す説明図である。
【図19】変形例としてのバイト420の外観を示す説明図である。
【図20】変形例としてのチップ440の外観を示す説明図である。
【図21】バイト220,320,420におけるシャンク230,330,430とチップ240,340,440との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施例:
A−1.バイト20の構成:
本発明の第1実施例について説明する。本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップの第1実施例としてのチップ40を装着したバイト20の外観を図1に示す。図1では、バイト20の斜視図、正面図、右側面図、左側面図、平面図および底面図を示している。斜視図に示すように、バイト20は、シャンク30とチップ40とを備えている。シャンク30は、略直方体の形状を有している。シャンク30は、その一端にヘッド部31を備えている。ヘッド部31は、例えば、底面図に示すように、シャンク30の一端側が所定領域にわたって短手方向にスリット35を介して分離された上顎部32と下顎部33とを備えている。シャンク30の他端側、つまり、ヘッド部31と反対側は、小型自動旋盤機に把持される。
【0023】
チップ40は、後挽き加工に用いられるスローアウェイチップであり、シャンク30に着脱可能に構成されている。チップ40の外観を図2に示す。図2では、チップ40の斜視図、正面図、右側面図、左側面図、平面図および底面図を示している。チップ40は、ドッグボーンタイプともいわれる形状のチップである。チップ40は、図示するように、本体部46と、切削部47,48とを備えている。切削部47,48は、本体部46の両脇に、互いが、180°回転対称となるように形成されている。チップ40は、斜視図に示すように、相互に対向する面40a,40f、相互に対向する面40b,40c,相互に対向する面40d,40eを備えている。
【0024】
図2の正面図に示すように、面40aでは、チップ40の本体部46の中央部に、内部側に凹んだ凹部が形成されている。切削部47,48の先端部付近(詳細は後述)には、切刃が形成されており、面40aの切削部47,48は、切削時のすくい面41となる。図2の平面図および底面図に示すように、面40b,40cでは、本体部46が、切削部47,48よりもチップ40の短手方向に略矩形形状に突出している。面40aのうちの当該突出形状の側面部分を面40g,40hともいう。
【0025】
かかるチップ40は、図1の斜視図に示すように、シャンク30の上顎部32と上顎部32との間に隙間を有して設けられた取り付け座に挿入される。このとき、例えば、切削部47を切削に使用するのであれば、面40gがシャンク30の支持面(図示省略)と当接する。また、上顎部32の下顎部33側に設けられた凸部が、面40aの本体部46に形成された凹部(図2の正面図参照)にはまり込む。かかる状態で、上顎部32と下顎部33とに連通して設けられた孔部にクランプネジ34を挿入して締め付けると、スリット35の隙間が小さくなる方向に上顎部32が弾性変形して、その押圧力によって、チップ40がシャンク30に強固に固定される。
【0026】
かかるバイト20の使用例を図3に示す。図示するように、バイト20は、シャンク30の長手方向に沿った平坦面の1つが、自動旋盤機90の基準面BLと当接するように設置される。図3に示す方向は、すくい面41を正面視する方向である。そして、自動旋盤機90のワーク保持部91に保持され、基準面BLと直交する軸線OLを軸として回転するワークWOに対して、バイト20を方向D1、つまり、基準面BLと平行な方向に移動させて、チップ40によってワークWOに所要量の切り込みを行って裏端面を形成する。その後、ワークWOを方向D2、つまり、軸線OLに平行に移動させて、送りを行い、所要の外径寸法を仕上げる。
【0027】
A−2.チップ40の構成:
上述したバイト20を構成するチップ40の切削部47,48の構成について説明する。切削部47,48の構成を図4に示す。図4では、すくい面41を正面視した場合の正面図、右側面図、左側面図および底面図を示している。なお、すくい面41の正面視とは、チップ40をシャンク30に取り付けた状態ですくい面41を真上(図1に示す正面図方向)から見ることをいう。換言すれば、すくい面41の投影面積が最も大きくなる方向から見ることをいう。図4に示す切削部47,48において、すくい面41(正面図参照)と、すくい面41と交わる側面である逃げ面42(右側面図および底面図参照)とが交わる稜線と、すくい面41と逃げ面43(右側面図および底面図参照)とが交わる稜線とを含む稜線を第1の稜線51ともいう。また、すくい面41と、逃げ面44(左側面図参照)とが交わる稜線を第2の稜線52ともいう。本実施例では、第2の稜線52は、すくい面41を正面視した場合、全体にわたって直線形状を有している。ただし、少なくとも半分以上の直線形状と、部分的な湾曲形状とを備えていてもよい。第2の稜線52は、直線形状を含む形状であればよい。なお、本願において、直線形状とは、極めて緩やかな円弧形状や微小な凹凸を含む略直線形状として解してもよい。
【0028】
図4の正面図に示すように、すくい面41の一方側に形成された第1の稜線51と、他方側に形成された第2の稜線52とは、鋭角(面取りされた形状を含む)に交わっている。第2の稜線52は、バイト20を自動旋盤機90へ装着した状態において、図3に示した軸線OLの方向に略直交で且つワーク端面に接触しない方向に形成されている。第1の稜線51と第2の稜線52との交点は、本実施例では、面取りされ、コーナRが付与されている。かかる面取り部分をノーズR70ともいう。ただし、第1の稜線51と第2の稜線52との交点は、直線と直線とが鋭角に交わる形状であってもよい。第1の稜線51は2つの直線形状が屈曲点FPで交わって屈曲した形状を有している。かかる第1の稜線51と第2の稜線52とによって、すくい面41は、正面視で、一方側のみが先細ったテーパ形状を有している。
【0029】
第1の稜線51には、切刃が形成されている。図4の正面図に示したチップ40のノーズR70付近の拡大図を図7に示す。図7に示すように、第1の稜線51には、ノーズR70部分に切刃63が形成されている。第2の稜線52がノーズR70(切刃63)と交わる点を端点E1ともう。また、第1の稜線51には、屈曲点FPに対してノーズR70側の第1の切刃61と、屈曲点FPに対して、ノーズR70と反対側の第2の切刃62とが交わり、連続して形成されている。すくい面41を正面視した場合、底切刃61と横切刃62とは直線形状に形成されている。ただし、少なくとも半分以上が直線形状に形成されていてもよい。底切刃61および横切刃62は、直線形状を含む形状であればよい。以下の説明において、第1の切刃61を底切刃61ともいう。また、第2の切刃62を横切刃62ともいう。本実施例では、第1の稜線51の屈曲点FPは、鋭利に折れ曲がった形状を有しているが、屈曲点FPは、面取りされていてもよい。本実施例では、底切刃61の幅は、0.5mmに形成されている。また、本実施例では、底切刃61および横切刃62は、正のすくい角を有している。具体的には、底切刃61の切刃先端部のすくい角は25°に形成されている。また、横切刃62の切刃先端部のすくい角は30°に形成されている。このように底切刃61、横切刃62ともに、正の方向のすくい角を設けることによって、縦切り込み時と、横切り込み時(送り時)の両方において、切削抵抗を抑えることができる。また、切り屑の排出方向を安定させて、切り屑の排出性能を向上させることができる。
【0030】
図4の正面図に示すように、すくい面41には、第1の稜線51と第2の稜線52との間にブレーカ溝80が形成されている。ブレーカ溝80は、第1の稜線51のうちの横切刃62の形成された全範囲にわたって、第1の稜線51を頂部として、第2の稜線52の側に向かう方向に下り勾配を有している。本実施例では、この勾配は、横切刃62に垂直な方向に向かって形成されている。このブレーカ溝80は、第2の稜線52側に向かって次第に溝が深くなり、さらに第2の稜線52側に向かうと、次第に溝が浅くなる形状を有している。このブレーカ溝80は、第2の稜線52側では、第2の稜線52上のノーズR70側の端点E1から幅W1の領域が頂部となっている。なお、ここでの頂部とは、勾配がない状態から勾配を有する状態への変化点である。当該頂部は、ノーズR70側の端点E1から幅W1の位置の部位から、第1の稜線51にほぼ平行にノーズR70と反対側に延びている。また、ブレーカ溝80は、ノーズR70および底切刃61付近では、切刃63および底切刃61を頂部として、切刃63および底切刃61から離れるほど深くなり、ブレーカ溝80の上述した横切刃62に直交する方向の勾配とすりついている。
【0031】
ブレーカ溝80の形状をさらに明らかにするために、図4に示したチップ40のA1−A1〜D1−D1断面を図5に示す。A1−A1〜D1−D1断面は、すくい面41を正面視した状態で、第2の稜線52に直交する直線的な切断線CL1〜CL4でチップ40を切った断面である。切断線CL1〜CL4を総称して、切断線CLともいう。図5に示す断面では、切断線CLと直交すると直交する直交方向ODが上下方向となっている。図5のA1−A1断面に示すように、第2の稜線52上の端点EA11と、第1の稜線51上の端点EA12とは、ブレーカ溝80の頂部になっている。B1−B1断面における第2の稜線52上の端点EB11、C1−C1断面における第2の稜線52上の端点EC11、D1−D1断面における第2の稜線52上の端点ED11は、いずれも、A1−A1断面の端点EA11と同一の高さに形成されている。つまり、第2の稜線52は、第2の稜線52の一方の端点E1から他方に向けて同一の高さで形成されている。
【0032】
かかる端点EA11〜ED11の高さは、第1の稜線51上の対応する端点EA12〜ED12よりも高くなっている。このことは、第2の稜線52と直交する方向の断面において、第2の稜線52は、端点E1から第2の稜線52に沿った幅W1の範囲にわたって、横切刃62の高さよりも高くなっていることを示している。なお、切刃63および底切刃61の高さは、本実施例では、図2の底面図に示すように、同一の高さで形成されている。つまり、切刃63および底切刃61の高さは、端点E1の高さと同一である。したがって、図5では示していないが、第2の稜線52と直交し、底切刃61と交差する断面では、第2の稜線52の高さは、底切刃61の高さと同一となっている。
【0033】
かかるチップ40の構成は、切り屑の排出性能を向上することができる。かかる効果について図6を用いて説明する。第2の稜線52の幅W1の範囲では、底切刃61および横切刃62の高さ以上の高さを有するため、図6に示すように、切り屑が、例えば、方向D3や方向D4に向かって、第2の稜線52を超えて移動(排出)されることを抑制することができる。方向D3は、第2の稜線52にほぼ垂直な方向である。方向D4は、第1の稜線51にほぼ垂直な方向である。チップ40のワークへの切り込み時や、切り込み直後の送り時において、第2の稜線52の外方には、ワークが位置している。かかる状況においても、チップ40によれば、方向D3,D4への切り屑の排出が抑制されるので、ワークの切り込み面を傷めることを抑制することができる。換言すれば、幅W1にわたる第2の稜線52は、第2の稜線52側への切り屑の排出が抑制されるブレーカ壁の上端として形成されている。さらに、かかるチップ40の構成は、仮に、切り屑が第2の稜線52を超えて、ワークの端面に到達する状況が生じたとしても、第2の稜線52がブレーカ壁の上端として形成されていることによって、切り屑のワークの端面への進入角度を小さくすることができる。したがって、チップ40とワークの端面(仕上げ面)との隙間に切り屑が噛み込みにくくなり、良好な仕上げ面を得ることができる。
【0034】
かかる効果は、第2の稜線52の高さを、横切刃62の高さよりも高くした場合に限らず、第2の稜線52の高さを、横切刃62の高さと同一に形成した場合であっても、ある程度得ることができる。また、第2の稜線52が、底切刃61および横切刃62の高さ以上の高さを有する範囲は、必ずしも、ブレーカ溝80が形成された幅W1の全て(ブレーカ溝80の頂部を形成する全領域)に亘る必要はない。この点について、図7を用いて説明する。
【0035】
図7では、図4に示したチップ40のノーズR70の付近を拡大して示している。図示するように、底切刃61の直線形状と、第2の稜線52の直線形状とは、仮想的に交点70aで交わっている。第2の稜線52は、交点70aから所定の範囲R1のうちの第2の稜線52が形成された範囲にわたって、底切刃61および横切刃62の高さ以上の高さを有していてもよい。範囲R1は、例えば、交点70aから0.5mmの範囲としてもよい。あるいは、範囲R1は、ノーズR70のコーナR半径の大きさの3倍までの範囲としてもよい。つまり、第2の稜線52は、チップ40の先端部で、底切刃61および横切刃62の高さ以上の高さを有していればよい。切り屑がワークを傷めるのは、主に、ノーズR70の近傍であるから、このようにしても、ある程度の効果を奏する。範囲R1が上述の例よりも小さくても、かかる構成を有しない場合と比べれば、所定の効果を有することは勿論である。上述の構成は、第1の稜線51に形成された切れ刃の第2の稜線52側の端点から第2の稜線52に沿った所定の範囲において、第2の稜線52が底切刃61および横切刃62の高さ以上の高さを有している構成と捉えることもできる。
【0036】
なお、第2の稜線52が部分的に湾曲した形状を有する場合には、交点70aは、第2の稜線52の直線形状部分と、底切刃61の直線形状との仮想的な交点として捉えてもよい。また、第1の稜線51と第2の稜線52との交点が面取りされていない場合、すなわち、直線と直線とが鋭角に交わる形状である場合には、交点70aの位置は、底切刃61の直線形状と第2の稜線52の直線形状との交点の位置と一致する。つまり、交点70aは、底切刃61の直線形状と、第2の稜線52の直線形状との実際の交点となる。
【0037】
ここで説明を図5に戻す。第2の稜線52上の端点EA11〜ED11の高さと、第1の稜線51上の端点EA12〜ED12の高さとのそれぞれの差を、高さHD11〜HD14とすると、高さHD11〜HD14は、HD11<HD12<HD13<HD14の関係を有している。つまり、第1の稜線51上の端点EA12〜ED12は、端点EA12,EB12,EC12,ED12の順に高さが低くなっている。このことは、図2の底面図からも分かるように、横切刃62が、屈曲点FPから所定の範囲にわたって、屈曲点FP(底切刃61)から離れるほど、横切刃62の高さが低くなるように形成されていることを示している。かかる形状によって、切り屑は、横切刃62の低い方へ導かれやすくなる。つまり、図6に示すように、切り屑を第1の稜線51に沿った方向であって、底切刃61(あるいはノーズR70)と反対の側である方向D5に導きやすくなる。その結果、切り屑をワークの加工面と反対側に誘導しやすくなり、ワークの加工面を傷めることを抑制することができる。横切刃62の第1の稜線51に沿った勾配は、0°より大きく、20°以下の範囲で設定することが望ましい。このように緩やかな勾配とすれば、切り屑を円滑に方向D5に導くことができる。なお、この横切刃62の高さは、図4の底面図に示すように、ブレーカ溝80の底切刃61と反対側の終端部に近づくと、次第に高くなる。
【0038】
また、図5において、ブレーカ溝80の底部BA11〜BD11は、底切刃61から離れるほど、第2の稜線52から遠い位置となるように形成されている。ここでの底部とは、切断線CLに平行な方向において溝の深さが最も深くなる部位である。そして、ブレーカ溝80は、底切刃61から離れるほど、第2の稜線52と同一の高さの領域幅が長くなる。つまり、ブレーカ溝80の第2の稜線52側の頂部は、底切刃61から離れるほど、第1の稜線51側に近づく。また、第2の稜線52上の端点EA11〜ED11の高さと、ブレーカ溝80の底部BA11〜BD11の高さとのそれぞれの差を、高さHD15〜HD18とすると、高さHD15〜HD18は、HD15<HD16<H17<HD18の関係を有している。つまり、ブレーカ溝80は、底切刃61(あるいはノーズR70)から離れるほど、底部の深さが深くなるように形成されている。本実施例では、ブレーカ溝80の頂部および底部は、横切刃62に平行な方向に延びて形成されている。また、ブレーカ溝80の底部は、横切刃62に平行な方向であって、底切刃61と反対側の方向に、切刃61から離れるほど、深さが深くなる。ただし、ブレーカ溝80の頂部や底部の位置、底部の勾配は、必ずしも、横切刃62と平行である必要はない。多少、第1の稜線51側、あるいは、第2の稜線52側に振れていてもよい。つまり、ブレーカ溝80は、第1の稜線51に沿った方向に延びて形成されていればよい。これらのブレーカ溝80の構成は、いずれも、図6に示すように、方向D5に導きやすくなる。その結果、切り屑を、ワークの加工面と反対側に誘導しやすくなり、ワークの加工面を傷めることを抑制することができる。
【0039】
以上説明したブレーカ溝80の特徴をより明確にするために、比較例として、実開昭62−172505に代表される研磨によりブレーカ部が形成された従来技術のチップ40xの形状を図8に示す。図8では、図4に示した本実施例としてのチップ40の構成要素に対応する構成要素については、図4の構成要素に付した符号の末尾に「x」を付している。比較例としてのチップ40xが、実施例としてのチップ40と異なる点は、ブレーカ溝80xの形状である。
【0040】
図8に示に示したチップ40xのA2−A2〜D2−D2断面を図9に示す。A2−A2〜D2−D2断面は、図5に示したA1−A1〜D1−D1断面に対応している。図9に示すように、第1の稜線51x上の端点EA22〜ED22は、同一の高さで形成されている。このため、上述した本願の効果、すなわち、切り屑を第2の稜線52と反対の側に導きやすくする効果を奏することができない。
【0041】
また、第2の稜線52x上の端点EA21〜ED21は、端点EA21,EB21,EC21,ED21の順に高さが高くなっている。第2の稜線52x上の端点EA21,EB21は、第1の稜線51x上の端点EA22,EB22よりも高さが低くなっている。第1の稜線51x上の端点EA22〜ED22は、同一の高さで形成されているので、端点EA21から、端点ED21に向かって、第2の稜線52xと第1の稜線51xとの高さの差は徐々に小さくなり、第2の稜線52x上の端点EC21では、第1の稜線51x上の端点EC22の高さよりも高くなり、第2の稜線52x上の端点ED21では、その高さが、上限に達している。かかる構成のチップ40xでは、第2の稜線52xのノーズR70x側の端点である端点E1xから少なくとも端点EB21にわたって、第2の稜線52xに直交する断面における第2の稜線52xの高さは、第1の稜線51xの底切刃61xおよび横切刃62xの高さよりも低くなる。このため、本実施例としてのチップ40と比較して、切り屑が第2の稜線52xを超えて、ワークに直接当たったり、ワークとチップ40との間に、切り屑が噛み込んだりしやすくなる。その結果、切り屑によってワークの加工面が傷みやすくなる。かかる現象は、研磨ブレーカを備えるチップにおいて、顕著となる。
【0042】
ここで、説明を本実施例のチップ40に戻す。チップ40の切削部47,48における第1の稜線51と第2の稜線52との位置関係を図10に示す。図示する方向は、すくい面41を正面視する方向である。図10に示すように、チップ40は、第2の稜線52に対する底切刃61の傾きを表す角度θ1(0°<θ1<90°)は、第2の稜線52に対する横切刃62の傾きを表す角度θ2(0°<θ2<90°)よりも大きくなるように形成されている。換言すれば、バイト20を自動旋盤機90へ装着した状態において、ワークの回転軸である軸線OLに対する底切刃61の傾きを表す角度θ3(0°<θ3<90°)は、軸線OLに対する横切刃62の傾きを表す角度θ4(0°<θ4<90°)よりも小さくなるように形成されている。本実施例においては、角度θ3=13°、角度θ4=60°である。なお、第2の稜線52の形状が単純な直線形状ではない場合には、第2の稜線52が備える直線形状のうちの最も端点E1に近い直線形状に対する、底切刃61、横切刃62の傾きを角度θ1,θ2として捉えてもよい。
【0043】
かかる構成によれば、図10に示すように、横切刃62によって切削され、方向D6、すなわち、横切刃62に略直交する方向に向かって排出される切り屑が、底切刃61によって切削され、方向D7、すなわち、底切刃61に略直交する方向に向かって排出される切り屑と衝突することになる。したがって、底切刃61の切り屑が、横切刃62の切り屑を上方に押し上げることとなり、ブレーカ溝80の形状に沿った方向D8に切り屑を排出しやすくなる。上述した構成は、このように切り屑の排出性能を向上させることができる。なお、後挽き加工用チップとしては、3°≦θ3≦40°、かつ、44°≦θ4≦85°、かつ、40°≦θ4−θ3≦75°とすることが望ましい。
【0044】
上述したチップ40をシャンク30に装着した際の、チップ40とシャンク30との位置関係を図11に示す。バイト20を自動旋盤機に装着した際、図示するように、シャンク30の1面は、自動旋盤機の基準面BLに当接する。このときの基準面BLとチップ40の端点E1との距離をオフセット量F2ともいう。ここで、基準面BLと直交する方向におけるシャンク30の幅を幅W2とすると、チップ40とシャンク30との位置関係は、次式(1)の関係を満たしている。
F2<W2×1/2・・・(1)
【0045】
かかるチップ40とシャンク30との位置関係を有するバイト20は、小型自動旋盤機に装着して切削を行う際に、チップ40とワークとが接触する位置と、基準面BLとの距離が小さくなるので、ワークが撓みにくくなる。その結果、良好な加工精度を得ることができる。
【0046】
また、本実施例のチップ40の形状は、従来技術と比べて、オフセット量F2を小さくできる効果も奏する。この点ついて具体的に説明する。切屑は切れ刃に略垂直な方向に排出されるため、上述した従来技術としてのチップ40xにおいても、第2の稜線52xに対する横切刃62xの傾きを表す角度θ2xを大きくすれば、切り屑の排出方向が、ワークの回転軸である軸線OLと直交する側に振れるので、ワークの端面への切り屑の接触を抑制することはできる。しかし、この場合には、横切刃62xの切刃長さを確保しようとすると、チップ40x(横切刃62x)の軸線OL方向の幅を大きくする必要がある。チップ40xの軸線OL方向の幅を大きくすることは、上述のオフセット量が大きくなることを意味し、その結果、加工精度が悪化することとなる。一方、本実施例のチップ40では、ブレーカ溝80の形状によって切り屑の排出方向を制御することで、角度θ2を小さくしても、ワークの端面への切り屑の接触を抑制することができる。角度θ2が小さくなれば、横切刃62xの軸線OL方向の幅を大きくしなくても、横切刃62の所要量の切刃長さを確保できるので、オフセット量F2が小さい状態で精度良く加工することが可能となる。従来のチップ形状では、3mm程度の切り込み深さで切削を行う場合、オフセット量F2は、2.5mm程度が最小であったが、本実施例のチップ40の形状によって、オフセット量F2を2.05mmとすることができた。
【0047】
A−3.効果:
上述したチップ40によれば、交点70aから所定の範囲R1にわたって、第2の稜線52の高さが底切刃61および横切刃62以上の高さに形成されているので、底切刃61および横切刃62によって発生する切り屑が、底切刃61および横切刃62側から第2の稜線52を超えて排出されることを抑制することができる。したがって、切り屑が第2の稜線52を超えて、ワークに直接当たったり、ワークとチップ40との間に、切り屑が噛み込んだりして、ワークの切り込み面が傷むことを抑制でき、加工面を良好に仕上げることができる。
【0048】
また、かかる効果よって、端面部と外径部とを2度に分けて加工を行わなくても、良好な加工が可能となるため、生産効率が向上する。あるいは、切削条件を上げても良好な加工が可能となるため、生産効率が向上する。しかも、ワークの加工面とチップ40との間への切り屑の巻き込みが生じにくいので、チップ40が損傷しにくい。その結果、チップ40を長寿命化することができる。上述した種々の効果は、小径の後挽き加工に適した5mm以下のオフセット量を保った状態での切削において、顕著である。
【0049】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップの第2実施例としてのチップ140の切削部147,148の外観を図12に示す。切削部147,148以外の構成は、第1実施例と同様である。図12では、チップ140のすくい面141を正面視した場合の正面図、右側面図、左側面図、底面図を示している。図12は、第1実施例の図4に対応している。以下の説明においては、チップ140の構成要素のうちの第1実施例のチップ40の構成要素に対応する構成要素については、図4の構成要素に付した符号の先頭に「1」を付している。以下、チップ40の構成について、第1実施例(図4)と異なる点についてのみ説明する。
【0050】
図12に示すように、チップ140は、第1の稜線151上に底切刃161、横切刃162および切刃163に加えて、ワイパー刃164を備えている点が第1実施例と異なる。底切刃161の幅は、1.4mmに形成されている。軸線OLに対する底切刃161の傾きを表す角度θ3=18°であり、軸線OLに対する横切刃162の傾きを表す角度θ4=80°である。その他の点については、第1実施例と同様である。ワイパー刃164は、底切刃161と比べて、さらに軸線OLと平行な方向に傾いている。
【0051】
チップ140の先端部における第1の稜線151および第2の稜線152の形状を図13に示す。図示するように、チップ140は、第1の稜線151上において、ノーズR170に形成された切刃163(ノーズR170)と、底切刃161との間に、ワイパー刃164を備えている。ワイパー刃164は、すくい面141を正面視した場合、直線形状に形成されている。ただし、少なくとも半分以上の直線形状を含む形状であってもよい。ワイパー刃164の一端は、屈曲点FP2で底切刃161と交わっている。ワイパー刃164の他端は、端点E2で切刃163と交わっている。本実施例では、第1の稜線51の屈曲点FP2は、鋭利に折れ曲がった形状を有しているが、屈曲点FP2は、面取りされていてもよい。
【0052】
ワイパー刃164の直線形状と、第2の稜線52の直線形状とは、仮想的に交点170aで交わっている。この交点170aは、第1実施例で説明した仮想的な交点70aに相当する。つまり、第2の稜線152は、交点170aから所定の範囲R1のうちの第2の稜線152が形成された範囲にわたって、底切刃161、横切刃162及びワイパー刃164の高さ以上の高さを有している。なお、第1の稜線151と第2の稜線152との交点が面取りされていない場合には、交点170aの位置は、ワイパー刃164の直線形状と第2の稜線152の直線形状との交点の位置と一致する。つまり、交点170aは、ワイパー刃164の直線形状と、第2の稜線52の直線形状との実際の交点となる。
【0053】
チップ140の形状の変形例を図14に示す。この変形例のチップ140が図13のチップ140と異なる点は、ワイパー刃164が、所定の半径の円弧形状に形成されている点であり、その他の点は、図13と同様である。このワイパー刃164の円弧形状の半径は、ノーズR170のコーナR半径よりも大きい。ワイパー刃164のノーズR170側の端点E2は、ワイパー刃164からノーズR170にわたる円弧形状の半径が変化する点である。
【0054】
ワイパー刃164の円弧形状と、第2の稜線152の直線形状とは、仮想的に交点170aで交わっている。つまり、ワイパー刃164の円弧形状を、当該円弧形状の半径と円の中心とを用いて、端点E2から第2の稜線152側に仮想的に延長した仮想線と、第2の稜線52の直線形状との交点が、交点170aである。この交点170aは、第1実施例で説明した仮想的な交点70aに相当する。
【0055】
これらのチップ140によれば、上述の第1実施例と同様の効果を奏する。しかも、ワイパー刃164を備えることで、送り速度を上げても、良好な仕上げ面あらさを維持することができる。
【0056】
C.変形例:
上述した実施例の変形例について説明する。
C−1:変形例1:
上述の実施例においては、ドックボーンタイプのチップを例示したが、本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップは、種々のタイプのチップとして実現することができる。以下に、ドックボーンタイプ以外のいくつかのチップ形状について例示する。
【0057】
第1の変形例としてのチップ240を装着したバイト220の外観を図15に示す。図15の斜視図に示すように、バイト220は、シャンク230とチップ240とを備えている。シャンク230は、略直方体の形状を有している。シャンク230の一端の取り付け座には、チップ240が装着されている。
【0058】
チップ240の外観を図16に示す。チップ240は、三角縦置き形状のチップである。チップ240は、図示するように、略三角形平板形状を有している。チップ240は、本体部246と切削部247〜249とを備えている。本体部246には、チップ240の厚み方向を貫通する貫通孔TH1が形成されている。切削部247〜249は、いずれも、同一の形状を有しており、貫通孔TH1の中心を軸にして120°回転対称となっている。切削部247〜249には、チップ240の略三角形状の各辺の一方の先端部にすくい面241a〜241cが形成されている。すくい面241a〜241cは、上述の第1実施例としてのすくい面41と同一の形状を有している。
【0059】
かかるチップ240は、例えば、図15の斜視図に示すように、シャンク230の一端の取り付け座に形成された支持面が、チップ240の底面と、3角形状の3辺に対応する3つの側面のうちの2つの側面とに当接するように装着される。そして、貫通孔TH1にクランプネジ234を挿入することで、チップ240はシャンク230に固定される。
【0060】
第2の変形例としてのチップ340を装着したバイト320の外観を図17に示す。図17の斜視図に示すように、バイト320は、シャンク330とチップ340とを備えている。シャンク330は、略直方体の形状を有している。シャンク330の一端の取り付け座には、チップ340が装着されている。
【0061】
チップ340の外観を図18に示す。チップ340は、平行四辺形形状のチップである。チップ340は、図示するように、略平行四辺形平板形状を有している。チップ340は、本体部346と切削部347,348とを備えている。本体部346には、チップ340の厚み方向を貫通する貫通孔TH2が形成されている。切削部347,348は、いずれも、同一の形状を有しており、貫通孔TH2の中心を軸にして180°回転対称となっている。切削部347,348には、チップ340の略平行四辺形形状の長辺の一方の先端部にすくい面341a,341bが形成されている。すくい面341a,341bは、上述の第1実施例としてのすくい面41と同一の形状を有している。
【0062】
かかるチップ340は、例えば、図17の斜視図に示すように、シャンク330の一端の取り付け座に形成された支持面が、チップ340の底面と、平行四辺形の4辺に対応する4つの側面のうちの2つの側面とに当接するように装着される。そして、貫通孔TH2にクランプネジ334を挿入することで、チップ340はシャンク330に固定される。
【0063】
第3の変形例としてのチップ440を装着したバイト420の外観を図19に示す。図19の斜視図に示すように、バイト420は、シャンク430とチップ440とを備えている。シャンク430は、略直方体の形状を有している。シャンク430の一端の取り付け座には、チップ440が装着されている。
【0064】
チップ340の外観を図20に示す。チップ440は、平置き形状のチップである。チップ440は、図示するように、略直方体の対向する2面に、外方に向かって突出した部位を有する形状を備えている。チップ440は、略直方体の本体部446と、上述の突出した部位である切削部447,448とを備えている。本体部446には、チップ440の厚み方向を貫通する貫通孔TH3が形成されている。切削部447,448は、いずれも、同一の形状を有しており、貫通孔TH3の中心を軸にして180°回転対称となっている。切削部447,448には、その1つの面の全体がすくい面441a,441bとなるように形成されている。すくい面441a,441bは、上述の第1実施例としてのすくい面41と同一の形状を有している。
【0065】
上述したチップ240,340,440をシャンク230,340,440に装着した際の、チップ240,340,440とシャンク230,340,440との位置関係を図21に示す。図21では、第1実施例(図11)で示したバイト20の構成要素に付した符号と同一の番号を、図11に対応する構成要素の符号の下二桁に採用している。バイト220,320,420を自動旋盤機に装着した際、図示するように、シャンク230,340,440の1面は、自動旋盤機の基準面BLに当接する。このときの基準面BLとチップ240,340,440の端点E1との距離をオフセット量F3,F4,F5とし、基準面BLと直交する方向におけるシャンク230,340,440の幅を幅W3,W4,W5とする。ここで、チップ240,340,440とシャンク230,340,440との位置関係は、第1実施例と同様に、次式(2)〜(4)の関係を満たしている。
F3<W3×1/2・・・(2)
F4<W4×1/2・・・(3)
F5<W5×1/2・・・(4)
【0066】
以上説明した変形例としてのチップ240,340,440は、上述の実施例と同様の効果を奏する。勿論、本発明の後挽き加工用のスローアウェイチップは、上述した例に限らず、種々のタイプの後挽き加工用のスローアウェイチップとして実現することができる。
【0067】
C−2:変形例2:
上述した第1実施例においては、底切刃61と横切刃62との交点である屈曲点FPは、鋭利に折れ曲がった形状として示したが、屈曲点FPは、R形状で形成してもよい。この場合、R形状の任意の点を上述したFPとして捉えて、第1実施例として説明したチップ40の種々の構成を適用してもよい。あるいは、底切刃61は、屈曲点で交わる複数の直線形状を有していてもよい。この場合、上述の交点70aは、第2の稜線52の直線形状部分と、底切刃61の直線形状のうちの、最もノーズR70に近い側の直線形状部分との仮想的な交点として捉えてもよい。同様に、横切刃62についても、屈曲点で交わる複数の直線形状を有していてもよい。また、底切刃61や横切刃62が屈曲点で交わる複数の直線形状を有する場合には、第2の稜線52に対する、底切刃61、横切刃62が備える直線形状のうちの最もノーズR70に近い直線形状の傾きを、上述の角度θ1,θ2として捉えてもよい。これらの変形例は、上述した第2実施例についても同様に適用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における構成要素のうち、独立クレームに記載された要素に対応する要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
20,220,320,420…バイト
30,230,330,430…シャンク
40,140,240,340,440…チップ
41,141,241a〜241c,341a,341b,441a,441b…すくい面
42〜44,142〜145…逃げ面
51,151…第1の稜線
52,152…第2の稜線
61,161,261,361,461…第1の切刃(底切刃)
62,162,262,362,462…第2の切刃(横切刃)
70a,170a…交点
80,180…ブレーカ溝
164…ワイパー刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記第1の切刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項2】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記ワイパー刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項3】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に円弧形状に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記すくい面を正面視した状態で、前記第2の稜線に直交する直線的な切断線で切った断面において、前記切断線と直交する直交方向の前記第2の稜線の高さが、前記ワイパー刃の前記円弧形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃の高さ以上に形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線と直交する断面における、前記第2の切刃の前記直交方向の高さは、前記第1の切刃と前記第2の切刃との交点である切刃交点から所定の範囲にわたって、前記切刃交点から離れるほど低いことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記ブレーカ溝は、
前記第1の稜線に沿った方向に延びて形成され、
前記第1の切刃から所定範囲にわたって、前記第1の切刃から離れるほど深くなるように形成されたことを特徴とする後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項6】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記第1の切刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項7】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記ワイパー刃が備える直線形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが実際に、または、仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項8】
すくい面と、該すくい面と交わる複数の逃げ面とを備え、
該複数の逃げ面と前記すくい面とが交わる稜線のうちの第1の稜線に切刃が形成され、
前記稜線のうちの前記切刃が形成されていない稜線であって、前記第1の稜線と交わる第2の稜線と、前記第1の稜線との間にブレーカ溝が形成され、
前記切刃は、第1の切刃と、前記第1の稜線のうちの、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側と反対の側に形成された第2の切刃と、前記第1の切刃に対して前記第2の稜線に交わる側に円弧形状に形成されたワイパー刃とを備え、
前記すくい面を正面視した場合において、前記第2の稜線に対する前記第1の切刃の傾きを表す第1の角度は、前記第2の稜線に対する前記第2の切刃の傾きを表す第2の角度よりも大きい後挽き加工用のスローアウェイチップであって、
前記第2の稜線は、前記ワイパー刃の前記円弧形状と前記第2の稜線が備える直線形状とが仮想的に交わる交点から所定の範囲のうちの前記第2の稜線が形成された範囲にわたって、前記切刃が切削対象物を切削することによって発生する切り屑が前記切刃の側から前記第2の稜線を超えて移動することを抑制するブレーカ壁の上端として形成されたことを特徴とする
後挽き加工用のスローアウェイチップ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか記載の後挽き加工用のスローアウェイチップと、該スローアウェイチップを保持するシャンクとを備えたことを特徴とする後挽き加工用のバイト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−250296(P2012−250296A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122789(P2011−122789)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】