説明

応力分散ブロック

【課題】施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する応力分散ブロックであって、その施工が従来のものより容易であるものを提供する。
【解決手段】応力分散ブロック100は、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成するものである。応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1と、発泡樹脂部分1に固着されたコンクリート部分2とを備える。発泡樹脂部分1とコンクリート部分2とが一体的に施工現場に搬送可能となるように、発泡樹脂部分1にコンクリート部分2が固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力分散ブロックに関し、特に、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する応力分散ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量な発泡スチロールからなる発泡樹脂ブロックを土木材料として利用する工法が、「EPS(Expanded Poly-Styrol)工法」として従来から知られている。この発泡スチロール材料は、軟弱地盤上に土木構造物を設ける場合に軽量であることのメリットを大きく発揮できる。また、上記材料は、自立性を有するため、擁壁工事や土留工事の工数を大幅に低減することが可能である。結果として、EPS工法によれば、工期の短縮(災害時の早期復旧)や工費の削減などを実現することが可能である。
【0003】
なお、EPS工法に関する従来の技術としては、たとえば、下記の特許文献1,2に記載のものなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−33348号公報
【特許文献2】特開2007−308882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EPS工法においては、輪荷重などを分散させるためのコンクリート床版を発泡樹脂ブロック上に設ける必要がある。EPS工法を採用した場合、上述のとおり、工期の短縮や工費の削減などが可能であるが、これらを効果的に実現するためには、上記のコンクリート床版を設ける工程を効率よく行なう必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、コンクリートを現場で打設しているため、災害復旧などの緊急時に求められる工期の短縮に十分に応えることができない。他方、引用文献2に記載の発明では、コンクリート床版を工場で施工(つまり、プレキャスト)することが示されているが、コンクリート床版をプレキャスト化した場合は、発泡樹脂ブロックとの間のズレ止めのために何らかの対策が必要になる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する応力分散ブロックであって、その施工が従来のものより容易であるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る応力分散ブロックは、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する応力分散ブロックであって、発泡樹脂部分と、発泡樹脂部分に固着された該発泡樹脂部分よりも硬質の板状部分とを備え、発泡樹脂部分と板状部分とが一体的に施工現場に搬送可能となるように、発泡樹脂部分に板状部分が固着されている。
【0009】
1つの実施態様では、上記複数の応力分散ブロックは、施工現場において緊結金具によって緊結され、板状部分は、緊結金具の設置位置を確保して形成される。
【0010】
典型的な例では、上記応力分散ブロックにおいて、板状部分は、発泡樹脂部分の表面に設けられるが、板状部分は、発泡樹脂部分に挟持されるように設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のものよりも施工が容易な応力分散ブロックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】EPS工法による土木構造物の一例を示す図である。
【図2】EPS工法による土木構造物の他の例を示す図である。
【図3】発泡樹脂ボックスどうしを固定するための金具の一例を示す図である。
【図4】発泡樹脂ボックスどうしを固定するための金具の他の例を示す図である。
【図5】本発明の1つの実施の形態に係る応力分散ブロックを示す図である。
【図6】図5に示す応力分散ブロックの配置の一例を示す図である。
【図7】図5に示す応力分散ブロックの配置の他の例を示す図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に係る応力分散ブロックの応用例を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態に係る応力分散ブロックの応用例の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る応力分散ブロックが含まれる土木構造物の一例を示す図である。図1に示すように、この土木構造物は、地盤上に形成された盛土構造であって、発泡樹脂ブロック部10と、発泡樹脂ブロック部10上に設けられたコンクリート床版部20と、コンクリート床版部20上に設けられた路盤30と、路盤30上に設けられた舗装40とを含む。発泡樹脂ブロック部10、コンクリート床版部20、路盤30および舗装40の両側には、盛土材50が設けられている。
【0016】
発泡樹脂ブロック部10は、各々が直方体形状を有している。発泡体樹脂ブロック部10は、発泡スチロールにより形成された軽量の部分である。このように、発泡樹脂ブロック部10は非常に軽量であるため、図1のような盛土構造を軟弱地盤上に形成する場合に、地盤改良を省略ないし簡略化することが可能である。また、工期を短縮することも可能である。なお、複数の発泡樹脂ブロック部10どうしは、緊結金具10Aにより固定されている。
【0017】
図2は、EPS工法による土木構造物の他の例を示す図である。図2に示す構造は、たとえば、斜面に面した道路を拡幅する工事にEPS工法を用いたものである。したがって、コンクリート床版部20、路盤30、および舗装40の端部において、発泡樹脂ブロック部10の側面は垂直に切り立っている。また、複数層重ねられた発泡樹脂ブロック部10の底部には、基礎コンクリート70が設けられている。
【0018】
垂直に切り立った発泡樹脂ブロック部10の側面上には、コンクリート等の保護壁が設けられる。
【0019】
次に、図3,図4を用いて、緊結金具10Aの構造について説明する。図3、図4に示すように、緊結金具10Aは、平面部分10A1と、爪部10A2とを有する。平面部分10A1は発泡樹脂ブロック部10の主表面に沿って設けられる部分であり、平面部分10A1から突出する爪部10A2は、発泡樹脂ブロック部10に差し込まれる部分である。1つの緊結金具10Aに設けられた爪部10A2が複数の発泡樹脂ブロック部10に差し込まれることにより、複数の発泡樹脂ブロック部10どうしが固定される。
【0020】
なお、図3に示す緊結金具10Aは、上下両側に爪部10A2を有し、図4に示す金具10Bは、片側(図4における上側)にのみ爪部10A2を有している。典型的には、複数層の発泡樹脂ブロック部10の間に位置する接合箇所には図3に示す金具が用いられ、最上層の接合箇所には図4に示す金具が用いられる。
【0021】
次に、コンクリート床版部20の機能について説明する。図1に示すように、舗装40上に作用した輪荷重は、舗装40および路盤30の厚さに応じて分散した状態でコンクリート床版部20上に達する。コンクリート床版部20は、さらに均一化した状態で発泡樹脂ブロック部10に荷重を伝える。これにより、発泡樹脂ブロック部10の一部分に応力集中が生じることによる発泡樹脂ブロック部10の変形が抑制される。
【0022】
EPS工法の大きなメリットの1つとして、工期の短縮が挙げられる。これにより、災害時の早期復旧や、工費の削減などの効果を得ることができる。一方で、コンクリート床版部20に所定の強度を持たせるためには、コンクリートの養生等のための期間が必要であり、コンクリートを施工現場で打設した場合は、この養生期間が工期の短縮を妨げることが懸念される。特に、災害復旧時など、緊急を要する場合には、工期の短縮が最優先の課題となることがある。
【0023】
これに対し、本実施の形態では、コンクリート床版部20を現場打ちのコンクリートで構成するのではなく、工場で予め形成した上で施工現場に搬送することにより、現場打ちの場合と比較して更なる工期の短縮を可能としている。具体的には、発泡樹脂ブロック部10とコンクリート床版部20とを、予め1つのブロック(以下では、これを「応力分散ブロック」と称する。)に仕込んだ上で施工現場に搬送している。
【0024】
以下に、本実施の形態に係る応力分散ブロックの構造について説明する。図5に示すように、本実施の形態に係る応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1と、コンクリート部分2とを含む。発泡樹脂部分1は、上述した発泡樹脂ブロック部10を構成し、コンクリート部分2は、上述したコンクリート床版部20を構成する。
【0025】
図5(A)に示す応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1の上面にコンクリート部分2が形成されたものであり、最もスタンダードな例である。図5(B)に示す応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1の下面にコンクリート部分2が形成されたものであり、図5(A)のものを逆使いしたものである。
【0026】
また、図5(A)、図5(B)以外の例として、図5(C)、図5(D)に示すような応力分散ブロックも考えられる。図5(C)に示す応力分散ブロック100は、コンクリート部分2の両側に発泡樹脂部分1を形成したものであり、図5(D)に示す応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1の両側にコンクリート部分2を形成したものである。実際の施工現場では、図5(A)〜(D)に示す応力分散ブロック100を適宜組み合わせて土木構造物を構成する。
【0027】
図5(A)に示す応力分散ブロック100は、たとえば、舗装、路盤を通して分散させた輪荷重をさらに分散させるのに適している。図5(B)に示す応力分散ブロック100は、たとえば、ブロック設置面が軟弱な地盤であったり、不均等な地盤である場合に、ブロック設置面へ上載荷重を均等に分散させるのに適している。
【0028】
また、図5(C)に示す応力分散ブロック100は、中間部にコンクリート部分2を配置しているため、緊結金具10Aによるブロック相互の一体化を行ないやすい。図5(D)に示す応力分散ブロック100は、上載荷重や集中荷重が大きくなる場合に適している。
【0029】
発泡樹脂部分1は、発泡スチロールを工場にて所定の形状に成型することにより形成される。発泡樹脂部分1は、型内発泡法により形成されてもよいし、押出発泡法により形成されてもよい。
【0030】
コンクリート部分2は、成型された発泡樹脂部分1上に形成される。発泡スチロールとコンクリートとの付着は良好であるため、地震時の水平荷重にも耐えることができる。したがって、地震時にコンクリート床版20が発泡樹脂ブロック10に対して「ずれる」ことが抑制されている。
【0031】
また、発泡樹脂部分1およびコンクリート部分2を含む応力分散ブロック100は、所定の形状に成型された状態で施工現場に搬送される。したがって、施工現場における施工が容易である。なお、応力分散ブロック100は、コンクリート部分2を含むため、大きさによっては、人力のみで運ぶことが困難になることも考えられる。したがって、応力分散ブロック100には、吊上用の金具が設けられている。
【0032】
次に、図5(A)〜(D)に示す応力分散ブロックの配置例について、図6〜図8を用いて説明する。
【0033】
図6に示すように、軟弱地盤上に盛土構造を設ける場合、一番上側の応力分散ブロック100として、図5(A)に示されるもの(上側にコンクリート部分2が形成されたもの)を用い、一番下側の応力分散ブロック100として、図5(B)に示されるもの(下側にコンクリート部分2が形成されたもの)を用いるのが典型的である。
【0034】
図6の例において、一番上側に図5(A)のブロックを配置することで、発泡樹脂ブロック部10の上面にコンクリート床版部20を形成し、発泡樹脂ブロック部に伝達される輪荷重を分散させることができる。また、一番下側に図5(B)のブロックを配置することで、発泡樹脂ブロック部10の下面にコンクリート床版部20を形成し、地盤に伝達される荷重を分散させることができる。複数層に積層された発泡樹脂部分1どうしは、緊結金具10Aにより固定される。
【0035】
また、図7に示すように、斜面上で拡幅工事を行なう場合、一番上側の応力分散ブロック100として、図5(A)に示されるもの(上側にコンクリート部分2が形成されたもの)を用い、一番下側の応力分散ブロック100として、図5(D)に示されるもの(両側にコンクリート部分2が形成されたもの)を用い、中間部分の応力分散ブロック100として、図5(C)に示されるもの(真中にコンクリート部分2が形成されたもの)を用いるのが典型的である。
【0036】
図7の例において、一番上側に図5(A)のブロックを配置することで、発泡樹脂ブロック部10の上面にコンクリート床版部20を形成し、発泡樹脂ブロック部に伝達される輪荷重を分散させることができる。また、中間部分に図5(C)のブロックを配置することで、中間部分において応力を分散させるとともに、上下の応力分散ブロック100との固定を行ないやすくすることができる。さらに、一番下側に図5(D)のブロックを配置することで、上部の荷重が作用して応力集中がおこりやすい最下段において、応力の分散を効果的に図ることができる。複数層に積層された発泡樹脂部分1どうしは、図6の例と同様、緊結金具10Aにより固定される。
【0037】
図8、図9は、応力分散ブロックの応用例を示す図である。図8、図9を参照して、本応用例では、コンクリート部分2の一部にくり抜き部2Aが設けられ、該くり抜き部2A上に発泡樹脂部分1が露出している。すなわち、本応用例では、施工現場において複数の応力分散ブロック100を緊結する緊結金具10Aの設置位置を確保できるようにコンクリート部分2が形成されている。このようにすることで、コンクリート部分2が形成された面上においても、緊結金具10Aによる固定が可能となる。
【0038】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る応力分散ブロック100は、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成するものである。応力分散ブロック100は、発泡樹脂部分1と、発泡樹脂部分1に固着されたコンクリート部分2とを備える。発泡樹脂部分1とコンクリート部分2とが一体的に施工現場に搬送可能となるように、発泡樹脂部分1にコンクリート部分2が固着されている。
【0039】
なお、上述したコンクリート部分2に代えて、鋼製版や樹脂版を用いることも可能である。要するに、発泡樹脂部分1よりも硬質の板状のものであれば、厚み等を適宜調整することで、上述した応力分散機能を発揮することは可能である。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 発泡樹脂部分、2 コンクリート部分、10 発泡樹脂ブロック、20 コンクリート床版、30 路盤、40 舗装、50 盛土材、60 背面斜面アンカー、70 基礎コンクリート、80 支柱、81 アンカー、100 応力分散ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する応力分散ブロックであって、
発泡樹脂部分と、
前記発泡樹脂部分に固着された該発泡樹脂部分よりも硬質の板状部分とを備え、
前記発泡樹脂部分と前記板状部分とが一体的に前記施工現場に搬送可能となるように、前記発泡樹脂部分に前記板状部分が固着される、応力分散ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17572(P2012−17572A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154114(P2010−154114)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(510187406)株式会社CPC (4)
【Fターム(参考)】