説明

情報配信システム

【課題】画像情報を配信する際に光信号を電気信号に変換する処理を不要とし,より多くの画像情報を配信できる情報配信システム及び情報配信方法を得る。
【解決手段】送信機(10)が互いに異なる波長を有する複数の光信号の画像情報を合波して光伝送路(27)に送出し,受信機(12)が前記光伝送路(27)を介して受信した光信号を前記互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波し,前記受信機(12)に接続された表示装置(16)が,前記受信機(12)によって分波された前記複数の光信号のそれぞれの画像情報を,前記異なる波長のそれぞれに予め対応づけられた複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)からなる1つの画面(14)に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば動画配信などに使用される情報配信システムなどに関する。より詳しく説明すると,本発明は,複数のモニタを用いて1つの画面を構成するか,又は1つの画面を複数の表示領域に分割した場合に,1つの画面を構成するモニタ又は表示領域ごとに光信号の波長を割り当て,その割り当てた波長の光信号に情報を載せて配信する情報配信システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやインターネットにより様々な動画が配信されている。また,テレビ会議システムなどが提案されて実際に使用されている。このように,動画を配信する技術は日々進歩している(動画配信システムについては,例えば,特許文献1を参照)。一方,動画などを高精度に配信するためには,多くの情報を送受信しなければならないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−289224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は,上記問題点に鑑み,より多くの画像情報又は画像情報を含む情報を配信できる情報配信システムなどを提供することを目的とする。
【0004】
本発明は,多数の波長の光を用いる場合に,複数の光源を用いなくても効果的に複数の波長の光を得ることができ,簡便な装置で多くの情報を配信できる情報配信システムなどを提供することを目的とする。
【0005】
本発明は,あらかじめ複数の領域に分割された表示装置に対応した撮影装置で撮影した画像情報を効果的に配信することで効果的に画像情報を配信できる情報配信システムなどを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は,ユーザの求める画質や,伝送路におけるトラヒックの状況などに動的に対応して,ニーズにふさわしい画像情報を提供することができる情報配信システムなどを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は,光情報通信用に用いられている光ファイバなどの媒体を利用することができる情報配信システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,基本的には,複数のモニタを用いて1つの画面を構成するか,又は1つの画面を複数の表示領域に分割した表示装置に画像情報を配信する際,表示装置のモニタ又は表示領域ごとに光信号を割り当てて,画像情報を配信することで,より多くの画像情報を配信できる,というという知見に基づくものである。すなわち,ある波長の光信号に載せることができる情報量は限界がある。一方,光信号を多重化する技術は知られている。そこで,本発明は,画面を複数の領域に分けて,その分けられた領域に対応するように,多重化されるそれぞれの光を割り当てることで,より多くの情報を配信できるというものである。
【0009】
本発明の第1の側面は,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報を合波して光伝送路(27)に送出する送信機(10)と,前記光伝送路(27)を介して受信した光信号を,互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波する受信機(12)と,前記受信機(12)に接続され,前記受信機(12)によって分波された前記複数の光信号のそれぞれに対応する画像を表示する,前記異なる波長のそれぞれに対応づけられた複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)を有する表示装置(16)と,を具備する情報配信システム(18)に関する。
【0010】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムでは,送信機(10)からは,互いに異なる波長を有する複数の光信号を合波した光信号が光伝送路(27)に送出される。一方,受信機(12)は光伝送路(27)を介して受信した光信号を互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波し,表示装置(16)に与える。表示装置(16)の1つの画面(14)を構成する複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)は,予め対応付けられた又は対応関係が制御された前記異なる波長のそれぞれの画像情報に対応する画像を表示する。このように画像情報を複数の信号に分けて配信できるので,より多くの画像情報を同時に配信できることとなる。そして,互いに異なる波長の複数の光信号は,互いに干渉し合わないため,画像情報を正確に配信できる。これにより,例えば,美麗な画像情報をリアルタイムに配信できることとなる。
【0011】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記送信機(10)は,光源と,前記光源から出力された光の周波数を所定量変位させる副搬送波多重(SCM)変調器と,前記光源から出力された光の周波数を前記副搬送波多重変調器により変調させることを繰り返すことで,周波数がずれた複数の光信号を得て,得られた互いに異なる波長を有する複数の光信号に画像情報を載せる情報付与部と,を具備する上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0012】
光SSB(シングルサイドバンド)変調器などの副搬送波多重変調器を用いれば,搬送波と所定周波数だけ周波数がずれた光を容易に得ることができる。すなわち,本発明によれば,簡便な装置で多くの情報を配信できる情報配信システムなどを提供できる。
【0013】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記送信機(10)に接続され,撮像した画像を複数の領域に分割し,各領域の画像情報を前記異なる波長のそれぞれに割り当てて前記送信機(10)に与える撮像装置をさらに具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0014】
あらかじめ複数の領域に分割された表示装置に対応した撮影装置を用いることで,送信機において画像分割を行う必要がなくなり,容易かつ迅速に画像情報を配信できることとなる。
【0015】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記表示装置(16)は複数の表示領域を含むものであり,前記異なる波長の波長数に応じて前記表示領域の数が変動する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0016】
たとえば,ユーザの求める画質や,伝送路におけるトラヒックの状況などに動的に対応して,ニーズにふさわしい画像情報を提供することができる情報配信システムが望ましい。そこで本発明の好ましい態様は,表示装置が画質レベル情報を入力する画質レベル情報入力部を具備し,表示装置は前記画質レベル情報入力部から画質レベル情報が入力された場合に,伝送路にあるノード又は送信機へその画質レベル情報を伝え,ノード又は送信機は,受取った画質レベル情報(たとえば,画面が16分割,8分割又は4分割などの分割画面数情報や,2000dpi,又は1000dpiなどの画素分割情報など)に基づいて,情報を出力すればよい。
【0017】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記光伝送路(27)として,光ファイバを用いる,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0018】
光ファイバを用いることで,光情報通信用に用いられている光ファイバなどの媒体を利用することができる。
【0019】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記光伝送路(27)は,波長割当部を有するノードを有し,前記ノードの波長割当部は,前記送信機(10)から送信された複数種類の波長の光信号の波長変換を行い,出力する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0020】
送信機から受信機まで,画面のある領域に対応する波長を同じものとして情報配信を行っても良い。しかし,ノード間ごとに,ある時間における利用可能な波長は異なっている。このため,波長を固定した情報配信を行うと,あるノードである波長の信号が既に用いられている場合,その波長の信号を用いると信号が衝突するおそれがある。そこで,ノードごとに画面のある領域に対応する信号の波長を動的に変化させることで,効果的に情報を配信できることとなる。
【0021】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長のそれぞれに対応する,複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)の対応関係を制御するための表示部位制御装置を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0022】
たとえば,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報における,複数の光信号のうち,波長の短いもの(又は長いもの)の順に,画面の対応する領域(又はモニタ)を決めておいても良い。しかし,たとえば,画面のうち,周辺部分は画質がそれほど高くなくて良い場合がある。そこで,本発明の好ましい態様では,たとえば,受信した信号の波長とある表示領域との関係が固定されているのではなく,たとえば受信した情報に表示領域に関する情報が含まれており,その表示領域に関する情報を分析して,受取った情報がどの画面領域に対応するか分析する領域分析部を具備する。
【0023】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長の波長数に応じて前記複数の光信号のそれぞれの画像情報の画像解像度を制御するための解像度制御部を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0024】
たとえば,画面を16個の領域に分割した場合の情報通信において,4つの波長のみを利用可能な場合や,4つの波長のみを利用する場合,16種類の波長の光信号を用いる場合に比べて,1つの波長が担当する表示領域が大きくなる。そこで,情報を確実に伝えるため,画像表示に用いることができる波長の数が減少した場合は,解像度を落とすことで確実に画像情報を配信できる。
【0025】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記表示装置(16)は,前記受信機(12)により分波された複数の光信号のそれぞれに対応する画像処理用回路を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0026】
このように,複数の表示領域に対応した画像処理用LSIなどの処理回路を具備することで,それぞれの領域に応じた画像を迅速に処理することができることとなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば,より多くの画像情報又は画像情報を含む情報を配信できる情報配信システムなどを提供できる。
【0028】
本発明によれば,多数の波長の光を用いるので,複数の光源を用いなくても効果的に複数の波長の光を得ることができ,簡便な装置で多くの情報を配信できる情報配信システムなどを提供できる。
【0029】
本発明によれば,あらかじめ複数の領域に分割された表示装置に対応した撮影装置で撮影した画像情報を効果的に配信することで効果的に画像情報を配信できる情報配信システムなどを提供できる。
【0030】
本発明によれば,ユーザの求める画質や,伝送路におけるトラヒックの状況などに動的に対応して,ニーズにふさわしい画像情報を提供することができる情報配信システムなどを提供できる。
【0031】
本発明によれば,光情報通信用に用いられている光ファイバなどの媒体を利用することができる情報配信システムなどを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1に示されるように,本発明の第1の側面は,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報を合波して光伝送路(27)に送出する送信機(10)と,前記光伝送路(27)を介して受信した光信号を,互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波する受信機(12)と,前記受信機(12)に接続され,前記受信機(12)によって分波された前記複数の光信号のそれぞれに対応する画像を表示する,前記異なる波長のそれぞれに対応づけられた複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)を有する表示装置(16)と,を具備する情報配信システム(18)に関する。
【0033】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムでは,送信機(10)からは,互いに異なる波長を有する複数の光信号を合波し、多重化された光信号が光伝送路(27)に送出される。一方,受信機(12)は光伝送路(27)を介して受信した光信号を互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波し,表示装置(16)に与える。表示装置(16)の1つの画面(14)を構成する複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)は,予め対応付けられた又は対応関係が制御された前記異なる波長のそれぞれの画像情報に対応する画像を表示する。このように画像情報を複数の信号に分けて配信できるので,より多くの画像情報を同時に配信できることとなる。そして,互いに異なる波長の複数の光信号は,互いに干渉し合わないため,画像情報を正確に配信できる。これにより,例えば,美麗な画像情報をリアルタイムに配信できることとなる。また,情報配信システムの光伝送路の伝送能力が低い場合などであっても,画像情報を複数の信号に分けて配信できるので,より多くの画像情報を同時に配信できることとなる。本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい利用態様は,例えば,ビデオ・オン・デマンド,放送あるいはそれに類するもの,テレビ会議システム等である。画像情報が動画の画像情報である場合には,複数の光チャネルを使って1つのアプリケーション(動画)を配信するので,動画の画像情報を圧縮する必要がなくなる。このため,動画の画像情報の圧縮処理が不要になり,圧縮処理による画像の劣化などを防止できる。
【0034】
前記送信機(10)は,複数の波長の光信号に情報を載せて出力できる送信機であれば,公知のものを適宜用いることができる。波長が異なる複数の光源と,その光源に情報を載せるためのそれぞれの光源に対応した変調器(強度変調器,位相変調器,符号化器など)を具備するものであっても良い。一方,このような送信機では,複数の光源とそれぞれの変調器の動作を制御するための複数の電源が必要となるため装置が大掛かりとなる。このため本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記送信機(10)は,光源と,前記光源から出力された光の周波数を所定量変位させる副搬送波多重(SCM)変調器と,前記光源から出力された光の周波数を前記副搬送波多重変調器により変調させることを繰り返すことで,周波数がずれた複数の光信号を得て,得られた互いに異なる波長を有する複数の光信号に画像情報を載せる情報付与部と,を具備する上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0035】
副搬送波多重変調器として,光SSB変調器,光FSK変調器,光DSB−SC変調器と光フィルタとを組合わせたものなどを適宜用いることができる。光SSB(シングルサイドバンド)変調器などの副搬送波多重変調器を用いれば,搬送波と所定周波数だけ周波数がずれた光を容易に得ることができる。よって,源から出力された光の周波数を前記副搬送波多重変調器により変調させることを繰り返すことで,周波数がずれた複数の光信号を得ることができる。また,そのようにして得られた情報付与部が得られた互いに異なる波長を有する複数の光信号に画像情報を載せることで,互いに異なる波長を有する複数の光信号に画像情報を乗せることができる。複数の波長の異なる光信号を得た後,順次光変調器(強度変調器,位相変調器,符号化器など)を用いて情報を載せた後,遅延時間を遅延回路などを通すことで調整して,合波器で合波して送信しても良い。なお,この場合,それぞれの波長の光信号は,表示領域などに応じた情報が載せられるものであることが好ましい。すなわち,本発明によれば,簡便な装置で多くの情報を配信できる情報配信システムなどを提供できることとなる。
【0036】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記送信機(10)に接続され,撮像した画像を複数の領域に分割し,各領域の画像情報を前記異なる波長のそれぞれに割り当てて前記送信機(10)に与える撮像装置をさらに具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0037】
通常の撮影装置で撮影された画像情報を配信する場合,その画像情報を複数の画像領域の情報に分割するための画像分割部と,前記画像分割部で分割されたそれぞれの画像情報を複数の波長の光の載せるための情報付与部とが必要とされる。一方で,あらかじめ複数の領域に分割された表示装置に対応した撮影装置を用いることで,送信機において画像分割を行う必要がなくなり,容易かつ迅速に画像情報を配信できることとなる。たとえば,表示装置の画面が8つの領域に分割されるものである場合、撮影装置も画面を8つの領域に分割して,それぞれの領域ごとに異なる記憶装置に情報を記憶して、送信機に伝えるものが好ましい。この場合、それぞれの領域に関する信号と、それぞれの領域の画像情報とを合わせて送信機に送ることで、送信機は受信した情報がどの領域の情報かを分析できることとなる。なお、表示装置の分割数と、撮影装置の分割数とが常に一致しているとは限らないので、撮影装置から送信機には、画面分割の規則(分割の数や分割の方法)に関する情報が伝えられてもよい。そして,送信機は、その画面分割の規則情報を受取って、その情報に応じて適宜複数の波長の信号に情報を載せるものであっても良い。
【0038】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記表示装置(16)は複数の表示領域を含むものであり,前記異なる波長の波長数に応じて前記表示領域の数が変動する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0039】
たとえば,海外とのテレビ会議を行う場合は,多くのノードを経て情報が送受信される。このような場合,画像を高めることよりも,画像が伝わることを希望する可能性が高い。また,非常時におけるアナウンスなど,強制的に多くの表示装置に向けて情報を伝達する場合もある。そのような場合,伝送路のトラヒックが大きくなるため,確実に情報を伝えることが望ましい場合もある。そのような場合,ユーザの求める画質や,伝送路におけるトラヒックの状況などに動的に対応して,ニーズにふさわしい画像情報を提供することができる情報配信システムが望ましい。そこで本発明の好ましい態様は,表示装置が画質レベル情報を入力する画質レベル情報入力部を具備し,表示装置は前記画質レベル情報入力部から画質レベル情報が入力された場合に,伝送路にあるノード又は送信機へその画質レベル情報を伝え,ノード又は送信機は,受取った画質レベル情報(たとえば,画面が16分割,8分割又は4分割などの分割画面数情報や,2000dpi,又は1000dpiなどの画素分割情報など)に基づいて,情報を出力すればよい。一方,非常時のアナウンスのような場合は,非常時信号を送信機が受取り,表示装置の画面領域のうち上方中央付近のみ画像情報を配信して,他の領域については信号を配信しないようにしても良い。
【0040】
すなわち,たとえば,通常16の領域に分割された画面であっても,画像を表示する領域を中央付近の上部1領域又は2領域のように減少させても良い。
【0041】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記光伝送路(27)として,光ファイバを用いる,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0042】
光ファイバを用いることで,光情報通信用に用いられている光ファイバなどの媒体を利用することができる。
【0043】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記光伝送路(27)は,波長割当部を有するノードを有し,前記ノードの波長割当部は,前記送信機(10)から送信された複数種類の波長の光信号の波長変換を行い,出力する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0044】
送信機から受信機まで,画面のある領域に対応する波長を同じものとして情報配信を行っても良い。しかし,ノード間ごとに,ある時間における利用可能な波長は異なっている。このため,波長を固定した情報配信を行うと,あるノードである波長の信号が既に用いられている場合,その波長の信号を用いると信号が衝突するおそれがある。そこで,ノードごとに画面のある領域に対応する信号の波長を動的に変化させることで,効果的に情報を配信できることとなる。すなわち,波長割当部は,たとえば,次のノードに向けて送信可能な信号の波長を把握して,その波長の光に,画面のある領域に対応した位置情報を付与すると共に,その領域に表示される画像の情報を載せて出力すればよい。また,たとえば,画面のうち,周辺部分は画質がそれほど高くなくて良い場合がある。そこで,分割した画面領域のうち中心部に近いものに,順位の高い波長(衝突などが起こる可能性が少ない波長)を割当て,画面の枠に近い領域については順位の低い波長を割り当てるものが好ましい。このような波長割当を達成するためには,ノード間において衝突が起こる確率を計算するための衝突確率計算部を具備し,その衝突確率を用いて波長を割り当てればよい。また,たとえば,中心部に近いものを正確に伝えるために,あえて2つ以上の波長をある領域のために割り当てても良い。
【0045】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長のそれぞれに対応する,複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)の対応関係を制御するための表示部位制御装置を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0046】
たとえば,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報における,複数の光信号のうち,波長の短いもの(又は長いもの)の順に,画面の対応する領域(又はモニタ)を決めておいても良い。しかし,たとえば,画面のうち,周辺部分は画質がそれほど高くなくて良い場合がある。たとえば,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報における,複数の光信号のうち,波長の短いもの(又は長いもの)の順に,画面の対応する領域(又はモニタ)を決めておいても良い。しかし,たとえば,画面のうち,周辺部分は画質がそれほど高くなくて良い場合がある。そこで,本発明の好ましい態様では,たとえば,受信した信号の波長とある表示領域との関係が固定されているのではなく,たとえば受信した情報に表示領域に関する情報が含まれており,その表示領域に関する情報を分析して,受取った情報がどの画面領域に対応するか分析する領域分析部を具備する。
【0047】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長の波長数に応じて前記複数の光信号のそれぞれの画像情報の画像解像度を制御するための解像度制御部を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0048】
たとえば,画面を16の領域に分割した場合の情報通信において,4つの波長のみを利用可能な場合や,4つの波長のみを利用する場合,16種類の波長の光信号を用いる場合に比べて,1つの波長が担当する表示領域が大きくなる。そこで,情報を確実に伝えるため,画像表示に用いることができる波長の数が減少した場合は,解像度を落とすことで確実に画像情報を配信できるようにすることが望ましい。
【0049】
本発明の第1の側面に係る情報配信システムの好ましい態様は,前記表示装置(16)は,前記受信機(12)により分波された複数の光信号のそれぞれに対応する画像処理用回路を具備する,上記いずれかに記載の情報配信システム(18)である。
【0050】
このように,複数の表示領域に対応した画像処理用LSIなどの処理回路を具備することで,それぞれの領域に応じた画像を迅速に処理することができることとなる。
【0051】
以下,実施例を用いて本発明の実施の形態に係る情報配信システム(18)を具体的に説明する。一方,本発明は,以下の実施例に限定されず,当業者に自明な範囲で適宜調整を加えて用いることができるものである。
【実施例1】
【0052】
1.情報配信システム
図1は,本発明の実施の形態に係る情報配信システム(18)の概略構成を示す図である。図1に示されるように,この情報配信システム(18)は,互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報を合波して光伝送路(27)に送出する送信機(10)と,前記光伝送路(27)を介して受信した光信号を,互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波する受信機(12)と,前記受信機(12)に接続され,前記受信機(12)によって分波された前記複数の光信号のそれぞれに対応する画像を表示する,前記異なる波長のそれぞれに対応づけられた複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)を有する表示装置(16)と,を具備する情報配信システム(18)である。
【0053】
図1において,受信機(12)が表示装置(16)内部に示されているが,受信機(12)は表示装置(16)外に設けても良い。送信機(10)は,互いに異なる波長(例えば,λ〜λ)を有する複数の光信号の画像情報を合波して光伝送路(27)に送出する。一方,受信機(12)は,受信した光信号を前記互いに異なる波長(λ〜λ)を有する光信号に分波し,それぞれの光信号の画像情報を表示装置(16)に与える。表示装置(16)は,画面(14)を構成する前記互いに異なる波長のそれぞれに予め対応付けられた複数の表示領域(14A〜14H)に,受信機(12)から与えられたそれぞれの光信号の画像情報を表示する。
【0054】
図1の情報配信システム(18)には,1つの画面(14)が複数の表示領域(14A〜14H)に分割されている表示装置(16)が設けられているが,これに代えて,表示装置(16)が複数のモニタで1つの画面を構成するものであっても,本発明の本質的な点は同様である。。
【0055】
なお,図1において,符号24は,画面(14)に画像を表示させるための表示回路を示したものである。表示回路(24)は各波長λ〜λに応じた数のLSI(図示せず)とこれらのLSIを統合的に制御するCPUによって構成することができる。この場合,各LSIが,受信機(12)から出力された各波長λ〜λの画像情報について画素数の変換,ノイズの除去等の画像処理を行なって,対応する各表示領域に画像を表示させればよい。
【0056】
CPUは,たとえば,各LSIから各表示領域(14A〜14H)に画像を表示する際に,表示タイミングを調整するほか,画面(14)全体の輝度,色調の調整,各表示領域の境界部分における画像の連続性を得るための制御信号を各LSIに送り,画面(14)全体の表示について統合的な制御と行なう。
【0057】
情報配信システム(18)は,画像情報が光信号で送信機(10)から受信機(12)に光伝送路(27)を介して配信される。このため,送信機(10)から受信機(12)に画像情報を配信する際に,光信号を電気信号に変換する処理が不要となる。光伝送路(27)は,データ信号用光通信に用いる光ファイバを共有すればよい。
【0058】
図2は,図1の情報配信システム(18)において,表示装置(16)の画面(14)に画像情報が表示される様子を示したものである。図2に示されるように,光伝送路(27)を介して表示装置(16)内の受信機(12)によって受信される光信号は,λ〜λの波長の光信号が送信機(10)によって多重されたものであり,各波長λ〜λに乗った画像は,それぞれ画面(14)の8つの表示領域に表示される。なお,図2において各波長λ〜λのλ〜λとこれに対応する表示領域(14A)〜(14H)は連続して示されているが,不連続であっても構わない。
【0059】
例えば,波長λ〜λがλの波長が一番短くλの波長が一番長いような連続した波長である場合,これらの波長の並び順はλ,λ8,λ2,λ7,λ3,λ6,λ4,λ5のように,不連続とすることができる。また,図1における画面(14)の表示領域についても,上段に領域(14A,14H,14C,14E)を表示し,下段に領域(14E,14D,14G,14B)を表示するというように,不連続とすることができる。この場合,送信側における各画像領域と各波長λ〜λの並び順及び表示領域(14A〜14H)の位置関係が対応している必要があるが,この対応付けは,予め送信側と受信側で取り決めておくか,何らかの規則を送信側と受信側で合意しておきこの規則に従った設定を行なうか,或いは送信側と受信側とで画像の配信前に対応付けに関するネゴシエーションを行い設定すればよい。
【0060】
また,上記の説明においては,画面(14)が8分割されているものとして説明しているが,画面分割の数は8分割に限定されるものではなく,送信機(10)側で多重する波長数に対応した分割数であればよい。さらに,送信機(10)側で多重する波長数は可変にしてもよく,この場合,画面分割の数も波長数に応じて可変とすれば,波長数の増減に応じて画面(14)の解像度を変更することができる。
【0061】
さらに,送信機(10)に接続された撮像装置(図示せず)において,撮像した画像を複数の領域に分割し,各領域の画像情報を前記異なる波長のそれぞれに割り当ててもよい。撮像装置によって撮像時に画像を分割した各領域と表示装置(16)の画面(14)における各表示領域とが1対1に対応にするため,撮像時の画像をより正確に画面(14)に再生できる。
【0062】
撮像装置が,必要とする画像解像度に応じて動的に波長の割り当てを行なうようにしてもよい。すなわち,撮像時に撮像画面をより細かく分割し,分割数に応じて波長数を増やして,波長多重分割による送信を行い,受信側でもこれに合わせて表示領域の数を増やすことにより,高解像度の画像配信ができる。
【0063】
送信機(10)からは,光信号が,波長分割多重方式で出力される。このため,図2に示されるように,表示装置(16)の1つの画面(14)を構成するモニタ又は表示領域(14A〜14H)で表示される画像情報は,互いに異なる波長の光信号で並列に配信される。したがって,より多くの画像情報を同時に配信できる。またここで,互いに異なる波長の複数の光信号は互いに干渉し合わないため,画像情報を正確に配信できる。これにより,例えば,美麗な画像情報をリアルタイムに配信できる。
【0064】
またさらに,画像が動画である場合には,複数の光チャネルを使って1つのアプリケーション(動画)を配信するので,動画情報を圧縮しなくても配信できる。このため,動画情報の圧縮処理が不要になり,圧縮処理の計算コストを不要にできる。
【0065】
図3は,情報配信システム(18)を構成する送信機(10)及び受信機(12)の概略構成を示す図である。なお,図3において,送信機(10)の内部の符号30は,送信符号処理部を示しており,符号32は,E/O変換部を示している。一方,受信機(12)の内部の符号34は,O/E変換部を示している。
【0066】
図3に示されるように,情報配信システム(18)の送信機(10)は,光伝送路(27)に送出する異なる波長の複数の光信号を合波する合波器(20)を備えている。図3では,合波器(20)が送信機(10)内に設けられているが,この合波器(20)は,送信機(10)には設けられずに送信機(10)と別体であってもよい。
【0067】
情報配信システム(18)は,受信機(12)に送信される複数の光信号は,合波器(20)によって合波される。このため,より多くの画像情報をまとめて受信機(12)に送信できる。これにより,複数の光信号を,例えば1つの伝送路(ここでは,1本の光ファイバケーブル(27))で伝送できる。したがって,伝送路に要するコストを削減できる。
【0068】
さらに,情報配信システム(18)の受信機(12)は,前記合波器(20)で合波された複数の光信号を,前記異なる波長ごとに分波する分波器(22)を備えている。ここでは,分波器(22)が受信機(12)内に設けられているが,この分波器(22)は,受信機(12)には設けられずに受信機(12)と別体であってもよい。
【0069】
情報配信システム(18)は,合波器(20)で合波された複数の光信号が,分波器(22)によって,割り当てられた波長ごとに分波される。このため,各光信号を別個に取り扱うことができる。
【0070】
このような情報配信システム(18)で取り扱う画像情報は,例えば,動画情報とされる。情報配信システム(18)で取り扱う画像情報が動画情報である場合,情報配信システム(18)は,例えば,ビデオ・オン・デマンド,放送あるいはそれに類するもの,テレビ会議システム等で使用するのに好適である。
以下,本発明の実施の形態に係る情報配信システム(18)を構成する各部について説明する。
【0071】
1.1.送信機
図3に示されるように,送信機(10)は,各波長(λ〜λ)に対応した画像情報のアナログ電気信号を符号化してディジタル信号に変換する複数の送信符号処理部(30)と,各送信符号処理部(30)から出力された電気信号を光信号に変換する複数のE/O変換部(32)と,各E/O変換部(32)から出力された複数の異なる波長(λ〜λ)の光信号を合波して光伝送路(27)に送出する合波器(20)とを具備する。
【0072】
送信機(10)の送信符号処理部(30)及び合波器(20)については,従来から公知のものを適用可能であるが,E/O変換部(32)については,例えば,図4に示される光電気発振器(37)を適用するのが好ましい。
【0073】
光電気発振器(37)は,光導波路(38)と,導線(39)と,駆動回路(40)と,光源(42)と,光変調器(44)と,光増幅器(46)と,光路長調整装置であるMEMS(48)と,光検出器(50)と具備する。
【0074】
駆動回路(40)は,図3に示される送信符号処理部(30)から送信される同期情報及び制御情報を有する画像データ(画像情報)に応じて光源(42)を駆動する。光源(42)からは,画像データに応じた光信号が出射される。この光信号は,光変調器(44)で変調信号に基づいて変調されて,さらに光増幅器(46)によって増幅される。光増幅器(46)によって増幅された光信号(変調後の光信号)は,例えば制御信号(上記の画像データに含まれる制御情報が信号化されたもの)に応じてMEMS(48)が駆動することで光路長が調整されて,光検出器(50)に検出されるようになっており,この光信号は,電気信号に変換される。この電気信号は,上記の変調信号として上記の光変調器(44)に伝送されて,上記の光変調が繰り返される。また,MEMS(48)からの光信号(変調後の光信号)は,分岐されて図3に示される合波器(20)に出力されるようになっている。なお,光増幅器(46)は,必要に応じて適宜設ければよい回路構成要素であり,光電気発振器(37)から省略してもよい。
【0075】
ここで,波長分割多重方式で用いられる光信号の複数の波長のうち所定の波長となるように,上記の変調信号の周波数が調整される。このとき,上記の制御信号に応じてMEMS(48)を駆動させれば,変調信号の周波数を精度良く調節できると共に,この変調信号の周波数を所定の周波数に維持できる。
【0076】
このような光電気発振器(37)を用いて,各E/O変換部(32)での変調信号の周波数が,波長分割多重方式で用いられる光信号の各波長に合わせて互いに異なるように設定されればよい。
【0077】
1.1.1.光源
光電気発振器(37)の光源として,公知の光源を採用できる。好ましい光源は,ダイオード,レーザーダイオードなどである。また,光源の例としては,擬似ランダム信号を出力するものがある。擬似ランダム信号は,特開平5-45250号公報,特開平7-218353号公報,及び特開2003-50410号公報などに記載されたものを用いることができる。擬似ランダム信号を用いれば,様々な特性を有する信号を発生できる。光源の好ましい別の態様は,周期性を持って配列された光信号を出力するものである。周期性を持って配列された光信号として,パルス信号があげられる。また連続光源であってもよい。
【0078】
光源から出力される光の波長としては,1200nm〜1900nmが挙げられ,好ましくは1300nm〜1800nm,より好ましくは1400nm〜1700nmや1500nm〜1600nmである。また,光源から出力される光の強度としては,0.1mW以上が挙げられ,好ましくは1mW以上であり,より好ましくは10mW以上である。具体的な光源としては,例えば,アジレント(Agilent)社製HP8166Aや81689Aなどが挙げられる。
【0079】
1.1.2.光変調器
光変調器(44)として,光信号の周波数をシフトして出力するものに光単側波帯変調器(光SSB(Single
Side-Band)変調器)がある。光SSB変調器及びその動作は,たとえば,「川西哲也,井筒雅之,"光SSB変調器を用いた光周波数シフター",信学技報,TECHNICAL REPORT OF IEICE,
OCS2002-49, PS2002-33, OFT2002-30(2002-08)」,「日隅ら,Xカットリチウムニオブ光SSB変調器,エレクトロンレター,vol. 37, 515-516 (2001).」などに詳しく報告されている。すなわち,光SSB変調器によれば,所定量周波数がプラスにシフトした上側波帯信号(USB),及び下側波帯信号(LSB)を得ることができる。
【0080】
なお,本実施の形態では,光変調器(44)が光SSB変調器であるとして説明するが,光変調器(44)としては,光SSB変調器に限定されず,例えば光周波数シフトキーイング変調器(光FSK変調器)又は光搬送波抑圧両側波帯変調器(光DSB−SC変調器)などの素子でもよい。光DSB−SC変調器としては,後述する光DSB−SC変調器を用いることができる。
【0081】
光FSK変調器としては,例えば,第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と,第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)と,前記MZA及び前記MZBとを含み,光の入力部と,変調された光の出力部とを具備するメインマッハツェンダー導波路(MZC)を具備する変調器である。当該変調器は,例えば,前記MZAを構成する2つのアームにラジオ周波数(RF)信号を入力するための第一のサブMZ電極(電極A)と,前記MZBを構成する2つのアームにラジオ周波数(RF)信号を入力するための第2のサブMZ電極(電極B)と,前記MZCを制御し,入力されるRF信号の電圧値,または位相を制御することにより前記出力部から出力される光の周波数を制御する電極(電極C)とを具備する。
【0082】
それぞれのマッハツェンダー導波路は,例えば,略六角形状の導波路(これが2つのアームを構成する)を具備し,並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。
【0083】
通常,マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は,光を伝播することができるものであれば,特に限定されない。例えば,LN基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また,InPやGaAs基板上にInGaP,GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。基板として,XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり,かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され,導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また,基板として,電気光学効果を有する三方晶系,六方晶系といった一軸性結晶,又は結晶の点群がC3V,C3,D3,C3h,D3hである材料を用いることができる。これらの材料は,電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては,ニオブ酸リチウムの他に,タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT),β−Ba24(略称BBO),LiIO3等を用いることができる。
【0084】
基板の大きさは,所定の導波路を形成できる大きさであれば,特に限定されない。各導波路の幅,長さ,及び深さも本発明のモジュールがその機能を発揮しうる程度のものであれば特に限定されない。各導波路の幅としては,たとえば1〜20マイクロメートル程度,好ましくは5〜10マイクロメートル程度があげられる。また,導波路の深さ(厚さ)として,10nm〜1マイクロメートルがあげられ,好ましくは50nm〜200nmである。
【0085】
電極A,電極B,電極Cとしては,たとえば金,白金などによって構成される。これらの電極の幅としては,1μm〜10μmが挙げられ,具体的には5μmが挙げられる。これらの電極の長さとしては,変調信号の波長の0.1倍〜0.9倍が挙げられ,0.18〜0.22倍,又は0.67倍〜0.70倍が挙げられ,より好ましくは,変調信号の共振点より20〜25%短いものである。このような長さとすることで,スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的なこれらの電極の長さとしては,3250μmがあげられる。
【0086】
電極A,電極Bとしては,進行波型電極または共振型電極が挙げられ,好ましくは共振型電極である。共振型光電極(共振型光変調器)は,変調信号の共振を用いて変調を行う電極である。共振型電極としては公知のものを採用でき,例えば特開2002-268025号公報,「川西哲也,及川哲,井筒雅之,"平面構造共振型光変調器",信学技報,TECHNICAL REPORT OF
IEICE,IQE2001-3(2001-05)」に記載のものを採用できる。
【0087】
進行波型電極(進行波型光変調器)は,光波と電気信号を同方向に導波させ導波している間に光を変調する電極(変調器)である(例えば,西原浩,春名正光,栖原敏明著,「光集積回路」(改訂増補版)オーム社,119頁〜120頁)。進行波型電極は公知のものを採用でき,例えば,特開平11−295674号公報,特開平11−295674号公報,特開2002−169133号公報,特開2002-40381号公報,特開2000-267056号公報,特開2000-471159号公報,特開平10-133159号公報などに開示されたものを用いることができる。進行波型の変調器は,両端の電極から変調信号を入力することで,どちらの向きから入力する光に対しても同じ特性で変調できるので好ましい。
【0088】
進行波型電極として,好ましくは,いわゆる対称型の接地電極配置(進行波型の信号電極の両側に,少なくとも一対の接地電極が設けられているもの)を採用するものである。このように,信号電極を挟んで接地電極を対称に配置することによって,信号電極から出力される高周波は,信号電極の左右に配置された接地電極に印加されやすくなるので,高周波の基板側への放射を,抑圧できる。
【0089】
電極Cは,進行波型の電極であることが好ましい。電極Cの切り換え速度が,光FSK変調器のデータ速度になるので,電極Cを進行波型電極とすることで高速の切り換え(USBとLSBとの切換し)が可能となるからである。
【0090】
光導波路の形成方法としては,チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち,上記光FSK変調器は,例えば以下のようにして製造できる。まず,ニオブ酸リチウムのウエハー上に,フォトリソグラフィー法によって,チタンをパターニングし,熱拡散法によってチタンを拡散させ,光導波路を形成する。この際の条件は,チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし,拡散温度を500〜2000℃とし,拡散時間を10〜40時間とすればよい。基板の主面に,二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5−2μm)を形成する。次いで,これらの上に厚さ15−30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして,チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0091】
光FSK変調器は,例えば以下のようにして製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は,ニオブ酸リチウム基板表面に,プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば,フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを,LN基板上に列をなした状態で作製する。その後,LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば,LN基板上に導波路を形成できる。
【0092】
また,電極は上記と同様にして製造できる。例えば,電極を形成するため,光導波路の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって,同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0093】
なお,シリコン基板を用いる場合は,たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し,次に,二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後,電気炉で透明ガラス化する。次に,エッチングして光導波路部分を作製し,再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして,薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0094】
ところで,光変調器は,光の周波数,光の強度,及び光の位相のうち少なくともひとつに変調を加えるための装置である。このような光変調器として,周波数変調器,強度変調器,及び位相変調器があげられる。本実施形態では,光変調器(44)として,強度変調器(IM)を適用してもよい。また,光変調器には,共振型の変調器と,進行波型の変調器とがあり,どちらの変調器を用いてもよい。
【0095】
強度変調器としては,たとえば光搬送波抑圧両側波帯(DSB−SC)変調器があげられる。強度変調器は,導波路を伝播する光信号の強度(振幅)を制御するための装置である。強度変調器として,周知の可変光減衰器(VOA)を用いることができる。強度変調器として,LNを用いたVOA素子を用いても良い(例えば,特開平10-142569号公報参照)。光DSB−SC変調器の具体的な構成として,例えば,導波路上に形成された金属薄膜ヒータを熱源としてマッハツェンダー導波路の一方のアーム導波路に熱光学効果によって屈折率変化を生じさせ,干渉計の出力強度を調整するものがあげられる(例えば,特開2000-352699号公報参照)。光DSB−SC変調器として,信号源と,信号源から出力される信号の位相を調整する位相調整器とを具備し,マッハツェンダー導波路の両アームに印加される電気信号の位相が例えば180度異なるように調整されるものがあげられる。両アームに印加される電気信号の位相が180度異なるので,光DSB−SC信号を出力できる。
【0096】
本発明において,基本的に強度変調器は,その変調信号の変調周波数をその入力信号の中心周波数をf0,変調周波数をfmとすると,その出力信号は,主にf0±fm(f0+fmとf0−fm)である。このような周波数を有する出力信号を出力するもののうち,特にf0成分が抑圧されるものを出力するものを光DSB−SC変調器とよぶ。すなわち,光DSB−SC変調器は,両側波帯の光信号が出力され,キャリア信号の周波数成分f0は抑圧される。
【0097】
このような光DSB−SC変調器としては,マッハツェンダー導波路であり,より好ましくはプッシュプル型マッハツェンダー導波路を具備するものがあげられ,これは上記の光FSK変調器と同様にして製造できる。マッハツェンダー導波路であれば,光FSK変調器と同一の基板上に設けることができるからである。また,マッハツェンダー導波路であれば,強度変調時の不要な光位相変化(周波数チャープ)を回避することが出来るからである。このようなマッハツェンダー導波路として,公知の光SSB変調器などに用いられたマッハツェンダー導波路を利用できる。
【0098】
1.1.3.MEMS
MEMS(48)は,光変調器(44),光増幅器(46),光検出器(50)などと共に光電気発振器(37)に設けられている。このため,例えば,MEMS(48)を,光変調器(44),光増幅器(46),光検出器(50)などと共に1枚の基板上に設けて結集させることができる。
【0099】
1.1.4.光検出器
光検出器(50)は,光変調器(44)からの出力光を検出し,電気信号に変換するための手段である。光検出器(50)として,公知のものを採用できる。光検出器(50)として,例えばフォトダイオードを含むデバイスを採用できる。光検出器(50)は,例えば,光信号を検出し,電気信号に変換するものがあげられる。光検出器(50)によって,光信号の強度,周波数などを検出できる。光検出器(50)として,たとえば「米津宏雄著”光通信素子工学”−発光・受光素子−,工学図書株式会社,第6版,平成12年発行」に記載されているものを適宜採用できる。
【0100】
1.1.5.その他
なお,光変調器(44)の変調電極に接続される導線(39)に周波数を整数分の一にする装置を設けることも可能である。この装置として,例えば,分周器が挙げられる。
【0101】
分周器として,トグルフリップフロップ(T−FF)を用いたものがあげられる。T−FFとして,マスタースレーブ(MS)T−FFや,ダイナミックT−FFがあげられる。具体的には,ダイナミックT−FF,バッファ,MST−FF,バッファ,MST−FF,ダイナミックT−FF,MST−FF,及びドライバをこの順に連結した分周器(NTT製90GHzInPHBTダイナミック分周器)があげられる。この分周器では,40Gbit/sを超える高速な光通信システムにおいて,受信信号から抽出されるクロック信号を用いて低速なクロック信号を生成することができる。また,CMOSフリップフロップにより構成される分周器(例えば,特許第3477844号の図3及び図4)を用いても良い。この分周器は,3個のDフリップフロップをカスケード接続したものである。そして,各Dフリップフロップは複数のインバータにより構成される。より具体的には,インバータによりCMOSのPチャネルトランジスタとNチャネルトランジスタをプッシュプル接続して構成される。
【0102】
別の分周器として,特許第3435751号公報の図6に示されるように,設定値M(M=2など)のカウンタと,カウンタの入力信号と,カウンタの出力信号とが入力されるアンド回路とを含むものがあげられる。カウンタは,入力信号をカウントし,M周期毎に1周期間の出力をLow出力とする。そして,アンド回路は,入力信号とカウンタの出力信号との論理和を取った信号を出力するので,アンド回路からの出力はM周期毎に1周期分のパルスが除去される。このようにして,たとえばM=2の場合,2周期毎に1周期分のパルスが取り除かれるので,信号の周期が2倍となり,入力信号の周波数が半分となった信号が出力されることとなる。
【0103】
別の分周器として,特許第3585114号公報の図5及び図6に示されるように,分周器集積回路を用いたものがあげられる。この分周器は,分周器を構成する分周器集積回路1に端子SW1および端子SW2を有し,端子SW1および端子SW2に印加する制御信号のHレベル,Lレベルに基づいて,分周比を1/2,1/4,1/8に切り換えることができる。この分周器集積回路1の一つに例えば,モトローラ社製のMC12093があげられている。また,この分周器は,端子SB(スタンバイモードのための端子),端子IN(入力端子),端子INバー,端子Vcc(電源端子),端子GND(アース端子),端子OUT(出力端子)を具備する。そして,端子INには,結合コンデンサを介して入力信号が入力される。また,端子INバーは結合コンデンサを介して接地されている。そして,端子SW1および端子SW2に印加する制御信号レベルがともにHレベルであるときに,分周比が1/2となるように設定されている。
【0104】
また,光導波路(38)に光増幅器(44)を設けずに,導線(39)に増幅器を設けて,光検出器(50)から出力された電気信号を増幅するようにしてもよい。また,光増幅器(46)や増幅器は,適宜設ければよい回路構成要素であるので,光増幅器(46)及び増幅器の双方を省略することも可能である。
【0105】
また,導線(39)に逓倍器を設けることも可能である。この場合,光検出器(50)から出力された電気信号の周波数をn倍にすることができる。
【0106】
1.2.光ファイバ
図1〜図3に示した光伝送路(27)は,送信機(10)と受信機(12)を接続する光伝送路であり,従来から公知のシングルモードファイバ(SMF)やマルチモードファイバ(MMF)を適用すれば良い。SMFは,コアの直径が10μm程度の光ファイバであり,伝送モードを1つに限定することでモード分散を抑圧しているため,MMFに比べて高速通信に適しているため,より好ましい。
【0107】
1.3.受信機
図3に示されるように,受信機(12)は,光伝送路(27)から受信した光信号を複数の異なる波長(λ〜λ)の光信号に分離する分波器(22)と,分波器(22)によって分波された光信号の各波長(λ〜λ)毎に設けられたO/E変換部(34)と,各O/E変換部(34)から出力されたディジタル電気信号から元のアナログ信号を復号する複数の受信符号処理部(36)とを具備する。
【0108】
受信機(12)の分波器(22)及び受信符号処理部(36)については,従来から公知のものを適用可能である。また,O/E変換部(34)については,前述の送信機(10)のE/O変換部(32)に関して説明した光電気発振器(37)を適用するのが好ましい(図4参照)。
【0109】
すなわち,受信機(12)における復調の際には,E/O変換部(32)において,分波器(22)によって分波された,各波長の受信信号に局部発振機(図示せず)からの局発光をミキサによりミキシングし,中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号に変換し,フィルタリングすることによりO/E変換を行えばよい。
【0110】
この場合,局発光において対応する各波長を得るための波長選択処理には,サブキャリア変調(SCM:SubCarrier Modulation)を利用することができる。このときの局部発振機には,上記の光電気発振器(37)を適用し,受信信号のパイロットトーンから光SSB変調器又はOEO変換器で波長シフトさせて,所望の波長光を発生させ,これを用いてO/E変換する。
【0111】
O/E変換部(34)に適用される光電気発振器(37)の光信号出力端子には,図示しないタイミング抽出回路が接続されており,例えば,このタイミング抽出回路から出力される制御信号に基づいて,MEMS(48)が駆動するようにすればよい。なお,タイミング抽出回路から出力される制御信号は,光電気発振器(37)から出力された光信号に基づいて,MEMS(48)の駆動タイミングを制御するために生成される信号である。
【0112】
また,駆動回路(40)は,図3に示される分波器(22)から送信される光信号(画像データを含む信号)に応じて光源(42)を駆動する。また,光変調器(44)からの光信号が光検出器(12)によって電気信号に変換されると,この電気信号は,電気信号出力端子に接続されている受信符号処理部(36)に伝送される。この他の点については,前述のE/O変換部(32)に適用される光電気発振器(37)と同様であるため,その説明を省略する。
1.4.表示装置
図1に示された表示装置(16)は,受信機(12)と,表示回路(24)と,複数の表示領域(14A〜14H)からなる1つの画面(14)とで構成されている。なお,既に説明したとおり,受信機(12)は表示装置(16)外に設けてあっても良い。また表示装置(16)は,画面(14)の複数の表示領域(14A〜14H)に代えて,複数のモニタで1つの画面を構成するものであってもよい。
【0113】
1.4.1.表示回路
表示回路(24)は,表示回路(24)には,受信機(12)から出力される各波長の画像情報ごとに画像処理を行なうための画像処理用LSIと,各画像処理用LSIを統合的に制御するCPUを備えていればよい。
【0114】
各画像処理用LSIはCPUからの制御信号に従い,各波長の画像情報ごとに画像処理を行い,対応する表示領域(14A〜14H)又は複数のモニタに画像処理後の画像情報を与える。
【0115】
1.4.2.画面またはモニタ
表示装置(16)の画面(14)または1つの画面を構成する複数のモニタ(図示せず)として,表示回路(24)から与えられた画像情報を表示する公知のディスプレイ装置が採用できる。好ましいディスプレイ装置はTFT液晶に代表される液晶ディスプレイやブラウン管型のCRTディスプレイなどであり,省スペース,省電力の観点からは液晶モニタが望ましい。
【0116】
1.5.撮像装置
図1には示されていないが,表示装置(16)に表示すべき画像情報を撮像し,送信機(10)に与える撮像装置として,公知のディジタルビデオカメラ等を有する撮像装置が挙げられる。
【0117】
送信機(10)に与える画像情報は,例えば図1の表示装置(16)における画面(14)に撮像した画像が表示されるようにするため,撮像時の画面を各表示領域(14A〜14H)に対応して分割し,予め各表示領域に対応づけた波長に各画像情報を乗せるようにする。
このような画像処理は画像処理用LSIによって実現でき,CPUにより画像処理用LSIを制御すればよい。好ましくは,画像処理用LSIを,例えば上記のディジタルビデオカメラ等に組み込む事が望ましい。
【0118】
2.光電気発振器の動作原理
ここで,本実施の形態に係る光電気発振器(37)の動作原理について説明する。図5は,本実施の形態に係る光電気発振器(37)を導波する光信号の状態を示す概念図であり,周波数f0の入力信号光が光SSB変調器(44)により周波数f0+fmの光信号に変調された状態を示す。
【0119】
まず,光源から出力された周波数f0の光信号が,光SSB変調器(44)に入射されると,周波数f0+fmの光信号に変調されて出力される。なお,導線(39)に逓倍器を設ける構成とすれば,この逓倍器からの変調信号(周波数nfm)により光SSB変調器(44)が変調動作をして,光SSB変調器(44)からは,周波数f0+nfmの光信号が出力される。
【0120】
次いで,周波数f0+fmの光信号は,光増幅器(46)によって増幅される。そして,光増幅器(46)から出力された周波数f0+fmの光信号は,MEMS(48)によって光路長が上記の制御信号に応じて調整された後,光検出器(50)に出力される。
【0121】
光検出器(50)では,入力される光信号が電気信号に変換されて出力される。この際に,周波数f0+fmの信号に対応して生成する周波数fmの電気信号は,変調信号として,光SSB変調器(44)の変調電極に入力される。
【0122】
より詳細には,周波数fmの変調信号は,導線(39)により光SSB変調器(44)の変調電極に入力されて光SSB変調器(44)の変調動作に用いられる。なお,導線(39)に前述の逓倍器が設けられた構成であれば,周波数fmの変調信号は,この逓倍器により逓倍されて(n倍されて)周波数nfmの変調信号となって,導線(39)により光SSB変調器(44)の変調電極に入力されて光SSB変調器(44)の変調動作に用いられる。
【0123】
このような光電気発振器(37)の動作を基本として,光SSB変調器(44)の効率が十分高い,光増幅器(46)の増幅度が大きい,入力光パワーが大きいなどの自走発振動作の条件が整っているときに,ノイズなど外乱をきっかけにして発振が開始する。なお,前述のような構成でなくても,光電気発振器(37)における電気回路部分,光部分のどこかに外部から信号を供給して,その信号に同期した発振をさせることも可能である。
【0124】
なお,本実施形態に係る光電気発振器(37)では,光SSB変調器(44)でUSB(周波数が高くなる方向にシフトした変調光信号)を発生させているが,光SSB変調器(44)でLSB(周波数が低くなる方向にシフトした変調光信号)を発生させてもよい。
【0125】
また,本実施の形態に係る光電気発振器(37)では,光変調器(44)が光SSB変調器であるものとして説明したが,例えば,光変調器(44)が光DSB−SC変調器である構成の場合には,図6に示されるように,光源から出力された周波数f0の入力信号光は,光変調器(44)に入力されることにより,周波数f0±fmのサイドバンド成分を有する光信号(周波数f0±fmのサイドバンド成分と周波数f0の元光信号)に変調される。この光信号は,MEMS(48)によって光路長が制御信号に応じて調整された後,光検出器(50)に出力される。光検出器(50)では,周波数f0±fmのサイドバンド成分に対応して生成する周波数fmの電気信号が,変調信号として,前述の光変調器(44)が光SSB変調器である場合と同様にして光変調器(44)の変調電極に入力される。このような構成とすることで,光電気発振器(37)では,複数の周波数成分を持つ信号を生成して,その中から例えば光フィルタにより望んでいる周波数の信号を抽出する。これにより,望んでいる周波数の信号を得ることができる。
【0126】
3.波長数と解像度との関係
3.1.波長数と画面解像度
図1では,異なる8つの波長(λ〜λ)を用いて,表示装置(16)の画面(14)における8つの表示領域に画像を表示する例を示したが,本願においては,波長の数は8に限定されず,任意の波長数を使用することが可能である。
【0127】
すなわち,上記の撮像装置において分割された画像の各領域と表示装置(16)の画面(14)における分割された各表示領域とを対応させ,それぞれに異なる波長を割り当てればよい。この場合,画面の分割数(すなわち,多重する波長数)を撮像装置及び表示装置におけるCPUで制御し,分割数を増減(すなわち波長数を増減)すれば,表示装置(16)に表示される解像度を増減することができる。但し,画面の分割数を送信側と受信側とで一致させる必要がある。この分割数の設定は,送信側主導あるいは受信側主導で必要な画面解像度に応じて,波長数を通知することにより,送信側・受信側で同じ分割数を設定すればよい。
【0128】
3.2.波長数と画像解像度
同じ画像情報について,多重する波長数(すなわち,画面の分割数)を少なくする場合,同じ画像解像度の情報を同じ表示画面に表示するためには,伝送速度を上げる必要があるが,伝送帯域が限られている場合には,多重する波長数の減少に対応して送信する画像情報の画像解像度を下げる必要がある。
これは,上記の撮像機において,撮像画面の分割数の増減に応じて画像解像度を調整する機能を設ければよい。
【0129】
また,送信する元の画像情報の画像解像度を調整する方法として,各表示領域(14A〜14H))に複数の波長(例えば,1つの表示領域につき4波長)を割り当てることもできる。この場合,各表示領域において,割り当てられた4波長の内全ての波長を用いて画像情報を配信すれば,高解像度の画像が得られ,例えば,4波長の内1波長のみを用いて画像情報を配信すれば,標準画像が得られる。
上記の解像度の調整は撮像装置及び表示装置(16)における画像処理用LSI及びCPUに解像度の調整機能を追加することにより実現できる。また,撮像対象や表示時の要求に応じて撮像装置に外部信号を入力して,動的に調整を行うことも可能である。
【0130】
4.本情報配信システムによる効果など
情報配信システム(18)は,前述のような構成なので,例えば,画像を区画(表示領域(14A〜14H))ごと,もしくは画素グループごとに並列処理をする構成にできる。このとき,情報配信システム(18)は,画像を区画ごと,もしくは画素グループごとに並列処理する構成とした場合,それぞれの並列処理ユニットの間で同期を取るようにすればよい。これにより,例えば,画像情報を正確に伝送することで美麗な画像情報をリアルタイムに配信することができるだけでなく,動作周波数を従来よりも大幅に低減できる。
【0131】
また,情報配信システム(18)は,同時に多量の画像情報を配信できるため,例えば,非圧縮フォーマットの画像データを伝送できる。これにより,端末(ここでは,受信機(12))内で,データのデコード処理が不要になる。したがって,端末内での処理負担を低減できる。
【0132】
情報配信システム(18)は前述のような構成なので,ノードや端末内で,光信号を電気信号に変換する処理が不要となる。このため,例えば,ノードや端末の消費電力を低減できる。
【0133】
また,上記の通り,情報配信システム(18)は,各表示領域(14A〜14H))に複数の波長(例えば,1つの表示領域につき4波長)が割り当てられる構成とすることもできる。この場合,各表示領域において,割り当てられた全ての波長を用いて画像情報を配信すれば,高解像度の画像が得られ,例えば,1波長を用いて画像情報を配信すれば,標準画像が得られるといったこともできる。また,サブチャネルごとに画像の異なる部分や色などを割り振って,端末(ここでは,受信機(12))内で並列処理を行う構成とすることもできる。このように,サブチャネルごとに画像の異なる部分や色などが割り振られた場合には,端末内での並列処理を容易にすることができる。
【0134】
また,情報配信システム(18)は,局側(ここでは,送信機(10))で高速信号処理を行って,一括して配信する画像情報を含む信号を生成することもできる。この場合,端末側(ここでは,受信機(12))では,例えば,集積型ヘテロダイン受信機などの低コストであるフォトニックチューナーを用いて選局や受信を行うことができる。
【0135】
4.1.本情報配信システムを適用したネットワーク
上記の実施例では,情報配信システム(18)の送信機(10)と受信機(12)とが単純に光伝送路(27)で接続されているものとして説明したが,光伝送路(27)は中継器や交換機といったノードを備え,複数の送信機(10)と受信機(20)を接続するネットワーク(フォトニックネットワーク)を構成することができる。
【0136】
この場合,送信機(10)から波長多重方式で光信号が光伝送路(27)に送出されるため,交換機における信号の分岐・挿入はO/E変換することなく,光レベルで行うことができる。したがって,簡単な光デバイスで構成された光クロスコネクトや光分岐挿入装置を使用することにより,ノードの低コスト化が可能となる。
【0137】
4.2.ノードにおける波長変換
上記のフォトニックネットワークにおいては,同一経路に光パスを設定する際,2つの光パスの波長(WDMの場合は波長群)が同じ場合,ノードにおいて片方の波長(波長群)を他の空き波長(波長群)に変換する必要がある。この場合,一旦光信号を電気信号に変換し,波長の異なる光源に情報を乗せかえる方式(OEO:Optical−Electrical−Optical変換)により個別に変換することができる。また,全光型波長変換により,光のまま一括して変換することもできる。
【0138】
4.3.他の多重化方式の利用
上記の如く,本願は波長分割多重を利用した情報配信システム及び情報配信方法であり,波長分割多重における多重チャネル数を増加させることにより,伝送容量の増大を図ることができる。また,より一層情報配信を大容量化・高速化するためには,波長分割多重以外の多重化を組み合わせることが可能である。例えば,光時分割多重(OTDM:Optical TDM)方式を利用することにより,1チャネルあたりの伝送速度を高速化することができる。また,光符号分割多重(OCDM:Optical Code Division Multiplexing)方式を利用することにより,同じ時間に同じ波長帯域で,多くのチャネル信号を多重することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の情報配信システム及び情報配信方法は,例えば,テレビやインターネットによる様々な動画の配信を行う光通信や電気通信の分野で利用できる。また,本発明の情報配信システム及び情報配信方法は,テレビ会議システムなどの双方向通信を行う光通信や電気通信の分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は,本発明の実施の形態に係る情報配信システムの概略を示す構成図である。
【図2】図2は,本発明の実施の形態に係る情報配信システムの表示装置の実例を示す図である。
【図3】図3は,本発明の実施の形態に係る情報配信システムの送信機及び受信機の概略を示す構成図である。
【図4】図4は,本発明の実施の形態に係る情報配信システムの構成の一部に適用され得る,光電気発振器の概略を示す構成図である。
【図5】図5は,本発明の実施の形態に係る光電気発振器を導波する光信号の状態を示す概念図であり,周波数f0の入力信号光が光SSB変調器により周波数f0+fmの光信号に変調された状態を示す図である。
【図6】図6は,本発明の実施の形態に係る光電気発振器の他の変形例において,この光電気発振器を導波する光信号の状態を示す概念図であり,周波数f0の入力信号光が光DSB−SC変調器により周波数f0±fmの光信号に変調された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0141】
10 送信機
12 受信機
14 画面
14A〜14H 表示領域
16 表示装置
18 情報配信システム
20 合波器
22 分波器
27 光伝送路
30 送信符号処理部
32 E/O変換部
34 O/E変換部
36 受信符号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長を有する複数の光信号による画像情報を合波して光伝送路(27)に送出する送信機(10)と,
前記光伝送路(27)を介して受信した光信号を,互いに異なる波長を有する複数の光信号に分波する受信機(12)と,
前記受信機(12)に接続され,前記受信機(12)によって分波された前記複数の光信号のそれぞれに対応する画像を表示する,前記異なる波長のそれぞれに対応づけられた複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)を有する表示装置(16)と,
を具備する情報配信システム(18)。
【請求項2】
前記送信機(10)は,光源と,前記光源から出力された光の周波数を所定量変位させる副搬送波多重(SCM)変調器と,前記光源から出力された光の周波数を前記副搬送波多重変調器により変調させることを繰り返すことで,周波数がずれた複数の光信号を得て,得られた互いに異なる波長を有する複数の光信号に画像情報を載せる情報付与部と,を具備する請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項3】
前記送信機(10)に接続され,撮像した画像を複数の領域に分割し,各領域の画像情報を前記異なる波長のそれぞれに割り当てて前記送信機(10)に与える撮像装置をさらに具備する,請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項4】
前記表示装置(16)は複数の表示領域を含むものであり,前記異なる波長の波長数に応じて前記表示領域の数が変動する,請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項5】
前記光伝送路(27)として,光ファイバを用いる,請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項6】
前記光伝送路(27)は,波長割当部を有するノードを有し,
前記ノードの波長割当部は,前記送信機(10)から送信された複数種類の波長の光信号の波長変換を行い,出力する,
請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項7】
前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長のそれぞれに対応する,複数のモニタ又は複数の表示領域(14A〜14H)の対応関係を制御するための表示部位制御装置を具備する,請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項8】
前記受信機(12)又は前記表示装置(16)は,前記異なる波長の波長数に応じて前記複数の光信号のそれぞれの画像情報の画像解像度を制御するための解像度制御部を具備する,請求項1に記載の情報配信システム(18)。
【請求項9】
前記表示装置(16)は,前記受信機(12)により分波された複数の光信号のそれぞれに対応する画像処理用回路を具備する,請求項1に記載の情報配信システム(18)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−263267(P2008−263267A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102604(P2007−102604)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】