説明

惣菜用大豆蛋白素材

【課題】攪拌力の弱い混練機を使用しても均一に分散し、生地の保型性が高く、一方加熱後は豆腐的な軟らかい食感が得られる、各種惣菜や豆腐惣菜用の大豆蛋白素材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は大豆蛋白原料、油脂及びι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンを含み、当該カラギーナンが散在して存在することを特徴とする大豆蛋白素材である。また、有機酸塩を使用することが好ましく、ι(イオタ)カラギーナンは1.5重量%水溶液、25℃条件下でゲル化するものを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニーダーやミキサー等の攪拌力の弱い混練においても生地中にダマが残らず均一に分散し、加熱前の生地保型性を向上させ、さらに豆腐様のソフトな食感を各種惣菜、特に豆腐惣菜に付与することができる、各種惣菜、特に豆腐惣菜に適する大豆蛋白素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大豆蛋白質は各種の惣菜、特に豆腐惣菜には一般的に使われている素材である。豆腐惣菜は、豆腐ハンバーグや豆腐コロッケなど、豆腐を利用した加熱加工食品であり、豆腐様の軟らかい食感が特徴であり、この軟らかい食感が常に求められる。この豆腐様の軟らかい食感を付与するためには、多くの場合、その加熱前の生地も柔らかくする必要がある。しかし、生地が柔らかいと保型性が低下し、豆腐惣菜を工業的に生産する際の機械適性が得られない場合が多い。そこで、生地の保型性を向上させる必要が生じるが、単に生地の保型性を向上させためにゲル化剤等を用いると、加熱後の食感が硬くなり、豆腐的なソフトな食感とは異なってしまう問題が生じる場合がある。以上より、生地に保型性を付与しつつ、加熱後は豆腐的な軟らかい食感を得るという2つの条件を満足する豆腐惣菜に適する素材が求められている。
【0003】
豆腐惣菜と同様に、従来から大豆蛋白質素材を使用していたハンバーグなどの惣菜においても、従来からある大豆蛋白質を使用した場合は加熱前の生地が柔らかく成形が困難となる場合がある。そして豆腐惣菜と同様に、生地にゲル化剤を添加することで生地に一定の硬さを付与することはできる一方、加熱後の食感が硬くなるという問題があった。よって、豆腐惣菜以外の惣菜においても、生地保型性を付与しつつ、過熱後は柔らかい食感を得るという2つの条件を満足する素材が求められている。
【0004】
生地に保型性を付与しつつ、加熱後は豆腐的な軟らかい食感を得る豆腐惣菜をはじめとする惣菜の製造方法として、ゲル化剤あるいは粘性多糖類を用いる発明が幾つか出願されている。例えば、豆腐ハンバーグ製造工程において、カードランを用いてハンバーグ型抜きの際の保型性を向上させ、焼成後もソフトな食感を有する豆腐ハンバーグ及びその製造法(特許文献1:特開平10−146176号公報)が出願されている。しかしながら特許文献1で使用しているカードランは、加熱して初めてゲルを形成するゲル化剤であり、生地の段階での保型性への寄与は少ない。そして、特許文献1の請求項3で「−5℃〜0℃でカードランを混合し・・・」と記載されている通り、生地を低温にすることで、その保型性向上を図っている。そのため、夏場など、生地の温度が上がりやすい環境下では適用は難しい。
【0005】
保水性や成型性を保持しつつ、かつ、ジューシーで柔らかい、好ましい食感を有する惣菜タイプ畜肉加工品として、ιカラギーナン及び加熱ゲル化性蛋白質を含む発明(特許文献2:特開2002−101853号公報)が出願されている。ιカラギーナンはゲル強度はκカラギーナンより弱いもののゲルを形成するものが一般的であるが、この発明に用いられているιカラギーナンは、その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しないものと記載されている。そのため、特定のιカラギーナンのみしか適用することができず、汎用性が低い。
【0006】
ところで、豆腐ハンバーグなどの豆腐惣菜は、豆腐、大豆蛋白素材、畜肉等を原料として工業的に大量生産されるが、攪拌力の弱い混練機を使用した場合、原材料が十分に分散、水和せずママコが生じ、大豆蛋白素材の有する機能が十分に発揮されない弊害がある。特に中小企業においては、攪拌力の強い混練機を設備していない場合が多く、問題となる場合が多い。なお、攪拌力の弱い混練機としてはニーダー、ケンウッドミキサー等が、また攪拌力の強い混練機としてはサイレントカッター、ボールカッター、ステファンカッター、ロボクープ、フードカッター等が例示できる。そしてこのような状況は、従来から大豆蛋白質素材を使用していたハンバーグなどの惣菜においても、事情は同じである。
【0007】
大豆蛋白の分散性を改善した大豆蛋白素材として、プロテアーゼ処理した大豆蛋白に対して油脂を乳化させた大豆蛋白素材(特許文献3:特開平8−154593号公報)に関する出願がある。しかしながら特許文献3はピックル液用の大豆蛋白素材に関するものであり、豆腐惣菜等の生地における保型性などに関してはなんら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−146176号公報
【特許文献2】特開2002−101853号公報
【特許文献3】特開平8−154593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大豆蛋白質素材が従来から好適に使用されている各種の惣菜や豆腐惣菜を工業的に生産する際に、攪拌力の弱い混練機にて大豆蛋白素材を使用する場合、分散性が悪くママコが生じ、大豆蛋白素材の保水性及びゲル形成性等の機能が十分に発揮されない問題が生じる。また各種惣菜、特に豆腐惣菜においては豆腐的な軟らかい食感にするためには、生地を柔らかくする必要があるが、この場合、生地の保型性が低下し、豆腐惣菜等を工業的に生産する際の機械適性がない場合が多い。反対に、生地の保型性を向上させるためにゲル化剤等を添加すると、加熱後の食感が硬くなり、ソフトな食感が得られない。したがって、本発明の課題は、生地の調製に攪拌力の弱い混練機を使用しても均一に分散し、生地の保型性が高く、加熱後も軟らかい食感の豆腐惣菜や各種惣菜が得られる、豆腐惣菜や各種惣菜の製造に適した大豆蛋白素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題を解決すべく、まず生地に保型性を付与するために、カードラン、カラギーナンなどのゲル形成性多糖類を大豆蛋白素材と組み合わせることを検討した。鋭意研究するなかでカラギーナンのなかでもゲル形成性のないλカラギーナンは目的を達成することはできず、またゲル形成性のあるκカラギーナンでは、満足いく食感が得られず、ιカラギーナン、好ましくはκカラギーナンとιカラギーナンを組み合わせると保型性を満足しながら軟らかい食感も満足することができるとの知見を得た。ここで驚いたのは、大豆蛋白質との混合素材を調製する場合の一般的な製造方法である、大豆蛋白原料とιカラギーナンを水溶液となして溶液化した後噴霧乾燥して得た粉状大豆蛋白素材では、生地における十分な保型性が得られない一方、大豆蛋白粉末とιカラギーナン粉末を粉体のまま混合して得た粉状大豆蛋白素材を使用することで、生地に十分な保型性が得られ、かつ軟らかい食感が得られたことである。
【0011】
しかしそれでも、攪拌力の弱い混練機を用いた場合は、豆腐惣菜をはじめ各種惣菜の生地を製造する段階でダマができる場合もあった。そこで更に鋭意研究を重ねるなかで、大豆蛋白原料、油脂及び水をエマルジョンとなして噴霧乾燥した粉状大豆蛋白エマルジョンパウダーに粉状カラギーナンを混合したものが前記課題を解決できる知見を得た。さらに研究を重ねカラギーナンを油脂に散在させて粉状大豆蛋白の表面に噴霧造粒させた造粒大豆蛋白も前記課題を解決できる知見を得た。また、有機酸塩を併用することで、食感をさらに改善できる知見が得られた。
【0012】
以上のことから、大豆蛋白原料、油脂及び、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンを含むことが必須であること、大豆蛋白原料と、当該カラギーナンが水系下に溶解した後粉末化したのでは効果がなく、各々が散在して存在することが必須であるとの知見、および、有機酸塩の併用が、食感を改善する上で効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、
(1)大豆蛋白原料、油脂及び、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンを含み、カラギーナンの量が、0.4〜7.0重量%であり、当該カラギーナンが散在して存在することを特徴とする大豆蛋白素材。
(2)大豆蛋白原料と、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンが散在して存在する態様が、大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末に当該カラギーナンを混合してなるものである、(1)記載の大豆蛋白素材の製造法。
(3)大豆蛋白原料と、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンが散在して存在する態様が、大豆蛋白原料の表面に油脂と当該カラギーナンが付着造粒されてなるものである、(1)記載の大豆蛋白素材の製造法。
(4)油脂の量が8.0〜42.0重量%である(1)〜(3)いずれか1つに記載の大豆蛋白素材。
(5)有機酸塩の量が、0.03〜1.20重量%である(1)〜(4)いずれか1つに記載の大豆蛋白素材。
(6)ι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2/8〜10/0の混合比率である、(1)〜(5)いずれか1つに記載の大豆蛋白素材。
(7)ιカラギーナンが1.5重量%水溶液、25℃条件下でゲル化する(1)〜(6)いずれか1つに記載の大豆蛋白素材。
(8)豆腐惣菜用である、(1)〜(7)いずれか1つに記載の大豆蛋白素材。
に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により得られた大豆蛋白素材を使用することで、豆腐惣菜をはじめとする、従来から大豆蛋白素材を使用する惣菜において、攪拌力の弱い混練機を使用しても均一に分散し、生地の保型性が高いため機械適性が優れる一方、加熱後も軟らかい食感の惣菜が得られるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、攪拌力の弱い混練機を使用しても均一に分散し、保型性が高く、豆腐的な軟らかい食感に改善する豆腐惣菜や各種惣菜に適した大豆蛋白素材およびその製造法に関するものである。当該豆腐惣菜や各種惣菜に適した大豆蛋白素材は、大豆蛋白原料、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナン及び油脂を構成要件とし、望ましくは有機酸塩を含むものである。
以下、各構成要件について概説する。
【0016】
本発明における大豆蛋白素材は各種惣菜、特に豆腐惣菜に適したものである。豆腐惣菜としては、豆腐ハンバーグ、豆腐コロッケ、豆腐焼売等をあげることができ、豆腐を必須成分として肉類(畜肉、魚肉)も適宜用いた加工食品全般を指す。豆腐惣菜に使用する豆腐は特に使用の制限は無く、例えば、木綿豆腐、絹ごし豆腐、脱水豆腐、冷凍豆腐等が挙げられる。豆腐惣菜に使用する肉類も特に使用の制限は無く、例えば、畜肉であれば鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉等が挙げられ、魚肉であれば、鰯、ホッケ、タラ、ハモ等が挙げられる。これらを単独または混合して用いることが出来る。
【0017】
本発明で言う、豆腐惣菜以外の惣菜とは、従来から大豆蛋白を原料として使用していた惣菜であり、具体的にはハンバーグ、ソーセージ等を列挙することができる。
本発明で言う「・・・カラギーナンが散在して存在する・・」の「散在」とは、本発明で示す大豆蛋白素材において、大豆蛋白原料とカラギーナンを同一水系中に共存、溶解後にスプレードライ等の乾燥を行うものではなく、一例を挙げると、大豆蛋白原料の粉体と、カラギーナンの粉体を粉体混合するもの、つまり、ミクロで見た場合、一つの粉体粒子中に大豆蛋白原料とカラギーナンが共存するものではなく、大豆蛋白原料の粉体とカラギーナンの粉体が、混ざった状態を指す。
【0018】
(大豆蛋白原料)
本発明に用いる大豆蛋白原料は、例えば全脂大豆粉、脱脂大豆、全脂豆乳、脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白等から、1種或いは2種以上の混合物を選択することができる。特に、分離大豆蛋白を用いた場合、豆腐惣菜や各種惣菜生地の保水力が高くなるため好ましい。
【0019】
(カラギーナン)
本発明に用いるカラギーナンは、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンで、その量は大豆蛋白素材内に0.4〜7.0重量%が好ましい。0.4重量%未満の場合、豆腐惣菜や各種惣菜生地の保型性向上効果が低く、7.0重量%を超えると豆腐惣菜や各種惣菜生地の保型性向上効果は認められるが、最終製品において食感に粘りが強く表れる場合がある。また、ιカラギーナンとκカラギーナンを併用することで豆腐惣菜や各種惣菜生地の保型性を向上し、さらにιカラギーナン単独使用で表れる、食感のやや好ましくない粘りを低減することが出来る。ιカラギーナンとκカラギーナンの割合は重量比で、ι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2.0/8.0〜10/0が好ましい。より好ましくはι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2.5/7.5〜7.5/2.5である。
使用するιカラギーナンは、1.5重量%水溶液、25℃条件下でゲル化するものが適当である。このためには、カルシウム含有量が0.05重量%以上のものが好ましく、より好ましくはカルシウム含量が0.1重量%をこえるものである。
【0020】
(油脂)
本発明に用いる油脂は、パーム油、ヤシ油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、サフラワー油、米ぬか油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、魚油、その他の獣脂等の動物性油脂、これらの分別、硬化、エステル交換油脂等から、1種類あるいは2種類以上の混合物を用いることが出来る。油脂添加量は大豆蛋白素材中8.0〜42.0重量%が、攪拌力の弱い混練機での十分な分散性が得られ、高い保型性及び軟らかい食感も得られ好適である。8.0重量%よりも少ないと、攪拌力の弱い混練機で混合した場合、ママコになり保型性向上効果が得られない場合が多く、食感においても粉っぽさが表れる場合が多い。42.0重量%よりも多いと、分散性は良好だが、豆腐惣菜や各種惣菜生地の保型性が低下する場合が多い。
【0021】
(有機酸塩)
本発明は有機酸塩を併用することで、より好ましい効果が得られる。すなわち、有機酸塩の併用により得られる豆腐惣菜や各種惣菜は、有機酸塩を併用しない場合に比べ、好ましくない食感の粘りを低減することができる。有機酸塩の例としては、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、L-酒石酸ナトリウム等が挙げられる。有機酸塩の配合量は、目標とする品質に応じて当業者が適宜設定すればよい。ただ配合量が多くなる程、有機酸塩由来の刺激的な味を感じやすくなる傾向となるため、十分な添加効果を得られる配合量の目安としては、本発明の大豆蛋白素材中0.03〜1.2重量%が好ましい。
なお本発明において前記以外にその他の原料を併用することを妨げない。その他の原料の例としては、調味料、糖類、食物繊維、ゲル化剤、ガム質、色素、その他公知の添加剤等を本発明の目的の範囲内で任意に用いることができる。
【0022】
次に、本発明の大豆蛋白素材の製造法について説明する。
1つは、大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末にカラギーナンを混合することを特徴とする大豆蛋白素材の製造法である。もう1つは、カラギーナンを油脂に散在させて大豆蛋白原料に噴霧造粒することを特徴とする大豆蛋白素材の製造法である。ポイントは大豆蛋白原料とカラギーナンが散在して存在するように製造することである。従って、カラギーナンと大豆蛋白原料を水溶液中に溶解、混合してしまったり、カラギーナン、大豆蛋白原料、油脂及び水を乳化してしまうと散在状態ではなくなるので、この溶液や乳化液を噴霧乾燥して得られる大豆蛋白素材は目的の効果を奏することができない場合が多い。
以下各々の製造法について説明する。
【0023】
まず、大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末にカラギーナンを混合することを特徴とする大豆蛋白素材の製造法について説明する。大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末を調製するためには、まず大豆蛋白原料と油脂の乳化液を調製する。この方法は特に限定されるものではなく、例えば、ホモミキサーにて大豆蛋白原料、油脂及び水を軽く乳化させた後、高圧ホモゲナイザーで乳化処理を行っても良い。乳化液調製の際には、適宜乳化剤、糖類、澱粉類、調味料、有機酸塩をはじめとる塩類等を大豆蛋白素材の保型性及び食感等に悪影響のない範囲で添加しても良い。得られた乳化液を噴霧乾燥などで乾燥することにより、大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末が得られる。この乳化粉末とカラギーナンを粉体混合することで、目的とする大豆蛋白素材を得ることができる。有機酸塩に関しては、この粉体混合する際に同時に添加することも可能である。
【0024】
粉体同士を混合する方法としては、混合させたい粉体を一つの容器に入れ、容器自体を回転させるタイプ、また混合させたい粉体を入れた容器の中で混合羽根で攪拌することにより混合させるタイプ、また、気流により攪拌混合するタイプなど各種の混合装置による方法が知られているが、いずれの方法も適用可能である。
【0025】
次に、カラギーナンを油脂に散在させて大豆蛋白原料に噴霧造粒することを特徴とする大豆蛋白素材の製造法について説明する。まずカラギーナンを油脂に散在させる必要があるが、これはミキサー等、公知の攪拌装置を使用することができる。このカラギーナンが散在した油脂を大豆蛋白粉末に噴霧して本発明の大豆蛋白素材を製造することができる。
【0026】
以上の2つの態様により製造された大豆蛋白素材は乾燥された粉末状であるが、その水分含量は、保存中に腐敗しない程度であれば特に限定するものではなく、通常、3〜12重量%程度、好ましくは4〜6.5重量%である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
実験1「予備検討1〜6」
まず、本発明の大豆蛋白素材において、分散性を付与するために必要な油脂の最適な量を確認すべく、カラギーナン等を加えない単純化された系にて検討を行った。
【0028】
方法
不二製油(株)製の脱脂大豆10kgに15重量倍の水を加え、1NのNaOHでpH7.5に調整し、室温で1時間ミキサーを用いて攪拌抽出を行った後、遠心分離機(1000g×10分)を用いてオカラ成分を除去し、脱脂豆乳を得た。これに1NのHClを加えて、pH4.5に調整し、蛋白成分を等電点沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収し、分離大豆蛋白カードを得た。本カードのカード固形分は約30重量%であった。本カードを固形分12重量%の濃度になるよう加水し、1NのNaOHを用いて溶液pHを7.3に中和を行った。次いで、この中和蛋白溶液100重量部に対し、分別パーム油(不二製油株式会社製:パームエース10)を、表1上段の配合割合にて添加し、ミキサーにて分散させた後、高圧ホモゲナイザーにて乳化した。その後、殺菌処理を行い、噴霧乾燥により粉末状大豆蛋白を得た。得られた粉末状大豆蛋白を使用し、豆腐惣菜の生地を調製することで、粉末状大豆蛋白の分散性、保型性を評価した。
分散性、保型性の評価方法は以下の通りである。
【0029】
表1 大豆蛋白素材に対する油脂配合量の検討

(分散性)
分散性評価は、10℃の水400gにサンプル100gを加え、ケンウッドミキサー(愛工舎製)を用いて5分間、最低の回転数で攪拌分散させた後、20g中の5mm以上のダマの数を数え評価実施した。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表し、×以外は合格である。具体的には、分散性は5mm以上のダマなしを良好とし、多数のダマが存在する場合を不良とした。
(保型性)
保型性評価は、10℃の水250g、大豆油(不二製油製、大豆白絞油)100g、にサンプル100g、フードカッターにてペースト状にした冷凍豆腐(不二製油製、トーフリーズH)100gを加え、ケンウッドミキサーを用いて3分間、最低の回転数で攪拌分散させた後、亀甲容器に約80g充填、5分後、生地の硬さをレオナー(ヤマデン製)にて測定した。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。具体的には、生地がまとまり硬いものを良好、生地が軟らかく機械適性がないものを不良とした。
【0030】
(結果)
油脂含有量4.8重量%(予備検討1)では、生地調製においてダマが多数認められ、分散性は好ましくなかった。油脂含有量9.1重量%(予備検討2)では、生地調製において若干のダマが認められたが、使用可能な範囲であると判断した。油脂含有量23.1重量%(予備検討3)〜油脂含有量41.2重量%(予備検討5)の範囲においては分散性は合格範囲内であった。油脂含有量44.4重量%(予備検討6)では分散性は合格であるが、保型性が極端に悪く、今後ゲル化剤等によっても保型性を改善できる見込みはないと判断された。
以上より、大豆蛋白素材における油脂の配合量は、8.0〜42.0重量%が好ましいと判断された。
【0031】
実験2「実施例1、比較例1〜6」
(各種増粘多糖類の添加効果)
予備検討3で得られた粉末状大豆蛋白へ、各種増粘多糖類を表2の配合割合にて添加し粉体混合を行い、大豆蛋白素材を得た。
増粘多糖類は以下のものを用いた。
・グアガムは三栄源エフ・エフ・アイ製「D−20」を用いた。
・キサンタンガムは三栄源エフ・エフ・アイ製「D−3000」を用いた。
・ιカラギーナンはマリンサイエンス製「SP−100」を用いた。
・κカラギーナンはマリンサイエンス製「KK−9」を用いた。
・ラムダカラギーナンはマリンサイエンス製「NL−V」を用いた。
・カードランは武田キリン製「カードラン」を用いた。
保型性の評価は、実験1と同様の方法で、また、食感(硬さ、粘り)評価は、以下の方法により、それぞれ実施した。
【0032】
(食感:硬さ)
食感評価(硬さ)は、10℃の水250g、大豆油(不二製油製、大豆白絞油)100g、に予備検討3で得られたサンプル100g、フードカッターにてペースト状にした冷凍豆腐(不二製油製、トーフリーズH)100gを加え、ケンウッドミキサーを用いて3分間、最低の回転数で攪拌分散させた後、脱気、ケーシングに充填後、コンベクションオーブンにて90℃、10分間蒸し加熱を行いゲルを調製した。一晩冷蔵後、ゲルの硬さはレオナー(ヤマデン製)を用いて破断荷重を測定した。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。具体的には、食感が豆腐的な軟らかいものを良好、硬く豆腐的な食感とは異なるものを不良とした。×以外は合格である。
【0033】
(食感:粘り)
食感評価(粘り)は、食感評価(硬さ)と同様の方法にてゲルを調製し、官能評価にて食感(粘り)の評価を行った。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。×以外は合格である。具体的には、食感の粘りが少ないものを良好、粘りが強いものを不良とした。
【0034】
表2 増粘多糖類添加効果

(結果)
表2の通り、グアガム(比較例2)、キサンタンガム(比較例3)、λカラギーナン(比較例5)、カードラン(比較例6)は、無添加区(比較例1)に比べて保型性向上効果は認められなかった。ιカラギーナン添加区(実施例1)は保型性向上し、豆腐的な軟らかい食感となっていた。κカラギーナン(比較例4)においてもιカラギーナン(実施例1)と同等の保型性向上効果は認められたが、食感が若干硬くなる傾向にあり、単独での使用においては豆腐様惣菜をはじめとする惣菜用として好ましい食感ではなく不適であった。
【0035】
実験3「実施例1〜3、比較例1、7」
(ιカラギーナン配合量の検討)
予備検討3で得られた粉末状大豆蛋白に対し、ιカラギーナン(マリンサイエンス製、SP−100)を表3の配合割合にて添加し粉体混合を行い、大豆蛋白素材を得た。分散性、保型性及び食感(硬さ、粘り)評価は、実験1,2と同様の手順で行った。
表3 ιカラギーナン配合量の検討

【0036】
(結果)
表3の通り、ιカラギーナンを添加する事により、保型性は向上する傾向にある。ιカラギーナン0.5重量%(実施例2)においては、若干保型性は弱いが、使用可能な範囲であった。ιカラギーナン2〜5.7重量%(実施例1,3)においては、保型性及び食感(硬さ)は合格範囲であったが、食感(粘り)は実施例2には若干劣るものの、使用可能な範囲であった。ιカラギーナン7.4重量%(比較例7)においては保型性及び食感は合格範囲であるが、粘りが強く感じられ好ましくなかった。ιカラギーナン添加量は、大豆蛋白素材中、0.4〜7.0重量%が好ましいと判断された。
【0037】
実験4「実施例1,4〜6、比較例1、8」
(κカラギーナンとιカラギーナン併用効果の検討)
予備検討3で得られた粉末状大豆蛋白に対し、ιカラギーナン(マリンサイエンス製、SP−100)とκカラギーナン(マリンサイエンス製、KK−9)を表4の配合割合にて添加し粉体混合を行い、大豆蛋白素材を得た。
分散性、保型性及び食感(硬さ、粘り)評価は、実験1,2と同様の手順で行った。
表4 κカラギーナンとιカラギーナン併用割合

【0038】
(結果)
ιカラギーナン/κカラギーナン=10/0(実施例1)は、保型性及び食感(硬さ)は合格であるが、食感(粘り)は使用可能範囲ではあるものの、若干劣る。ιカラギーナン/κカラギーナン=0/10(比較例8)は保型性、食感(粘り)は合格であるが、食感(硬さ)が不良であり、不合格である。ιカラギーナン/κカラギーナン=7.5/2.5(実施例4)の場合、ιカラギーナン単独添加区に比べて食感(粘り)は改善効果が認められた。ιカラギーナン/κカラギーナン=5/5(実施例5)の場合、ιカラギーナン単独添加区に比べて食感(粘り)も良好であった。ιカラギーナン/κカラギーナン=2.5/7.5(実施例6)の場合、食感(粘り)は合格範囲であるが、食感(硬さ)が使用可能範囲ではあるものの若干劣ってくる。保型性、食感(硬さ)、食感(粘り)を考慮するとιカラギーナンとκカラギーナンの割合は重量比で、ι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2/8〜10/0が好ましいと判断された。より好ましくはι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2.5/7.5〜7.5/2.5である。
【0039】
実験5「(実施例1)、比較例1、9」
(ιカラギーナン種類の検討)
予備検討3で得られた粉末状大豆蛋白に対し、ゲル形成性タイプのιカラギーナン-1(マリンサイエンス製、SP−100)又は非ゲル化タイプのιカラギーナン-2(三栄源エフ・エフ・アイ製、ゲルリッチNo.3)を表5の配合割合にて添加し粉体混合を行い、大豆蛋白素材を得た。なお、ιカラギーナン2(三栄源エフ・エフ・アイ製、ゲルリッチNo.3)は特許文献2にて使用されているものである。分散性、保型性及び食感(硬さ、粘り)評価については、実験1,2と同様の手順で行った。
表5 ιカラギーナンの種類

【0040】
(結果)
ゲル形成性タイプのιカラギーナン-1(SP−100)(実施例1)は保型性が高く、食感もソフトで良好な結果が得られた。一方、非ゲル化タイプのιカラギーナン-2(ゲルリッチNo.3)(比較例9)は、ιカラギーナン-1(SP−100)に比べると保型性向上効果が低く不良であった。保型性向上のためには、ゲル化タイプのιカラギーナンを用いることが必須である。
【0041】
ここで試験した、各ιカラギーナンのカルシウム量を測定したところ、マリンサイエンス製、SP−100は0.43重量%であるのに対し、三栄源エフ・エフ・アイ製、ゲルリッチNo.3は0.01重量%であった。また、各ιカラギーナンを1.5重量%水溶液、25℃条件下でゲル化するかを確認したところ、マリンサイエンス製SP−100はゲルを形成したが、三栄源エフ・エフ・アイ製、ゲルリッチNo.3はゲルを形成しなかった。
【0042】
実験6「実施例5,7、比較例1、10」
(ιカラギーナン添加方法の検討)
実施例5は、予備検討3で得られた粉末状大豆蛋白98重量%に対し、ιカラギーナン、κカラギーナン各1重量%を粉体混合した。実施例7は、予備検討3において、分別パーム油を加えることなく、その他の手順は同じにして得られた粉体(粉体A)を用い、この粉体Aと、分別パーム油(不二製油株式会社製:パームエース10)91.9重量%へιカラギーナン/κカラギーナン=5/5の混合粉体8.1重量%加え、ミキサーにて均一化したものを、流動層造粒装置(大河原製作所製)に仕込み、造粒を行った。なお造粒する際には、粉体A 75.4重量%、分別パーム油へカラギーナンを分散させた懸濁液24.6重量%とし、結果として大豆由来固形物、油脂、カラギーナンの量比が実施例5と同じになるようにした。
【0043】
比較例10は、予備検討3の粉末状大豆蛋白を調製する過程で得られる、固形分12重量%の中和蛋白溶液96.23重量%、分別パーム油(不二製油株式会社製:パームエース10)3.46重量%、ιカラギーナン/κカラギーナン=5/5の混合粉体0.31重量%をミキサーにて溶解混合した後、予備検討3同様、高圧ホモゲナイザーにて乳化した。その後、殺菌処理を行い、噴霧乾燥により粉末状大豆蛋白を得た。
表6 カラギーナン添加方法

【0044】
(結果)
粉体混合(実施例5)及び油分散造粒添加(実施例7)の場合、保型性向上効果が認められた。また、食感(硬さ、粘り)とも良好であった。一方で、水溶解し噴霧乾燥した場合(比較例10)は粉体混合及び油分散造粒添加で認められた、保型性向上効果は認められなかった。カラギーナンの添加方法としては、大豆蛋白素材に対して粉体混合又はカラギーナンを油に分散させて造粒添加する方法が必須である。
【0045】
実験7「実施例5,8〜10」
(有機酸塩添加効果の検証)
予備検討3と同様にして調製した粉末状大豆蛋白に対し、ゲル形成性タイプのιカラギーナン(マリンサイエンス製、SP−100)とκカラギーナン(マリンサイエンス製、KK−9)、さらにクエン酸三ナトリウム(上野製薬製)を表7の配合割合にて添加し、粉体混合を行い、大豆蛋白素材を得た。分散性、保型性及び食感(硬さ、粘り)評価については、実験1,2と同様の手順で行った。風味は、保型性等を評価する際のゲルをパネラーにて官能評価した。○は良好、△はやや劣るものの使用可能範囲、×は不可とし、×以外を合格とした。
表7 有機酸塩添加効果の検証

【0046】
結果
クエン酸3ナトリウム添加により、好ましくない食感の粘りはより低減し、良好である。クエン酸3ナトリウム0.05〜0.1重量%添加区(実施例8,9)では保型性及び食感(硬さ)は合格範囲内であり、食感(粘り)は無添加区(実施例5)に比べて低減され、好ましい。クエン酸3ナトリウム1.0重量%添加区(実施例10)では保型性及び食感(硬さ)、食感(粘り)は合格範囲内であるが、風味においてクエン酸3ナトリウムの嫌味が若干感じられる傾向にあった。有機酸塩の十分な添加効果を得られる配合量の目安としては、大豆蛋白素材中0.03〜1.2重量%が好ましく、より好ましくは大豆蛋白素材中0.03〜1.0重量%である。
【0047】
実験8「実施例11、比較例11」
(豆腐ハンバーグでの評価)
一般的に惣菜用途に用いられる分離大豆蛋白「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製)と実施例9の大豆蛋白素材について、実際に豆腐ハンバーグに配合した時の効果検証を行なった。
下記豆腐ハンバーグ配合表(表8)の割合にて、氷水、大豆油(不二製油製、大豆白絞油)、粉末状大豆蛋白「ニューフジプロSE」又は実施例9のサンプル、木綿豆腐を加え、ケンウッドミキサーを用いて3分間混合した。これに、下記豆腐ハンバーグ配合(表8)の残りの素材を加え、ケンウッドミキサーにて2分間混合し、豆腐ハンバーグ生地を調製した。このハンバーグ生地を、日本キャリア製ドラム成型機にて60gずつ小判状に打ち抜き成形し、オーブンで95℃10分間(中心温度80℃)蒸し加熱を行い、冷却後、ショックフリーザーにて急速凍結を行い、豆腐ハンバーグを製造した。
【0048】
豆腐ハンバーグの成形性評価は、ドラム成型機にて打ち抜きが可能であり、打ち抜き後に生地のへたりがないものを良好とし、生地が軟らかく打ち抜き成型不可能を不良とした。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。大豆蛋白素材の分散性評価は、豆腐ハンバーグ生地中に、大豆蛋白素材が均一に分散しダマが認められない場合を良好、豆腐ハンバーグ生地中にダマが多数存在する場合を不良とした。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。得られた豆腐ハンバーグについて食感の官能評価を行った。10名の専門パネラーにより、試食評価を行った。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。食感については、粘りが少なく豆腐的なソフト感のあるものを良好とし、硬く豆腐的な食感から遠いものを不良とした。
【0049】
表8 豆腐ハンバーグ配合

結果
分離大豆蛋白「ニューフジプロSE」を使用した場合(比較例11)は、生地における分離大豆蛋白の分散性が悪く、豆腐ハンバーグ生地中に水和していない分離大豆蛋白のダマが残り好ましくない結果であった。さらに、分離大豆蛋白がママコとして残るため、分離大豆蛋白の機能が十分に発揮されず、加熱前生地が軟らかく保型性においても不合格であった。一方、本願大豆蛋白素材「実施例9」を使用した豆腐ハンバーグ(実施例11)は、生地における当該大豆蛋白素材の分散性も良く、加熱前の生地が硬く保型性が改善されており、食感においても豆腐的なソフトで良好な食感が得られ、優れていた。
【0050】
実験9「実施例12、比較例12」
(ハンバーグでの評価)
豆腐惣菜以外の、大豆蛋白質を使う一般的な惣菜として、ハンバーグを対象とした効果検証を行った。
一般的にハンバーグ用途に用いられる粉末状大豆蛋白質「サンラバー10」(不二製油(株)製)と実施例9の大豆蛋白素材について、実際にハンバーグに配合した時の効果検証を行なった。
下記豆腐ハンバーグ配合表(表9)の割合にて、氷水、粉末状大豆蛋白「サンラバー10」又は実施例9のサンプルを加え、ケンウッドミキサーを用いて3分間混合した。これに、下記ハンバーグ配合(表9)の残りの素材を加え、ケンウッドミキサーにて2分間混合し、ハンバーグ生地を調製した。このハンバーグ生地を、日本キャリア製ドラム成型機にて60gずつ小判状に打ち抜き成形し、オーブンで210℃6分間(中心温度80℃)焼蒸し加熱を行い、冷却後、ショックフリーザーにて急速凍結を行い、ハンバーグを製造した。
【0051】
ハンバーグの成形性評価は、ドラム成型機にて打ち抜きが可能であり、打ち抜き後に生地のへたりがないものを良好とし、生地が軟らかく打ち抜き成型不可能を不良とした。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。×以外は合格である。
得られたハンバーグについて食感の官能評価を行った。10名の専門パネラーにより、試食評価を行った。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。食感については、ソフトで歯切れが良いものを良好とした。×以外は合格である。
表9 ハンバーグ配合

【0052】
結果
粉末状大豆蛋白「サンラバー10」の場合、分散性及び食感は好ましいが、加熱前生地が軟らかく保型性は不合格であった。一方、実施例9のサンプルを使用したハンバーグは、加熱前の生地が硬く保型性が改善されており、食感においてもソフトで歯切れの良い食感であった。
【0053】
実験10「実施例13、比較例13」
(ソーセージでの評価)
豆腐惣菜以外の一般的な惣菜として、ソーセージを対象とした効果検証を行った。
粉末状大豆蛋白「ニューフジプロE」(不二製油(株)製)と実施例9のサンプルについて、実際にソーセージに配合した時の効果検証を行なった。
下記ソーセージ配合表(表10)の割合にて、肉原料、氷水、粉末状大豆蛋白「ニューフジプロE」又は実施例9のサンプルを加え、ケンウッドミキサーを用いて1分間混合し、その後、塩漬剤を添加し、2分間混合した。これに、下記ソーセージ配合(表10)の残りの素材を加え、2分間混合し、ソーセージ生地を調製した。このソーセージ生地を、スタッファーを使用しコラーゲンケーシングに充填し、スモークハウスにて乾燥・スモーク・蒸煮加熱を行い、ソーセージを製造した。
得られたソーセージについて食感の官能評価を行った。10名の専門パネラーにより、試食評価を行った。表中の◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良を表す。食感については、ソフトで歯切れが良いものを良好とした。
表10 ソーセージ配合

【0054】
結果
粉末状大豆蛋白「ニューフジプロE」を使用した比較例13のソーセージは、分散性が悪い影響からか粉っぽさを感じ、また大豆たん白のゲル機能が強く現れ、肉本来の食感質とは若干異なる食感傾向となった。一方、実施例9サンプルを使用した実施例13のソーセージは、比較例13と同等の加熱歩留まり及び保型性を維持しながら、食感において大豆たん白を高配合した場合の肉の食感を阻害する事は無く、歯切れの良い食感となり好ましかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、攪拌力の弱い混練機を使用しても均一に分散し、生地の保型性が高く、各種惣菜や豆腐惣菜の食感を柔らかくする効果のある大豆蛋白素材が得られるようになった。即ち、各種惣菜や豆腐惣菜を軟らかい食感が得られる配合にした場合でも、加熱前の生地の保型性が低下することがなく、各種惣菜や豆腐惣菜を工業的に生産する際の機械適性が問題とはならなくなった。
【0056】
従って小企業など攪拌力の弱い混練機しか保有していなくても、本発明の大豆蛋白素材を使用すれば分散性が改善されているのでママコが生じることがなく、大豆蛋白素材の保水性及びゲル形成性等の機能を十分に発揮させることができるようになった。従来大豆蛋白原料を用いて各種惣菜や豆腐惣菜を生産する場合、攪拌力の強い混練機でしか生産が困難であったものを、攪拌力の弱い混練機しか保有していない中小企業においても各種惣菜や豆腐惣菜を生産できるようになり、産業の発達に大いに寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆蛋白原料、油脂及び、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンを含み、カラギーナンの量が、0.4〜7.0重量%であり、当該カラギーナンが散在して存在することを特徴とする大豆蛋白素材。
【請求項2】
大豆蛋白原料と、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンが散在して存在する態様が、大豆蛋白原料と油脂の乳化粉末に当該カラギーナンを混合してなるものである、請求項1記載の大豆蛋白素材の製造法。
【請求項3】
大豆蛋白原料と、ι(イオタ)とκ(カッパ)あるいはι(イオタ)カラギーナンが散在して存在する態様が、大豆蛋白原料の表面に油脂と当該カラギーナンが付着造粒されてなるものである、請求項1記載の大豆蛋白素材の製造法。
【請求項4】
油脂の量が8.0〜42.0重量%である請求項1〜3いずれか1項に記載の大豆蛋白素材。
【請求項5】
有機酸塩の量が、0.03〜1.20重量%である請求項1〜4いずれか1項に記載の大豆蛋白素材。
【請求項6】
ι(イオタ)カラギーナン/κ(カッパ)カラギーナン=2/8〜10/0の混合比率である、請求項1〜5いずれか1項に記載の大豆蛋白素材。
【請求項7】
使用するιカラギーナンが、1.5重量%水溶液を冷却すると25℃条件下でゲル化するものである請求項1〜6いずれか1項に記載の大豆蛋白素材。
【請求項8】
豆腐惣菜用である、請求項1〜7いずれか1項に記載の大豆蛋白素材。

【公開番号】特開2009−297020(P2009−297020A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110225(P2009−110225)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】