説明

意匠シート

【課題】 燃焼時に有害ガスを発生せずVOCの少ない非ハロゲン系樹脂の意匠シートであって、プライマー処理、コロナ処理を施さなくても、樹脂層と意匠層との密着性がよく、しかも低コストの意匠シートを提供することである。
【解決手段】 非ハロゲン系樹脂100重量部に対して含水珪酸塩を20〜100重量部含有する樹脂組成物からなる樹脂層の上面に意匠層を積層することであり、さらに含水珪酸塩を含水珪酸アルカリ土類金属塩としたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマンションや住宅等の建築物に用いられる意匠シートに関し、さらに詳しくは非ハロゲン系樹脂を用いた意匠シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションや住宅等の建築物に用いられる意匠シートは、それぞれの用途に合わせた機能の他に装飾性の点から意匠性が重要視されている。これら意匠性と機能を満足させるものとして、従来からポリ塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン系樹脂を用いた意匠シートが使用されていた。
しかし、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系樹脂を使用した意匠シートは、装飾性は良いが焼却時に塩酸ガス等の有害ガスを発生したり、使用中に可塑剤が滲み出す等の問題があった。更に、ハロゲン系樹脂を用いた意匠シートは、揮発性有機化合物(以下、VOCと称する。)が比較的多く含まれているため、シックハウス症候群等の問題も指摘されている。
一方、ポリオレフィン系樹脂を単独またはブレンドした意匠シートの研究も数多くされている。しかし、ポリオレフィン系樹脂に印刷により意匠層を形成する場合、印刷インクは塩ビ系樹脂等の塩ビ用のものが多く、ポリオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂用のインクはない。そのため、塩ビ用の印刷インクをポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層の上に塗工するとインクがはじいたり、密着性が悪いという問題が生じる。この問題を解決するために印刷インクとポリオレフィン系樹脂との密着性をあげるために多くの研究がなされている(特許文献1、2参照)。特許文献1では、意匠層を積層する前にプライマーを塗布し、さらにプライマーの塗工性、密着性を向上するためにコロナ処理を施している。そのため製造工程が増加しコストアップに繋がってしまう。また、特許文献2では、印刷インクとの密着性を向上させるためにアクリル酸変性のスチレン系樹脂をポリオレフィン系樹脂に添加している。この方法では、プライマー処理、コロナ処理を施さなくてもよいが、アクリル酸変性のスチレン系樹脂を添加するため、樹脂が金属面に粘着しやすくなりカレンダー成形が困難となり成形の自由度が狭くなる。また、アクリル酸変性のスチレン系樹脂自体が高価なため、やはりコストアップになるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−310669号公報
【特許文献2】特開平9−48886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消し、樹脂層と意匠層との密着性がよくしかも低コストの意匠シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成する本発明に係る意匠シートは、非ハロゲン系樹脂100重量部に対して含水珪酸塩を20〜100重量部含有する樹脂組成物からなる樹脂層の上面に意匠層を積層することであり(請求項1)、
さらに、前記含水珪酸塩が含水珪酸アルカリ土類金属塩であることである。(請求項2)
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る意匠シートは、非ハロゲン系樹脂100重量部に対して、含水珪酸塩を20〜100重量部含有する樹脂組成物からなる樹脂層とすることで、意匠層と樹脂層との密着性および加工性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明に係る意匠シートは、基本的に、非ハロゲン系樹脂100重量部に対して含水珪酸塩を20〜100重量部含有する樹脂組成物からなる樹脂層の上面に意匠層が積層している構造であるが、樹脂層の中間又は裏面に基布を、或いは樹脂層の裏面に裏層を、さらに意匠層の表面に透明層を設けるなど、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他の層を積層してもよい。
【0008】
本発明の意匠シートを構成する樹脂層に用いられる非ハロゲン系樹脂としては、ハロゲン原子を実質的に含まない樹脂であれば特に制限はない。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、非晶性α−オレフィンの共重合体、エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンの共重合体、エチレンプロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等]、水素添加スチレン系共重合体[例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等]、メタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等から選ばれた一種または二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。
【0009】
本発明の意匠シートは、施工性を考慮するとその曲げこわさが1〜300MPaの範囲にあるものが好ましい。
【0010】
また、本発明の意匠シートの樹脂層に使用される非ハロゲン系樹脂の流動特性(MFR)は、加工性の面から0.1〜100g/10minが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂層を形成するのに用いられる含水珪酸塩としては、タルク、セピオライト等の含水珪酸マグネシウム、ゾノトライト等の含水珪酸カルシウム、ベントナイト、カオリン等の含水珪酸アルミニウム等が挙げられる。意匠層との密着性の面から含水珪酸アルカリ土類金属塩が好ましく、中でも含水珪酸マグネシウム、含水珪酸カルシウムがより好ましい。
上記含水珪酸塩の形状は紡錘形、扁平形、針状形等のものが使用できる。含水珪酸塩の粒子径は通常0.5〜30μmのものが使用され、2〜10μmのものがより好ましい。また、通常の含水珪酸塩は鉱石の粉砕品であるため、粒子の表面に処理は施されていないが、加工面、物性面の安定性を向上させるためにシランカップリング剤等で処理を施してもよい。これら含水珪酸塩は単独または2種類以上をブレンドして使用してもよい。
含水珪酸塩は非ハロゲン系樹脂100重量部に対して20〜100重量部の範囲であることが必要で、含水珪酸塩が20重量部よりも少ないと樹脂層と意匠層との密着性が劣り、100重量部を越えると樹脂層の加工性が劣るため好ましくない。密着性、加工性の面から30〜80重量部の範囲がより好ましい。また、樹脂層の性能を害さない範囲で各種充填材、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、無水珪酸、非含水珪酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ガラス繊維、ポリエステル繊維、木粉、竹粉、草粉等を添加してもよい。
【0012】
樹脂層の上面に積層する意匠層としては、適宜な印刷模様を施してなる印刷層が挙げられる。印刷方法としては、通常使用される印刷方法が利用でき、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセット印刷、転写紙による方法等が挙げられる。意匠層を形成するインキとしては、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、塩酢ビ系等のインキを挙げることができる。さらに樹脂層の密着性を向上させるために樹脂層若しくは意匠層の上面にプライマーを塗布してもよい。プライマーの種類としては、EVA系、マレイン酸変性PE等のポリオレフィン系プライマーなどが挙げられる。
【0013】
更に、本発明の意匠シートには、寸法安定性と基礎床面に対する接着性を向上させるために、樹脂層の裏面または樹脂層の中間のいずれかに基布を積層してもよい。基布としては、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、或いは綿、麻等の天然繊維からなる繊維の単独または混紡による織布または不織布を用いることができる。
基布には樹脂層との接着性を向上させるために、アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、エポキシ系、スチレン−ブタジエン系、ポリエステル系等の各種処理剤を塗布することができる。
【0014】
更に、本発明の意匠シートの表面には、汚れ防止や耐摩耗性を向上させるために表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系等のワックスや紫外線硬化塗料、電子線架橋塗料などの塗布が挙げられる。また、耐傷付性、汚れ防止、意匠性を向上させるために、フッ素樹脂系、アクリル系、ポリエステル系、ナイロン系、ウレタン系、ポリオレフィン系等からなる透明層を積層することができる。
【0015】
また、本発明の意匠シートの樹脂層には性能を害さない範囲で顔料、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等)、光安定剤(N−水素置換ヒンダードアミン化合物、N−メチル置換ヒンダードアミン化合物等)、滑剤(脂肪酸の金属石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレンワックス、ビスアマイド等)を添加することができる。
【0016】
更に、本発明の意匠シートには、意匠性を向上させるためにエンボス加工を施したり、衝撃吸収性を付与するために一般の非ハロゲン系樹脂発泡体を積層することができる。発泡体に用いる非ハロゲン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0017】
また、上記樹脂発泡体の種類としては架橋タイプと非架橋タイプがあり、どちらも使用することができる。発泡体のセルの大きさとしては、衝撃吸収性の面から10〜1000μmがよい。発泡体の気泡構造は独立気泡、連続気泡のどちらでもよい。発泡体の厚さは0.5〜5mm程度のものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の意匠シートは、カレンダー成形法や押出成形法等により成形することができ、中でも生産性のよいカレンダー成形法が好ましい。
また、本発明の意匠シートは、通常、0.8〜7.0mm程度の厚さ、500〜2500mm程度の幅のものが使用され、長さについても、定尺のカットものでもよいし長尺の巻物でもよい。
【実施例】
【0019】
実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明に係る樹脂層を形成する組成の配合割合を表1に示し、比較例としてその組成の配合割合を表2に示す。配合成分の配合割合の単位は重量部である。
【0020】
<実施例1〜9>
上記表1に示した配合No1〜9のものを、それぞれ170〜180℃でカレンダーにて幅1000mm、厚み0.4mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして、その上面(基布と反対面)に意匠層として転写紙(千代田グラビア製)を熱ラミネートして意匠シートベースを成形した。さらに意匠層面にプライマー(中央理化工業製)の塗膜を形成し、さらにその上から厚み0.3mmのポリオレフィン樹脂からなる透明シートを積層して意匠シートを作製した。
【0021】
<比較例1〜5>
上記表2に示した配合No1〜5のものを、それぞれ170〜180℃でカレンダーにて幅1000mm、厚み0.4mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして、その上に意匠層として転写紙(千代田グラビア製)を熱ラミネートして意匠シートベースを成形した。さらに意匠層面にプライマー(中央理化工業製)の塗膜を形成し、さらにその上から厚み0.3mmのポリオレフィン樹脂からなる透明シートを積層して意匠シートを作製した。
【0022】
実施例及び比較例から得られた意匠シートの評価は、以下の評価方法及び評価基準にて行い、その評価結果を、表1、2に示す。
<評価方法及び評価基準>
[密着性]
実施例1〜9、比較例1〜5で得られた意匠シートをダンベル1号の大きさでカットし、透明層と樹脂層を剥がして、引張試験機で挟み、引張速度:100mm/minで引張り、その剥離強度で評価した。本実施例、比較例には、意匠層と透明層の間にプライマー層があるため、透明層と意匠層の密着性が非常に強くこの面での剥離は起こらず、意匠層と樹脂層の間で剥離するため、意匠層と樹脂層の密着性の評価方法として本方法を用いた。
○:10N/10mmを越える(使用上、何の問題もないレベル)
△:8〜10N/10mm(使用できるレベル)
×:8N/10mm未満(剥がれなどの問題が発生し、使用できないレベル)

[加工性]
表1、表2に示す配合を170〜180℃でカレンダー加工を行い、加工性について評価を行った。
○:バンク回りが安定しているため、幅方向での厚みのぶれが小さく安定して加工できる。
×:バンクでベロ出しが発生するため、幅方向での厚みのぶれが大きくなり安定加工が困難である。








【0023】
【表1】

【0024】
【表2】


(1)EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製 UE634)
(2)TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー(Basell社製 KS353P)
(3)LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製 EG−8200)
(4)ランダムPP:ランダムポリプロピレン(日本ポリオレフィン社製 PM620A)
(5)酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤(旭電化社製 AO−60)
(6)HALS:N−メチル置換ヒンダードアミン系光安定剤
(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 キマソーブ119)
(7) 含水珪酸Mg:タルク 粒径:1.0μm
(8) 含水珪酸Mg:タルク 粒径:3.2μm
(9) 含水珪酸Mg:タルク 粒径:7.4μm
(10) 含水珪酸Mg:タルク 粒径:15μm
(11) 含水珪酸Ca:ゾノトライト 粒径:3.0μm
(12) 含水珪酸Al:カオリン 粒径:8.0μm
(13) 炭カル:炭酸カルシウム(三共精粉社製 SCPE−810A)
(14) 水酸化Mg:水酸化マグネシウム(協和化学工業社製 キスマ5A)
(15) 顔料:ホワイト顔料:(大日精化工業社製 HCM75−2075)
【0025】
表1から、実施例1〜9の方が比較例1〜4よりも密着性が良いことが理解され、また、実施例1〜9の方が比較例5よりも加工性が良いことが理解される。これは、樹脂層に非ハロゲン系樹脂100重量部に対して、含水珪酸塩を20〜100重量部含有することの効果である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の意匠シートは、オレフィン系樹脂シートでありながら、密着性、加工性に優れており、しかも低コストで製造できるため、腰壁材、床材等の建築分野に広く利用することができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ハロゲン系樹脂100重量部に対して、含水珪酸塩を20〜100重量部含有する樹脂組成物からなる樹脂層の上面に意匠層が積層していることを特徴とする意匠シート。
【請求項2】
前記含水珪酸塩が含水アルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の意匠シート。
























【公開番号】特開2006−212953(P2006−212953A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28822(P2005−28822)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】