説明

感光性着色樹脂組成物

【課題】YAGレーザーを用いて、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターが得られる、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化する感光性組成物を提供すること。
【解決手段】分子内に下記の構造(1)を有する活性エネルギー線重合開始剤(X成分)と、分子内に少なくとも2個のメルカプト基を有する多官能チオール化合物(Y成分)とを含有するYAGレーザーで硬化する感光性組成物。
R1−C(=NO−R2)−R3 (1)
(上記構造(1)においてR1は、炭素数が1〜20のアルキル基、または置換されていてもよいアルキル基、フェニル基、CN、NO2、ハロアルキル基を表し、また、R2は、水素原子、アシル基またはアルケノイル基を表し、また、R3は、式(2)で示される分子内にカルバゾル構造を有する基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のカラーフィルターの製造に使用されるカラーフィルター用の感光性着色樹脂組成物(以下、単に「感光性組成物」という場合がある。)に関し、さらに詳しくは、YAGレーザーを用いてカラーフィルターを製造した場合に、YAGレーザーに対し、非常に高感度で露光硬化する感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに代表されるフラットディスプレイパネルには、カラーフィルターが用いられている。上記のカラーフィルターの製造は、一般的に、フォトリソ法により、光源として超高圧水銀灯を用いて、カラーフィルター用基板に塗布され形成された感光性組成物の塗膜を露光硬化してカラーフィルターを製造している。
【0003】
近年、上記フラットディスプレイパネルの大型化に伴い、レジストパターン形成に必要であるフォトマスクが大型化してきている。上記フォトマスクは、紫外線領域でも透過率の高い石英が基材として使用されているが、石英自体が高価のためにコストアップの要因となっている。また、石英のフォトマスクが大型化すると、それ自体の重量でたわみを生じ寸法精度が低下する。
【0004】
上記の問題の解決として、フォトマスクを小型化できる走査型露光方法が提案されている。上記の方法は、数十回露光しなければならないために、光源としての超高圧水銀灯では活性エネルギー線のエネルギーが小さいために、露光時間が大幅に増大し生産性が著しく低下する。
【0005】
上記の活性エネルギー線のエネルギーを、より大きくするためにYAGレーザーを使用したある種の露光装置(特許文献1)を使用した露光方法が検討されている。しかしながら、特許文献1の開示による露光方法は、従来の超高圧水銀灯の露光方式において使用されている感光性組成物を用いてカラーフィルターを製造した場合、YAGレーザーで露光すると感度が非常に悪く通常の露光量では上記感光性組成物の塗膜は露光硬化しない。とくに、青色のカラーフィルターを製造する場合には、この現象が顕著になる。
【0006】
上述のことから、YAGレーザーを用いてカラーフィルターが製造できる、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化する感光性組成物が要望されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−119439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、YAGレーザーを用いて、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターが得られる、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化する感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の特定成分を含有する感光性組成物を用いることで、従来の感光性組成物に比べて、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化して液晶ディスプレイ用カラーフィルターが製造できることを見出した。
【0010】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、分子内に下記の構造(1)を有する活性エネルギー線重合開始剤(X成分)と、分子内に少なくとも2個のメルカプト基を有する多官能チオール化合物(Y成分)とを含有することを特徴とするYAGレーザーで硬化するカラーフィルター用の感光性着色樹脂組成物を提供する。
R1−C(=NO−R2)−R3 (1)
(上記構造(1)においてR1は、炭素数が1〜20のアルキル基、または置換されていてもよいアルキル基、フェニル基、CN、NO2、ハロアルキル基を表し、また、R2は、水素原子、アシル基またはアルケノイル基を表し、また、R3は、式(2)で示される分子内にカルバゾル構造を有する基である。)

(上記式(2)においてR4、R5は、炭素数が1〜12のアルキル基、水素原子、ハロゲン、フェニル基またはアルキルフェニル基を表し、また、R6は、水素原子、ハロゲン、フェニル基、アルキルフェニル基、エーテル基およびその誘導体、または、式(3)で示される基である。)

【0011】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記活性エネルギー線重合開始剤(X成分)が、下記の式(4)および/または式(5)の化合物であり、前記多官能チオール化合物(Y成分)が、メルカプトプロピオン酸のエステル結合を有する化合物であり、前記多官能チオール化合物(Y成分)が、少なくとも4個のメルカプト基を有するものであり、前記多官能チオール化合物(Y成分)が、下記の式(6)で表される化合物であり、前記X成分とY成分との配合割合が、Y/X=10/100〜70/100(質量比)であり、前記X成分の配合量が、感光性着色樹脂組成物の樹脂固形分総量中に0.1質量%〜30質量%を占める量であり、前記Y成分の配合量が、感光性着色樹脂組成物の樹脂固形分総量中に0.5質量%〜5質量%を占める量であり、前記X成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)を、さらに含有するものであり、および前記活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)が、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。



【0012】
また、本発明は、上記の感光性組成物をカラーフィルター用基板に塗布し形成された塗膜をYAGレーザーで露光することを特徴とするカラーフィルターの製造方法、および前記のYAGレーザーが、第3高調波であるカラーフィルターの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本発明の感光性組成物は、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化することができることから、露光時間をより大幅に減少して、生産性をアップしたYAGレーザーを用いたR、G、Bの各画素からなるカラーフィルターが製造できる。とくに、カラーフィルターの青色画素を製造するのにより効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の感光性組成物は、前記の活性エネルギー線重合開始剤(X成分)と、分子内に少なくとも2個のメルカプト基を有する多官能チオール化合物(Y成分)とを必須成分として含有することにより、YAGレーザーを用いて液晶カラーフィルターを製造した場合に、YAGレーザーに対して非常に高感度で露光硬化するカラーフィルター用の感光性組成物である。
【0015】
前記の活性エネルギー線重合開始剤(X成分)は、分子内に下記の構造(1)を有する化合物である。上記の化合物は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
R1−C(=NO−R2)−R3 (1)
(上記構造(1)においてR1は、炭素数が1〜20のアルキル基、または置換されていてもよいアルキル基、フェニル基、CN、NO2、ハロアルキル基を表し、また、R2は、水素原子、アシル基またはアルケノイル基(アルカノイル基)を表し、また、R3は、式(2)で示される分子内にカルバゾル構造を有する基である。)

(上記式(2)においてR4、R5は、炭素数が1〜12のアルキル基、水素原子、ハロゲン、フェニル基またはアルキルフェニル基を表し、また、R6は、水素原子、ハロゲン、フェニル基、アルキルフェニル基、エーテル基およびその誘導体、または、式(3)で示される基である。)

【0016】
上記のX成分である化合物は、公知の方法で得られたものを使用することができる。上記の化合物は、従来の光重合開始剤に比べて、得られる感光性組成物の重合をYAGレーザーにより開始し得る活性効果を有する。上記のYAGレーザーは、従来の紫外線に比べて指向性が優れていることから、レンズなどによる光の集光性がよいために露光するエネルギーを高めることができることにより、露光時間を短縮することができ、また、微細でコントラストの高い露光ができる。
【0017】
上記の化合物は、単独では得られる感光性組成物に対する溶解分散性やYAGレーザーにより開始し得る活性効果を有するが感度が充分でない。このために、前記のY成分と併用することにより、得られる感光性組成物を非常に高感度でYAGレーザーにより露光硬化することができる。
【0018】
前記化合物(X)としては、前記構造(1)で表される化合物はいずれも使用することができ、好ましくはR1がアルキル基、R2がアシル基、およびR3が前記式(2)においてR4およびR5がアルキル基、およびR6が水素原子または前記式(3)である化合物が挙げられる。より好ましくは、下記の式(4)および/または式(5)で表される化合物である。上記の化合物は各々単独でも、あるいは2種を適宜に混合して使用することができる。


【0019】
前記の多官能チオール化合物(Y成分)は、前記化合物(X)と併用することにより得られる感光性組成物のYAGレーザーに対する感度をより向上させるために効果がある。上記のY成分としては、分子内に少なくとも2個のメルカプト基を有する化合物であり、例えば、2個のメルカプト基を有する化合物:1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパンなど、3個のメルカプト基を有する化合物:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレートなど、4個以上のメルカプト基を有する化合物:ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0020】
上記のY成分の内で、好ましくはメルカプトプロピオン酸のエステル結合を有する化合物が挙げられる。上記の化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネートなどが挙げられる。
【0021】
また、前記のY成分の化合物の内で、少なくとも4個のメルカプト基を有する化合物がさらに好ましい。とくに、メルカプトプロピオン酸のエステル結合を有し、4個のメルカプト基を有する下記の式(6)で表される化合物が前記のX成分と併用した場合に、得られる感光性組成物の樹脂成分との相溶性やYAGレーザーに対する非常に高い感度を得る上で効果がある。

【0022】
前記のX成分とY成分との配合割合は、好ましくはY/X=10/100〜70/100(質量比)、より好ましくは20/100〜60/100である。上記のY成分の配合割合が多くなり過ぎると、両成分の相乗効果によるYAGレーザーに対する得られる感光性組成物のさらなる感度向上効果が得られず、感度が低下する。一方、Y成分の配合割合が少な過ぎると、両成分の相乗効果がほとんどなく非常に高感度の感光性組成物が得られない。
【0023】
また、前記のX成分の、得られる感光性組成物の樹脂成分に対する溶解分散性を向上させるためにX成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)を、さらに配合することができる。上記のZ成分としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線などの活性エネルギー線により重合を開始し得る活性を発生する化合物であり、例えば、ビイミダゾール系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、オキシム系、チオキサントン系、トリアジン系、アントラキノン系、チオール系などの公知の光重合開始剤が挙げられる。
【0024】
上記の光重合開始剤としては、例えば、2,2−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキスフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メチルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン系光重合開始剤、1−(4−メチルスルファニル−フェニル)−ブタン−1−オンオキシム−o−アセタートなどのオキシム系光重合開始剤、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−および4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノンなどのアントラキノン系光重合開始剤など、およびそれらの混合物など、好ましくは2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
また、上記の光重合開始剤は、必要に応じて増感剤を併用することができる。上記増感剤としては、例えば、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
前記のX成分の、得られる感光性組成物における配合量は、好ましくは感光性組成物の樹脂固形分総量中に0.1質量%〜30質量%を占める量である。上記のX成分の配合量が、上記上限を超えても、あるいは下限未満であっても得られる感光性組成物はYAGレーザーで露光硬化しない。
【0027】
また、前記のY成分の、得られる感光性組成物における配合量は、好ましくは感光性組成物の樹脂固形分総量中に0.5質量%〜5質量%を占める量である。上記のY成分の配合量が多くなり過ぎると、前記X成分の相乗効果によるYAGレーザーに対する得られる感光性組成物のさらなる感度向上効果が得られない。一方、Y成分の配合割合が少な過ぎると、X成分に対する相乗効果がほとんどなく非常に高感度の感光性組成物が得られない。
【0028】
本発明における感光性組成物中の樹脂組成物は、バインダーとして、またカラーフィルターの製造の際にアルカリ現像液により現像できるアルカリ可溶性ポリマーと、分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有するYAGレーザーで感光性を有する樹脂組成物である。
【0029】
上記のアルカリ可溶性ポリマーとしては、カラーフィルターの製造に使用できるものであればいずれのものも使用することができ、例えば、分子内にカルボキシル基、フェノール性水酸基などの酸性官能基を有するポリマーなど、好ましくはアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0030】
上記のアクリル系ポリマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸化合物とエチレン性不飽和化合物との共重合体が好ましく使用することができる。上記の不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸化合物;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの不飽和ジカルボン酸化合物;その他、3価以上の不飽和カルボン酸化合物、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)などのモノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]エステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートなどが挙げられる。
【0031】
また、上記の不飽和カルボン酸化合物と共重合体を生成するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート(「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する)、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン化合物;マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの不飽和イミド化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテルなどの不飽和エーテル化合物;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレートなどの重合体分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
前記のアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸(「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタアクリル酸の双方を意味する)/メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン/メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー共重合体、ベンジルマレイミド/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体など、およびそれらの混合物、好ましくはベンジルマレイミド/シクロヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリレート/メタアクリル酸/グリシジルメタアクリレート共重合体が挙げられる。上記のアクリル系ポリマーは、例えば、日本火薬(株)からアクリキュアBMX72、また、新中村化学(株)からNB−57の商品名で入手して本発明で使用することができる。なお、前記アクリル系ポリマーは、上記の共重合体に限定されるものではない。
【0033】
また、前記のクリアレジストを構成するアルカリ可溶性ポリマーと併用する分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーおよびオリゴマーが挙げられる。上記の多官能モノマーおよびオリゴマーは、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
上記の多官能モノマーおよびオリゴマーは、必要に応じて、1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマーを併用することができる。上記の単官能モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
また、本発明の感光性組成物を着色する着色剤としては、R、G、Bのカラーフィルターを形成する着色剤として、高精細な発色性、耐熱性、耐光性、耐薬品性などに優れたものであればいずれの染料、有機顔料あるいは無機顔料が使用でき、好ましくはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダスレン系、ペリレン系などの有機顔料が使用される。上記の着色剤は、顔料などの分散を安定化させるために公知の分散剤と溶剤と、必要に応じてポリマーからなる分散媒体に分散させてなる着色分散液として使用することができる。
【0036】
上記の着色剤としては、例えば、カラーインデックスにおいてピグメントに分類されている化合物、具体的にはカラーインデックス(C.I)番号が付けられたものが挙げられ、例えば、C.Iピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265などの赤色顔料が挙げられる。
【0037】
また、例えば、C.Iピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55などの緑色顔料か挙げられる。
【0038】
また、例えば、C.Iピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、21、22、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、64、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などの青色顔料が挙げられる。
【0039】
また、例えば、C.Iピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、180、185などの黄色顔料が挙げられる。
【0040】
また、例えば、C.Iピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、30、31、32、36、37、38、39、40、42、44、47、49、50などのバイオレット顔料が挙げられる。
【0041】
また、例えば、C.Iピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73などのオレンジ顔料が挙げられる。
【0042】
その他、C.Iピグメントブラウン23、25、C.Iピグメントブラック1、7などが挙げられる。
【0043】
前記の分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリエチレングリコールジエステル系分散剤、脂肪酸変性ポリエステル系分散剤、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤などの高分子分散剤が挙げられる。上記の分散剤は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
上記の分散剤としては、例えば、ビックケミー社からDisperbyk(161、162、163、164、165、168、170、171、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145など)また、味の素ファインテクノ(株)からアジスパー(PB821、PB711、PB822、PB823、PB824、PB827、PN411、PA111など)また、Cognis社からテキサホール(P61、P63、T−964など)また、エフカケミカルズ社からEFKA(4046、4047、4060、4300、4330など)の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0045】
本発明の感光性組成物は、前記の活性エネルギー線重合開始剤(X成文)と、多官能チオール化合物(Y成分)との必須成分と、前記の感光性を有する樹脂組成物と、着色剤と、有機溶媒と、その他添加剤を配合して、混合分散することにより得られ、好ましくは濾過して調製される。上記の混合分散は、例えば、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダー、2本ロール、3本ロール、高圧分散機、超音波分散機、好ましくはビーズミルを使用して行われる。使用するビーズは、直径0.1mm〜2mmのジルコニア製のものが好ましく使用される。上記の着色剤としては、好ましくは着色顔料分散液として調製されたものを使用する。上記の着色顔料分散液は、前記の着色顔料(混合調色された顔料も含む)と、分散剤と、および必要に応じて上記の樹脂組成物を配合して有機溶媒中で微細分散を行い調製される。また、上記の樹脂組成物は、該樹脂組成物を調製する際に上記のX成分およびY成分を混合して調製することもできる。
【0046】
上記の添加剤としては、本発明の目的を妨げない範囲において、得られる感光性組成物のカラーフィルター基板へのレベリング性、解像性、密着性を付与するためにフッ素系界面活性剤を配合する。上記のフッ素系界面活性剤としては、公知のフッ素系界面活性剤を使用することができ、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。上記のフッ素系界面活性剤は、DIC(ディアイシ)社からメガファックR−08MHなどの商品名で、また、スリーエム社からフローラードなどの商品名で入手して本発明で使用することができる。上記フッ素系界面活性剤の配合量は、感光性組成物総量中に0.1質量%〜0.4質量%、好ましくは0.2質量%〜0.3質量%である。上記の配合量が多すぎると、得られるレジスト組成物のカラーフィルター用基板への密着性を阻害するので好ましくない。一方、その配合量が少なすぎると、前記界面活性剤としての効果が得られない。
【0047】
また、その他の添加剤としては、得られる感光性組成物のカラーフィルター用ガラス基板への密着性を向上させる目的でのアクリル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤などのシランカップリング剤、また、2,2−チオビス(4−メチル−6−tブチルフェノール)などの酸化防止剤、アルコキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、その他、ポリアクリル酸ナトリウムなどの凝集防止剤、消泡剤などが挙げられる。
【0048】
前記の感光性組成物の調製の際に使用される有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−ブチル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルアセテート、などのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチルラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類などの有機溶媒、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
次に、本発明により調製された感光性組成物を使用して、カラーフィルターを製造する方法について説明する。上記の製造方法としては、例えば、本発明の感光性組成物を用いて、各画素パターンを形成する部分を区画するように遮光層の金属系薄膜のブラックマトリックスが形成されたガラスなどのカラーフィルター用基板上に、回転塗布、スリットノズルコート、流延塗布、浸漬塗布、ロール塗布などの公知の塗布方法にて塗布し、予備加熱により有機溶媒を蒸発させ、0.1μm〜10μm、好ましくは1μm〜3μm(乾燥厚み)の塗膜を形成する。次に、該塗布膜に目的の画素を形成するためのフォトマスクを介してYAGレーザー、好ましくはYAGレーザーの第3高調波(355nm)を照射し露光する。露光後、YAGレーザーで硬化した塗膜を公知のアルカリ現像液を使用してスプレー法、ディップ法、シャワー法、パドル法などの公知方法により現像処理を行い、塗膜の末露光部分を溶解除去して、着色された画素が所定の画素パターン区画に形成される。現像後、上記画素は、150℃〜250℃で5〜60分程度ポストベーク(熱硬化)を行うのが好ましい。
【0050】
上記の画素を得る工程を、カラーフィルターに必要とされる色の数だけ繰り返すことにより、所望するカラーフィルターが得られる。上記のカラーフィルターは、通常、赤、緑および青の各画素を遮光層がパターン形成されたカラーフィルター用のガラス基板上に配置したものである。
【0051】
上記の本発明で使用するYAGレーザーは、従来の紫外線では得られない光の集光性、指向性が優れていることから、露光するエネルギー密度を高めることができ、露光照射時間の短縮と伴に微細でコントラストの高い露光ができる。特に、第3高調波のYAGレーザーが効果が大きい。
【0052】
前記YAGレーザーは、その波長(H)が355nm≦H<1064nm、好ましくは355nm≦H≦532nm、さらに好ましくは355nmの第3高調波である。上記のYAGレーザーは、単一波長のレーザーでも、あるいは、2種以上の波長を有する混合レーザーでも構わない。上記YAGレーザーによる露光は、YAGレーザー露光機を用いて行われ、例えば、(株)ブイ・テクノロジー社のYAGレーザー露光機などが挙げられる。上記のYAGレーザーは、例えば、YAGレーザーの基本波長である1064nmのレーザーをレンズにより収束させ、第1の非線形光学結晶素子(KTP、BBO)を通過させ得られる基本波長とその半分の波長(532nm)の第2高調波(2倍波)が混合したレーザーを収束させ、第2の非線形光学結晶素子(LBO、BBOなど)を通過させ、基本波長と第2高調波と、さらに、基本波長の1/3の波長(355nm)の第3高調波(3倍波)が混合した混合レーザーから、第3高調波のレーザーを分離して使用するものである。
【0053】
前記のカラーフィルターの製造において、使用するYAGレーザーは、第3高調波(355nm)が好ましい。上記の波長を有するYAGレーザーが、非常に高感度で、カラーフィルター用の各色の画素を得るのに有効である。
【0054】
また、前記現像に使用されるアルカリ現像液としては、無機アルカリ類、あるいは有機アルカリ類のアルカリ水溶液であり、必要に応じて、界面活性剤や水溶性有機溶剤を適宜含有することができる。上記の無機アルカリ類としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸カリウム、珪酸ナトリウムなどが挙げられる。また、上記の有機アルカリ類としては、1級、2級、および3級のアミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、4級アンモニウム塩、アルコールアミン類、環状アミン類などが挙げられ、具体的には、例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、トリエタノールアミン、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネンなどが挙げられる。上記の現像液としては、例えば、ヘンケル・ジャパン(株)から、DisperseHの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【実施例】
【0055】
次に本発明の感光性組成物J1〜J5と比較例の感光性組成物K1〜K5を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1〜5](感光性組成物J1〜J5)
活性エネルギー線重合開始剤(X成分)と、多官能チオール化合物(Y成分)と、X成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)と、樹脂組成物と、着色剤と、添加剤、および有機溶媒の各々の成分を表1のように配合しビーズミルを使用して均一に混合分散して感光性組成物J1〜J5を調製した。なお、上記の活性エネルギー線重合開始剤(X成分)、多官能チオール化合物(Y成分)、X成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)、樹脂組成物、着色剤、および添加剤は、下記の通りである。
【0057】
[活性エネルギー線重合開始剤(X成分)]
X1:前記式(4)で表される化合物。
X2:前記式(5)で表される化合物。
X3:前記式(4)の化合物と前記式(5)の化合物との1:1(質量比)の混合物。
[多官能チオール化合物(Y成分)]
Y1:前記式(6)で表される化合物。
【0058】
[X成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)]
Z1:2,4−ジエチルチオキサントンが1.2部と、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが5.7部との混合物。
Z2:2,2−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが1.90部と、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが4.41部との混合物。
【0059】
[樹脂組成物]
ベンジルマレイミド/シクロヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリレート/メタアクリル酸/グリシジルメタアクリレートの共重合体(組成比率8.6/58.1/0.9/18.2/14.2(%)、重量平均分子量12,400(GPCのポリスチレン換算分子量))が10.12部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが12.95部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが15.20部との混合物。
【0060】
[着色剤]
下記のとおり着色分散液としたものを使用する。
・青1:C.Iピグメントブルー15:6が13部、C.Iピグメントバイオレット23が4部、高分子分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk2001)3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが80部とからなる着色分散液。
・青2:C.Iピグメントブルー15:6が13.0部、高分子分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk2001)2.60部、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが7.7部、エチレングリコールモノブチルエーテルが1.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテルが2.4部、アクリル系ポリマー(新中村化学(株)製、NB−57)が5.0部とからなる着色分散液。
・赤1:C.Iピグメントレッド177が12.0部、高分子分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk161)が12.0部、酢酸−3−ブチルアセテートが64.0部、アクリル系ポリマー(新中村化学(株)製、NB−57)が12.0部とからなる着色分散液。
・赤2:C.Iピグメントレッド254が12.0部、高分子分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk161)が16.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが64.0部、アクリル系ポリマー(新中村化学製、NB−57)が8.0部とからなる着色分散液。
・緑1:C.Iピグメントグリーン36が13.0部、高分子分散剤(味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPB822の30%溶液)が10.8部、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが39.0部、アクリキュア−BMX−72が37.2部とからなる着色分散液。
・緑2:C.Iピグメントグリーン36が6.5部、C.Iピグメントイエロー150が6.5部、高分子分散剤(味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPB822の30%溶液)が10.8部、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが63.2部、アクリキュア−BMX−72が13.0部とからなる着色分散液。
【0061】
[添加剤]
・フッ素系界面活性剤:DIC(ディアイシ)(株)製、メガファックR−08MH(ポリプロピレングリコール40%溶液)
・シランカップリング剤:信越シリコーン社製、KBM−503
【0062】

【0063】
[比較例1〜5](感光性組成物K1〜K5)
表2のように各々の成分を配合し、実施例と同様に均一に混合分散して感光性組成物K1〜K5を調製した。
【0064】

上記表中のX成分以外の活性エネルギー線重合開始剤Z3は、2,2−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが1.2部と、2,4−ジエチルチオキサントンが1.2部と、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが5.7部との混合物である。また、表中の数値は配合部数を表す。
【0065】
前記の実施例および比較例で得られた各々の感光性組成物を使用して、カラーフィルター用ガラス基板(100mm角)上にスピンコーターにて600rpm、2secの条件にて2μmの厚み(乾燥厚み)にスピンコートし、80℃のホットプレート上で3分間予備乾燥させ塗膜を形成した後、各色の画素パターンを得るフォトマスクを介して、第3高調波のYAGレーザー((株)ブイ・テクノロジー社製、YAGレーザー露光機、355nmを使用)を照射して露光し、次に、ヘンケル・ジャパン(株)製、DisperseHの100倍希釈水溶液を使用して、0.15Mpaの水圧にて60秒間スプレー現像し、現像後、230℃で30分間熱硬化処理して各色の画素を形成した。上記の各色の画素を形成するための感光性組成物の感度に関して下記の測定方法により評価した。
【0066】
(感度)
上記の画素形成工程における現像において、第3高調波(355nm)のYAGレーザーの照射量を変えて露光し、レジスト(感光性組成物)が残ったところの露光量(mJ/cm2)を感度とした。評価結果を表3に示す。上記の感度は、露光量(照射量)の値が小さいほど感度が高く、すなわち、感度が高ければ、それだけ少ない照射量で感光性組成物を感じさせることができる。一方、その値が大きいほど感度が低い。
【0067】

【0068】
上記の評価結果より、本発明の感光性組成物は、YAGレーザーに対して、非常に高感度で露光硬化する感光性組成物であることが実証された。特に、第3高調波のYAGレーザーに対してより効果が大きく、従来の感光性組成物では露光硬化に問題があった青色画素を形成するのに有効である。一方、比較例の感光性組成物は、本発明の感光性組成物に比べてかなり多い照射量のYAGレーザーで露光する必要があり感度が著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の感光性組成物は、YAGレーザーで非常に高感度で露光硬化できることから、YAGレーザーを用いて液晶表示装置のR、G、Bの画素などからなるカラーフィルターを効率よく製造するための感光性組成物として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記の構造(1)を有する活性エネルギー線重合開始剤(X成分)と、分子内に少なくとも2個のメルカプト基を有する多官能チオール化合物(Y成分)とを含有することを特徴とするYAGレーザーで硬化するカラーフィルター用の感光性着色樹脂組成物。
R1−C(=NO−R2)−R3 (1)
(上記構造(1)においてR1は、炭素数が1〜20のアルキル基、または置換されていてもよいアルキル基、フェニル基、CN、NO2、ハロアルキル基を表し、また、R2は、水素原子、アシル基またはアルケノイル基を表し、また、R3は、式(2)で示される分子内にカルバゾル構造を有する基である。)

(上記式(2)においてR4、R5は、炭素数が1〜12のアルキル基、水素原子、ハロゲン、フェニル基またはアルキルフェニル基を表し、また、R6は、水素原子、ハロゲン、フェニル基、アルキルフェニル基、エーテル基およびその誘導体、または、式(3)で示される基である。)

【請求項2】
前記活性エネルギー線重合開始剤(X成分)が、下記の式(4)および/または式(5)の化合物である請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。


【請求項3】
前記多官能チオール化合物(Y成分)が、メルカプトプロピオン酸のエステル結合を有する化合物である請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能チオール化合物(Y成分)が、少なくとも4個のメルカプト基を有する請求項1または3に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能チオール化合物(Y成分)が、式(6)で表される化合物である請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。

【請求項6】
前記X成分とY成分との配合割合が、Y/X=10/100〜70/100(質量比)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
前記X成分の配合量が、感光性着色樹脂組成物の樹脂固形分総量中に0.1質量%〜30質量%を占める量である請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
前記Y成分の配合量が、感光性着色樹脂組成物の樹脂固形分総量中に0.5質量%〜5質量%を占める量である請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項9】
前記X成分以外の活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)を、さらに含有する請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項10】
前記活性エネルギー線重合開始剤(Z成分)が、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンから選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物をカラーフィルター用基板に塗布し形成された塗膜をYAGレーザーで露光することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項12】
前記のYAGレーザーが、第3高調波である請求項11に記載のカラーフィルターの製造方法。

【公開番号】特開2010−127961(P2010−127961A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299226(P2008−299226)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】