説明

成型品

【課題】セルロース系繊維並びに他繊維を組合せたランプシェードやスリッパなどの成型品について、寸法変化、型崩れや皺の問題なく家庭洗濯を可能なものとすること。
【解決手段】セルロース系繊維を繊維材料重量比率の少なくとも30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、グリオキザール系樹脂などのセルロース分子を架橋することのできる樹脂で樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型され、特定のW&W性、寸法変化率、及び、耐光堅牢度を満足する成型品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系繊維を少なくとも一部に含む成型品に関するものであり、更に詳細には洗濯処理を施しても型崩れや寸法変化の問題が少なく、審美性を損なう洗濯皺もつき難い、手袋や足袋、スリッパなど衣料や履物類、タペストリー、暖簾、カーテン、テーブルクロス、ランプシェードなど生活資材用途に好適な成型品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布や紙を熱収縮させて形成させるランプシェードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、熱収縮させて形成させるため、使用される繊維は熱可塑性合成繊維が主体となっている。
【特許文献1】特開平7−130211号公報
【0003】
セルロース系繊維を少なくとも一部に用いた成型品への消費者の一般認識として、特に三次元構造物となっているもの(いわゆる立体成型品)については型崩れや寸法変化などの問題が生じやすく、「洗えないもの」と考えられている場合が多い。セルロース系繊維は吸放湿性に優れ、着用感がよく一般衣料用途にも広く用いられており、生活資材等においてもナチュラルな外観や風合いによって多くの要望があるものの洗いにくさの欠点さは解消されていない。セルロースの非晶領域の水素結合が水の作用により破壊、変形した状態で新たに水素結合が形成される為、水洗濯すると型崩れや寸法変化、洗濯皺などを生じさせ審美性を著しく損ねるという問題がある。しかしながら反面で「清潔に保ちたい」、「洗いたい」という消費者意識が高く「洗える」、「ウォッシャブルである」商品の開発が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る消費者の要望に応える為、洗っても型崩れや寸法変化がなく、皺も付き難い、セルロース系繊維を用いた成型品の提供を課題とし、より詳しくは「家庭洗濯ができる」、「洗濯機による洗濯ができる」成型品の提供をその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の構成よりなる。
1. セルロース系繊維を繊維材料重量比率の少なくとも30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型され、下記を満足することを特徴とする成型品。
AATCC 124−1984によるW&W性評価 3.0級以上
JIS L0217ー1995 103法に準じた洗濯方法による寸法変化率
−3.0%以上+3.0%以下
JIS L0842−1996による耐光堅牢度 3級以上
2. 樹脂加工時に用いる樹脂溶液が、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル、テトラブタンカルボン酸、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素から選択される少なくとも1種類と、金属塩系触媒、及び耐光向上剤を含んでなることを特徴とする上記第1記載の成型品。
3. 樹脂加工が、織編物を樹脂溶液に浸漬、乾燥する加工であることを特徴とする上記第1及び第2に記載の成型品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の成型品はセルロース系繊維を含む素材からなるにもかかわらず、家庭洗濯機での水洗濯が可能であり型崩れや寸法変化、洗濯皺残存が少なく審美性を損ねることがない。生地損傷を抑制する為に成型品を裏返しとし、ネットに入れて洗濯処理すると表面品位を損ねることがないのでより審美性が美しく保たれる。本発明の成型品は上記の洗濯処理後、脱水処理を施し湿潤状態で形を整え乾燥することによって元の形状に復元することが可能となり清潔に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
成型品を構成する素材として特にセルロース系繊維を30重量%以上、好ましくは50重量%以上を含む構成であることが好ましい。本発明でいうセルロース系繊維とは綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、高強度再生セルロース繊維(例えば、テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標)、商標名モダール(登録商標)など)等の天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維が挙げられる。ただし、確かに熱可塑性合成繊維などの他の繊維を少量含ませると熱処理による形態安定性を得やすくなるので、セルロース系繊維は好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。セルロース系繊維以外の他の繊維としてポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールなど公知の合成繊維や各種獣毛やシルクのような天然蛋白質系繊維等を用途、意匠等に応じて適宜組合せ、強度、形態保持性を向上させることも可能である。取分けポリエステルやポリアミド、ポリ塩化ビニルなど熱可塑性合成繊維を用いると熱セット性がよく、賦型性や防縮性などの観点から好ましい。熱可塑性合成繊維は加熱処理によって結晶化度が比較的増加し易いものを選定することが好ましい。
【0008】
セルロース系繊維以外の繊維の重量比は生地物性や形態安定性、熱安定性を考慮し30重量%以上、好ましくは40重量%以上含むことが好適である。しかし該繊維の重量比が過度に大きくなり過ぎるとセルロース系繊維の有する風合いや吸湿性等を損ねる為、該繊維の重量比上限として60重量%以下、好ましくは50重量%以下に抑制することが好適である。
【0009】
また本発明の成型品における、W&W性(ウォッシュアンドウェア性)はAATCC 124−1984記載の方法で3.0級以上、更には3.2級以上であることが好ましい。3.0級未満では該成型品表面に発現する、洗濯時の折れ皺や撚りトルクによる細かい皺が審美性、品位を著しく損ねてしまい好ましい範囲ではない。該W&W性はより大きい値になればなるほど好ましいが、セルロース系繊維を多用した縫製品では極めてハードルが高い。3.0級以上、更には3.2級以上であれば強い皺残存がなくなり品位を損ねることなく着用が可能となり好ましい。
【0010】
更に本発明の成型品における洗濯処理後の寸法変化率は品位低下や成型品のサイズ変化を抑制する為、−3.0%以上3.0%以下、更には−3.0%以上2.0%以下に保持されていることが好ましい。ここで寸法変化率のマイナスは収縮を示し、プラスは伸長を示すものである。成型品の素材構成や組織、熱処理方法等々により寸法変化率が異なってくるが、−3.0%未満となれば洗濯収縮が極めて大きく洗濯後の型崩れやシームパッカリングの恐れや、成型品のサイズ変化(収縮によりサイズが小さくなる)の恐れから余り好ましくない。また3.0%を超過する領域、即ち生地が伸びてしまう状態でも収縮による問題と同様、型崩れやシームパッカリングの問題が発生し、審美性を考慮するとあまり好ましい領域であるとは言えない。
【0011】
耐光堅牢度はJIS L0842−1996による方法で3級以上、好ましくは3−4級、更に好ましくは4級以上であることが望ましい。染料構成や色目にもよるが3級より著しく低い堅牢度では変色、退色が著しく外観品位を損ねる。特に紫外線による変退色を防止するために紫外線吸収剤を併用することが好ましい。
【0012】
本発明の成型品を構成する織編物は公知、市販の織機及び丸編機、横編機、経編機を用いて得ることが出来る。意匠効果を与えるために糸染めを施したり、シェニールやブークレ、リングヤーン、スラブヤーンなどの意匠糸を用いることも出来る。また更に意匠効果を向上させる為にジャカード装置を用いた織機、丸編機、横編機、経編機を用いてもよい。特に丸編機や横編機、経編機を使用したニット素材は織物対比で隣合う糸/糸の拘束力が小さいために皺を生じ難く好ましい。
【0013】
本発明の成型品に使用するセルロース系繊維は糸漂白、糸染めを施したもの、各種樹脂加工を施したものなど特に限定されるものではない。例えば使用するセルロース系繊維が綿の場合、糸の状態でシルケット加工(マーセル化)を施し染色性及び強度、光沢感を改善しておくことも可能であるし、その後反応染料やスレン染料等々公知の染料による糸染めを施し、生地製編織に供することも出来る。また必要に応じて糸の状態でガス毛焼処理や各種樹脂処理等を施した後、生地製編織に供することも可能である。勿論、上記は綿繊維に限定されるものではなくセルロース系繊維であれば適用可能である。また必要に応じて紫外線吸収剤や蛍光増白剤、抗菌・防臭加工剤、制菌加工剤等を染色同時吸尽法などの公知の方法で繊維に処方することも出来る。糸染めの場合はオーバーマイヤー染色機など公知の方法を用いかせやチーズの状態で染色することが可能であるし、ピース染めや製品染めもパドル染色機など公知の方法で実施することが出来る。
【0014】
セルロース系繊維が有する「皺が付き易い」、「生地が縮み易い」という欠点はセルロースの非晶領域の水素結合が外力及び水の作用によって破壊、変形してしまい、外力及び水が除かれるとその状態で水素結合が形成されることにより生じるものである。セルロース系繊維の防皺性及び防縮性を向上させるにはセルロース系繊維のセルロース分子間に架橋を導入し上記の水素結合が外力や水の作用により壊れ難くすることが必要である。
【0015】
セルロース系繊維のセルロース分子間に架橋を導入する為の使用薬剤としてホルムアルデヒドやグリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、ジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、テトラブタンカルボン酸等のポリカルボン酸類、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素などの繊維素反応型N−メチロール化合物などが挙げられる。上記使用薬剤によって発生する遊離ホルムアルデヒド濃度を低減させる為のホルマリンキャッチャーや風合い調整用の柔軟剤、硬化剤等を適宜添加することも可能であるし、成型品を加熱成型後に十分に洗浄し余分なホルムアルデヒドを除去することが出来る。
【0016】
また上記樹脂加工剤とセルロース分子との反応活性を高め、樹脂加工を効率よく且つ適正に進める為に触媒を添加することが可能である。使用される触媒としては硼弗化アンモニウムや硼弗化ナトリウム、硼弗化カリウム、硼弗化亜鉛等の硼弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、硼酸等の無機酸等が例示される。また必要に応じてセルロース系繊維を膨潤させて架橋反応を促進させたり、反応を均一に進めるなどの目的で反応助剤を添加してもよい。反応助剤としてはグリセリンやエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ―ブチロラクトン等のエステル類等が例示される。
【0017】
更に上記樹脂加工剤には必要に応じて紫外線吸収剤を併用させることができる。紫外線吸収剤とは有害な紫外線領域の波長光線を吸収して熱エネルギーなどに変換する機能を有するものでありベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、サリシレート系などの化合物が知られている。該紫外線吸収剤は繊維に染料と同時に吸尽させるか、上記樹脂加工剤と同時に付与するか、又は上記樹脂加工剤処理前後において単独で処理するか、何れの方法によってもよい。
【0018】
該樹脂の付与については織編物などの反物の状態で処理しても可能であるし、裁断及び縫製後に処理してもよく、成型品の加熱成型より以前の任意の工程で付与すればよい。該樹脂は適当な乳化分散剤で水溶液となし生地に付着させた後、脱水及び乾燥を施す。樹脂付与はパッドドライ法など公知の何れの方法でも適用できる。樹脂を付与した後の乾燥処理温度は70〜120℃程度の温度条件で水分を乾燥させる。乾燥処理温度が70℃未満では長い乾燥時間が必要になるし、逆に120℃を著しく超過すると樹脂のマイグレーションが起こり、加工剤が不均一に分布してしまい好ましいものにはならない。乾燥についてはシリンダードライヤーやピンテンター、ショートループドライヤーなど公知の機械を用いて実施することが出来る。
【0019】
本発明の成型品に供する生地の製法については織物及び横編、丸編、経編などの編物など特に限定を加えるものではない。また上記樹脂加工は生地の状態、裁断したピースの状態、縫製(リンキング)した状態の何れの工程で実施しても構わない。得られた縫製品を加熱成型し、セルロース分子間の架橋を促進させる。該加熱工程の雰囲気温度としては120〜200℃、より好ましくは140〜200℃で熱処理する。処理時間は特に限定するものではないが1〜20分、より好ましくは3〜15分間の加熱処理を行なう。加熱処理の前に予備加熱を施してもよい。また熱水処理、流水処理などの洗い工程導入は樹脂加工による残留遊離ホルムアルデヒドの除去や風合い調整の点でも好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例に従い本発明を更に詳しく説明する。尚、本文中及び実施例中の物性値は以下の方法に準じて評価したものである。勿論、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0021】
(洗濯方法)
成型品をポリプロピレン製の洗濯ネットに入れ、JIS L0217繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法の番号103に準じた方法で洗濯処理を行ない、脱水後に手で成型品の形を整えて平置き風乾した。
【0022】
(寸法変化)
洗濯処理前の成型品について、15cm×15cm四方に油性インクで印をつけた後、所定の洗濯処理及び平置風乾を実施し、タテ方向及びヨコ方向の寸法変化を確認した。
【0023】
(W&W性)
AATCC 124−1984 5段階レプリカ法に準じて判定を行なった。5級(良好)〜1級(不良)
【0024】
(耐光堅牢度)
JIS L0842 紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法(第3露光法)に準じた方法で評価した。
【0025】
(製品評価)
洗濯処理前後の成型品サンプルを比較し型崩れ、皺その他外観形状変化を目視判定した。
【0026】
(沸水収縮率)
JIS L1013 かせ収縮率(A法)に準じ、処理温度(浴温)を98±2℃として糸条を処理し、沸水収縮率を評価した。
【0027】
(実施例1)
シルケット先染綿40番単糸(147デシテックス相当、黒色染色)を経糸にシルケット先染綿30番単糸(197デシテックス相当、赤色染色)を緯糸として使用し、ソメット社製レピアルームを用いて五枚経朱子組織に製織した。得られた生機について常法を用いて精練、乾熱セットを施した後、該生地を裁断・縫製してランプシェードのパーツのもとを作成した。次いで該パーツを下記薬剤水溶液(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが100%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで乾燥処理を行なった。
【0028】
(水溶液処方)
ベッカミン(登録商標)NS−210L(大日本インキ化学工業社製
変成グリオキザール系樹脂) 15重量部
カタリスト M(大日本インキ化学工業社製 塩化マグネシウム系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
水 78重量部
【0029】
乾燥後に該縫製品を金属製型枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で20分間処理してセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後に冷却し室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、縫製端面処理を施しランプシェードを得た。得られたランプシェードは金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであり、綺麗なシャンブレー効果を有する上品なものに仕上った。
【0030】
上記のランプシェードの表面を裏返しにして洗濯ネットに入れ、JIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後のランプシェードの寸法変化は経方向−0.6%、緯糸方向−0.5%、W&W性は4.0級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、メヨレその他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0031】
(実施例2)
シルケット先染綿20番双糸(590デシテックス相当)を経糸及び緯糸として使用しソメット社製レピアルームを用いて平織組織に製織した。得られた生機について常法を用いて精練、乾熱セットを施した後、下記薬剤水溶液(液温15℃)をパッダ−マングルを使用し全繊維重量に対するウェットピックアップが100%になるように窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで乾燥処理を行なった。
【0032】
(水溶液処方)
FT−19 (大日本インキ化学工業社製 グリオキザール系樹脂) 15重量部
カタリストM(大日本インキ化学工業社製 金属塩系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
テキスポート(登録商標)SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 77.7重量部
【0033】
得られた加工生地を裁断、縫製し合成樹脂製の底材と組合せてスリッパの形状となした。当該成型品(スリッパ)に金属製型枠を装着し雰囲気温度が乾熱170℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)しセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、室温近傍で型枠から成型品(スリッパ)を脱着し、製品(スリッパ)を得た。
【0034】
次いで、ポリプロピレン製の洗濯ネットに製品(スリッパ)を入れてJIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後におけるスリッパのアッパー部(甲)の寸法変化率は経糸方向−0.2%、緯糸方向−0.2%、W&W性は3.8級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0035】
(実施例3)
シルケット先染綿30番双糸(354デシテックス相当)とポリエステルセミダルマルチフィラメント仮撚加工糸167デシテックス48フィラメントの分散染料先染糸(沸水収縮率2.8%)を適宜配列して経糸及び緯糸に用い、前者の糸(綿紡績糸)が表面を形成するような二重織組織に製織した。使用した織機は実施例1、2と同じくソメット社製レピアルームである。次いで得られた織物生機について常法を用いて精練、乾熱セットを施した後、下記に示す薬剤水溶液(液温15℃)をパッダ−マングルを使用し全繊維重量に対するウェットピックアップが100%になるように窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで乾燥処理を行なった。
【0036】
(水溶液処方)
ベッカミン(登録商標) NS−210L(大日本インキ化学工業社製
変成グリオキザール系樹脂) 15重量部
カタリスト M(大日本インキ化学工業社製 塩化マグネシウム系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
水 78重量部
【0037】
得られた加工生地を裁断、縫製し合成樹脂製の底材と組合せてスリッパの形状となした。当該成型品(スリッパ)に金属製型枠を装着し雰囲気温度が乾熱170℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)しセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させると共に熱可塑性合成繊維であるポリエステルマルチフィラメント繊維の乾熱セットを施した。該処理後、室温近傍で型枠から成型品(スリッパ)を脱着し、製品(スリッパ)を得た。
【0038】
次いで、ポリプロピレン製の洗濯ネットに製品(スリッパ)を入れてJIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後におけるスリッパのアッパー部(甲)の寸法変化率は経糸方向−0.1%、緯糸方向−0.1%、W&W性は4.0級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0039】
(実施例4)
シルケット晒綿20番双糸(590デシテックス相当)を用いた他は実施例2同様の方法で織物生機を得た。該生機を常法にて精練、乾熱セットを施した後、反応染料を用いてロータリースクリーン捺染機による捺染を施した。発色、脱糊、洗浄を十分に実施した後、乾熱170℃で仕上セットを実施した。得られた捺染生地について下記薬剤水溶液(液温15℃)をパッダ−マングルを使用し全繊維重量に対するウェットピックアップが100%になるように窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで乾燥処理を行なった。
【0040】
(水溶液処方)
FT−19 (大日本インキ化学工業社製) 15重量部
カタリスト M(大日本インキ化学工業社製 塩化マグネシウム系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
テキスポート(登録商標)SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 77.7重量部
【0041】
得られた加工生地を裁断、縫製し合成樹脂製の底材と組合せてスリッパの形状となした。当該成型品(スリッパ)に金属製型枠を装着し雰囲気温度が乾熱165℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)しセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、室温近傍で型枠から成型品(スリッパ)を脱着し、製品(スリッパ)を得た。
【0042】
次いで、ポリプロピレン製の洗濯ネットに製品(スリッパ)を入れてJIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後におけるスリッパのアッパー部(甲)の寸法変化率は経糸方向−0.2%、緯糸方向−0.2%、W&W性は3.8級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0043】
(比較例1)
下記薬剤水溶液に変更した他は実施例1と同様の方法でランプシェードを得た。
(水溶液処方)
ナイスポール(登録商標)NF−20(日華化学社製 帯電防止剤) 1重量部
カセゾール(登録商標)AV−15(日華化学社製 変成PVA系樹脂)0.5重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
水 97.5重量部
【0044】
上記のランプシェードの表面を裏返しにして洗濯ネットに入れ、JIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後のランプシェードの寸法変化は経方向−3.5%、緯糸方向−3.2%、W&W性2.5級、耐光堅牢度は4級以上でありメヨレは生じていないが、型崩れや皺、毛羽立ちの発生など外観品位を著しく損ねる結果となり好ましいものにはならなかった。
【0045】
(比較例2)
下記薬剤水溶液に変更した他は実施例2と同様の方法でスリッパを得た。
(水溶液処方)
ナイスポール(登録商標)NF−20(日華化学社製 帯電防止剤) 1重量部
カセゾール(登録商標)AV−15(日華化学社製 変成PVA系樹脂)0.5重量部
サンバリア F−68(センカ社製 耐光向上剤) 1重量部
水 97.5重量部
【0046】
上記のスリッパをポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で形状を手で整え、平置風乾によって乾燥した。
乾燥前後におけるスリッパのアッパー部(甲)の寸法変化率は経糸方向−3.2%、緯糸方向−3.5%、W&W性は2.3級、耐光堅牢度は4級以上でありメヨレは生じていないが、型崩れや皺、毛羽立ちなど外観品位を損ねるのみならず、洗濯後の寸法変化によって履き心地を損ねるものとなり好ましいものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の成型品は、セルロース系繊維を少なくとも一部に含む成型品であり、本発明によって、洗濯処理を施しても型崩れや寸法変化の問題が少なく、審美性を損なう洗濯皺もつき難い、手袋や足袋、スリッパなど衣料や履物類、タペストリー、暖簾、カーテン、テーブルクロス、ランプシェードなど生活資材用途に好適な成型品の提供が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維を繊維材料重量比率の少なくとも30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型され、下記を満足することを特徴とする成型品。
AATCC 124−1984によるW&W性評価 3.0級以上
JIS L0217ー1995 103法に準じた洗濯方法による寸法変化率
−3.0%以上+3.0%以下
JIS L0842−1996による耐光堅牢度 3級以上
【請求項2】
樹脂加工時に用いる樹脂溶液が、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル、テトラブタンカルボン酸、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素から選択される少なくとも1種類と、金属塩系触媒、及び耐光向上剤を含んでなることを特徴とする請求項1記載の成型品。
【請求項3】
樹脂加工が、織編物を樹脂溶液に浸漬、乾燥する加工であることを特徴とする請求項1及び2に記載の成型品。

【公開番号】特開2007−23399(P2007−23399A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204577(P2005−204577)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】