説明

扇風機用簡易冷風装置

【課題】既存の扇風機に取り付けるだけで扇風機を冷風機(冷風扇)に変えて冷たい風を送り、室温をエアコンの冷房設定温度よりも数℃下げて節電しながら快適に過ごすことができる、便利で経済的な扇風機用簡易冷風装置を提供する。
【解決手段】扇風機10の羽根10bの前側に配置される通風自在な保水材1と、この保水材より高い位置に設置される貯水容器2と、この貯水容器に貯溜された水を保水材1に供給する給水チューブ3とを備えた扇風機用簡易冷風装置とする。この簡易冷風装置を扇風機10に取り付けて保水材1を扇風機の羽根10aの直前に配置し、貯水容器2の内部の水を給水チューブ3を通じて保水材1に供給、浸透させながら扇風機の羽根10aを回して送風すると、保水材1に浸透して保持された水が保水材1を通過する風により気化して気化熱を奪うため、扇風機10が冷風機(冷風扇)として働き、周囲の温度を数℃下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の扇風機に取付けるだけで冷たい風を送ることができる扇風機用簡易冷風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災による原発事故等の影響で、昨今は電力供給が危機的な状況にあり、また、地球温暖化その他の環境問題の観点からも、節電の必要性が指摘されているが、我が国は温暖化の影響で亜熱帯の様相を強め、夏季はエアコンによる冷房なしでは過ごしにくいのが実情であり、快適に過ごすためにエアコンの冷房温度を低く設定すると、電力消費量が増大して節電の要請に反することになる。
【0003】
そこで、エアコンの冷房温度を28℃以上と高く設定して節電しながら快適に過ごす方法として、エアコンと冷風機(冷風扇)を併用することが考えられ、また、湿度に注意をして冷風機を単独で使用することも有効と考えられる。
【0004】
ここで、従来の冷風機(冷風扇)として、例えば図5に示すように、本体ケース101の内部に、水を貯溜する水タンク102と、本体ケースの取入口101aから取り入れた空気を吹出口101bから吹き出すファン103を設けると共に、本体ケース101内における空気の流れ方向と交差する位置に水フィルタ104を設け、この水フィルタ104の上流側に前記水タンク101内の水を噴霧させる超音波噴霧装置105を設けたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
ところが、このような冷風機は扇風機に比べると高価であり、必要性もあまり高くないことから、扇風機は持っていても冷風機まで持っている家庭は少ないのが現状である。そのため、冷風機を新たに購入し、上記のようにクーラーと冷風機を併用したり冷風機を単独使用したりして節電するのは、経済的な負担が大きく実行し辛いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−32921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、その解決しようとする課題は、既存の扇風機に取り付けるだけで扇風機を冷風機(冷風扇)に変えて冷たい風を送り、室温をエアコンの冷房設定温度よりも数℃下げて節電しながら快適に過ごすことができる、便利で経済的な扇風機用簡易冷風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る扇風機用簡易冷風装置は、扇風機の羽根の前側の部分(即ち、回転する羽根から送風される風と、その風を受け得る何らかの対象物と、の間に位置する部分)に配置される通風自在な保水材と、この保水材より高い位置に設置される貯水容器と、この貯水容器に貯溜された水を上記保水材に供給する給水チューブと、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の扇風機用簡易冷風装置においては、前記貯水容器が、扇風機のモーター収容ケースに取付けられた支持台の上に設置されることが好ましい。そして、前記保水材は、保水能力を有する通風自在な水浸透性の織布又は不織布であること好ましい。また、前記給水チューブには、給水量調節具を設けることが好ましく、この給水チューブの先端と前記保水材は、水浸透性の繊維集合塊を介して接続されていることが好ましい。更に、前記保水材の下方には、落下する水滴を受ける受水部材を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の扇風機用簡易冷風装置(以下、簡易冷風装置という)を既存の扇風機に取り付けて保水材を扇風機の羽根の前側の部分に配置し、保水材より高い位置に設置した貯水容器の内部の水を給水チューブを通じて保水材に供給、浸透させながら扇風機の羽根をモータで回して送風すると、保水材に浸透して保持された水が保水材を通過する風により気化して気化熱を奪うため、既存の扇風機が冷風機(冷風扇)として働き、周囲の温度を数℃ほど下げることができる。
【0011】
従って、本発明の簡易冷風装置を取り付けた既存の扇風機とエアコンを併用すると、エアコンの冷房温度を28℃以上と高く設定して節電しても、周囲の温度はエアコンの設定温度より数℃ほど低くなるので、快適に過ごすことが可能となる。このようにエアコンを併用すると、室内がエアコンによって除湿されるため、湿度上昇により黴が発生するおそれを解消することも可能となる。
【0012】
本発明の簡易冷風装置を取り付けた既存の扇風機は、冷風機として単独使用してももちろんよいが、その場合は、室内の湿度が高くなり過ぎないように、一定時間ごとに日陰の比較的冷たい外気を導入して室内を換気することが望ましい。
【0013】
扇風機のモーター収容ケースに取付けられた支持台の上に貯水容器が設置される簡易冷風装置は、扇風機の周囲に貯水容器の設置スペースを確保する必要がないため省スペース化を図ることができ、体裁も良好である。
【0014】
そして、保水材として保水能力を有する通風自在な水浸透性の織布又は不織布を用いた簡易冷風装置は、織布又は不織布のほぼ全体に水が浸透して保持され、この織布の織り目又は不織布の繊維間隙を通過する風によってすみやかに気化して多量の気化熱を奪うため、冷却効率が良好である。
【0015】
また、給水チューブに給水量調節具を設けた簡易冷風装置は、保水材のほぼ全体に水が浸透して保持されるように、保水材への給水量を給水量調節具によって過不足なく調節することができ、この給水チューブの先端と保水材を水浸透性の繊維集合塊を介して接続した簡易冷風装置は、給水チューブの先端から水が漏れることなく、繊維集合塊の内部空隙を浸透して保水材に供給することができる。
【0016】
更に、保水材の下方に、落下する水滴を受ける受水部材を設けた簡易冷風装置は、保水材に過剰量の水を供給した場合でも、保水材から落下する水が受水部材で受け止められるため、保水材の下方の床や畳が水浸しになるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】扇風機に取り付けた本発明の一実施形態の簡易冷風装置を示す正面図である。
【図2】扇風機に取り付けた同実施形態の簡易冷風装置を示す背面図である。
【図3】扇風機に取り付けた同実施形態の簡易冷風装置を示す右側面図である。
【図4】受水部材を省略した同実施形態の簡易冷風装置の縦断面図である。
【図5】従来の冷風機(冷風扇)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の簡易冷風装置の代表的な実施形態について詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、また、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0019】
図1、図2及び図3はそれぞれ扇風機に取り付けた本発明の一実施形態の簡易冷風装置を示す正面図、背面図、右側面図であり、図4は受水部材を省略した同実施形態の簡易冷風装置の縦断面図である。
【0020】
図1〜図4に示すように、既存の扇風機10に取り付けられる本発明の簡易冷風装置は、必須構成部材として、通風自在な保水材1、1と、貯水容器2と、給水チューブ3、3を具備したものである。
【0021】
通風自在な保水材1、1は、図1及び図3に示すように、扇風機10のフロントカバー10aに固定されて、扇風機10の羽根10bの前側の部分に配置されている。保水材1、1としては、保水能力を有する通風自在な水浸透性の織布や不織布が適しており、特に、保水能力が高く水浸透性に優れた親水性有機繊維からなる織布や不織布が好ましく使用される。保水材1、1は水を含んだ状態でも部分的に通風自在である場合もある。メッシュ状であってもガーゼ状であってもよい。目付けは本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択する。
【0022】
本実施形態の簡易冷風装置では、左右一対の矩形状乃至は帯状の保水材1、1をフロントカバー10aに貼り付けて羽根10bの前側の部分に配置しているが、保水材の形状や個数は任意であり、例えば、フロントカバー10aの全面を覆う円形状や格子状の保水材を一つだけ(又は複数)羽根10bの前側の部分に配置してもよい。羽根10bからの送風をできるだけ妨げず、保水材1、1に含まれる水を効果的に気化させるという観点から、羽根10bの前側が部分的に覆われるような形状の保水材1、1を用いるのが好ましい。
【0023】
貯水容器2は水を貯溜する蓋付きの箱形容器であって、図4に示すように、蓋2aにキャップ2bの付いた入水口2cを設けた透明ないし半透明のプラスチック製の容器が好ましく使用される。この貯水容器2は、容器内部の貯水量を外部から目視でき、貯水量が少なくなったらキャップ2bを外して入水口2cから簡単に水を補給できるからである。この貯水容器2の前側壁の下部には、図1及び図4に示すように左右一対の凹入部2d、2dが形成されており、それぞれの凹入部2dに形成された出水口2eには、給水チューブ3の上端のキャップ3aが水密的に差込み接続されている。
【0024】
上記の貯水容器2は、図2及び図3に示すように、扇風機10のモーター収容ケース10cに取り付けられた支持台4の天板4aの上に載置され、保水材1、1よりも高い位置に設置されている。この支持台4は、図2に示すように背面から見た形状が略H形の基台4bの上端に天板4aを設けたもので、モーター収容ケース10cを跨ぐように基台4bを載置し、左右のボルト4c、4cでモーター収容ケース10cの下側のネック部10dを挟持することによって、脱落しないようにモーター収容ケース10cに固定されている。
【0025】
支持台4の基台4bの形状は略H形に限定されるものではなく、羽根10bによって生じる背後から前方に向かう空気の流れを実質的に妨げない通風性の良好な形状であって、且つ、モーター収容ケース10cに安定して取り付けられる形状であれば、どのような形状のものでもよい。
【0026】
給水チューブ3、3は、貯水容器2の内部に貯溜された水を保水材1、1に供給するチューブであって、好ましくは3〜5mm程度、更に好ましくは4mm程度の内径を有する軟質合成樹脂又はゴム製の柔軟なチューブが使用される。前記のように、この給水チューブ3の上端のキャップ3aは貯水容器2の出水口2eに水密的に差込み接続されており、給水チューブ3の下端は、図4に示すように水浸透性の繊維集合塊1aを介して保水材1の上端部に接続されている。
【0027】
そして、この繊維集合塊1aは、保水材1の上端部に設けた不透水性のポケット1bに詰め込まれている(縫製や接着剤によって接続されていてもよく、ポケットが無くてもよい。)。従って、貯水容器2から給水チューブ3を通って流落する水は、給水チューブ3と保水材1との接合箇所からこぼれ落ちることなく、繊維集合塊1aの内部空隙を浸透して保水材1に供給されるようになっている。
【0028】
図4に示すように、この給水チューブ3には、いわゆるバルブ機能を有するような給水量調節具5が設けられ、供給された水が保水材1のほぼ全体に浸透して保持されるように、保水材1への給水量を過不足なく調節できるようになっている。
【0029】
この給水量調節具5は、断面U字形の調節具本体5aの左右の内面に傾斜溝5bを形成し、この傾斜溝5bに調節ローラ5cの軸を嵌め込んだものであって、調節ローラ5cを回転させながら傾斜溝5bに沿って一方向に移動させると、調節ローラ5cと調節具本体5aの底面との間隔が漸減し、給水チューブ3が調節ローラ5cで押圧されて給水量が減少するようになっている。
【0030】
そして、調節ローラ5cを回転させながら傾斜溝5bに沿って反対方向に移動させると、調節ローラ5cと調節具本体5aの底面との間隔が漸増し、調節ローラ5cによる給水チューブ3の押圧が徐々に解除されて給水量が増すようになっている。
【0031】
なお、給水量調節具は上記の給水量調節具5に限定されるものではなく、例えば、公知の流量調節弁などを給水チューブ3の途中に設けるようにしてもよい。また、給水量調節具5は省略してもよい。
【0032】
更に、保水材1、1の下方には、図1及び図3に示すように、樋状の受水部材6がチェーン6a、6aなどの吊り具で吊り下げられており、保水材1に過剰量の水を供給した場合でも、保水材1の下端から落下する水滴が受水部材6で受け止められるようになっている。
【0033】
以上のような構成の簡易冷風装置を取り付けた既存の扇風機10の羽根10bを回して送風すると、貯水容器2から給水チューブ3、3を通じて保水材1、1に供給され、浸透、保持された水が、保水材1、1を通過する風により気化して気化熱を奪うため、既存の扇風機10が冷風機(冷風扇)として働き、周囲の温度を数℃ほど下げることができる。
【0034】
従って、この簡易冷風装置を取り付けた扇風機10とエアコンを併用すると、エアコンの冷房温度を28℃以上と高く設定して節電しても、周囲の温度はエアコンの設定温度より数℃ほど低くなるので、快適に過ごすことができる。このようにエアコンを併用すると、室内がエアコンによって除湿されるため、湿度上昇により黴が発生するおそれを解消することもできる。
【0035】
保水材1、1への給水量は、実験した結果、2〜3cc/秒に調節することが好ましく、この程度の給水量であると、保水材1、1のほぼ全体に水が浸透して保水材1、1の下端から落下することなく保持され、160〜240cal/秒(576〜864kcal/時)の気化熱を奪って周囲の温度を約3℃ほど下げることができる。なお、エアコンを併用すると室内は除湿されるが、扇風機を長時間、連続運転すると湿度が上昇するので、約3時間以上の連続運転は避けることが望ましい。
【0036】
また、この簡易冷風装置を取り付けた扇風機は、冷風機として単独使用してももちろんよいが、その場合は、室内の湿度が高くなり過ぎないように、1〜2時間ごとに日陰の比較的冷たい外気を導入して室内を換気することが望ましい。
【0037】
なお、貯水容器2は、扇風機10の周辺の保水材1より高い箇所に設置してもよいが、この簡易冷風装置のように扇風機10のモーター収容ケース10cに取り付けられた支持台4の上に設置すると、扇風機10の周囲に貯水容器2の設置スペースを確保する必要がなくなるため省スペース化を図ることができ、体裁も良くなる利点がある。また、貯水容器2の水に水溶性芳香剤を数滴たらせば、室内を良い香りで満たすことができる利点もある。
【0038】
また、貯水容器2内の水には、抗菌剤や殺菌剤、除菌剤、アロマオイル等を添加してもよい。
【0039】
以上、代表的な実施形態を挙げて本発明の簡易冷風装置を説明したが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変更態様を許容し得るものであことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1・・・保水材、
1a・・・繊維集合塊、
2・・・貯水容器、
3・・・給水チューブ、
4・・・支持台、
5・・・給水量調節具、
6・・・受水部材、
10・・・扇風機、
10b・・・羽根、
10c・・・モーター収容ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇風機の羽根の前側に配置される通風自在な保水材と、
前記保水材より高い位置に設置される貯水容器と、
前記貯水容器に貯溜された水を上記保水材に供給する給水チューブと、
を備えていることを特徴とする扇風機用簡易冷風装置。
【請求項2】
前記貯水容器が、扇風機のモーター収容ケースに取付けられた支持台の上に設置されること、を特徴とする請求項1に記載の扇風機用簡易冷風装置。
【請求項3】
前記保水材が、保水能力を有する通風自在な水浸透性の織布又は不織布であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の扇風機用簡易冷風装置。
【請求項4】
前記給水チューブに給水量調節具が設けられていること、を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の扇風機用簡易冷風装置。
【請求項5】
前記給水チューブの先端と前記保水材が水浸透性の繊維集合塊を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の扇風機用簡易冷風装置。
【請求項6】
前記保水材の下方に、落下する水滴を受ける受水部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の扇風機用簡易冷風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113200(P2013−113200A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259406(P2011−259406)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(511262740)田中商事株式会社 (1)
【出願人】(511288315)株式会社ファーストシステム (1)
【Fターム(参考)】