説明

手摺型エキスパンションジョイント

【課題】 移送・輸送能率の向上と設置施工時間の短縮を図り、変形・損傷しても円滑な相対移動を確保して各建物の相対変位吸収の信頼性を高め、変形箇所または損傷箇所だけの交換を可能にして経済的な負担を軽減できる手摺ユニットを備えた手摺型エキスパンションジョイントを提供する。
【解決手段】 各手摺ユニット39は、側壁37a,37bに対して矢印X方向に相対移動可能な第1部位54と、外壁35に対して矢印Y方向に相対移動可能な第2部位55とを備え、これらを連結板68で連結する。第1部位54は、目地プレート38の矢印Y方向両端部に立設された四辺組柵体によって構成し、第2部位は55、平常時はスプリング57の付勢により矢印Y方向の寸法が縮小され、各建物31,32の矢印Y方向への相対移動時にはスプリング57の付勢に抗して矢印Y方向の寸法が個別に拡大される拡縮壁によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う建物間の目地部を各建物の相対変位の吸収を可能に覆う手摺型エキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
図16〜図22は、従来の渡り通路の目地装置(手摺型エキスパンションジョイント)21を示し、この手摺型エキスパンションジョイント21は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
手摺型エキスパンションジョイント21は、一方の建物2の外部通路3の外壁4に形成された渡り通路用開口部1と、この渡り通路用開口部1と目地部6を介して連通するように他方の建物7より一方の建物2に向かって突出するように設けられた渡り通路5と、この渡り通路5の目地部側端部の凹部(床面)8上に一端部が前後方向にスライド移動可能に支持され、他端部が渡り通路用開口部1の凹部(床面)10に左右方向にスライド移動可能に取付けられた目地プレート12と、渡り通路5の目地部側の側壁16に一端部が前後方向にスライド移動可能に取付けられ、他端部が渡り通路用開口部1を形成した外壁4に左右方向にスライド移動可能に取付けられた一対のスライド側壁15とからなる。
【0004】
前記構成の手摺型エキスパンションジョイント21は、地震によって一方の建物2と他方の建物7が相互に近接する方向に相対変位して、目地部6が狭くなると、図21のように、目地プレート12と渡り通路5とが前後方向にスライド移動して、各建物2,7の近接する方向への相対変位を吸収するとともに、一対のスライド側壁15の渡り通路側も渡り通路5の側壁16と前後方向にスライド移動して、各建物2,7の近接する方向への相対変位を吸収する。また、地震によって一方の建物2と他方の建物7が相互に離反する方向に相対変位して、目地部6が広くなると、目地プレート12と渡り通路5とが前後方向にスライド移動して、各建物2,7の離反する方向への相対変位を吸収するとともに、一対のスライド側壁15の渡り通路5側も渡り通路5の側壁16と前後方向にスライド移動して、各建物2,7の離反する方向への相対変位を吸収する。
【0005】
一方、地震によって一方の建物2と他方の建物7が左右方向に相対変位した場合には、図22のように、一方の建物2の外部通路3の外壁4と目地プレート12とが左右方向にスライド移動して、各建物2,7の左右方向への相対変位を吸収するとともに、一対のスライド側壁15の外部通路3側が外壁4と左右方向にスライド移動して、各建物2,7の左右方向への相対変位を吸収する。
【0006】
【特許文献1】特許2906374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に記載の手摺型エキスパンションジョイント21における各スライド側壁15は、外壁4と渡り通路5の目地部側の側壁16の双方に上から被せることができるように、下端部開口した投影平面形状が略L字形を呈する内外二重構造の板金製のものである。そのため、嵩が高くかつ、重量が重い。したがって、製作工場から格納倉庫への近距離移送時や格納倉庫から施工現場への長距離輸送時における取り扱いが困難で移送能率および輸送能率の向上を妨げる。また、施工現場においては、各スライド側壁15を外壁4と渡り通路5の目地部側の側壁16の双方に上から被せる煩雑な設置作業が要求されるので施工時間が長くなるなどの問題点を有する。
【0008】
また、内外二重構造の板金によって製作されて外壁4と渡り通路5の目地部側の側壁16の双方に上から被せられる各スライド側壁15では、設計時に想定していなかった過大な力が作用して、各スライド側壁15が塑性変形または損傷すると、目地部側の側壁16と各スライド側壁15との前後方向の円滑なスライド移動および外壁4と各スライド側壁15との左右方向の円滑なスライド移動が妨げられ、つぎに地震が発生したとき、各スライド側壁15と目地部側の側壁16との前後方向の円滑な相対移動および各スライド側壁15と外壁4との左右方向の円滑な相対移動が不能になる場合があり、一方の建物2と他方の建物7の前後方向および左右方向への相対変位の吸収に対して信頼性が低いという問題がある。
【0009】
さらに、内外二重構造の板金製の各スライド側壁15では、塑性変形箇所または損傷箇所の修復が困難であることにより、塑性変形または損傷が生じると、その程度の如何にかかわらず、スライド側壁15全体を交換しなければならないので、保守管理が煩雑で保守管理上の経済的な負担が大きくなるという問題もある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、嵩の低下と軽量化により移送時または輸送時の取り扱いを容易にして移送能率および輸送能率の向上を図り、施工現場での設置作業を容易にして施工時間を短縮するとともに、万一、塑性変形または損傷しても円滑な相対移動を確保して、一方の建物と他方の建物の相対変位の吸収に対する信頼性が高められ、かつ、塑性変形箇所または損傷箇所だけの交換を可能にすることで保守管理を容易にして保守管理上の経済的な負担を軽減できる手摺ユニットを備えた手摺型エキスパンションジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る手摺型エキスパンションジョイントは、一方の建物の外部通路の外壁に形成された渡り通路用開口部と、この渡り通路用開口部と目地部を介して連通するように他方の建物より一方の建物に向かって突出するように設けられた渡り通路と、この渡り通路の床面上に一端部が前記各建物の近接および離反する第1方向にスライド移動可能に支持され、他端部が渡り通路用開口部に臨む外部通路の床面に対して前記第1方向に水平面上で直交する第2方向にスライド移動可能に取付けられた目地プレートと、前記渡り通路の目地部側の側壁に対して前記第1方向に相対移動可能な第1部位と、前記渡り通路用開口部が形成された外壁に対して前記第2方向に相対移動可能な第2部位とからなる手摺ユニットを一対備えた手摺型エキスパンションジョイントにおいて、
前記各手摺ユニットの第1部位は、前記目地プレートの前記目地部側に立設されて該目地プレート上位の通行域と目地部との間に介在する四辺組みされた柵体または四辺の枠体と該枠体に嵌め込まれたパネルを備えた羽目板構造体からなり、
前記各手摺ユニットの第2部位は、前記第2方向の一端部に設けた係合部材がスプリングに付勢されて前記外壁に設けたストッパに係合し、第2方向の他端部が前記各第1部位の前記渡り通路用開口部側の端部に連結部材を介して連結されて外壁の目地部側立面に沿って立設しているとともに、平常時には前記スプリングの付勢により第2方向の寸法が各手摺ユニットにおいて縮小され、前記各建物の第2方向への相対移動時には前記スプリングの付勢に抗して第2方向の寸法が各手摺ユニットの一方または他方で個別に拡大されて前記渡り通路用開口部を前記目地部から遮蔽する拡縮壁によって構成されていることを特徴としている。
【0012】
これによれば、各手摺ユニットは、連結部材による連結を解除して第1部位と第2部位とを個々に分離できる。これにより、それぞれの嵩を低くして軽量化できるので、移送時または輸送時の取り扱いが容易になって移送能率および輸送能率の向上を図れる。また、各手摺ユニットの第1部位は、施工現場において目地プレートの目地部側に立設する簡単な作業によって設置でき、各手摺ユニットの第2部位は、第2方向の一端部に設けた係合部材を外壁に設けたストッパに係合可能に対応させ、かつ、第2方向の他端部を各第1部位の渡り通路用開口部側の端部に連結して外壁の目地部側立面に沿って立設する簡単な作業によって設置できるので、施工現場での設置作業が容易になって施工時間を短縮できる。さらに、各手摺ユニットの第1部位は目地プレートに立設され、第2部位は、その第2方向の他端部が各第1部位の渡り通路用開口部側の端部に連結された状態で外壁の目地部側立面に沿って立設されていることにより、設計時に想定していなかった過大な力が作用して、各手摺ユニットが塑性変形または損傷しても、その塑性変形または損傷は、渡り通路の目地部側の側壁および渡り通路用開口部を形成した外壁に影響しないので、目地部側の側壁および外壁との円滑な相対移動が確保されて、各建物の第1方向および第2方向への相対変位の吸収に対する信頼性が高められる。
【0013】
また、各手摺ユニットの第1部位は、前記第1方向にのびる笠木部材と笠木受け部材とを含む上弦材と、該上弦材の下側で対向する下弦材と、上弦材と下弦材の少なくとも第1方向両端部を互いに連結する一対の支柱と、これら支柱の間に配されて上弦材と下弦材を互いに連結する複数の竪桟とを備えて四辺組みされた柵体からなることを特徴としている。
【0014】
これによると、設計時に想定していなかった過大な力が第1部位に作用して、その上弦材、下弦材、支柱あるいは竪桟に塑性変形または損傷が生じても、塑性変形または損傷した上弦材、下弦材、支柱あるいは竪桟だけを交換すればよく、第1部位をすべて交換する必要がないので、保守管理が容易であるとともに、保守管理上の経済的な負担を削減できる。
【0015】
さらに、各手摺ユニット第2部位は、上下方向にのびる複数枚の壁板を第2方向に延在して投影平面形状ジグザグに配列するとともに、ジグザグの各接点部と第2方向両端部の外壁寄りの各端部をヒンジ機構によって回動自在に連結してなる第2方向に拡縮自在な拡縮壁によって構成されていることを特徴としている。
【0016】
これによると、設計時に想定していなかった過大な力が第2部位に作用して、その複数枚の壁板のいずれかあるいはヒンジ機構のいずれかに塑性変形または損傷が生じても、塑性変形または損傷した複数枚の壁板のいずれかあるいはヒンジ機構のいずれかだけを交換すればよく、第2部位をすべて交換する必要がないので、保守管理が容易であるとともに、保守管理上の経済的な負担を削減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、嵩の低下と軽量化により移送時または輸送時の取り扱いを容易にして移送能率および輸送能率の向上を図り、施工現場での設置作業を容易にして施工時間を短縮するとともに、万一、塑性変形または損傷しても円滑な相対移動を確保して、一方の建物と他方の建物の相対変位の吸収に対する信頼性が高められ、かつ、塑性変形箇所または損傷箇所だけの交換を可能にすることで保守管理を容易にして保守管理上の経済的な負担を軽減できる手摺ユニットを備えた手摺型エキスパンションジョイントを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る手摺型エキスパンションジョイントの好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の手摺型エキスパンションジョイント30(以下の説明では、エキスパンションジョイント30という)の平面図である。
【0019】
図1において、エキスパンションジョイント30は、隣接した一方の建物31と他方の建物32の間に介在する目地部33を跨いで、一方の建物31の外部通路34の外壁35に形成された渡り通路用開口部36と、他方の建物32から一方の建物31の渡り通路用開口部36に向けて突出するように設けた渡り通路37とを連繋して、各建物31,32間の通行を可能にするとともに、各建物31,32が地震によって相互に近接および離反する第1方向(矢印Xの方向)と、第1方向に水平面上で直交する第2方向(矢印Yの方向)の相対変位を許容する。
【0020】
エキスパンションジョイント30は、目地プレート38と、一対の手摺ユニット39とを備える。
【0021】
図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は拡大して示す図1のIII−III矢視図、図4は図1のIV−IV矢視図である。
【0022】
図1〜図4において、目地プレート38の第1方向一端部は、渡り通路37の目地部側の側壁37a,37bの間で床面41上にスライド移動可能に支持されている。すなわち、目地プレート38の裏面に第2方向に所定間隔を隔てて第1方向に延在する複数本のスライドバー40(ただし、図3に1本のスライドバー40のみが示されている)が取付けられ、各スライドバー40の第1方向一端部が渡り通路37の床面41上にスライド移動可能に支持されている。
【0023】
目地プレート38の第1方向他端部は、図3に示すように、渡り通路用開口部36に臨む外部通路34の床面42に対して第1方向に水平面上で直交する第2方向にスライド移動可能に取付けられる。すなわち、目地プレート38の第1方向他端部には、その裏面に第2方向に延在してスライドレール45を取付け、このスライドレール45を介してスライドレール受け46にスライド移動可能に支持される。
【0024】
スライドレール45は、ステンレス鋼またはアルミニウム合金の押し出し形材からなり、その下辺部45aの幅方向(第1方向)両端部に上向きの係合片45bが長手方向(第2方向)全長に延在して形成され、上辺部45cの幅方向(第2方向)両端部に上向きのボルト嵌合溝45dが長手方向(第2方向)全長に延在して形成されているとともに、各ボルト嵌合溝45dの底板45eと各係合片45bの基部とを結ぶ立板45fと、下辺部45aと上辺部45cの幅方向(第2方向)中間部を結ぶ補強リブ45gとを備える。
【0025】
スライドレール受け46は、ステンレス鋼またはアルミニウム合金の押し出し形材からなる断面チャネル形のもので、その長手方向(第2方向)の長さは、スライドレール45のスライド移動を許容するために、スライドレール45の長手方向(第2方向)の長さおよび目地プレート38の幅方向の寸法(第2方向の寸法)よりも充分に大きく設定されている。そして、幅方向(第1方向)両端の各フランジ46aの上端部には、内側へ水平に折曲したスライドレール載置面46bと、このスライドレール載置面46bの内端から下向きにフック状に折曲した係合片46cとが長手方向(第2方向)全長に延在して一体に形成され、各フランジ46aを結ぶウェブ46dは、その上面に長手方向(第2方向)に所定の間隔を隔てて載置される鋼板製の補強プレート47とともに、複数本のアンカーボルト48によって、渡り通路用開口部36に臨む外部通路34の床面42よりも下側で一方の建物31から目地部33に突出して第2方向に延在して設けた支持部49の上面に固定される。
【0026】
目地プレート38の第1方向他端部は、鋼板製の目地プレート取付金物50を介してスライドレール45の上面に取付けられる。すなわち、目地プレート取付金物50は、ウェブ50aと、このウェブ50aの幅方向(第1方向)両端から下向きにのびる一対のフランジ50bおよび各フランジ50bの下端から外側へ水平に折曲した取付片50cを有する断面略ハット形のもので、そのウェブ50aの上面に複数本のビス51によって目地プレート38の第1方向他端部が取付けられている。そして、各取付片50cは、スライドレール45の各ボルト嵌合溝45dにそのヘッド部を嵌合したボルト52と、該ボルト52に螺着されるナット53の間に介在させてボルト52,ナット53を締結することによって、スライドレール45の上面に取付けられている。
【0027】
スライドレール45は、目地プレート取付金物50を介して目地プレート38の第1方向他端部を上面に取付けた状態でスライドレール受け46に第2方向にスライド移動可能に支持される。すなわち、各ボルト嵌合溝45dの底板45eをスライドレール受け46のスライドレール載置面46bに載置するとともに、各係合片45bとスライドレール受け46の各係合片46cとを互いに係合させた状態で第2方向にスライド移動可能に支持され、スライドレール45の下向きの撓曲は、補強プレート47の第2方向両端部が下辺部45aに干渉することによって抑制される。
【0028】
スライドレール45とスライドレール受け46との摺動面の間、つまり、ボルト嵌合溝45dの底板45eとスライドレール載置面46bとの間、各立板45fの外面と各係合片46cの外面との間、各係合片45bと各係合片46cの内面および各フランジ46aとの間のそれぞれに、シリコーン溶液の噴霧によって形成したコーティング材または樹脂テープの貼着によって形成した滑り材からなる潤滑層43を介在させた状態で、スライドレール45をスライドレール受け46により第2方向にスライド移動可能に支持することで、スライドレール45とスライドレール受け46との摺動面の摩擦抵抗を小さくして、目地プレート38と外部通路34との第2方向の相対移動の円滑性が高められる。
【0029】
図1〜図4において、各手摺ユニット39は、渡り通路37の目地部側の側壁37a,37bに対して前記第1方向に相対移動可能な第1部位54と、渡り通路用開口部36が形成された外壁35に対して第2方向に相対移動可能な第2部位55とを備える。
【0030】
図5は一方の第1部位54の上端部およびその近傍を拡大して示す縦断正面図、図6は図5の側面図、図7は図6の平面図、図8は一方の第2部位55と一方の第1部位54および外部通路34の外壁35の上端部およびその近傍を拡大してこれらの取り合いを示す側面図、図9は図8のIX−IX矢視図、図10は図9のX−X矢視図である。
図1〜図7において、各手摺ユニット39の第1部位54は、目地プレート38の幅方向(第2方向)両端部、つまり目地プレート38の目地側端部に立設されて該目地プレート38上位の通行域38A(図2,図4参照)と目地部33との間に介在する四辺組みされた柵体からなる。
【0031】
第1部位54は、第1方向に延びて上下で対向する上弦材54Aと下弦材54Bの長手方向両端部(第1方向両端部)が一対の支柱54Cによって連結され、各支柱54C間には上端部が上弦材54Aに連結され、下端部が下弦材54Bに連結される複数の竪桟54dを設けた四辺組みされた柵体からなり、各支柱54Cの下端部が目地プレート38の幅方向両端部(第2方向両端部)に固定して立設されている。
【0032】
上弦材54Aは、各支柱54Cの上端部および各竪桟54dの上端部を上方から覆い、かつ、目地部側の側壁37a,37bと対向する立面に断面T字状の案内溝56(図5,図10参照)が形成された断面逆凹状の笠木部材54a1と、この笠木部材54a1のリブ54a3が装着され、各支柱54Cの上端部および各竪桟54dの上端部がそれぞれ連結される笠木受け部材54a2とからなり、笠木部材54a1の中空部54a4に引っ張りコイルスプリング57が介在して、その基端部がリブ54a3に固着されている断面L字形の固定金物57A(図3,図6,図7参照)に連結されており、コイルスプリング57の先端部にはワイヤー58の基端部が連結されている。前記上弦材54A、下弦材54B、各支柱54Cおよび竪桟54dは、ステンレス鋼製またはアルミニウム合金製の押し出し形材を使用できる。これにより、第1部位54の生産性および組み立て性が向上する。第1部位54は、アルミニウム合金製のレール70(図5,図7参照)における断面T字形嵌合部70a(図5参照)が笠木部材54a1の断面T字状の案内溝56にスライド自在に嵌合される。レール70はアンカー部材69によって目地部側の側壁37a,37bに固定される。
【0033】
各手摺ユニット39の第2部位55は、各建物31,32の第2方向相対移動時に第2方向の寸法が交互に拡縮する拡縮壁によって構成されており、第2方向の一端部に取付けた上下一対のアルミニウム合金製の鍵形係合部材65(図3,図9参照)が後述するように前記スプリング57に引っ張り付勢されることで、上下一対のアルミニウム合金製のストッパ67(図3,図9参照)に係合する。各ストッパ67はアンカー部材66によって外壁35の目地部側立面35aに固定される。そして、第2方向の他端部には上下一対のアルミニウム合金製の連結板(連結具)68(図3,図9,図10参照)が取付けられ、各連結板68を介して第2方向の他端部が各第1部位54の渡り通路用開口部36側の端部、つまり各第1部位54における渡り通路用開口部36側の支柱54Cに連結されて、外壁35の目地部側立面35aに沿って立設されている。
【0034】
図1,図4,図8,図9,図10において、第2方向に拡縮自在な拡縮壁によって構成された第2部位55は、上下方向にのびる複数枚(たとえば8枚)の壁板55A〜55H(図9参照)を第2方向に延在して投影平面形状ジグザグに配列するとともに、ジグザグの接点部P1〜P7と、第1部位54の先端部から最も離間している第2方向外端部の壁板55Aにおける外壁35寄りの端部P8および第1部位54の先端部に最も近接している第2方向内端部の壁板55Hにおける外壁35寄りの端部P9をヒンジ機構59によって回動自在に連結することによって構成されている。
【0035】
各ヒンジ機構59は、各壁板55A〜55Hの幅方向(第1方向)両端部において上下方向全長に延在して形成したセクター歯部60と、各壁板55A〜55Hの開閉運動および該開閉運動に伴うセクター歯部60の噛合回動を許容する保持部材61とからなる。
【0036】
保持部材61は、断面略チャネル形のベース部61aと、該ベース部61aに連設されて第1方向に突出する断面U字形の外竪部61bとを備えてセクター歯部60の上下方向全長に延在している。ベース部61aには、前記各接点部P1〜P7において一対のセクター歯部60の噛合回動を許容するように各セクター歯部60の回動中心部に嵌め込まれて各セクター歯部60を回動自在に保持する円形断面の一対の保持頭部61cが形成されている。また、前記端部P8,P9のそれぞれに形成されているセクター歯部60は、ベース部61aの一方の保持頭部61cが回動中心部に嵌め込まれるとともに、ベース部61aの他方の保持頭部61cが回動中心部に嵌め込まれたセクター歯部単品60Aと噛み合うように保持部材61によって保持されている。幅方向両端部にセクター歯部60を形成した各壁板55A〜55Hおよび各保持部材61は、ステンレス鋼製またはアルミニウム合金製の押し出し形材を使用できる。これにより各壁板55A〜55Hと各保持部材61の生産性および組み立て性が向上する。
【0037】
なお、前記各鍵形係合部材65は、前記端部P8におけるヒンジ機構59の構成部材である保持部材61の外竪部61b側面に複数本のビス71によって締結され(図9,図10参照)、前記各連結板68は、その一端部が前記端部P9におけるヒンジ機構59の構成部材である保持部材61の外竪部61b側面に複数本のビス72によって締結されるとともに(図8,図9,図10参照)、他端部は各第1部位54ににおける渡り通路用開口部36側の支柱54Cの前面に複数本のビス73によって締結される(図8,図9,図10参照)。また、各保持部材61の上端開口部は板金製のカバー62によって塞がれる(図8、図10参照)。カバー62は、該カバー62の上から貫通させた一対のタッピングねじ63をベース部61aと外竪部61bに形成した上下方向にのびる凹部64(図9参照)にねじ込んで締結することで各保持部材61の上端に固着される。
【0038】
図1,図3,図8,図9,図10において、各手摺ユニット39の第1部位54における笠木部材54a1とリブ54a3および笠木受け部材54a2は、渡り通路用開口部36側の支柱54Cよりも少し渡り通路用開口部36側に向けて延出されており、その内部に鉛直軸線を有するローラ74が回転自在に取付けられている。
【0039】
前記引っ張りコイルスプリング57の先端部に基端部を連結したワイヤー58は、その先端部近傍付近をローラ74に掛け渡して第2方向へ水平に方向変換し、かつ、先端部近傍を端部P9におけるヒンジ機構59の外竪部61b、ジグザグの接点部P7におけるヒンジ機構59の外竪部61b、ジグザグの接点部P6におけるヒンジ機構59の外竪部61b、ジグザグの接点部P5におけるヒンジ機構59の外竪部61bおよび端部P8におけるヒンジ機構59の外竪部61bの順序で貫通させて、前端部を端部P8におけるヒンジ機構59の外竪部61bより少し突出させ、この突出先端部に止め部材75を固着する。これにより、引っ張りコイルスプリング57の引っ張り力で鍵形係合部材65が付勢されて、鍵形係合部材65をストッパ67に当接させ、各第2部位55の第2方向の寸法を縮小する
【0040】
図1,図3において、目地プレート38の第1方向一端には、ブラケット76を介してスライドレール受け46に取付けられた見切り材77が対応し、目地プレート38の第1方向他端部には、見切り材78が取付けられている。
【0041】
前記構成のエキスパンションジョイント30は、通常時には、図11に示す標準状態で静止している。
【0042】
今、各建物31、32が地震によって近接する第1方向に相対変位して目地部33が狭くなると、図12のように、目地プレート38と渡り通路37および各手摺ユニット39の第1部位54と目地部側の側壁37a,37bがスライド移動して、各建物31,32の近接する方向への相対変位を吸収する。また、図11に示す標準状態で各建物31、32が地震によって離反する第1方向に方向に相対変位して目地部33が広くなると、図13のように、目地プレート38と渡り通路37および各手摺ユニット39の第1部位54と目地部側の側壁37a,37bがスライド移動して、各建物31,32の離反する方向への相対変位を吸収する。
【0043】
図11に示す標準状態で、地震によって一方の建物31が他方の建物32に対して第2方向の右側へ相対変位すると、図14のように、右側の手摺ユニット39における第2部位55は引っ張りコイルスプリング57の付勢に抗して第2方向の寸法が拡大されて渡り通路用開口部36を目地部33から遮蔽するとともに、目地プレート38の他端部が一方の建物31の外部通路34の床面に対してスライド移動することで各建物31,32の相対変位を吸収する。また、図11に示す標準状態で、地震によって一方の建物31が他方の建物32に対して第2方向の左側へ相対変位すると、図15のように、左側の手摺ユニット39における第2部位55は引っ張りコイルスプリング57の付勢に抗して第2方向の寸法が拡大されて渡り通路用開口部36を目地部33から遮蔽するとともに、目地プレート38の他端部が一方の建物31の外部通路34の床面に対してスライド移動することで各建物31,32の相対変位を吸収する。
【0044】
本発明のエキスパンションジョイント30によれば、各手摺ユニット39は、連結板68を取り外すことで第1部位54と第2部位55とに分離して、それぞれの嵩を低くして軽量化できるので、移送時または輸送時の取り扱いが容易になって移送能率および輸送能率の向上を図れる。また、各手摺ユニット39の第1部位54は、施工現場において目地プレート38の幅方向(第2方向)両端部、つまり目地プレート38の目地部側端部に立設する簡単な作業によって設置でき、各手摺ユニット39の第2部位55は、第2方向の一端部取付けた上下一対のアルミニウム合金製の鍵形係合部材65を外壁35の目地部側立面35aに取付けた上下一対のアルミニウム合金製のストッパ67に係合可能に対応させ、かつ、第2方向の他端部は、上下一対のアルミニウム合金製の連結板68を介して各第1部位54の渡り通路用開口部36側の支柱54Cに連結して外壁35の目地部側立面35aに沿って立設する簡単な作業によって設置できるので、施工現場での設置作業が容易になって施工時間を短縮できる。
【0045】
さらに、各手摺ユニット39の第1部位54は目地プレート38に立設され、第2部位55は、その第2方向の他端部が各第1部位54の渡り通路用開口部36側の支柱54Cに連結された状態で外壁35の目地部側立面35aに沿って立設されていることにより、設計時に想定していなかった過大な力が作用して、各手摺ユニット39が塑性変形または損傷しても、その塑性変形または損傷は、渡り通路37の目地部側の側壁37a,37bおよび渡り通路用開口部36を形成した外壁35に影響しないので、目地部側の側壁37a,37bおよび外壁35との円滑な相対移動が確保されて、各建物31,32の第1方向および第2方向への相対変位の吸収に対する信頼性が高められる。
【0046】
また、設計時に想定していなかった過大な力が第1部位54に作用して、その上弦材54A、下弦材54B、支柱54Cあるいは竪桟54dに塑性変形または損傷が生じても、塑性変形または損傷した上弦材54A、下弦材54B、支柱54Cあるいは竪桟54dだけを交換すればよく、第1部位54をすべて交換する必要がないので、保守管理が容易であるとともに、保守管理上の経済的な負担を削減できる。
【0047】
さらに、設計時に想定していなかった過大な力が第2部位55に作用して、その複数枚の壁板55A〜55Hのいずれかあるいはヒンジ機構59のいずれかに塑性変形または損傷が生じても、塑性変形または損傷した複数枚の壁板55A〜55Hのいずれかあるいはヒンジ機構59のいずれかだけを交換すればよく、第2部位55をすべて交換する必要がないので、保守管理が容易であるとともに、保守管理上の経済的な負担を削減できる。
【0048】
なお、前記実施形態では、各手摺ユニット39の第1部位54を、四辺組みされた柵体で説明しているが、本発明に係る第1部位54は、前記実施形態のみに限定されるものではなく、上辺と下辺および上辺と下辺を上下方向に離間して互いに連結する少なくとも一対の支柱からなる四辺の枠体と、該枠体にパネルを嵌め込んだ羽目板構造体によって構成した第1部位54であっても、前記実施形態で説明した四辺組みされた柵体からなる第1部位54と同様の作用・効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】拡大して示す図1のIII−III矢視図である。
【図4】図1のIV−IV矢視図である。
【図5】一方の第1部位の上端部およびその近傍を拡大して示す縦断正面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】一方の第2部位と一方の第1部位および外部通路の外壁の上端部およびその近傍を拡大してこれらの取り合いを示す側面図図である。
【図9】図8のIX−IX矢視図である。
【図10】図9のX−X矢視図である。
【図11】標準静止時の平面図である。
【図12】各建物が近接する方向に相対変位した状態の平面図である。
【図13】各建物が離反する方向に相対変位した状態の平面図である。
【図14】各建物が第2方向に相対変位した一つの状態の平面図である。
【図15】各建物が第2方向に相対変位した他の状態の平面図である。
【図16】従来例の平面図である。
【図17】図16の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図18】図16の3−3線に沿う拡大断面図である。
【図19】従来例の渡り通路用開口部の説明斜視図である。
【図20】従来例のスライド側壁の説明斜視図である。
【図21】従来例の前後方向に移動した状態の説明断面図である。
【図22】従来例の左右方向に移動した状態の説明平面図である。
【符号の説明】
【0050】
30 手摺型エキスパンションジョイント
31 一方の建物
32 他方の建物
33 目地部
34 外部通路
35 外壁
35a 外壁の目地部側立面
36 渡り通路用開口部
37 渡り通路
37a,37b 渡り通路の目地部側の側壁
38 目地プレート
38A 目地プレート上位の通行域
39 一対の手摺ユニット
41 渡り通路の床面
42 外部通路の床面
54 第1部位
54A 上弦材
54a1 笠木部材
54a2 笠木受け部材
54B 下弦材
54C 竪桟
55 第2部位
55A〜55H 壁板
57 引っ張りスプリング(スプリング)
59 ヒンジ機構
65 係合部材
67 ストッパ
68 連結板(連結部材)
P1〜P7 ジグザグの各接点部
P8,P9 端部
矢印X 第1方向
矢印Y 第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の建物の外部通路の外壁に形成された渡り通路用開口部と、この渡り通路用開口部と目地部を介して連通するように他方の建物より一方の建物に向かって突出するように設けられた渡り通路と、この渡り通路の床面上に一端部が前記各建物の近接および離反する第1方向にスライド移動可能に支持され、他端部が渡り通路用開口部に臨む外部通路の床面に対して前記第1方向に水平面上で直交する第2方向にスライド移動可能に取付けられた目地プレートと、前記渡り通路の目地部側の側壁に対して前記第1方向に相対移動可能な第1部位と、前記渡り通路用開口部が形成された外壁に対して前記第2方向に相対移動可能な第2部位とからなる手摺ユニットを一対備えた手摺型エキスパンションジョイントにおいて、
前記各手摺ユニットの第1部位は、前記目地プレートの前記目地部側に立設されて該目地プレート上位の通行域と目地部との間に介在する四辺組みされた柵体または四辺の枠体と該枠体に嵌め込まれたパネルを備えた羽目板構造体からなり、
前記各手摺ユニットの第2部位は、前記第2方向の一端部に設けた係合部材がスプリングに付勢されて前記外壁に設けたストッパに係合し、第2方向の他端部が前記各第1部位の前記渡り通路用開口部側の端部に連結部材を介して連結されて外壁の目地部側立面に沿って立設しているとともに、平常時には前記スプリングの付勢により第2方向の寸法が各手摺ユニットにおいて縮小され、前記各建物の第2方向への相対移動時には前記スプリングの付勢に抗して第2方向の寸法が各手摺ユニットの一方または他方で個別に拡大されて前記渡り通路用開口部を前記目地部から遮蔽する拡縮壁によって構成されていることを特徴とする手摺型エキスパンションジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺型エキスパンションジョイントにおいて、
各手摺ユニットの第1部位は、前記第1方向にのびる笠木部材と笠木受け部材とを含む上弦材と、該上弦材の下側で対向する下弦材と、上弦材と下弦材の少なくとも第1方向両端部を互いに連結する一対の支柱と、これら支柱の間に配されて上弦材と下弦材を互いに連結する複数の竪桟とを備えて四辺組みされた柵体からなることを特徴とする手摺型エキスパンションジョイント。
【請求項3】
請求項1に記載の手摺型エキスパンションジョイントにおいて、
各手摺ユニット第2部位は、上下方向にのびる複数枚の壁板を第2方向に延在して投影平面形状をジグザグに配列するとともに、ジグザグの各接点部と第2方向両端部の外壁寄りの各端部をヒンジ機構によって回動自在に連結してなる第2方向に拡縮自在な拡縮壁によって構成されていることを特徴とする手摺型エキスパンションジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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