説明

手摺

【課題】現場での施工が容易であり、しかも、パネルを確実に保持できる手摺を提供する。
【解決手段】支柱1と、パネル2と、笠木3と、下枠4と、気密材9a,9bとを備えており、支柱1は、躯体6上に所定間隔をあけて複数立設し、笠木3は、各支柱1の上部間に架設するとともに、下向きに開口した上側パネル呑込み溝8を有し、下枠4は、各支柱1の下部間に配置するとともに、上向きに開口した下側パネル呑込み溝13を有しており、パネル2は、上端部を上側パネル呑込み溝8に下方から挿し込んで保持する。パネル挿し込み側溝壁部8aが溝開口部に向かうに従って広がる方向に傾斜しており、上側パネル呑込み溝8と連続する挿し込み空間部17が設けてあり、気密材9a,9bは、挿し込み空間部17におけるパネル挿し込み側隔壁部8bの内周側と、他側溝壁部8cの内周側におけるパネル挿し込み側隔壁部8bの気密材9aよりも下位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段やベランダ、フェンス、スロープ、廊下等に取り付ける手摺に関するものであり、特に斜視や風防、遮光を目的としてパネルを取り付ける態様の手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おもにバルコニー等に適用される手摺は、工場で組立て済のユニット製品を現場に搬送するものであるが、諸事情から現場で組み立てを要するものがある。このうち、現場での組み立てを要する手摺においては、斜視効果や風防用のパネルを取り付けるとき、笠木下端面に設けてある下向きに開口した上側パネル呑込み溝に対し、笠木の斜め下側からパネルを上方に挿し入れるとともに、挿し入れたパネルを回動して垂直に立て、さらに、下枠の下側パネル呑込み溝に落とし込む手順をとる、ケンドン式と呼ばれる手法で取り付けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−166769号公報
【特許文献2】特開2007−138651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、笠木の上側パネル呑込み溝の溝幅がパネル上端部の見込み幅とほぼ同一寸法である場合、パネルを笠木の下方から斜め上方に挿し入れたときに、作業者が目測によってパネル上端部を上側パネル呑込み溝に対して正確に一致させなければ取り付けできないことから、パネルを上側パネル呑込み溝にスムーズに呑み込ませることが難しく、しかも、パネルを溝に呑込ませた後に、パネルと溝との間に気密材を後付けしなければならなかった。このことから、現場での工程が増えて作業が煩わしくなり、手摺を施工する際の作業効率が著しく落ちて工期も長期化するものであった。また、支柱のパネル挿し込み側の見付け面からパネルが持ち出す態様の手摺では、足場からの距離が長くなることにより笠木と下枠間へのパネルの取り付けが更に難しくなり、ベランダのような高所で施工をする場合には作業の危険が伴うものであった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、現場での施工が容易であり、しかも、パネルを確実に保持できる手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明は、支柱と、パネルと、笠木と、下枠と、気密材とを備えており、支柱は、躯体上に所定間隔をあけて複数立設し、笠木は、各支柱の上部間に架設するとともに、下向きに開口した上側パネル呑込み溝を有し、下枠は、各支柱の下部間に配置するとともに、上向きに開口した下側パネル呑込み溝を有しており、パネルは、上端部を上側パネル呑込み溝に下方から挿し込んで保持してあるとともに、その下端部を下側パネル呑込み溝に保持してあり、上側パネル呑込み溝は、溝底側の溝幅に比べて溝開口部の溝幅が広く開口するとともに、少なくともパネル挿し込み側溝壁部が溝開口部に向かうに従って広がる方向に傾斜しており、上側パネル呑込み溝の溝底側より上側には、上側パネル呑込み溝と連続する挿し込み空間部が設けてあり、気密材は、挿し込み空間部におけるパネル挿し込み側隔壁部の内周側と、他側溝壁部の内周側におけるパネル挿し込み側隔壁部の気密材よりも下位置に設けてあることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載の発明では、下枠は、あらかじめパネル下端部に取り付けてあり、下側パネル呑込み溝の他側部には下向きに突出した下枠取付片を有しており、下枠取付片は、上側パネル呑込み溝に差し入れたパネルが垂直に立つ位置まで回動したときに、支柱の側部に設けてある下枠支持材に当接して互いをネジ止め可能に形成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、笠木の上側パネル呑込み溝の溝開口部の溝幅が溝底部の溝幅に比べて広がっており、上側パネル呑込み溝を構成するパネル挿し込み側溝壁部が傾斜することで、その傾斜に沿って挿し入れたパネルの上端部が挿し込み空間部まで案内される。さらに、気密材が挿し込み空間部のパネル挿し込み側隔壁部内周側と他側溝壁部の内周側におけるパネル挿し込み側隔壁部の気密材よりも下位置に設けてあることから、上側パネル呑込み溝に挿し込んだパネルの上端部が気密材に当たらずに入り込み、また、パネルの上端部を軸としてパネルを回動して垂直に立てたときには、溝内に段違いに配置してある両気密材がパネルの両側面にそれぞれ当接するので、パネルが笠木と下枠にしっかりと保持される。このことから、パネルの溝開口が広く形成してあることでパネルに角度を付けて呑込ませることができるとともに、気密材が溝内で上下に段違いに配置してあることにより、角度を付けて斜め下方から挿入れたパネルを溝内で回動し且つパネルを垂直に立てれば、気密材がパネルの両側から当接するので、現場組み立て型の手摺であっても気密材を後付けする必要がない。したがって、容易な作業でパネルを取り付けできて効率的に手摺の組み立てが完了し、施工工期の短縮が図れるようになる。
【0009】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、あらかじめ下側パネル呑込み溝でパネル下端部を呑込む状態で下枠が取り付けてあり、笠木の上側パネル呑込み溝に挿し入れたパネルを回動し、パネルを垂直位置としたときに、下枠のパネル挿し込み側部に有する下枠取付片が支柱側部に当接してネジ止めすることにより、パネルを下側パネル呑込み溝に落とし込む作業が不要となるので、一層効率的な作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施による手摺を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1中Aを拡大して示す縦断面図であり、(b)は、図1中B−B線横断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本実施による手摺の施工手順のうち、パネルの取付手順を示す一部を拡大した縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す縦断面図であり、(a)は、パネルが支柱、笠木、下枠と同一面状に配置される態様の手摺を示す縦断面図であり、(b)は、パネルが両側枠で保持される態様の手摺を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の手摺について、バルコニー手摺に適用した実施形態を各図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施による手摺は、図1のように、躯体6上部のパネル挿し込み側端部に設置するものであり、躯体6上部に所定間隔で複数箇所に起立させる支柱1と、パネル2と、笠木3と、下枠4とから構成してある。支柱1は、中空押出形材で形成されており、下端にはアンカープレート5が取り付けてあるとともに、そのアンカープレート5を躯体6上部に載置し且つネジ11で固定してある。また、支柱1下部のパネル挿し込み側の見付け面1aには、支柱1からパネル挿し込み側に向けて突出した水平片を有する下部ブラケット7がネジ11で固定してあり、その下部ブラケット7の上部には、下枠支持材14がネジ11で固定してある。
【0013】
笠木3は、幅広で且つ縦断面ほぼ横長矩形状の中空押出形材で形成してあり、図2(a)のように、下端部3aには下向きに開口した上側パネル呑込み溝8を有している。また、上側パネル呑込み溝8は、笠木3下端部3aのパネル挿し込み側寄りの位置に設けてあり、上側パネル呑込み溝8を構成するパネル挿し込み側溝壁部8aは、溝底(上側パネル呑込み溝上方)側から笠木3の下端部3a(溝開口部側)に向かって次第に広がる方向に傾斜しており、また、他側溝壁部8cは、ほぼ垂直に形成してあることでほぞ溝状をなしている。さらに、パネル挿し込み側溝壁部8aの上側には、上側パネル呑込み溝8と連続する挿し込み空間部17が設けてあり、この挿し込み空間部17を構成するパネル挿し込み側隔壁部8bは、パネル挿し込み側溝壁部8aの上端部から連続しており、挿し込み空間部17における他側溝壁部8cまでの幅はほぼ均一となっている。また、パネル挿し込み側隔壁部8b内周側におけるパネル挿し込み側溝壁部8a寄りの箇所と、他側溝壁部8cの溝開口部内周側には、それぞれに気密材9a,9bが配置してあり、この気密材9a,9bは、笠木3に設けてある保持溝部10a,10bに嵌合してある。また、笠木3と支柱1の取付構造については、図1を参照すれば、支柱1の上端部にほぼ水平な板状をなす上部ブラケット12が取り付けてあり、笠木3下端部の他側に設けてある凹部3bに嵌合するとともに、ネジ11により笠木3と上部ブラケット12を連通して支柱1上端部にネジ止めしてある。
【0014】
下枠4は、図1と図3(c)(d)のように、下側パネル呑込み溝13を有し、その他側部には、下方に伸びるほぼ垂直な下枠取付片4aが設けてある。また、支柱1のパネル挿し込み側の見付け面1aには、下部ブラケット7がネジ11で固定してあり、下部ブラケット7の上部には、パネル挿し込み側の他側部に垂直壁部14aを有するブロック状をなす下枠支持材14が固定してある。また、下枠支持材14の垂直壁部14aの下端部からパネル挿し込み側に向かって伸びる水平壁部14bが設けてあり、この水平壁部14bには、前述した下枠支持材14のブロック部分とほぼ同一形状をなす押縁材15が嵌合され、下枠4を隠蔽して手摺の外観意匠性を向上させている。そして、パネル2下端部を下側パネル呑込み溝13で保持した下枠4の下枠取付片4aを下枠支持材14の垂直壁部14aに当接してネジ11で固定し、さらに、下枠4を挟むかたちで下枠支持材14の水平壁部14bに押縁材15を嵌合している。
【0015】
次に、本手摺の施工手順のうち、パネルの取付手順について以下に説明する。
第1の手順として、図3(a)のように、パネル2を支柱1パネル挿し込み側から斜め上方に向けて持ち上げ、パネル2の上端部を笠木3の上側パネル呑込み溝8の溝パネル挿し込み側溝壁部8aの傾斜に沿って挿し入れる。
第2の手順として、図3(b)のように、挿し入れたパネル2の上端部先端が笠木3の上側パネル呑込み溝8から挿し込み空間部17まで到達したら、他側溝壁部8cの内周側に設けてある気密材9bにパネル2の他側面が当たる位置まで、パネル2の上端部を軸としてパネル2を他側に向けて回動する。
第3の手順として図3(c)のように、パネル2の回動に伴って、パネル2下端部に取り付けてある下枠4の下枠取付片4aが下枠支持材14の垂直壁部14aに当接するので、その位置で下枠取付片4aと下枠支持材14にネジ11を挿通して互いをネジ止めする。
第4の手順として、図3(d)のように、下枠支持材14の水平壁部14bに押縁材15を嵌合し、押縁材15と下枠支持材14により下枠4を両側から保持する。以上の手順を減ることにより本実施による手摺におけるパネル2の取付作業が完了する。
【0016】
上記の手順を経ることにより、笠木3の上側パネル呑込み溝8と下枠4の下側パネル呑込み溝13に、パネル2の上端部と下端部がそれぞれ保持された手摺が形成される。また、笠木3の上側パネル呑込み溝8の溝開口部がパネル挿し込み側に広く開いており、パネル2の上端部を挿し込むときにパネル2を受け止める的が広くなることで、作業者はパネル2を挿し込みやすくなる。さらに、上側パネル呑込み溝8にパネル2上端部を挿し込んだ後、上側パネル呑込み溝8のパネル挿し込み側溝壁部8a内周側の傾斜を利用してパネル2をさらに押し込み、パネル2の上端部先端を挿し込み空間部17に入れることで、パネル2の回動が妨げられないようにし、ここから、パネル2の上端部を軸としてパネル2を回動してパネル2を垂直な状態に立て、パネル2の下端部に取り付けてある下枠4の下枠取付片4aを下枠支持材14に当接して互いをネジ11止めすることにより、パネル2の他側面とパネル挿し込み側面の両面にそれぞれ気密材9a,9bが当接する。この結果、気密材9a,9bを後付けすることなく、笠木3の上側パネル呑込み溝8と下枠4の下側パネル呑込み溝13にパネル2の上下端部が保持された手摺を形成する。
【0017】
図4(a)(b)に示すものは、本発明の手摺の他の実施形態である。
本実施のものでは、図4(a)のように、パネル2が笠木32と支柱31間、および図示は省略するが下枠で囲まれた位置に保持する手摺である。このような態様の手摺であっても、上側パネル呑込み溝8を上記実施形態(図1に示す手摺)と同様、溝開口部がパネル挿し込み側に広く形成してあり、パネル挿し込み側溝壁部8aが傾斜していることで、パネル2を挿し入れる際、パネル2を容易に取り付けることができる。さらに、図4(b)のように、パネル2が笠木42と両側枠43、及び、図示は省略するが、支柱41のパネル挿し込み側の見付け面から持ち出して取り付けてある下枠の内周側のそれぞれで保持するものでもよい。この場合でも、上記実施形態と同様に、パネル2上端部を笠木42の上側パネル呑込み溝8に斜め下側から角度を付けて挿し入れることにより、パネル2を容易に取り付けることができる。
【0018】
本発明では、笠木3,32,42の形状や大きさについて上記の各実施形態に限定されない。また、パネル2についても、上記各実施形態ではガラス製パネルを使用しているが、その他、樹脂性パネルや木製パネル等であってもよい。また、本発明による手摺は、上記実施形態ではバルコニーに適用したものについて説明しているが、通路やスロープ、階段、間仕切り等、その適用範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0019】
1,31,41 支柱
2 パネル
3,32,42 笠木
4 下枠
4a 下枠取付片
6 躯体
8 上側パネル呑込み溝
8a パネル挿し込み側溝壁部
8b パネル挿し込み側隔壁部
8c 他側溝壁部
9a,9b 気密材
11 ネジ
13 下側パネル呑込み溝
14 下枠支持材
17 挿し込み空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、パネルと、笠木と、下枠と、気密材とを備えており、
支柱は、躯体上に所定間隔をあけて複数立設し、笠木は、各支柱の上部間に架設するとともに、下向きに開口した上側パネル呑込み溝を有し、下枠は、各支柱の下部間に配置するとともに、上向きに開口した下側パネル呑込み溝を有しており、パネルは、上端部を上側パネル呑込み溝に下方から挿し込んで保持してあるとともに、その下端部を下側パネル呑込み溝に保持してあり、上側パネル呑込み溝は、溝底側の溝幅に比べて溝開口部の溝幅が広く開口するとともに、少なくともパネル挿し込み側溝壁部が溝開口部に向かうに従って広がる方向に傾斜しており、上側パネル呑込み溝の溝底側より上側には、上側パネル呑込み溝と連続する挿し込み空間部が設けてあり、
気密材は、挿し込み空間部におけるパネル挿し込み側隔壁部の内周側と、他側溝壁部の内周側におけるパネル挿し込み側隔壁部の気密材よりも下位置に設けてあることを特徴とする手摺。
【請求項2】
下枠は、あらかじめパネル下端部に取り付けてあり、下側パネル呑込み溝の他側部には下向きに突出した下枠取付片を有しており、下枠取付片は、上側パネル呑込み溝に差し入れたパネルが垂直に立つ位置まで回動したときに、支柱の側部に設けてある下枠支持材に当接して互いをネジ止め可能に形成してあることを特徴とする請求項1記載の手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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