説明

投写用ズームレンズおよび投写型表示装置

【課題】広角かつ高倍率で高解像度の投写用ズームレンズを得る。
【解決手段】拡大側から順に、5つのレンズ群G〜Gを配列する。第4レンズ群Gは、拡大側から順に配列された、両凹レンズからなる第8レンズLと、両凸レンズよりなる第9レンズLと、両凹レンズよりなる第10レンズL10と、両凸レンズよりなる第11レンズL11と、両凸レンズよりなる第12レンズL12とからなり、第8レンズLおよび第9レンズLの合成パワーに対する、第8レンズLおよび第9レンズLの間の空気レンズのパワーの比が、0.80から1.80までの数値範囲内に収まるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写用ズームレンズおよびその投写用ズームレンズを搭載した投写型表示装置に関し、詳しくは、透過型あるいは反射型の液晶表示装置やDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)表示装置等のライトバルブからの映像情報を担持した光束を、特にフロント側からスクリーン上に拡大投写する場合に好適な投写用ズームレンズおよび投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やDMD表示装置等のライトバルブを用いて、コンピュータやテレビ等の画像情報を拡大表示する投写型表示装置の発展は、近年、目覚しいものがある。
このような投写型表示装置に搭載されるレンズとしては、画像の大きさを変えることができるズームレンズが一般的に用いられているが、最近では、その変化の割合が大きいもの、すなわちズーム比の大きいズームレンズが求められている。
【0003】
また、投写時に画像位置を投写型表示装置に対し大きくずらすことができる機能(いわゆるレンズシフト投写機能)や、投写型表示装置に近い位置に大きな画像を投写し得る機能も要求されるようになっているが、そのためには投写用ズームレンズの広画角化が必要となる。
【0004】
さらに、近年のライトバルブ自体の高精細化や、狭い室内空間で使用するユーザの要求や利便性を考慮して、高解像度でコンパクトな投写用ズームレンズが求められるようになっている。
【0005】
従来の投写用ズームレンズとしては、例えば下記特許文献1、2に記載されたものが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−91829号公報
【特許文献2】特開2001−100100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に記載の投写用ズームレンズは、拡大側から順に、負の第1レンズ群、正の第2レンズ群、正の第3レンズ群、第4レンズ群、および正の第5レンズ群が配列され、変倍の際に、第1レンズ群および第5レンズ群は固定で、第2レンズ群から第4レンズ群が移動するように構成されている。
【0008】
これら従来の投写用ズームレンズは、第4レンズ群が、負、正、負、正、正の各レンズを拡大側からこの順に配列した構成となっていることにより、変倍に伴う諸収差の変動が比較的少なくなっている。
【0009】
しかしながら、これら従来の投写用ズームレンズは、ズーム比が1.2〜1.3倍、広角端での全画角が60度程度に留まっており、最近の要望に応え得るものとなっていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、広角端での全画角が60度を超えズーム比が1.5倍以上の広角・高倍率でありながらも、諸収差を良好に補正し得る投写用ズームレンズおよびこれを用いた投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る投写用ズームレンズは、拡大側から順に、少なくとも5つのレンズ群を配列してなり、
変倍の際に、前記少なくとも5つのレンズ群のうちの最も拡大側に配されたレンズ群と最も縮小側に配されたレンズ群は固定で、これら最も拡大側に配されたレンズ群と最も縮小側に配されたレンズ群との間に配された他のレンズ群のうちの少なくとも3つのレンズ群は光軸に沿って移動するように構成され、
前記少なくとも3つのレンズ群のうちの最も縮小側に配されたレンズ群は、拡大側から順に、負レンズからなる第1のレンズ、正レンズからなる第2のレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズからなる第3のレンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズからなる第4のレンズ、および正レンズからなる第5のレンズを配列してなり、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とするものである。
【0012】
【数1】

【0013】
本発明に係る投写用ズームレンズにおいて、前記第3のレンズおよび前記第4のレンズは、互いに接合されて接合レンズを構成してなることが好ましい。
【0014】
また、前記少なくとも5つのレンズ群のうちの前記最も拡大側に配されたレンズ群は、少なくとも1面の非球面を有してなることが好ましい。
【0015】
さらに、前記少なくとも3つのレンズ群は、いずれも球面レンズのみからなる構成とすることができる。
【0016】
また、本発明の投写型表示装置は、光源と、ライトバルブと、該光源からの光束を該ライトバルブへ導く照明光学部と、上述したいずれかの投写用ズームレンズとを備え、前記光源からの光束を前記ライトバルブで光変調し、前記投写用ズームレンズによりスクリーンに投写することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の投写用ズームレンズは、変倍の際に移動する少なくとも3つのレンズ群のうちの最も縮小側に配されたレンズ群を、拡大側から順に配列された、負レンズからなる第1のレンズ、正レンズからなる第2のレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズからなる第3のレンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズからなる第4のレンズ、および正レンズからなる第5のレンズからなる構成とし、かつ第1のレンズおよび第2のレンズの間の空気レンズのパワーと、第1のレンズおよび第2のレンズの合成パワーとの比を、上記条件式(1)を満たすように設定することにより、投写用ズームレンズの高倍率化、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)を効果的に補正することができ、かつ全ズーム域に亘って良好な収差補正効果を得ることが可能となる。
【0018】
したがって、本発明の投写用ズームレンズおよびこれを用いた投写型表示装置によれば、広角端での全画角が60度を超えズーム比が1.5倍以上の広角・高倍率としつつも、全ズーム域に亘って諸収差を良好に補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示す実施形態(実施例1のものを代表させて示している)の投写用ズームレンズは、拡大側(スクリーン側)から順に、少なくとも5つのレンズ群(負の屈折力を有する第1レンズ群G、正の屈折力を有する第2レンズ群G、正の屈折力を有する第3レンズ群G、第4レンズ群G、および正の屈折力を有する第5レンズ群G)を配列してなり、その後段には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等ライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0020】
本実施形態の投写用ズームレンズは、レトロフォーカス型のレンズ構成となるので、焦点距離に対して適正な長さのバックフォーカスを確保でき、縮小側を略テレセントリックとすることができる。
【0021】
また、本実施形態の投写用ズームレンズは、変倍の際に、上記少なくとも5つのレンズ群のうちの最も拡大側に配されたレンズ群(第1レンズ群G)と最も縮小側に配されたレンズ群(第5レンズ群G)は固定で、これら最も拡大側に配されたレンズ群と最も縮小側に配されたレンズ群との間に配された他のレンズ群のうちの少なくとも3つのレンズ群(第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第4レンズ群G)は光軸Zに沿って移動するように構成されている。
【0022】
このように移動レンズ群を、少なくとも3つ設けることにより、少ないレンズ枚数でも収差補正を良好なものとすることができる。
【0023】
また、広角端から望遠端への変倍に際し、移動レンズ群を、いずれも拡大側に移動するように構成することにより(本実施形態では、第3レンズ群Gの移動量が、第2レンズ群Gおよび第4レンズ群Gの各移動量よりも大きい)、変倍比を大きく設定することが可能となる。
【0024】
ただし、これは、上記移動レンズ群の各々について、広角端での位置よりも望遠端での位置の方が、より拡大側に設定されていることを意味しているのであって、中間領域において一旦縮小側に移動することを排除するものではない。
【0025】
また、開口絞りは図示されていないが、適切な位置に設けることも可能であり(マスクとすることも可)、ズーミング時において、第4レンズ群Gと一体的に開口絞りが移動するように構成することも可能である。
【0026】
なお、フォーカス調整は、第1レンズ群Gを光軸Z方向に移動させることにより行われることが好ましい。
【0027】
また、本実施形態の投写用ズームレンズは、変倍時に移動する上記少なくとも3つのレンズ群のうちの最も縮小側に配されたレンズ群(第4レンズ群G)が、拡大側から順に、負レンズからなる第1のレンズ(第8レンズL)、正レンズからなる第2のレンズ(第9レンズL)、拡大側に凹面を向けた負レンズからなる第3のレンズ(第10レンズL10)、縮小側に凸面を向けた正レンズからなる第4のレンズ(第11レンズL11)、および正レンズからなる第5のレンズ(第12レンズL12)を配列してなり、課題を解決するための手段の欄に記載した条件式(1)(以下に再掲)を満たすように構成されている。
【0028】
【数2】

【0029】
上記第4レンズ群Gが上述のように構成され、かつ上記条件式(1)を満足することにより、投写用ズームレンズの高倍率化、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)を効果的に補正することが可能となり、全ズーム域に亘って良好な収差補正効果を得ることができる。
【0030】
なお、上記条件式(1)は、上述の第1のレンズ(第8レンズL)および第2のレンズ(第9レンズL)の合成パワーに対する、これら第1のレンズおよび第2のレンズの間の空気レンズのパワーの比を規定するものであり、この比が条件式(1)の範囲外に設定されると、像面湾曲の補正が困難となる。
【0031】
また、本実施形態の投写用ズームレンズは、上記第3のレンズ(第10レンズL10)および上記第4のレンズ(第11レンズL11)は、互いに接合されて接合レンズを構成してなることが好ましく、これにより、倍率色収差を良好に補正することが可能となる。
【0032】
さらに、本実施形態の投写用ズームレンズは、上記少なくとも5つのレンズ群のうちの最も拡大側に配されたレンズ群(第1レンズ群G)を、少なくとも1面の非球面を有するように構成するのが好ましく(例えば、第1レンズ群Gにおいて、拡大側から2番目に配されたレンズLの両面を共に非球面とする)、これにより、歪曲収差を効率良く補正することができるとともに、レンズ枚数を抑えることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態に係る投写用ズームレンズは、変倍に際して移動する上記少なくとも3つのレンズ群(第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第4レンズ群G)を、いずれも球面レンズのみからなる(非球面を有していない)構成とすることができ、この場合でも、後述のように全ズーム域に亘って良好な収差補正効果を得ることが可能となる。
【0034】
ここで、本実施形態の投写用ズームレンズにおける非球面(第1レンズ群Gの拡大側から2番目の第2レンズLの両面)の形状は、下記非球面式により表わされる(下記実施例1〜4における各非球面形状についても同様)。
【0035】
【数3】

【0036】
次に、上述した投写用ズームレンズを搭載した投写型表示装置の一例を図9により説明する。図9に示す投写型表示装置は、ライトバルブとして透過型液晶パネル11a〜cを備え、投写用ズームレンズ10として上述した実施形態に係る投写用ズームレンズを用いている。また、図示せぬ光源とダイクロイックミラー12の間には、フライアイ等のインテグレータ(図示を省略)が配されており、光源からの白色光は照明光学部を介して、3つの色光光束(G光、B光、R光)にそれぞれ対応する液晶パネル11a〜cに入射されて光変調され、クロスダイクロイックプリズム14により、色合成され投写用ズームレンズ10により図示されないスクリーン上に投影される。この装置は、色分解のためのダイクロイックミラー12、13、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14、コンデンサレンズ16a〜c、全反射ミラー18a〜cを備えている。
【0037】
本実施形態の投写型表示装置は、本実施形態に係る投写用ズームレンズを用いているので、広角でズーム比が大きく、かつ投写画像の画質が良好な投写型表示装置とすることができる。
【0038】
なお、本発明の投写用ズームレンズは透過型の液晶表示パネルを用いた投写型表示装置に搭載される投写用ズームレンズとしての使用態様に限られるものではなく、反射型の液晶表示パネルあるいはDMD等の他の光変調手段を用いた装置の投写用ズームレンズ等として用いることも可能である。
【実施例】
【0039】
以下、具体的な実施例を用いて、本発明の投写用ズームレンズをさらに説明する。
【0040】
<実施例1>
実施例1に係る投写用ズームレンズの概略構成を図1に示す。この実施例1に係る投写用ズームレンズは、前述したように、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G、正の屈折力を有する第2レンズ群G、正の屈折力を有する第3レンズ群G、他のレンズ群に比較して屈折力の小さい(本実施例では弱い正の屈折力を有する)第4レンズ群G、および正の屈折力を有する第5レンズ群Gを配列してなり、その後段には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等ライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0041】
第1レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズよりなる第1レンズLと、両面が共に非球面形状とされた第2レンズLと、両凹レンズよりなる第3レンズLとからなり、第2レンズ群Gは、縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズよりなる第4レンズLと、両凸レンズよりなる第5レンズLと、両凹レンズよりなる第6レンズLとからなり、第5レンズLおよび第6レンズLは互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第3レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第7レンズLのみからなる。
【0042】
第4レンズ群Gは、拡大側から順に配列された、両凹レンズからなる第8レンズLと、両凸レンズよりなる第9レンズLと、両凹レンズよりなる第10レンズL10と、両凸レンズよりなる第11レンズL11と、両凸レンズよりなる第12レンズL12とからなり、第10レンズL10および第11レンズL11は互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第5レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第13レンズL13のみからなる。
【0043】
この実施例1に係る投写用ズームレンズは、変倍の際に、第1レンズ群Gおよび第5レンズ群Gは固定で、第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第4レンズ群Gが、光軸Z上を互いに独立して拡大側に移動するように構成されており、第3レンズ群Gの移動量が、第2レンズ群Gおよび第4レンズ群Gの各移動量よりも大きくなっている。
【0044】
また、フォーカス調整は、第1レンズ群Gを光軸Z方向に移動させることにより行われる(実施例2〜4において同じ)。
【0045】
この実施例1における各レンズ面の曲率半径R(レンズ全系の広角端での焦点距離を1.00として規格化されている;以下の表3、5、7において同じ)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(上記曲率半径Rと同様に規格化されている;以下の表3、5、7において同じ)、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νを表1の中段に示す。なお、この表1および後述する表3、5、7において、各記号R、D、N、νに対応させた数字は拡大側から順次増加するようになっている。また、表1の上段には、実施例1における全系の焦点距離f、FナンバFno.、全画角2ω(度)の各値が示されている。
【0046】
また、表1の下段には、ズーム比1.00、1.37、1.60の各場合における、可変1(第1レンズ群Gと第2レンズ群Gとの間隔)、可変2(第2レンズ群Gと第3レンズ群Gとの間隔)、可変3(第3レンズ群Gと第4レンズ群Gとの間隔)および可変4(第4レンズ群Gと第5レンズ群Gとの間隔)が示されている。また、各非球面に対応する各定数K、A〜A14の値を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
また、実施例1における上記条件式(1)に対応する数値を表9に示す。
【0050】
図5は実施例1の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。なお、図5および以下の図6〜8において、各球面収差図にはd線、F線、C線の光に対する収差が示されており、各非点収差図にはサジタル像面およびタンジェンシャル像面についての収差が示されており、各倍率色収差図にはd線の光に対するF線およびC線の光についての収差が示されている。
【0051】
この図5から明らかなように、実施例1の投写用ズームレンズによれば、広角端でのF値が1.61と明るく、各収差が良好に補正されている。
【0052】
また、表9に示すように実施例1の投写用ズームレンズによれば、条件式(1)が満足されており、図5に示すように、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)が効果的に補正されているとともに、広角端での全画角2ωが70.6度でズーム比が1.60と、広画角化および高倍率化を達成している。
【0053】
<実施例2>
実施例2に係る投写用ズームレンズの概略構成を図3に示す。この実施例2に係る投写用ズームレンズは、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G、正の屈折力を有する第2レンズ群G、正の屈折力を有する第3レンズ群G、正の屈折力を有する第4レンズ群G、他のレンズ群に比較して屈折力の小さい(本実施例では弱い負の屈折力を有する)第5レンズ群G、および正の屈折力を有する第6レンズ群Gを配列してなり、その後段には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等ライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0054】
第1レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズよりなる第1レンズLと、両凹レンズからなる第2レンズLと、両面が共に非球面形状とされた第3レンズLとからなり、第2レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第4レンズLのみからなる。また、第3レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第5レンズLと、両凹レンズからなる第6レンズLとからなり、第5レンズLおよび第6レンズLは互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第4レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第7レンズLのみからなる。
【0055】
第5レンズ群Gは、拡大側から順に配列された、両凹レンズからなる第8レンズLと、両凸レンズよりなる第9レンズLと、両凹レンズよりなる第10レンズL10と、両凸レンズよりなる第11レンズL11と、両凸レンズよりなる第12レンズL12とからなり、第10レンズL10および第11レンズL11は互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第6レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第13レンズL13のみからなる。
【0056】
この実施例2に係る投写用ズームレンズは、変倍の際に、第1レンズ群Gおよび第6レンズ群Gは固定で、第2レンズ群G、第3レンズ群G、第4レンズ群Gおよび第5レンズ群Gが、光軸Z上を互いに独立して拡大側に移動するように構成されている(第4レンズ群Gの移動量が、第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第5レンズ群Gの各移動量よりも大きい)。
【0057】
この実施例2における各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νを表3の中段に示す。また、表3の上段には、実施例2における全系の焦点距離f、FナンバFno.、全画角2ω(度)の各値が示されている。
【0058】
また、表3の下段には、ズーム比1.00、1.37、1.60の各場合における、可変1(第1レンズ群Gと第2レンズ群Gとの間隔)、可変2(第2レンズ群Gと第3レンズ群Gとの間隔)、可変3(第3レンズ群Gと第4レンズ群Gとの間隔)、可変4(第4レンズ群Gと第5レンズ群Gとの間隔)および可変5(第5レンズ群Gと第6レンズ群Gとの間隔)が示されている。また、各非球面に対応する各定数K、A〜A14の値を表4に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
また、実施例2における上記条件式(1)に対応する数値を表9に示す。
【0062】
図6は実施例2の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0063】
この図6から明らかなように、実施例2の投写用ズームレンズによれば、広角端でのFナンバFno.が1.61と明るく、各収差が良好に補正されている。
【0064】
また、表9に示すように実施例2の投写用ズームレンズによれば、条件式(1)が満足されおり、図6に示すように、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)が効果的に補正されているとともに、広角端での全画角2ωが63.0度でズーム比が1.60と、広画角化および高倍率化を達成している。
【0065】
<実施例3>
実施例3に係る投写用ズームレンズの概略構成を図4に示す。この実施例3に係る投写用ズームレンズは、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G、正の屈折力を有する第2レンズ群G、正の屈折力を有する第3レンズ群G、正の屈折力を有する第4レンズ群G、他のレンズ群に比較して屈折力の小さい(本実施例では弱い正の屈折力を有する)第5レンズ群G、および正の屈折力を有する第6レンズ群Gを配列してなり、その後段には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等ライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0066】
第1レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズよりなる第1レンズLと、両凹レンズからなる第2レンズLと、両面が共に非球面形状とされた第3レンズLとからなり、第2レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第4レンズLのみからなる。また、第3レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第5レンズLと、両凹レンズからなる第6レンズLとからなり、第5レンズLおよび第6レンズLは互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第4レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第7レンズLと、縮小側に凸面を向けた負のメニスカスレンズよりなる第8レンズLとからなり、第7レンズLおよび第8レンズLは互いに接合されて接合レンズとして構成されている。
【0067】
第5レンズ群Gは、拡大側から順に配列された、両凹レンズからなる第9レンズLと、両凸レンズよりなる第10レンズL10と、両凹レンズよりなる第11レンズL11と、両凸レンズよりなる第12レンズL12と、両凸レンズよりなる第13レンズL13とからなり、第11レンズL11および第12レンズL12は互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第6レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第14レンズL14のみからなる。
【0068】
この実施例3に係る投写用ズームレンズは、変倍の際に、第1レンズ群Gおよび第6レンズ群Gは固定で、第2レンズ群G、第3レンズG群、第4レンズ群Gおよび第5レンズ群Gが、光軸Z上を互いに独立して拡大側に移動するように構成されている(第4レンズ群Gの移動量が、第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第5レンズ群Gの各移動量よりも大きい)。
【0069】
この実施例3における各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νを表5の中段に示す。また、表5の上段には、実施例3における全系の焦点距離f、FナンバFno.、全画角2ω(度)の各値が示されている。
【0070】
また、表5の下段には、ズーム比1.00、1.37、1.60の各場合における、可変1(第1レンズ群Gと第2レンズ群Gとの間隔)、可変2(第2レンズ群Gと第3レンズ群Gとの間隔)、可変3(第3レンズ群Gと第4レンズ群Gとの間隔)、可変4(第4レンズ群Gと第5レンズ群Gとの間隔)および可変5(第5レンズ群Gと第6レンズ群Gとの間隔)が示されている。また、各非球面に対応する各定数K、A〜A14の値を表6に示す。
【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
また、実施例3における上記条件式(1)に対応する数値を表9に示す。
【0074】
図7は実施例3の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0075】
この図7から明らかなように、実施例3の投写用ズームレンズによれば、広角端でのFナンバFno.が1.60と明るく、各収差が良好に補正されている。
【0076】
また、表9に示すように実施例3の投写用ズームレンズによれば、条件式(1)が満足されており、図7に示すように、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)が効果的に補正されているとともに、広角端での全画角2ωが69.6度でズーム比が1.60と、広画角化および高倍率化を達成している。
【0077】
<実施例4>
実施例4に係る投写用ズームレンズの概略構成を図4に示す。この実施例4に係る投写用ズームレンズは、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G、正の屈折力を有する第2レンズ群G、正の屈折力を有する第3レンズ群G、正の屈折力を有する第4レンズ群G、他のレンズ群に比較して屈折力の小さい(本実施例では弱い正の屈折力を有する)第5レンズ群G、および正の屈折力を有する第6レンズ群Gを配列してなり、その後段には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等ライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0078】
第1レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズよりなる第1レンズLと、両面が共に非球面形状とされた第2レンズLと、両凹レンズからなる第3レンズLとからなり、第2レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第4レンズLのみからなる。また、第3レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第5レンズLと、両凹レンズからなる第6レンズLとからなり、第5レンズLおよび第6レンズLは互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第4レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第7レンズLのみからなる。
【0079】
第5レンズ群Gは、拡大側から順に配列された、両凹レンズからなる第8レンズLと、両凸レンズよりなる第9レンズLと、両凹レンズよりなる第10レンズL10と、両凸レンズよりなる第11レンズL11と、両凸レンズよりなる第12レンズL12とからなり、第10レンズL10および第11レンズL11は互いに接合されて接合レンズとして構成されている。また、第6レンズ群Gは、両凸レンズよりなる第13レンズL13のみからなる。
【0080】
この実施例4に係る投写用ズームレンズは、変倍の際に、第1レンズ群Gおよび第6レンズ群Gは固定で、第2レンズ群G、第3レンズ群G、第4レンズ群Gおよび第5レンズ群Gが、光軸Z上を互いに独立して拡大側に移動するように構成されている(第4レンズ群Gの移動量が、第2レンズ群G、第3レンズ群Gおよび第5レンズ群Gの各移動量よりも大きい)。
【0081】
この実施例4における各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νを表7の中段に示す。また、表7の上段には、実施例4における全系の焦点距離f、FナンバFno.、全画角2ω(度)の各値が示されている。
【0082】
また、表7の下段には、ズーム比1.00、1.37、1.60の各場合における、可変1(第1レンズ群Gと第2レンズ群Gとの間隔)、可変2(第2レンズ群Gと第3レンズ群Gとの間隔)、可変3(第3レンズ群Gと第4レンズ群Gとの間隔)、可変4(第4レンズ群Gと第5レンズ群Gとの間隔)および可変5(第5レンズ群Gと第6レンズ群Gとの間隔)が示されている。また、各非球面に対応する各定数K、A〜A14の値を表8に示す。
【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
また、実施例4における上記条件式(1)に対応する数値を表9に示す。
【0086】
図8は実施例4の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0087】
この図8から明らかなように、実施例4の投写用ズームレンズによれば、広角端でのFナンバFno.が1.60と明るく、各収差が良好に補正されている。
【0088】
また、表9に示すように実施例2の投写用ズームレンズによれば、条件式(1)が満足されおり、図8に示すように、広角化を図る際に問題となる像面湾曲(特にサジタル像面の湾曲)が効果的に補正されているとともに広角端での全画角2ωが69.6度でズーム比が1.60と、広画角化および高倍率化を達成している。
【0089】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例1に係る投写用ズームレンズの広角端(WIDE)および望遠端(TELE)における構成を示す概略図
【図2】本発明の実施例2に係る投写用ズームレンズの広角端(WIDE)および望遠端(TELE)における構成を示す概略図
【図3】本発明の実施例3に係る投写用ズームレンズの広角端(WIDE)および望遠端(TELE)における構成を示す概略図
【図4】本発明の実施例4に係る投写用ズームレンズの広角端(WIDE)および望遠端(TELE)における構成を示す概略図
【図5】実施例1の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図
【図6】実施例2の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図
【図7】実施例3の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図
【図8】実施例4の投写用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間(MIDDLE)および望遠端(TELE)における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図
【図9】本発明の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図
【符号の説明】
【0091】
〜G レンズ群
〜L14 レンズ
〜R28 レンズ面等の曲率半径
〜D27 レンズ面間隔(レンズ厚)
Z 光軸
1 画像表示面
2 ガラスブロック(フィルタ部を含む)
10 投写用ズームレンズ
11a〜c 透過型液晶パネル
12、13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
16a〜c コンデンサレンズ
18a〜c 全反射ミラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から順に、少なくとも5つのレンズ群を配列してなり、
変倍の際に、前記少なくとも5つのレンズ群のうちの最も拡大側に配されたレンズ群と最も縮小側に配されたレンズ群は固定で、これら最も拡大側に配されたレンズ群と最も縮小側に配されたレンズ群との間に配された他のレンズ群のうちの少なくとも3つのレンズ群は光軸に沿って移動するように構成され、
前記少なくとも3つのレンズ群のうちの最も縮小側に配されたレンズ群は、拡大側から順に、負レンズからなる第1のレンズ、正レンズからなる第2のレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズからなる第3のレンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズからなる第4のレンズ、および正レンズからなる第5のレンズを配列してなり、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする投写用ズームレンズ。
【数1】

【請求項2】
前記第3のレンズおよび前記第4のレンズは、互いに接合されて接合レンズを構成してなることを特徴とする請求項1記載の投写用ズームレンズ。
【請求項3】
前記少なくとも5つのレンズ群のうちの前記最も拡大側に配されたレンズ群は、少なくとも1面の非球面を有してなることを特徴とする請求項1または2記載の投写用ズームレンズ。
【請求項4】
前記少なくとも3つのレンズ群は、いずれも球面レンズのみからなることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の投写用ズームレンズ。
【請求項5】
光源と、ライトバルブと、該光源からの光束を該ライトバルブへ導く照明光学部と、請求項1〜4のうちいずれか1項記載の投写用ズームレンズとを備え、前記光源からの光束を前記ライトバルブで光変調し、前記投写用ズームレンズによりスクリーンに投写することを特徴とする投写型表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−122326(P2010−122326A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293932(P2008−293932)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】